説明

樹脂製蓋体、樹脂製蓋体の製造方法

【課題】 簡易な構造で、再生プラスチック(再生樹脂)等を用いても外観に優れ、また、表面に凹凸を形成してもしわ等の発生がなく、安価な樹脂製蓋体を提供する。
【解決手段】 トラフ用蓋1は、平面視略矩形の形状を有する。トラフ用蓋1は、主にトラフ用蓋1を構成する本体層3と、トラフ用蓋1の上面を被覆する被覆層5からなる複層構造である。本体層3は樹脂製であり、ある程度の強度と耐久性があれば材質は特定しないが、コスト及び軽量化などの施工性を考慮すると、再生プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン等)等からなる樹脂組成物が使用できる。被覆層5は、樹脂発泡体であり、例えばポリプロピレンの発泡体を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にケーブル等を収納して、線路脇等に配設されるトラフ用などの樹脂製蓋体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、線路脇等には、コンクリート製や樹脂製のトラフが使用され、トラフ内に各種のケーブルが収納され、長距離に渡って施設される。トラフには通常、内部に雨水や土砂等がトラフ内に侵入することを防止するため蓋が被せられる。
【0003】
近年、トラフおよびトラフ用の蓋は、その敷設作業性等を考慮して樹脂製のものが使用される。特に、近年の環境問題やコストを考慮して、再生プラスチック等が用いられる。
【0004】
このような樹脂製のトラフ用の蓋としては、ピットの上部開口両縁の段差部に載置される合成樹脂製のピット蓋がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録3007971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなトラフ用の蓋は、長距離にわたって線路脇等に敷設されるが、敷設された蓋体の外観は必ずしも良くない。例えば再生プラスチックを用いた場合には、樹脂は黒色またはグレーなどの複数の色が露出する場合があり、任意の色で着色したり、表面に写真や文字を印刷することは困難である。しかし、成形後に塗装をしたのでは、オレフィン系の樹脂上には塗料等が乗りにくいため、塗装等の剥がれの恐れもある。また、再生プラスチックを使用すると、成形時に表面に細かなひびや面荒れが生じる場合がある。しかしながら、蓋全体を特殊な着色樹脂等で形成することはコスト的にも不利である。
【0007】
これに対し、一次側で成形した製品を同一金型コアに残した状態で、二次側となるキャビティへ入れ、二次側材料を流し込み、異材質の材料を一体で成形する方法があるが、この方法では、2つの金型が必要であるとともに、2基の射出装置が必要となることから設備等のコストが問題となる。
【0008】
また、表層にフィルムを加熱して真空プレス等によって成形したフィルムを射出成型金型内に挿入して、射出成型を行うことで2層の樹脂成形体を得る方法がある。しかし、この場合には、フィルムをあらかじめ表面形状に成形しなければならず、製造性が必ずしも良くない。
【0009】
一方、このようなトラフ用の蓋の上は、作業者等が歩行する場合がある。この際、トラフ用の蓋が樹脂製であるため、作業者が蓋上で滑ることを防止するため、トラフ用の蓋上には通常、滑り止用の凹凸が形成される。
【0010】
これに対し、蓋の外観を向上させるため、蓋を樹脂で被覆しようとすると、被覆用の樹脂が製造時に当該凹凸に追従しきれずに、蓋の凸部近傍にしわ等が形成される。しかしながら、被覆樹脂を厚くしていくと、被覆の剥がれやコストの問題が生じる。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、簡易な構造で、再生プラスチック(再生樹脂)等を用いても外観に優れ、また、表面に凹凸を形成してもしわ等の発生がなく、安価な樹脂製蓋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、樹脂製の蓋体であって、樹脂製の本体層と、前記本体層の表面に形成される被覆層と、を有する複層構造であり、前記被覆層は樹脂発泡体であり、蓋の表面には凹凸形状が形成され、前記凹凸形状の凹凸高さは、20mm以下であり、前記樹脂発泡体の厚みが0.5〜5mmであり、前記樹脂発泡体の発泡倍率は、1.5〜5倍であることを特徴とする樹脂製蓋体である。
