説明

機械の汚染を光学的に監視するシステム及び方法

【課題】蛍光性の汚染物質マーカーを利用して機械部品の汚染を光学的に監視するシステムを提供する。
【解決手段】システムは、汚染物質マーカーが少なくとも1つの蛍光発光周波数を発するように構成された、少なくとも1つの照射周波数を発するように構成されると共に、少なくとも部分的に汚染されると汚染物質マーカーを含む、機械部品を少なくとも部分的に照射するように構成された、照明光源(114)と、少なくとも1つの蛍光発光周波数に反応すると共に、汚染された機械部品から発する少なくとも1つの蛍光発光周波数を検出するように構成された、光検出器(118)と、光検出器と動作連通しており、光検出器から信号を受信するように構成されると共に、光検出器からの信号の関数として機械部品の汚染を推定するように構成された、分析モジュール(120)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機械部品を監視することに関し、詳細には、蛍光性の汚染物質マーカーを利用して機械部品(例えば、印刷機械部品)の汚染を光学的に監視するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の機械設計では様々な「機械部品」が用いられ、これらの部品を合わせて使用することにより機械が完全に構成される。これらの機械部品は、交換可能なもの及び/又は永久使用のものであり得る。例えば、現代の印刷システムでは、様々なモジュラー統合機械部品が用いられる。印刷システムで用いられる機械部品を、本明細書中では印刷機械部品と呼ぶ。このような印刷機械部品の監視は、1つ以上の戦略的に配置されたセンサを用いて行われ得る。これらのセンサのうちのいくつかは、光学に基づいたセンサであり得る。このような光学的監視法の1つが、2007年9月26日に出願された、「カメラを用いて印刷システムを監視するシステム及び方法(SYSTEM AND METHOD FOR MONITORING A PRINTING SYSTEM USING A CAMERA)」という発明の名称である、特許文献1(本願の出願人に譲渡)に説明されている。
【0003】
多くの印刷機械部品は交換可能であって、保管寿命及び/又は耐用年数が限られている。例えば、あるカラー印刷システムでは、1つ以上のドラムから印刷基体(例えば、紙)上に4種類のトナーが付着されることにより、トナー画像が形成されるが、この紙の上に初めに付着されたトナー画像は、紙に完全には固定されない。更に、この紙の上に初めに付着されたトナー画像の光沢度は、所望の光沢度ではない。加熱及び加圧機構又は放射定着法を用いて、トナー粒子を印刷媒体(通常、紙)に融着させることによって、トナー画像が紙に永久的に固定されると共に、トナー画像の光沢度が所望の光沢度となる。このような処理を定着と呼ぶ。このような定着部材は、耐用年数が限られている。
【0004】
定着部材の1つのタイプとして、定着ロールがある。一般的に、この定着ロールは、1組の円柱形をした機械部品(一方が加熱し、他方が加圧する)によって構成される。この定着ロールは、トナーを紙に定着させるのに用いられる。基体上のトナー画像は初め、粘着性のない粉体である。粘着性のないトナー画像が付着された基体(例えば、紙)は、2つの定着部材を通して送られ、この定着部材では、トナー画像が加熱されると同時に十分に加圧される。この加熱及び加圧は、トナー画像が確実にきちんと基体に接着されるように、且つ、画像の光沢が所望の光沢度になるように、適切に制御されるべきである。
【0005】
定着部材の別のタイプとして、定着ベルトがある。基体をパスに沿って動かすには、1組の定着ロールではなく、1つ以上のベルトが用いられる。このベルトは、様々なローラ及び/又はニップを備えたパスに沿って巻き付けられ且つ/或いは導かれ得る。1つ以上のベルトは、粘着性のないトナー画像が上に配置された基体を、印刷システムの、加熱及び/又は加圧によってトナーを基体に定着させる領域を通して運ぶことができる。
【0006】
