説明

樹脂組成物

【課題】フッ素樹脂を用いた塗膜でありながら優れた密着性、耐水性、耐候性、可撓性、リコート性を有する新規な塗料用の樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)エポキシ基を有する化合物と
(B)エポキシ基と開環付加反応することができる官能基を有する化合物と
を反応させて得られた反応物と、
(C)イソシアネート基を有する化合物と
を反応させることによって得られる(E)前駆樹脂組成物と
(F)フッ素樹脂とを含有する樹脂組成物において、
該(A)エポキシ基を有する化合物は官能基総数の50%以上が二官能エポキシ化合物であり、
該(B)エポキシ基と開環付加反応することができる官能基を有する化合物は官能基総数の50%以上が一官能化合物であり、
該(C)イソシアネート基を有する化合物は官能基総数の50%以上が二官能イソシアネート化合物である、
ことを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規にて有用なる樹脂組成物に関する。更に詳しくは、塗膜とした際に優れた密着性、耐食性、耐候性、可撓性、リコート性を有する塗料用の樹脂組成物に関する。特に密着性及び耐食性と、優れた耐候性を有するため、従来の多工程塗装、例えば下塗り+中塗り+上塗りの3工程の塗装系、若しくは中塗り+上塗りの2工程の塗装系により得られる塗膜と同等の性能を有する塗膜を、単独の塗料で得ることが出来る塗料用の樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高耐候性を有する樹脂としてフッ素樹脂を用いた塗料が知られており、上塗り塗料用の樹脂組成物として使用されている。しかしながら密着性において、例えばウレタン樹脂塗料等と比較した場合に劣る傾向にあるため下地選択性があり、弱溶剤タイプや一液タイプにおいてはより顕著になり下地選択性が悪くなる。従って、一般的にフッ素樹脂塗料を使用する場合には、特定の下塗り、中塗り塗料が使用されている(例えば、特許文献1)。また、フッ素樹脂塗料の塗膜はリコート性に問題があり、塗り替え等の際に使用可能な塗料の樹脂系は非常に限られたものとなる。
【特許文献1】特開平7−18219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、フッ素樹脂を用いた塗膜とした際に優れた密着性、耐食性、耐候性、可撓性、リコート性を有する塗料用の樹脂組成物に関する。特に密着性及び耐食性と、優れた耐候性を有するため、従来の多工程塗装、例えば下塗り+中塗り+上塗りの3工程の塗装系、若しくは中塗り+上塗りの2工程の塗装系により得られる塗膜と同等の性能を有する塗膜を、単独の塗料で得ることが出来る塗料用の樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に従って、(A)エポキシ基を有する化合物と
(B)エポキシ基と開環付加反応することができる官能基を有する化合物と
を反応させて得られた反応物と、
(C)イソシアネート基を有する化合物と
を反応させることによって得られる(E)前駆樹脂組成物と
(F)フッ素樹脂とを含有する樹脂組成物において、
該(A)エポキシ基を有する化合物は官能基総数の50%以上が二官能エポキシ化合物であり、
該(B)エポキシ基と開環付加反応することができる官能基を有する化合物は官能基総数の50%以上が一官能化合物であり、
該(C)イソシアネート基を有する化合物は官能基総数の50%以上が二官能イソシアネート化合物である、
ことを特徴とする樹脂組成物が提供される。
【発明の効果】
【0005】
上述のように、本発明によって、フッ素樹脂を用いた塗膜でありながら優れた密着性、耐水性、耐候性、可撓性、リコート性を有する新規な塗料用の樹脂組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0007】
本発明の樹脂組成物における(a)エポキシ基を有する化合物は、
ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、ラウリン酸グリシジル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物;
ジシクロペンタジエンジオキサイド、エポキシシクロヘキセンカルボン酸エチレングリコールジエステル等の脂環族エポキシ化合物;
ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ化合物、フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート等の芳香族又は複素環式エポキシ化合物
等が挙げられる。
【0008】
上記ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ化合物の製造に用いうるポリフェノール化合物としては、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
【0009】
上記エポキシ基を有する化合物(A)の具体例としては、
jER製のjER827、同828、同604、YED111N、同122、同216、