【0013】
前記被覆層には、耐候性を向上させる紫外線吸収剤、または、耐摩耗性を向上させる無機粉体、ガラス繊維、さらには帯電防止剤、難燃剤、断熱・遮熱剤の少なくともいずれか1つを含有してもよい。
【0014】
前記本体層は、ポリエチレンまたはポリプレピレンを含む再生樹脂であることが望ましい。前記本体層を構成する樹脂と、前記被覆層を構成する樹脂とは相溶性を有し、前記本体層と前記被覆層とは融着によって一体化されることが望ましい。
【0015】
第1の発明によれば、樹脂製蓋体を複層構造とし、表層である被覆層が発泡樹脂であるため、必要以上に被覆層を厚くすることなく、蓋上面に凹凸形状を形成することができ、この際、しわ等の発生がない。すなわち、被覆層の成形時に、発泡体素材を用いれば、素材の伸びだけでなく、厚み方向にも圧縮可能であるため、より確実に表面凹凸形状への追従させることができる。
【0016】
また、溶融した本体層の樹脂の熱を利用し、被覆層の接合面を部分的に溶融させることによって2層を確実に融着することができる。なお、これに対し、無発泡の素材で被覆層を成形すると、溶融した本体層の樹脂の熱が被覆層を通して金型に逃げやすいため、被覆層との接合面の温度が上昇しにくく、接合性が悪くなる。すなわち、発泡体を用いることで、被覆層の断熱効果があるため、金型へ熱が逃げにくく、本体層と被覆層との接合面の温度を上昇させて溶融しやすく、接合性がよい。
【0017】
特に、本体層をポリエチレンまたはポリプレピレンを含む再生樹脂で構成すれば、低コストであり、樹脂の再利用が可能となることから環境への負荷も小さい。
【0018】
また、被覆層を構成する樹脂に、耐候性を向上させる紫外線吸収剤を含有させれば、紫外線によるひび割れ等の劣化を防止することができる。また、被覆層を構成する樹脂に、耐摩耗性を向上させる無機粉体やガラス繊維を含有させることで、作業者が蓋上を歩行する際の強度を向上させるとともに、摩耗を防止することができる。
【0019】
第2の発明は、表面に凹凸形状を有する樹脂製蓋体の製造方法であって、前記凹凸形状の凹凸高さは、20mm以下であり、厚みが0.5〜5mmであり、前記樹脂発泡体の発泡倍率が1.5〜5倍であるシート状またはボード状の発泡体を、一方の面に凹凸形状を有する金型に設置し、前記発泡体の上に、溶融樹脂を配置して、前記金型によりプレスを行い、前記発泡体側に凹凸形状を形成するとともに、蓋の形状とすることを特徴とする樹脂製蓋体の製造方法である。
【0020】
第2の発明によれば、簡易かつ低コストで、外観に優れる樹脂製蓋体を成形可能であるとともに、本体層と被覆層とを確実に融着することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡易な構造で、再生プラスチック(再生樹脂)等を用いても外観に優れ、また、表面に凹凸を形成してもしわ等の発生がなく、安価な樹脂製蓋体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】トラフ用蓋1を示す斜視図。
【図2】トラフ用蓋1の断面図であり、(a)は図1のA−A線断面図、(b)は(a)のB部拡大図。
【図3】トラフ用蓋1の製造工程を示す図。
【図4】トラフ用蓋1の製造工程を示す図。
【図5】トラフ用蓋1の他の製造工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態にかかるトラフ用蓋1について説明する。図1は、トラフ用蓋1を示す斜視図、図2はトラフ用蓋1の断面図であり、図2(a)は図1のA−A線断面図、図2(b)は図2(a)のB部拡大図である。なお、以下の説明ではトラフ用の蓋について説明するが、本発明の樹脂製蓋体は、ケーブルダクト、排水溝、ピット等の蓋にも適用可能である。
【0024】
トラフ用蓋1は、平面視略矩形の形状を有する。トラフ用蓋1は、主にトラフ用蓋1を構成する本体層3と、トラフ用蓋1の上面を被覆する被覆層5からなる複層構造である。なお、本体層3と被覆層5との間に、さらに接着層等の別層が形成されてもよい。