これらの定着ベルト及び定着ロールは、定着処理で用いることのできる定着部材の単なる2つのタイプにすぎない。他の定着部材として、定着処理で用いられる様々なギア、ニップ、ローラ、及び部品も挙げられる。定着部材の1つの可能性のある故障モードとして、トナー汚染がある。例えば、最終的に、定着ロールは、最終生成物(例えば、印刷物)上に目に見える欠陥が生じるトナー汚染レベルにまで達する。定着部材の汚染は、定着部材上へのトナー移りに関連した、様々な目に見える印刷品質欠陥を引き起こす可能性がある。このような故障モードのため、定着部材は定期的に交換しなければならない。このような故障モードは、全印刷機械部品の交換コスト全体のかなりの部分を占め得る。定着部材の耐用年数を延ばす1つの方法として、定着部材にオイルを連続的に付与してトナーが定着部材にくっつかないようにする方法があり、これによって、定着部材の耐用年数は延びるが、最終的には定着部材を交換しなければならない。
【0007】
定着部材の汚染を推定する1つの方法として、破壊的でありオフラインで行う方法がある。この方法では、定着ロール(又はベルト)からゴム製ストリップを外す必要があり、このサンプルをフーリエ変換赤外分光分析してストリップを調べることによって、定着ロール(又はベルト)上の様々な汚染物質の量を定める。この方法は、定着部材を永久的に使用不能とし、非常にコストが高く、その場で診断及び/又はフィードバック制御するのにあまり適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願第11/904,267号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、機械部品を監視することに関し、詳細には、蛍光性の汚染物質マーカーを利用して機械部品(例えば、印刷機械部品)の汚染を光学的に監視するシステム及び方法に関する。このシステム及び/又は方法は、少なくとも1つのプロセッサにより実行されるように構成されたプロセッサ実行可能命令の動作セットによって、少なくとも部分的に実施され得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1の態様は、機械の汚染を光学的に監視するシステムであって、汚染物質マーカーが少なくとも1つの蛍光発光周波数を発するように構成された、少なくとも1つの照射周波数を発するように構成されると共に、少なくとも部分的に汚染されると汚染物質マーカーを含む、機械部品を少なくとも部分的に照射するように構成された、照明光源と、少なくとも1つの蛍光発光周波数に反応すると共に、汚染された機械部品から発する少なくとも1つの蛍光発光周波数を検出するように構成された、光検出器と、光検出器と動作連通しており、光検出器から信号を受信するように構成されると共に、光検出器からの信号の関数として機械部品の汚染を推定するように構成された、分析モジュールと、を備える。
【0011】
本発明の請求項2の態様は、請求項1の態様において、汚染物質が、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー、及びブラックトナーのうちの少なくとも1つであり、汚染物質マーカーは、マゼンタトナーに含まれるローダミン染料である。
【0012】
本発明の請求項3の態様は、請求項1の態様において、分析モジュールと動作連通しており、機械部品の推定汚染が閾値を超えている場合には警告を発するように構成された、警告モジュールと、分析モジュールと動作連通しており、機械部品の推定汚染に応じた少なくとも1つの表示を提供するように構成された、表示モジュールと、を更に備える。
【0013】
本発明の請求項4の態様は、機械の汚染を光学的に監視する方法であって、汚染物質マーカーが少なくとも1つの蛍光発光周波数を発するように構成された、少なくとも1つの照射周波数を発するように構成されると共に、少なくとも部分的に汚染されると汚染物質マーカーを含む、機械部品を少なくとも部分的に照射するように構成された、照明光源を準備することと、少なくとも1つの蛍光発光周波数に反応すると共に、汚染された機械部品から発する少なくとも1つの蛍光発光周波数を検出するように構成された、光検出器を準備することと、光検出器と動作連通しており、光検出器から信号を受信するように構成されると共に、光検出器からの信号の関数として機械部品の汚染を推定するように構成された、分析モジュールを準備することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本開示による、蛍光性の汚染物質マーカーを利用して印刷機械部品の汚染を光学的に監視することのできるシステムのブロック図である。
