説明

機械強度および反射防止性能を備えた三次元ナノポアフィルムとその製造方法

【課題】機械強度と硬度が高く、反射防止、アンチグレアおよび耐磨耗性などの性能に優れた、ディスプレイ装置に適用される三次元ナノポアフィルムを提供する。
【解決手段】本発明にかかわる三次元ナノポアフィルム12は、複数のナノポアを備えてなるナノポア構造の断面を有するため、有効屈折率(Neff)を1.45以下まで大幅に低下させることができ、反射率が3%以下となる。また、本発明にかかわるフィルムは、高架橋密度の有機無機ハイブリッド体によって構成されるため、優れた機械強度と硬度を備え、ディスプレイ装置の反射防止および耐磨耗性フィルムに非常に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元ナノポアフィルムおよびその製造方法に関し、特に、機械強度および反射防止性能を備えた三次元ナノポアフィルムおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学レンズ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイまたはLEDディスプレイなどのディスプレイ装置の製造工程では、グレアや反射光の発生を回避する目的で、液晶ディスプレイの透明基板などのディスプレイ装置の最外層に反射防止フィルムを設けている。
【0003】
単層構造の反射防止フィルムは、加工性に優れると共に、高歩留り、高生産性、および低設備コストで製造できるというメリットがあるため、反射防止技術における研究開発の主流となっている。ところが、反射防止用の複合光学フィルムを製造するのに従来より用いられている、フッ化マグネシウムまたはフッ化カルシウムなどの含フッ素無機材料は、大量のフッ素原子を含んでおり、化合物自身に凝集力(cohesion)が備わっていないため、形成される単層構造の反射防止光学フィルムの耐摩耗性が使用可能な水準まで達せず、硬い被覆層(hard coat layer)をもう一層加えなければならない。さらに、この従来の反射防止光学フィルムは、特定の波長領域(520〜570nm)において高い反射防止能力を備えるのみであって、屈折率の異なる材料から構成される多層構造としない限り、可視光波長領域(400〜780nm)での反射防止効果は得られず、かつ、含フッ素無機材料を含む組成配合では、有効屈折率(Neff)を1.40以下にまで低下させることはできない。
【0004】
これに関し、単層構造の反射防止光学フィルムの有効屈折率(Neff)を効果的に低減させてディスプレイ装置全体の反射率を抑えるためのものとして、テトラメトキシシランとこれに非相溶である重合体とをそれぞれ溶剤中に溶解してから、これらを混合し溶液を作ってこの溶液を基板に塗布し、最後に、テトラメトキシシランを架橋させたのちこれと非相溶である該重合体を除去する、という公知の方法がある(例えば、特許文献1参照)。この方法により作製されるフィルムは、深さの異なる開放状の垂直な孔を複数有するため、その屈折率が傾斜的に(gradient)変化することとなって、フィルムの反射率が反射防止可能な程度まで低減される。
【0005】
上述したように、上記の反射防止フィルムにはナノポアが高体積分率で備わっているので、これを構成する各材料同士の結合の強さが非常に重要となってくる。ところが、上記の反射防止フィルムは、テトラメトキシシランの縮合物のみから構成されているため、フィルムの機械強度は、シラノール基が縮合反応をすることによってできるシロキサン結合(Si−O−Si)の硬さだけに依存し、かつ、テトラメトキシシランの縮合物は架橋密度が高くないため、望ましい機械強度と硬度が得られずに、耐摩耗性が低いものとなり、フラットディスプレイの反射防止用光学コーティングとしては使用することができなくなる。
【0006】
したがって、低屈折率および高機械強度を有する反射防止フィルムとその製造方法を開発することは、ディスプレイ技術上急務である。
【0007】
【特許文献1】国際公開第01/29748号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述に鑑みて、本発明の目的は、複数のナノポアからなるナノポア構造を有してなることで、その均一に分布するナノポアに空気が充填されて有効屈折率(Neff)が1.45以下まで大幅に低減され、かつ、架橋密度の高い有機無機ハイブリッド体から構成されることにより、一層優れた機械強度および硬度が備わる三次元ナノポアフィルムを提供することにある。
【0009】
本発明のもう1つの目的は、高機械強度を備える反射防止フィルムを得るべく、その製造方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明のもう1つの目的は、反射防止(anti-reflection coatings)、アンチグレア(anti-glare)および耐磨耗性などの性能を備え、光学デバイスまたはディスプレイ装置に適用される、高機械強度を備えた反射防止フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、
(a)所定の塗布面を有する基板を準備する工程、
(b)第1の溶剤中に、重合可能な官能基を有する13族原子の酸化物ゲル、14族原子の酸化物ゲル、15族原子の酸化物ゲル、シロキサンゲル、金属酸化物ゲルまたはこれらの組み合せである酸素含有化合物ゲル45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および酸素含有化合物ゲルおよびテンプレート剤の合計量に対して0.1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポア塗料を、前記基板の所定の塗布面に塗布する工程、
(c)三次元ナノポア塗料からなる塗布膜に所定のエネルギーを与えて、重合反応させることにより、前記基板の所定の塗布面に有機無機ハイブリッド層を形成する工程、および
(d)第2の溶剤により前記有機無機ハイブリッド層からテンプレート剤を溶出して、三次元ナノポアフィルムを形成する工程、
からなる三次元ナノポアフィルムの製造方法に関する。
【0012】
重合可能な官能基が、アクリル基、アクリルアミド基、エポキシ基、アミノ基、アルコキシ基またはイソシアネート基であることが好ましい。
【0013】
酸素含有化合物ゲルが、少なくとも1種の酸素含有化合物ゲル前駆体を縮合反応させて得られる生成物であり、該酸素含有化合物ゲル前駆体には、重合可能な官能基を有する第1の酸素含有化合物ゲル前駆体が含まれることが好ましい。
【0014】
酸素含有化合物ゲルが、少なくとも1種の酸素含有化合物ゲル前駆体を混合させたものであり、該酸素含有化合物ゲル前駆体には、重合可能な官能基を有する第1の酸素含有化合物ゲル前駆体が含まれることが好ましい。
【0015】
第1の酸素含有化合物ゲル前駆体が、一般式(I):
【0016】
【化1】

【0017】
(R1はアクリル、アクリルアミド、エポキシ、アミノ、アルコキシ、イソシアネートまたは反応性二重結合を有する基であり、R2はアルキル、ハロゲン化アルキルまたはこれらの組み合せであり、nとmはいずれも1以上であり、nが1よりも大きい場合、各R1はいずれも同じまたはそれぞれ異なる官能基であり、mが1よりも大きい場合、各R2はいずれも同じまたはそれぞれ異なる官能基である。Mは13族の原子、14族の原子、15族の原子または遷移金属原子である。)
で示される構造を有する化合物であることが好ましい。
【0018】
酸素含有化合物ゲル前駆体に、さらに一般式(II):
【0019】
【化2】

【0020】
(R3はアルキルまたはハロゲン化アルキルであり、xは0以上、yは1以上、かつ、x+yは2以上であり、各R3はいずれも同じまたはそれぞれ異なる官能基であり、Mは前記同様である。)
で示される構造を有する第2の酸素含有化合物ゲル前駆体を含むことが好ましい。
【0021】
第1の溶剤に酸素含有化合物ゲルを溶解させたときの粘度が5〜100cps/25℃となるように調整することが好ましい。
【0022】
重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルとテンプレート剤の重量比が19:1〜9:11であることが好ましい。
【0023】
三次元ナノポアフィルムのポアサイズが5〜80nmであることが好ましい。
【0024】
