説明

機械部品の寸法および/または形状の検査装置

【課題】公知のゲージの欠点を克服した、機械部品の直径および形状誤差を検出するプラグゲージとしての検査装置を提供する。
【解決手段】検査装置は、2つ以上の数のフィーラ36と、前記フィーラ36の測定方向に沿った相互移動を示す電気信号を生成する位置トランスデューサ37とを備える検査装置であって、適合システムが前記フィーラ36のうち少なくとも1つのフィーラ36と結合され、前記少なくとも1つのフィーラ36を、前記測定方向と垂直な適合方向に実質的に沿って動かすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品の直径寸法および/または形状誤差を検査する装置に関し、長手方向軸を画定する支持構造体と、支持構造体に結合された少なくとも1つのセルを備えた検査手段とを備え、この検査手段は、部品の表面と接触するように適合される少なくとも2つのフィーラと、フィーラの位置を示す電気信号を生成するように適合される少なくとも1つのトランスデューサとを含む。
【0002】
本発明はまた、2つ以上のフィーラと、測定方向に沿ってフィーラの相互移動を示す電気信号を生成する位置トランスデューサとを備える検査装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の装置では、例えば研削機のような工作機械での加工前または後に、例えば孔の直径を検査するためのいわゆる「プラグ」型ゲージが知られている。
【0004】
米国特許第4,348,814号にはこのようなゲージの例が開示されている。この特許では、支持体に結合された測定アームセットが、検査される孔の表面に接触するための、可動アームに固定された2つのフィーラを直径の対向位置に含む。トランスデューサが、可動アーム間の相互移動を検出し、フィーラの相互位置を表す電気信号を生成する。
【0005】
米国特許第4,339,879号は、公称直径が異なる断面の孔を検査するための複数プラグゲージを開示しており、このゲージは、各々が1つのフィーラを備えたセルの組を含み、正反対の位置で、支持体を形成する適切な直径の部分で、中心の支持体に結合されている。成形された孔内で締付ねじを結合することにより、セルは制限的に調節可能な方法で結合され、それによってプラグゲージの軸と平行な方向に沿って、および横断方向に沿って測定ヘッドの位置を基準位置辺りで調節することができる。
【0006】
本明細書で2番目に述べた米国特許に記載されている複数ゲージの構造は、明確な特性を有し、中心支持体の形状および寸法と合致した孔を検査することを目的としている。したがって、支持体の対応する専用部分上の単一セルの位置は限定的に調節可能ではあるが、構成の異なる孔を検査する目的で、ゲージの全体構造を自由に活用することはできない。さらに、構造および利用する構成部品によって、孔の長手方向軸に沿った近傍断面の直径を同時に検査する可能性が制限される。検査は、頻繁に要求され、通常は、費用、時間および利便性の点で十分に満足できない方法で実行されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、公知のゲージの欠点を克服した、機械部品の直径および形状誤差を検査するプラグゲージとしての検査装置を提供することであり、特に、柔軟に使用できること、簡単かつ迅速な方法で構成できること、および高水準の性能を保証することである。
【0008】
本発明の別の目的は、孔の長手方向軸に沿った種々の断面で孔の2つ以上の直径を同時に検査するために、特に相互間が短距離の場合であっても、柔軟な使用という点で固有の特性を備えた検査装置を提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、検査される部分と正確で自動的に協働可能なフィーラを備えた検査装置を提供することにより、例えば弦誤差のような誤差を引き起こす誤った配置を避けることである。
【0010】
これらおよび他の目的は、請求項1に記載の検査装置によって達成される。
【0011】
本発明による検査装置は、特にモジュール特性によって固有の利点を達成する。これらについては以下の説明から明らかになる。
【0012】
本発明による検査装置は、検査手段に対して長手方向案内部を支持する支持構造体を含む。このような案内部は、例えば、互いに平行で、装置の長手方向軸を画定する2つ以上のスタッドによって実現される。より詳細には、検査手段は、直接または間接的な方法で、案内部に沿って連続して選択可能な位置に位置合わせされて固定されている、構成部品に結合されている。
【0013】
従って、検査手段を種々の高さに位置合わせするのみならず、2つ以上の検査手段を隣接スタッドの同一組に沿って位置決定することができる。
【0014】
