説明

樹脂造粒用ダイプレート

【課題】本発明は、各ノズル穴群の押し出しノズル穴の数を従来よりも多くして大量処理に対応可とし、加熱媒体の加熱チャンネルへの通過を一度のみとすることにより各押し出しノズル穴の温度差をなくすことを目的とする。
【解決手段】本発明による樹脂造粒用ダイプレートは、各加熱チャンネル(8)間の各押し出しノズル穴(6)は、プレート本体(1)の円周方向と交差する交差方向(E)に沿って少なくとも3列配設され、前記加熱チャンネル(8)に流す加熱媒体(F)は1回のみであり、前回供給し温度が低下した加熱媒体(F)は次回には続いて供給しないようにした構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂造粒用ダイプレートに関し、特に、プレート本体の各ノズル穴群の押し出しノズル穴の数を多くすると共に押し出しノズル穴の温度差をなくすことにより、大きい処理量に対応すると同時にペレットの品質を保つための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の樹脂造粒用ダイプレートとしては、例えば、特許文献1等に開示された構成を図3として挙げることができる。
すなわち、図3において、符号1で示されるものはダイプレート1Aのプレート本体であり、このプレート本体1は90度毎に第1〜第4領域A,B,C,Dとして4分割されていると共に、その周縁1aには、90度毎に、加熱媒体Fを出入りさせるための加熱媒体入口2及び加熱媒体出口3が設けられている。
【0003】
前記プレート本体1は、前述のように、各領域A〜D毎に分割されているが、全体としては環状をなす内側環状加熱通路4及び外側環状加熱通路5が設けられ、前記加熱媒体入口2及び加熱媒体出口3は前記外側環状加熱通路5に形成されている。さらに、前記各領域A〜D毎の外側環状加熱通路5は、加熱媒体入口2と加熱媒体出口3との間が外側壁5Aによって区画されている。
【0004】
前記プレート本体1の各領域A〜Dには、多数の押し出しノズル穴6を有する複数(ここでは8個)のノズル穴群7が設けられ、この各ノズル孔群7の周囲は加熱チャンネル8及び前記各環状加熱通路4,5により囲われた状態となるように構成されている。
前記各ノズル穴群7の各押し出しノズル穴6は、プレート本体1の円周方向と交差する交差方向Eに沿って第1列6Aと第2列6Bからなる2列配設されている。
【0005】
前述の従来構成において、各領域A〜Dの各加熱媒体入口2から供給されたスチームや熱媒油等の所定温度に加熱された加熱媒体Fは、外側環状加熱通路5、各加熱チャンネル8、内側環状加熱通路5を経て加熱媒体出口3から図示しない加熱源装置に戻り、再び前述の所定温度に加熱されてから加熱媒体入口2に戻るように構成されている。
【0006】
一般に、プラスチックペレットの造粒装置は、押出機の下流に設置され、溶融樹脂が押し出されるノズルを有するダイプレートとこのダイプレートノズルから押し出された樹脂をペレットに切断するためのカッタ刃を有するカッタ装置とで構成されるが、ダイプレート1Aの樹脂が押し出される側の面は切断されたペレットを輸送するための循環水に晒されているため、ダイプレート1Aの樹脂の押し出しノズル6の温度保持のために、スチームや熱媒油など加熱媒体通過用のジャケットを内蔵している。形状の均一なペレットを造粒するにはダイプレート1Aの全ての溶融樹脂の押し出しノズル6は温度ムラなく加熱されることが望ましいため、過熱ジャケットと押し出しノズル6は一定の規則性を持って配置される。加熱ジャケットは外側環状加熱通路5及び内側環状加熱通路4、そして外側環状加熱通路5と内側環状加熱通路4をつなぐ加熱チャンネル8で構成される。樹脂の押し出しノズル穴6は加熱チャンネル間に1列または2列配置する方法が一般的である。