さらに、三次元ナノポア塗料に、酸素含有化合物ゲルおよびテンプレート剤の合計量に対して5〜50重量%の光硬化樹脂を含むことが好ましい。
【0025】
光硬化樹脂が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンまたはこれらの組み合せからなることが好ましい。
【0026】
また、本発明は、
(a)所定の塗布面を有する基板を準備する工程、
(b)第1の溶剤中に、重合可能な官能基を有する13族原子の酸化物ゲル、14族原子の酸化物ゲル、15族原子の酸化物ゲル、シロキサンゲル、金属酸化物ゲルまたはこれらの組み合せである酸素含有化合物ゲル45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および酸素含有化合物ゲルおよびテンプレート剤の合計量に対して0.1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポア塗料を、前記基板の所定の塗布面に塗布する工程、
(c)三次元ナノポア塗料からなる塗布膜に所定のエネルギーを与えて重合反応させることにより、前記基板の所定の塗布面に有機無機ハイブリッド層を形成する工程、および、
(d)第2の溶剤により前記有機無機ハイブリッド層から前記テンプレート剤を溶出して、三次元ナノポアフィルムを形成する工程、
により得られる複数のナノポアを備えた生成物であって、
その膜厚が50〜300nmであり、かつ、そのポアサイズが5〜80nmである三次元ナノポアフィルムに関する。
【0027】
重合可能な官能基が、アクリル基、アクリルアミド基、エポキシ基、アミノ基、アルコキシ基またはイソシアネート基であることが好ましい。
【0028】
酸素含有化合物ゲルが、少なくとも1種の酸素含有化合物ゲル前駆体を縮合反応させて得られる生成物であり、該酸素含有化合物ゲル前駆体には、重合可能な官能基を有する第1の酸素含有化合物ゲル前駆体が含まれる。
【0029】
酸素含有化合物ゲルが、少なくとも1種の酸素含有化合物ゲル前駆体を混合させたものであり、該酸素含有化合物ゲル前駆体には、重合可能な官能基を有する第1の酸素含有化合物ゲル前駆体が含まれることが好ましい。
【0030】
第1の酸素含有化合物ゲル前駆体が、一般式(I):
【0031】
【化3】

【0032】
(R1はアクロキシ、アクリルアミド、エポキシ、アミノ、アルコキシ、イソシアネートまたは反応性二重結合を有する基であり、R2はアルキル、ハロゲン化アルキルまたはこれらの組み合せであり、nとmはいずれも1以上であり、nが1よりも大きい場合、各R1はいずれも同じまたはそれぞれ異なる官能基であり、mが1よりも大きい場合、各R2はいずれも同じまたはそれぞれ異なる官能基である。Mは13族の原子、14族の原子、15族の原子または遷移金属原子である。)
で示される構造を有する化合物であることが好ましい。
【0033】
酸素含有化合物ゲル前駆体に、さらに一般式(II):
【0034】
【化4】

【0035】
(R3はアルキルまたはハロゲン化アルキルであり、xは0以上、yは1以上、かつ、x+yは2以上であり、各R3はいずれも同じまたはそれぞれ異なる官能基であり、Mは前記同様である。)
で示される構造を有する第2の酸素含有化合物ゲル前駆体を含むことが好ましい。
【0036】
鉛筆硬度がF以上であることが好ましい。
【0037】
第1の溶剤に酸素含有化合物ゲルを溶解させたときの粘度が、5〜100cps/25℃となるように調整することが好ましい。
【0038】
重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルとテンプレート剤の重量比が19:1〜9:11であることが好ましい。
【0039】
さらに、三次元ナノポア塗料に、酸素含有化合物ゲルおよびテンプレート剤の合計量に対して5〜50重量%の光硬化樹脂を含むことが好ましい。
【0040】
光硬化樹脂が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンまたはこれらの組み合せからなることが好ましい。
【0041】
さらに本発明は、
(a)所定の塗布面を有する基板を準備する工程、
(b)第1の溶剤中に、重合可能な官能基を有する13族原子の酸化物ゲル、14族原子の酸化物ゲル、15族原子の酸化物ゲル、シロキサンゲル、金属酸化物ゲルまたはこれらの組み合せである酸素含有化合物ゲル45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および酸素含有化合物ゲルおよびテンプレート剤の合計量に対して0.1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポア塗料を、前記基板の所定の塗布面に塗布する工程、
(c)三次元ナノポア塗料からなる塗布膜に所定のエネルギーを与えて、重合反応させることにより、前記基板の所定の塗布面に有機無機ハイブリッド層を形成する工程、および
(d)第2の溶剤により前記有機無機ハイブリッド層からテンプレート剤を溶出して、三次元ナノポアフィルムを形成する工程、
により得られる複数のナノポアを備えた生成物であって、
その有効屈折率(Neff)が1.45以下、反射率が3%以下、透過率が93%以上であり、かつ、ヘイズ値が1〜2.1%である反射防止光学フィルムに関する。
【0042】
鉛筆硬度がF以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0043】
本発明にかかわる三次元ナノポアフィルムは、複数のナノポアがフィルム中に均一に分布して、複数のナノポアからなるナノポア構造断面が形成されてなっているため、フィルム内の空気量を大幅に増加させることができ、その有効屈折率(Neff)が1.45以下、反射率が3%以下、透過率が93%以上となる。また、本発明にかかわる三次元ナノポアフィルムは、鉛筆硬度がF以上あり、単にポリシロキサンのみからなる従来の反射防止フィルムよりも、機械強度においてはるかに優れている。さらに、本発明にかかわる三次元ナノポアフィルムは、溶剤に対する耐食性および付着性にも極めて優れるため、光学デバイスまたはディスプレイ装置に使用される保護能力を備えた反射防止フィルムとして最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明にかかわる三次元ナノポアフィルムの製造方法は次の工程からなる。
【0045】
(a)所定の塗布面を有する基板を準備する。
【0046】
(b)続いて、三次元ナノポア塗料を、基板の所定の塗布面に塗布する。この三次元ナノポア塗料は、第1の溶剤中に、
重合可能な官能基を有する13族原子の酸化物ゲル、14族原子の酸化物ゲル、15族原子の酸化物ゲル、シロキサンゲル、金属酸化物ゲルまたはこれらの組み合せである酸素含有化合物ゲル45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および酸素含有化合物ゲルおよびテンプレート剤の合計量に対して0.1〜10重量%の開始剤とを含んでなり、これらの酸素含有化合物ゲル、テンプレート剤、開始剤は、第1の溶剤中に均一に存在しているものである。
(c)次に、三次元ナノポア塗料からなる塗布膜に所定のエネルギーを与えて、重合反応させることにより、前記基板の所定の塗布面に有機無機ハイブリッド層を形成する。
(d)次いで、第2の溶剤により前記有機無機ハイブリッド層からテンプレート剤を溶出して、三次元ナノポアフィルムを形成する。
【0047】
本発明で用いられる基板は、特に限定されるものではないが、ガラス、熱可塑性基材または熱硬化性基材などの透明基材からなることが好ましい。具体的には、光学素子ガラスなどを用いることができる。
【0048】
三次元ナノポア塗料は、第1の溶剤中に、