本発明において利用される検査手段は、同一断面で検査するために、関連したフィーラを有する、対向して配置された2つのアームセットを備えた少なくとも1つのセルを含む。好ましい実施形態によれば、アームセットは平行四辺形型で、アームセットの各組には、公知のタイプの誘導型トランスデューサの可動要素が結合されている。誘導型トランスデューサは、フィーラの相互位置を示す電気信号を生成する。
【0015】
フィーラは、アームセットの一部に直接結合され得るか、または適切な配置、形状および寸法の機械的伝達要素によって間接的に結合されて、フィーラを検査で要求される位置に整列させる。
【0016】
さらに、先に述べたように、本発明による検査装置は、3つ以上のスタッドを含むことができる。例えば、3つのスタッドを備えた構成をもたらすこともできる。このような構成の特徴では、全体の横断寸法がより大きくなることであるが、2つのスタッドを備えた構成に比べてより高い柔軟性を備えることができ、特定の用途においては重要な利点を提供し、複数のセルのフィーラを、相互に極めて近接した検査される断面に配置することができる。
【0017】
本発明による検査装置はまた、他の公知の構成部品も含むことができる。それら部品の中には、中心合わせおよび保護ノーズピース、フィーラのストロークを制限するための当接面、スラストばね、電気配線がある。電気配線によって、フィーラの相互の位置を示す電気信号が、処理および表示装置に伝送される。
【0018】
本発明による別の検査装置は、1つまたは複数のフィーラに結合された適合システムを含み、適合システムによってフィーラは、測定方向に対して横断する適合方向に実質的に沿って移動することができる。フィーラは、検査される部分、例えば、孔の表面と協働して、特別な手動の操作を必要とせずに適切に配置することができる。この結果、益々簡略化され、便利になる。
【0019】
好ましい実施形態においては、適合システムを含む本発明の検査装置は、平行四辺形型とレバー式の両方のアームセットを備えたプラグゲージにすることもできる。
【0020】
本発明の他の特徴は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明からより明らかとなる。なお、図面は、実施例を限定することを目的とするものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1および図2の検査装置、より詳細には、プラグゲージは、ほぼ円筒形の基底部3を備え、支持水準面6を画定するフランジ5を含む支持構造体1を有する。
【0022】
基準要素7が、2本のネジ8によってフランジ5に結合され、一組の基準受座10を画定する。図1には基準受座10のうちの一方のみが見られる。2つのスタッド11、12が表面6に垂直な方向に沿って整列して、長手方向軸を画定し、スタッドの端部は基準受座10内に位置合わせされている。ロック要素14は、基準要素7と形状が類似しており、対応する組の受座15を画定している(図1には受座15のうちの一方のみが部分的に見られる)。ロック要素14は、2つの横ネジ(図1における参照符号17は、それらのネジの端部を収容するネジ穴を指す)によって基準要素7に結合され、スタッド11、12の端部を締付け固定する。スタッド11、12は、受座10と受座15との間にロックされ、相互に対向して直立している。
【0023】
ゲージの支持構造体の一部であるスタッド11、12は、ゲージの検査手段を支持する長手方向案内部となる。
【0024】
図1の特定の実施形態においては、長手方向に間隔の空いた2つの断面で、孔(図示せず)の直径寸法を検査することができ、検査手段は2つの測定セル20、21を含む。このようなセル20、21はほぼ同一あるため、セル20についてのみ説明する。
【0025】
2つのアームセット24、25は、それぞれ互いに平行な一組の薄板27、28を含み、この薄板のそれぞれは、2つの縮小断面または一組の薄板30、31および32、33を備え、例えば、溶接によって支持要素22に結合されている。支点27、28の間で、支持要素22の反対側の端部には、接合要素35が結合されている。接合要素35は、次に、検査される孔の表面に接触する目的のフィーラ36を、調節可能なネジ結合によって支持する。支点30〜33が4本の平行な回動軸を画定する各アームセット24、25のいわゆる「平行四辺形」構造体によって、接合要素35とフィーラ36を、同じ横断の測定方向にほぼ沿って、反対方向に移動させることができる。図1には示されていないが、アームセット24、25の間にはばねが配置され、ばねは、アームセットを相互に離れる方向に移動させ、フィーラ36と検査される孔の表面との間の接触を確実にすることによって測定力を与える。例えば、公知のタイプの直線誘導型トランスデューサなどのトランスデューサ37は、2つのアームセット24、25の接合要素35に結合された相互に可動な要素を有する。トランスデューサ37は、公知の方法で、ケーブル38のワイヤによって、2つのフィーラ36の相互の位置を示す電気信号を提供する。
【0026】
図1では部分的にしか見られないが、制限要素39が支持要素22に結合され、アームセット24、25の面と接触する機械的平面を含んで、フィーラ36の移動偏位を制限する。