加熱チャンネル8は円周の1/4(つまり90度)を平行に配置する場合や、1/6(60度)、1/8(45度)範囲を平行にする場合などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−277528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の樹脂造粒用ダイプレートは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、ダイプレートの押し出しノズル穴の穴数を増やすことができれば、小さなダイプレートでより大きな生産量に対応することができるので、イニシャルコストのみでなく、運転中の加熱電力などランニングコスト面でもメリットが大きいが、多くの穴数をダイプレートに配置するには穴配置面積を広くする方法と穴配置密度を大きくする方法とがある。穴配置面積を大きくする方法は穴配置面幅(穴配置円外径ー穴配置円内径)を広くする方法と、穴配置面幅を一定で穴配置外径と穴配置内径を大きくする方法がある。穴配置幅を広くする方法の場合、カッタ刃のエッジがダイプレートのカッティング面つまり穴配置面に精度よく当らなくなるという問題が起きる。この穴配置面幅の限度は処理される樹脂の「切れ味」に左右されてくるため、穴数を増やすために穴配置面幅をむやみに広くすることはできない場合が多い。また、穴配置円外径と内径を大きくする方法はダイブレートが大きくなり、ダイプレートが大きくなると造粒装置全体の大きさに影響し、コスト増加につながるため、好ましくない。
従って、本発明は、穴配置密度を大きくして、今までの穴配列方式の同じサイズ(穴配置円外径、内径、幅)のダイプレートと比較した場合に、より多くの穴数を配置することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による樹脂造粒用ダイプレートは、プレート本体に設けられ溶融樹脂を押し出すための多数の押し出しノズル穴と、前記押し出しノズル穴を加熱するための多数の加熱チャンネルと、前記各加熱チャンネルを連通するための外側環状加熱通路及び内側環状加熱通路と、を備え、前記各加熱チャンネル間の前記各押し出しノズル穴は、前記プレート本体の円周方向と交差する交差方向に沿って少なくとも3列配設され、前記加熱チャンネルに流す所定温度の加熱媒体は1回のみであり、前回供給し温度が前記所定温度より低下した加熱媒体を次回には続いて供給しないようにした構成であり、また、前記プレート本体の周縁には、前記内側環状加熱通路に連通する加熱媒体出口が、前記プレート本体の大きさに応じて任意に選択される分割数n(n=4,6,8)に対して360/n度間隔で設けられている構成であり、また、前記プレート本体の前記360/n度の範囲内には、前記3列の押し出しノズル穴を有するノズル穴群が複数個設けられ、前記複数個のノズル穴群は、前記内側環状加熱通路に形成された内側壁及び外側環状加熱通路に形成された外側壁によって前記内側環状加熱通路及び外側環状加熱通路が二分されている構成であり、また、前記プレート本体の前記360/n度の範囲内には、前記外側環状加熱通路に一対の加熱媒体入口が設けられている構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明による樹脂造粒用ダイプレートは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、プレート本体に設けられ溶融樹脂を押し出すための多数の押し出しノズル穴と、前記押し出しノズル穴を加熱するための多数の加熱チャンネルと、前記各加熱チャンネルを連通するための外側環状加熱通路及び内側環状加熱通路と、を備え、
前記各加熱チャンネル間の前記各押し出しノズル穴は、前記プレート本体の円周方向と交差する交差方向に沿って少なくとも3列配設され、前記加熱チャンネルに流す所定温度の加熱媒体は1回のみであり、前回供給し温度が前記所定温度より低下した加熱媒体を次回には続いて供給しないようにしたことにより、まず、同じダイプレートサイズで同じ穴配置面積であっても、より多くのノズル穴を配置することができ、溶融樹脂の大量処理が可能となる。
また、ダイプレートに供給する所定温度の加熱媒体は、加熱チャンネル内を1回だけ通過させ、1回通過して温度が所定温度すなわち1回目に用いた温度よりも温度が低下した加熱媒体は次の循環には用いずに、再び加熱源装置に戻して所定温度に加熱してから再供給するようにしている。そのため、加熱チャンネル内を1回通過した加熱媒体自身は温度が低下するが、温度低下した加熱媒体をもう1度ノズル加熱のため加熱チャンネルを通過させると、1度目に通過した加熱チャンネル近傍と2度目に通過するノズル近傍とで温度差が生じることになるが、この加熱媒体の加熱チャンネル通過を1度のみとすることにより、前述の温度差の発生を防止することができることにより、各押し出しノズル穴から押し出しされるストランドの性状が良好で一定となり、ペレットの品質を保つことができる。
