説明

橋梁・鉄骨・コンクリート構造物に付着した塩分を除去する方法及び装置

【課題】橋梁に付着した塩分を確実に除去する。
【解決手段】粒径が200nm以下のナノバブルを多数含む微細気泡を含むナノバブル水を貯留したタンク14を用意し、該タンク内のナノバブル水をポンプ16によって加圧してノズル18から、塩分が付着した橋梁の表面に吹きつけるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冬期に使用される道路の凍結防止剤に含まれる塩分による橋梁等の塩害を防止するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
寒冷地においては、寒冷期に路面の凍結防止のため凍結防止剤を路面に散布する(例えば、特許文献1)。
【0003】
この凍結防止剤には、塩分が多量に含まれているために、路面や、路面に沿った構造物に塩害が生じる。特に問題となるのは橋梁である。橋梁は、一般的にコングリートによる橋脚等の基礎部分と、その上の鉄骨構造部分とからなり、いずれの部分も塩分が多く付着したままだと、当該橋梁の寿命を縮める。
【0004】
従って、この橋梁に付着した凍結防止剤、特に、その塩分の除去が必要となる。この塩分の除去には、通常、水道水をポンプにて高圧状態で橋梁に吹き付け、該橋梁の表面に付着した塩分の除去を行う。
【0005】
しかし、このような従来の塩分除去方法では、十分には塩分の除去が行われず、従って、その改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−81929号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、橋梁に付着した塩分を除去するのに有効な方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
橋梁等の構造物に付着した塩分を除去する方法において、
粒径が約100nmをピーク(最大量)とするナノバブルを多数(1ミリリッター当たり200万個以上)含むナノバブル水を貯留したタンクを用意し、
該タンク内のナノバブル水をポンプによって加圧してノズルから、塩分が付着した橋梁の表面に吹きつけるようにしたことを特徴とする橋梁に付着した塩分を除去する方法を提供する。
【0009】
粒径が100nm以下のナノバブルを多数含む微細気泡を含むナノバブル水を橋梁の表面に高圧で吹き付けた結果、同様の条件で水道水を吹き付けた場合に比べて、大幅な塩分除去効果を得ることが可能となる。
【0010】
具体的には、ナノバブル発生装置によってナノバブル水を作り、該ナノバブル水を該タンクに貯留することができる。一般的には、ナノバブル水に含まれる数百ナノメートルのナノバブルは、短時間のうちに消失してしまうと考えられるが、本願発明者は、粒径が200nm以下のナノバブルが長期間にわたって水中に保持されることを検証し、これに基づき、ナノバブル発生装置で作ったナノバブル水を、タンクに貯留するようにし、ナノバブル生成装置がないところでもナノバブルの利用を可能としたものである。
【0011】
具体的には、ナノバブル水中のナノバブルの平均粒径が、100nm〜200nmとなるようにすることが好ましい。
【0012】
上記ナノバブル水のナノバブルは、粒径が200nm以下のナノバブルの個数が全微細気泡の個数の80%以上であるようにすることができる。
【0013】
ナノバブル水における該微細気泡の含有率は、10〜15体積%とすることができる。
【0014】
本発明はまた、
橋梁に付着した塩分を除去するための装置であって、
粒径が200nm以下のナノバブルを多数含む微細気泡を含むナノバブル水を貯留したタンクと、
該タンクから延びるナノバブル水放出ホースであって、先端に、放出ノズルを備えるナノバブル水放出ホースと、
該タンクのナノバブル水を加圧して該ナノバブルを加圧し、該ナノバブル水放出ホースを通し、該放出ノズルから放出するためのポンプと
を備える橋梁に付着した塩分を除去する装置を提供する。
【0015】
この装置は、上述の如き粒径のナノバブルを多数含むナノバブル水においては、そのナノバブルの消失が時間のかかるものであることに基づき、ナノバブル生成装置が無い場所でもナノバブル水の利用を可能にしたものである。
【0016】
本願発明者の研究によれば、本発明におけるナノバブルは、常温・常圧化で塩分の主要成分であるNaClと接触することでNaClを針状結晶化することを究明おり、このNaClの針状結晶化により塩分を効率的に除去できるものと考えられる。
【0017】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る橋梁の塩分除去装置の概要を示す図である。
【図2】本発明に係る装置及び従来の装置を用いた塩分除去試験の結果を示す効果確認試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明に係る橋梁等の構造物に付着した塩分を除去するための装置10を示している。
【0020】
該装置は、トラック等の車両12と、該車両の荷台の上に取り付けられてナノバブル水を貯留するためのタンク14と、該タンク内のナノバブル水を加圧して放出するためのポンプ16と、該ポンプによって加圧されたナノバブル水を構造物に向けて噴出するためのノズル18を備えるホース20とを有している。図示の例では、ポンプから延びるホースの先端にノズル18を備えるスプレーガン22が取り付けられている。
【0021】
図示の実施形態においては、ナノバブル水は、空気の微細な粒子を多数含ませたものであり、好ましくは、粒径が約100nmを最大数量として微小気泡を1ミリリッター当たり200万個以上含み、200nm以下の微細気泡の個数が全微細気泡の個数の80%以上、平均粒径が100nm〜200nm、微細気泡の含有率が10〜15体積%とされ、例えば株式会社協和機設が製造販売しているナノバブル生成装置(商標名「バヴィタス」)によって生成することができる。
【0022】
タンク14は、ナノバブル発生装置によって生成したナノバブル水を常温にて貯留するものである。ポンプは通常の水道水による橋脚等の洗浄の際に用いるものと同じもので、ノズル18からの放水圧を7〜10MPa,好ましくは、約8MPaとすることができるものである。
【0023】
橋梁に付着した塩分除去作業に当たっては、橋梁等の構造物の壁面から2〜3メートル程度離れた位置からノズル18を通してナノバブル水の放出を行う。
【0024】
以上の装置を用いて実際の橋脚部分の壁面に対する効果確認試験を行った。
【0025】
試験方法は次の通りである。
橋脚部分の壁面に対し、地面から一定高さで、壁面の塩分濃度が略同じ条件の、一定長さの領域に対して、ナノバブル水と通常の水道水を、その長さ方向に沿って往復を繰り返しながら吹き付けた。また、この試験は、試験前の塩分濃度が異なる2つの場所(山口県にある高根橋、妙見橋)を選んで行った。第1の場所では、1メートルの長さの領域を一往復時間1.6秒で、第2の場所では6メートルの長さの領域を一往復時間10秒で行った。
【0026】
図2は、その試験結果を示す。この結果から分かるように、水道水を用いて洗浄した場合、2回目以降の吹きつけによっては、ほとんど洗浄効果が得られないのに対して、ナノバブル水を用いて洗浄した場合には2回目以降の吹きつけでも確実に塩分濃度の低下効果が得られることが分かる。本願発明者の研究によれば、本発明におけるナノバブルは、常温・常圧化で塩分の主要成分であるNaClと接触することでNaClを針状結晶化することを究明している。本発明に係る方法において水道水を吹き付けた場合に比べて、塩分を効率的に除去できるのはこのようなNaClの結晶化が生じることが一因と考えられる。
【符号の説明】
【0027】
塩分除去装置10;車両12;タンク14,ポンプ16,ノズル18,ホース20