【0027】
セル20、21は、位置決めおよび固定部品によって、支持構造体、より詳細には、スタッド11、12に結合されている。より詳細には、検査手段は、位置決め部品40を含み、位置決め部品40には、各セルの支持要素22が強固に結合されるか、(図1で図示されていない)ネジによってこのような部品に固定されるか、またはそれと一体に組み込まれる。それぞれが基準要素7と形状が似た位置決め部品40は、一組の基準受座42を有する(図1で示される2つの位置決め部品40のそれぞれには、基準受座42のうち一方のみが部分的に見られる)。固定部品44は、検査手段の位置決め部品40と類似の形状であって、対応する組の受座46を画定している(図1で示される2つの固定部品44のそれぞれには、受座46のうち一方のみが部分的に見られる)。各固定部品44は、横ネジ48によって位置決め部品40に結合されている。ネジ48を締めることによって、位置決め部品、したがって対応セル20または21の位置を、スタッド11、12で画定された長手方向案内部に沿って、決定および固定する。スタッド11、12は、受座42、46で直立状態を維持している。
【0028】
ゲージはまた、図2で示されるように、中心合わせおよび保護ノーズピース2も含む。
中心合わせおよび保護ノーズピースは、中空の円筒形で、セル群20、21、スタッド11、12、基準要素7およびロック要素14を覆い、フィーラ36が通る開口を含む。より詳細には、ノーズピース2は、締付手段4’によってフランジ5に接合されるフランジ4とゲージの先端部分を閉じるキャップ4’’とを含む。ノーズピース2は、4つの孔(図2ではそれらのうち2つしか見られない)を有し、2つずつが正反対に位置し、そこからフィーラ36が突き出る。操作者がゲージを手動で操作できるようにするためのハンドグリップ9が、図には示されていない公知の方法で基底部3に結合されている。
【0029】
検査手段、より詳細にはセル20、21の長手方向の位置は、作動状態で、ゲージが検査される孔に挿入されると、フィーラ36は検査される孔の直径断面に沿って整列する状態を維持するように、スタッド11、12によって画定された案内部に沿って選択される。
【0030】
図1のゲージと同様のゲージが図3で示されている。図3では、2つの位置決め部品40が逆向きにスタッド11、12に結合されており、第1測定セル20が第2測定セル21に対して、および図1の構成に対して上下逆になっている。図3の構成では、セル20、21のフィーラ36は相互に接近しており、したがって相互に接近した断面における直径を検査できることに留意されたい。
【0031】
図4および図5では、図1のゲージの構成部品と同一または同様の検査手段および他の構成部品を含むゲージが示されている。このため、このような構成部品には同一の参照符号が付されている。より詳細には、図4および図5のゲージは、専用受座内(図では示されていない)で3つのスタッド11、12、13の第1端部部分を、ロック要素(同様にこれらの図では示されていない)と協働し、図1のロック要素14と同様に締め付ける基準要素7’を含む。要素7’と対応ロック要素はそれぞれ、3つのスタッド11、12、13を同時にロックするために3つの受座を含み、受座は、図1の要素7、14の受座10、15とほぼ同じであることに留意されたい。例えば、基準要素7’が、ここでは図示されていないが図1および図3のフランジと同様のフランジを備えた基底部に結合され、ゲージの支持構造体の一部となっている。図4および図5には図示されていないが、ゲージの構造をさらに強固にするために、スタッドの第1端部を締め付けるのとほぼ同様に、基準要素とロック要素との間の3つのスタッド11、12、13の第2端部部分を締め付けることが予測できる。
【0032】
検査手段の2つの位置決め部品40は、一組の隣接スタッド11、12上に位置し、固定部品44(図5では1つのみ部分的に見られる)によって適切な位置で固定される。位置決め部品40と固定部品44とは、図1および図3で示された位置決め部品と固定部品と実質的に同一である。測定セル20、21が、位置決め部品40と対応する固定部品44で形成される各組に直接結合される。測定セル20、21はそれぞれ、図1を参照して説明したように、平行四辺形の構造体の2つのアームセット24、25を備える。簡単化および明確化のために、図4および図5では、例えばトランスデューサを収容する孔など多くの細部が省略されている。図4および図5の実施形態では、図1および図3の実施形態とは異なり基準要素22がなく、アームセット24、25が、溶接によって、図4および図5で示されていない適切なピンまたは基準案内部上で、対応する位置決め部品40および固定部品44に直接結合されていることに留意されたい。アームセット24、25および部品40、44はそれぞれほぼ同一であるため、どちらのアームセットが位置決め部品40または固定部品44に結合されるかの違いがない。