【0025】
また、本発明のトラフ用蓋の形状は図示した例に限られず、長さ、幅、厚みおよび表面の形態などは、適宜設定され、使用される部位に応じて、屈曲形状やL字状など、外形は適宜設定される。例えば、対応するトラフ形状に合わせて、トラフ用蓋の側方に段差を設けたり、底面側にリブ等を形成してもよい。また、トラフ用蓋1の上面は(凸部7を除き)平坦にしてもよく、または、トラフ用蓋1の中央をやや上方に向けて湾曲または屈曲させ、敷設時に、トラフ用蓋1の側端部が低くなるように形成してもよい。また、トラフ用蓋の側部に、取り扱い時に使用する取手(切り欠き)を形成してもよい。
【0026】
本体層3は樹脂製であり、ある程度の強度と耐久性があれば材質は特定しないが、コスト及び軽量化などの施工性を考慮すると、再生プラスチック(例えば、容器包装リサイクル法で回収された一般廃棄プラスチック(ポリエチレン70質量%、ポリプロピレン20質量%、ポリスチレン10質量%))等からなる樹脂組成物が使用できる。
【0027】
被覆層5は、樹脂発泡体であり、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、EVA、PET等の発泡体を用いることができる。発泡体としては、発泡倍率が1.5〜5倍であることが望ましい。発泡倍率が1.5倍以下では、後述する成型時にトラフ用蓋1の上面の凹凸に追従することができず、しわ等の発生の恐れがある。また、発泡倍率が5倍以上では、強度等が低下する。さらに、成形時のプレス圧力を樹脂発泡体が吸収し、本体層との接触面圧が低下して密着性が落ちるので、剥離の恐れがある。さらに、気泡径は500μm以下であることが望ましい。気泡径が500μmよりも大きくなると、樹脂部と気泡部のかたよりが大きく、プレス時に発泡被覆層が均一につぶれにくく、面圧が不均一となって、密着性にばらつきが生じやすくなる。
【0028】
なお、被覆層5を構成する樹脂と、本体層3を構成する樹脂とは相溶性を有することが望ましい。また、被覆層5を構成する樹脂の融点を、本体層3を構成する樹脂の融点よりも高くしてもよい。
【0029】
トラフ用蓋1の表面には、滑り止め等の目的で、凹凸形状が形成される。この凹凸はリブとしての機能も果たし、トラフ用蓋の強度向上にも寄与する。なお、図では、凸部7のみが形成された例を示すが、凸部7に代えて、または凸部7に加えて、凹部を形成してもよい。以下の説明では、凸部7が形成された例ついて説明する。また、凸部7の模様(凹凸形状および配置等)は図示した例に限られない。
【0030】
図2に示すように、凸部7においては、本体層3および被覆層5が凸形状に形成される。ここで、本体層5の厚みはトラフ用蓋1の設計厚みに応じて適宜設定される。被覆層5の厚みは、凸部7の高さ等に応じて設定される。なお、凸部7の断面形状は、図示したような円弧状でなくてもよく、表面に平坦部を有する台形状などの矩形であってもよく、また、凹凸を表面全体に繰り返し配置する波型としても良い。
【0031】
凸部7の高さ(図2(b)中の高さC)が高くなると、被覆層5の厚み(図2(b)中の厚みD)を凸部7の高さ(凹部の場合にはその深さ)に応じた厚みとする必要がある。すなわち、凸部7の高さが高くなると、トラフ用蓋1の成型時に、被覆層5がこの凸形状に追従することが困難となり、しわ等の発生を抑えることができなくなる。したがって、被覆層5の厚みは凹凸高さに応じて設定される。
【0032】
例えば、凸部7の高さとしては20mm以下が望ましい。20mm以上では、被覆層を発泡体としてもしわの恐れがあるためである。また、この際、被覆層5(後述する発泡体の厚さ)は、0.5〜5mmであることが望ましい。被覆層の厚みが薄すぎると、凸部形状へ追従できず、しわの発生の恐れがあり、また、厚すぎると、成形時のプレス圧力を樹脂発泡体が吸収し、本体層との接触面圧が低下して密着性が落ちるので、本体層と被覆層との界面で剥がれの恐れがあるためである。
【0033】
