説明

機能性シート

【課題】 本発明は、使用上の取扱性が良好で、しかも安全性にも配慮した新規な機能性シートを提供することを目的とする。
【解決手段】 炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を含有する薬品と水溶液中で酸性を示す化合物を含有する薬品とを水の存在下で接触させることにより二酸化炭素を発生させる機能性シートであって、この機能性シートは、前記炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を含有する薬品、及び前記水溶液中で酸性を示す化合物を含有する薬品の少なくとも一方を担持体に担持させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚表面に施用することにより、皮膚の血行促進や賦活化等を図る機能性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、炭酸ガスの発生を利用した皮膚マッサージ効果等により、皮膚の血行促進や賦活化などを図る化粧料が開発されている(例えば、下記特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63‐310807号公開公報
【特許文献2】特開平5‐229933号公開公報
【0004】
前記特許文献1に記載の発泡性化粧料及び前記特許文献2に記載の発泡性粉末化粧料は、いずれも炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩や炭酸塩を含有する薬品と、酸性を示す薬品とを個別の二剤とし、使用時においてこれら二剤を混合することにより炭酸ガスの発生を得るものである。
【0005】
しかしながら、このような二剤からなる発泡性化粧料を使用するにあたっては、まず各薬品を量り採り、次いで容器などに投入し、混合することにより反応を進めて十分な発泡を得、最後に皮膚の適宜箇所に適当量塗布するといった複数手順の煩雑な作業を必要とする。
【0006】
又、二剤の比率を誤って混合した場合や混合が不十分な場合、期待する効果が十分に得られなくなるばかりか、混合した化粧品のpH(水素イオン濃度指数)が皮膚にとって不適当なものとなって、皮膚刺激や赤斑などの皮膚トラブルを生じさせるといった問題もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記技術的課題を解決するために開発されたものであり、使用上の取扱性が良好で、しかも安全性にも配慮した新規な機能性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の機能性シートは、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を含有する薬品と水溶液中で酸性を示す化合物を含有する薬品とを接触させることにより二酸化炭素を発生させるものである。そして、この本発明の機能性シートは、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を含有する薬品、及び水溶液中で酸性を示す化合物を含有する薬品の少なくとも一方を担持体に担持させたことを特徴とする。
【0009】
以下、この本発明の機能性シートについて詳細に説明する。
【0010】
本発明の機能性シートは、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩(以下、「炭酸塩等」と称する。)を含有する薬品と水溶液中で酸性を示す化合物(以下、「酸性化合物」と称する。)を含有する薬品とを接触させることにより二酸化炭素を発生させることを前提とする。
【0011】
前記炭酸塩等としては、酸性化合物と接触することにより、二酸化炭素を発生させる性質を有するものであれば特に限定されるものではない。この炭酸塩等の好適な例としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、セスキ炭酸カリウム、炭酸水素アンモニウム塩、炭酸アンモニウム塩及びセスキ炭酸アンモニウム塩などを挙げることができる。本発明においては、これら炭酸塩等から選択された少なくとも一種以上を適宜混合して用いることもできる。
【0012】