【0033】
他の組のスタッド12、13上には、さらに2つの位置決め部品40’(部品40とほぼ同一)が位置し、そこではさらに2つの測定セル20’、21’(セル20、21と実質的に同一)が結合されている。図1を参照して先に説明したとおり、セル20、21、20’、21’は、明確化のために図4および図5では示されていないトランスデューサおよびスラストばねを含む。
【0034】
図1および図3の実施形態におけるように、各アームセット24、25は、フィーラを支持する接合要素35を含む。図4および図5の実施形態―アームセット25がアームセット24で完全または部分的に覆われている―においては、フィーラ(図示せず)は、ネジ結合によって機械的伝達要素50、55の孔52に直接結合されている。次に、機械的伝達要素50、55は、形状が異なり、セル20、21、20’、21’の接合要素35に結合されている。より詳細には、機械的伝達要素50、55はそれぞれ、図示されていないネジによって、接合要素35の1つに固定されるための孔51を有する。機械的伝達要素50は矩形の狭い形状で、セル21’に結合されている。一方、図4および図5で見られる機械的伝達要素55は「L字」状で、セル20、20’、21に結合されている。
機械的伝達要素50、55は、ネジ穴52が同一の中心長手方向に沿って配列されるように、適切な向きでセルの各アームセットに結合されている。それらの図で示されている機械的伝達要素50、55に対して同一および対称的に配置された機械的伝達要素は、アームセット25の接合要素35と結合している(1つの要素55のみが図5で部分的に見られる)。したがって、機械的伝達要素50、55の各孔52に結合された8つのフィーラが、スタッド11、12、13の軸で画定された面(図4の面)に対して相互に2つずつ反対の位置に配置された状態を維持し、検査する孔について作業状態では、検査する直径に対応する断面上に配列される。機械的伝達要素50、55のこの配置、形状および寸法、ならびに隣接する組のスタッド11、12および12、13によって形成される長手方向の二重の案内部上のセル20、20’(および/または21、21’)に並べて配置できることにより、互いに接近した断面で直径を検査することが特に容易になることに留意されたい。同じゲージによって、セル20、20’、21、21’に結合された機械的伝達要素の向き、形状および寸法を適切に変更することによって、3つまたは4つの近隣の断面を検査することもできる。異なった長手方向の位置で相互に近接してフィーラを位置付けることもでき、その結果、ゲージは、貫通孔およびめくら穴の両方を検査するのに特に柔軟性があり、適するようになる。
【0035】
したがって、図4および図5が、単に1つの可能な実施例を示しているだけであることは明らかであり、この実施例では、検査される孔を基準にして、様々な簡単な構成部品が簡単に迅速に組み立てられて、精密なゲージを得ることができる。
【0036】
セル20、20’、21、21’の平行四辺形型のアームセットによって、補正する必要なく、図示したタイプの機械的伝達要素50、55を有利に利用することができることに留意されたい。実際、平行四辺形の構造体には、いわゆる「アーム比」、すなわちフィーラによって実行される移動と、トランスデューサの相互に移動する要素(例えば、コアと巻き線)間の対応した移動との間の比を考慮に入れる必要がない。言い換えると、平行四辺形の構造体によって、フィーラの移動と、トランスデューサの要素間の移動(フィーラを支持するアームの長さ、より詳細には、フィーラとトランスデューサの可動部品の移動方向の間の距離と実質的に無関係)との間の対応関係を得ることができる。
【0037】
しかし、例えば、いわゆる「レバー」式などの異なったタイプの公知のアームセットを利用することができる。このレバー式のアームセットは、単一の支点回りに実質的に回転する少なくとも1つのアームと、フィーラとトランスデューサの可動要素とを含む。フィーラと可動要素は両方ともアームに結合している。レバー式のアームセットを含むセルは、全体の寸法を小さくすることを考慮している場合に限って、平行四辺形の型のアームセットに対して有利であるが、機械的伝達要素50、55によって導入されるアーム比の変化を考慮し、例えばポテンショメータによって、トランスデューサの感度をそれに応じて変えなければならない。
【0038】
図6は図1のゲージを示しているが、機械的伝達要素50’は、ネジ49によって、図示されている4つのアームセット24、25の接合要素35に結合されている。要素50’によって、フィーラ36を各アームセット24、25から離して配置することができ、位置決め部品40の位置を変更することなく比較器の構成を変えることができる。別の、図示されていない実施形態では、セル21内の機械的伝達要素は、結合したフィーラ36をセル20のフィーラ近くに配置するために、より長くてもよく、例えば、めくら穴の底部近くで相互に接近した直径を検査することができる。機械的伝達要素を、図6で示した向きに対して上下逆にセル20の接合要素35と結合し、セル21のフィーラ36近くで関係するフィーラ36を動かすこともできる。
