機能性液体パターン形成方法、導電性パターン形成方法、機能性液体パターン形成システム、導電性パターン形成システム、機能性液体パターン構造体製造方法、及び導電性パターン構造体製造方法
【課題】バルジやジャギーなどの発生が回避され好ましい微細パターンを形成しうる機能性液体パターン形成方法/システム、導電性パターン形成方法/システム、機能性液体パターン構造体製造方法、及び導電性パターン構造体製造方法を提供する。
【解決手段】基材が加熱され表面温度が45℃以上(好ましくは60℃以上)に維持され、めっき用触媒担持ポリマー、高沸点溶媒及び低沸点溶媒を含有するめっき用触媒担持ポリマー液を、吐出液滴の直径D1、めっき用触媒担持ポリマー液のドットの間ピッチW、該液のドットの直径D2が、D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により基材上に吐出させ、めっき用触媒担持ポリマー液のパターンが形成される。また、該液を硬化させた後にめっき触媒(又はめっき触媒前駆体)が付与され、めっき処理が施されることでめっき膜からなる導電性パターンが形成される。
【解決手段】基材が加熱され表面温度が45℃以上(好ましくは60℃以上)に維持され、めっき用触媒担持ポリマー、高沸点溶媒及び低沸点溶媒を含有するめっき用触媒担持ポリマー液を、吐出液滴の直径D1、めっき用触媒担持ポリマー液のドットの間ピッチW、該液のドットの直径D2が、D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により基材上に吐出させ、めっき用触媒担持ポリマー液のパターンが形成される。また、該液を硬化させた後にめっき触媒(又はめっき触媒前駆体)が付与され、めっき処理が施されることでめっき膜からなる導電性パターンが形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性液体パターン形成方法、導電性パターン形成方法、機能性液体パターン形成システム、導電性パターン形成システム、機能性液体パターン構造体製造方法、及び導電性パターン構造体製造方法に係り、特にインクジェット方式を用いた微細パターンの形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、薄型化に伴い、実装される各種電子デバイス(ICチップなどの能動素子や、キャパシタ、レジスタなどの受動素子)もますます小型化しており、多種多様な実装基板の小型化、薄型化の手法が提案されている。大きな配線スペースを必要とするワイヤボンディングなどに代わるフリップチップ法、複数の半導体素子をパッケージ内で集積するSiP、素子を基板内に内蔵する内蔵基板、チップサイズパッケージ(CSP)などが提案実用化されている。
【0003】
一般に、配線基板の製造方法としてフォトリソ法が知られている。フォトリソ法は、絶縁層と銅箔からなる銅張積層板の上にドライフィルムレジスト又は液レジストによるレジスト層を形成し、フォトマスクを介してレジスト層に紫外線を照射してパターン露光(現像)することによりレジスト層のパターニングを行い、レジストパターンにより被覆されていない銅箔部分をエッチングにより除去して導体パターンが得られる。
【0004】
上記したサブトラクティブ法以外にも、セミアディティブ法、アディティブ法がフォトリソ法として知られている。
【0005】
一方、フォトリソ法は、レジスト層の露光に用いるフォトマスクを作製する必要がある。また、エッチング工程やめっき工程とは別に中間材料としてのレジストの現像工程が必要となる。これに対して、印刷技術を用いたプリンタブルエレクトロニクスによる配線描画が提案されている。
【0006】
特に、インクジェット方式を用いて導電性微粒子材料を直接パターニングする方法は、マスクレス、かつ、オンデマンドで配線基板の製造が可能であり、レジスト現像や配線エッチング工程も削減できるなどフォトリソ法に代わる技術として期待されている。
【0007】
インクジェット方式を用いた直接描画による微細配線パターンの形成では、パターンの厚みを十分に厚くすることが難しく、基材表面(パターン形成面)の平坦化が必要となる。他方、従来はアンカー効果により基材表面と導電性パターンとの密着が強化されており、基材表面を平坦化してしまうと基材表面と導電性パターンとの密着性が問題となる。
【0008】
特許文献1は、可撓性樹脂フィルム基材表面に、導電性物質吸着性樹脂前駆体層を形成し、導電性物質吸着性樹脂前駆体層にエネルギーを付与して導電性物質吸着層を形成し、導電性物質吸着層に導電性材料を吸着させて導電性層を形成し、導電性吸着樹脂層に吸着させた金属をベースとしてめっき処理を施して導電層(金属層)を形成している。
【0009】
特許文献1に開示された多層基板の製造方法では、めっき金属による導電(金属)層と基材表面との間に導電性物質吸着前駆体層を形成することで、基材表面と導電層という異種物質の密着性を確保している。
【0010】
導電性物質吸着前駆体層となる塗布液に金属イオン若しくは金属微粒子を吸着しうる官能基を持つ化合物を含有し、該塗布液の粘度を調整してインクジェット方式により該塗布液を塗布している。
【0011】
特許文献2は、基材表面上にラジカル重合可能な不飽和化合物を含有する液体をインクジェット方式によりパターン状に配置させ、加熱又は露光によりラジカル重合を発生させて液体の配置領域のみにグラフトポリマーを生成し、該グラフトポリマーに導電性物質を付着させて導電性パターンを得る導電性パターン(グラフトポリマーパターン)形成方法を開示している。
【0012】
特許文献2に開示された導電性パターン形成方法では、基材表面と導電性パターンとの間にグラフトポリマーを介在させて基材表面と導電性パターンとの密着性を強化している。また、特許文献2はグラフトポリマー生成工程において加熱処理が施される旨を開示している。
【0013】
特許文献3は、基板上に光ラジカル発生剤を含有する組成物をパターン状に付与し、加熱又は露光により光ラジカル発生剤を基材に固定化し、該光ラジカル発生剤が固定化された基材に重合性の二重結合を有する化合物を接触させ、基材表面上にエネルギーを付与して、光ラジカル発生剤が存在する領域にグラフトポリマーを形成し、グラフトポリマーが形成された領域に無電解めっき触媒又は無電解めっき触媒の前駆体を付与し、無電解めっき処理を施して、グラフトポリマーが形成された領域に導電性パターンを形成する導電性パターン(グラフとポリマーパターン)形成方法を開示している。
【0014】
特許文献3に開示された導電性パターン形成方法は、基板と導電性パターンとの間にグラフトポリマーを介在させて基板と導電性パターンとの密着性を強化している。
【0015】
また、特許文献3は重合性化合物を含有する組成物に使用される溶剤として、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、ニトリル系溶剤、エステル系溶剤を開示し、シアノ基含有重合性ポリマーを用いる場合は、アミド系、ケトン系、ニトリル系溶剤が好ましく、沸点が50℃から150℃の溶剤が好ましい旨を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2008−258211号公報
【特許文献2】特表2009−503806号公報
【特許文献3】特開2008−257892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
インクジェット方式を用いた機能性液(液体組成物)によるパターン形成は、機能性液の特性や環境条件などを考慮しなければならない。特に、微細パターンの形成にインクジェット方式の直接描画が適用される場合は、バルジの発生による線幅が不均一になること、ジャギーの発生によるパターンのエッジ形状の異常やパターン切れを回避しなければならない。
【0018】
しかしながら、上記した特許文献1から3はインクジェット方式を用いてめっきの下地となり、かつ、基板との密着性を確保しうる層(パターン)を形成する技術を開示しているものの、安定した吐出特性を得るためや、好ましいパターンが形成されるための具体的なインクジェット方式の適用条件について開示していない。
【0019】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、バルジやジャギーなどの発生が回避され好ましい微細パターンを形成しうる機能性液体パターン形成方法、導電性パターン形成方法、機能性液体パターン形成システム、導電性パターン形成システム、機能性液体パターン構造体製造方法、及び導電性パターン構造体製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明に係る機能性液体パターン形成方法は、めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上245℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により前記基材上に吐出させる機能性液体吐出工程と、前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、めっき用触媒担持高分子化合物を含有する機能性液体によるパターンを形成する際に、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、D1<W<D2の関係を満たすことで、バルジやジャギーなどの発生を防止しうる。
【0022】
また、機能性液体に低沸点溶媒を含むことで、基材上における機能性液体の液滴(ドット)の溶媒の蒸発が促進され、パターンの広がりが抑制される。
【0023】
さらに、機能性液体を吐出させている間、基材を加熱することで機能性液体の濡れ広がりが抑制される。
【0024】
さらにまた、機能性液体に高沸点溶媒を含むことでインクジェット方式による好ましい液体吐出が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る導電性パターン形成方法の流れを示すフローチャート
【図2】図1に示すめっき用触媒担持ポリマー吐出工程の詳細を示すフローチャート
【図3】図2に示すめっき用触媒担持ポリマー吐出工程に適用されるパターン形成システムを模式的に図示した説明図
【図4】図3に示すパターン形成システムの制御系の概略構成を示すブロック図
【図5】めっき用触媒担持ポリマー液の吐出パラメータの説明図
【図6】めっき用触媒担持ポリマー溶液の溶媒の沸点とパターン幅との関係を示すグラフ
【図7】基板の温度とパターン幅との関係を示すグラフ
【図8】ドット間ピッチとパターン幅との関係を示すグラフ
【図9】ドットピッチごとのパターンの形状を模式的に図示した説明図
【図10】積層パターンを形成したときのパターンの平面形状と立体形状を示す説明図
【図11】混合溶媒の揮発性がドット(パターン)の表面形状に及ぼす影響を示す説明図
【図12】四層パターンを形成したときのドット間ピッチとパターンの平面形状との関係を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0027】
〔導電性パターン形成方法の説明〕
図1は、本発明の実施形態に係る導電性パターン形成方法の流れを示すフローチャートである。同図に示すように、本例に示す導電性パターン形成方法は、基材(例えば、1.ミリメートル厚のガラスエポキシ基板に対して、30マイクロメートル厚の平坦化膜(エポキシ絶縁膜)がラミネートされたもの)に密着補助層を形成する密着補助層形成工程と(ステップS10)、密着補助層が形成された基材に導電性パターンに対応するめっき用触媒担持ポリマーのパターンをインクジェット方式により形成するめっき用触媒担持ポリマー吐出工程と(ステップS12)、めっき用触媒担持ポリマーに硬化エネルギーを照射する硬化エネルギー付与工程と(ステップS14)、硬化させためっき用触媒担持ポリマーにめっき用触媒を付与するめっき用触媒付与工程と(ステップS16)、めっき触媒が付与されためっき用触媒担持ポリマーにめっき処理を施すめっき工程と(ステップS18)、を含んで構成されている。
【0028】
密着補助層形成工程では(ステップS10)、基材とめっき用触媒担持ポリマーとの密着性を確保するために基材上に密着補助層液が付与される。例えば、スピンコートにより3マイクロメートル厚のエポキシプライマー剤が塗布される。
【0029】
密着補助層形成工程は、インクジェット方式を適用して、導電性パターンに対応するパターンを形成してもよい。
【0030】
密着補助層を形成する密着補助層液として、少なくともアニオン系分散剤及びノニオン系分散剤から選択された1種類以上の分散剤と、樹脂粒子と、水系分散剤と、を含有するNBR(ニトリルゴム)ラテックス系の材料を適用してもよい。
【0031】
インクジェット方式が適用される態様では、所定の溶媒を用いてインクジェット方式による吐出が可能な粘度(10ミリパスカル秒(センチポアズ)程度)に、希釈される。
【0032】
密着補助層液が付与されると、加熱(例えば、100℃以上の温度で2時間以下、好ましくは1時間以下)による硬化処理、酸性化合物又は多価金属塩を溶解した処理液を付与する疎水化処理、及び所定の洗浄液を用いた洗浄工程が施され、密着補助層が形成される。
【0033】
めっき用触媒担持ポリマー吐出工程では(ステップS12)、基材上に形成された密着補助層に対して、インクジェット方式によりめっき用触媒担持ポリマー液(機能性液体)が付与される。
【0034】
めっき用触媒担持ポリマー液は、少なくとも沸点が異なる二種類以上の溶媒が含まれる。沸点が異なる二種類以上の溶媒の例として、高沸点溶媒及び低沸点溶媒を含む態様がありうる。なお、高沸点溶媒及び低沸点溶媒の他に、中沸点溶媒を含む態様も可能である。
【0035】
ここで、「高沸点溶媒」とは、190℃以上245℃未満の沸点を有する溶媒であり、例えば、ジエチレングリコールモノエチレンエーテル(沸点196℃)、プロピレンカーボネート(沸点240℃)などが挙げられる。
【0036】
本例に示す導電性パターン形成方法(機能性液体によるパターン形成方法)では、ジエチレングリコールモノエチレンエーテル及びプロピレンカーボネートを含有するめっき用触媒担持ポリマー液を用いた実験により、めっき用触媒担持ポリマー液に高沸点溶媒を含有する効果を検証している(詳細後述)。
【0037】
また、「低沸点溶媒」とは、75℃以上105℃未満の沸点を有する溶媒であり、水(沸点100℃)、アセトリニトル(沸点82℃)などが挙げられる。「中沸点溶媒」とは、105℃以上190℃未満の沸点を有する溶媒であり、例えば、シクロヘキサン(沸点160℃)などが挙げられる。
【0038】
本例に示す導電性パターン形成方法では、水及びアセトリニトルを含有するめっき用触媒担持ポリマー液を用いた実験により、めっき用触媒担持ポリマー液に低沸点溶媒を含有する効果を検証している(詳細後述)。
【0039】
高沸点溶媒を含むことで、インクジェット方式によるめっき用触媒担持ポリマー液の良好な吐出性が維持される。すなわち、吐出の際のインク溶媒の蒸発によるインクジェットヘッドに具備されるノズル内における液の乾燥が防止され、ノズル近傍のインクの粘度が大きくなることで起こる正常に吐出がされない吐出異常の発生や、ノズルが完全に詰まってしまう不吐出の発生が回避される。
【0040】
換言すると、高沸点溶媒を含むことでノズルのオープンタイムが長くなるといえる。「ノズルのオープンタイム」とは、インクジェットヘッドのノズル乾燥の指標であり、ノズルにキャップをしない状態で放置して、ジェッティング(予備吐出)のみで回復が可能な時間である。
【0041】