【図2】本開示による、2つの定着ロールを含む定着部材、並びに、照明光源及び汚染を監視する全幅アレイセンサの略側面図である。
【図3】本開示による、定着部材に対する加速寿命試験に利用されるストライプテストパターンのグラフ図である。
【図4】本開示による、汚染物質を含む定着ロールの正面から見た写真のグラフ図である。
【図5】本開示による、汚染物質を含む定着ロールの正面から見た写真のグラフ図であり、汚染物質マーカーに蛍光発光させる照明光源によって定着ロールが光照射されている間に撮ったものである。
【図6】本開示による、照射されている間に撮った図5の定着ロールのデジタル画像から得られた軸位置の関数としてRGB輝度データを示すグラフである。
【図7a】本開示による、RGBセンサの青のチャネルにおけるピーク輝度と、図3のストライプテストパターンが定着ロール上で繰り返して使用された場合においてストライプ#22の領域内で測定された平均汚染度との、相互関係を示すチャートである。
【図7b】本開示による、RGBセンサの青のチャネルにおけるピーク輝度と、図3のストライプテストパターンが定着ロール上で繰り返して使用された場合において定着ロール上で測定された全平均汚染度との、相互関係を示すチャートである。
【図8】本開示による、蛍光性の汚染物質マーカーを利用して印刷機械部品の汚染を光学的に監視する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照すると、図1は、本開示による、蛍光性の汚染物質マーカーを利用して印刷機械部品(例えば、定着部材102)の汚染を光学的に監視することのできるシステム100のブロック図である。
【0016】
このシステム100は、機械部品(例えば、印刷機械部品)の汚染を監視することができ、図1では定着部材102を監視するように構成されたものとして示されている。システム100は、プロセッサ106及びメモリ108を有する処理モジュール104によって実施及び/又は制御され得る。メモリ108は、命令110及びデータ112を含む。命令110は、システム100の一部若しくは全部を実施及び/又は制御し得る。システム100は、ハードウェア、ソフトウェア、実行中のソフトウェア、ファームウェア、マイクロコード、バイトコードなどにおいて、或いは、これらのあらゆる組み合わせにおいて実施され得る。
【0017】
このシステム100は、光周波数が1つ、複数、又は1帯域である光を発することのできる照明光源114を用いる。更に若しくは或いは、この照明光源114は、可視光及び/又は不可視光を発することができる。例えば、この照明光源114は、近紫外光又は紫外光を発し得る。
【0018】
この照明光源114は、発した光周波数によって汚染物質116中の汚染物質マーカーが蛍光を発するように、少なくとも定着部材102を照射する。このような汚染物質マーカーに蛍光発光させる周波数を、照射周波数と呼ぶ。蛍光発光は発光の一種であり、分子(例えば、汚染物質マーカー)が光子を吸収することによって周波数(若しくは波長)の異なる別の光子を発する。このような分子が発する周波数を、蛍光発光周波数と呼ぶ。汚染物質116は汚染物質マーカーを含み、例えば、汚染物質116はマゼンタトナーであってもよく、汚染物質マーカーはこのマゼンタトナーに含まれたローダミン染料であってもよい(以下でより詳細に論じる)。更に若しくは或いは、汚染物質に蛍光マーカーを添加してもよい(これについても、以下でより詳細に論じる)。汚染物質は、印刷機の色域の他の色(例えば、CMYKトナーのそれぞれ)であってもよい。また、汚染物質は、残留物であってもよい。
【0019】
照明光源114が定着部材102を照射することによって、汚染物(例えば、汚染物質116)の汚染物質マーカーが蛍光を発し、光検出器118は、この汚染物質マーカーが発している蛍光の光周波数を検出することができる。この光検出器118は、汚染物質マーカーが発する光周波数に反応する部材であれば、どのような感知部材であってもよい。例えば、この光検出器118は、CCDカメラ、CMOSカメラ、全幅アレイセンサなどに見られるような、感知部材であってよい。更に若しくは或いは、この光検出器118は、一般的にはRGBカメラに見られるような、マルチチャネル光センサの一部であってもよい。
【0020】