重合可能な官能基を有する13族原子の酸化物ゲル、14族原子の酸化物ゲル、15族原子の酸化物ゲル、シロキサンゲル、金属酸化物ゲルまたはこれらの組み合せである酸素含有化合物ゲル45〜95重量%、好ましくは60〜90重量%、より好ましくは65〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは10〜35重量%、および酸素含有化合物ゲルおよびテンプレート剤の合計量に対して0.1〜10重量%、好ましくは1〜7重量%、より好ましくは3〜5重量%の開始剤とを含んでなり、これらの酸素含有化合物ゲル、テンプレート剤、開始剤は、第1の溶剤中に均一に存在しているものである。三次元ナノポア塗料中、酸素含有化合物が45重量%未満であると、形成されるナノポアフィルムの構造が不安定になる傾向があり、95重量%をこえると、形成されるナノポアの数が少なくなる傾向があり、フィルムの屈折率が高くなる傾向がある。また、開始剤が、0.1重量未満であると、光重合反応の転化率(conversion of photo-curing reaction)が低くなる傾向があり、10重量%をこえると、光重合反応の架橋密度(cross-linking density)が低くなる傾向がある。
【0049】
酸素含有化合物ゲルとしては、少なくとも1種の酸素含有化合物ゲル前駆体を縮合反応させて得られた生成物であってもよく、または少なくとも1種の酸素含有化合物ゲル前駆体を、縮合反応させずに、混合させたものであってもよく、いずれの場合も、該酸素含有化合物ゲル前駆体には、重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲル前駆体が含まれることが好ましい。
【0050】
テンプレート剤は、酸素含有化合物ゲル前駆体への溶解性が低いため、酸素含有化合物ゲル前駆体中でナノスケールに相分離するが、この状態は準安定状態であるため、酸素含有化合物ゲル前駆体が重合可能な官能基を有することで、重合反応することができ、テンプレート剤のナノスケールの相分散が安定な状態とすることが可能になる。
【0051】
重合可能な官能基としては、アクリル基(CH2=CH−COO−)、アクリルアミド基、エポキシ基、アミノ基、アルコキシ基またはイソシアネート基などをあげることができるが、これらの中でも、光または熱により硬化することにより架橋密度が高く、得られるフィルムが強靭になる点から、アクリル基、エポキシ基が好ましい。
【0052】
酸素含有化合物ゲル前駆体には、重合可能な官能基を有し、かつ、一般式(I)で表わされる構造を備えた第1の酸素含有化合物ゲル前駆体を含むことが、酸素含有化合物ゲル体(ゾル−ゲルやコロイド)を生成する原料としてもっとも一般的に用いられているために入手が容易であると共に、それぞれ異なる中心原子価数によって、多くの誘導体の選択可能性があり、かつ低価格であるという点から好ましい。
【0053】
【化5】

【0054】
ただし、R1はアクリル、アクリルアミド、エポキシ、アミノ、アルコキシ、イソシアネートまたは反応性二重結合を有する基、R2はアルキル、ハロゲン化アルキルまたはこれらの組み合せである。nとmはいずれも1以上であり、かつ、mとnの総和は2以上、好ましくは4である。nが1よりも大きい場合、各R1はいずれも同じまたはそれぞれ異なる官能基であり、mが1よりも大きい場合、各R2はいずれも同じまたはそれぞれ異なる官能基である。さらに、Mは13族の原子、14族の原子、15族の原子または遷移金属であり、具体的には、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、スズまたはアンチモンなどがあげられ、これらの中でも、屈折率が比較的低いため低屈折率の反射防止フィルムを作るのに適している点から、ケイ素、アルミニウムまたはスズが好ましく、導電性を備えている点ではスズが好ましい。これらのうち特に好ましいのは、ケイ素である。
【0055】
第1の酸素含有化合物ゲル前駆体の具体例としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(3-methacryliroxy propyl trimethoxy silane =MTPS)、3−メタクリルプロピルトリエトキシシラン(3-methacrylic propyl triethoxy silane)、グリシドキシトリエトキシシラン(glycidoxy triethoxysilane)、グリシドキシトリメトキシシラン(glycidoxy trimethoxysilane)、3−チオシアナトプロピル−トリエトキシシラン(3-thiocyanatopropyl-triethoxy silane)、3−アミノ−プロピルトリエトキシシラン(3-amino-propyltriethoxysilane)、グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(glycidyloxypropyl triethoxy silane)、テトラエトキシシラン(tetraethoxy silane)、ビニルトリエトキシシラン(vinyl triethoxy silane =VTES)、ビニルトリメトキシシラン(vinyl trimethoxy silane)、またはアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、スズもしくはアンチモン原子から誘導される反応性官能基を持つ酸素含有化合物である。これらの中でも、得られるフィルムの安定度を向上させることができるの点から、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0056】
また、酸素含有化合物ゲル前駆体には、一般式(II)で表わされる構造を備えた第2の酸素含有化合物ゲル前駆体を含むことが得られるフィルムの安定度を向上させることができる点から好ましい。
【0057】
【化6】

【0058】
ただし、R3はアルキルまたはハロゲン化アルキルであり、xは0以上、yは1以上、かつ、xとyの総和は2以上、好ましくは4である。各R3はいずれも同じまたはそれぞれ異なる官能基であり、Mは前記同様である。
【0059】
第2の酸素含有化合物ゲル前駆体の具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、オルトケイ酸テトラプロピル(tetrapropylorthosilicate =TPOS)、オルトケイ酸テトラブチル(tetrabutylorthosilicate =TBOS)、またはアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、スズもしくはアンチモン原子から誘導される酸素含有化合物である。これらの中でも、得られるフィルムの安定度を向上させることができる点から、テトラメトキシシランが好ましい。
【0060】
これらの酸素含有化合物ゲル前駆体を縮合反応させる場合、縮合反応条件としては、特に限定されるものではなく、通常縮合反応に用いられる条件を採用することができる。また、酸素含有化合物ゲル前駆体を、縮合反応させずに、混合させる場合の混合条件も特に限定されるものではない。
【0061】
三次元ナノポア塗料を基板に塗布する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、スプレーコート、ディップコート、バーコート、フローコート、スピンコート、スクリーン印刷またはローラーコート法などがあげられる。
【0062】
開始剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、光重合開始剤または熱重合開始剤などをあげることができる。重合開始剤としては、トリフェニルトリフラート、t−ブチル パーオキシベンゾエート(t-butyl peroxybenzoate)誘導体、t−ペンチル 1,2−ジパーオキシブチレート(t-pentyl 1,2-diperoxybutyrate)誘導体、t−ブチルパーオキシマレート(t-butyl peroxymaleate)、t−ペンチル イソパーオキシブチレート(t-pentyl iso-peroxybutyrate)誘導体、t−ペンチル パーオキシホルミレート(t-pentyl peroxyformylate)誘導体、t−ブチル パーオキシ2‐エチルヘキサノン(t-butyl peroxly-2-ethyl hexanone)誘導体、フェニルパーオキシド(Phenyl peroxide)誘導体などをあげることができる。これらの中でも、トリフェニルトリフラートが好ましい。
【0063】
また、テンプレート剤としては、非反応性の有機化合物、オリゴマー、重合体またはこれらの混合物などがあげられる。非反応性の有機化合物としては、たとえば、ネマチック液晶などがあげられ、オリゴマーとしては、低分子量ポリエチレングリコール(PEG)などがあげられ、重合体としては、ポリメチルメタクリレートなどがあげられる。
【0064】