なお、高沸点溶媒の沸点が上記温度範囲の上限値を超える場合は、めっき用触媒担持ポリマー液を吐出させる際のノズル近傍での吐出異常(不吐出)は防止されるものの、描画後にめっき用触媒担持ポリマー液の乾燥が遅くなりすぎて、描画されたパターンの幅が広がることや、描画されたパターンの幅が揺らぐことがありうる。
【0042】
また、低沸点溶媒を含むことで、基材に着弾した後に低沸点溶媒がすばやく蒸発して液滴の体積が減少し、液滴の微細化が可能となる。一方、低沸点溶媒の沸点が上記範囲の下限値未満の場合は、めっき用触媒担持ポリマー液を吐出させる際にノズル近傍においてめっき用触媒担持ポリマー液の増粘を引き起こし、吐出異常、不吐出の発生原因となりうる。
【0043】
中沸点溶媒は、コンテンツとなる高分子物質を溶解させる能力が高い性質を有することが好ましい。上記したシクロヘキサンは、光により反応して架橋硬化する特性を持つ高分子物質を溶解させる能力が高いので、中沸点溶媒として好ましい物質である。
【0044】
なお、高沸点溶媒、中沸点溶媒及び低沸点溶媒は、二種類以上の溶媒を混合してもよい。混合溶媒の沸点の算出方法は後述する。
【0045】
めっき用触媒担持ポリマーは、無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基(相互作用性基)と重合性官能基とを含有するポリマーである。該ポリマー中に相互作用性基が含まれることによって、後述するめっき触媒に対する優れた吸着性が達成され、結果としてめっき処理の際に十分な厚さのめっき膜(金属膜)を得ることができる。
【0046】
また、ポリマー中に重合性官能基が含まれることにより、液膜中で架橋反応が進行し強度に優れたポリマー層を得ることができる。なお、めっき用触媒担持ポリマー吐出工程の詳細は後述する。
【0047】
めっき用触媒担持ポリマー液によるパターンが形成されると、加熱処理(乾燥処理)又は露光等の硬化エネルギー付与処理が施される(硬化エネルギー付与工程:ステップS14)。
【0048】
加熱処理(乾燥処理)の一例として、ヒータによる加熱、乾燥風の噴射が挙げられる。また、加熱処理条件の一例として、100℃以上300℃以下の温度で、5分から120分といった条件が挙げられる。
【0049】
露光処理の一例として、UVランプ、可視光線などによる光照射が挙げられる。光源の一例として、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等が挙げられる。
【0050】
なお、放射線を適用することも可能である。例えば、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などを適用してもよいし、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)などを使用してもよい。
【0051】
赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や、赤外線ランプ露光を適用した場合の露光時間は、ポリマーの反応性及び光源の種類により異なるが、一般的に10秒から5時間の間である。
【0052】
露光エネルギーは、使用される材料によって適宜選択され、硬化エネルギーは30ミリワット毎平方センチメートル以上1500ミリワット毎平方センチメートル以下とする態様が好ましい。
【0053】
めっき用触媒担持ポリマー液による積層パターンを形成する場合には、層ごとに硬化処理を施す態様が好ましい。
【0054】
めっき用触媒付与工程では、硬化させためっき用触媒担持ポリマーにめっき用触媒又はめっき用触媒前駆体が付与される。めっき用触媒の例を挙げると、金、銀、パラジウムなどの金属触媒が挙げられる。また、めっき用触媒前駆体として金属イオンが挙げられる。
【0055】
めっき用触媒付与工程は、金、銀、パラジウムなどのめっき用触媒となる金属の溶液中にめっき用触媒担持ポリマーのパターンが形成された基材を浸漬させ、めっき用触媒担持ポリマーのパターンの中に金、銀、パラジウムなどのめっき用触媒となる金属が取り込まれる。
【0056】
めっき処理工程では(ステップS18)、めっき用触媒又はめっき用触媒前駆体が付与されためっき用触媒担持ポリマーのパターンに対して無電解めっき処理を施すことで、めっき用触媒担持ポリマーのパターンの中に取り込まれためっき触媒を核としてめっき金属(例えば、銅)が成長し、導電性パターンとなるめっき膜が形成される。
【0057】
導電性パターンとなるめっき膜は、10×106ジーメンス毎メートル以上100×106ジーメンス毎メートル以下の高い電気伝導率を有する優れた導電性を有し、かつ、めっき用触媒担持ポリマーとの間で優れた密着性を有する。
【0058】
本工程において行われるめっきの種類は、めっき用触媒担持ポリマーの中に発現するハイブリッド構造の形成性及び密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき層を得るために、無電解めっきの後に、さらに、電気めっきを行うことがより好ましい態様である。
【0059】
なお、めっき用触媒又はめっき用触媒前駆体が付与されためっき用触媒担持ポリマーがシード層として機能する場合は、めっき用触媒担持ポリマーに対して電気めっきを行うことも可能である。
【0060】
すなわち、めっき用触媒担持ポリマーとの間に相互作用を形成しためっき用触媒又はめっき用触媒前駆体の機能によって、めっきの種類を適宜選択することができる。
【0061】
〔めっき用触媒担持ポリマー吐出工程の説明〕
図2は、めっき用触媒担持ポリマー吐出工程(図1のステップS12)の流れを示すフローチャートである。同図に示すように、めっき用触媒担持ポリマー吐出工程が開始されると(ステップS20)、吐出条件設定工程(ステップS22)において、導電性パターンの幅に対応する吐出条件が設定され、加熱工程(ステップS24)により導電性パターンが形成される基材の加熱が開始される。
【0062】
吐出条件設定工程により設定される吐出条件には、基材上の形成されるドットの直径(ドットサイズ)D1、ドット間ピッチW、吐出時の液滴の直径(吐出液滴径)D2が含まれる。
【0063】
本例に示すめっき用触媒担持ポリマーのパターン形成では、次式(11)の関係を満たすようにドットサイズD1、ドット間ピッチW、吐出液滴径D2が決められる。
【0064】
D1<W<D2 …(11)
なお、めっき用触媒担持ポリマーの積層パターンを形成する場合には、一層目(最下層)のパターンを形成するための吐出条件と、二層目以降のパターンを形成するための吐出条件がそれぞれ設定される。
【0065】
一層目のパターンを形成するための吐出条件と二層目以降のパターンを形成するための吐出条件を同一条件としてもよいし、異なる条件としてもよい(詳細後述)。
【0066】
加熱工程は、めっき用触媒担持ポリマー液が吐出される間の基材の表面温度を一定範囲に維持するものである。基材の表面温度は45℃以上、好ましくは60℃以上に維持される。基材が加熱され基材の表面温度が上記した温度範囲に維持されると、めっき用触媒担持ポリマー液により形成されるパターンの高精細化に寄与する(詳細後述)。
【0067】
次に、吐出条件設定工程(ステップS22)により設定された吐出条件に基づいて、めっき用触媒担持用ポリマー液の吐出が開始されると(ステップS26)、めっき用触媒担持用ポリマー液を所定の吐出周期で連続的に吐出させ、めっき用触媒担持用ポリマー液の連続パターンが形成される。
【0068】
めっき用触媒担持用ポリマー液の連続パターンが形成されると、吐出が終了され(ステップS28)、基材の加熱が停止され(ステップS30)、めっき用触媒担持ポリマー吐出工程は終了される(ステップS32)。
【0069】
図3は、図2に示すめっき用触媒担持ポリマー吐出工程に適用されるパターン形成システムを模式的に図示した説明図である。同図に示すパターン形成システム10は、基材12の裏側面を支持するプラテン14と、基材12の表面(密着補助層20が形成される面)にめっき用触媒担持ポリマー液16を吐出させるインクジェットヘッド18と、を備えている。
【0070】
基材12は、エポキシ基板12Aに平坦化膜12Bが形成されている。図3に示す基材12は、スピンコートによりエポキシプライマー剤(密着補助層)20が塗布されている。
【0071】
プラテン14はヒータ22が内蔵され、プラテン14の表面(基材12の支持面)の温度を検出する温度センサ24が備えられており、温度センサ24の検出結果に基づいてヒータ22による加熱量を制御することにより基材12の表面温度が一定範囲に保たれる。
【0072】
なお、プラテン14にヒータ22を内蔵する態様に代わり、基材12に対して非接触で熱エネルギーを付与する手段を備える態様も可能である。
【0073】
インクジェットヘッド18は、不図示の移動機構により基材12の表面との間に所定のクリアランスが維持されて移動可能に構成されている。例えば、基材12の表面と平行な面において、インクジェットヘッド18を二次元的に(xy方向へ)移動させる態様が可能である。
【0074】
なお、インクジェットヘッド18を一方向(図示の矢印線の方向)に移動させながら、プラテン14をインクジェットヘッド18の移動方向と直交する方向に間欠的に移動させる態様も可能である。
【0075】
さらに、基材12の全幅に対応する長さにわたって複数のノズルが並べられたノズル列を少なくとも一列備えたフルライン型ヘッドを備え、ノズルの配列方向と直交する方向へ基材12とインクジェットヘッド18とを相対的に移動させる態様も可能である。
【0076】
インクジェットヘッド18の詳細な図示は省略するが、めっき用触媒担持ポリマー液を吐出させるノズルと、該ノズルと連通する液室(圧力室)と、液室内の液体を加圧する加圧素子と、を備える態様がある。
【0077】
液室内の液体を加圧する加圧素子として、液室を変形させる圧電素子や、液室内の液体を加熱する加熱素子を適用可能である。
【0078】
また、基材12に形成されためっき用触媒担持ポリマー液のパターン(めっき用触媒担持ポリマー液のドットに符号26を付して図示)に硬化エネルギーを付与する硬化エネルギー付与部(図3中不図示、図4に符号46を付して図示)が具備されている。めっき用触媒担持ポリマーのパターンが形成された基材は、硬化エネルギー付与部の硬化エネルギー付与領域へ移動させ、硬化エネルギーが付与される。
【0079】
図4は、図3に示すパターン形成システム10の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、パターン形成システム10は、システム制御部30と、入出力インターフェイス(入出力I/F)32と、液情報取得部34と、メモリ35と、ヒータ制御部36と、吐出制御部38と、搬送制御部40と、硬化エネルギー付与制御部42と、を含んで構成される。
【0080】
システム制御部30は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ(不図示)との間の通信制御、メモリ35の読み書き制御等を行うとともに、各部を制御する制御信号を生成して、統括的に制御する。
【0081】
入出力インターフェイス32は、外部からのデータ(めっき用触媒担持ポリマー液のパターンデータ)入力及び外部への情報出力のインターフェイスであり、シリアルインターフェイス、パラレルインターフェイスが適宜適用される。
【0082】
液情報取得部34は、めっき用触媒担持ポリマー液の情報を取得し、該情報をシステム制御部30へ送出する。液情報取得部34は、バーコードやICタグ等の情報記憶体に記憶されている情報を読み取る形態でもよいし、オペレータにより該情報を入力する形態でもよい。
【0083】
メモリ35は、入出力インターフェイスを介して入力されためっき用触媒担持ポリマー液のパターンデータの一時記憶領域、データ処理を行う際の演算処理領域として機能するとともに、システムパラメータの記憶領域として機能する。
【0084】
メモリ35は、半導体記憶素子、磁気記憶素子などの各種記憶素子を適用することができる。また、複数の記憶素子を併用する態様も可能である。
【0085】
ヒータ制御部36は、温度センサ24の検出結果に基づいてシステム制御部30から送出される指令信号に基づいて、図3に示すプラテン14に内蔵されるヒータ22のオンオフ、加熱量を制御する。
【0086】
吐出制御部38は、入出力インターフェイス32を介した入力されためっき用触媒担持ポリマー液のパターンデータを予め設定された吐出条件に基づいてドットデータに変換し、該ドットデータに基づくインクジェットヘッド18の駆動電圧を生成する。
【0087】
吐出制御部38は、吐出条件を設定する吐出条件設定部と、入力されためっき用触媒担持ポリマー液のパターンデータをドットデータに変換する演算処理部と、該ドットデータに基づく駆動電圧(駆動波形)を生成する駆動電圧生成部と、を備えている。
【0088】
めっき用触媒担持ポリマー液の積層パターンを形成する場合には、一層目(最下層)のパターンを形成する吐出条件と、二層目以降のパターンを形成する吐出条件とを、同一条件としてもよいし、異なる条件としてもよい。
【0089】
駆動電圧生成部は、駆動波形生成部と、該駆動波形を電圧増幅、電流増幅する増幅処理部と、増幅処理後の駆動波形を駆動電圧として出力する出力部と、を備えている。
【0090】
搬送制御部40は、めっき用触媒担持ポリマー液のパターンデータ(ドットデータ)に基づいて、インクジェットヘッド18とプラテン14(基材12)とを相対移動させる搬送駆動部44の動作を制御する。
【0091】
搬送駆動部44は、インクジェットヘッド18をガイドに沿って移動させる移動機構と、該移動機構の駆動源となるモータと、含んで構成される。インクジェットヘッド18の位置やプラテン14(基材12)の位置を検出する位置検出素子を備える態様が好ましい。
【0092】
位置検出素子として、モータの回転軸に取り付けられるロータリーエンコーダや、インクジェットヘッド18の移動方向に延在して設けられるリニアエンコーダなどが挙げられる。
【0093】
硬化エネルギー付与制御部42は、システム制御部30の指令信号に基づいて硬化エネルギー付与部46の動作を制御する。
【0094】
なお詳細な図示は省略するが、図1に示すめっき用触媒付与工程(ステップS16)及びめっき工程(ステップS18)を実現するための手段を備えた導電性パターン形成システムを構成することも可能である。
【0095】
〔吐出条件の説明〕
(吐出パラメータ)
次に、本例に示すパターン形成方法(システム)の吐出条件について説明する。図5は、めっき用触媒担持ポリマー液の吐出パラメータを説明する図である。なお、同図中、図3と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0096】
インクジェットヘッド18から吐出された吐出液滴16の直径(吐出液滴16の形状を球形状と仮定し、吐出液滴16の体積から求めた直径)D1、基材上に形成されたドット26の直径(吐出液滴16が単独で基材に着弾し形状が安定した状態のドットの直径)D2、基材上に形成されたドット26のドット間ピッチWは、図示の通りとなっている。
【0097】
(システム条件)
ヘッドシステム:DMP−2831(FUJIFILM Dimatix社製)
インクジェットヘッド:DMC−11610
吐出周波数:4キロヘルツ
吐出速度:6ミリメートル毎秒
(めっき用触媒担持ポリマー液の調製)
分子量20000のポリマー(高分子量ポリマー):5%
アセトニトリル(沸点が82℃の低沸点溶媒):45%
シクロヘキサノン(沸点が156℃の中沸点溶媒):30.95%
プロピレンカーボネート(沸点が240℃の高沸点溶媒):19%
界面活性剤(表面張力調整剤):0.05%
図同に示す吐出液滴16の直径D1、ドット26の直径D2、ドット間ピッチWの関係が上記式(11)の関係を満たすことで、好ましい微細パターンが形成される。