また、システム100は、分析モジュール120も含む。この分析モジュール120は、センサコントローラ121と動作連通している。分析モジュール120は、センサコントローラから信号を受信し、この信号を処理して機械部品(例えば、定着部材102)の汚染を推定することができる。センサコントローラ121から受信する信号は、アナログ及び/又はデジタル形式であってよく、1つ以上のチャネル信号を有し得る。例えば、分析モジュール120がセンサコントローラ121から受信するこの信号は、それぞれが「青」、「赤」、「緑」のチャネルに対応する、3つのチャネル信号を含み得る。また、この信号は画像データであってもよく、分析モジュール120は画像処理ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアなどを含み得る。分析モジュール120は、センサコントローラ121からの信号の関数として、定着部材102の汚染を推定することができる(以下でより詳細に論じる)と共に、この推定汚染を、警告モジュール122、表示モジュール124、調整モジュール126、及び/又は制御モジュール128に伝達することができる。
【0021】
また、分析モジュール120は、センサコントローラ121を制御し且つ/又はセンサコントローラ121に命令し得る。例えば、分析モジュール120は、制御モジュール128からトリガ信号を受信し、センサコントローラ121に照明光源114を「オン」にするよう命令して汚染物質マーカーに蛍光発光させ得る。次に、センサコントローラ121は、光検出器118に「写真を撮る」よう命令し(例えば、光検出器がRGB・CCDカメラの一部である場合)、この信号を分析モジュール120に送信し得る。
【0022】
上記のように、分析モジュール120は、センサコントローラ121と動作連通しており、センサコントローラ121は、照明光源114及び光検出器118と動作連通している。センサコントローラ121は、例えば電流バイアスを調節することによって光検出器118を直接的に較正してもよいし、較正情報を分析モジュール120に提供してもよい。一方、図1に示されていない異なる実施形態では、センサコントローラ121は、分析モジュール120の一部であってもよい。センサコントローラ121は、送信する信号に含まれる1つのチャネル信号の背景レベルのような較正データを分析モジュール120に提供することができ、例えば、青のチャネル信号の背景レベルは、RGBセンサの青色光検出器が、定着部材102の、汚染する可能性が極めて低い照射領域(例えば、定着ロールの遠端)に対して、反応するような光量であり得る。更に若しくは或いは、このような背景レベルは、周辺光、光学的ノイズ、電気的ノイズ、熱放射などから得られるものであってもよい。
【0023】
定着部材102の推定汚染が閾値に達すると、警告モジュール122は警告を発することができる。この警告は、警告信号、デジタルデータ構造(例えば、フラグ)、アラーム、視覚的表示などであってよい。例えば、この警告は、アラーム132を作動させるユーザインタフェース130によって受信され得る。アラーム132は、定着部材102を有する印刷システムのユーザに、定着部材にメンテナンスが必要であることや、定着部材を交換する(又は、もうすぐ交換する)必要があることなどを知らせることのできる、視覚的アラーム、音、ポップアップダイアログボックスなどであってよい。
【0024】
表示モジュール124は、機械部品の推定汚染に応じた表示(例えば、表示信号)を提供し、この表示は、ユーザインタフェース130によって受信され得る。更に若しくは或いは、この表示モジュール124は、定着部材の残存耐用年数(即ち、寿命)に関する表示を提供し得る。寿命計算は、使用法(例えば、画素使用法)、分析モジュール120によって推定されるような推定汚染物質116の量、画素数、印刷ページ、機械使用時間などに基づいて、又は、これらの組み合わせに基づいて行われ得る。例えば、ユーザインタフェース130における寿命表示134は、定着部材102の残存耐用年数をユーザに示す「ガス計器」タイプの表示であってよい。
【0025】
システム100は、分析モジュール120と動作連通している調整モジュール126も含む。この調整モジュール126は、定着部材102の推定汚染を利用して、スケジュール136のうちの1つを調節することができる。スケジュール136は、印刷システムに見られるようなスケジュールであり得る。このスケジュール136としては、ジョブスケジュール、シートスケジュール、定着スケジュール、及び印刷エンジンスケジュールが挙げられる。
