説明

橋梁の片持架設工法における柱頭部の施工方法

【課題】片持架設工法における柱頭部の施工に際し、ブラケット支保工を使用することなく、低コストでより安全で、工期を短くすることができる柱頭部施工方法の提供。
【解決手段】橋梁の片持架設工法により架設される橋梁の、柱真上部位13Aとその両側に一体に張出された張出部位13Bとからなる柱頭部13を構築するに当たり、先に施工されている脚頭部10a上に、橋脚真上部位13Aをコンクリート施工によって形成し、その橋脚真上部13Aの両側面に張出基端部用の波型鋼製ウエブ20を突設し、その波型鋼製ウエブ20に支持させて仮設梁30を設置し、その仮設梁30に張出部位13Bを形成するための荷重を受け持たせて張出部位13Bを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の片持架設工法、即ち、橋脚上端の脚頭部上に設置した柱頭部側面より片持梁を所定長さずつ延長させる方式の橋梁架設工法において、その柱頭部を簡易に形成することができる橋梁の片持架設工法における柱頭部の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、橋梁の片持仮設工法は、図11に示すように、橋脚1上に、橋脚真上部位2aとその両側に所定長さだけ張出した張出部位2b,2bとからなる柱頭部2を構築し、その上に左右2台の張出架設作業車(ワーゲン)3,3をそれぞれ載置し、該ワーゲン3,3から垂下させた吊り材4に支持させて所定長さ分の吊り足場5,5を吊り持ちさせ、該足場5,5に1張り出し作業長さ分のコンクリート荷重を受け持たせるようにしている(例えば特許文献1)。
【0003】
この種の従来工法では、柱頭部の構築に際し、図12に示すように橋脚1の脚頭部外周に、鋼製のブラケット6a上に足場6bを組み立てたブラケット支保工6を固定し、該ブラケット支保工6に張出部位2bのコンクリート荷重を受け持たせるようにしている。
【0004】
この他、上述したブラケット支保工を使用しない工法として、左右2台のワーゲンの幅を違えておき、両ワーゲンを橋梁幅方向に互いに隣り合って設置できる構造とし、張出部位構築の際のブラケット支保工を不要とする技術が開発されている(特許文献2)。
【特許文献1】特公平7−39644号公報
【特許文献2】特開2004−218316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のブラケット支保工を使用する工法では、構築される柱頭部は、その上に左右2台のワーゲンが載置できるだけの長さが必要なため、ブラケット支保工もそれに耐えるだけの強度と大きさが必要であり、それ自体の製造コストが高く、しかも大重量のブラケット支保工の高所への取り付け作業及び解体作業に多大の労力と時間を要し、かつ大きな危険を伴うという問題があった。
【0006】
上述した特許文献2に示されている発明においては、柱頭部の両張出部位を支持させるためのブラケット支保工は不要であるが、ワーゲンの構造が特殊なものとなってコスト高となるという問題がある。
【0007】
本発明は上述の如き従来の問題に鑑み、片持架設工法における柱頭部の施工に際し、ブラケット支保工を使用することなく構築が可能であり、しかも、その後の張出施工に使用するワーゲンも特殊な構造とすることなく、従来多用されているものを使用できて、低コストでより安全で、工期も短くすることができる片持架設工法における柱頭部の施工方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、橋梁の片持架設工法により架設される橋梁の、柱真上部位と該柱真上部位の両側に一体に張出された張出部位とからなる柱頭部を構築するに当たり、先に施工されている脚頭部上に、前記柱頭部を構成する橋脚真上部位をコンクリート施工によって形成し、該橋脚真上部の両側面に張出基端部用の波型鋼製ウエブを突設し、該波型鋼製ウエブに支持させて仮設梁を設置し、該仮設梁に前記張出部位を形成するための荷重を受け持たせて前記張出部位を形成することにある。
【0009】
請求項2に記載の発明の特徴は、前記請求項1の構成に加え、前記張出基端部用の波型鋼製ウエブを橋脚真上部位の両側面に突設した後、該両張出基端部用の波型鋼製ウエブの基端部上面部位間をPC緊張材により緊張することにある。