【0098】
ここで、ポリマーの分子量が20000の場合は良好な吐出が実現されるが、ポリマーの分子量が大きくなると吐出特性が悪くなり、分子量が50000を超えると(例えば、分子量60000)、インクジェット方式による吐出が困難になることが実験により明らかになっている。
【0099】
したがって、インクジェット方式による吐出性能の観点から、ポリマーの分子量は50000以下が好ましく、20000以下がより好ましい。
【0100】
また、高分子量のポリマーの質量比率を小さくすると、吐出性能が良化し、ノズルの乾燥を回避され、オープンタイムが長くなる。高分子量ポリマーの質量比率を10重量パーセント以上とすると正常吐出がされない場合がありうるので、高分子量ポリマーの質量比率は10質量パーセント未満とするとよい。
【0101】
(溶媒の調製)
図6は、沸点が異なる複数種類の溶媒が混合された混合溶媒における質量比から計算された沸点(揮発性)と、めっき用触媒担持ポリマー液のパターン幅との関係を示すグラフである。
【0102】
上記しためっき用触媒担持ポリマー液の調製を変更し、高沸点溶媒、中沸点溶媒、低沸点溶媒の質量比を変更し、この変更の影響を考察する。なお、基材の温度は室温(25℃)である。
【0103】
同図における混合溶媒の沸点がT1℃の場合は、上記した質量比の高沸点溶媒(19質量%)、中沸点溶媒(30.95質量%)、低沸点溶媒(45質量%)を含有しためっき用触媒担持ポリマー液が用いられている。
【0104】
一方、沸点がT2℃の場合(高沸点溶媒及び低沸点溶媒に代わり中沸点溶媒が混合された中沸点溶媒のみを含む場合)は、混合溶媒の沸点がT1℃の場合と比較してパターン幅が増加していることが把握される。
【0105】
また、混合溶媒の沸点がT3℃の場合(低沸点溶媒に代わり中沸点溶媒が混合された場合)は、溶媒の沸点がT2℃の場合と比較してさらにパターン幅が増加していることが把握される。
【0106】
すなわち、揮発性(質量比より計算した混合溶媒の沸点)とパターン幅とは相関しており、低沸点溶媒の混合より(混合溶媒の沸点がより低い場合に)、パターン幅が大きく減少していることが把握される。
【0107】
これは、基材に着弾したドットはエッジ部から溶媒の蒸発が起こるため、低沸点溶媒が添加されることで溶媒の蒸発が促進され、ドットの広がりが抑えられたためと考えられる。
【0108】
なお、沸点が異なる複数種類の溶媒が混合された混合溶媒の沸点(質量比から計算した混合溶媒沸点)の算出の詳細は後述する。
【0109】
(基材の温度)
次に、基材の温度について説明する。図7は、基材の温度とパターン幅との関係を示すグラフである。同図に示すように、基材の温度を室温(25℃)から徐々に上げると、パターン幅が減少することが把握される。
【0110】
すなわち、基材の温度を45℃温度以上とすることで、基材とめっき用触媒担持ポリマー液との接触線の固着が促進され、パターン幅の微細化が可能となる。また、基材の表面温度を60以上とすることで、よりパターン幅の微細化が促進される。
【0111】
(ドット間ピッチの説明)
次に、ドット間ピッチについて説明する。図8は、ドット間ピッチとパターン幅との関係を示すグラフであり、図9(a)から(g)は、ドット間ピッチとパターンの平面形状(顕微鏡写真を模式的に図示)との関係を示す説明図である。
【0112】
基材の温度を60℃とし、ドット間ピッチWは吐出液滴の直径D1の2分の1からドットの直径D2を超えるまで定量的に変えている。なお、吐出液滴の直径(上記式(11)のD1)の例として20マイクロメートル、基材に形成されるドットの直径(上記式(11)のD2)の例として60マイクロメートルとすることができる。
【0113】
図8に示すように、ドット間ピッチを広げることでパターン幅が減少することが把握される。一方、図9(f)に示すドット間ピッチW≒ドットの直径D2の場合、図9(g)に示すドット間ピッチW>ドットの直径D2の場合は、パターンにジャギー(パターンの一部が切れた状態になる現象)が発生している。
【0114】
なお、図9(e)に示すドット間ピッチWがドットの直径D2よりもやや小さい場合は、パターンのエッジに厚みが薄くなる部分が存在するものの、パターンにジャギーは発生していない。
【0115】
他方、ドット間ピッチWを吐出液滴の直径D1以下まで狭めると、図9(a)に示すようにパターン幅が太く、かつ、不均一となり、また、図9(b)に示すようにパターン幅が太くなり、好ましい微細パターンとはならない。
【0116】
ドット間ピッチWを小さくすると(パターンのドット密度を高くすると)、パターンの単位長さあたりの液量(液体積)が増えるためにパターンの幅が太くなる。したがって、パターン幅をより微細化させるためにはドット間ピッチWを大きくして単位長さあたりの液量を少なくするとよい。
【0117】
一方、ドット間ピッチWを大きくし過ぎると、隣接するドット同士が離れてしまい、パターン切れが発生する可能性がある。
【0118】
ドット間ピッチWを吐出液滴の直径D1を超える値(W>D1)とすることでパターンの単位長さあたりの液滴量を抑えつつ、ドット間ピッチWが吐出液滴の直径D1を超える値となっても、ドット間ピッチWをドットの直径D2未満とすることで隣接するドット同士を確実につなげることが可能となる。
【0119】
例えば、ノズルの直径が21マイクロメートルの場合に吐出液滴の直径は25マイクロメート程度になると推測されるので、ドット間ピッチWは25マイクロメートルを超える値とされる。
【0120】
一方、パターン幅が不均一になる原因はバルジが発生しているためと考えられる。より高密度に描画を行うとバルジの発生が顕著に現れる。また、吐出周波数が1キロヘルツ以上の場合は、バルジが不均一な間隔で発生する。
【0121】
吐出方向、吐出量の微小な揺らぎや、基板の不規則な微小凹凸の存在により、その不均一な位置を基点としてパターン幅が局所的に大きくなることで、バルジが発生すると考えられる。
【0122】
したがって、ドット間ピッチWをドットの直径D2未満(W<D2)とすることで、バルジの発生を回避しうると考えられる。
【0123】
すなわち、ドット間ピッチWが、吐出液滴の直径(D1)を超え、かつ、ドットの直径(D2)未満となって隣接するドットが重なるように、ドット間ピッチW、吐出液滴の直径D1、ドットの直径D2の関係が上記式(11)の関係を満たし、適切なドット間ピッチWが選択されることで、図9(c)から(e)に示すように、良好な平面形状を有する微細パターンを形成しうる。
【0124】
特に、ドット間ピッチWをドットの直径D2の2分の1以下とすることで(W≦D2/2)、より好ましい微細積層パターンを形成しうる。
【0125】
上記の如く構成されためっき用触媒担持ポリマーのパターン形成方法(システム)によれば、めっき用触媒担持ポリマー液が高沸点溶媒を含むことでインジェット方式による良好な吐出性能が確保され、かつ、めっき用触媒担持ポリマー液が低沸点溶媒を含むことで該液の濡れ広がりが抑制され、めっき用触媒担持ポリマーのパターンの微細化が可能となる。
【0126】
また、基材を加熱して表面温度が60℃に維持されることで、めっき用触媒担持ポリマーのパターンの接触線の固着が促進され、めっき用触媒担持ポリマーのパターンの微細化が可能となる。
【0127】
さらに、吐出液滴の直径D1、ドットの直径D2、ドット間ピッチWのとの関係が、D1<W<D2を満たすことで、良好なめっき用触媒担持ポリマーの微細パターンを形成しうる。
【0128】
〔積層化の説明〕
(単層の平坦化)
次に、めっき用触媒担持ポリマー液パターンの積層化について説明する。図10(a)は、単層(一層)のめっき用触媒担持ポリマー液のパターンの平面形状(上図)及び立体形状(下図)を模式的に図示した説明図である。
【0129】
めっき用触媒担持ポリマー液は、低沸点溶媒が45質量%、中沸点溶媒が30.95質量%、高沸点溶媒が19質量%混合され、基材を加熱して表面温度が60℃に維持されている。
【0130】
図10(a)から(c)の上段に示す平面形状は、顕微鏡写真の画像を模式的に図示したものであり、下段に示す立体形状は形状測定マイクロスコープによる画像を模式的に図示したものである。
【0131】
図10(a)は、単層のめっき用触媒担持ポリマー液のパターンが図示されている。パターンの微細化は実現されているものの、膜厚(d1)が不足している。
【0132】
図10(b)は、図10(a)に図示した単層のめっき用触媒担持ポリマー液のパターンを二層積層させためっき用触媒担持ポリマー液のパターンが図示されている。同図に示すように、パターンの微細な幅はほぼ維持されつつ、膜厚が約二倍(d1×2)となっている。
【0133】
図10(c)は、図10(a)に図示したパターンを四層積層させためっき用触媒担持ポリマー液のパターンが図示されている。同図に示すように、パターンの幅がほぼ維持されつつ、膜厚は単層の膜厚に積層数を乗じた値とはならないものの、単層の膜厚の約三倍(d1×3)となっている。
【0134】
すなわち、めっき用触媒担持ポリマー液のパターンの積層化は可能であり、単層パターンの形成を繰り返して積層させることで、所望の膜厚を有する多層(積層)パターンを形成しうる。
【0135】
めっき用触媒担持ポリマー液のパターンを積層するには、ドットの乾燥(溶媒の蒸発)が最適化され、各層又は少なくとも最下層となる一層目がある程度平坦化される必要がある。
【0136】
図11(a)から(c)は、混合溶媒の揮発性がドット(パターン)の表面形状に及ぼす影響を示す説明図である。図11(a)は、上記した低沸点溶媒が45質量%、中沸点溶媒が30.95質量%、高沸点溶媒が19質量%混合される混合溶媒(図6に示す沸点T1℃の混合溶媒)が用いられためっき用触媒担持ポリマー液が使用されたドットの立体形状を表している。同図に示すドット26Aは、極端な凹凸が生じていない。
【0137】
図11(b)は、高沸点溶媒及び低沸点溶媒に代わり中沸点溶媒を添加した溶媒(図6に示す沸点がT2℃の中沸点溶媒のみ)が用いられためっき用触媒担持ポリマー液ドットの立体形状を表している。同図に示すドット26Bは、端部に極端な凹凸が生じており(丸により囲まれた部分)、いわゆるコーヒーしみ現象が生じている。
【0138】
図11(c)は、高沸点溶媒が19質量%、中沸点溶媒が75.95質量%混合される混合溶媒(図6に示す沸点がT3℃の混合溶媒)が用いられためっき用触媒担持ポリマー液が使用されたドットの立体形状を表している。同図に示すドット26Cは、図11(a)に示すドット26Aと同様に極端な凹凸が生じていない。
【0139】
基材上のドットにおける溶媒の蒸発は、基材とドットと気体との境界からが起こる。溶媒の蒸発によりドットの中心からドットの端部へ対流が発生し、この対流によりポリマー成分が運ばれることでドットの端部においてポリマー成分の局在が起こり、乾燥後にドットの端部が凸形状となる。
【0140】
一方、めっき用触媒担持ポリマー液に高沸点溶媒を含有することで、基材とドットと気体(大気)との境界からの蒸発の速度が小さくなり、ドットの中心からドットの端部への対流も小さくなり、乾燥後にドットの平坦化がなされる。
【0141】
(ドット間ピッチ)
図12は、二層目以降を形成(積層)する際のドット間ピッチとパターンの平面形状との関係を示す説明図である。
【0142】
図12(a)は、ドット間ピッチWを吐出液滴の直径D1と略同一とした場合であり、二層目以降がパターンの幅からはみ出すことがある。
【0143】
図12(b)から(d)は、ドット間ピッチWを吐出液滴の直径D1を超えドットの直径D2未満とした場合であり、良好な微細積層パターンが形成される。特に、図12(b)に示すように、ドット間ピッチWがドットの直径D2の2分の1となる場合には、より好ましい微細積層パターンを形成しうる。
【0144】
なお、図12(d)に示すように、良好な微細パターンを形成しうる場合でも、ドット間ピッチWがより広げられると、二層目以降のパターンのエッジに厚みが薄い部分が生じてしまうことがありうる。
【0145】
図12(e)は、ドット間ピッチをドットの直径と略同一とした場合であり、図9(f),(g)と同様にジャギーが発生している。
【0146】
すなわち、めっき用触媒担持ポリマー液の積層パターンを形成する場合には、吐出液滴の直径D1、ドットの直径D2、ドット間ピッチWの関係が、上式(11)を満たすことで、好ましい積層パターンが形成される。
【0147】
また、ドット間ピッチWをドットの直径D2の2分の1以下とすることで(W≦D2/2)、より好ましい微細積層パターンを形成しうる。
【0148】
また、基材を加熱せずに積層パターンを形成すると、下層を形成する液と上層を形成する液の性質が同じであることにより液が濡れ広がりやすくなり積層パターンの形成が困難になるので、基材を加熱して表面温度を60℃(室温(25℃)の二倍を超える温度)に維持することで液の濡れ広がりが抑制され、微細なパターンの幅を維持しつつ積層が可能となる。
【0149】
さらに、めっき用触媒担持ポリマー液に低沸点溶媒を含有することで、濡れ広がりを抑制する効果を高めることが可能となる。
【0150】
以上まとめると、めっき用触媒担持ポリマーを用いて積層パターンを形成する場合には、めっき用触媒担持ポリマー液に高沸点溶媒を含有することで、ドットの乾燥工程が最適化され、ドット(パターン)の表面形状が良好になる(より平坦化される)。
【0151】
また、基材を加熱して表面温度を60℃とすることで、めっき用触媒担持ポリマー液の濡れ広がりが防止され、パターンの微細化が可能となる。さらに、めっき用触媒担持ポリマー液に低沸点溶媒を含有することで、めっき用触媒担持ポリマー液の濡れ広がりを防止する効果を高めることが可能となる。
【0152】
さらにまた、二層目以降のパターンを形成する際に、吐出液滴の直径D1、ドットの直径D2、ドット間ピッチWの関係が、上式(11)を満たすことで、好ましい積層パターンが形成される。なお、微細パターン形成の観点から積層数は、2から4程度とすることが好ましい。
【0153】
本例では、二層目以降のパターン形成における吐出条件を明示したが、該吐出条件は一層目(最下層)のパターンを形成する吐出条件に適用可能である。また、一層目のパターンを形成する吐出条件と二層目以降のパターンを形成する吐出条件とを共通化することも可能である。
【0154】
〔その他〕
(基板の材料)
本発明に適用される基材(基板)は、寸度的に安定なものであることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、ガラス基材、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂(SiO2、SiON、若しくはITOを有していてもよい)、ビスマレインイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、シアネート樹脂等、フェノール樹脂、アラミド樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリフェニレンエーテル、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート)、金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が含まれる。本発明に使用される基材としては、エポキシ樹脂又はポリイミド樹脂が好ましい。
【0155】
基材は、一般的には、平板状の基材(各種の基板)が用いられるが、必ずしも平板状の基材に限定されず、円筒形などの任意の形状の基材を用いてもよい。
【0156】
(密着補助層液)
