説明

機器の制御装置

【課題】1台のポッティング注入機で生産性を向上させる制御装置を提供すること。
【解決手段】第一の制御装置本体6aを内装する第一の保護ケース22aと、第二の制御装置本体6bを内装する第二の保護ケース22bと、制御装置本体6a、6bに設けられレンズ部を有する複数の発光ダイオード15a〜15dとを備え、第一の保護ケース22aと第二の保護ケース22bは隣接して段差を付けて形成し、その第一の境界壁28に切り欠き部16を形成し、この切り欠き部16の上端面は、発光ダイオードのレンズ部の下端面より低くした構成としたものである。これによって、発光ダイオードの視認性を確保でき、また、1台のポッティング注入機で防湿ポッティング材を注入できることとなり、安価に生産性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転を制御する制御装置本体をポッティング材で防湿処理した機器の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の制御装置、特に、洗濯機などの水使用機器に搭載される制御装置は、プリント配線板に、スイッチや発光ダイオード(LED)などの各種電子部品を実装しており、これらの防水性を得るために、各種電子部品の導体部表面にウレタン樹脂等よりなるポッティング材にて防水処理を行なっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は特許文献1に記載された洗濯機に搭載された従来の機器の制御装置の縦断面図、図7は同制御装置へのポッティング注入方式を示す断面図、図8は機器の代表例である洗濯機の概略外観図、図9は、同制御装置を洗濯機に搭載した要部横断面図を示すものである。
【0004】
図6において、筐体1の上部には、上部筐体4が固着されており、上部筐体4の前部には、トップカバー2が設けられ、このトップカバー2には操作部3が形成されている。
【0005】
トップカバー2と上部筐体4で構成した空間部13には、運転を制御する制御装置本体6を内装する保護ケース5が配置されている。保護ケース5は浅底の有底略矩形状をしており、底部は平坦に形成している。制御装置本体6は、配線パターンを形成したプリント配線板20にスイッチ12や電子部品14等を実装し、ネジ(図示せず)により保護ケース5に固着されている。
【0006】
保護ケース5の内面には、凸部21a、21bが形成され、制御装置本体6との間に隙間が設けられている。また、保護ケース5内において、制御装置本体6のプリント配線板20の表面、裏面および側面は、ウレタン樹脂などよりなる防湿ポッティング材8で覆われ、保護ケース一体型制御装置10を構成している。
【0007】
図7は、従来の機器の制御装置へのポッティング注入方式を示す断面図であるが、一般的には、加熱して液状にした防湿ポッティング材8を、ポッティング注入機9により、制御装置本体6の上部から注入した後、冷却して硬化させる。
【0008】
図8は、機器の代表例である洗濯機の概略外観図であるが、最近では、ソフトなイメージのデザインが好まれる傾向にあり、前面部を丸い曲面形状としている。そのため、筐体1は丸みを帯びており、トップカバー2もそれに合わせて円弧状となっている。
【0009】
図9は、従来の機器の制御装置を洗濯機に搭載した要部横断面図であるが、保護ケース5は、保護ケース5aと保護ケース5bが一体に形成されており、保護ケース5bは、前記トップカバー2の円弧状の形状に対応するために、保護ケース5aに対して、隣接して段差を付けて低い位置に形成されており、両方とも浅底の有底略矩形状をしている。そして、制御装置本体6も、制御装置本体6aと制御装置本体6bとに分かれており、制御装置本体6aは保護ケース5aに、制御装置本体6bは保護ケース5bに内装されている。また、制御装置本体6a側は、防湿ポッティング材8aが充填され、制御装置本体6b側は防湿ポッティング材8bが充填されている。
【0010】
防湿ポッティング材8aと8bは、発光素子、端子、レンズで構成される発光ダイオード(LED)15a、15b、15cと15dのレンズの下端面以下まで充填され、視認性を損なわないように構成してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−315993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記従来の構成では、防湿ポッティング材8は、保護ケース5内で注入量の異なる防湿ポッティング材8a部と、防湿ポッティング材8b部との2箇所となるため、ポッティング注入機が2台必要となる。
【0013】
ポッティング注入機9は、通常、時間制御により防湿ポッティング材8を注入しており、1台のポッティング注入機で生産対応しようとすれば、2箇所に注入のため絶えず時間を変更する必要があり、現実的ではない。そのために、設備投資をして2台目のポッティング注入機を導入しなければならないという課題を有していた。
