説明

機械式駐車設備の防振構造

【課題】建物内に設置される機械式駐車場設備の防振構造であって、機械式駐車場設備の規模が大きくなった場合にも、確実に他のフロアに伝わる振動を低減することのできる機械式駐車場設備の防振構造の提供。
【解決手段】スラブ2上に防振部材6を介して浮床3を設け、浮床3上に機械式駐車場設備5を設ける機械式駐車設備5の防振構造1であって、浮床3に、その浮床3の少なくとも下面に開口する動吸振器用孔11を複数形成し、この動吸振器用孔11に挿入するようにしてスラブ2上面に複数の動吸振器4を設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内に設置される機械式駐車設備の防振構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高層マンションやオフィスビルなどにおいて、屋内に限られたスペースを効率的に使用できる機械式駐車設備を設ける事例が増えている。従来、建物内に機械式駐車設備を設ける際には、建物のスラブ上に防振部材を介して所謂浮床を設け、その上に機械式駐車設備を設けることにより、機械式駐車設備の振動が直接建物の躯体に伝達されることを防止している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−82199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、パレットの上に自動車を載せて運ぶ形式の機械式駐車設備の場合、都心等の屋外駐車が十分に確保できない場所では、建物の大きさに合わせて、機械式駐車設備の規模も大きくなる傾向にある。そして、機械式駐車設備の規模が大きくなると、機械式駐車設備から発せられる振動も増大する。この振動は、浮床を支持する防振部材だけでは、十分低減しきれない場合があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような従来の問題に鑑み、機械式駐車設備の規模が大きくなった場合にも、スラブの振動を低減することのできる機械式駐車設備の防振構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、所期の目的を達成するための本発明にかかる機械式駐車設備の防振構造は、スラブ上に防振部材を介して浮床を設け、該浮床上に機械式駐車設備を設ける機械式駐車設備の防振構造であって、前記浮床に、該浮床の少なくとも下面に開口する動吸振器用孔を複数形成し、該動吸振器用孔にそれぞれ挿入するようにしてスラブ上面に複数の動吸振器を設置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の機械式駐車設備の防振構造は、機械式駐車設備を、防振部材に支持させた浮床上に設置するだけでなく、スラブに動吸振器を設置しているので、機械式駐車設備の規模が大きくなった場合にもスラブの振動を低減することができる。更に本発明においては、複数の動吸振器を並列的に使用しているので、一つの動吸振器を使用した場合と比較して、一つ当たりの動吸振器の高さを抑えることができる。更に、浮床に動吸振器用孔を形成して動吸振器を挿入するようにして、動吸振器をスラブ上面に設置することにより、浮床上に設置される機械式駐車設備に干渉することなく動吸振器を設置することができる。また、スラブに直接動吸振器を設置することにより、スラブの振動を効果的に低減でき、その結果、建物の他の部分に伝わる振動も低減される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる機械式駐車設備の防振構造を示す平面図である。
【図2】図2は、同上の機械式駐車設備の防振構造を示す平面図である。
【図3】図3は、同上の機械式駐車設備の防振構造を示す正断面図である。
【図4】図4は、同上の機械式駐車設備の防振構造の要部を示す正断面図である。
【図5】図5は、同上の機械式駐車設備の防振構造に使用される動吸振器の原理を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明にかかる機械式駐車設備の防振構造の実施の形態を図1〜図5に基づいて詳細に説明する。本発明にかかる機械式駐車設備の防振構造は、マンション等の集合住宅や、オフィスビル等の建物内において、建物の床を構成するスラブ上に機械式駐車設備を設置する際の防振構造である。
【0010】
この防振構造1は、スラブ2上に設置された、浮床3と動吸振器4(Tuned Mass Damper)とを有する。スラブ2は、複数の柱12によって支持固定されている。浮床3は、鉄筋コンクリート製の床部材であり、スラブ2上の機械式駐車設備5を設置する部分全面に配設されている。また、浮床3とスラブ2の間には、図3及び図4に示すように、複数の防振部材6が配設されている。防振部材6は、防振ゴム等、浮床3及びその上に載置されるものを支持可能であるとともに、バネ性を有し振動を吸収する部材である。浮床3は、この防振部材6に支持されており、スラブ2に対して上下方向に所定の間隔を置いて配設され、スラブ2から浮いた状態となっている。そして、この浮床3の上に機械式駐車設備5が設置されている。
【0011】
本実施の形態における機械式駐車設備5は、所謂平面往復式の駐車設備である。機械式駐車設備5は、浮床3上に設置された互いに平行に伸びる一対のレール21と、駐車棚22と、レール21上を走行する台車23と、車Aが載置されるパレット24と、を有している。一対のレール21は、図2に示すように、浮床3の上下方向中央部分においてを左右方向に延在するように配設されている。
【0012】