【0026】
また、システム100は、制御信号又はバスを介して伝達される信号を提供する制御モジュール128も含む。この制御モジュール128は、分析モジュール120から受信した定着部材102の推定汚染を明らかにする制御信号を提供し得る。例えば、この制御モジュール128は、定着部材102の推定汚染がエラー信号であるフィードバックループ(例えば、PIDアルゴリズム)において、制御信号を提供することができる。この制御モジュール128は、定着部材102の定着パラメータ(例えば、定着温度、オイル率、定着圧力、位置合わせ、位置ずらしなど)を制御し得る。
【0027】
次に、図1及び図2を参照すると、図2は、定着ロール202及び204を含む定着システム200の側面図である。この定着システム200は、図1のシステム100のような、機械の汚染を監視するシステムの一部であってよい。定着ロール202が熱を加えると同時に、定着ロール204が圧力を加える。全幅アレイセンサ206が示されており、この全幅アレイセンサ206は光検出器118’を含む。この図2の3つの座標軸(y軸はページを突き刺す方向)に留意されたい。全幅アレイセンサ206は、定着ロール204の長さに沿って配置される。光検出器118’は、図1の光検出器118であってよい。照明光源114’が示されており、この照明光源114’は図1の照明光源114であってよい。照明光源114’が定着ロール202及び/又は204をその全長にわたって照射することができると同時に、全幅アレイセンサ206が同じくその全長に沿って蛍光を発する汚染物質マーカーを感知することができる。これを利用することによって局所的に汚染が推定され得ると共に、これについて以下により詳細に論じる。
【0028】
次に、図3を参照し、定着システム200を用いてストライプテストパターン300を印刷することによって行うことのできる一例としての加速寿命試験について考察する。この図3の左上の角にある座標軸に留意されたい。ストライプテストパターン300を繰り返して印刷することにより、複数の基体を定着部材(例えば、定着ロール202及び204)によって処理することができる。この試験は、定着部材の耐用年数を減らすことができると共に、長期にわたって生じる摩損及び汚染を比較的短時間でシミュレートするのに用いることができ、ゆえに「加速寿命試験」と呼ばれる。ストライプテストパターン300は、それぞれが単一色のストライプ1〜36を含む。
【0029】
フューザの加速寿命試験に従来用いられてきた1つの方法では、ストライプテストパターン300を利用し、定着部材(例えば、定着ロール202及び204)を用いて基体上に(機械によって決まる)十分な数のコピーを印刷することにより、汚染を測定した。この汚染測定は、ゴム製ストリップを取り外して定着部材を破壊し、このサンプルをフーリエ変換赤外分光分析して、定着部材上の様々な汚染物質の量を定めることにより行われた。一方、上記のように、図1のシステム100は、その場で且つリアルタイムに汚染を監視することができる。
【0030】
次に、図3、図4、及び図5を参照すると、図4及び図5は、汚染物質を含む定着ロール400の正面から見た2枚の写真のグラフ図であり、図5は、(例えば、図1の照明光源114によって)照射されている間に撮ったものである。この図5では、照明光源によって汚染物質マーカーが定着ロール400上において蛍光を発していて、領域402〜410が目に見えるため汚染が分かる、ということに留意されたい。定着ロール400のこれらの領域402〜410にはそれぞれ、図5で蛍光を発している汚染物質マーカーを沈着させたマゼンタ色のストライプが施された。この汚染物質マーカーは、定着ロール400上で生じる化学反応から得られるものであってもよいし、マゼンタトナーに見られるようなローダミン染料であってもよい。定着ロール400を用いて図3のストライプを繰り返して印刷したため、定着ロール400を汚染したそのトナーの色は一色以上であった。領域402〜410の輝度が異なるのは、ストライプテストパターン300の各ストライプの長さ及び/又はストライプテストパターン300の各ストライプを印刷するのに必要なマゼンタトナーの量が異なることにより、「寿命」加速度値が異なるからである。
【0031】