これらの中でも、第1溶剤および酸素含有化合物ゲルとの相溶性などの点から、非反応型ネマチック液晶、ポリメチルメタクリレートであることが好ましい。
【0065】
第1の溶剤は、酸素含有化合物ゲル、テンプレート剤および開始剤を同時に均一に溶解させることのできる単一の有機溶剤または数種の有機溶剤からなる混合物であり、たとえば、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゼン、トルエンなどをあげることができる。
【0066】
第2の溶剤は、テンプレート剤を均一に溶解させることはできるが、重合可能な官能基を持つ酸素含有化合物ゲルが重合した後にできる架橋網目状の有機無機ハイブリッド体を溶解させることはできない単一の有機溶剤または数種の有機溶剤からなる混合物であり、たとえば、アセトン、ヘキサン、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールなどをあげることができる。
【0067】
所定のエネルギーとしては、通常硬化反応に用いるエネルギー手段であればよく、加熱または光線照射の手段があげられる。加熱または光照射手段としては、特に限定されるものではなく、たとえば、紫外線露光装置等をあげることができる。
【0068】
本発明では、重合可能な官能基を持つ酸素含有化合物ゲルの塗料における粘度、および重合可能な官能基を持つ酸素含有化合物とテンプレート剤との重量比などのパラメータにさらなる調整を加えることを通して、三次元ナノポアの空間分布、およびフィルムにおけるポアの体積分率を制御している。こうすることによって、より確実に、形成されたフィルムに、複数のナノポアからなるナノポア構造の断面が備わることとなる。したがって、本発明において、第1の溶剤に重合可能な官能基を持つ酸素含有化合物ゲルを溶解させた粘度を、5〜100cps/25℃の範囲に制御するのが好ましく、5〜50cps/25℃の範囲に制御することがより好ましい。
【0069】
また、重合可能な官能基を持つ酸素含有化合物ゲルとテンプレート剤の重量比は、19:1〜9:11であることが好ましく、10:1〜1:1であることがより好ましい。酸素含有化合物とテンプレート剤の重量比がこの範囲にあることで、形成されたナノポアフィルムの構造が安定する傾向がある。重合可能な官能基を持つ酸素含有化合物ゲルが95重量%をこえると、形成されるナノポアの数が少なくなる傾向があり、フィルムの屈折率が高くなる傾向がある。
【0070】
本発明において、三次元ナノポア塗料は、酸素含有化合物およびテンプレート剤の合計量に対して、0.5〜50重量%の添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤の量がこの範囲にないと、ナノポアの形成が阻害される、またはフィルムの構造が不安定となる傾向がある。
【0071】
添加剤としては、平坦化剤(flattening agent)、平滑剤(leveling agent)、充填剤、接着促進剤、消泡剤などがあげられ、これらを1種または2種以上用いることができる。平坦化剤(または平滑剤)としては、イオン性または非イオン性の界面活性剤などがあげられ、充填剤としては、ナノスケールの無機酸化物微粒子などがあげられ、接着促進剤としては、高酸価の感光性樹脂または反応性官能基有するシラン化合物などがあげられ、消泡剤としては、イオン性または非イオン性の界面活性剤などをあげることができる。
【0072】
また、本発明において、三次元ナノポア塗料は、酸素含有化合物およびテンプレート剤の合計量に対して、5〜50重量%の光硬化樹脂をさらに含んでいてもよい。光硬化樹脂の添加量が5重量%未満であると、フィルムの安定性が劣る傾向があり、50重量%をこえると、テンプレート剤が除去され難くなる傾向がある。
【0073】
光硬化樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンなどがあげられ、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0074】
具体的には、例えば、メチルアクリレート(methyl acrylate)誘導体、エチルアクリレート(ethyl acrylate)誘導体、ブチルアクリレート(butyl acrylate)誘導体、2−エチルヘキシルアクリレート(2-ethyl hexyl acrylate)誘導体、メチルメタクリレート(methyl methacrylate)誘導体、ペンタエリスリトールトリアクリレート(pentaerythritol triacrylate)、2−ヒドロキシルエチルアクリレート(2-hydroxyl-ethyl acrylate)誘導体、2−ヒドロキシルエチルメチルアクリレート(2-hydroxyl-ethyl methylacrylate)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(2-hydroxy propylacrylate)誘導体、アクリルアミド(acrylamide)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(1,6-hexanediol diacrylate)、エチレングリコールジアクリレート(ethyleneglycol diacrylate)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(pentaerythritol tetraacrylate)、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(ethoxylated pentaerythritol tetraacrylate)、トリエチレングリコールジアクリレート(triethyleneglycol diacrylate)、トリプロピレングリコールジアクリレート(tripropyleneglycol diacrylate)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(neopentylglycol diacrylate)、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(trimethylolpropane trimethacrylate)、トリメチロールプロパンペンタエリスリトールトリアクリレート(trimethylolpropane pentaerythritol triacrylate)などがあげられ、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0075】
また、アクリル基を有する感光性樹脂モノマーの平均官能基数が2以上であることが好ましい。
【0076】
本発明にかかわる三次元ナノポアフィルムの形成方法についてさらに詳しく説明する。 酸素含有化合物ゲル前駆体、テンプレート剤、開始剤、および第1の溶剤を、これら各成分が均一に溶解して単一液相となるよう均一に混合して塗布液を作り、この均一な塗布液を所定の基板に塗布することによりコーティング層を形成する。その後、加熱または自然揮発によって、該コーティング層から第1の溶剤を徐々に取り除く際に、酸素含有化合物ゲル前駆体とテンプレート剤とが互いに非相溶であるため次第に相分離していき、ナノスケールの不均一相フィルムが形成される。このときに起こる酸素含有化合物ゲルの自己縮合反応によって、フィルムにおける酸素含有化合物ゲルの構造が安定になる。さらに、この後、所定のエネルギーを与えて重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルを開始剤の存在下で重合させると、この酸素含有化合物ゲルの機械強度が高められる。そして最後に、第2の溶剤によりテンプレート剤を選択的に溶出すれば、三次元ナノポアフィルムが形成されることとなる。ここで注目すべきは、本発明では、組成配合中における酸素含有化合物ゲル前駆体の重合可能な官能基の選定、酸素含有化合物ゲルとテンプレート剤の相溶性、重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルとテンプレート剤の重量比、および重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルの塗料における粘度、などといったパラメータに更なる調整を加えることを通し、三次元ナノポアのサイズ、空間分布、およびフィルム中のポアの体積分率を制御して、複数のナノポアからなるナノポア構造の有機無機酸素含有化合物ゲルフィルムを得る、という点である。