駐車棚22は、レール21の両側に配設され、上中下3段に形成されている。駐車棚22には、車Aが載置されたパレット24が収納されるようになっている。駐車棚22には、車Aが、その側面がレール21に沿うように収納される。また、駐車棚22は、鋼鉄製のフレーム22aによって形成されている。また、駐車棚22には、図示せぬ、昇降手段が備えられており、パレット24に載置された車Aを上段と中段と下段との間を移動させることができるようになっている。尚、レール21は、フレーム22aと一体に形成されている。
【0013】
台車23には、台車駆動手段23aが設けられており、この台車駆動手段23aにより台車23がレール21上を自走するようになっている。また、台車23には、パレット24を台車23と駐車棚22との間を移動させる手段であるパレット移載手段23bが備えられている。
【0014】
この機械式駐車設備5は、入庫の際には、図示せぬエレベータによって、他の階からパレット24に載った車Aが運ばれ、パレット24ごと台車23上に載置される。車Aが載置された台車23は、台車駆動手段23aによりレール21上を走行し、駐車棚22の所定の格納部分の前まで移動する。そして、パレット移載手段23bにより、パレット24ごと車Aを駐車棚22内に移動させて格納する。
【0015】
機械式駐車設備5が設置されている浮床3には、図1に示すように、複数の動吸振器用孔11が形成され、その内部に、動吸振器4が挿入されて設置されている。この動吸振器用孔11は、浮床3の表裏を貫通するように形成されている。
【0016】
動吸振器4は、スラブ2の上面に設置されている。即ち、この動吸振器4の制振対象は、スラブ2である。動吸振器4は、図4に示すように、その上部先端側が動吸振器用孔11に挿入されるように設置されている。本実施の形態においては、特に、スラブ2においてスラブ2の一部分であって、四隅のみが柱12に固定されている部分である制振対象部分13を設定している。そして、この制振対象部分13を制振対象とする複数の動吸振器を制振対象部分13の中央付近に設置している。
【0017】
本実施の形態においては6個の動吸振器4が1つの制振対象部分13に設置されているが、動吸振器4の個数は、制振対象部分13の質量と、動吸振器4の大きさによって決まるので、必ずしも6個とは限らない。動吸振器4の大きさは、スラブ2上面に設置した際に、浮床3より上に突出しない大きさである。このように、浮床3に動吸振器用孔11を設け、この動吸振器用孔11に動吸振器4を挿入させて設置しているので、機械式駐車設備5に干渉しないように動吸振器4を設けることができる。
【0018】
動吸振器4は、原理的に、図5に示すように質量m、バネk、ダンパcから構成される。制振対象の質量である質量Mは、本実施の形態ではスラブ2の制振対象部分13の質量に対応する。本実施の形態においては、スラブ2の制振対象部分13に対して、動吸振器4を複数個並列に設置している。従って、各動吸振器4の質量mを小さくすることができ、動吸振器4の大きさを小さくすることができる。特に、動吸振器4の高さを抑えることができる。
【0019】
本実施の形態における制振対象部分13は、その階下が低振動が要求される区画の部分である。このように、必要な部分だけ、動吸振器11を設置することにより、スラブ2全体を制振対象として動吸振器4を設置する場合と比較して、効率的に振動を低減させることができる。
【0020】
機械式駐車設備は、大規模化し収容能力が向上すると、利用者も増えるため、一台当たりの入出庫時間を短縮する必要性が出てくる。このため、台車を速く走らせるようにしている。台車を速く走らせると振動も大きくなる。上述した機械式駐車設備5では、車Aを載せた台車23が、例えば、120m/分で走行する。この台車23の走行が振動騒音の大きな原因となる。
【0021】
機械式駐車設備5の振動は、浮床3に伝わり、更に防振部材6を通してスラブ2に伝わる。このスラブ2に伝わった振動は、スラブ2上面に設置された動吸振器4に伝わり、この動吸振器4によって低減される。このようにスラブ2の振動が低減されるので、スラブ2から柱12を通して建物の他の部分に伝わる振動も低減される。また、本実施の形態においては、四隅のみが柱12で固定された制振対象部分13の中央付近に動吸振器4を設置しているので、効果的に振動を低減できる。
【0022】
尚、動吸振器4の高さは、浮床3上に設置された機械式駐車設備5に干渉しない大きさであればよい。また、本実施の形態において、浮床3に形成された動吸振器用孔11は、浮床3の表裏を貫通するように形成されているが、浮床3の下面側に開口していればよく、浮床3の上面側は塞がれていてもよい。また、本実施の形態においては、1つの動吸振器用孔11に1つの動吸振器4が設置されているが、1つの動吸振器用孔11に複数の動吸振器4を設置してもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 防振構造
2 スラブ
3 浮床
4 動吸振器
5 機械式駐車設備
6 防振部材
11 動吸振器用孔
12 柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブ上に防振部材を介して浮床を設け、該浮床上に機械式駐車設備を設ける機械式駐車設備の防振構造であって、
前記浮床に、該浮床の少なくとも下面に開口する動吸振器用孔を複数形成し、該動吸振器用孔にそれぞれ挿入するようにしてスラブ上面に複数の動吸振器を設置したことを特徴とする機械式駐車設備の防振構造。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−21354(P2011−21354A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166069(P2009−166069)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 音響技術(No.145 vol.38 no.1),発行日 平成21年3月31日
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】