説明

樹脂部品係止部構造

【課題】主に、部品点数や取付工数を削減して、コストを下げることができるようにする。
【解決手段】インストルメントパネル4に対して、樹脂製のセンターコンソール1が、接続可能に配置され、インストルメントパネル4とセンターコンソール1との間に、相互に接続可能な接続部7,8が設けられ、インストルメントパネル4のセンターコンソール1に対する接続部7に、係止孔11が形成され、センターコンソール1のインストルメントパネル4に対する接続部8に、係止孔11へ挿入係止可能な係止部材12が取付けられた樹脂部品係止部構造であって、センターコンソール1のインストルメントパネル4に対する接続部8に、樹脂ヒンジ部21を介して、インストルメントパネル4に対する位置のバラ付きを吸収可能に取付片22が一体形成され、取付片22に、係止部材12が取付けられるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂部品係止部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネルが設けられている。
【0003】
また、車室内の運転席と助手席との間に、センターコンソールが設置されたものも存在している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、例えば、図6〜図9に示すように、センターコンソール1は、ほぼ車両前後方向2へ延びる長尺の樹脂成形物とされると共に、その前端部3は、インストルメントパネル4における車幅方向5のほぼ中央部6に接続される。
【0005】
そのために、インストルメントパネル4の車幅方向5の中央部6と、センターコンソール1の前端部3との間には、相互に接続可能な接続部7,8が設けられる。
【0006】
そして、インストルメントパネル4のセンターコンソール1に対する接続部7には、係止孔11が形成される。
【0007】
また、センターコンソール1のインストルメントパネル4に対する接続部8には、係止孔11へ挿入係止可能な係止部材12が取付けられる。
【0008】
ここで、センターコンソール1は、その後端部を基準として車室の床部(フロアパネル)に固定されるように構成されている。
【0009】
そのため、長尺の樹脂成形物であるセンターコンソール1の前端部3は、その位置にバラ付きが生じるのを避けることができず、このバラ付きの大きさによっては、接続部7,8での接続がうまくいかなくなるおそれがある。よって、センターコンソール1の前端部3に、樹脂爪などの係止部材12を一体形成して、直接接続を行わせるようなことは、構造上、回避されている。
【0010】
そこで、従来は、このバラ付きの影響を吸収して、接続をうまく行わせるために、センターコンソール1の前端部3の下面に、ほぼ下方へ向けてボス部15を突設し、このボス部15に、側面視ほぼく字状或いはフ字状に屈折された金属製の中間ブラケット16の上辺部をネジ17で固定し、この金属製の中間ブラケット16の下辺部に係止部材12をネジ18で固定するようにしていた。即ち、センターコンソール1の前端部3に、金属製の中間ブラケット16を介在させて、係止部材12を取付けることによって、バラ付きの影響を金属製の中間ブラケット16の屈折伸長で吸収させるようにしていた。この場合、係止部材12は、樹脂爪に比べて強い係止力が得られる金属製のクリップ部材などとされる。
【特許文献1】特開2000−43648
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記樹脂部品係止部構造では、長尺の樹脂成形物であるセンターコンソール1の前端部3の位置のバラ付きの影響を吸収するために、センターコンソール1の前端部3に、金属製の中間ブラケット16を介在させて、係止部材12を取付けるようにしていたので、部品点数や取付工数が多くなって、コストがかかるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明では、被取付部品に対して、樹脂製の取付部品が、接続可能に配置され、被取付部品と取付部品との間に、相互に接続可能な接続部が設けられ、被取付部品の取付部品に対する接続部に、係止孔が形成され、取付部品の被取付部品に対する接続部に、前記係止孔へ挿入係止可能な係止部材が取付けられた樹脂部品係止部構造において、取付部品の被取付部品に対する接続部に、樹脂ヒンジ部を介して、被取付部品に対する位置のバラ付きを吸収可能に取付片が一体形成され、該取付片に、前記係止部材が取付けられた樹脂部品係止部構造を特徴としている。
【0013】