【0077】
そして、さらに注目すべきなのは、本発明の製造方法により得られる三次元ナノポアフィルムは、有機官能基が互いに架橋してなる酸素含有化合物ゲル(有機無機ハイブリッド体)により構成されるという点である。かかる酸素含有化合物ゲルは、例えば、シロキサンゲルであるため、シラノール基の縮合反応によってできるロキサン結合(Si−O−Si)の硬さに加えて、ポリシロキサン構造中の有機官能基が重合反応を行うことによりハイブリッド体からなるフィルムの架橋密度が高まることも、フィルム機械強度の要素になる。よって、本発明の三次元ナノポアフィルムは、ナノポアを高体積分率で有していながら、その機械強度と硬度は依然高水準のままであり、これを反射防止フィルムとして使用すれば、耐磨耗性が大いに改善されることとなる。したがって、本発明にかかわる三次元ナノポアフィルムは、フラットディスプレイの反射防止用光学コーティングとして最適である。
【0078】
また、本発明は、次の工程によって得られる、複数のナノポアからなるナノポア構造を有する三次元ナノポアフィルムに関する。
(a)所定の塗布面を有する基板を準備する。
(b)続いて、三次元ナノポア塗料を、基板の所定の塗布面に塗布する。この三次元ナノポア塗料は、第1の溶剤中に、
重合可能な官能基を有する13族原子の酸化物ゲル、14族原子の酸化物ゲル、15族原子の酸化物ゲル、シロキサンゲル、金属酸化物ゲルまたはこれらの組み合せである酸素含有化合物ゲル45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および酸素含有化合物ゲルおよびテンプレート剤の合計量に対して0.1〜10重量%の開始剤を含んでなり、これらの酸素含有化合物ゲル、テンプレート剤、開始剤は、第1の溶剤中に均一に存在しているものである。
(c)次に、三次元ナノポア塗料からなる塗布膜に所定のエネルギーを与えて、重合反応させることにより、前記基板の所定の塗布面に有機無機ハイブリッド層を形成する。
(d)次いで、第2の溶剤により前記有機無機ハイブリッド層からテンプレート剤を溶出して、三次元ナノポアフィルムを形成する。
【0079】
前記工程は、前記製造方法と同様である。
【0080】
前記工程(a)〜(d)で得られた三次元ナノポアフィルムの膜厚は50〜300nmであり、80〜200nmであることが好ましく、90〜150nmであることがより好ましい。膜厚が50nm未満であると可視光波長領域における反射能力を持たないよう、光学設計上の不具合が生じる傾向があり、300nmをこえると、光の干渉現象が生じる傾向がある。
【0081】
前記工程(a)〜(d)で得られた三次元ナノポアフィルムのポアサイズは、5〜80nmであり、5〜50nmであることが好ましく、5〜20nmであることがより好ましい。ポアサイズが5nm未満であるとテンプレート剤が除去され難くなる傾向があり、ポアサイズが80nmをこえると、フィルムの安定性が劣る傾向がある。
【0082】
本発明の三次元ナノポアフィルムの有効屈折率(Neff)は1.45以下であり、1.40以下であることが好ましく、1.38以下であることがより好ましい。有効屈折率の下限値については特に限定されない。有効屈折率が1.45をこえると屈折率が高すぎて低屈折率の反射防止光学フィルムを作製するのに適さなくなる傾向がある。
【0083】
本発明の三次元ナノポアフィルムの反射率は3%以下であり、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。反射率の下限値については特に限定されない。反射率が3%をこえると反射防止光学フィルムとしての機能を失う傾向がある。
【0084】
本発明の三次元ナノポアフィルムの透過率は93%以上であり、94%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。透過率の上限値については特に限定されない。透過率が93%未満であると反射防止光学フィルムとしての機能を失う傾向がある。
【0085】
本発明の三次元ナノポアフィルムのヘイズ値は1〜2.1%であり、0〜1.5%であることが好ましく、1〜1.5%であることがより好ましい。ヘイズ値が2.1%をこるとフィルムの透明度が不充分となって表示品質が劣る傾向がある。
【0086】
本発明の三次元ナノポアフィルムの鉛筆硬度はF以上であるため、光学デバイスまたはディスプレイ装置の反射防止フィルムとして非常に適している。
【0087】
本発明にかかわる三次元ナノポアフィルムは、反射防止および耐摩耗性能に極めて優れるため、このものをディスプレイ装置(例えば、光学レンズ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイまたはLEDディスプレイ)の最外層に設ければ、映像がグレアや反射光の影響を受けるといった事態を回避することができるとともに、ディスプレイ装置を摩損から保護する機能も備わる。
【0088】
本発明にかかわる三次元ナノポアフィルムは、複数のナノポアを有するナノポア構造を備え、これら複数のナノポアがフィルム中に均一に分布してなるため、その有効屈折率が(Neff)が1.45以下、反射率が3%以下、透過率が93%以上、ヘイズ値が1〜2.1%となり、かつ鉛筆硬度がF以上であるので、光学デバイスまたはディスプレイ装置の反射防止および耐磨耗性フィルムとして非常に適している。
【0089】
図2は、本発明にかかわる三次元ナノポアフィルムの断面構造を説明する図であり、ナノポアを備える三次元ナノポアフィルム12が基板上10に配置された状態が示されている。
【実施例】
【0090】
以下に、本発明が明りょうに理解されるよう、本発明にかかわる重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲル、三次元ナノポアフィルムおよびその製造方法を、実施例1〜10をあげて説明する。
【0091】
<反射率>
実施例で得られた塗料を透明基板にスピンコーティングしてから、80℃で5分間ベークして冷却したのち、該基板を紫外線露光装置で露光した。続いて、非塗布面に表面粗化処理を施すことで、反射率測定用の試料を作製した。
【0092】
5°の反射測定器を分光計((株)島津製作所製、紫外可視近赤外分光光度計 UV−VIS−NIR SCANNING UV−3150およびMPC−3100)内にセットすると共に、試料を入れて測定を行った。測定モードは、反射モード、測定範囲は400〜800nm、記録範囲は0〜100%、走査速度はミディアム、格子幅は2nm、各点間の距離は1nmとし、反射スペクトルおよびデータを得た。
【0093】
<透過率>
実施例で得られた塗料を透明基板にスピンコーティングしてから、80℃で5分間ベークして冷却したのち、該基板を紫外線露光装置で露光した。続いて、非塗布面に表面粗化処理を施すことで、透過率測定用の試料を作製した。
【0094】
分光計((株)島津製作所製、紫外可視近赤外分光光度計 UV−VIS−NIR SCANNING UV−3150およびMPC−3100)に試料をセットして測定を行った。測定モードは、透過モード、測定範囲は400〜800nm、記録範囲は0〜100%、走査速度はミディアム、格子幅は2nm、各点間の距離は1nmとし、透過スペクトルおよびデータを得た。
【0095】
<膜厚>
レーザーエリプソメータを用いて測定した。
【0096】
<ポアサイズ>
BET法により測定した。
【0097】
<有効屈折率>
レーザーエリプソメータを用いて測定した。
【0098】
<粘度>
ブルックフィールド粘度計を用いて、測定温度25℃にて測定した。
【0099】
<鉛筆硬度試験>
実施例4〜6および比較例2で得られた三次元ナノポアフィルムについて、鉛筆硬度をJIS K5600にしたがって測定した。
【0100】
<付着性試験>
実施例4〜6および比較例2で得られた三次元ナノポアフィルムについて、JIS K5400にしたがって碁盤目(100マス)試験を行った。透明な粘着テープ(3M社製、Scotch ♯600)を上記各例で得られた基板上の三次元ナノポアフィルムにしっかりと貼り付け、セロハンテープを瞬間的に引き剥がし、三次元ナノポアフィルムが剥離するか否かを観察した。評価方法は、以下の通りである。