阪本薬品工業製のBGE−R、PGE、SR−2EG、SR−NPG、SR−16H、SR−GLG、SR−TMP、SR−PA、SR−HHPA、SR−HBA、
ダウ・ケミカル製のD.E.R.332、D,E,N,431、
大日本インキ化学工業製のエピクロン840、同830、同726、同725、同720、
東都化成製のエポトートPG−202、同PG−207、同PP−101、ネオトートE、ネオトートS、
ナガセ化成製のデナコールEX−301、同EX−421、同EX−411、同EX−313、同EX−321、同EX−201、同EX−211、同EX−212、同EX−810、同EX−111、同EX−121、同EX−141、
四日市合成製のエポゴーセーBA、同TD、同E、同BP、同DE、同HD
が挙げられる。
【0010】
(B)エポキシ基と開環付加反応することができる官能基を有する化合物は、エポキシ基と反応性を有する化学反応性基として水酸基、カルボキシル基、アミノ基(イミノ基を含む)、チオール基、ウレイド基等を有するものであれば特に制限なく使用可能である。
【0011】
飽和脂肪酸としては、例えばヤシ油脂肪酸、水添ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等の不乾性油脂肪酸;カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等を挙げることができる。
【0012】
不飽和脂肪酸としては、例えば魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ダイズ油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸、ハイジエン酸脂肪酸等が挙げられる。
【0013】
また上述の脂肪酸以外にも、安息香酸、メチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、酢酸、乳酸、酪酸、プロピオン酸、リノール酸、リノレン酸、カプロン酸、カプリン酸、イソノナン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、トリメリット酸等が挙げられる。
【0014】
これらの(B)エポキシ基と開環付加反応することができる官能基を有する化合物は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。塗膜の耐溶剤性の点で特に好ましくは、不飽和脂肪酸である。
【0015】
不飽和脂肪酸を用いた場合は、(C)イソシアネート基を有する化合物と反応させることによって得られる(E)前駆樹脂組成物の酸価が、容易に10mgKOH/g以下にすることができ、塗膜の耐水性の点で好ましい。また、特に好ましくは(E)前駆樹脂組成物の酸価が、0.1〜5mgKOH/gである。
【0016】
(A)エポキシ基を有する化合物と、(B)エポキシ基と開環付加反応することができる官能基を有する化合物との反応において、触媒を使用することができる。使用できる触媒としては、反応触媒として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫、水酸化リチウム、酢酸亜鉛等の各種の金属塩、ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリ−n−オクチルアミン等の3級アミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩、テトラメチル尿素等のアルキル尿素、テトラメチルグアニジン等のアルキルグアニジン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等のホスフィン類、ジメチルスルフィド、ジフェニルスルフィド等のスルフィド類及びこれらの塩等を挙げることができる。上記の触媒は単独で使用しても混合して使用しても良い。
【0017】
(A)エポキシ基を有する化合物の官能基数又はその混合物の平均官能基数が大きすぎると、後に行う(C)イソシアネート基を有する化合物との反応においてゲル化する等の問題があり、官能基総数のうち50%以上は二官能エポキシ化合物に由来することが必要である。また、(B)エポキシ基と開環付加反応することができる官能基を有する化合物の該官能基総数においても同様に、50%以上が一官能化合物である必要がある。
【0018】
(C)イソシアネート基を有する化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類;これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;
イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は−2,6−)ジイソシアネート、1,3−(又は1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート類;これらのジイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;
キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルエーテルイソシアネート、(m−もしくはp−)フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)等の芳香族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネ−ト化合物のビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;
トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート類;これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロ−ルプロパン、ヘキサントリオ−ル等のポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物;これらのウレタン化付加物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物
等を挙げることができる。
【0019】
上記(C)イソシアネート基を有する化合物の具体例としては、
旭化成製のデュラネート50M、同D−101、同D−201、同24A−100、同TPA−100、同THA−100、
三井化学製のコスモネートT−80、同M−100、同NBDI、同ND、タケネート500、同600、同700、
住化バイエルウレタン製のスミジュールT−80、同44S、同N3200、同N3300、デスモジュールH、同W、同I、
日本ポリウレタン工業製のコロネートT−80、ミリオネートMT、同MR、同HDI、
協和発酵製のLTI
が挙げられる。
【0020】
(A)エポキシ基を有する化合物と、(B)エポキシ基と開環付加反応することができる官能基を有する化合物との反応物と、(C)イソシアネート基を有する化合物との反応において、触媒を使用することができる。使用できる触媒としては、通常のウレタン化反応において使用されるトリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等のアミン系触媒や、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の錫系触媒等を必要に応じて用いてもよい。
【0021】
(C)イソシアネート基を有する化合物の官能基数又はその混合物の平均官能基数が大きすぎるとゲル化する等の問題があり、官能基総数のうち50%以上は二官能イソシアネート化合物に由来することが必要である。
【0022】
(A)エポキシ基を有する化合物の50重量%以上が脂肪族エポキシ化合物であり、且つ、(C)イソシアネート基を有する化合物の50重量%以上が脂肪族イソシアネート化合物でとすることにより耐候性が向上するので好ましい。
【0023】
(A)エポキシ基を有する化合物と、(B)エポキシ基と開環付加反応することができる官能基を有する化合物との反応物と、(C)イソシアネート基を有する化合物との反応時に、分子量調節、分岐度調節、油長調節等の目的で、(D)イソシアネート基と反応することができる官能基を有する化合物を使用することが出来る。
【0024】
使用できる化合物としては特に制限はなく、それらのうちでも特に一般的なアルコール及びポリオールについて代表例を示すにとどめれば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコールもしくはn−オクチルアルコールをはじめ、カプリルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミスチリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アリルアルコ−ル、フルフリルアルコール、ベンジルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトールもしくはブチルカルビトール等であるが、これらは、単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0025】
使用できるポリオールとしては、低分子量グリコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、オクタンジオール、トリシクロデカンジメチロール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、キシリレンジメタノール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAポリエチレングリコールエーテル、ビスフェノールAポリプロピレングリコールエーテル、ビスフェノールAのエチレンオキシドやプロピレンオキシド付加物、水添ビスフェノールAのエチレンオキシドやプロピレンオキシド付加物、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等があり、これ等は単独又は2種以上混合して使用しても良い。
【0026】