次に、トラフ用蓋1の製造方法について説明する。図3〜図4はトラフ用蓋1の製造工程を示す模式図である。まず、図3(a)に示すように、表面に形成される凸部7に対応する形状の凹部13が形成された下型である金型11aに、あらかじめ製造された発泡体9を設置する(図中矢印E方向)。図3(b)は、発泡体9が金型11aに設置された状態を示す図である。
【0034】
なお、発泡体9は、前述したように内部に複数の気孔を有するシート状またはボード状の発泡体である。発泡体9としては、例えば、古河電気工業製の「エフセル」(登録商標)を使用することができる。
【0035】
次に、図4(a)に示すように、発泡体9の上に溶融した(粘性を有する)溶融樹脂15を配置する。溶融樹脂15は、あらかじめ製造される蓋の形状に応じた量で構成される。この状態から、上型である金型11bを溶融樹脂15に対して押し付ける(図中矢印F方向)。
【0036】
図4(b)は、金型11bによってプレスが完了した状態を示す図である。金型11a、11bによって、溶融樹脂15がトラフ用蓋1の形状に成形される。この際、発泡体9は溶融樹脂15によって金型11a側に押し付けられ、凹部13においては、凹部13の形状に沿って変形して凸部7が形成される。
【0037】
溶融樹脂15は本体層3を構成し、発泡体9は被覆層5を構成する。溶融樹脂15と発泡体9の界面では、溶融樹脂15の熱およびプレス圧力によって、発泡体9の一部が軟化し、溶融樹脂15と発泡体9とが融着されて一体化される。この際、互いの構成する樹脂が相溶性を有すれば、より確実に両者を一体化することができる。
【0038】
なお、発泡体9は内部に多くの気孔を有し熱伝導が悪いため、溶融樹脂15からの熱により、発泡体9の溶融樹脂との界面近傍の温度を確実に上昇させる。したがって、熱が金型に逃げることがなく、界面を確実に融着させるとともに、発泡体全体が溶融することを防止することができる。したがって、溶融樹脂15が発泡体9の下方(金型11a側)に染み出すことを防止することができる。
【0039】
成形終了後、所定時間の冷却を行い、金型を開き、図示を省略した取出しピン等で成形されたトラフ用蓋1を金型11aより抜き取ることで、トラフ用蓋1の成形が終了する。
【0040】
なお、発泡体9には、あらかじめ顔料等を含有させておけば、所望の色のトラフ用蓋1を成形することができる。また、発泡体9の表面に、あらかじめ印刷処理を施すことで、所望の模様、写真、文字、色彩を有するトラフ用蓋1を得ることができる。また、プレス成形する金型の凹部のみに顔料を塗布することにより、成形品の凸部のみを着色することができることから、成形品の凸部のみを着色して文字や図形を蓋に描くことができる。このようにすれば、樹脂性蓋体を使用する会社のロゴマークを浮き立たせて使用することもできるし、トラフ内のケーブルの種類や用途を蓋体に記載することができる。
【0041】
また、本発明では、本体層3(溶融樹脂15)、被覆層5(発泡体9)に、通常樹脂に添加される酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、断熱・遮熱効果を有するセラミックスビーズなどの添加剤などを本発明の特性を損なわない範囲で適宜配合してもよい。特に被覆層5のみに添加剤を適用することにより、本体層3に添加せずに特性を維持し、安価にすることができる。
【0042】
例えば、発泡体9に紫外線吸収剤を含有させておけば、成形されたトラフ用蓋の表面の耐候性を向上させることができ、日光等による劣化を防止することができる。また、発泡体9に、あらかじめ機械的性質を向上させるガラス繊維や無機粉体などの無機材料を含有させることで、成形されたトラフ用蓋の表面の耐摩耗性や、トラフ蓋の強度等を向上させることができる。また、帯電防止剤を含有させれば、作業者が蓋上を通行中に受ける静電気の影響を防止することができる。さらに、例えば、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの難燃剤を所定量含有させれば、外部からの延焼を防ぐことができる。
【0043】
本発明によれば、外観に優れるトラフ用蓋を得ることができる。特に、トラフ用蓋の材料として、再生プラスチックを使用しても、被覆層が形成されるため、表面の荒れがなく、低コストで環境への順応性も高い、所望の外観のトラフ用蓋を得ることができる。