◎・・・全碁盤目が剥離なく、完全に基板に付着していた。
×・・・1/100〜99/100の剥離が生じた。
【0101】
<耐溶剤性試験>
エタノールを数滴、実施例4〜6および比較例2で得られた三次元ナノポアフィルム膜上に滴下して10分間静置し、三次元ナノポアフィルムに変形・屈曲が生じるか否か、またはその表面に白化もしくは侵食が生じるか否かを観察した。
◎・・・変形・屈曲も、白化・侵食も生じなかった。
×・・・変形・屈曲、白化・侵食が生じた。
【0102】
<ヘイズ値(H%)試験>
透過率計(Hazemter、MODEL TC−HIII)によりヘイズ値を測定した。
【0103】
実施例1(重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルA)
反応容器を用意し、この容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(3-methacryliroxy-propyl trimethoxy silane)、テトラメトキシシラン(tetra-methoxy silane =TMOS)、塩酸(HCl)、純水およびエタノールを入れて均一に混合してから、3時間60℃で還流した。3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、塩酸、純水およびエタノールのモル比は0.25:0.75:0.1:4:15である。反応が終了したのち、重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルAを得た。
【0104】
実施例2(重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルB)
反応容器を用意し、この容器に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(γ-glycidoxypropyl-trimethoxysilane)、テトラエトキシシラン(tetra-ethoxy silane =TEOS)、塩酸(HCl)、純水およびエタノールを入れて均一に混合してから、1時間35℃で還流した。γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、塩酸、純水およびエタノールのモル比は0.3:0.7:0.05:4:50である。反応が終了したのち、重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルB(シロキサンゲル)を得た。
【0105】
実施例3(重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルC)
反応容器を用意し、この容器に、ビニルトリエトキシシラン(vinyl triethoxysilane)、テトラエトキシシラン(TEOS)、塩酸(HCl)、純水およびエタノールを入れて均一に混合してから、3時間60℃で還流した。ビニルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、塩酸、純水およびエタノールのモル比は0.5:0.5:0.1:4:60であった。反応が終了したのち、重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルCを得た。
【0106】
実施例4(重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルD)
反応容器を用意し、この容器に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(3-methacrylicoxy-propyl trimethoxy silane)、ナノスケールのコロイド状シリカ(日産化学工業(株)製、MAST、12nm in methanol)、塩酸(HCl)、純水およびエタノールを入れて均一に混合してから、4時間70℃で還流した。3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、コロイド状シリカ、塩酸、純水およびエタノールのモル比は0.25:0.75:0.75:3:50である。反応が終了したのち、重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルDを得た。
【0107】
比較例1
反応容器を用意し、この容器に、テトラメトキシシラン(TMOS)、塩酸(HCl)、純水およびエタノールを入れて均一に混合したのち、3時間60℃で還流した。テトラメトキシシラン、塩酸、純水およびエタノールのモル比は0.75:0.042:4:72である。反応が終了したのち、ポリテトラメトキシシランを得た。
【0108】
実施例5(三次元ナノポアフィルム(A)の作製)
反応容器を用意し、この容器に、実施例1で調製した重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルA6g、およびポリメチルメタクリレート(PMMA)(数平均分子量約15000)4gを入れ、室温25℃下、テトラヒドロフラン(THF)を加えて溶かし、固溶比2重量%の塗布液を作って完全に溶解するまで攪拌したのち、光開始剤としてトリフェニルトリフラート0.2gを加えて、酸素化合物ゲルAとテンプレート剤の重量比が6:4、重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルAの該塗料における粘度が10cps/25℃の三次元ナノポア塗料を調製した。
【0109】
次に、スピンコーターの回転速度を2500rpmに制御して30秒間スピンコートを行って、この三次元ナノポア塗料をガラス基板に塗布してから、60℃のオーブンで3分間ベークして溶剤を除去した。続いて、窒素雰囲気下、紫外線露光装置を用いて露光することにより、酸素含有化合物ゲルA中の3−プロピルメタクリレート(重合可能な官能基)を窒素雰囲気下で互いに架橋重合反応させて有機ポリシリケートポリマーフィルムを形成した。そして、ガラス基板に形成されたポリマーフィルムをアセトンに浸してテンプレート剤を選択的に溶出し、膜厚150nmの三次元ナノポアフィルム(A)を得た。その有効屈折率は1.28、BET法により測定した平均ポアサイズは、78nmであった。
【0110】
次いで、紫外可視近赤外線分光光度計(UV−3150およびMPC−3100)により、反射防止用光学コーティングとしての光学特性を観察した。図2に示すのは、実施例5により作製された三次元ナノポアフィルムの透過率と波長の関係を示す図であり、図3に示すのは、同三次元ナノポアフィルムの反射率と波長の関係を示す図である。
【0111】
また、作製された三次元ナノポアフィルムについて、各々の硬度を測ると共に、付着性試験、耐溶剤性試験およびヘイズ値試験をそれぞれ行った。その結果は表1に示す。
【0112】
実施例6(三次元ナノポアフィルム(B))
反応容器を用意し、この容器に、実施例4で調製した重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルD7g、および非反応型ネマチック液晶(メルク社製、E7)3gを入れ、室温25℃下、テトラヒドロフラン(THF)を加えて溶かし、固溶比2重量%の塗布液を作って完全に溶解するまで攪拌したのち、光開始剤としてトリフェニルトリフラート0.2gを加えて、酸素含有化合物ゲルDとテンプレート剤の重量比が7:3、重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルDの該塗料における粘度が8cps/25℃の三次元ナノポア塗料を調製した。
【0113】
次に、スピンコーターの回転速度を2500rpmに制御して30秒間スピンコートを行うことにより、この三次元ナノポア塗料をガラス基板に塗布してから、60℃のオーブンで3分間ベークして溶剤を除去した。続いて、窒素雰囲気下、紫外線露光装置を用いて露光することにより、酸素含有化合物ゲルD中の3−プロピルメタクリレート(重合可能な官能基)を窒素雰囲気下で互いに架橋重合反応させて有機ポリシリケートポリマーフィルムを形成したら、これを120℃で30分間ベークして、酸素含有化合物ゲル(シロキサンゲル)における未反応のシラノール基を縮合反応させた。そして、ガラス基板に形成されたポリマーフィルムをノルマルヘキサンに浸してテンプレート剤を選択的に溶出し、膜厚150nmの三次元ナノポアフィルム(B)を得た。その有効屈折率は1.31、ポアサイズは、7〜15nmであった。