【0010】
請求項3に記載の発明の特徴は、前記請求項2の構成に加え、前記張出基端部用の波型鋼製ウエブの橋脚真上部位側端部には、該橋脚真上部位の側面に当接する接合板を一体に備えるとともに上フランジを前記該接合板上端より更に橋脚真上部位側に突出させ、その上フランジ突出部の下面を先に施工されている橋脚真上部位の上面に当接させ、該上フランジ突出部の上面にPC緊張材定着用のブラケットを備え、該ブラケットに前記PC緊張材の端部を定着させることにある。
【0011】
請求項4に記載の発明の特徴は、前記請求項1,2又は3のいずれか1の請求項の構成に加え、仮設梁に前記張出部位を形成するための作業足場を吊り下げ支持させた後、該張出基端部用の波型鋼製ウエブの先端に別の波型鋼板ウエブを連結して必要な張出部位長さの張出部位用の波型鋼製ウエブとなし、該波型鋼製ウエブの上フランジと一体に上床版を、下フランジと一体に下床版をそれぞれコンクリート施工することにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、請求項1に記載の如く、先に施工されている脚頭部上に、前記柱頭部を構成する橋脚真上部位をコンクリート施工によって形成し、該橋脚真上部の両側面に張出基端部用の波型鋼製ウエブを突設し、該波型鋼製ウエブに支持させて仮設梁を設置し、該仮設梁に前記張出部位を形成するための荷重を受け持たせて前記張出部位を形成するようにしたことにより、従来のような大掛かりなブラケット支保工の製造、組み立て脚頭部への取り付け解体の作業が不要となり、これらの従来作業に代わって、柱頭部の張出部位の補強鋼材となりうる鋼製梁を橋脚真上部位に張出すのみで、ブラケットに代えることが可能となり、張出部位形成のための足場構造が簡略化され、コストが削減されるとともに工期も短縮できる。
【0013】
請求項2の如く、張出基端部用の波型鋼製ウエブを橋脚真上部位の両側面に突設した後、該両張出基端部用の波型鋼製ウエブの基端部上面部位間をPC緊張材により緊張することにより波型鋼製ウエブにかかる下向き荷重をPC緊張材の張力によって受け持たせることができることとなり、橋脚真上部位と波型鋼製ウエブとの連結部位に高い連結強度が要求されず、このため、連結部位の構造が簡略化され、作業性が良くなるとともにコストが削減される。
【0014】
請求項3の如く、張出基端部用の波型鋼製ウエブの橋脚真上部位側端部には、該橋脚真上部位の側面に当接する接合板を一体に備えるとともに上フランジを前記該接合板上端より更に橋脚真上部位側に突出させ、その上フランジ突出部の下面を先に施工されている橋脚真上部位の上面に当接させ、該上フランジ突出部の上面にPC緊張材定着用のブラケットを備え、該ブラケットに前記PC緊張材の端部を定着させるようにすることにより、張出基端部用の波型鋼製ウエブと橋脚真上部位との接合構造が簡易で、高い強度を有するものとできる。
【0015】
更に、請求項4の如く、仮設梁に前記張出部位を形成するための作業足場を吊り下げ支持させ後、前記該張出基端部用の波型鋼製ウエブの先端に別の波型鋼板ウエブを連結して必要な張出部位長さの張出部位用の波型鋼製ウエブとなし、該波型鋼製ウエブの上フランジと一体に上床版を、下フランジと一体に下床版をそれぞれコンクリート施工することにより、必要長さの張出部位が簡易に構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明の実施の形態を図1〜図10に示した実施例に基づいて説明する。図1及び図2は本発明によって形成される柱頭部の概略をしめしている。図において符号10は橋脚であり、10aは橋脚上端の脚頭部、13は脚頭部10a上に支持され、片持架設工法により架設する橋梁の基端部を構成する柱頭部である。本発明方法では、柱頭部13の施工に際し、橋脚真上部位13Aとその両側に張出される張出部位13B,13Bとを別々に構築する。
【0017】
橋脚真上部位13Aの施工に際しては、先ず図3に示すように、脚頭部10aの上方周囲に橋脚真上部形成のための足場14を組み、これに支持させて型枠15を組み立て、必要な配筋を施し、場所打ちコンクリートを打設する。この足場14は、橋脚10の上端の脚頭部10aを構築する際に使用したものの上に必要な高さ分だけ積み上げて組み立てる。