ここで炭酸塩等を含有する薬品とは、炭酸塩等が100%の薬品であっても、何らかの媒体に包含させた状態の薬品であっても良いことを意味する。又、炭酸塩等を含有する薬品としては、粉末の状態であっても、何らかの流動体(粘性流動体を含む。)に含有された液状の薬品(薬液)の状態であっても良い。この流動体の好適な例としては、水、エタノール等のアルコール類、グリセリン等の多価アルコール類、キサンタンガムやエコーガムなどの多糖類、水溶性高分子及びこれらの流動体から選ばれた少なくとも一種以上の混合物を挙げることができる。
【0013】
薬品全体に対する前記炭酸塩等の配合割合については、特に限定されるものではない。一般的には、薬品全体に対して1〜20%(w/w)程度の配合割合が好ましく、3〜10%(w/w)程度の配合割合がより好ましい。なお、前記炭酸塩等は、薬品中において完全に溶解している必要はない。例えば、前記炭酸塩等の粉末が、薬液中で分散している状態であってもよい。
【0014】
一方、前記酸性化合物についても特に限定されるものではなく、塩酸、リン酸、硫酸及び硝酸等の無機酸を用いても良い。しかしながら、安全性の観点からは、有機酸を使用することが好ましい。この有機酸の好適な例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、サリチル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸などを挙げることができる。本発明においては、これら酸性化合物から選択された少なくとも一種以上を適宜混合して用いることもできる。
【0015】
ここで、酸性化合物を含有する薬品とは、酸性化合物100%の薬品であっても、何らかの媒体に包含させた状態の薬品であっても良いことを意味する。又、酸性化合物を含有する薬品としては、粉末の状態であっても、何らかの流動体(粘性流動体を含む。)に含有された液状の薬品(薬液)の状態であっても良い。この流動体の好適な例としては、水、エタノール等のアルコール類、グリセリン等の多価アルコール類、キサンタンガムやエコーガムなどの多糖類、水溶性高分子及びこれらの流動体から選ばれた少なくとも一種以上の混合物を挙げることができる。
【0016】
薬品全体に対する前記酸性化合物の配合割合については、特に限定されるものではない。一般的には、薬品全体に対して1〜20%(w/w)程度の配合割合が好ましく、1〜10%(w/w)程度の配合割合がより好ましい。なお、前記酸性化合物は、薬品中において完全に溶解している必要はない。例えば、前記酸性化合物の粉末が、薬液中で分散している状態であってもよい。
【0017】
そして、本発明の機能性シートは、前記炭酸塩等を含有する薬品、及び酸性化合物を含有する薬品の少なくとも一方を担持体に担持させた点に特徴を有する。
【0018】
即ち、少なくとも一方の薬品一回分の用量を担持体に担持しているから、使用者において使用毎に量り採る必要が無くなり、薬品の用量を誤ることが無くなる。
【0019】
本発明において、炭酸塩等を含有する薬品、及び酸性化合物を含有する薬品の少なくとも一方を担持体に担持させるとは、各薬品の一方を担持体に担持させる場合(炭酸塩等を含有する薬品のみを担持体に担持させる場合、若しくは酸性化合物を含有する薬品のみを担持体に担持させる場合)、及び各薬品を各々個別の担持体に担持させる場合があることを意味する。
【0020】
各薬品の一方を担持体に担持させる場合における本発明の機能性シートの使用方法としては、例えば、担持体をもう一方の薬品に浸漬したり、担持体にもう一方の薬品を塗りつけたり、スプレーしたりした後に皮膚表面に貼着する手段を挙げることができる。又、担持体を肌表面に貼着した上から、もう一方の薬品を塗りつけたり、スプレーしたりする手段も挙げることができる。更に、一方の薬品を肌表面に塗った上から担持体を貼着する手段も挙げることができる。
【0021】
一方、各薬品を各々個別の担持体に担持させる場合における本発明の機能性シートの使用方法としては、例えば、二枚の担持体を重ねて肌表面に貼着し、必要に応じてその上から水を塗布したり、スプレーしたりする手段を挙げることができる。
【0022】
ここで、酸性化合物を含有する薬品を担持体に担持するか、炭酸塩等を含有する薬品を担持体に担持するか、或いは各薬品を各々担持体に担持するかは、化学反応上の観点からは別段の差異はない。従って、本発明においては、原則としていずれを選択しても良い。