前記のように、図4は、周辺光の下で見た場合の定着ロール400を示しており、図5は、照明(例えば、ブラックライトによる照明)の下で見た場合の定着ロール400を示している。汚染物質マーカーから生じる蛍光発光のため、図4に比べ図5では、図3のテストパターン300のストライプに対応する個々のストライプが見てすぐに分かる。
【0032】
図面を参照すると、図6は、照射されている間に定着ロール400のCCDカメラで撮ったデジタル画像から得られた図5の定着ロール400のy軸の関数として、RGB輝度データ(例えば、図1の光検出器118を含むRGBセンサから得られたデータ)をグラフにした、チャート500を示している。この図6に示されているRGBデータは、定着ロール400の軸に沿って取られると共に、複数のデジタル画像を合わせたものから得られてもよい。図6における番号は、図3に示されているストライプの番号に対応しており、赤と緑のチャネルの「山」が大きく青のチャネルの「谷」が大きいところは、図3のストライプテストパターン300のマゼンタを含むストライプにちょうど対応している。これは、(図5の)定着ロール400の表面上の、マゼンタストライプが施された領域における汚染物質マーカーが、スペクトルの黄色の部分において蛍光を発している(背景に対して赤と緑のチャネルの山が大きい)と同時に、スペクトルの青の部分において光を吸収している(背景に対して青のチャネルの谷が大きい)、ということを示す。
【0033】
汚染を推定しやすくするために、RGBセンサから得られたデータ(例えば、図1の分析モジュール120によって受信されたデータ)に含まれるRGB信号を変換する際、複数の形式を取ったり、様々な関数を用いたりしてもよい。例えば、図1のシステム100はマルチチャネル光センサ(例えば、RGBセンサ)を含むと考え、このマルチチャネル光センサから受信された信号は、分析モジュールが、機械部品の汚染をデータに関連付けるパラメータ化モデルを用いて定着部材102の汚染を推定するのに使用する。機械部品の汚染を、マルチチャネル光センサから得られた信号のチャネル信号とその背景レベルとの間の領域に関連付ける、第1関数を用いることも可能である。また、機械部品の汚染を、マルチチャネル光センサから得られた信号のチャネル信号とその背景レベルとの最大差に関連付ける、第2関数を用いてもよい。また、機械部品の汚染を、マルチチャネル光センサから得られた信号のチャネル信号より下の領域に関連付ける、第3関数を用いてもよい。更に、機械部品の汚染を、マルチチャネル光センサから得られた信号のチャネル信号のピーク値に関連付ける、第4関数を用いてもよい。更に、機械部品の汚染を、マルチチャネル光センサから得られた信号のチャネル信号の背景レベルを用いて関連付ける、第5関数を用いてもよい。図6に示されているようなRGBデータの背景レベルは、「背景領域」とラベル付けされた領域によって決定され得る。このような領域ではRGBデータがほぼ横ばいである、ということに留意されたい。このような背景領域内では平均値を用いることにより、データ又は信号を拒否して或いは拒否せずに背景レベルを決定及び/又は推定してもよい。
【0034】
同時に図4、図5、及び図6を参照し、図6は図4及び図5のy軸に沿った線に沿って取ったデータを含む、ということに留意されたい。また、この図6に示されているデータには時間における変化がない(例えば、このデータには時間の値がない)、ということにも留意されたい。別の実施形態では、空間マップは、定着ロール(例えば、定着ロール400)のy軸に沿ってだけでなく、定着ロールの「周囲」に(例えば、定着ロールに巻き付く方向のz軸に沿って)も、汚染をマッピングし得る。例えば、この空間マップは3つの軸を有していてもよく、1つは図4及び図5のy軸を表し、もう1つは円柱形の定着ロール400に「巻き付く」方向のz軸に対応し、もう1つは汚染物質、汚染物質マーカー、1つのデータチャネル、複数のデータチャネル、同等物、又はこれらの組み合わせに対応する。
【0035】
例えば、図1のシステム100は、定着ロール400に沿って対応する「y」及び「x」の値を有する、許容できないほど汚染された特定領域を識別し、このデータを調整モジュール126に伝達し得る。次に、調整モジュール126は、スケジュール136のスケジュール1〜4のうちの1つ以上を修正して、この特定領域を利用する印刷ジョブの印刷を回避し得る、且つ/或いは、印刷欠陥が目立つ可能性の低い印刷ジョブ(例えば、印刷欠陥耐性印刷ジョブ)を利用し得る。
【0036】