【0114】
また、作製された三次元ナノポアフィルムについて、各々の硬度を測ると共に、付着性試験、耐溶剤性試験およびヘイズ値試験をそれぞれ行った。その結果は表1に示す。
【0115】
実施例7(三次元ナノポアフィルム(C))
実施例5で用いた重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルAを、重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルBに置き換えたこと以外は、実施例5と同じ手法により作製した。その三次元ナノポア塗料においても、酸素含有化合物ゲルBとテンプレート剤の重量比は6:4、重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルBの塗料における粘度は10cps/25℃である。また、得られた三次元ナノポアフィルム(C)の膜厚は150nm、有効屈折率は1.29、ポアサイズは、10〜23nmであった。
【0116】
また、作製された三次元ナノポアフィルムについて、各々の硬度を測ると共に、付着性試験、耐溶剤性試験およびヘイズ値試験をそれぞれ行った。その結果は表1に示す。
【0117】
実施例8(三次元ナノポアフィルム(D))
実施例5で用いた重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルA6gを、重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルC7gに置き換え、その三次元ナノポア塗料における酸素含有化合物ゲルCとテンプレート剤の重量比を7:3としたこと以外は、実施例5と同じ手法により作製した。三次元ナノポア塗料における重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルCの塗料における粘度は10cps/25℃である。また、得られた三次元ナノポアフィルム(D)の膜厚は150nm、有効屈折率は1.31、ポアサイズは、8〜15nmであった。
【0118】
また、作製された三次元ナノポアフィルムについて、各々の硬度を測ると共に、付着性試験、耐溶剤性試験およびヘイズ値試験をそれぞれ行った。その結果は表1に示す。
【0119】
実施例9(三次元ナノポアフィルム(E))
実施例6で用いた重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルD7gを、重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルA4gに置き換え、重合可能な樹脂であるペンタエリスリトールトリアクリレート3gを新たに追加して、その三次元ナノポア塗料における酸素含有化合物ゲルA、重合可能な樹脂およびテンプレート剤の重量比を4:3:3としたこと以外は、実施例6と同じ手法により作製した。三次元ナノポア塗料における重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルAの塗料における粘度は10cps/25℃である。また、得られた三次元ナノポアフィルム(E)の膜厚は150nm、有効屈折率は1.39、ポアサイズは、8〜15nmであった。
【0120】
また、作製された三次元ナノポアフィルムについて、各々の硬度を測ると共に、付着性試験、耐溶剤性試験およびヘイズ値試験をそれぞれ行った。その結果は表1に示す。
【0121】
実施例10(三次元ナノポアフィルム(F))
実施例6で用いた重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルD7gを4gに減らし、重合可能な樹脂であるペンタエリスリトールトリアクリレート3gを新たに追加して、その三次元ナノポア塗料における酸素含有化合物ゲルD、重合可能な樹脂およびテンプレート剤の重量比を4:3:3としたこと以外は、実施例6と同じ手法により作製した。三次元ナノポア塗料における重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルDの塗料における粘度は12cps/25℃である。また、得られた三次元ナノポアフィルム(F)の膜厚は150nm、有効屈折率は1.41、ポアサイズは、7〜13nmであった。
【0122】
また、作製された三次元ナノポアフィルムについて、各々の硬度を測ると共に、付着性試験、耐溶剤性試験およびヘイズ値試験をそれぞれ行った。その結果は表1に示す。
【0123】
比較例2(三次元ナノポアフィルム(G))
実施例5で用いた重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルA6gを、比較例1で得られたポリテトラメトキシシラン6gに置き換えたこと以外は、実施例5と同じ手法により作製した。その三次元ナノポア塗料におけるポリテトラメトキシシランおよびテンプレート剤の重量比は6:4である。また、得られた三次元ナノポアフィルム(G)の膜厚は150nm、ポアサイズは、9〜23nmであった。
【0124】
また、作製された三次元ナノポアフィルムについて、各々の硬度を測ると共に、付着性試験、耐溶剤性試験およびヘイズ値試験をそれぞれ行った。その結果は表1に示す。
【0125】
【表1】

【0126】
複数のナノポアがフィルム中に均一に分布して、複数のナノポアを備えた断面が形成されてなる本発明の三次元ナノポアフィルムは、フィルム内の空気の量を大幅に増加させることができるため、フィルムの有効屈折率(Neff)が1.45以下に低減され、反射率が3%以下となる。また、表1に示されているように、本発明にかかわる三次元ナノポアフィルムは、その鉛筆硬度がF以上、ヘイズ値が1〜2.1%であり、単にポリシロキサンのみからなる従来の反射防止フィルムに比べるとより優れた機械強度を備えていることがわかる。さらに、本発明にかかわる三次元ナノポアフィルムは、溶剤に対する耐食性および付着性にも極めて優れるため、光学デバイスまたはディスプレイ装置に使用される保護能力を備えた反射防止フィルムとして最適である。
【0127】
以上、好適な実施例により本発明を説明したが、これによって本発明が限定されることはなく、当業者であれば、本発明の思想および範囲を逸脱しない限りにおいて、各種変更および修飾を加えることができる。すなわち、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されたものにより決定される。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明にかかわる三次元ナノポアフィルムの好ましい形態の断面構造説明図である。
【図2】本発明実施例5により作製された三次元ナノポアフィルムの透過率と波長との関係を示す図である。
【図3】本発明実施例5により作製された三次元ナノポアフィルムの反射率と波長との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0129】
10 基板
12 三次元ナノポアフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)所定の塗布面を有する基板を準備する工程、
(b)第1の溶剤中に、重合可能な官能基を有する13族原子の酸化物ゲル、14族原子の酸化物ゲル、15族原子の酸化物ゲル、シロキサンゲル、金属酸化物ゲルまたはこれらの組み合せである酸素含有化合物ゲル45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および酸素含有化合物ゲルおよびテンプレート剤の合計量に対して0.1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポア塗料を、前記基板の所定の塗布面に塗布する工程、
(c)三次元ナノポア塗料からなる塗布膜に所定のエネルギーを与えて、重合反応させることにより、前記基板の所定の塗布面に有機無機ハイブリッド層を形成する工程、および
(d)第2の溶剤により前記有機無機ハイブリッド層からテンプレート剤を溶出して、三次元ナノポアフィルムを形成する工程、
からなる三次元ナノポアフィルムの製造方法。
【請求項2】