【0023】
しかしながら、炭酸塩等は水に5%前後の少量しか溶解することができないことから、これを布基材に担持するにあたっては、(たとえ、分散液としたとしても)濃度選択の幅が狭くなり、布基材が担持する炭酸塩等の絶対量が相対的に小さくなる。
【0024】
一方、酸性化合物は、概ね水に対する良好な溶解性を示すことから、濃度選択の自由度が高い。
【0025】
又、酸性化合物を布基材に担持するほうが、安全性の観点からも好ましい。
【0026】
従って、本発明においては、少なくとも酸性化合物を含有する薬品を担持体に担持することが好ましい。
【0027】
薬品を担持体に担持する方法としては、まず、炭酸塩又は酸性化合物を水やアルコール等の媒体に溶解して液状の薬品とし、この液状の薬品を担持体の繊維網に含浸する手段を挙げることができる。又、炭酸塩又は酸性化合物を、キサンタンガムやエコーガムなどの多糖類、グリセリン、水溶性高分子その他の粘性流動体に溶解ないし分散させ、これを担持体表面に塗工する手段も好適な例として挙げることができる。なお、所望によっては、薬品を担持体に含浸或いは塗工した後に、乾燥工程に供しても良い。その他、薬品を高分子材料に含有させ、これをフィルムないしシート状に形成する手段なども用いられる。
【0028】
担持体に対する薬品の担持量については、特に限定されるものではない。本発明の機能性シートにおいては、薬品を担持する際の量として、100〜2000g/m程度とすることが一般的であり、200〜1000g/m程度とすることがより好ましい。
【0029】
本発明において用いられる前記担持体としては、薬品を担持することができるフィルム状ないしシート状の担持体であれば特に限定されるものではない。具体的に例えば、既知の天然繊維及び/又は人造繊維からなる布基材、又は高分子材料からなるフィルムないしシートを挙げることができる。
【0030】
前記天然繊維及び/又は人造繊維から成る布基材としては、一般的には、紙、布、タオル、毛布、編み物、キルト、不織布及び織布等を挙げることができる。
【0031】
又、前記天然繊維としては、例えば綿花、カポック、亜麻、ラミー、大麻、黄麻、しゅろ、マニラ麻、サイザル麻、コイヤー・ファイバー等の植物繊維、家蚕絹、柞蚕絹、羊毛(緬羊)、カシミア毛、ラクダ毛、アルパカ毛、モヘヤー、兎毛等の動物繊維が挙げられる。
【0032】
更に、前記人造繊維としては、例えば人絹糸、スフ、ビスコース、ベンベルグ等の再生繊維、又はポリアミド系繊維(ナイロンなど)、ポリエステル系繊維(テトロン、テリレン、デークロンなど)、ポリアクリル系繊維(オーロン、エクスラン、ボンネル、カシミロン、カネカロンなど)、ポリビニール・アルコール系繊維(ビニロン)、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維(ベンゾエート)、ポリウレタン系繊維(ポリウレタン)[スパンテックス]、ポリ塩化ビニリデン系繊維(ビニリデン)、ポリ塩化ビニル系繊維(ポリ塩化ビニル)、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリエチレン系繊維(ポリエチレン)、ポリプロピレン系繊維(ポリプロピレン)、ポリクラール、ポリプロピレン系(パイレン)等の合成繊維、或いは酢酸人造繊維などのように天然物質と合成物質とを共重合して製造した半合成繊維等が挙げられる。
【0033】
一方、前記高分子材料から成るフィルムないしシートとしては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリプロピレン、セロファン、ポリクロロプレン、ポリアミノ酸、ニトリルゴム、ブチルゴム及びシリコンゴムなどを薄く形成したフィルムないしシートを適宜選択して単独或いは積層して用いることができる。
【0034】
特に、高分子材料から成るフィルムないしシートとしては、セルロース誘導体や天然多糖類等の造膜性のある原料で構成された水溶解性シート(ウォータソルブルシート)が好ましい。このような水溶解性シートを担持体とすれば、反応の終点を目視で確認することができる上、使用後のごみを少なくすることができる。
【0035】
前記担持体の形状及び大きさとしては、貼着する箇所に応じて適宜決定すれば良く、特に限定されるものではない。
【0036】