請求項2に記載された発明では、前記被取付部品が、車室内前部に設置されるインストルメントパネルであり、前記取付部品が、ほぼ車両前後方向へ延びる長尺のセンターコンソールである請求項1記載の樹脂部品係止部構造を特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、被取付部品に対して、樹脂製の取付部品が、接続可能に配置され、被取付部品と取付部品との間に、相互に接続可能な接続部が設けられ、被取付部品の取付部品に対する接続部に、係止孔が形成され、取付部品の被取付部品に対する接続部に、前記係止孔へ挿入係止可能な係止部材が取付けられた樹脂部品係止部構造において、取付部品の被取付部品に対する接続部に、樹脂ヒンジ部を介して、被取付部品に対する位置のバラ付きを吸収可能に取付片が一体形成され、該取付片に、前記係止部材が取付けられたことにより、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、上記構成により、被取付部品と取付部品との接続部に位置のバラ付きがあっても、樹脂ヒンジ部によって、取付片の位置が自在に設定・調整されるので、取付片に取付けられた係止部材を、確実に係止孔へ挿入させることができる。これにより、被取付部品に対して取付部品の接続をうまく行わせることが可能となる。そして、金属製の中間ブラケットなどが不要となり、ネジ止め箇所も減らすことができるので、その分、部品点数や取付工数を削減して、コストを下げることが可能となる。
【0015】
請求項2の発明によれば、前記被取付部品が、車室内前部に設置されるインストルメントパネルであり、前記取付部品が、ほぼ車両前後方向へ延びる長尺のセンターコンソールであることにより、その後端部を基準として車室の床部(フロアパネル)に固定される長尺の樹脂成形物であるセンターコンソールを、前端部の位置のバラ付きに影響されることなく、インストルメントパネルへ接続することが可能となる。これにより、長尺で取扱いが難しいセンターコンソールの設置作業を大幅に容易化することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【実施例】
【0017】
図1〜図5は、この発明の実施例を示すものである。
【0018】
この実施例では、インストルメントパネルにセンターコンソールを接続する場合の例について説明する。
【0019】
なお、インストルメントパネルやセンターコンソールなどの構成については、図6などを用いて説明したものと基本的にほぼ同様なので、必要に応じてこれらの図面を参照すると共に、これらに対する記載を以てこの実施例の説明とすることができる。この際、同一ないし均等な部分については、同一の符号を付すようにしている。また、異なる構成については、図1〜図5に拠るものとする。
【0020】
まず、構成について説明する。
【0021】
自動車などの車両には、図6に示すように、車室内の前部にインストルメントパネル4(被取付部品。以下同様)が設けられている。また、車室内の運転席と助手席との間には、図1に示すような、センターコンソール1(取付部品。以下同様)が設置されている。
【0022】
そして、図6および図1に示すように、インストルメントパネル4に対して、樹脂製のセンターコンソール1が、接続可能に配置される。
【0023】
この場合、センターコンソール1は、ほぼ車両前後方向2へ延びる長尺の樹脂成形物とされると共に、その前端部3は、インストルメントパネル4における車幅方向5のほぼ中央部6に接続される。これにより、センターコンソール1は、インストルメントパネル4に対し、平面視ほぼT字状となるように接続されることとなる。
【0024】
なお、例えば、インストルメントパネル4における車幅方向5のほぼ中央部6には、センター機器設置部などが設けられている。このセンター機器設置部は、他の部分と比べて、側面視で車両前後方向2の後方へ向けて若干突出されるなどしている。また、例えば、センターコンソール1には、その前部にシフトレバー設置部1aなどが設けられ、中間部にカップホルダー1bやサイドブレーキレバー設置部1cなどが設けられ、後部にコンソールボックス1dなどが設けられている。
【0025】
そして、上記した接続のために、図5に示すように、インストルメントパネル4とセンターコンソール1との間には、相互に接続可能な接続部7,8が設けられる。
【0026】
この場合、インストルメントパネル4の車幅方向5の中央部6と、センターコンソール1の前端部3との間に、相互に接続可能な接続部7,8が設けられる。
【0027】
そして、インストルメントパネル4のセンターコンソール1に対する接続部7には、係止孔11が形成される。
【0028】