重合可能な官能基が、アクリル基、アクリルアミド基、エポキシ基、アミノ基、アルコキシ基またはイソシアネート基である請求項1記載の三次元ナノポアフィルムの製造方法。
【請求項3】
酸素含有化合物ゲルが、少なくとも1種の酸素含有化合物ゲル前駆体を縮合反応させて得られる生成物であり、該酸素含有化合物ゲル前駆体には、重合可能な官能基を有する第1の酸素含有化合物ゲル前駆体が含まれる請求項1記載の三次元ナノポアフィルムの製造方法。
【請求項4】
酸素含有化合物ゲルが、少なくとも1種の酸素含有化合物ゲル前駆体を混合させたものであり、該酸素含有化合物ゲル前駆体には、重合可能な官能基を有する第1の酸素含有化合物ゲル前駆体が含まれる請求項1記載の三次元ナノポアフィルムの製造方法。
【請求項5】
第1の酸素含有化合物ゲル前駆体が、一般式(I):
【化1】

(R1はアクリル、アクリルアミド、エポキシ、アミノ、アルコキシ、イソシアネートまたは反応性二重結合を有する基であり、R2はアルキル、ハロゲン化アルキルまたはこれらの組み合せであり、nとmはいずれも1以上であり、nが1よりも大きい場合、各R1はいずれも同じまたはそれぞれ異なる官能基であり、mが1よりも大きい場合、各R2はいずれも同じまたはそれぞれ異なる官能基である。Mは13族の原子、14族の原子、15族の原子または遷移金属原子である。)
で示される構造を有する化合物である請求項3記載の三次元ナノポアフィルムの製造方法。
【請求項6】
酸素含有化合物ゲル前駆体に、さらに一般式(II):
【化2】

(R3はアルキルまたはハロゲン化アルキルであり、xは0以上、yは1以上、かつ、x+yは2以上であり、各R3はいずれも同じまたはそれぞれ異なる官能基であり、Mは前記同様である。)
で示される構造を有する第2の酸素含有化合物ゲル前駆体を含む請求項3記載の三次元ナノポアフィルムの製造方法。
【請求項7】
第1の溶剤に酸素含有化合物ゲルを溶解させたときの粘度が5〜100cps/25℃となるように調整することを特徴とする請求項1記載の三次元ナノポアフィルムの製造方法。
【請求項8】
重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルとテンプレート剤の重量比が19:1〜9:11である請求項1記載の三次元ナノポアフィルムの製造方法。
【請求項9】
三次元ナノポアフィルムのポアサイズが5〜80nmである請求項1記載の三次元ナノポアフィルムの製造方法。
【請求項10】
さらに、三次元ナノポア塗料に、酸素含有化合物ゲルおよびテンプレート剤の合計量に対して5〜50重量%の光硬化樹脂を含む請求項1記載の三次元ナノポアフィルムの製造方法。
【請求項11】
光硬化樹脂が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンまたはこれらの組み合せからなる請求項10記載の三次元ナノポアフィルムの製造方法。
【請求項12】
(a)所定の塗布面を有する基板を準備する工程、
(b)第1の溶剤中に、重合可能な官能基を有する13族原子の酸化物ゲル、14族原子の酸化物ゲル、15族原子の酸化物ゲル、シロキサンゲル、金属酸化物ゲルまたはこれらの組み合せである酸素含有化合物ゲル45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および酸素含有化合物ゲルおよびテンプレート剤の合計量に対して0.1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポア塗料を、前記基板の所定の塗布面に塗布する工程、
(c)三次元ナノポア塗料からなる塗布膜に所定のエネルギーを与えて重合反応させることにより、前記基板の所定の塗布面に有機無機ハイブリッド層を形成する工程、および、
(d)第2の溶剤により前記有機無機ハイブリッド層から前記テンプレート剤を溶出して、三次元ナノポアフィルムを形成する工程、
により得られる複数のナノポアを備えた生成物であって、
その膜厚が50〜300nmであり、かつ、そのポアサイズが5〜80nmである三次元ナノポアフィルム。
【請求項13】
重合可能な官能基が、アクリル基、アクリルアミド基、エポキシ基、アミノ基、アルコキシ基またはイソシアネート基である請求項12記載の三次元ナノポアフィルム。
【請求項14】
酸素含有化合物ゲルが、少なくとも1種の酸素含有化合物ゲル前駆体を縮合反応させて得られる生成物であり、該酸素含有化合物ゲル前駆体には、重合可能な官能基を有する第1の酸素含有化合物ゲル前駆体が含まれる請求項12記載の三次元ナノポアフィルム。
【請求項15】
酸素含有化合物ゲルが、少なくとも1種の酸素含有化合物ゲル前駆体を混合させたものであり、該酸素含有化合物ゲル前駆体には、重合可能な官能基を有する第1の酸素含有化合物ゲル前駆体が含まれる請求項12記載の三次元ナノポアフィルム。
【請求項16】
第1の酸素含有化合物ゲル前駆体が、一般式(I):
【化3】

(R1はアクロキシ、アクリルアミド、エポキシ、アミノ、アルコキシ、イソシアネートまたは反応性二重結合を有する基であり、R2はアルキル、ハロゲン化アルキルまたはこれらの組み合せであり、nとmはいずれも1以上であり、nが1よりも大きい場合、各R1はいずれも同じまたはそれぞれ異なる官能基であり、mが1よりも大きい場合、各R2はいずれも同じまたはそれぞれ異なる官能基である。Mは13族の原子、14族の原子、15族の原子または遷移金属原子である。)
で示される構造を有する化合物である請求項14記載の三次元ナノポアフィルム。
【請求項17】
酸素含有化合物ゲル前駆体に、さらに一般式(II):
【化4】

(R3はアルキルまたはハロゲン化アルキルであり、xは0以上、yは1以上、かつ、x+yは2以上であり、各R3はいずれも同じまたはそれぞれ異なる官能基であり、Mは前記同様である。)
で示される構造を有する第2の酸素含有化合物ゲル前駆体を含む請求項15記載の三次元ナノポアフィルム。
【請求項18】
鉛筆硬度がF以上である請求項12記載の三次元ナノポアフィルム。
【請求項19】
第1の溶剤に酸素含有化合物ゲルを溶解させたときの粘度が、5〜100cps/25℃となるように調整することを特徴とする請求項12記載の三次元ナノポアフィルム。
【請求項20】
重合可能な官能基を有する酸素含有化合物ゲルとテンプレート剤の重量比が19:1〜9:11である請求項12記載の三次元ナノポアフィルム。
【請求項21】
さらに、三次元ナノポア塗料に、酸素含有化合物ゲルおよびテンプレート剤の合計量に対して5〜50重量%の光硬化樹脂を含む請求項12記載の三次元ナノポアフィルム。
【請求項22】
光硬化樹脂が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンまたはこれらの組み合せからなる請求項21記載の三次元ナノポアフィルム。
【請求項23】
(a)所定の塗布面を有する基板を準備する工程、
(b)第1の溶剤中に、重合可能な官能基を有する13族原子の酸化物ゲル、14族原子の酸化物ゲル、15族原子の酸化物ゲル、シロキサンゲル、金属酸化物ゲルまたはこれらの組み合せである酸素含有化合物ゲル45〜95重量%、テンプレート剤5〜55重量%、および酸素含有化合物ゲルおよびテンプレート剤の合計量に対して0.1〜10重量%の開始剤が均一に存在している三次元ナノポア塗料を、前記基板の所定の塗布面に塗布する工程、
(c)三次元ナノポア塗料からなる塗布膜に所定のエネルギーを与えて、重合反応させることにより、前記基板の所定の塗布面に有機無機ハイブリッド層を形成する工程、および
(d)第2の溶剤により前記有機無機ハイブリッド層からテンプレート剤を溶出して、三次元ナノポアフィルムを形成する工程、
により得られる複数のナノポアを備えた生成物であって、
その有効屈折率(Neff)が1.45以下、反射率が3%以下、透過率が93%以上であり、かつ、ヘイズ値が1〜2.1%である反射防止光学フィルム。
【請求項24】
鉛筆硬度がF以上である請求項23記載の高機械強度を備えた反射防止光学フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−70264(P2006−70264A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228090(P2005−228090)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【Fターム(参考)】