又、前記担持体の厚さや坪量ついても、特に限定されるものではない。本発明の機能性シートにおいては、厚さについては、20μm〜1mm程度とすることが一般的であり、坪量については10〜100g/m程度とすることが一般的である。
【0037】
ところで本発明者は、本発明の機能性シートを皮膚に施用するにあたり、布基材を介して皮膚表面に貼着すれば、布基材の微細な繊維網が、水素イオン濃度の変化に対する緩衝作用を発現し、使用上の安全性が向上するとの知見を得ている。
【0038】
即ち、通常、単に5%程度の炭酸塩等の水溶液とpH2〜3程度の酸性溶液を1:1(v/v)の比率で混合した場合、その混合溶液のpHは酸の種類等に応じて5〜9と幅広くなる。これに対し、布基材にpH2〜3程度の酸性溶液を担持させ、この布基材上で5%程度の炭酸塩等の水溶液(過剰量)と反応させた場合、布基材の有する緩衝効果によって、布基材中の溶液のpHは7〜8.5程度の中性から弱アルカリ程度になる。この現象は、布基材に5%程度の炭酸塩等の水溶液を担持させ、この布基材上でpH2〜3程度の酸性溶液(過剰量)と反応させた場合においても同様のことが確認された。
【0039】
従って、布基材を介して皮膚に貼着すれば、布基材の有する緩衝効果によって皮膚刺激が少なくなり、使用上の安全性を向上することができる。又、布基材を介して皮膚に貼着すれば、薬品の垂れ等を抑制することができるうえ、穏やかな反応が長期間にわたって継続するため、より一層の肌活性効果を得ることができる。
【0040】
一方、高分子材料から成るフィルムないしシートは安価で良好な成形性を有する点において優れるが、前述の布基材の有する水素イオン濃度に対する緩衝効果を期待することはできない。
【0041】
この場合、一方の薬品を高分子材料から成るフィルムないしシートに担持し、もう一方の薬品を布基材に担持すれば、布基材の有する緩衝効果を得ることができる。
【0042】
ところで、本発明の機能性シートにおいては、炭酸塩を含有する薬品及び/又は酸性化合物を含有する薬品に対し、その他の添加剤を配合することを妨げるものではない。
【0043】
この添加剤の具体例としては、香料、着色剤、化粧水、保湿剤、美白剤、肌荒れ防止用薬剤、ニキビ用薬剤、ビタミン剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤及び油性成分等を挙げることができる。
【0044】
特に、本発明の機能性シートにおいては、配合する好ましい添加剤の例として、緩衝剤を挙げることができる。
【0045】
前述のように、本発明の機能性シートは、布基材の有する緩衝効果によって、使用上の皮膚刺激が少ないものとなっている。しかしながら、カミソリ負け痕などのような皮膚表面に微細な傷があるような箇所に貼着した場合にあっては、やはり皮膚刺激を感じることがある。
【0046】
そこで、本発明の機能性シートにおいては、炭酸塩を含有する薬品及び/又は酸性化合物を含有する薬品に対し、緩衝剤を配合し、より一層皮膚刺激の発生を抑制することが好ましい。
【0047】
本発明の機能性シートにおいて、前記緩衝剤とは、水に溶解することにより、水素イオン濃度の変化に対する緩衝作用を発現する性質を有するもののことをいう。この緩衝剤の好適な例としては、酢酸、リン酸、クエン酸及びホウ酸等の塩や水素塩を挙げることができる。これら緩衝剤は、炭酸塩を含有する薬品及び/又は酸性化合物を含有する薬品に対し、1〜5%(w/w)程度の配合割合とすることが一般的である。
【0048】
本発明の機能性シートの好ましい一形態としては、仕切り部によって複数に区分けされた密封性袋材における一の小室に、炭酸塩等を含有する薬品を封入し、一方、他の小室には、酸性化合物を含有する薬品を担持した担持体を封入し、前記仕切り部を破壊することにより、炭酸塩等を含有する薬品と酸性化合物を含有する薬品とを接触させることを特徴とする機能性シートを挙げることができる。
【0049】
更に、本発明の機能性シートの好ましい他の一形態として、仕切り部によって複数に区分けされた密封性袋材における一の小室に、炭酸塩等を含有する薬品を担持した担持体を封入し、一方、他の小室には、酸性化合物を含有する薬品を封入し、前記仕切り部を破壊することにより、炭酸塩等を含有する薬品と酸性化合物を含有する薬品とを接触させることを特徴とする機能性シートを挙げることができる。
【0050】
