説明

機能性水溶性粉末の製法及びこれを含有する機能性樹脂又は繊維

【課題】粒径が最大5μm以下で、平均1.5μm以下である機能性微細粒子を製造し、これを樹脂又は繊維に均一に混合する。
【解決手段】粒径が最大5μm以下で、平均1.5μm以下である機能性微細粒子の製造方法である。非水溶性物質の粉末を粒径がほぼ1μm以下になるまで湿式粉砕する工程と、前記非水溶性物質の粉末を乾燥して粉末とする工程と、機能性水溶性粉末を溶媒にとかす工程と、前記機能性水溶性粉末溶液を前記非水溶性粉末に吸収させる工程と、前記工程で得られた混合物を乾燥し、乾式粉砕後、分級する工程とからなる。好ましくは、前記機能性水溶性粉末は湯の花である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性水溶性粉末の製法及びこれを含有する機能性樹脂又は繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機能性水溶性粉末を樹脂・繊維に練り込むことが行われている。その際、乾式粉砕方式により機能性水溶性粉末を得ると、粒径は最大7μm、平均1.43μmが限界である。この大きさでは、繊維に練り込んでも満足すべきものとはならない。分級により選別を行っても、収率が悪く、経済的にも引き合うものではなかった。そこで、このような機能性水溶性粉末は後加工処理が施されている。
【0003】
また、機能性水溶性粉末である湯の花粉末を樹脂塗料に含有させ、それを布生地に塗布して健康シートや寝具を得ることも下記特許文献1により知られている。
【特許文献1】実用新案登録第3119899号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、湯の花の粒径は0.5〜60μmとされており(同公報[0022]参照)、単純計算すれば、平均粒径は30μmである。樹脂に含有させることはできても繊維に練り込むことは困難である。
【0005】
繊維に練り込むためには、粒径が最大5μm、平均1.5μm以下、好ましくは、最大3μm、平均1μm以下としなければならない。さらに、樹脂や繊維に機能性を付与するためにはできるだけ粒子が広く分散されていることが望ましい。
【0006】
本発明は、粒径が最大5μm以下で、平均1.5μm以下である微細粒子を製造し、これを樹脂又は繊維に均一に混合することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、添付図1に示すように、非水溶性物質の粉末を粒径がほぼ1μm以下になるまで湿式粉砕する工程と、前記非水溶性物質の粉末を乾燥して粉末とする工程と、機能性水溶性粉末を溶媒にとかす工程と、前記機能性水溶性粉末溶液を前記粉末に吸収させる工程と、前記工程で得られた混合物を乾燥し、乾式粉砕後、分級する工程と、からなることを特徴とする粒径が最大5μm以下で、平均1.5μm以下である微細粒子の製造方法である。
【0008】
また、本発明は、前記方法により得られる粒径が最大5μm以下で、平均1.5μm以下、好ましくは、最大3μm、平均1μm以下、である機能性微細粒子、及び、それを含有させた繊維又は樹脂である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水溶性機能粉末の有する本来の性質を損なうことなく、水溶性機能粉末を、繊維や樹脂に練り込み、その特有の機能を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
添付図1の非水溶性物質の粉末を粒径がほぼ1μm以下になるまで湿式粉砕する工程で使用する「非水溶性物質の粉末」は、例えば、SiO2、Al2O3、ZrO2等が挙げられる。特にジルコニウムを含有する鉱石粉末、その他の無機粉末を使用することが好ましい。
【0011】
添付図1の機能性水溶性粉末を溶媒にとかす工程で使用する「機能性水溶性粉末」としては、例えば「湯の花」が挙げられる。湯の花は、温泉成分が析出又は沈殿したものである。高温で湧出した源泉が、大気温や浴槽との温度差によって冷却されていく過程で、源泉中に溶存していた数々の温泉成分が析出してきたり、源泉に混在していた物質の沈殿が発生する。析出物沈殿物は、粒子状になって浴槽の底に沈んだり、糸状になって浴槽内を漂ったり、浴槽の壁面や湯口に付着する。
【0012】
湯の花の主要な成分は、大分県衛生研究所の定量分析(重量%)によれば、次のとおりである。
硫酸アルミニウム 41.35
硫酸第一鉄 9.24
酸化アルミニウム 6.87
硫酸第二鉄 6.83
硫酸マグネシウム 1.96
硫酸カルシウム 0.77
塩化ナトリウム 0.38
硫酸ナトリウム 0.23
塩化カリウム 0.16
メタ硅酸 0.11
水分 28.38
微量成分 3.72
【0013】
湯の花は、神経痛、リウマチ、冷え性、関節炎、肩こり、腰痛、痔、うちみ、ただれ、くじき、たむ し、しっしん、かいせん、いんきん、あせも、しもやけ、水虫などに対して治療的機能(効能)を有することが証明されている。
【0014】
前記機能性水溶性粉末は、20〜40%水溶液、好ましくは25〜35%水溶液とし、前記非水溶性粉末と好ましくは0.5:1〜1:1.5の割合で混合する。
【0015】