密着補助層に用いるラテックスは、少なくとも、アニオン系分散剤及びノニオン系分散剤から選択された少なくとも1種の分散剤、樹脂粒子、及び水系分散媒を含むものである。具体的には、本発明におけるラテックスは、水に不溶な樹脂粒子が水又は水溶性の分散媒中に分散したものであり、アニオン系分散剤又はノニオン系分散剤を含むものである。
【0157】
ここで、水系分散媒とは、水、又は水に90質量%以下の水混和性の有機溶媒を混合した混合溶媒である。水混和性の有機溶媒としては、例えば、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などの水溶性可燃性液体が挙げられる。
【0158】
<水溶性可燃性液体>
水系分散媒に用いられる水溶性可燃性液体について説明する。
【0159】
ケトン系溶剤としては、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、γ−ブチロラクトン、ヒドロキシアセトンなどが挙げられる。
【0160】
エステル系溶剤としては、酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリコール酸メチル、グリコール酸エチルなどが挙げられる。
【0161】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、1−メトキシー2−プロパノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、3−アセチル−1−プロパノール、2−(アリルオキシ)エタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−アミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、(±)−2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−ジメチルアミノエタノール、2,3−エポキシ−1−プロパノール、エチレングリコール、2−フルオロエタノール、ジアセトンアルコール、2−メチルシクロヘキサノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、グリセリン、2,2’,2”−ニトリロトリエタノール、2−ピリジンメタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エタノール、2,3−ブタンジオール、2−ブトキシエタノール、2,2’−チオジエタノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、ジグリセリン、2,2’−メチルイミノジエタノール、1,2−ペンタンジオールなどが挙げられる。他に、アルコール系溶剤には、3−アミノ−1−プロパノール、メタクリル酸トリフルオロエチル、ペンタデカフルオロオクタノールなどのアルコール誘導体も含まれる。
【0162】
エーテル系溶剤としては、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]エーテル、1、2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール、2−エトキシエタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−イソブトキシエタノール、2− 2−イソブトキシエトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシ酢酸、2−メトキシエタノールなどが挙げられる。
【0163】
グリコール系溶剤としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0164】
アミン系溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0165】
チオール系溶剤としては、メルカプト酢酸、2−メルトカプトエタノールなどが挙げられる。
【0166】
ハロゲン系溶剤としては、3−ブロモベンジルアルコール、2−クロロエタノール、3−クロロ−1,2−プロパンジオールなどが挙げられる。
【0167】
上記溶剤以外の水溶性可燃性液体に包含される溶剤としては、乳酸メチル、乳酸エチル、モルホリン、N−エチルモルホリン、ぎ酸、酢酸などが挙げられる。
【0168】
混合溶媒中に含まれる水溶性可燃性液体は、総含有量が上記範囲であれば、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0169】
ラテックスが含む樹脂粒子を構成する樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア/ウレタン、SBR(スチレン−ブタジエン系)、MBR(MMA/ブタジエン、アクリル/ブタジエン)、NBR(アクリロニトリル/ブタジエン)、NR(天然ゴム)、アクリルゴム、BR(ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、IR(イソプレンゴム)、VP(SBR/ジビニルピリジン)、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)及びこれらの共重合体などが挙げられる。ラテックスとしては、特に、シアノ基を含む樹脂粒子を含むものが好ましい。
【0170】
そのようなラテックスとしては、市販品を用いてもよく、具体的には、Nipol 1561(日本ゼオン(株))、Nipol 1562(日本ゼオン(株))、Nipol 1577K(日本ゼオン(株))、Nipol LX110(日本ゼオン(株))、LX 531(日本ゼオン(株))、LX 531B(日本ゼオン(株))、Nipol SX1503A(日本ゼオン(株))、LX 513(日本ゼオン(株))、NK−300(日本エイアンドエル(株))、NK−301(日本エイアンドエル(株))として市販されるものを用いてもよい。これら市販品のラテックスには、後述するようなアニオン系分散剤及び/又はノニオン系分散剤が含まれる。
【0171】
また、樹脂粒子としては、種類の異なるものが併用されていてもよい。併用できる樹脂粒子としては、例えば、SBRとNR、IRとNR、CRとNR、NBRでニトリル量が異なるもの、SBRでスチレン量が異なるもの、SBRとVP、NBRとMBR、SBRとNBR、SBRとMBR、BRとCR、NBRとVP、CRとVPなどが挙げられる。
【0172】
ラテックスに含まれるアニオン系分散剤又はノニオン系分散剤について説明する。
【0173】
<アニオン系分散剤>
アニオン系分散剤としては、例えば、牛脂脂肪酸、部分水添牛脂脂肪酸、オレイン酸、パルミチン酸、ドデシル硫酸等の脂肪酸及びそのカリウム塩、ナトリウム塩等の脂肪酸塩;ロジン酸、水添ロジン酸等の樹脂酸及びそのナトリウム塩、カリウム塩等の樹脂酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸及びそのナトリウム塩等のアルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。これらのアニオン系分散剤の中でも、使いやすさの点からは、オレイン酸やパルミチン酸などの長鎖脂肪酸及びその塩が好ましい。
【0174】
<ノニオン系分散剤>
ノニオン系分散剤としては、例えば、ポリエチレングリコールエステル型、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体等のプルロニック型等の各分散剤が挙げられ、エチレングリコール型の分散剤が好ましい。
【0175】
アニオン系分散剤又はノニオン系分散剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの分散剤の併用態様としては、アニオン系分散剤のみを2種以上用いる態様、ノニオン系分散剤のみを2種以上用いる態様、1種又は2種以上のアニオン系分散剤と1種又は2種以上のノニオン系分散剤を用いる態様のいずれであってもよい。併用する際には、アニオン系分散剤としては長鎖脂肪酸及びその塩とノニオン系分散剤としてはエチレングリコール型の分散剤を組み合わせて使うことが特に好ましい。
【0176】
基材とラテックスとの接触により形成された樹脂層Aの膜厚は、適宜設定することができるが、0.01マイクロメートル以上5マイクロメートル以下が好ましく、0.06マイクロメートル以上3マイクロメートル以下がより好ましく、1マイクロメートル以上2マイクロメートル以下が最も好ましい。
【0177】
(めっき用触媒担持ポリマー液)
本発明に係る配線構造体製造方法(装置)に適用されるめっき用触媒担持ポリマー液は、所定の官能基を有するポリマーと、所定の沸点を示す溶媒が含有される。該溶媒が所定の沸点を有することによって、優れた連続吐出安定性やパターン形成性を示すインクが得られる。
【0178】
<ポリマー>
本発明のめっき用触媒担持ポリマー液に使用されるポリマーは、無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基(以後、適宜「相互作用性基」とも称する)と重合性官能基とを含有するポリマーである。ポリマー中に相互作用性基が含まれることによって、後述するめっき触媒に対する優れた吸着性が達成され、結果としてめっき処理の際に十分な厚さのめっき膜(金属膜)を得ることができる。また、ポリマー中に重合性官能基が含まれることにより、後述する基板との優れた密着性が発現されるとともに、膜中で架橋反応が進行し強度に優れたポリマー層を得ることができる。
【0179】
[相互作用性基]
相互作用性基としては、後述するめっき触媒などと相互作用を形成すれば、その種類は特に限定されない。例えば、極性基(親水性基)や、多座配位を形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などの非解離性官能基(解離によりプロトンを生成しない官能基)が挙げられる。特に、上記インクを用いて得られるポリマー層の吸水性、吸湿性を低減するためには、金属イオン吸着能を示す部位としての非解離性官能基を用いることが好ましい。
【0180】
極性基としては、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有する官能基、又は、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、N−ヒドロキシ構造を含む基、フェノール性水酸基、水酸基などの負の荷電を有するか、負の荷電に解離しうる酸性基が挙げられる。これらは、解離基の対イオンの形で、又は非解離状態の形でも金属イオンと吸着する。
【0181】
非解離性官能基としては、具体的には、金属イオンと配位形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基、含リン官能基などが好ましい。より具体的には、イミド基、ピリジン基、3級のアミノ基、アンモニウム基、ピロリドン基、アミジノ基、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリミジン基、ピラジン基、キナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン基構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基などの含酸素官能基、チオエーテル基、チオキシ基、チオフェン基、チオール基、スルホキシド基、スルホン基、スルフィット基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基、フォスフィン基、ホスフェート基、ホスホルアミド基などの含リン官能基、塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基、及び不飽和エチレン基などが挙げられる。また、隣接する原子又は原子団との関係により非解離性を示す態様であれば、イミダゾール基、ウレア基、チオウレア基を用いてもよい。さらに、シクロデキストリンやクラウンエーテルなどの包接能を有する化合物に由来する官能基であってもよい。
【0182】
中でも、極性が高く、めっき触媒などへの吸着能が高いことから、エーテル基(より具
体的には、−O−(CH2)n−O−(nは1から5の整数)で表される構造)、又は、シアノ基が特に好ましく、シアノ基がさらに好ましい。
【0183】
[重合性基]
重合性基としては、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基などが挙げられるが、後述する基板との反応性の観点からは、ラジカル重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、例えば、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基、イタコン酸エステル基、クロトン酸エステル基、イソクロトン酸エステル基、マレイン酸エステル基などの不飽和カルボン酸エステル基、スチリル基、アリル基などが挙げられる。中でも、メタクリル酸エステル基(メタアクリロイル基)、アクリル酸エステル基(アクリロイル基)、アリル基、スチリル基が好ましく、アクリロイル基、メタクリロイル基が特に好ましい。
【0184】
<ポリマーの好適態様>
[式(1)で表されるユニット]
上記ポリマーの好適態様の一つとして、基板との反応性により優れる点から、次式(1)で表されるユニット(繰り返し単位)が含有されるポリマーが挙げられる。該ユニットは、重合性基を有するユニット(重合性基含有ユニット)である。
【0185】
【化1】
【0186】
当該式(1)中、R1からR4は、それぞれ独立して、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。R1からR4が、置換又は無置換のアルキル基である場合、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1から2のアルキル基がより好ましい。
【0187】
より具体的には、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
【0188】
なお、R1としては、水素原子、メチル基、又は、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。R2としては、水素原子、メチル基、又は、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。R3としては、水素原子が好ましい。R4としては、水素原子が好ましい。
【0189】
Y及びZは、それぞれ独立して、単結合、又は、置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1から11)、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数6から12)、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。該有機基は、発明の効果を損なわない範囲で、ヒドロキシ基などの置換基を有していてもよい。
【0190】
置換又は無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチル基、ヘキシル基、又は、これらの基がメトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換されたものが好ましい。置換又は無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニル基、又は、メトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換されたフェニル基が好ましい。
