説明

樹脂製便器の製造方法

【課題】リム部、ボール部、およびスカート部を独立した樹脂製部材として備えた樹脂製便器において、これらの樹脂製部材の接合面における外側端部に意匠性などの機能性を付与することができる樹脂製便器の製造方法を提供する。
【解決手段】リム部2とボール部3との接合面8、および/またはリム部2とスカート部4との接合面9の外側端部に沿って設けられた樹脂注入用溝部10を含む領域を加熱する工程と、加熱された樹脂注入用溝部10に樹脂11を注入する工程と、樹脂注入用溝部10に注入された樹脂11を押圧することにより、注入された樹脂11を樹脂注入用溝部10内に充填し冷却する工程とを含むことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製便器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図6に示すように、リム部2、ボール部3、およびスカート部4を独立した樹脂製部材として備えた樹脂製便器100が知られており(特許文献1〜4参照)、この樹脂製便器100は、汚物を受けるボール面を内面として有する椀状のボール部3がスカート部4内に収納配置され、ボール部3の上端縁部にリム部2が装着されて形成されるものである。
【0003】
この樹脂製便器100をリム部2、ボール部3、およびスカート部4から組み立てる際には、たとえばリム部2とボール部3との接合面8や、リム部2とスカート部4との接合面9を溶着するなどの方法が行われている。
【特許文献1】特開2007−224616号公報
【特許文献2】特開2007−255159号公報
【特許文献3】特開2007−255158号公報
【特許文献4】特開平10−037279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図6に示すようにリム部2とボール部3との接合面8の外側端部110や、リム部2とスカート部4との接合面9の外側端部111は、外部に露出した部位であるため、意匠性などの機能性を付与することも望まれている。
【0005】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、リム部、ボール部、およびスカート部を独立した樹脂製部材として備えた樹脂製便器において、これらの樹脂製部材の接合面における外側端部に意匠性などの機能性を付与することができる樹脂製便器の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の樹脂製便器の製造方法は、リム部、ボール部、およびスカート部を独立した樹脂製部材として備え、ボール部がスカート部内に収納配置され、ボール部の上端縁部にリム部が装着されて形成される樹脂製便器の製造方法であって、リム部とボール部との接合面、および/またはリム部とスカート部との接合面の外側端部に沿って設けられた樹脂注入用溝部を含む領域を加熱する工程と、加熱された樹脂注入用溝部に樹脂を注入する工程と、樹脂注入用溝部に注入された樹脂を押圧することにより、注入された樹脂を樹脂注入用溝部内に充填し冷却する工程とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、樹脂製部材同士の接合面における外側端部に樹脂注入用溝部を設けて、この樹脂注入用溝部に樹脂を注入、充填するようにしたので、樹脂製部材同士の接合面における外側端部に意匠性などの機能性を付与することができる。
【0008】
さらに、樹脂注入用溝部の加熱、樹脂の注入、および注入した樹脂の押圧の各工程によって樹脂注入用溝部に樹脂を注入、充填するようにしたので、樹脂を高密度に、かつ高い接着強度で樹脂注入用溝部に充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の樹脂製便器の製造方法の一実施形態を示す要部斜視図であり、樹脂製便器の上部側構造の斜視図を示している。本実施形態では、リム部2、ボール部3、およびスカート部4を独立した樹脂製部材として備えた樹脂製便器1におけるリム部2とボール部3との接合面8の外側端部に設けられた樹脂注入用溝部10に樹脂11が注入、充填される。
【0011】
なお、本実施形態において製造される樹脂製便器1は、汚物を受けるボール面を内面として有する椀状のボール部3がスカート部4内に収納配置され、ボール部3の上端縁部にリム部2が装着されて形成されるものである。リム部2、ボール部3、およびスカート部4は、射出成形や圧縮成形などにより成形された、肉厚がたとえば3〜7mmの樹脂製部材であり、アクリル系樹脂、ABS樹脂、PBT樹脂などを成形材料として成形されたものである。
【0012】
本実施形態では、接合面8におけるリム部2の外側端部とボール部3の外側端部のそれぞれに、段差部5,6が形成されており、リム部2とボール部3とを接合面8において当接させることにより、接合面8の外側端部に沿って段差部5,6が上下に対向し、その間の空間によって樹脂注入用溝部10が形成される。
【0013】