【0039】
図7には、形状誤差を検査するのに特に適した本発明によるプラグゲージの実施形態が示されている。この実施形態では、各測定セル120、121が、互いに120°で配置された3つのフィーラ136、236を保持している。実行される検査に応じて、フィーラを別の角度間隔で配置することもできることに留意されたい。セル120、121はほぼ同一であるため、セル120とその機能についてのみ説明する。
【0040】
セル120は、先に説明したセル20、21と同一である多数の構造的態様を有するため、図1の参照符号のいくつかが以下でも利用される。セル120は、支持要素22に固定された2つの平行四辺形のアームセット24、25を含み、アームセットは、ゲージの軸を横断する測定方向に沿って平行移動することができる。測定方向に沿って並んだフィーラ136は、アームセット24に直接結合され、一方、適合または「自己中心合わせ」システム70がアームセット25に結合されている。自己中心合わせシステム70は、固定され、典型的には120°で間隔を空けた一組のフィーラ236を支持している。システム70は、ネジ(図示せず)によって、アームセット25の接合要素35に固定するための2つのネジ穴63が設けられた本体部62を含む。互いに平行な2枚の弾性薄板61の第1端部部分は、本体部62の2つの両側端に結合される。薄板61の第2端部部分は、第2要素66と支持部品64との間でロックされ、支持部品64は、ネジ(図示されず、孔65内に収容されている)によって第2要素66に固定されている。
【0041】
本体部62と、第2要素66と、2つの薄板61とは、変形可能な部分を備えた平行四辺形型の密閉構造を形成し、それによって、第2要素66とそれに結合された支持部品64とが、測定方向と垂直な適合方向に沿って平行移動することができる。この測定方向に沿って、フィーラ136は整列され、平行移動することができる。各支持部品64は傾斜面67を含み、傾斜面67には、3つのフィーラ136、236が、互いに120°で配置されるように固定されている。各支持部品64の傾斜面67の傾斜を適切に選択することによって、支持部品64に結合されたフィーラ236間の角度が変更可能であることは明らかである。
【0042】
システム70は、プラグゲージが検査される孔に対して完全に同軸に挿入されていない場合であっても、3つのフィーラ136、236を孔の壁面に同時に確実に接触させる。
実際、アームセット25のフィーラ236のうちの1つのみが孔の壁面と接触する場合(通常は、アームセット24のフィーラ136が常に壁面と接触している)、第2の要素66と支持部品64とが、ばね(図示せず)によって加わる力の作用で、移動することができる。力は、アーム24、25の間で、アームセット25のフィーラ236の両方が孔の壁面と接触する位置に向かう適合方向に沿って作用する。すなわち、孔の壁面と接触するフィーラ236のうち最初のフィーラは、このような壁面に沿って、制限されて移動することができ、その適正な位置は、アームセット25の他方のフィーラ236がさらに孔の壁面と接触する際にも決定される。
【0043】
実質的に、適合システム70によって、アームセット25のフィーラ236に、アームセット24のフィーラ136に対するさらなる自由度、すなわち適合方向に沿ってさらに平行移動する可能性が与えられる。これによって、3つのフィーラ136、236は、「自己中心合わせ」、すなわち、さらに調節操作する必要なしに、手動または外部装置によって、このようなフィーラ136、236が孔の壁面に同時に接触する構成に至るまで、相互に移動することができる。
【0044】
システム70の特定の形状によって、フィーラ236と検査される孔の壁面との間が接触した結果、薄板61は、通常、引張応力によって応力を掛けられるが、圧縮応力によって応力を掛けられないことに留意されたい。この点は、測定の品質および装置の耐用期間の両方の観点から、ゲージを適切に機能させるために極めて重要である。
【0045】
別の実施形態においては、追加の自由度を提供する薄板61は、フィーラに直接結合される代わりに、フィーラを支持する他の構成部品に結合されてもよく、それによって同様の技術効果を得ることができる。
【0046】
図10には、例えばレバー式のアームセットを備え、薄板78、79がアーム73に結合された、本発明による機械的プラグゲージが示されている。
【0047】
より詳細には、図10のプラグゲージは、2つの基準面71、72を画定する基底部3’を含み、基準面の上に各アーム73、74の第1端部部分が当接し、ネジ(図示されず、孔77(図10には1つのみ見られる)に収容されている)によって固定されている。
【0048】