高分子量グリコール類としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカーボネートグリコール等が挙げられ、更には、グリセリン等にエチレンオキシドやプロピレンオキシドを付加重合したポリエーテルポリオール、ジカルボン酸とジオールやトリオール等との縮合により得られる縮合系ポリエステルポリオール、ジオールやトリオールをベースとし、ラクトンの開環重合により得られるラクトン系ポリエステルポリオール、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環反応によって得られるポリエステルジオール、ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール等を挙げることができる。これらのポリオール化合物は、単独又は2種以上混合して使用しても良い。
【0027】
(F)フッ素樹脂は、(E)前駆樹脂組成物と混合しうる樹脂であれば特に制限がないが、塗料として用いることを考えれば溶剤可溶性を示し常温硬化するものが好ましく、特にフルオロエチレン−ビニルエーテル交互共重合体が好ましい。これ以外のフッ素樹脂の具体例としては、セントラル硝子のセフラルコートシリーズ、セフラルルーブシリーズ、ダイキン工業株式会社製のポリフロンPTFE、ネオフロンPFA、ネオフロンFEP、ルブロン等が挙げられる。これらのフッ素樹脂は、単独又は2種以上混合して使用しても良い。
【0028】
本発明における(E)前駆樹脂組成物の固形分水酸基価は、塗膜の耐水性の点で30mgKOH/g以下が好ましく、特に好ましくは固形分水酸基価3〜20mgKOH/gである。固形分水酸基価が30mgKOH/g以下を達成させるためには、樹脂組成物は、(A)エポキシ基を有する化合物、(C)イソシアネート基を有する化合物、(D)イソシアネート基と反応することができる官能基を有する化合物の群の中から選ばれる少なくとも一種は一官能化合物を含有することが好ましい。
【0029】
本発明における(E)前駆樹脂組成物は、脂肪族炭化水素系溶剤を50質量%以上含む溶剤を用いて樹脂固形分50%に調整した際、20℃において濁り及び分離の発生がなく、且つ、20℃における粘度が300ポイズ以下であることが好ましい。更に、20℃における粘度は100〜1ポイズがより好ましい。100ポイズを超えると、一般的な常温での刷毛又はローラー塗装に対応するには塗装時に多量の希釈溶剤が必要であり、膜厚不足等の問題が生じる場合がある。300ポイズを超えると粘度が高過ぎて、一般的な常温での刷毛又はローラー塗装に対応できず、1ポイズ未満では粘度が低過ぎて塗装できない。
【0030】
この場合、脂肪族炭化水素系溶剤を50質量%以上含む溶剤とは、ミネラルスピリットやミネラルターペン、イソパラフィン系等である。粘度の測定は、B型粘度計(BM式)により求めることができる。
【0031】
本発明の樹脂組成物はそれ単体だけでもクリヤー塗料として使用可能であるが、塗料として各種機能を付与させるために、各種樹脂、ドライヤーやダレ防止剤等の一般的に塗料に用いられる添加剤を用いても良く、更に体質顔料、着色顔料、防錆顔料を配合する場合は、顔料分散剤や沈降防止剤等の各種添加剤を配合するのが望ましい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも重量基準によるものとする。
【0033】
<製造例1>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管を付けた反応容器にシクロヘキサンカルボン酸(新日本理化製)128部、jER828(jER製)190部及びジブチル錫ジラウレート0.1部を仕込み、窒素雰囲気下で160℃において、酸価が1以下に達するまで反応させる。系内温度を130℃に冷却した後に、スミジュールT−80(住化バイエルウレタン製)42部、エチレングリコール5部、溶剤としてキシレン402部及びジブチル錫ジラウレート0.1部を仕込み、4時間後に赤外吸収スペクトル(IR)測定によりイソシアネート基のシグナルが消失していることを確認した。その後、フルオロエチレン−ビニルエーテル交互共重合体(ルミフロン800、旭硝子製)183部を混合し、固形分が50%の目的とする樹脂溶液1を得た。
【0034】
<製造例2〜14>
製造例1と同様の方法を用い、表1に示した配合にて反応させた。製造例3〜8はゲル化した。製造例2、9〜14は目的とする樹脂溶液2、9〜14を得た。
【0035】
<実施例1>
上記樹脂溶液1を固形分として25部、溶剤(樹脂溶液1に使用した溶剤と同じもの)を50.3部(上記樹脂溶液1の溶剤と塗料製造時に使用する溶剤の合計量)、顔料(カーボンブラック、ベンガラ、二酸化チタン及び沈降性硫酸バリウム)を20部、ダレ防止剤等の添加剤として4部により、実施例1の塗料を得た。
【0036】
<実施例2〜7>
上記樹脂溶液9〜14を用いて実施例1と同様の方法により、それぞれ実施例2〜7の塗料を得た。
【0037】
<比較例1>
上記樹脂溶液2を用いて実施例1と同様の方法により、比較例1の塗料を得た。
【0038】
<参考例1>
シリコーン樹脂(信越シリコーン製KR271)を用いて実施例1と同様の方法により、参考例1の上塗り塗料を得た。
【0039】
<参考例2>
フッ素樹脂(旭硝子製ルミフロン810)を用いて実施例1と同様の方法により、参考例2の上塗り塗料を得た。