【0191】
Y及びZとしては、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、エーテル基(−O−)、置換又は無置換の芳香族炭化水素基などが好ましく挙げられる。
【0192】
L1は、置換又は無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上記Y及びZで表される有機基と同義であり、例えば、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、又は、これらを組み合わせた基などが挙げられる。
【0193】
L1としては、無置換のアルキル基、又は、ウレタン結合若しくはウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、無置換のアルキル基及びウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。なお、ここで、L1の総炭素数とは、L1で表される置換又は無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
【0194】
L1の構造として、より具体的には、次式(1−1)、次式(1−2)、又は、次式(1−3)で表される構造であることが好ましい。
【0195】
【化2】
【0196】
当該式(1−1)及び当該式(1−2)中、Ra及びRbは、それぞれ独立して、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる群より選択される2つ以上の原子を用いて形成される2価の有機基である。好ましくは、置換若しくは無置換の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はブチレン基や、エチレンオキシド基、ジエチレンオキシド基、トリエチレンオキシド基、テトラエチレンオキシド基、ジプロピレンオキシド基、トリプロピレンオキシド基、テトラプロピレンオキシド基が挙げられる。
【0197】
[式(4)で表されるユニット]
上記式(1)で表されるユニットの好適態様として、次式(4)で表されるユニットが挙げられる。
【0198】
【化3】
【0199】
当該式(4)中、R1、R2、Z及びL1は、上記式(1)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。Tは、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子又はアルキル基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1から5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0200】
[式(5)で表されるユニット]
上記式(4)で表されるユニットの好適態様として、次式(5)で表されるユニットが挙げられる。
【0201】
【化4】
【0202】
当該式(5)中、R1、R2、及びL1は、上記式(1)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。T及びQは、それぞれ独立して、酸素原子又はNR(Rは、水素原子又はアルキル基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0203】
上記式(4)及び上記式(5)において、Wは、酸素原子であることが好ましい。また、上記式(4)及び上記式(5)において、L1は、無置換のアルキレン基、又は、ウレタン結合若しくはウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。
【0204】
ポリマー中における上記式(1)で表されるユニットの含有量は特に制限されないが、後述する基板との密着性、保存安定性、及び合成難易度の観点で、全ユニット(100モル%)に対して、5モル%以上50モル%以下が好ましく、5モル%以上40モル%以下がより好ましい。
【0205】
5モル%未満の場合、反応性(硬化性、重合性)が低下することがあり、50モル%を超える場合、ポリマーの合成の際にゲル化が起きやすく、反応の制御が難しくなる。
【0206】
[式(2)で表されるユニット]
上記ポリマーの好適態様の一つとして、めっき触媒の優れた吸着性点から、次式(2)で表されるユニット(繰り返し単位)を有するポリマーが挙げられる。該ユニットは、相互作用性基を含有するユニット(相互作用性基含有ユニット)である。
【0207】
【化5】
【0208】
当該式(2)中、R5は、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。
R5で表される置換又は無置換のアルキル基は、上述したR1からR4で表される置換又は無置換のアルキル基と同義である。R5としては、水素原子、メチル基、又は、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
【0209】
X及びL2は、それぞれ独立に、単結合、又は置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上述の通りである。Xとしては、好ましくは、単結合、エステル基、アミド基、エーテル基であり、より好ましくは、単結合、エステル基、アミド基であり、最も好ましくは、単結合、エステル基である。
【0210】
L2は、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい態様の1つである。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、さらに、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を含んでいてもよい。中でも、L2は、総炭素数が1から15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。
【0211】
なお、ここで、総炭素数とは、例えば、L2で表される置換又は無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
【0212】
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、及びこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシル基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、さらには、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0213】
Wは、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表す。Wはポリマー直鎖から直接結合してもよい。つまり、前述のX及びL2が単結合となり、Wが直接炭素原子に結合してもよい。非解離性官能基の定義は、上述の通りである。
【0214】
上記式(2)で表されるユニットの好適態様の一つとして、次式(6)で表されるユニットが挙げられる。
【0215】
【化6】
【0216】
当該式(6)中、R5、X及びL2の定義は、上記式(2)中の各基と同義である。上記式(2)で表されるユニットの他の好適態様として、次式(7)で表されるユニットが挙げられる。
【0217】
【化7】
【0218】
当該式(7)中、R5及びL2の定義は、上記式(2)中の各基と同義である。R6は、無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基を表す。ポリマー中における上記式(2)で表されるユニットの含有量は特に制限されないが、めっき触媒又はその前駆体に対する吸着性、合成のしやすさの観点から、ポリマー中の全ユニット(100モル%)に対して、20モル%以上90モル%以下が好ましく、さらに好ましくは30モル%以上80モル%以下である。
【0219】
<任意ユニット>
上記ポリマーは、水溶液に対する親和性が向上し、現像性がより向上する点から、さらに次式(3)で表されるユニットを有していてもよい。該ユニットは、イオン性極性基を有するユニットに該当する。
【0220】
【化8】
【0221】
当該式(3)中、R7は、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。R7で表される置換又は無置換のアルキル基は、上述したR1からR4で表される置換又は無置換のアルキル基と同義である。
【0222】
R7としては、水素原子、メチル基、又は、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。U及びL3は、それぞれ独立して、単結合、又は置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上述の通りである。Uの好ましい態様は、上記Xの好ましい態様と同じである。L3の好ましい態様は、上記L2の好ましい態様と同じである。
【0223】
Vは、イオン性極性基を表し、ポリマーの水溶液への現像性を付与しうるものであれば特に限定されない。具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸基が挙げられる。
【0224】
中でも、適度な酸性(他の官能基を分解しない)という点から、カルボン酸基が好ましく、電気配線として必要な低吸水性と、を両立するという観点で、特に、ポリマー主鎖に直接結合しているカルボン酸基、脂環構造と直接結合しているカルボン酸基(脂環式カルボン酸基)、ポリマー主鎖から離れたカルボン酸基(長鎖カルボン酸基)が好ましく、最も好ましくは、ポリマー主鎖に直結しているカルボン酸基である。
【0225】
このようなイオン性極性基は、ポリマーの一部に付加・置換させることで、ポリマー中に導入していてもよいし、また、イオン性極性基がペンダントされたモノマーを共重合することで、ポリマー中に導入してもよい。
【0226】
上記式(3)で表されるユニットにおいては、適度な酸性(他の官能基を分解しない)、アルカリ水溶液中では親水性を示し、水を乾燥すると環状構造により疎水性を示しやすいという点から、Vがカルボン酸基であり、且つ、L3のVとの連結部に4員から8員の環構造を有することが好ましい。
【0227】
ここで、4員から8員の環構造としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、フェニル基が挙げられ、中でも、シクロヘキシル基、フェニル基が好ましい。すなわち、この態様では、上記式(3)で表されるユニットの末端が脂環式カルボン酸基となる。
【0228】
また、上記式(3)で表されるユニットにおいては、適度な酸性(他の官能基を分解しない)、アルカリ水溶液中では親水性を示し、水を乾燥すると長鎖アルキル基構造により疎水性を示しやすいという点から、Vがカルボン酸基であり、且つ、L3の鎖長が6原子から18原子であることが好ましい。
【0229】
ここで、L3の鎖長とは、上記式(3)中のUとVとの距離を表し、UとVとの間が6原子から18原子の範囲で離間していることが好ましいことを意味する。L3の鎖長として、より好ましくは、6原子から14原子であり、さらに好ましくは、6原子から12原子である。
【0230】
一方、上記式(3)で表されるユニットにおいて、Vがカルボン酸基であり、且つ、U及びL3が単結合であることも好ましい態様の1つである。この態様であると、ポリマー主鎖でカルボン酸基が遮蔽されると予想され、その結果、疎水化でき、金属パターン形成直後において、基板と金属パターンとの密着性を高めることができ、また、ポリマー層の水に対する耐性を高めることができる。
【0231】
ポリマー中における上記式(3)で表されるユニットの含有量は特に制限されないが、水溶液による現像性と耐湿密着性の点から、ポリマー中の全ユニット(100モル%)に対して、20モル%以上70モル%以下が好ましく、さらに好ましくは20モル%以上60モル%以下である。
【0232】
特に好ましくは30モル%以上50モル%以下である。この範囲にて、より現像性と耐湿密着力を両立することができる。
【0233】
ポリマー中における上述したユニットの結合様式は特に限定されず、各ユニットがランダムに結合したランダム重合体であっても、各ユニットが同じ種類同士連結してブロック部を形成するブロックポリマーであってもよい。
【0234】
なお、上述したポリマーは、上記ユニット以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他のユニットを含んでいてもよい。但し、後述するように重合性基をポリマーに反応させて導入する場合は、100%導入することが困難な際には少量の反応性部分が残ってしまうことから、これが他のユニットとなる可能性もある。
【0235】
本例に適用されるめっき用触媒担持ポリマーの好ましい態様としては、上記式(1)で表されるユニットと、上記式(6)で表されるユニットとを有するポリマー、上記式(1)で表されるユニットと上記式(7)で表されるユニットとを有するポリマー、上記式(1)で表されるユニット、上記式(2)で表されるユニット、及び上記式(3)で表されるユニットを有するポリマーなどが挙げられる。
【0236】
本例に適用されるめっき用触媒担持ポリマーの重量平均分子量は、微細パターンを形成する観点から20000以下が好ましい。
【0237】
また、本例に適用されるめっき用触媒担持ポリマーの重合度としては、10量体以上のものを使用することが好ましく、さらに好ましくは20量体以上のものである。また、2000量体以下が好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
【0238】
<ポリマーの合成方法>
ポリマーの合成方法としては、以下の方法が好ましく挙げられる。
【0239】
i)相互作用性基を有するモノマー、及び重合性基を有するモノマーを共重合する方法、ii)相互作用性基を有するモノマー、及び二重結合前駆体を有するモノマーを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基を有するモノマー及び二重結合導入のための反応性基を有するモノマーを共重合させ、得られた反応性基を有するポリマーに、該反応性基と反応しうる重合性基を有するモノマーを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)する方法が挙げられる。
【0240】
合成適性の観点から、好ましい方法としては、上記ii)及び上記iii)の方法である。合成する際の重合反応の種類は特に限定されず、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などが挙げられるが、ラジカル重合で行うこと好ましい。また、上記のイオン性極性基を有するユニットを導入する場合は、イオン性極性基を有するモノマーを合わせて使用する。
【0241】
なお、本発明のポリマーは、特開2009−280905号公報の段落〔0097〕から〔0125〕に記載の方法などを参照して合成することができる。具体的には、上記ii)の合成方法において、二重結合前駆体を二重結合に変換するには、下記に示すように、B、Cで表される脱離基を脱離反応により除去する方法、つまり、塩基の作用によりCを引き抜き、Bが脱離する反応を使用する。