各アーム73、74は、支点75、76を含み、アームはその回りを回動することができる。フィーラ136’は、調節可能な結合によって、アーム74の第2端部部分に結合される。アーム73は、支点75を含む第1部分と、調節可能な結合によって2つのフィーラ236’を支持する接合要素80と、相互に平行に、上記第1部分と接合要素80との間に配置された2枚の薄板78、79とから形成されている。フィーラ136’、236’は、相互に120°で配置されている。要素80を適切な形状にすることによって、フィーラ136’、236’の角度配置を変更することができる。
【0049】
アーム74は、第1傾斜面を有する第1要素87を支持している。第1傾斜面は、接合要素80と結合した第2要素86の第2傾斜面と、両傾斜面がV字形の受座を形成するように、対向している。その上に、公知のタイプの(したがって詳細には図示していない)機械的伝達システムのボールが係合している。
【0050】
アーム73の第1部分と接合要素80と共に、それぞれ2つの支点81、82および83、84を有する変形可能な部分を含む薄板78、79が、平行四辺形の構造体85を実現する。ばね(図示せず)によって、アーム73、74は、それぞれの支点75、76回りを回動することができ、適切な測定力を与える。発生する回動が小さいことにより、関連するフィーラ136’、236’は、測定方向に沿って、最適近似で平行移動する。
【0051】
平行四辺形の構造体85によって、フィーラ236’は、測定方向だけでなく、このような測定方向に垂直な適合方向に沿っても平行移動することができる。実質上、フィーラ236’は2つの自由度を有するが、フィーラ136’は1つの自由度しか有さない。
【0052】
図7の適合システム70を参照した説明と同様に、フィーラ236’に関連するこのような2つの自由度によって、3つのフィーラ136’、236’を、検査される孔の中に確実に位置決めすることができる。検査される孔では、プラグゲージが孔に正確に挿入されていない場合であっても、全てのフィーラが孔の壁面に接触している。
【0053】
アーム74をアーム73とほぼ同一のアームに置き換えることもできる。ただし、この置換アームは、薄板78、79とほぼ同様の2枚の薄板と、構造体85とほぼ同様の平行四辺形の構造体を実現する、適切に形成された接合要素とを備える。接合要素は要素80と類似していてもよく、または1つのフィーラのみを測定方向と平行に支持するように異なって成形されていてもよい。プラグゲージのこのような実施形態によって、一組のフィーラ236’は確実に孔の壁面と正しく接触し、フィーラ136’をこのような組のフィーラ236’に対して正反対の位置に配置可能であることによって、弦誤差を最小限にすることができる。
【0054】
さらに別の実施形態(図示せず)は、レバー式のアームセットを備えた機械的プラグゲージであって、図7の適合システム10と同様の適合システムがアームセットのアームに結合されているプラグゲージを予測する。
【0055】
図8には、図7を参照して説明した測定セルと極めて類似した測定セル120を1つだけ備えた検査手段を含むプラグゲージが示されている。セル120は、3つのフィーラ136、236と、3つのフィーラを検査する孔に自己中心合わせ可能な適合システム70とを含む。
【0056】
ノーズピース2’(明確化のために先端は図示していない)は、セル120を保護するために配置され、フィーラ136、236が貫通する3つの孔13’を含む。ゲージはハンドグリップ9’も含み、ハンドグリップ9’には、リングナット18によってばね16が結合され、ゲージ内のトランスデューサ手段を電源、処理および表示システム(図示せず)に接続する電線(これも図示せず)を保護している。
【0057】
実質的に、測定装置、例えばプラグゲージを実現することができ、この装置では、適合システムは、図7および図8で示された平行四辺形のアームセットを備えたプラグゲージのようにフィーラまたは複数のフェーラ近く、または図10で示された機械的プラグゲージのようにアームセットの異なった位置に配置されている。さらに、本発明によるゲージは、アームセットに結合された1つまたは複数の適合システム70および/または85を含むことができる。アームセットは、先に記載したように、平行四辺形および/またはレバー式であってもよい。当業者は、利便性および全体の寸法基準に基づいてゲージの適正な構成を選択することができる。
【0058】
図9には、2つのスタッド11、12が、基準要素107とロック要素114との間にネジ(図示せず)によってロックされたプラグゲージが示されている。基準要素107とロック要素114は、図1の要素7および14とは単に外見上は異なっているが、スタッド11、12がロックされる対応受座はほぼ同一である。スタッド11、12は2つのほぼ同一の測定グループ71、72を支持している。グループ71のみ説明するが、説明はグループ72にも同様に当てはまる。
【0059】
グループ71は、位置決め部品140と固定部品144とを含む。位置決め部品140と固定部品144とは、ネジ(図示せず)によってスタッド11、12のある特定の高さに、実質的に同様の部品40、44については図1を参照して説明してきたことと同様の方法でロックされている。