樹脂注入用溝部10には、樹脂11が注入、充填される。本実施形態では、最初の工程として、リム部2とボール部3との接合面8を含む領域を加熱する。この加熱工程では、ホットエアーや赤外線などによる加熱装置20を用いて、リム部2およびボール部3における樹脂注入用溝部10を含む領域を、たとえば80〜300℃まで加熱する。
【0014】
次に、加熱された樹脂注入用溝部10に樹脂11を注入する。注入する樹脂11としては、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、アクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができ、意匠性などを考慮して熱可塑性樹脂に蓄光材などを含有させてもよい。
【0015】
樹脂注入用溝部10への樹脂11の注入は、樹脂注入装置21を用いて行われる。樹脂注入装置21としては、たとえば図2に示すようにノズル22を備えたものを用いることができ、樹脂注入用溝部10にノズル22を押し当てて先端部23から樹脂注入用溝部10に樹脂11を射出することで樹脂11を注入することができる。
【0016】
樹脂注入用溝部10に樹脂11を注入した後、最後の工程として、樹脂注入用溝部10に注入された樹脂11を押圧装置24で押圧することにより、注入された樹脂11を樹脂注入用溝部10内に充填し冷却する。
【0017】
押圧装置24としては、たとえば図3に示すように先端部に刷毛構造の押圧部25を有し樹脂注入用溝部10に沿って押圧部25を押し当てながら相対移動させるもの、あるいは図4に示すように回動可能なローラ26を備えておりローラ面26aを樹脂注入用溝部10に押し当てながら樹脂注入用溝部10に沿ってローラ26を回動させるものなどを用いることができる。
【0018】
このようにして樹脂注入用溝部10に注入された樹脂11を押圧装置24によって押圧して押し固め、そして常温まで冷却することにより、樹脂注入用溝部10内に隙間なく高密度に、そして過不足なく樹脂11を充填することができ、さらに樹脂注入用溝部10を構成するリム部2およびボール部3に対して樹脂11を強固に接着することができる。
【0019】
加熱装置20、樹脂注入装置21、および押圧装置24による樹脂11の注入、充填の一連の工程は、たとえば樹脂注入用溝部10に沿った一方向に向って順に行うことができるが、上述した各工程により樹脂11の注入、充填を行うものであれば特に制限はない。
【0020】
図5は、本発明の樹脂製便器の製造方法の別の実施形態を示す要部縦断面図である。この樹脂製便器1は、リム部2に上辺部30と内辺部31とを形成し、スカート部4の上端縁部32をリム部2の上辺部30の下面に当接させて接合するとともに、ボール部3の上端縁部33をリム部2の内辺部31の底面に当接させて接合したものである。
【0021】
本実施形態では、リム部2とボール部3との接合面8、およびリム部2とスカート部4との接合面9のそれぞれの外側端部に沿って樹脂注入用溝部10を設け、上記の実施形態と同様の工程を適用して樹脂注入用溝部10内に樹脂11を注入、充填するようにしている。
【0022】
以上に、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記した実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の樹脂製便器の製造方法の一実施形態を示す要部斜視図である。
【図2】樹脂注入装置のノズルから樹脂製便器の樹脂注入用溝部に樹脂を注入する工程を説明する断面図である。
【図3】樹脂注入用溝部に注入された樹脂を、刷毛構造の押圧装置で押圧する工程を説明する断面図である。
【図4】樹脂注入用溝部に注入された樹脂を、ローラを備えた押圧装置で押圧する工程を説明する断面図である。
【図5】本発明の樹脂製便器の製造方法の別の実施形態を示す要部縦断面図である。
【図6】従来の樹脂製便器の上部側構造を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 樹脂製便器
2 リム部
3 ボール部
4 スカート部
8 接合面
9 接合面
10 樹脂注入用溝部
11 樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リム部、ボール部、およびスカート部を独立した樹脂製部材として備え、ボール部がスカート部内に収納配置され、ボール部の上端縁部にリム部が装着されて形成される樹脂製便器の製造方法であって、リム部とボール部との接合面、および/またはリム部とスカート部との接合面の外側端部に沿って設けられた樹脂注入用溝部を含む領域を加熱する工程と、加熱された樹脂注入用溝部に樹脂を注入する工程と、樹脂注入用溝部に注入された樹脂を押圧することにより、注入された樹脂を樹脂注入用溝部内に充填し冷却する工程とを含むことを特徴とする樹脂製便器の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−235741(P2009−235741A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81971(P2008−81971)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】