【0044】
また、被覆層5を構成する素材が、発泡体9であるため、トラフ用蓋1の表面に滑り止め等の凹凸形状を形成しても、トラフ用蓋1の形成時において、発泡体9自体が多少の厚み変化や形状変化に対して追従することができるため、凹凸形状の近傍におけるしわの発生を防止することができる。また、トラフ用蓋の成型時における被覆層の割れや、内部の溶融樹脂が外部へ染み出すこと等を防止することができる。
【0045】
また、被覆層9に対して、耐候性や耐摩耗性等の機能を容易に付加することが可能であり、この場合でも、本体層3に対しては、当該添加物を添加する必要がない。このため、被覆層9にのみ当該添加剤を添加すればよく、必要最低限の添加剤のみを使用すればよいため、効率良く耐候性や耐摩耗性を向上させることができる。
【0046】
なお、トラフ用蓋1の製造方法は、前述した例には限られない。例えば、図5は他の製造工程を示す模式図である。まず、公知の方法で、所定の形状の本体層3を形成する。本体層3は例えばプレス成型で製造すればよい。この際、完成されるトラフ用蓋1の表面に形成される凸部7に対応する部位には、あらかじめ凸部7の形状に対応する形状の(凸部7よりも被覆層の厚みを考慮してやや小さな)凸部7aを成形しておく。
【0047】
次に、図5(a)に示すように、成形された本体層3を金型11c上に配置する。本体層3上には、発泡体9を配置する。なお、この場合には、例えば発泡体9の融点を本体層3の融点よりも高くしておき、発泡体9が軟化した状態で発泡体を本体層3上に配置してもよい。
【0048】
この状態で、金型11dを下降させて発泡体9を本体層3に押し付ける(図中矢印G方向)。図5(b)は、金型11c、11dによって本体層3と被服層5とが形成された状態を示す図である。金型11dには、凸部7aに対応する部位に、形成される凸部7に対応する形状の凹部13aが形成される。
【0049】
金型11c、11dでプレスを行うことにより、金型11dの凹部13aによって、発泡体9には凸部7が形成される。すなわち、凸部7は凸部7a上に形成される。この際、発泡体9は凸部7の形状に変形するが、発泡体9は内部に空孔を有するため、厚みの変形にも容易に追従可能である。したがって、凸部7近傍にしわ等の発生がない。
【0050】
成形終了後、所定時間の冷却を行い、図示を省略した取出しピン等で成形されたトラフ用蓋1を金型11c、11dより抜き取り、トラフ用蓋1の成形が終了する。
【0051】
なお、本体層3の上面か発泡体9の裏面の少なくとも一方に、あらかじめ接着剤を塗布しておき、発泡体9と本体層3とを接着してもよい。また、本体層3と発泡体9との間に、接着剤としてのシート等を配置しても良い。たとえば、ホットメルト型接着シートを配置して、プレス時の熱によって被覆層5と本体層3との間に接着層を形成して両者を一体化しても良い。
【0052】
また、被覆層5は複数層(複数枚の発泡体)で形成しても良い。また、被覆層5は必ずしも本体層の上面全体に形成する必要はなく、または、必要に応じて、被覆層5を本体層3の側面にも形成してもよい。
【0053】
以上のように、本発明のトラフ用蓋はいずれの製造方法においても得ることができる。また、上述したプレス成型のみではなく、射出成型、圧縮成型、押出成形など、成形する樹脂製蓋体の種類や大きさ等に応じて、製造方法は適宜選択することができる。
【0054】
この際、本体層3を再生プラスチックとし、被服層5を発泡体とすることにより、低コストあるとともに、製造時の表面しわ等の発生がなく、着色や模様、印刷等も可能であるため外観にも優れ、耐候性や耐摩耗性などの機能を付与することも容易であるだけでなく、添加剤の使用量も必要最低限(表面の被服層5に対応する量)で良いため、コスト的にも有利である。
【実施例】
【0055】
以下、樹脂製蓋体の態様と外観について評価した。蓋体としては、長さ500mm×幅200mm×厚さ15mmのものを用いた。表面には、それぞれの高さの突起を形成した。本体層としては、ポリエチレン70質量%、ポリプロピレン20質量%、ポリスチレン10質量%の再生樹脂を用いた。
【0056】