【0014】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、新たに2台目のポッティング注入機導入の設備投資を必要とせず、1台のポッティング注入機のみで制御装置本体6a、6b部にポッティング注入を行うことが出来る機器の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第一の制御装置本体を内装する浅底の有底略矩形状の第一の保護ケースと、第二の制御装置本体を内装する浅底の有底略矩形状の第二の保護ケースと、前記第一および第二の制御装置本体に設けられレンズ部を有する複数の発光ダイオードとを備え、前記第一および第二の保護ケース内にて前記第一および前記第二の制御装置本体を防湿処理する防湿ポッティング材を充填するようにした機器の制御装置において、前記第一の保護ケースと前記第二の保護ケースとは隣接させて段差を設け、前記第一の保護ケースと前記第二の保護ケースとの第一の境界壁に切り欠き部を形成し、前記切り欠き部は、その上端面を、前記第一の制御装置本体における発光ダイオードのレンズ部の下端面より低くしたものである。
【0016】
これによって、1台のポッティング注入機で制御装置の生産をすることが出来るので、安価かつ生産性が向上できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の機器の制御装置は、安価で生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1における機器の制御装置の分解斜視図
【図2】同機器の制御装置の平面図
【図3】同機器の制御装置の図2のA−A断面図
【図4】同機器の制御装置の図3の要部拡大図
【図5】同機器の制御装置の図2のB−B断面拡大図
【図6】従来の機器の制御装置部の縦断面図
【図7】従来の機器の制御装置へのポッティング注入方式を示す断面図
【図8】機器の代表例である洗濯機の概略外観図
【図9】従来の制御装置を洗濯機に搭載した要部横断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の発明は、第一の制御装置本体を内装する浅底の有底略矩形状の第一の保護ケースと、第二の制御装置本体を内装する浅底の有底略矩形状の第二の保護ケースと、前記第一および第二の制御装置本体に設けられレンズ部を有する複数の発光ダイオードとを備え、前記第一および第二の保護ケース内にて前記第一および前記第二の制御装置本体を防湿処理する防湿ポッティング材を充填するようにした機器の制御装置において、前記第一の保護ケースと前記第二の保護ケースとは隣接させて段差を設け、前記第一の保護ケースと前記第二の保護ケースとの第一の境界壁に切り欠き部を形成し、前記切り欠き部は、その上端面を、前記第一の制御装置本体における発光ダイオードのレンズ部の下端面より低くすることにより、第一の保護ケースに注入された防湿ポッティング材が、前記第一の制御装置本体に設けられた前記発光ダイオード(LED)のレンズ部を覆うことなく、第一の保護ケース側から第二の保護ケース側へ流し込まれるため、発光ダイオードの視認性が損なわれることが無く、また、1台のポッティング注入機で制御装置の生産をすることが出来るので、安価に生産性が向上できる。
【0020】
第2の発明は、第1の発明において、第二の保護ケースは、第二の制御装置本体を内装する第二の制御装置本体収納部と、前記第二の制御装置本体を収納しない凹部と、前記第二の制御装置本体収納部と前記凹部との第二の境界壁を形成し、前記第二の境界壁の上端面は、前記第二の制御装置本体における発光ダイオードのレンズ部の下端面より低くすることにより、制御装置本体収納部内に充填しすぎた防湿ポッティング材を凹部へ逃がすことができるので、発光ダイオード(LED)のレンズ部が防湿ポッティング材で覆われることがなく、そのために視認性が損なわれることが防止できる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、従来例と同じ構成のものは同一符号を付して説明を省略する。また、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における機器の制御装置の分解斜視図である。また、図2は本発明の実施の形態における機器の制御装置の平面図、図3は図2のA−A断面図、図4は図3の要部拡大図、図5は図2のB−B断面拡大図を示すものである。
【0023】
図1〜図5において、制御装置27は、従来例と同じように、上部筐体4の前部に設けられたトップカバー2の内方に配置されている。
【0024】
制御装置27は、発光素子、端子、レンズで構成される複数の発光ダイオード(LED)15a、15b、15c、スイッチ(図示せず)、7セグメント表示素子24等を設けた第一の制御装置本体6aと、発光ダイオード(LED)15d、スイッチ(図示せず)、電子部品(図示せず)等を設けた第二の制御装置本体6bと、第一の制御装置本体6aを内装する第一の保護ケース22aと、第二の制御装置本体6bを内装する第二の保護ケース22bと、第一の保護ケース22a内に充填され、第一の制御装置本体6aを防湿処理するウレタン樹脂等よりなる防湿ポッティング材23aと、前記第二の保護ケース22b内に充填され、前記第二の制御装置本体6bを防湿処理するウレタン樹脂等よりなる防湿ポッティング材23bとから構成されている。
【0025】
第一の保護ケース22a、第二の保護ケース22bとも浅底の有底略矩形状をしており、第一の保護ケース22aと第二の保護ケース22bは隣接して段差を付け、第二の保護ケースの底部が第一の保護ケースの底部よりも低く、第一の保護ケース22aと第二の保護ケース22bとの第一の境界壁28を境として一体に形成されている。これは、前述のように、トップカバー2が円弧状であっても、トップカバー2の円弧状部に沿ってもしくは対応して一体の制御装置として機器に搭載できるようにするためである。