【0018】
このようにして橋脚真上部位13Aを構築する際に、張出基端部用の波型鋼製ウエブ(以下、基端波型鋼製ウエブと記す)20橋脚真上部位13Aの両側面に取り付ける。この基端波型鋼製ウエブ20は、図2、図7〜図9に示すように、鋼製の波型鋼板21の上縁に鋼製の上フランジ22aが、下縁に同じく鋼製の下フランジ22bが一体に備えられたものを使用している。
【0019】
基端波型鋼製ウエブ20の橋脚真上部位13A側の端部には、背面が波型鋼板21の端部に一体化され、上下が上下フランジ22a,22bに一体化された縦向きフランジ23が備えられ、その縦向きフランジ23の前面両縁及び上下フランジ22a,22bの対向面間に一体化された一対のアンカープレート24,24が備えられている。
【0020】
このアンカープレート24,24には多数の貫通孔25,25……が開口されており、図には詳示してないがこの貫通孔25内に橋脚真上部位13A内の鉄筋が通され、これによって基端波型鋼製ウエブ20を橋脚真上部位13Aと一体化させている。
【0021】
上フランジ22aはこのアンカープレート24,24より更に前面側に延長され、対橋脚真上部位上面接合板26となっている。そして、該接合板26の上面に後述するPC緊張材の緊張定着用のブラケット27が突設されている。
【0022】
基端波型鋼製ウエブ20の橋脚真上部位13Aに対する連結は、前述したアンカープレート24,24を橋脚真上部位13A側面に埋め込むとともに、水平向きの接合板26を橋脚真上部位13Aの上面に当接させる。そして橋脚真上部位13Aのコンクリートの固化後、橋脚真上部位13Aの両側面の基端波型鋼製ウエブ20,20の両ブラケット27,27間にPC緊張材28を掛け渡し、これを緊張し、定着金具29,29を介して両ブラケット27,27に定着させる。
【0023】
尚、本例では橋脚真上部位13Aの構築作業時に基端波型鋼製ウエブ20を突設する作業を行うこととしているが、橋脚真上部位13Aのコンクリート施工完了後に、その両側面に基端波型鋼製ウエブ20を突設し、同様にPC緊張材28によって緊張するようにしてもよい。
【0024】
このようにして橋脚真上部位13Aの構築及び基端波型鋼製ウエブ20の突設作業が完了した後、張出部位13B,13Bを構築する。張出部位13B,13Bの施工に際しては、先ず図4に示すように両基端波型鋼製ウエブ20の先端部に支持させて仮設梁30を設置する。次いで仮設梁30に支持させてワーゲン下段作業足場31,31を、吊り材32,32……をもって吊り下げる。この足場31,31を使用して基端波型鋼製ウエブ20の先端に延長用波型鋼製ウエブ33,33を連結し、張出部位13B,13Bに必要な長さに波型鋼製ウエブを延長させる。
【0025】
この延長作業は、図1に示すように基端波型鋼製ウエブ20の先端に延長用波型鋼製ウエブ33を1又は複数枚連結して延長するものであり、その連結は、従来の波型鋼製ウエブの連結と同様に行うことができるが、本例では、図10に示すように、互いに延長配置に接合される波型鋼製ウエブ間において、接合される両上フランジ22a,22a間及び両下フランジ22b,22b間に跨らせて添接板34,34を当て、これにボルト35,35……を貫通させて締結することによって行う。
【0026】
鋼製波型鋼製ウエブを両張出部位13B,13Bに必要な長さに延長させた後、前記各吊り材32に支持させて上床版40及び下床版41用の型枠42,43を組み、コンクリートを打設して上下の床版40,41をコンクリート形成することにより両張出部位13B、13Bを構築する。
【0027】
このようにして両張出部位13B,13Bを構築後、図5に示すように柱頭部13上に2台の内の一方のワーゲン45を載置し、このワーゲン45に、仮設梁30に吊り下げられている一方のワーゲン下段作業足場31を吊り変え、しかる後図6に示すようにワーゲン45を柱頭部13の張出部位13B上に移動させる。一方のワーゲンの移動作業の後、他方のワーゲン45も同様にして吊り変え作業及び移動作業を行い、両張出部位からの片持架設を開始する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明方法によって形成される柱頭部の概略を示す縦断面図である。