汚染物質マーカーを調べることにより汚染を推定する場合、上記の例で述べたように、背景レベル(例えば、図6の背景領域)を測定基準として用い、解像度及び/又は精度を改善してもよい。背景レベルを用いることにより、例えば、光源の輝度におけるばらつきによって生じる、RGBプロファイルにおけるDCシフトに対して、ロバスト性がもたらされる。
【0037】
図面を参照すると、図7(a)及び(b)は、青のチャネル信号と青のチャネルの背景レベルとのピーク差と、研究対象の6つのロールそれぞれに対するトナー樹脂汚染の標準測度との、関係に関する2つの例を示している(12のデータ点が示されているのは、各ロールを2回測定したからである)。図7(a)及び(b)に示されている、青のチャネルにおけるこのピーク輝度差は、図3の(ピーク輝度差が生じている)ストライプ22におけるマゼンタ樹脂汚染レベルと、ロール全体にわたる樹脂汚染全体レベルとに、それぞれ対応している。図1のシステム100がこのような例示的測度を用いることによって、リアルタイムの全幅フューザ応力解析システムが提供され得る。
【0038】
定着ロール(例えば、図4及び図5の定着ロール400)が受ける実応力は、トナー領域範囲に加え、媒体のタイプ、オイル率、環境、材料特性など(これらは全て、所定の機械内において及びそれぞれの機械によって異なる)によっても決まる。図1のシステム100は、これらの要素全ての影響が暗に含まれるように、定着部材102(例えば、定着ロール)が受ける実応力のマップを提供することができる。システム100は、定着部材102の表面の空間マップ及びその表面汚染の時間発展(即ち、一種の時間の値)を生成するのに利用されてもよく、これによって、いくつかの診断、フィードバック制御、ジョブプランニングというルーチンが可能となる(これについては、図1を参照しながら以下に説明する)。
【0039】
診断検出法を用いることによって、定着部材102の表面の汚染マップを作成して監視することができる。定着部材102の特定領域における汚染レベルが所定の閾値に達すると共に、次の印刷ジョブがこの領域に接触する画像コンテンツを有する場合、印刷工は、警告モジュール122を介して、裏移り又はその他の汚染関連欠陥が印刷物に現れる前に定着部材102を交換する必要がある、ということを警告することができる。
【0040】
制御モジュール128を介し、汚染関数として調節することにより、更なる汚染物の蓄積を軽減する且つ/或いは汚染の影響を相殺する、定着設定値(温度、圧力、オイル率など)を利用することによって、リアルタイムのフィードバック制御を行うことができる(例えば、オイル率を調節することによって、裏移り欠陥の回避を促すことができる)。このような調節は、自動的に行われてもよいし、オペレータの介入によって行われてもよい。また、未定着画像と定着部材102との位置合わせを調節することにより、定着部材102の表面上における汚染領域を回避することもできる。
【0041】
図1のシステム100がジョブプランニング/シートスケジューリングを行うことによって、強固に統合された並列印刷システム及び/又は2段階の定着部品を有する印刷システムを制御することができる。このような方法を用いることによって、1つ以上の汚染閾値が到達された場合にジョブプランナー及び/又はシートスケジューラーに信号(例えば、調整モジュール126によって作成される信号であってよい)を送ることができ、これにより、ジョブ/シートを適切なフューザ及び/又は印刷エンジンに送ることができる。
【0042】
図面を参照すると、図8は、蛍光性の汚染物質マーカーを利用して機械部品の汚染を光学的に監視する方法700を示すフローチャートである。この方法700は、ステップ702〜730を含む。ステップ702では、汚染物質マーカーを汚染物質に添加する(例えば、ローダミン染料をマゼンタトナーに添加する)。マゼンタトナー製剤が汚染物質マーカー(例えば、前記ローダミン染料)を既に含んでいる場合には、このステップ702は省略してよい。ステップ704では、照明光源(例えば、図1の照明光源114)を準備する。ステップ706では、機械部品(例えば、定着部材)を照射する。ステップ708では、ステップ710で用いる光検出器を準備する。ステップ710では、ステップ708の光検出器を利用して、機械部品から発する光波長を検出する。ステップ712では、分析モジュール(例えば、図1の分析モジュール120)を準備する。ステップ714では、ステップ712の分析モジュールを利用して、機械部品の汚染を推定する。