各成形品は、図3〜図4に示した製造方法によって成形した。なお、溶融樹脂としては二軸押出機により樹脂温度230℃で押し出して金型内に設置した。
【0057】
成形後の各成形品について、表面の凸部近傍にしわが発生していないかを目視で確認した。また、被覆層の剥がれがないかを目視で確認した。各成形品の条件および評価結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表中の「凸部高さ」は、成形品の表面の凸部の高さである。発泡倍率および厚さは、被覆層を構成する発泡体の発泡倍率および厚さであり、「無発泡」とは、発泡体ではない樹脂シートを用いたものである。「しわ」および「剥がれ」は、被覆層の表面にしわが発生したもの、および被覆層に剥離が見られるものを「×」とし、これらが見られずに外観に優れるものを「○」と評価した。
【0060】
表から明らかなように、本発明の実施品No.1〜No.5にはしわや剥がれは見られなかった。一方、No.6は被覆層が発泡体ではないため、しわの発生が見られた。また、No.7は、被覆層が発泡体ではなく、また、被覆層が厚いため、しわと剥がれが確認された。すなわち、被覆層の厚みだけでは、成形品表面の凸部への追従は困難であることが分かる。
【0061】
また、No.8は、凸部の高さが25mmと20mmを超えるため、被覆層に発泡体を用いてもしわが確認された。また、No.9は、被覆層の厚みが薄すぎいるため、凸部に追従できず、しわが発生した。また、No.10は、発泡倍率が高すぎるため、剥離が生じた。また、No.11は、被覆層の厚みが厚すぎるため、剥離が生じた。
【0062】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0063】
1………トラフ用蓋
3………本体層
5………被覆層
7、7a………凸部
9………発泡体
11a、11b、11c、11d………金型
13、13a………凹部
15………溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の蓋体であって、
樹脂製の本体層と、
前記本体層の表面に形成される被覆層と、を有する複層構造であり、
前記被覆層は樹脂発泡体であり、
蓋の表面には凹凸形状が形成され、
前記凹凸形状の凹凸高さは、20mm以下であり、前記樹脂発泡体の厚みが0.5〜5mmであり、前記樹脂発泡体の発泡倍率は、1.5〜5倍であることを特徴とする樹脂製蓋体。
【請求項2】
前記被覆層には、耐候性を向上させる紫外線吸収剤、または、耐摩耗性を向上させる無機粉体、ガラス繊維、さらには酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、断熱・遮熱剤の少なくともいずれか一つを含有することを特徴とする請求項1記載の樹脂製蓋体。
【請求項3】
前記本体層は、ポリエチレンまたはポリプレピレンを含む再生樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂製蓋体。
【請求項4】
前記本体層を構成する樹脂と、前記被覆層を構成する樹脂とは相溶性を有し、前記本体層と前記被覆層とは融着によって一体化されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の樹脂製蓋体。
【請求項5】
表面に凹凸形状を有する樹脂製蓋体の製造方法であって、
前記凹凸形状の凹凸高さは、20mm以下であり、
厚みが0.5〜5mmであり、樹脂発泡体の発泡倍率が1.5〜5倍であるシート状またはボード状の発泡体を、一方の面に凹凸形状を有する金型に設置し、
前記発泡体の上に、溶融樹脂を配置して、前記金型によりプレスを行い、前記発泡体側に凹凸形状を形成するとともに、蓋の形状とすることを特徴とする樹脂製蓋体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−131190(P2012−131190A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287049(P2010−287049)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】