前記密封性袋材としては、流通時や保存時に、外気が袋材内に容易に侵入しない程度の気密性を有するものであれば、その素材や形状等について特に限定されることはない。一般的には、フィルムないしシート状の基材及び被覆材を二枚重ね、その周縁を接着或いは溶着等により接合してなる扁平状の袋材が好適に用いられる。前記フィルムないしシート状の基材(被覆材)としては、高分子フィルムや金属フィルム、或いは高分子フィルム表面を金属箔膜でコーティングしたような積層フィルムなどを挙げることができる。
【0051】
本発明の機能性シートにおいて、この密封性袋材の内部は、仕切り部によって複数に区分けされる。即ち、この仕切り部は、密封性袋材の内部に、相互に隔離された空間(小室)を複数形成するものである。
【0052】
この仕切り部としては、流通時や保存時において、各小室に封入された薬品等を相互に隔離する一方、使用時において、その一部ないし全部が破壊されることにより、各小室の隔離状態が解除されるように構成されたものであれば特に限定されるものではない。例えば、接着或いは溶着などの手段により、袋材内において上下2枚の基材及び被覆材の相対する一部分を当該袋材内の一端から他の一端に至るまで連続的に接合すれば、当該袋材内を二つの空間(小室)に隔てることができる。更に、複数箇所に同様の連続的な接合を施せば、二以上の複数の空間(小室)を形成することができる。
【0053】
この仕切り部は、使用時において破壊することを前提としている。そのため、本発明においては、前記仕切り部の一部ないし全部の接合強度を、袋材の周縁の接合強度よりも低くすることが好ましい。具体的に例えば、仕切り部のシール幅の一部ないし全部を袋材の周縁のシール幅より狭くしたり、仕切り部の一部にその接合状態を簡単に破壊することができる脆弱部を設けたりする手段を挙げることができる。又、周縁部と仕切り部の接合に使用する接着剤の種類を変えたり、溶着の際の溶着温度や溶着時間を変えたりすることにより接着強度や溶着強度に差を設けたりする方法も好適な手段として挙げることができる。更に、仕切り部をいわゆるイージーピールシール(イージーピールシーラント)で形成したりする手段なども挙げることができる。
【0054】
そして、前記本発明の機能性シートの好ましい一形態においては、仕切り部によって複数に区分けされた密封性袋材における一の小室に炭酸塩等を含有する薬品を封入し、他の小室に酸性化合物を含有する薬品を担持した担持体を封入する。
【0055】
一方、本発明の機能性シートの好ましい他の一形態においては、仕切り部によって複数に区分けされた密封性袋材における一の小室に炭酸塩等を含有する薬品を担持した担持体を封入し、他の小室に酸性化合物を含有する薬品を封入する。
【0056】
ここで封入する各薬品の比率については、化学反応上の観点からは、使用される炭酸塩等と酸性化合物との反応に要するモル比率を計算し、それに応じた相当量の各薬品を封入すればよいことになる。例えば、炭酸水素ナトリウムと一価の酸性化合物のように、選択された炭酸塩と酸性化合物がモル比1:1の反応をする場合は、各小室に封入される薬品量から炭酸塩等と酸性化合物のモル濃度を計算し、1:1の反応が行える相当量を封入すればよいことになる。選択された炭酸塩と酸性化合物がモル比1:2や1:3或いは2:1などの反応をする場合なども同様である。
【0057】
一般的な観点からは、一方の薬品を他方の薬品に対して化学反応上の相当量の2倍から5倍程度の過剰量となるようにすれば良い。
【0058】
もっとも安全性の観点からは、酸性化合物を含有する薬品を過剰量とするよりは、炭酸塩等を含有する薬品が過剰量となるようにすることが好ましい。
【0059】
そして、仕切り部によって複数に区分けされた密封性袋材を利用した本発明の機能性シートは、密封性袋材における仕切り部を破壊することにより、炭酸塩等を含有する薬品と酸性化合物を含有する薬品とを接触させる。
【0060】
即ち、仕切り部によって複数に区分けされた密封性袋材を利用した本発明の機能性シートにおいては、使用者が使用時において仕切り部を破壊することにより、前記炭酸塩等を含有する薬品と酸性化合物を含有する薬品とを接触させて、二酸化炭素を発生させるのである。
【0061】
これより、仕切り部によって複数に区分けされた密封性袋材を利用した本発明の機能性シートは、使用上の煩雑な作業を必要とすることなく、仕切り部を破壊するといった簡単な作業のみで二酸化炭素を発生させることができる。又、一回分の用量の薬品を密封性袋材に個別包装しているから、使用者において使用毎に量り採る必要が無くなり、薬品の用量を誤ることも無くなる。更に、一回限りの使い捨てとなるため、薬品を常に新鮮で活性な状態に保つこともできる。