【図2】同上の片側のみを示す斜視図である。
【図3】本発明方法における柱頭部の橋脚真上部位を形成する工程を示す縦断面図である。
【図4】本発明方法における柱頭部の張出部位を形成する工程を示す縦断面図である。
【図5】本発明方法における柱頭部形成後にワーゲンにて吊り変える工程を示す縦断面図である。
【図6】本発明方法における柱頭部形成後ワーゲンにて片持架設する工程を示す縦断面図である。
【図7】本発明方法における橋脚真上部位から基端波型鋼製ウエブを突設した状態の部分省略側面図である。
【図8】同上の部分平面図である。
【図9】図8中のA−A線断面図である。
【図10】本発明方法における基端波型鋼製ウエブと延長用波型鋼製ウエブとの連結状態を示す側面図である。
【図11】従来の橋梁片持架設工法の概略を示す側面図である。
【図12】同上の柱頭部形成工程をしめす縦断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 橋脚
10a 脚頭部
13 柱頭部
13A 橋脚真上部位
13B 張出部位
14 足場
15 型枠
20 基端波型鋼製ウエブ
21 波型鋼板
22a 上フランジ
22b 下フランジ
23 縦向きフランジ
24 アンカープレート
25 貫通孔
26 対橋脚真上部位上面接合板
27 ブラケット
28 PC緊張材
29 定着金具
30 仮設梁
31 ワーゲン下段作業足場
32 吊り材
33 延長用波型鋼製ウエブ
34 添接板
35 ボルト
40 上床版
41 下床版
42 型枠
45 ワーゲン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の片持架設工法により架設される橋梁の、柱真上部位と該柱真上部位の両側に一体に張出された張出部位とからなる柱頭部を構築するに当たり、先に施工されている脚頭部上に、前記柱頭部を構成する橋脚真上部位をコンクリート施工によって形成し、該橋脚真上部の両側面に張出基端部用の波型鋼製ウエブを突設し、該波型鋼製ウエブに支持させて仮設梁を設置し、該仮設梁に前記張出部位を形成するための荷重を受け持たせて前記張出部位を形成することを特徴としてなる橋梁の片持架設工法における柱頭部の施工方法。
【請求項2】
前記張出基端部用の波型鋼製ウエブを橋脚真上部位の両側面に突設した後、該両張出基端部用の波型鋼製ウエブの基端部上面部位間をPC緊張材により緊張する請求項1に記載の橋梁の片持架設工法における柱頭部の施工方法。
【請求項3】
前記張出基端部用の波型鋼製ウエブの橋脚真上部位側端部には、該橋脚真上部位の側面に当接する接合板を一体に備えるとともに上フランジを前記該接合板上端より更に橋脚真上部位側に突出させ、その上フランジ突出部の下面を先に施工されている橋脚真上部位の上面に当接させ、該上フランジ突出部の上面にPC緊張材定着用のブラケットを備え、該ブラケットに前記PC緊張材の端部を定着させる請求項2に記載の橋梁の片持架設工法における柱頭部の施工方法。
【請求項4】
前記仮設梁に前記張出部位を形成するための作業足場を吊り下げ支持させた後、該張出基端部用の波型鋼製ウエブの先端に別の波型鋼板ウエブを連結して必要な張出部位長さの張出部位用の波型鋼製ウエブとなし、該波型鋼製ウエブの上フランジと一体に上床版を、下フランジと一体に下床版をそれぞれコンクリート施工する請求項1〜3の何れか1の請求項に記載の橋梁の片持架設工法における柱頭部の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−231706(P2008−231706A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69771(P2007−69771)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年9月20日 社団法人 プレストレストコンクリート技術協会発行の「第15回プレストレストコンクリートの発展に関するシンポジウム論文集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年10月1日 株式会社 ピーエス三菱発行の「技報 第4号」に発表
【出願人】(000112196)株式会社ピーエス三菱 (181)
【Fターム(参考)】