【0043】
ステップ716では、ステップ714で推定した機械部品の汚染に基づいて決定をする。推定汚染が閾値を超えている場合、方法700はステップ718に進んで警告を発する。この警告は、図1の警告モジュール122に関して述べた警告と似たものであっても同じものであってもよい。第1閾値を超えている場合には、機械部品を交換する必要があり、方法700はステップ720において機械部品を交換する。更に若しくは或いは、別の閾値を超えている場合には、方法700はステップ722及び/又はステップ724を用いる。ステップ722では、1つ以上の定着パラメータを制御するための制御信号(例えば、図1の制御モジュール128によって提供される制御信号)を提供する。ステップ724では、例えば図1の調整モジュール126によって、ジョブスケジュール、シートスケジュール、定着スケジュール、及び印刷エンジンスケジュールのうちの1つ以上を調節する。ステップ726では、印刷する。
【0044】
図8に示されているステップ716を再度参照すると、汚染閾値を超えていない場合、方法700は、やはり、印刷するステップ726に進む前に示されているステップ728及び730を用いる。一方、別のルートも示されており、推定汚染がいずれの閾値も超えていない場合、方法700はステップ726に直接進む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質マーカーが少なくとも1つの蛍光発光周波数を発するように構成された、少なくとも1つの照射周波数を発するように構成されると共に、少なくとも部分的に汚染されると前記汚染物質マーカーを含む、機械部品を少なくとも部分的に照射するように構成された、照明光源と、
前記少なくとも1つの蛍光発光周波数に反応すると共に、汚染された前記機械部品から発する前記少なくとも1つの蛍光発光周波数を検出するように構成された、光検出器と、
前記光検出器と動作連通しており、前記光検出器から信号を受信するように構成されると共に、前記光検出器からの信号の関数として前記機械部品の汚染を推定するように構成された、分析モジュールと、
を備えることを特徴とする、機械の汚染を光学的に監視するシステム。
【請求項2】
汚染物質が、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー、及びブラックトナーのうちの少なくとも1つであり、
前記汚染物質マーカーは、マゼンタトナーに含まれるローダミン染料である、
ことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記分析モジュールと動作連通しており、前記機械部品の前記推定汚染が閾値を超えている場合には警告を発するように構成された、警告モジュールと、
前記分析モジュールと動作連通しており、機械部品の推定汚染に応じた少なくとも1つの表示を提供するように構成された、表示モジュールと、
を更に備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
汚染物質マーカーが少なくとも1つの蛍光発光周波数を発するように構成された、少なくとも1つの照射周波数を発するように構成されると共に、少なくとも部分的に汚染されると前記汚染物質マーカーを含む、機械部品を少なくとも部分的に照射するように構成された、照明光源を準備することと、
前記少なくとも1つの蛍光発光周波数に反応すると共に、汚染された前記機械部品から発する前記少なくとも1つの蛍光発光周波数を検出するように構成された、光検出器を準備することと、
前記光検出器と動作連通しており、前記光検出器から信号を受信するように構成されると共に、前記光検出器からの信号の関数として前記機械部品の汚染を推定するように構成された、分析モジュールを準備することと、
を含むことを特徴とする、機械の汚染を光学的に監視する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−229466(P2009−229466A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70624(P2009−70624)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】