また、センターコンソール1のインストルメントパネル4に対する接続部8には、係止孔11へ挿入係止可能な係止部材12が取付けられる。
【0029】
この係止孔11と係止部材12とは、メイン取付点となるものである。この他に、サブメイン取付点なども適宜設けられる。
【0030】
ここで、センターコンソール1は、その後端部を基準として車室の床部(フロアパネル)に固定されるように構成されている。
【0031】
そのため、長尺の樹脂成形物であるセンターコンソール1は、その前端部3の位置にバラ付きが生じるのを避けることができず、このバラ付きの大きさによっては、接続部7,8での接続がうまくいかなくなるおそれがある。よって、センターコンソール1の前端部3に、樹脂爪などの係止部材12を一体形成して、直接接続を行わせるようなことは、構造上、回避されている。
【0032】
そして、以上のような基本構成に対し、この実施例のものでは、上記したバラ付きの影響を吸収して、接続をうまく行わせられるようにするために、センターコンソール1のインストルメントパネル4に対する接続部8に、樹脂ヒンジ部21を介して、インストルメントパネル4(被取付部品)に対する位置のバラ付きを吸収可能に取付片22が一体形成される。即ち、樹脂ヒンジ部21および取付片22は、センターコンソール1と一体成形される。
【0033】
ここで、樹脂ヒンジ部21および取付片22は、図2〜図4に示すように、センターコンソール1の前端部3の上縁部に設けられた横桟部23における車幅方向5のほぼ中央部に設けられる。即ち、樹脂ヒンジ部21および取付片22は、インストルメントパネル4側の係止孔11とほぼ対応する位置に設けられる。なお、構造的には、接続部8を構成する横桟部23が、センターコンソール1とは別体に形成される場合も有り得るので、この場合には、樹脂ヒンジ部21および取付片22は、横桟部23と一体成形されることになる。
【0034】
そして、樹脂ヒンジ部21は、車幅方向5へ延びる多重の薄肉部24,25を有するものなどとする。この場合、薄肉部は、二重とされているが、三重以上としても良い。但し、薄肉部24,25を多重化する程、樹脂ヒンジ部21の自由度が上がるため、位置調整能力は向上する反面、支持強度や保形性などが低下するので、樹脂ヒンジ部21は、二重程度とするのが実用的には好ましい。また、取付片22は、この薄肉部24,25の先端に設ける。この取付片22は、非取付状態で、車両前後方向2のほぼ前方へ向くように延設されている。取付片22は、二又板状などとしても、取付孔を有する有孔板形状などとしても良い。
【0035】
この取付片22に対して、図5に示すように、係止部材12が取付けられる。この場合、係止部材12は、樹脂爪に比べて強い係止力が得られる金属製のクリップ部材などとされる。この係止部材12は、ネジ18で取付片22に固定される。
【0036】
次に、この実施例の作用について説明する。
【0037】
インストルメントパネル4とセンターコンソール1を接続する場合、センターコンソール1の前端部3に一体形成された取付片22に、予めネジ18を用いて係止部材12を取付けておく。この際のネジ止め箇所は1箇所となる。
【0038】
次に、車室に先に設置されているインストルメントパネル4に対し、センターコンソール1を所要の位置に配置する。
【0039】
そして、インストルメントパネル4の車幅方向5の中央部6に対し、センターコンソール1の前端部3を接続する。即ち、センターコンソール1の取付片22に取付けられた係止部材12を、インストルメントパネル4の対応する係止孔11へ挿入係止させるようにする。
【0040】
その後、センターコンソール1の後端部を車室の床部(フロアパネル)に固定する。
【0041】
この際、車室の床部(フロアパネル)への固定は、センターコンソール1の後端部が基準となる。そのために、センターコンソール1の前端部3は、位置のバラ付きによってうまく合わなくなり、係止部材12が係止孔11から外れたり、係止部材12が係止孔11へ過剰に押込まれたりするなどの可能性があるが、センターコンソール1に設けられた樹脂ヒンジ部21が変形することによって、係止部材12の位置が調整される。即ち、樹脂ヒンジ部21が、位置のバラ付きを吸収する。
【0042】
なお、センターコンソール1の後端部を車室の床部(フロアパネル)に固定した後で、インストルメントパネル4の車幅方向5の中央部6に対し、センターコンソール1の前端部3を接続するような手順を採用した場合でも、同様に、樹脂ヒンジ部21によって、上記したセンターコンソール1の前端部3の位置のバラ付きを吸収することができる。
【0043】