【0242】
なお、下記式中、Aは重合性基を有する有機団、R1〜R3は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基、B及びCはそれぞれ独立して脱離反応により除去される脱離基であり、B、Cのいずれか一方が水素原子であり、他方がハロゲン原子、スルホン酸エステル基、エーテル基、又はチオエーテル基を表す。ここでいう脱離反応とは、塩基の作用によりCが引き抜かれ、Bが脱離するものである。Bはアニオンとして、Cはカチオンとして脱離するものが好ましい。また、塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物又は炭酸塩、有機アミ化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。
【0243】
【化9】
【0244】
また、上記iii)の合成方法において、二重結合導入のための反応性基を有するモノマーとしては、反応性基としてカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、又はイソシアネート基を有するモノマーが挙げられる。また、反応性基を有するポリマーと反応させる重合性基を有するモノマーとしては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、ハロゲン化ベンジル基などの反応性基を有することが好ましい。
【0245】
ポリマー中の反応性基と、モノマー中の反応性基との組み合わせとしては、以下のようなパターンがある。
【0246】
すなわち、(ポリマーの反応性基、モノマーの反応性基)=(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)、(イソシアネート基、水酸基)、(イソシアネート基、カルボキシル基)、(エポキシ基、カルボキシル基)等を挙げることができる。
【0247】
なお、ポリマーの合成方法として、側鎖にヒドロキシル基を有するポリマー、及び、イソシアネート基と重合性基とを有する化合物を用い、該ヒドロキシル基に該イソシアネート基を付加させることによりL1中のウレタン結合を形成することが好ましい。
【0248】
また、ポリマーの合成方法として、側鎖にカルボキシル基を有するポリマー、及び、ハロゲン化ベンジル基と重合性基とを有する化合物を用い、該カルボキシル基に該ハロゲン化ベンジル基を付加させることによりL1中のメチレン基を形成することも好ましい。
【0249】
<溶媒>
本発明のインクジェットインクには、次式(A)で表される沸点の平均値を満たす溶媒類(液体類)が含有される。
【0250】
【数1】
【0251】
該溶媒は、上述したポリマーを溶解又は分散させることができる。本発明において、用いられる溶媒が所定の沸点を示すことにより、優れた連続吐出安定性や、ポリマー層の優れた形成性を示すインクを得ることができる。
【0252】
上記式(A)中、Wiインクジェットインク中のi番目の溶媒の溶媒全量に対する質量比(i番目の溶媒質量/全溶媒質量)(質量分率)を表す。Tbiはインクジェットインク中のi番目の溶媒の沸点(℃)(1気圧下)を表す。iは1からnの整数を表す。
【0253】
nはインクジェットインクに含有される溶媒の数を表し、具体的には、nは1以上の整数を表す。例えば、2種の溶媒を使用する場合はn=2となり、3種の溶媒を使用する場合はn=3となる。なお、nの上限は特に制限されないが、コストなどの観点より、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。上記式(A)中、Σは合計を表す。
【0254】
上記式(A)では、各溶媒の沸点値に、該溶媒の全溶媒中における質量分率を乗じて得た値を求め、それらを足した総和である。得られる値によって、インクジェット中の溶媒の揮発の程度を見積もることができる。
【0255】
より具体的には、1種の溶媒のみを使用する場合は、n=1となり、使用される溶媒の沸点値がT(b)に該当する。
【0256】
また、二種類の溶媒を併用する場合(溶媒Xの沸点:TX、溶媒Yの沸点:TY)、T
(b)は、次式
T(b)={TX×(溶媒Xの質量/全溶媒質量)}+{TY×(溶媒Yの質量/全溶媒質量)}
より求めることができる。さらに、三種類の溶媒を併用する場合(溶媒Xの沸点:TX、溶媒Yの沸点:TY、溶媒Zの沸点:TZ)、T(b)は、次式
T(b)={TX×(溶媒Xの質量/全溶媒質量)}+{TY×(溶媒Yの質量/全溶媒質量)}+{TZ×(溶媒Zの質量/全溶媒質量)}
より求めることができる。
【0257】
使用される溶媒は、非重合性溶媒(非重合性液体)であっても、重合性基を含有する重合性溶媒(重合性液体)であってもよい。なお、重合性溶媒は、重合性基を有する液状モノマーを意味する。重合性溶媒は、吐出可能な粘度を有していれば特に限定されないが、溶解性の観点より、分子量300以下、重合性官能基数2以下のものが特に好ましい。
【0258】
より具体的に、使用される溶媒としては、例えば、アルデヒド系溶媒(例えば、2−アルアルデヒド、ベンズアルデヒドなど)、エーテル系溶媒(例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピルエーテル、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエチルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなど)、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドンなど)、アミン系溶媒(例えば、トリエチルアミン、ピリジンなど)、脂肪族炭化水素系溶媒(例えば、シクロヘキサン、ヘプタンなど)、芳香族炭化水素系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニリン、クレソール、テトラリン)、アルコール系溶媒(例えば、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、グリセロール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、デカノールなど)、エステル系溶媒(例えば、エチルアセテート、プロピルアセテート、ジエチルカルボネート、エチルラクテート、2−エトキシエチルアセテート、エチルベンゾエート、プロピレンカルボネート、トリアセチンなどの)、ケトン系溶媒(例えば、2−ブタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなど)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル、シアノエチルアクリレートなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、トリクロロメタン、テトラクロロメタン)、硫黄系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド)、有機酸(例えば、酢酸)などが挙げられる。
【0259】
中でも、溶解性、インクジェットヘッド攻撃性、素材の選択性の観点より、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒(特に、(オリゴ)エチレングリコール誘導体、(オリゴ)プロピレングリコール誘導体)、重合性溶媒などが好ましい。
【0260】
本例に示すめっき用触媒担持ポリマー液に適用される溶媒は、上記したものの中で、沸点が異なる二種以上の混合溶媒として使用される。
【0261】
なお、沸点が異なる溶媒A(または溶媒B)が二種以上使用される場合は、全溶媒A量に対する各溶媒Aの質量分率に、各溶媒Aの沸点を乗じて得た値を足した値を、溶媒Aの沸点とする。溶媒Bの場合も同様である。より具体的には、各溶媒の沸点は、それぞれ次式(B)又は次式(C)で表される沸点である。
【0262】
【数2】
【0263】
式(B)中、WAiはインクジェットインク中のi番目の溶媒Aの溶媒A全量に対する質量比(i番目の溶媒A質量/全溶媒A質量)(質量分率)を表す。
【0264】
TAbiはインクジェットインク中のi番目の溶媒Aの沸点(℃)(1気圧下)を表す。iは1からnAの整数を表す。
【0265】
nAはインクジェットインクに含有される溶媒Aの数を表し、具体的には、nAは1以上の整数を表す。例えば、二種の溶媒Aを使用する場合はnA=2となり、3種の溶媒Aを使用する場合はnA=3となる。なお、nAの上限は特に制限されないが、コストなどの観点より、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。式(B)中、Σは合計を表す。
【0266】
式(C)中、WBiはインクジェットインク中のi番目の溶媒Bの溶媒B全量に対する質量比(i番目の溶媒B質量/全溶媒B質量)(質量分率)を表す。
【0267】
TBbiはインクジェットインク中のi番目の溶媒Bの沸点(℃)(1気圧下)を表す。iは1からnBの整数を表す。
【0268】
nBはインクジェットインクに含有される溶媒Bの数を表し、具体的には、nBは1以上の整数を表す。なお、nBの上限は特に制限されないが、コストなどの観点より、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。
【0269】
該好適態様において、インクジェット中、質量基準で溶媒Aが溶媒Bよりも多く含有される。言い換えると、インクジェットインク中における溶媒Aと溶媒Bとの質量比(溶媒Aの質量/溶媒Bの質量)は1を超える数値となる。
【0270】
該質量比としては、連続吐出安定性と、描画時のポリマー膜の面状の両立の点から、2以上がより好ましい。上限としては、通常、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。
【0271】
溶媒Bの好ましい態様としては、描画時のポリマー膜の面状良化の点から、重合性溶媒(重合性液体)が挙げられる。重合性溶媒としては、分子量が比較的小さく、ポリマー成分への溶解性が高い分子量300以下で2官能以下のものが望ましく、さらに、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基(式(1)内のW基)を有することが好ましい。
【0272】
具体的には、イミド基、ピリジン基、3級のアミノ基、アンモニウム基、ピロリドン基、アミジノ基、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリミジン基、ピラジン基、ナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン基構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基、N−ヒドロキシ構造を含む基、フェノール性水酸基、又は水酸基を含む、(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドなどが好ましい。
【0273】
<インクジェット方式への対応>
本発明に適用されるめっき用触媒担持ポリマー液は、上記ポリマーと上記溶媒とが含まれる。インクジェットインク中におけるポリマーの含有量は特に制限されないが、連続吐出安定性により優れる点で、インク全量に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、4質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0274】
インクジェットインク中における上記溶媒の含有量は特に制限されないが、連続吐出安定性により優れる点で、インク全量に対して、80質量%以上99質量%以下が好ましく、85質量%以上96質量%以下がより好ましい。
【0275】
<任意成分>
本発明に適用されるめっき用触媒担持ポリマー液は、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、ラジカル発生剤などを含有していてもよい。
【0276】
<界面活性剤>
本発明に適用されるめっき用触媒担持ポリマー液は、さらに界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤を含む場合、インクジェット吐出安定性、着弾時のレベリング性の点で好ましい。
【0277】
界面活性剤の例として、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、アンモニウムイオンを対イオンとするアニオン系界面活性剤、有機酸アニオンを対イオンとするカチオン系界面活性剤などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール誘導体が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、長鎖アルキルのベタイン類が挙げられる。アンモニウムイオンを対イオンとするアニオン系界面活性剤としては、例えば、長鎖アルキル硫酸アンモニウム塩、アルキルアリール硫酸アンモニウム塩、アルキルアリールスルホン酸アンモニウム塩、アルキルリン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸系高分子のアンモニウム塩などが挙げられる。
【0278】
めっき用触媒担持ポリマー液中の界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、インク全量に対して、5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2質量%以下がより好ましい。上記範囲内であれば、インクの他物性を損ねることなく、好ましい表面張力を得られる点で好ましい。
【0279】
<ラジカル発生剤>
本発明に適用されるめっき用触媒担持ポリマー液は、上記ポリマー中の重合性基の反応を促進する目的で、ラジカル発生剤(重合開始剤)を含有していてもよい。ラジカル発生剤は、ポリマーの種類にあわせて選択することができ、光ラジカル発生剤、熱ラジカル発生剤などが挙げられる。
【0280】
中でも、オキシムエステル類、アシルホスフィンオキサイド類、α―ヒドロキシアルキルケトン類、ロフィンダイマー類、及びトリハロメチルトリアジン類からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0281】
ラジカル発生剤の含有量は、インク全量に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上3質量%以下である。含有量が上述の範囲内であると、より良好な感度と強固な硬化部を形成することができる。
【0282】
〔インクジェットインクの製造方法〕
本発明に適用されるめっき用触媒担持ポリマー液の製造には、公知のインクジェットインクの製造方法を適用することが可能である。例えば、溶媒中に上記ポリマーを溶解させた後、インクジェットインクに必要な各成分(例えば、界面活性剤、ラジカル発生剤)を溶解させてインクジェットインクを調製することができる。
【0283】
<インクジェットインクの物性値>