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物表面に付着した塩分を除去する方法において、
粒径が100nmを最大数量として微小気泡を1ミリリッター当たり200万個以上含むナノバブル水を貯留したタンクを用意し、
該タンク内のナノバブル水をポンプによって加圧してノズルから、塩分が付着した構造物の表面に吹きつけるようにしたことを特徴とする構造物に付着した塩分を除去する方法。
【請求項2】
構造物を橋梁とする請求項1に記載の構造物に付着した塩分を除去するための方法。
【請求項3】
ナノバブル発生装置によってナノバブル水を作り、
該ナノバブル水を該タンクに貯留するようにした請求項1又は2に記載の構造物に付着した塩分を除去する方法。
【請求項4】
該ナノバブル水中のナノバブルの平均粒径が、100nm〜200nmとなるようにした請求項1乃至3のいずれかに記載の構造物に付着した塩分を除去する方法。
【請求項5】
粒径が200nm以下のナノバブルの個数が全微細気泡の個数の80%以上である請求項1乃至4のいずれかに記載の構造物に付着した塩分を除去する方法。
【請求項6】
該ナノバブル水における該微細気泡の含有率が、10〜15体積%である請求項1乃至5のいずれかに記載の構造物に付着した塩分を除去する方法。
【請求項7】
構造物に付着した塩分を除去するための装置であって、
粒径が100nmを最大数量として微小気泡を1ミリリッター当たり200万個以上含むナノバブル水を貯留したタンクと、
該タンクから延びるナノバブル水放出ホースであって、先端に、放出ノズルを備えるナノバブル水放出ホースと、
該タンクのナノバブル水を加圧して該ナノバブルを加圧し、該ナノバブル水放出ホースを通し、該放出ノズルから放出するためのポンプと
を備える構造物に付着した塩分を除去する装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−281124(P2010−281124A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135968(P2009−135968)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(507297400)西日本高速道路メンテナンス中国株式会社 (5)
【出願人】(507175843)株式会社協和機設 (8)
【Fターム(参考)】