【0062】
その後、使用者は、当該袋材を開封して担持体を皮膚表面の所望の箇所に貼着する。これより、担持体を貼着した箇所において、炭酸ガスの発生による皮膚マッサージ効果や表皮下の毛細血管拡張効果等が得られ、皮膚の血行促進や賦活化などを図ることができる。
【発明の効果】
【0063】
本発明の機能性シートは、少なくとも一方の薬品一回分の用量を担持体に担持しているから、使用者において使用毎に量り採る必要が無くなり、薬品の用量を誤ることが無くなる。
【0064】
又、本発明の機能性シートにおいて、担持体として布基材を用いたものにあっては、布基材の有する緩衝効果によって皮膚刺激が少なくなることから、使用上の安全性がより一層向上する。
【0065】
更に、仕切り部によって複数に区分けされた密封性袋材を利用した本発明の機能性シートは、使用上の煩雑な作業を必要とすることなく、仕切り部を破壊するといった簡単な作業のみで二酸化炭素を発生させることができる。
【0066】
そして、本発明の機能性シートは、担持体を貼着した箇所において、炭酸ガスの発生による皮膚マッサージ効果や表皮下の毛細血管拡張効果等が得られ、皮膚の血行促進や賦活化などを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る機能性シートを示す模式図である。
【図2】図2は、その使用状態を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の他の実施形態に係る機能性シートを示す模式図である。
【図4】図4は、仕切り部を破壊した状態を示す模式図である。
【図5】図5は、二酸化炭素の発生に応じて密封性袋材が膨張する状態を示す模式図である。
【図6】図6は、密封性袋材を開封し、布基材を取り出す状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下、本発明の機能性シートを実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0069】
図1は、本発明の機能性シート1の一実施形態を示す模式図である。この機能性シート1は、酸性化合物(クエン酸)を担持した担持体(水溶解性シート)5と、5%程度の炭酸水素ナトリウム水溶液(スプレーボトル)4とがセットとなっている。
【0070】
前記担持体5は、下記表1に示す薬液成分を混合し、乾燥することにより同表に示すフィルム濃度のフィルムに形成したものである。
【0071】
【表1】

【0072】
そして、本実施形態に係る機能性シート1においては、図2のように担持体5を肌に貼着し、その上から炭酸水素ナトリウム水溶液4をスプレー塗布し、二酸化炭素を発生させる。
【0073】
これにより、当該貼着箇所において炭酸ガスの発生による皮膚マッサージ効果や表皮下の毛細血管拡張効果等が得られ、皮膚の血行促進や賦活化などを図ることができる。又、水溶解性シート5が溶けることにより、反応の終点を目視で確認することもできる。
【0074】
図3は、本発明の機能性シート1の他の実施形態を示す模式図である。この機能性シート1における密封性袋材2は、アルミニウム蒸着フィルムからなる基材に透明な高分子フィルムからなる被覆材を重ね、その周縁をヒートシールにより接合してなる扁平状の袋材である。
【0075】
なお、この密封性袋材2は、ヒートシールによる溶着手段により、その内面の一部を、当該袋材2内の一端から他の一端に至るまで連続的に接合している。即ち、この密封性袋材2は、前記ヒートシールからなる仕切り部3によって、相互に隔離された二つの小室(21、22)に区分けされている。
【0076】
仕切り部3によって二つに区分けされた密封性袋材2における一の小室21には、炭酸塩等を含有する液状の薬品4を封入し、一方、他の小室22には、酸性化合物を含有する薬品を担持した布基材5を2枚重ねて封入している。
【0077】
前記仕切り部3は、使用時において破壊(剥離)することを前提としているため、袋材2の周縁のヒートシールより接合強度が弱くなるようにしている。しかも、仕切り部の一部には、接合状態を簡単に破壊することができる脆弱部31を設けている。
【0078】