【0040】
得られた前駆樹脂組成物の酸価、水酸基価、固形分量、粘度は、以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0041】
<酸価>
樹脂組成物の酸価の測定は、JIS−K−5601−2−1に準じて行った。
【0042】
<水酸基価>
試料約2gをピリジン約10mlに溶解した後、予め調整した無水酢酸/ピリジンの体積比が15/85である混合溶液5mlを加え、20時間放置し、更に1時間還流させた。冷却後、水1mlを加え10分間還流させた。冷却後、エチルアルコール10mlを加え、指示薬としてフェノールフタレイン・エチルアルコール溶液を2滴加え、0.5Nのエタノール性水酸化カリウム溶液で滴定した。うす紅色が10秒間消えなくなったときを終点とし、次式で水酸基価を計算した;
水酸基価={(B−A)×f×28.05}/(W×NV)+酸価
A:本試験の0.5Nのエタノール性水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)
B:空試験の0.5Nのエタノール性水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)
試料無しで行った際の0.5Nのエタノール性水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)
f:0.5Nのエタノール性水酸化カリウム溶液のファクター
W:試料の質量(g)
NV:試料の固形分量
【0043】
<固形分量>
樹脂組成物の固形分量の測定は、JIS−K−5600−6−1に準じて行った。
【0044】
<粘度>
東京計器社製のB型粘度計BM形式を使用し、試料を20±0.5℃に保持した状態で、No.3ローターを用い30rpmの回転数で測定した。
【0045】
上記で得た塗料を用いて、塗板の作製及び塗膜特性の評価方法を以下のように行った。
【0046】
<塗板作成条件>
密着性、耐食性、耐候性の評価に供する試験片については、みがき軟鋼鈑(厚さ0.7mm)を用い、その表面をキシレンにて洗浄し、320番のサンドペーパーにて研磨し、更にその表面をキシレンにて洗浄し、実施例1〜7、比較例1で得た塗料をアプリケーター(6mil)にて塗布した。これを室温で2週間乾燥後各試験に用いた。参考例1、2の塗板の作成については、前述の様に前処理を行った試験片に、比較例1で得た塗料をアプリケーター(6mil)にて塗布した。これを室温で2週間乾燥後、比較例1の塗膜の上に、更に、参考例1、2で得た塗料をアプリケーター(6mil)にて塗布した。これを室温で2週間乾燥後各試験に用いた。
【0047】
可撓性の評価に供する試験片については、ブリキ板(厚さ0.3mm)を用い、その表面をキシレンにて洗浄し、実施例1〜7、比較例1で得た塗料をアプリケーター(6mil)にて塗布した。これを室温で2週間乾燥後各試験に用いた。参考例1、2の塗板の作成については、前述の様に前処理を行った試験片に、比較例1で得た塗料をアプリケーター(6mil)にて塗布した。これを室温で2週間乾燥後、比較例1の塗膜の上に、更に、参考例1、2で得た塗料をアプリケーター(6mil)にて塗布した。これを室温で2週間乾燥後各試験に用いた。
【0048】
リコート性の評価に供する試験片については、前述の密着性、耐食性、耐候性の評価に供する試験片と同様の試験片を作成後、実施例1〜7、比較例1、参考例1、2の塗膜の上に、更に、実施例1〜7、比較例1、参考例1、2で得た塗料をアプリケーター(6mil)にて塗布した。これを室温で2週間乾燥後各試験に用いた。
【0049】
<密着性>
JIS−K−5600−5−6(1999)付着性(クロスカット法)に準じて、試験塗板の塗膜面に1.5mm×1.5mmのマス目を100個作製し、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、急激に剥した後のマス目部の塗膜の状態を評価した。評価結果は下記の基準に従い行った。
◎:全く剥離が認められない
○:一部剥離が認められる
×:著しい剥離が認められる
【0050】
<耐食性>
JIS−K−5621−7−12 複合サイクル試験の試験方法に準拠し、100サイクル後の塗膜外観を、以下の基準で目視判定した。
◎:錆が認められない
○:一部錆が認められる
【0051】
<耐候性>
サンシャインウェザロメーターによって促進耐候性試験を行い、1000時間後の塗膜の変化を塗膜外観の変化で評価し、また鏡面光沢度(60°光沢)を測定し、初期60°光沢値と比較して光沢保持率により下記のように評価した。
◎:塗膜外観変化が軽微にあり、光沢保持率90%以上
○:塗膜外観変化があり、光沢保持率75%以上90%未満
×:塗膜変化が著しい、光沢保持率75%未満
【0052】
<可撓性>
塗面を外側に向けて塗板を180°折り曲げ、屈曲部位の塗膜状態を目視で判定した。
○:異常なし
△:部分的にクラックが発生している
【0053】
<リコート性>
JIS−K−5600−5−6(1999)付着性(クロスカット法)に準じて、試験塗板の塗膜面に1.5mm×1.5mmのマス目を100個作製し、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、急激に剥した後のマス目部の塗膜の状態を評価した。評価結果は下記の基準に従い行った。