本発明のインクジェットインクの物性値としては、インクジェットヘッドで吐出可能な範囲であれば特に限定されないが、インク粘度は安定吐出の観点から、吐出時のヘッド内の温度において20ミリパスカル秒以下であることが好ましく、2ミリパスカル秒以上15ミリパスカル秒以下であることがより好ましい。また、装置で吐出する際には、インクジェットインクの温度を20℃以上80℃以下の範囲でほぼ一定温度に保持することが好ましく、該温度範囲で粘度が20ミリパスカル秒となることがより好ましい。装置の温度を高温に設定すると、インクの粘度が低下し、より高粘度のインクを吐出可能となる。しかし、温度が高くなることにより、熱によるインクの変性や熱重合反応がヘッド内で発生したり、インクを吐出するノズル表面で溶剤が蒸発したりして、ノズル詰まりが起こりやすくなるため、50℃以下であることが好ましい。なお、上記粘度は、一般に用いられるE型粘度計(例えば、東機産業(株)製E型粘度計(RE−80L)を用いることにより測定される値である。
【0284】
また、インクジェットインクの25℃の表面張力(静的表面張力)としては、非浸透性
の基板に対する濡れ性の向上、及び吐出安定性の点で、20ミリニュートン毎メートル以上40ミリニュートン毎メートルが好ましく、20ミリニュートン毎メートル以上35ミリニュートン毎メートル以下がより好ましい。
【0285】
上述の表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計FACE SURFACE TENSIOMETER CBVB−A3など)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃、60%RHにて測定される値である。
【0286】
以上説明しためっき用触媒担持ポリマー(めっき用触媒担持ポリマー液)は、本発明の適用範囲を限定するものではなく、本発明の作用効果が得られる範囲において、適宜変更することが可能である。
【0287】
本例では、基板上の配線パターン描画を行う方法及び装置を例示したが、本発明は、樹脂製の筐体にパターンを形成する形態や、有機ELパネルなどの薄型パネルの作製にも適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0288】
以上、本発明に係る機能性液パターン形成方法、導電性パターン形成方法及びシステムについて詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよい。
【0289】
〔付記〕
上記に詳述した実施形態についての記載から把握される通り、本明細書では以下に示す
発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0290】
(発明1):めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により前記基材上に吐出させる機能性液体吐出工程と、前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、に前記基材を加熱する加熱工程と、を含むことを特徴とする機能性液体パターン形成方法。
【0291】
本発明によれば、めっき用触媒担持高分子化合物を含有する液によるパターンを形成する際に、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、D1<W<D2の関係を満たすことで、バルジやジャギーなどの発生を防止しうる。
【0292】
また、機能性液体に低沸点溶媒を含むことで、基材上における機能性液体の液滴(ドット)の溶媒の蒸発が促進され、パターンの広がりが抑制される。
【0293】
さらに、機能性液体を吐出させている間、基材を加熱することで機能性液体の濡れ広がりが抑制される。
【0294】
さらにまた、機能性液体に高沸点溶媒を含むことでインクジェット方式による好ましい液体吐出が実現される。
【0295】
(発明2):発明1に記載の機能性液体パターン形成方法において、前記高分子化合物の分子量は50000以下であることを特徴とする。
【0296】
かかる態様によれば、インクジェット方式による良好な吐出性能が維持される。
【0297】
インクジェット方式の吐出安定性の観点から、高分子化合物の分子量を20000以下とする態様がより好ましい。また、機能性液体における高分子化合物の質量比は5質量%以下が好ましい。
【0298】
(発明3):発明1又は2に記載の機能性液体パターン形成方法において、前記機能性液体吐出工程は、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式W≦D2/2の関係を満たす吐出条件に基づき、前記機能性液体を吐出させることを特徴とする。
【0299】
かかる態様によれば、パターン幅が均一な微細パターンを形成しうる。
【0300】
(発明4):発明1から3のいずれか1項に記載の機能性液体パターン形成方法において、前記加熱工程は、前記基材の表面温度が45℃以上となるように前記基材を加熱することを特徴とする。
【0301】
かかる態様によれば、基材上における機能性液体の濡れ広がりが防止され、好ましい微細パターンを形成しうる。
【0302】
かかる態様において、基材の表面温度を60℃以上とする態様が好ましい。
【0303】
(発明5):発明1から4のいずれかに記載の機能性液体パターン形成方法において、前記基材に密着補助層を形成する密着補助層形成工程を含み、前記機能性液体吐出工程は、密着補助層が形成された基材に前記機能性液体を吐出させることを特徴とする。
【0304】
かかる態様によれば、めっき用触媒担持高分子化合物と基材との密着性が確保される。
【0305】
(発明6):発明1から5のいずれかに記載の機能性液体パターン形成方法において、前記機能性液体吐出工程は、前記機能性液体のパターンを二層以上積層させるとともに、二層目以降のパターン形成において、前記機能性液体の液滴の直径D1、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、前記機能性液体を吐出させることを特徴とする。
【0306】
かかる態様によれば、二層目以降のパターンが下層のパターンからはみ出すことや、二層目以降のパターンにバルジやジャギーが発生することなく、好ましい微細積層パターンを形成しうる。
【0307】
かかる態様において、W≦D2/2の関係を満たす吐出条件に基づき前記機能性液体を吐出させることが好ましい。
【0308】
(発明7):発明6に記載の機能性液体パターン形成方法において、前記機能性液体吐出工程は、二層目以降のパターン形成が一層目のパターン形成と同一の吐出条件に基づくことを特徴とする。
【0309】
かかる態様によれば、一層目のパターンを形成する吐出条件と二層目以降のパターン形成する吐出条件とを共通化することで、吐出条件が最適化される。
【0310】
(発明8):めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を含有する機能性液体を、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により前記基材上に吐出させる機能性液体吐出工程と、前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、前記形成された機能性液体のパターンにめっき触媒又はめっき触媒前駆体を付与するめっき触媒付与工程と、前記めっき触媒又は前記めっき触媒前駆体が付与された機能性液体のパターンにめっき処理を施すめっき処理工程と、を含むことを特徴とする導電性パターン形成方法。
【0311】
本発明によれば、基材との密着性が確保された微細な導電性パターンを形成しうる。
【0312】
(発明9):発明8に記載の導電性パターン形成方法において、前記機能性液体吐出工程は、前記機能性液体のパターンを二層以上積層させるとともに、二層目以降のパターン形成において、前記機能性液体の液滴の直径D1、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、前記機能性液体を吐出させることを特徴とする。
【0313】
かかる態様によれば、機能性液体のパターンの厚みが十分に厚くされることで、基材の表面粗さの影響が排除された好ましい導電性パターンを形成しうる。
【0314】
(発明10):めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を含有する機能性液体を基材上に吐出させるインクジェットヘッドと、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、前記インクジェットヘッドの吐出を制御する吐出制御手段と、前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、を備えたことを特徴とする機能性液体パターン形成システム。
【0315】
本発明におけるインクジェットヘッドは、機能性液を吐出させるノズルと、ノズルと連通され、ノズルから吐出される機能性液が収容される液室と、該液室内の機能性液を加圧する加圧手段と、を備える態様がある。
【0316】
(発明11):発明10に記載の機能性液体パターン形成システムにおいて、前記吐出制御手段は、前記機能性液体のパターンを二層以上積層させるとともに、二層目以降のパターン形成において、前記機能性液体の液滴の直径D1、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、前記インクジェットヘッドの吐出を制御することを特徴とする請求項9に記載の機能性液体パターン形成システム。
【0317】
かかる態様において、一層目のパターンを形成する吐出条件と二層目のパターンを形成する吐出条件とを共通化する態様が好ましい。
【0318】
(発明12):めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を含有する機能性液体を基材上に吐出させるインクジェットヘッドと、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、前記インクジェットヘッドの吐出を制御する吐出制御手段と、前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、前記形成された機能性液体のパターンにめっき触媒又はめっき触媒前駆体を付与するめっき触媒付与手段と、前記めっき触媒又は前記めっき触媒前駆体が付与された機能性液体のパターンにめっき処理を施すめっき処理手段と、を備えたことを特徴とする導電性パターン形成システム。
【0319】
(発明13):発明12に記載の導電性パターン形成システムにおいて、前記吐出制御手段は、前記機能性液体のパターンを二層以上積層させるとともに、二層目以降のパターン形成において、前記機能性液体の液滴の直径D1、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、前記インクジェットヘッドの吐出を制御することを特徴とする。
【0320】
(発明14):めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により前記基材上に吐出させる機能性液体吐出工程と、前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、を含むことを特徴とする機能性液体パターン構造体製造方法。
【0321】
(発明15):めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により前記基材上に吐出させる機能性液体吐出工程と、前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、前記形成された機能性液体のパターンにめっき触媒又はめっき触媒前駆体を付与するめっき触媒付与工程と、前記めっき触媒又は前記めっき触媒前駆体が付与された機能性液体のパターンにめっき処理を施すめっき処理工程と、を含むことを特徴とする導電性パターン構造体製造方法。
【符号の説明】
【0322】
10…パターン形成システム、12…基材、14…プラテン、16…吐出液滴、18…インクジェットヘッド、20…密着補助層、22…ヒータ、24…温度センサ、26…ドット、30…システム制御部、36…ヒータ制御部、38…吐出制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性液体パターン形成方法、導電性パターン形成方法、機能性液体パターン形成システム、導電性パターン形成システム、機能性液体パターン構造体製造方法、及び導電性パターン構造体製造方法に係り、特にインクジェット方式を用いた微細パターンの形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、薄型化に伴い、実装される各種電子デバイス(ICチップなどの能動素子や、キャパシタ、レジスタなどの受動素子)もますます小型化しており、多種多様な実装基板の小型化、薄型化の手法が提案されている。大きな配線スペースを必要とするワイヤボンディングなどに代わるフリップチップ法、複数の半導体素子をパッケージ内で集積するSiP、素子を基板内に内蔵する内蔵基板、チップサイズパッケージ(CSP)などが提案実用化されている。
【0003】
一般に、配線基板の製造方法としてフォトリソ法が知られている。フォトリソ法は、絶縁層と銅箔からなる銅張積層板の上にドライフィルムレジスト又は液レジストによるレジスト層を形成し、フォトマスクを介してレジスト層に紫外線を照射してパターン露光(現像)することによりレジスト層のパターニングを行い、レジストパターンにより被覆されていない銅箔部分をエッチングにより除去して導体パターンが得られる。
【0004】
上記したサブトラクティブ法以外にも、セミアディティブ法、アディティブ法がフォトリソ法として知られている。
【0005】
一方、フォトリソ法は、レジスト層の露光に用いるフォトマスクを作製する必要がある。また、エッチング工程やめっき工程とは別に中間材料としてのレジストの現像工程が必要となる。これに対して、印刷技術を用いたプリンタブルエレクトロニクスによる配線描画が提案されている。
【0006】
特に、インクジェット方式を用いて導電性微粒子材料を直接パターニングする方法は、マスクレス、かつ、オンデマンドで配線基板の製造が可能であり、レジスト現像や配線エッチング工程も削減できるなどフォトリソ法に代わる技術として期待されている。
【0007】
インクジェット方式を用いた直接描画による微細配線パターンの形成では、パターンの厚みを十分に厚くすることが難しく、基材表面(パターン形成面)の平坦化が必要となる。他方、従来はアンカー効果により基材表面と導電性パターンとの密着が強化されており、基材表面を平坦化してしまうと基材表面と導電性パターンとの密着性が問題となる。
【0008】
特許文献1は、可撓性樹脂フィルム基材表面に、導電性物質吸着性樹脂前駆体層を形成し、導電性物質吸着性樹脂前駆体層にエネルギーを付与して導電性物質吸着層を形成し、導電性物質吸着層に導電性材料を吸着させて導電性層を形成し、導電性吸着樹脂層に吸着させた金属をベースとしてめっき処理を施して導電層(金属層)を形成している。
【0009】
特許文献1に開示された多層基板の製造方法では、めっき金属による導電(金属)層と基材表面との間に導電性物質吸着前駆体層を形成することで、基材表面と導電層という異種物質の密着性を確保している。
【0010】
導電性物質吸着前駆体層となる塗布液に金属イオン若しくは金属微粒子を吸着しうる官能基を持つ化合物を含有し、該塗布液の粘度を調整してインクジェット方式により該塗布液を塗布している。
【0011】
特許文献2は、基材表面上にラジカル重合可能な不飽和化合物を含有する液体をインクジェット方式によりパターン状に配置させ、加熱又は露光によりラジカル重合を発生させて液体の配置領域のみにグラフトポリマーを生成し、該グラフトポリマーに導電性物質を付着させて導電性パターンを得る導電性パターン(グラフトポリマーパターン)形成方法を開示している。