【0060】
位置決め部品140には、支持要素122が結合されている。支持要素122上には、図1に示されたセルとほぼ同じ2つの測定セル20、21が固定され、両方とも平行四辺形の構造体を備えた2つの対向する測定アームセット24、25を含む。各アームセット24、25には、調節可能なネジ結合によって、フィーラ36を支持する接合要素35が結合されている。したがって、同一セルのフィーラ36は、他のセルのフィーラの整列方向に対して垂直な整列方向に沿って整列した状態を維持し、同じ断面上で互いに垂直な直径寸法を検査することができる。
【0061】
利用する検査手段の位置、数、寸法、または構造を変更できるため、本発明によるゲージの構造および組立を簡単にできること、および検査される孔の特性に関連して即座に構成できることは明らかである。実際、本明細書で図示および説明したセル20、21、20’、21’、120、121を公知のタイプの他のセルと交換することができる。例えば、ゲージの長手方向の寸法を変更するために、異なった長さのスタッド11、12、13を特に簡単な交換作業によって基底部3に結合することができる。このように、異なった数のセルを組み込むこともできる
さらに、このタイプの一連のゲージを標準化する可能性に関する明らかな利点がある。
実際、一連の標準部品を様々な構成に従って組み立てて、予測される全ての必要性を満たすことができる。
【0062】
すでに述べたように、本発明によるゲージは、単に例示として図中に見られるものとは全く異なった寸法、形状および配置の部品を含むことができる。例えば、3つ以上のスタッドを同時に固定するために、3つ以上の受座を備えた位置決め部品および固定部品を含むプラグゲージは、本発明の範囲内にある。
【0063】
弾性薄板以外に、他の部品を使用して、本発明で用いられる適合システムの平行四辺形型の構造体を形成することもできる。例えば、剛性要素が、平行四辺形の構造体の支点を表すボールベアリングおよび/またはブッシングに結合されてもよい。
【0064】
適合方向に沿ってフィーラが短い距離を平行移動する場合、すなわち、フィーラと検査される部分との間に小さな隙間が存在する場合、本発明による検査装置の適合システムで用いられる平行四辺形型の構造体が、例えば変形可能な部分を備えたレバー式の構造体と置き換えられてもよい。
【0065】
有利には、本発明のプラグゲージは、手動または公知の自動制御によって、直径を検査するため、および、滑らかであるか溝付きのいずれかの孔の形状誤差を検査するために利用することができる。最初の場合、ゲージは、例えば、図1〜6および図9で示される構造のうちの1つであって、各アームセットに結合されたフィーラを1つだけ伴った測定アームセットの組を有する。2番目の場合、図7、8および図10に示されているように、例えば、その組の2つのアームセットのうちの少なくとも1つが2つのフィーラを支持することができる。言うまでもなく、例えば、直径を検査するためのアームセットの組と形状誤差を検査するためのアームセットの組とを含む構成などの構成を組み合わせることも可能である。
【0066】
本発明によるゲージを、公知の手順で、ひいては適切な検査および制御装置と共に利用して、例えば真円度や同心度について1つまたは複数の断面で孔の形状特徴を検査することもできる。
【0067】
明らかに理解されるとおり、モジュラ式の柔軟性の高いゲージが提供される。ゲージは、2つ以上のスタッドと、調節可能な方法で接合要素に直接結合されたフィーラ、および/または、例えば、同一方向に沿って、または異なった断面など必要な場所にフィーラを位置付けるために、適切な形状および寸法で機械的伝達要素に結合されたフィーラとを含むことができる。
【0068】
位置決め部品を適切に動かし、測定セルの方向を定め、もしあるとしたら、機械的伝達要素の形状、寸法および方向を選択し、適合システムをフィーラに結合する(必要であれば)ことによって、当業者であれば、特定の検査に最適な構成を選択することができる。
したがって、同一のゲージを異なる構成にすることにより、工作機械で加工する前および後の両方で、滑らかであるかまた溝付きのいずれかの孔の、異なった深さの直径、可変相互軸を有する直径、形状誤差および他の形状特徴を検査することができる。
【0069】
いくつかの実施形態は、例えば、それぞれ実施形態の全てで一般に予測される中心合わせおよび保護ノーズピースなしに、極めて概略的に添付の図面に示されていることに留意されたい。
【0070】
図面に示されたスタッド11、12、13とは異なる要素(例えば、異なった断面および形状のシャフトまたはビームや適切に構成された位置決め部品および固定部品)を用いて実現される1つまたは複数の長手方向案内部を有するゲージは、本発明の範囲内である。
【0071】