○:剥離が認めらない
×:剥離が認められる
【0054】
【表1】

デナコールEX−301:ナガセ化成製のトリグリシジルイソシアヌレート(三官能基)
jER828:jER製のビスフェノールA型エポキシ樹脂(二官能基)
デナコールEX−810:ナガセ化成製のエチレングリコールジグリシジルエーテル(二官能基)
エポゴーセーBA:四日市合成製のブチルグリシジルエーテル(一官能基)
1,4−CHDA:イーストマンケミカル製のシクロヘキサンジカルボン酸(二官能基)
シクロヘキサンカルボン酸(一官能基)
大豆油脂肪酸(一官能基)
スミジュールN3300:住化バイエルウレタン製のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート(三官能基)
スミジュールT−80:住化バイエルウレタン製のトリレンジイソシアネート(二官能基)
デスモジュールI:住化バイエルウレタン製のイソホロンジイソシアネート(二官能基)
ブチルイソシアネート(一官能基)
エチレングリコール
ブチルグリコールエーテル:三菱化学製のブチルセロソルブ
ルミフロン800:旭硝子製のフルオロエチレン−ビニルエーテル交互共重合体
ルミフロン810:旭硝子製のフッ素樹脂
KR271:信越シリコーン製のシリコーンワニス
製造例2:脂肪酸変性ポリウレタンワニス
【0055】
表1より、実施例1〜7に用いた樹脂組成物は優れた密着性、耐水性、耐候性、可撓性、リコート性を示した。中でも(A)エポキシ基を有する化合物の50重量%以上が脂肪族エポキシ化合物であり、且つ、(C)イソシアネート基を有する化合物の50重量%以上が脂肪族イソシアネート化合物である実施例7は優れた耐候性を示すものであった。一方、(F)フッ素樹脂を含有しない比較例1は、耐候性に劣るものであった。また、(A)〜(C)の官能基数が本発明の要件と異なる製造例3〜5、官能基総数に対する一官能基、二官能基が40%と本発明の要件より少ない製造例6〜8は、それぞれ反応途中で高粘度化により攪拌が困難になり樹脂組成物は得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ基を有する化合物と
(B)エポキシ基と開環付加反応することができる官能基を有する化合物と
を反応させて得られた反応物と、
(C)イソシアネート基を有する化合物と
を反応させることによって得られる(E)前駆樹脂組成物と
(F)フッ素樹脂とを含有する樹脂組成物において、
該(A)エポキシ基を有する化合物は官能基総数の50%以上が二官能エポキシ化合物であり、
該(B)エポキシ基と開環付加反応することができる官能基を有する化合物は官能基総数の50%以上が一官能化合物であり、
該(C)イソシアネート基を有する化合物は官能基総数の50%以上が二官能イソシアネート化合物である、
ことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記(F)フッ素樹脂がフルオロエチレン−ビニルエーテル交互共重合体である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記反応物と(C)イソシアネート基を有する化合物とを反応させる際、
更に(D)イソシアネート基と反応することができる官能基を有する化合物を反応させて得られる請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)エポキシ基を有する化合物、
前記(C)イソシアネート基を有する化合物、
前記(D)イソシアネート基と反応することができる官能基を有する化合物
の群の中から選ばれる少なくとも一種は一官能化合物を含有し、
前記(E)前駆樹脂組成物の固形分水酸基価が30mgKOH/g以下である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(E)前駆樹脂組成物が、脂肪族炭化水素系溶剤を50質量%以上含む溶剤を用いて樹脂固形分50%に調整した際、20℃において濁り及び分離の発生がなく、且つ、20℃における粘度が300ポイズ以下である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)エポキシ基と開環付加反応することができる官能基を有する化合物が不飽和脂肪酸を含み、前記(E)前駆樹脂組成物の固形分酸価が10mgKOH/g以下である請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)エポキシ基を有する化合物の50重量%以上が脂肪族エポキシ化合物であり、且つ、前記(C)イソシアネート基を有する化合物の50重量%以上が脂肪族イソシアネート化合物である請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−43179(P2010−43179A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207840(P2008−207840)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】