そして、本実施形態に係る機能性シート1においては、図4のように、脆弱部31を利用して仕切り部3を破壊することにより、前記炭酸塩等を含有する薬品4を一の小室21から他の小室22に移動させ、当該他の小室内22において、当該薬品4と布基材5に担持された薬品とを接触することにより、二酸化炭素を発生させる。
【0079】
これより、本実施形態に係る機能性シート1は、仕切り部3を破壊するといった簡単な作業のみで二酸化炭素を発生させることができる。又、一回分の用量の薬品を密封性袋材2に個別包装しているから、使用者において適量採取する作業が必要無くなり、薬品の用量を誤ることも無くなる。更に、一回限りの使い捨てとなるため、薬品を常に新鮮で活性な状態に保つこともできる。
【0080】
そして、本実施形態においては、密封性袋材2内が十分に膨張した状態を確認した後、図6に示すように、当該袋材2を開封して布基材5を取り出す。この布基材5を皮膚表面の所望の箇所に貼着すると、当該箇所において炭酸ガスの発生による皮膚マッサージ効果や表皮下の毛細血管拡張効果等が得られ、皮膚の血行促進や賦活化などを図ることができる。
【0081】
ところで、本実施形態においては、仕切り部3の破壊後、図5に示すように密封性袋材2が膨張する。この膨張は、当然、炭酸塩等と酸性化合物が反応して二酸化炭素が発生していることに起因する。例えば、炭酸水素ナトリウムと酢酸を反応させると下記(1)に記す反応式により二酸化炭素が発生する。
【0082】
【化1】

【0083】
前記反応は、開放空間にあっては、発生した二酸化炭素が次々に大気中に放散されることから、速やかに右(矢印方向)に進む。しかしながら、密封性袋材2のような密封空間内においては、反応がある程度進むと徐々に右に向かう反応速度が鈍化する。これは、袋材2内の二酸化炭素濃度が徐々に増え、右に向かう反応が阻害されるからである。
【0084】
従って、本実施例に係る機能性シート1においては、密封性袋材2を開封する直前まで、二酸化炭素の発生が抑制される。この現象により、本実施例に係る機能性シート1は、肌に施用するまでの無駄な二酸化炭素の放散を抑制することができる上、肌に与える二酸化炭素の効果を著しく高めることができる。
<炭酸塩等を含有する薬品>
下記表2に示す成分からなる炭酸塩等を含有する薬品(以下、「薬品A」と称する。)を得た。当該薬品AのpHは7.6であった。
【0085】
【表2】

【0086】
<酸性化合物を含有する薬品>
酸性化合物として、下記表3に示す成分からなる薬品(以下、「薬品B」と称する。)を得た。なお、当該薬品Bに含有される酸性化合物は、下記表3に示す各酸性化合物をそれぞれ用いた。又、比較例(プラセボ)として酸性化合物の代わりにクエン酸三ナトリウムを配合してなる薬品も得た。各酸性化合物を含有した際の薬品B及び比較例のpHを表4に併せて示す。
【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
<薬品Bを担持してなる布基材>
不織布(コットン製不織布(表面積約21cm)、厚さ400μm、坪量60g/m)表面に対し、前記薬品B及び比較例の薬品を500g/mとなるように塗工し、十
分に乾燥させた。
【0090】
<試料1>
前述の密封性袋材における一の小室に薬品A(約4ml)を封入し、他の小室に薬品B(約4ml)を封入することにより、本発明の機能性シート及び比較例に係る薬剤(試料1)を得た。即ち、この試料1には布基材を介在させていない。
【0091】
<試料2>
前述の密封性袋材における一の小室に薬品A(約4ml)を封入し、他の小室に薬品Bを担持してなる不織布を2枚重ねて封入することにより、本発明の機能性シート及び比較例に係る薬剤(試料2)を得た。
【0092】
<pH試験1>
試料1の密封性袋材における仕切り部を破壊することにより、薬品Aと薬品Bを反応させ、反応後の混合溶液のpHを測定した。
【0093】
<pH試験2>
試料2の密封性袋材における仕切り部を破壊することにより、薬品Aを一の小室から他の小室に移動させ、当該他の小室内において、当該薬品Aと不織布に担持された薬品Bとを反応させた。反応後、不織布に吸収されている混合溶液を搾り採り、そのpHを測定した。
【0094】
前記pH試験1及び2の結果を下記表5に示す。
【0095】
【表5】

【0096】
表5に示す結果より、布基材を介在させた場合、二剤を混合した際のpHのばらつきが小さくなることが確認された。