このように、この実施例によれば、インストルメントパネル4(被取付部品)に対して、樹脂製のセンターコンソール1(取付部品)が、接続可能に配置され、インストルメントパネル4とセンターコンソール1との間に、相互に接続可能な接続部7,8が設けられ、インストルメントパネル4のセンターコンソール1に対する接続部7に、係止孔11が形成され、センターコンソール1のインストルメントパネル4に対する接続部8に、係止孔11へ挿入係止可能な係止部材12が取付けられた樹脂部品係止部構造において、センターコンソール1のインストルメントパネル4に対する接続部7に、樹脂ヒンジ部21を介して、インストルメントパネル4に対する位置のバラ付きを吸収可能に取付片22が一体形成され、取付片22に、係止部材12が取付けられたことにより、以下のような作用効果を得ることができる。
【0044】
即ち、上記構成により、インストルメントパネル4(被取付部品)とセンターコンソール1(取付部品)との接続部7,8に位置のバラ付きがあっても、樹脂ヒンジ部21によって、取付片22の位置が自在に設定・調整されるので、取付片22に取付けられた係止部材12を、確実に係止孔11へ挿入させることができる。
【0045】
これにより、インストルメントパネル4(被取付部品)に対してセンターコンソール1(取付部品)の接続をうまく行わせることが可能となる。
【0046】
そして、金属製の中間ブラケットなどが不要となり、ネジ止め箇所も減らすことができるので、その分、部品点数や取付工数を削減して、コストを下げることが可能となる。
【0047】
なお、樹脂ヒンジ部21を、多重の薄肉部24,25を有するものとすることにより、前後方向や上下方向などの多方向に対する位置のバラ付きを吸収することが可能となるため、位置調整をより自由度なものとすることができる。
【0048】
また、被取付部品が、車室内前部に設置されるインストルメントパネルであり、取付部品が、ほぼ車両前後方向2へ延びる長尺のセンターコンソール1であることにより、その後端部を基準として車室の床部(フロアパネル)に固定される長尺の樹脂成形物であるセンターコンソール1を、前端部の位置のバラ付きに影響されることなく、インストルメントパネルへ接続することが可能となる。
【0049】
これにより、長尺で取扱いが難しいセンターコンソール1の設置作業を大幅に容易化することが可能となる。
【0050】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施例にかかるセンターコンソールの斜視図である。
【図2】図1の接続部の拡大斜視図である。
【図3】図2の部分拡大斜視図である。
【図4】図3の側方断面図である。
【図5】本発明の実施例にかかる樹脂部品係止部構造の部分拡大側方断面図である。
【図6】従来例にかかるインストルメントパネルとセンターコンソールとの関係を示す分解斜視図である。
【図7】図6のセンターコンソールの接続部を後方から見た拡大斜視図である。
【図8】従来例にかかる樹脂部品係止部構造の図である。
【図9】図8の分解図である。
【符号の説明】
【0052】
1 センターコンソール(取付部品)
2 車両前後方向
4 インストルメントパネル(被取付部品)
7 接続部
8 接続部
11 係止孔
12 係止部材
21 樹脂ヒンジ部
22 取付片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部品に対して、樹脂製の取付部品が、接続可能に配置され、
被取付部品と取付部品との間に、相互に接続可能な接続部が設けられ、
被取付部品の取付部品に対する接続部に、係止孔が形成され、
取付部品の被取付部品に対する接続部に、前記係止孔へ挿入係止可能な係止部材が取付けられた樹脂部品係止部構造において、
取付部品の被取付部品に対する接続部に、樹脂ヒンジ部を介して、被取付部品に対する位置のバラ付きを吸収可能に取付片が一体形成され、
該取付片に、前記係止部材が取付けられたことを特徴とする樹脂部品係止部構造。
【請求項2】
前記被取付部品が、車室内前部に設置されるインストルメントパネルであり、前記取付部品が、ほぼ車両前後方向へ延びる長尺のセンターコンソールであることを特徴とする請求項1記載の樹脂部品係止部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−273341(P2008−273341A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117838(P2007−117838)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】