例えば、検査される部分の絶対寸法に関する情報を提供することができる測定装置を含む、本ゲージとは異なる孔の寸法および/または形状誤差の検査装置も、本発明の範囲内である。
【0072】
さらに、本発明による適合または自己中心合わせシステムを含む検査装置は、例えば、外側寸法を検査するためのアームセットおよびフィーラを備えた、種々の構造および構成部品を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の好ましい実施形態による2つのスタッドと特定の構成を備えたプラグゲージの斜視図であり、明確化のためにいくつかの細部が省略されている。
【図2】図1のゲージの斜視図であり、図1に対して縮小され、いくつかの細部が追加されている。
【図3】本発明の第2の好ましい実施形態によるゲージの部分斜視図であり、明確化のためにいくつかの細部が省略されている。
【図4】本発明の第3の好ましい実施形態による3つのスタッドと特定の構成を備えたプラグゲージの側面図である。
【図5】図4のゲージのいくつかの細部の拡大部分斜視図である。
【図6】機械的伝達要素を追加した特定の構成の、図1のゲージを縮小した別の斜視図である。
【図7】本発明の第4の好ましい実施形態による寸法と形状誤差を検査するためのプラグゲージの斜視図であり、明確化のためにいくつかの細部が省略されている。
【図8】本発明の第5の好ましい実施形態による寸法と形状誤差を検査するためのプラグゲージの斜視図である。
【図9】本発明の第6の好ましい実施形態による垂直直径寸法を検査するためのプラグゲージの斜視図であり、明確化のためにいくつかの細部が省略されている。
【図10】本発明の第7の好ましい実施形態によるプラグゲージの斜視図であり、明確化のためにいくつかの細部が省略されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の数のフィーラ(36;136、236;136’、236’)と、
前記フィーラ(36;136、236;136’、236’)の測定方向に沿った相互移動を示す電気信号を生成する位置トランスデューサ(37)とを備える検査装置であって、
適合システム(70;85)が前記フィーラ(36;136、236;136’、236’)のうち少なくとも1つのフィーラと結合され、前記少なくとも1つのフィーラを、前記測定方向と垂直な適合方向に実質的に沿って動かすことができることを特徴とする、検査装置。
【請求項2】
前記適合システム(70;85)は、前記平行四辺形型の構造体(70;85)を含む、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記平行四辺形の構造体(85)は、4つの支点(81、82、83、84)を含む、請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記適合システムは、少なくとも1つの支点を備えた構造体を含む、請求項1に記載の検査装置。
【請求項5】
前記適合システム(70;85)は、少なくとも1つの変形可能な部分(61;78、79)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つのフィーラを支持する少なくとも1つの可動アーム(25;73)を含み、
前記適合システム(70;85)は前記少なくとも1つの可動アーム(25;73)に結合されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの可動アームを画定する、平行四辺形型のアームセット(25)を含む、請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの可動アーム(73)はレバー式である、請求項6に記載の検査装置。
【請求項9】
前記フィーラのうち2つ(236;236’)は、前記適合システム(70;85)に結合され、相互に角度間隔を空けて配置されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項10】
前記フィーラのうちの少なくとも2つ(236;236’)を含み、機械部品の内側直径寸法を検査するように適合されている、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−47752(P2012−47752A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222177(P2011−222177)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【分割の表示】特願2007−534022(P2007−534022)の分割
【原出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(500200708)マーポス、ソチエタ、ペル、アツィオーニ (33)
【氏名又は名称原語表記】MARPOSS S.P.A.
【Fターム(参考)】