乾燥し、乾式粉砕後、分級する最後の工程を経た微細粉末粒子は、後処理を加えなければ、非水溶性粉末と機能性水溶性粉末の混合粉体となる。
【0016】
本発明の方法において、湿式粉砕工程を実施するための湿式粉砕装置としては、液体中で粉体に衝撃力を与えて微粉砕し得る装置、例えばボールミルやビーズミルを用いることができる。乾式粉砕工程を実施するための乾式粉砕装置についても特に制限はないが、ビーズ等の粉砕メディアを内蔵した通常の乾式粉砕機、例えばボールミルやビーズミルを用いることができる。分級工程を実施するための分級装置としては、ジェットミルのような気流粉砕機による気流粉砕に続けて気流分級で分級して、寸法的に安定な粉末を得るものが好ましい。
【0017】
前記機能性水溶性粉末(又は非水溶性粉末と機能性水溶性粉末の混合粉体)を含有する繊維を製造するには、合成繊維の場合、この粉体をナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、プリプロピレン等のマスターバッチに投入し、定法に従って糸とする。天然繊維の場合は、布帛とした後で、バインダーを使ってこれらの微粒子を付着させる方法や、プリント法、噴霧法などがある。
【0018】
前記機能性水溶性粉末(又は非水溶性粉末と機能性水溶性粉末の混合粉体)を含有する樹脂とするときには、この粉体をフェノール樹脂塗料,フタル酸樹脂塗料,ビニル樹脂塗料,ポリウレタン樹脂塗料,シリコーン樹脂塗料,エポキシ樹脂塗料等に投入して、対象物の表面に塗布する。
【0019】
以下、実施例により本発明を説明する。
【実施例1】
【0020】
珪酸ジルコニウムを含有する鉱石粉末を湿式粉砕機(堀場製作所 LA-750)により湿式粉砕して、図2の粒度分布を有する粉末珪酸ジルコニウムを得た。粒径は、最大で約1μm、平均0.7μm程度である。この粉末珪酸ジルコニウムに対して30%水溶液にした湯の花溶液を1:1の割合で混合した後、乾燥し、乾式粉砕機(名農)で乾式粉砕した。この混合粉末をジェットミル(アイシン精機)で気流粉砕した後、分級装置(アイシン精機)で分級操作を行い、図3に示すような、粉末ジルコニウムと湯の花粒子の混合粉体を得た。粒径は、最大で約1μm、平均0.7μm程度である。
【0021】
この粉体をポリエステルマスターバッチに投入し、定法によりポリエステル糸を作成した。さらに、この糸を用いて織成して布団生地とした。湯の花の微細粒子は、繊維表面に広く分散する被覆効果を有し、機能性は損なわれていなかった。
【実施例2】
【0022】
実施例1で得られた粉末ジルコニウムと湯の花粒子の混合粉体をフェノール樹脂塗料に混入し、これを布生地の表面に塗布して健康シートとした。湯の花の微細粒子は、樹脂表面に広く分散する被覆効果を有し、機能性は損なわれていなかった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明方法のフローチャートである。
【図2】使用材料の一つである粉末珪酸ジルコニウムの粒度分布を示すグラフである。
【図3】本発明一実施例の混合粉体である粉末珪酸ジルコニウムと湯の花粒子の混合粉体の粒度分布を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶性物質の粉末を粒径がほぼ1μm以下になるまで湿式粉砕する工程と、
前記非水溶性物質の粉末を乾燥して粉末とする工程と、
機能性水溶性粉末を溶媒にとかす工程と、
前記機能性水溶性粉末溶液を前記非水溶性粉末に吸着させる工程と、
前記工程で得られた混合物を乾燥し、乾式粉砕後、分級する工程と、
からなることを特徴とする粒径が最大5μm以下で、平均1.5μm以下である微細粒子の製造方法。
【請求項2】
前記機能性水溶性粉末を20〜40%水溶液とし、前記非水溶性粉末と0.5:1〜1:1.5の割合で混合する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記機能性水溶性粉末が湯の花である請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記非水溶性物質が無機粉末である請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
水溶性で、かつ、粒径が最大5μm以下で、平均1.5μm以下である機能性微粒子粉末。
【請求項6】
機能性水溶性微粒子粉末と非水溶性粉末が混合されており、しかも粒径が最大5μm以下で、平均が1.5μm以下である微細粉末。
【請求項7】
機能性水溶性微粒子粉末と非水溶性粉末が混合されており、しかも粒径が最大3μm以下で、平均が1μm以下である微細粉末。
【請求項8】
請求項5〜7の何れかに記載の微細粉末を含有させた繊維又は樹脂。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−7191(P2009−7191A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168507(P2007−168507)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(507215334)カネヨウ株式会社 (1)
【出願人】(506267743)有限会社トーコーテクノ (3)
【Fターム(参考)】