また、前記プレート本体の周縁には、前記内側環状加熱通路に連通する加熱媒体出口が、前記プレート本体の大きさに応じて任意に選択される分割数n(n=4,6,8)に対して360/n度間隔で設けられていることにより、加熱媒体の排出が容易となる。
また、前記プレート本体の前記360/n度の範囲内には、前記3列の押し出しノズル穴を有するノズル穴群が複数個設けられ、前記複数個のノズル穴群は、前記内側環状加熱通路に形成された内側壁及び外側環状加熱通路に形成された外側壁によって前記内側環状加熱通路及び外側環状加熱通路が二分されていることにより、加熱媒体の供給が容易となる。
また、前記プレート本体の前記360/n度の範囲内には、前記外側環状加熱通路に一対の加熱媒体入口が設けられていることにより、加熱媒体を短時間でダイプレート内へ供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による樹脂造粒用ダイプレートを示す断面図である。
【図2】図1の右側面拡大図である。
【図3】従来の樹脂造粒用ダイプレートを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、プレート本体の各ノズル穴群の押し出しノズル穴の数を多くすると共に押し出しノズル穴の温度差をなくすことにより、大きい処理量に対応すると同時にペレットの品質を保つようにした樹脂造粒用ダイプレートを提供することを目的とする。
【実施例】
【0013】
以下、図面と共に本発明による樹脂造粒用ダイプレート(分割数nが4の場合)の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を用いて説明する。
図1において、符号1Aで示されるものは、図示しない押出機に設けられたダイス、すなわち、ダイプレートであり、このダイプレート1Aには、溶融樹脂の押し出しノズル穴6が環状に多数形成され、この多数のノズル穴6の断面における内側と外側には、内側環状加熱通路4及び外側環状加熱通路5が形成されている。
【0014】
前記図1のダイプレート1Aを右側から拡大してみると、図2に示されるように構成されている。
図2において、符号1で示されるものはダイプレート1Aのプレート本体であり、このプレート本体1は90度毎に第1〜第4領域A,B,C,Dとして4分割されていると共に、その周縁1aには、90度毎に加熱媒体Fを内部に供給させるための一対の加熱媒体入口2が設けられている。
【0015】
前記プレート本体1は、前述のように、各領域A〜D毎に分割されてはいるが、全体としては環状をなす内側環状加熱通路4及び外側環状加熱通路5が設けられ、前記加熱媒体入口2は前記外側環状加熱通路5に形成され、前記プレート本体1の第1〜第4領域A〜D毎に前記内側環状加熱通路4に連通する加熱媒体出口3が形成されている。尚、前記各領域A〜Dにおける外側環状加熱通路5における各加熱媒体入口2,2間は外側壁5Aによって区画されている。
【0016】
前記プレート本体1の各領域A〜Dには、前記各押し出しノズル穴6が多数個の群として形成されたノズル穴群7が形成され、この各ノズル穴群7内の各押し出しノズル穴6は、プレート本体1の円周方向と交差する交差方向Eに沿って少なくとも第1列6A、第2列6B、第3列6Cからなる3列(3列以上も可)が配設され、6個(従来は8個)のノズル穴群7に対して7個(従来は9個)の加熱チャンネル8が形成されている。
【0017】
従って、各領域A〜Dにおける各ノズル穴群7は、外側環状加熱通路5、各加熱チャンネル8及び内側環状加熱通路4により囲われた状態となるように構成されている。
【0018】
前述の本発明構成において、各領域A〜Dの各一対の加熱媒体入口2から供給されたスチームや熱媒油等の予め所定温度に加熱された加熱媒体Fは、外側環状加熱通路5、各加熱チャンネル8、内側環状加熱通路4を経て加熱媒体出口3から図示しない加熱源装置に戻り、再び前記所定温度に加熱されてから再び加熱媒体入口2に戻るように構成されている。