【0097】
<官能試験1>
試料1の密封性袋材における仕切り部を破壊することにより、薬品Aと薬品Bを反応させ、反応後の混合溶液を目元へ塗布した。その際の使用感等を項目別に評価した(被験者10人)。
【0098】
<官能試験2>
試料2の密封性袋材における仕切り部を破壊することにより、薬品Aを一の小室から他の小室に移動させ、当該他の小室内において、当該薬品Aと不織布に担持された薬品Bとを反応させた。袋材が膨らんできたところで、袋材から不織布を取り出し目元へ貼着した。その際の使用感等を、項目別に評価した(被験者10人)。
【0099】
これらの評価を平均し、簡略的にまとめた結果を下記表6に示す。
【0100】
【表6】

【0101】
表6に示す結果から、本発明の肌活性剤の有益性が確認された。又、布基材を介して皮膚に貼着した場合、薬品の垂れ等を抑制することができるうえ、穏やかな反応が長期間にわたって継続するため、より一層の肌活性効果を得ることも確認された。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の機能性シートは、化粧品の分野のみならず、医薬及び医薬部外品等の分野においても利用可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 機能性シート
2 密封性袋材
3 仕切り部
4 炭酸塩等を含有する薬品(薬液)
5 担持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を含有する薬品と水溶液中で酸性を示す化合物を含有する薬品とを水の存在下で接触させることにより二酸化炭素を発生させる機能性シートであって、この機能性シートは、前記炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を含有する薬品、及び前記水溶液中で酸性を示す化合物を含有する薬品の少なくとも一方を担持体に担持させたことを特徴とする機能性シート。
【請求項2】
請求項1に記載の機能性シートにおいて、前記担持体が布基材である機能性シート。
【請求項3】
請求項1に記載の機能性シートにおいて、前記担持体が水溶解性シートである機能性シート。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の機能性シートにおいて、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を含有する薬品、又は水溶液中で酸性を示す化合物を含有する薬品の少なくとも一方には、緩衝剤を配合してなる機能性シート。
【請求項5】
仕切り部によって複数に区分けされた密封性袋材における一の小室には、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を含有する薬品を封入し、一方、他の小室には、水溶液中で酸性を示す化合物を含有する薬品を担持した担持体を封入し、前記仕切り部を破壊することにより、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を含有する薬品と水溶液中で酸性を示す化合物を含有する薬品とを接触させることを特徴とする機能性シート。
【請求項6】
仕切り部によって複数に区分けされた密封性袋材における一の小室には、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を含有する薬品を担持した担持体を封入し、一方、他の小室には、水溶液中で酸性を示す化合物を含有する薬品を封入し、前記仕切り部を破壊することにより、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を含有する薬品と水溶液中で酸性を示す化合物を含有する薬品とを接触させることを特徴とする機能性シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−26249(P2011−26249A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174308(P2009−174308)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(302060568)株式会社カナエテクノス (11)
【Fターム(参考)】