【0026】
また、第一の保護ケース22aと第二の保護ケース22bとの第一の境界壁28に切り欠き部16が形成されている。そして、この切り欠き部16の上端面は、発光ダイオード(LED)15a、15b、15cのレンズ部の下端面より低くなるように、高低差Haが設けられている。
【0027】
第二の保護ケース22bは、制御装置本体収納部25と、制御装置本体を収納しない凹部26と、その境界には、第二の境界壁17が、第二の保護ケース22bの外壁部より低い高さで形成されている。そして、この第二の境界壁17の上端面は、発光ダイオード(LED)15dのレンズ部の下端面より低くなるように、高低差Hbが設けられている。
【0028】
以上のように構成された制御装置27について、以下その動作、作用を説明する。
【0029】
制御装置27にポッティング注入機で防湿ポッティング材を注入する場合には、まず、第一の保護ケース22a側に注入し、防湿ポッティング材が制御装置本体6aの表面、裏面および側面を覆い充填される。そして、続けて防湿ポッティング材を注入すると、第一の保護ケース22aと第二の保護ケース22bとの第一の境界壁28に形成された切り欠き部16を越えて、第二の保護ケース22bの制御装置本体収納部25へと流れ込み、制御装置本体6bの表面、裏面および側面を覆い充填され、注入が終了する。
【0030】
一般的に、ポッティング注入機は注入する時間により防湿ポッティング材の量が制御されるが、注入時のばらつきで想定以上の防湿ポッティング材が第二の保護ケース22b側へ流れ込んでも、溢れた防湿ポッティング材23bは、第二の保護ケース22bの第二の境界壁17を超えて、凹部26側へと流れ込む。
【0031】
第一の保護ケース22a側に高低差Ha、第二の保護ケース22b側に高低差Hbを設けているため、第一の制御装置本体6aに設けられた発光ダイオード(LED)15a、15b、15cのレンズ部や、第二の制御装置本体6bに設けられた発光ダイオード(LED)15dのレンズ部を、防湿ポッティング材23aと23bが覆うことは無い。
【0032】
以上のように、本実施の形態においては、防湿ポッティング材が発光ダイオード(LED)のレンズ部を覆うことが無いため、発光ダイオード(LED)の視認性を確保でき、また、1台のポッティング注入機で第一の保護ケース22aと第二の保護ケース22bに防湿ポッティング材を注入できることとなるため、安価で、生産性を向上させることができる。
【0033】
制御装置本体の発光ダイオード(LED)の端子を長くして制御装置本体6aと6bの高さを揃える方法もあるが、LEDのリード部が露出してしまえば品質を落としてしまう可能性もあり、またそれを防ぐためにポッティング材の量を増やすとスイッチや他の電子部品が埋まってしまうなど、他の部品に影響を与えるため現実的ではない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、本発明にかかる機器の制御装置は、安価に生産性を向上させることができるので、洗濯機等の機器の制御装置として有用である。
【符号の説明】
【0035】
6a 第一の制御装置本体
6b 第二の制御装置本体
15a、15b、15c、15d 発光ダイオード(LED)
16 切り欠き部
17 第二の境界壁
22a 第一の保護ケース
22b 第二の保護ケース
23a、23b 防湿ポッティング材
25 制御装置本体収納部(第二の制御装置本体収納部)
26 凹部
28 第一の境界壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の制御装置本体を内装する浅底の有底略矩形状の第一の保護ケースと、第二の制御装置本体を内装する浅底の有底略矩形状の第二の保護ケースと、前記第一および第二の制御装置本体に設けられレンズ部を有する複数の発光ダイオードとを備え、前記第一および第二の保護ケース内にて前記第一および前記第二の制御装置本体を防湿処理する防湿ポッティング材を充填するようにした機器の制御装置において、前記第一の保護ケースと前記第二の保護ケースとは隣接させて段差を設け、前記第一の保護ケースと前記第二の保護ケースとの第一の境界壁に切り欠き部を形成し、前記切り欠き部の上端面は、前記第一の制御装置本体における発光ダイオードのレンズ部の下端面より低くした機器の制御装置。
【請求項2】
第二の保護ケースは、第二の制御装置本体を内装する第二の制御装置本体収納部と、前記第二の制御装置本体を収納しない凹部と、前記第二の制御装置本体収納部と前記凹部を隔てる第二の境界壁を形成し、前記第二の境界壁の上端面は、前記第二の制御装置本体における発光ダイオードのレンズ部の下端面より低くした請求項1記載の機器の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−146492(P2011−146492A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5485(P2010−5485)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】