【0019】
前述のプレート本体1における加熱媒体Fの流れにおいて、前述のように、前記加熱源装置により予め所定温度に加熱されている加熱媒体Fは加熱媒体入口2から入り、外側環状加熱通路5を通過して、各加熱チャンネル8に分配されて流入する。その後加熱チャンネル8より流出し、内側環状加熱通路4を通過し、続いて加熱媒体出口3を通過し、ダイプレート1Aの外部へと排出される。加熱媒体Fは1度だけ押し出しノズル穴6の近傍を通過するので、温度の低下した加熱媒体Fがノズル穴6近傍を通過するつまり、同じ加熱媒体Fが2度ノズル穴6の近傍を通過することがないので、全ノズル穴6の温度差を低く押えることができ、詰りのない安定したストランドの押し出しを行い、品質の安定したペレット造粒ができる。
すなわち、1度加熱チャンネル8に供給して戻った加熱媒体Fは、所定温度から低下しているが、この温度低下した加熱媒体Fはそのまま再び加熱チャンネル8に戻されるのではなく、加熱源装置で再び所定温度にまで加熱した後に加熱チャンネル8に供給されるため、1回使用した加熱媒体Fは1回のみで次回にそのまま使用されることはなく、各押し出しノズル穴6の温度差の発生を防止できる。尚、前述の分割数nについてはn=4の場合について述べ、他のn=4以外については図示していないが、前述のように、n=6,8の場合についても実現可能である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明による樹脂造粒用ダイプレートは、あらゆる押出機のペレット造粒に適用できるものである。
【符号の説明】
【0021】
1 プレート本体
1a 周縁
A〜D 第1〜第4領域
1A ダイプレート
E 交差方向
F 加熱媒体
2 加熱媒体入口
3 加熱媒体出口
4 内側環状加熱通路
5 外側環状加熱通路
5A 外側壁
6 押し出しノズル穴
6A,6B,6C 第1〜第3列
7 ノズル穴群
8 加熱チャンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート本体(1)に設けられ溶融樹脂を押し出すための多数の押し出しノズル穴(6)と、前記押し出しノズル穴(6)を加熱するための多数の加熱チャンネル(8)と、前記各加熱チャンネル(8)を連通するための外側環状加熱通路(5)及び内側環状加熱通路(4)と、を備え、
前記各加熱チャンネル(8)間の前記各押し出しノズル穴(6)は、前記プレート本体(1)の円周方向と交差する交差方向(E)に沿って少なくとも3列配設され、前記加熱チャンネル(8)に流す所定温度の加熱媒体(F)は1回のみであり、前回供給し温度が前記所定温度より低下した加熱媒体(F)を次回には続いて供給しないことを特徴とする樹脂造粒用ダイプレート。
【請求項2】
前記プレート本体(1)の周縁(1a)には、前記内側環状加熱通路(4)に連通する加熱媒体出口(3)が、前記プレート本体(1)の大きさに応じて任意に選択される分割数n(n=4,6,8)に対して360/n度間隔で設けられていることを特徴とする請求項1記載の樹脂造粒用ダイプレート。
【請求項3】
前記プレート本体(1)の前記360/n度の範囲内には、前記3列の押し出しノズル穴(6)を有するノズル穴群(7)が複数個設けられ、前記複数個のノズル穴群(7)は、前記内側環状加熱通路(4)に形成された内側壁(4A)及び外側環状加熱通路に形成された外側壁(5A)によって前記内側環状加熱通路及び外側環状加熱通路が二分されていることを特徴とする請求項2記載の樹脂造粒用ダイプレート。
【請求項4】
前記プレート本体(1)の前記360/n度の範囲内には、前記外側環状加熱通路に一対の加熱媒体入口(2)が設けられていることを特徴とする請求項2又は3記載の樹脂造粒用ダイプレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−111891(P2013−111891A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261312(P2011−261312)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】