【0012】
特許文献2に開示された導電性パターン形成方法では、基材表面と導電性パターンとの間にグラフトポリマーを介在させて基材表面と導電性パターンとの密着性を強化している。また、特許文献2はグラフトポリマー生成工程において加熱処理が施される旨を開示している。
【0013】
特許文献3は、基板上に光ラジカル発生剤を含有する組成物をパターン状に付与し、加熱又は露光により光ラジカル発生剤を基材に固定化し、該光ラジカル発生剤が固定化された基材に重合性の二重結合を有する化合物を接触させ、基材表面上にエネルギーを付与して、光ラジカル発生剤が存在する領域にグラフトポリマーを形成し、グラフトポリマーが形成された領域に無電解めっき触媒又は無電解めっき触媒の前駆体を付与し、無電解めっき処理を施して、グラフトポリマーが形成された領域に導電性パターンを形成する導電性パターン(グラフとポリマーパターン)形成方法を開示している。
【0014】
特許文献3に開示された導電性パターン形成方法は、基板と導電性パターンとの間にグラフトポリマーを介在させて基板と導電性パターンとの密着性を強化している。
【0015】
また、特許文献3は重合性化合物を含有する組成物に使用される溶剤として、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、ニトリル系溶剤、エステル系溶剤を開示し、シアノ基含有重合性ポリマーを用いる場合は、アミド系、ケトン系、ニトリル系溶剤が好ましく、沸点が50℃から150℃の溶剤が好ましい旨を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2008−258211号公報
【特許文献2】特表2009−503806号公報
【特許文献3】特開2008−257892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
インクジェット方式を用いた機能性液(液体組成物)によるパターン形成は、機能性液の特性や環境条件などを考慮しなければならない。特に、微細パターンの形成にインクジェット方式の直接描画が適用される場合は、バルジの発生による線幅が不均一になること、ジャギーの発生によるパターンのエッジ形状の異常やパターン切れを回避しなければならない。
【0018】
しかしながら、上記した特許文献1から3はインクジェット方式を用いてめっきの下地となり、かつ、基板との密着性を確保しうる層(パターン)を形成する技術を開示しているものの、安定した吐出特性を得るためや、好ましいパターンが形成されるための具体的なインクジェット方式の適用条件について開示していない。
【0019】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、バルジやジャギーなどの発生が回避され好ましい微細パターンを形成しうる機能性液体パターン形成方法、導電性パターン形成方法、機能性液体パターン形成システム、導電性パターン形成システム、機能性液体パターン構造体製造方法、及び導電性パターン構造体製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明に係る機能性液体パターン形成方法は、めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上245℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により前記基材上に吐出させる機能性液体吐出工程と、前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、めっき用触媒担持高分子化合物を含有する機能性液体によるパターンを形成する際に、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、D1<W<D2の関係を満たすことで、バルジやジャギーなどの発生を防止しうる。
【0022】
また、機能性液体に低沸点溶媒を含むことで、基材上における機能性液体の液滴(ドット)の溶媒の蒸発が促進され、パターンの広がりが抑制される。
【0023】
さらに、機能性液体を吐出させている間、基材を加熱することで機能性液体の濡れ広がりが抑制される。
【0024】
さらにまた、機能性液体に高沸点溶媒を含むことでインクジェット方式による好ましい液体吐出が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る導電性パターン形成方法の流れを示すフローチャート
【図2】図1に示すめっき用触媒担持ポリマー吐出工程の詳細を示すフローチャート
【図3】図2に示すめっき用触媒担持ポリマー吐出工程に適用されるパターン形成システムを模式的に図示した説明図
【図4】図3に示すパターン形成システムの制御系の概略構成を示すブロック図
【図5】めっき用触媒担持ポリマー液の吐出パラメータの説明図
【図6】めっき用触媒担持ポリマー溶液の溶媒の沸点とパターン幅との関係を示すグラフ
【図7】基板の温度とパターン幅との関係を示すグラフ
【図8】ドット間ピッチとパターン幅との関係を示すグラフ
【図9】ドットピッチごとのパターンの形状を模式的に図示した説明図
【図10】積層パターンを形成したときのパターンの平面形状と立体形状を示す説明図
【図11】混合溶媒の揮発性がドット(パターン)の表面形状に及ぼす影響を示す説明図
【図12】四層パターンを形成したときのドット間ピッチとパターンの平面形状との関係を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0027】
〔導電性パターン形成方法の説明〕
図1は、本発明の実施形態に係る導電性パターン形成方法の流れを示すフローチャートである。同図に示すように、本例に示す導電性パターン形成方法は、基材(例えば、1.ミリメートル厚のガラスエポキシ基板に対して、30マイクロメートル厚の平坦化膜(エポキシ絶縁膜)がラミネートされたもの)に密着補助層を形成する密着補助層形成工程と(ステップS10)、密着補助層が形成された基材に導電性パターンに対応するめっき用触媒担持ポリマーのパターンをインクジェット方式により形成するめっき用触媒担持ポリマー吐出工程と(ステップS12)、めっき用触媒担持ポリマーに硬化エネルギーを照射する硬化エネルギー付与工程と(ステップS14)、硬化させためっき用触媒担持ポリマーにめっき用触媒を付与するめっき用触媒付与工程と(ステップS16)、めっき触媒が付与されためっき用触媒担持ポリマーにめっき処理を施すめっき工程と(ステップS18)、を含んで構成されている。
【0028】
密着補助層形成工程では(ステップS10)、基材とめっき用触媒担持ポリマーとの密着性を確保するために基材上に密着補助層液が付与される。例えば、スピンコートにより3マイクロメートル厚のエポキシプライマー剤が塗布される。
【0029】
密着補助層形成工程は、インクジェット方式を適用して、導電性パターンに対応するパターンを形成してもよい。
【0030】
密着補助層を形成する密着補助層液として、少なくともアニオン系分散剤及びノニオン系分散剤から選択された1種類以上の分散剤と、樹脂粒子と、水系分散剤と、を含有するNBR(ニトリルゴム)ラテックス系の材料を適用してもよい。
【0031】
インクジェット方式が適用される態様では、所定の溶媒を用いてインクジェット方式による吐出が可能な粘度(10ミリパスカル秒(センチポアズ)程度)に、希釈される。
【0032】
密着補助層液が付与されると、加熱(例えば、100℃以上の温度で2時間以下、好ましくは1時間以下)による硬化処理、酸性化合物又は多価金属塩を溶解した処理液を付与する疎水化処理、及び所定の洗浄液を用いた洗浄工程が施され、密着補助層が形成される。
【0033】
めっき用触媒担持ポリマー吐出工程では(ステップS12)、基材上に形成された密着補助層に対して、インクジェット方式によりめっき用触媒担持ポリマー液(機能性液体)が付与される。
【0034】
めっき用触媒担持ポリマー液は、少なくとも沸点が異なる二種類以上の溶媒が含まれる。沸点が異なる二種類以上の溶媒の例として、高沸点溶媒及び低沸点溶媒を含む態様がありうる。なお、高沸点溶媒及び低沸点溶媒の他に、中沸点溶媒を含む態様も可能である。
【0035】
ここで、「高沸点溶媒」とは、190℃以上245℃未満の沸点を有する溶媒であり、例えば、ジエチレングリコールモノエチレンエーテル(沸点196℃)、プロピレンカーボネート(沸点240℃)などが挙げられる。
【0036】
本例に示す導電性パターン形成方法(機能性液体によるパターン形成方法)では、ジエチレングリコールモノエチレンエーテル及びプロピレンカーボネートを含有するめっき用触媒担持ポリマー液を用いた実験により、めっき用触媒担持ポリマー液に高沸点溶媒を含有する効果を検証している(詳細後述)。
【0037】
また、「低沸点溶媒」とは、75℃以上105℃未満の沸点を有する溶媒であり、水(沸点100℃)、アセトリニトル(沸点82℃)などが挙げられる。「中沸点溶媒」とは、105℃以上190℃未満の沸点を有する溶媒であり、例えば、シクロヘキサン(沸点160℃)などが挙げられる。
【0038】
本例に示す導電性パターン形成方法では、水及びアセトリニトルを含有するめっき用触媒担持ポリマー液を用いた実験により、めっき用触媒担持ポリマー液に低沸点溶媒を含有する効果を検証している(詳細後述)。
【0039】
高沸点溶媒を含むことで、インクジェット方式によるめっき用触媒担持ポリマー液の良好な吐出性が維持される。すなわち、吐出の際のインク溶媒の蒸発によるインクジェットヘッドに具備されるノズル内における液の乾燥が防止され、ノズル近傍のインクの粘度が大きくなることで起こる正常に吐出がされない吐出異常の発生や、ノズルが完全に詰まってしまう不吐出の発生が回避される。
【0040】
換言すると、高沸点溶媒を含むことでノズルのオープンタイムが長くなるといえる。「ノズルのオープンタイム」とは、インクジェットヘッドのノズル乾燥の指標であり、ノズルにキャップをしない状態で放置して、ジェッティング(予備吐出)のみで回復が可能な時間である。
【0041】
なお、高沸点溶媒の沸点が上記温度範囲の上限値を超える場合は、めっき用触媒担持ポリマー液を吐出させる際のノズル近傍での吐出異常(不吐出)は防止されるものの、描画後にめっき用触媒担持ポリマー液の乾燥が遅くなりすぎて、描画されたパターンの幅が広がることや、描画されたパターンの幅が揺らぐことがありうる。
【0042】
また、低沸点溶媒を含むことで、基材に着弾した後に低沸点溶媒がすばやく蒸発して液滴の体積が減少し、液滴の微細化が可能となる。一方、低沸点溶媒の沸点が上記範囲の下限値未満の場合は、めっき用触媒担持ポリマー液を吐出させる際にノズル近傍においてめっき用触媒担持ポリマー液の増粘を引き起こし、吐出異常、不吐出の発生原因となりうる。
【0043】
中沸点溶媒は、コンテンツとなる高分子物質を溶解させる能力が高い性質を有することが好ましい。上記したシクロヘキサンは、光により反応して架橋硬化する特性を持つ高分子物質を溶解させる能力が高いので、中沸点溶媒として好ましい物質である。
【0044】
なお、高沸点溶媒、中沸点溶媒及び低沸点溶媒は、二種類以上の溶媒を混合してもよい。混合溶媒の沸点の算出方法は後述する。
【0045】
めっき用触媒担持ポリマーは、無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基(相互作用性基)と重合性官能基とを含有するポリマーである。該ポリマー中に相互作用性基が含まれることによって、後述するめっき触媒に対する優れた吸着性が達成され、結果としてめっき処理の際に十分な厚さのめっき膜(金属膜)を得ることができる。
【0046】
また、ポリマー中に重合性官能基が含まれることにより、液膜中で架橋反応が進行し強度に優れたポリマー層を得ることができる。なお、めっき用触媒担持ポリマー吐出工程の詳細は後述する。
【0047】
めっき用触媒担持ポリマー液によるパターンが形成されると、加熱処理(乾燥処理)又は露光等の硬化エネルギー付与処理が施される(硬化エネルギー付与工程:ステップS14)。
【0048】
加熱処理(乾燥処理)の一例として、ヒータによる加熱、乾燥風の噴射が挙げられる。また、加熱処理条件の一例として、100℃以上300℃以下の温度で、5分から120分といった条件が挙げられる。
【0049】
露光処理の一例として、UVランプ、可視光線などによる光照射が挙げられる。光源の一例として、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等が挙げられる。
【0050】
なお、放射線を適用することも可能である。例えば、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などを適用してもよいし、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)などを使用してもよい。
【0051】
赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や、赤外線ランプ露光を適用した場合の露光時間は、ポリマーの反応性及び光源の種類により異なるが、一般的に10秒から5時間の間である。
【0052】
露光エネルギーは、使用される材料によって適宜選択され、硬化エネルギーは30ミリワット毎平方センチメートル以上1500ミリワット毎平方センチメートル以下とする態様が好ましい。
【0053】
めっき用触媒担持ポリマー液による積層パターンを形成する場合には、層ごとに硬化処理を施す態様が好ましい。
【0054】
めっき用触媒付与工程では、硬化させためっき用触媒担持ポリマーにめっき用触媒又はめっき用触媒前駆体が付与される。めっき用触媒の例を挙げると、金、銀、パラジウムなどの金属触媒が挙げられる。また、めっき用触媒前駆体として金属イオンが挙げられる。
【0055】
めっき用触媒付与工程は、金、銀、パラジウムなどのめっき用触媒となる金属の溶液中にめっき用触媒担持ポリマーのパターンが形成された基材を浸漬させ、めっき用触媒担持ポリマーのパターンの中に金、銀、パラジウムなどのめっき用触媒となる金属が取り込まれる。
【0056】
めっき処理工程では(ステップS18)、めっき用触媒又はめっき用触媒前駆体が付与されためっき用触媒担持ポリマーのパターンに対して無電解めっき処理を施すことで、めっき用触媒担持ポリマーのパターンの中に取り込まれためっき触媒を核としてめっき金属(例えば、銅)が成長し、導電性パターンとなるめっき膜が形成される。
【0057】
導電性パターンとなるめっき膜は、10×106ジーメンス毎メートル以上100×106ジーメンス毎メートル以下の高い電気伝導率を有する優れた導電性を有し、かつ、めっき用触媒担持ポリマーとの間で優れた密着性を有する。
【0058】
本工程において行われるめっきの種類は、めっき用触媒担持ポリマーの中に発現するハイブリッド構造の形成性及び密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき層を得るために、無電解めっきの後に、さらに、電気めっきを行うことがより好ましい態様である。
【0059】
なお、めっき用触媒又はめっき用触媒前駆体が付与されためっき用触媒担持ポリマーがシード層として機能する場合は、めっき用触媒担持ポリマーに対して電気めっきを行うことも可能である。
【0060】
すなわち、めっき用触媒担持ポリマーとの間に相互作用を形成しためっき用触媒又はめっき用触媒前駆体の機能によって、めっきの種類を適宜選択することができる。
【0061】
〔めっき用触媒担持ポリマー吐出工程の説明〕
図2は、めっき用触媒担持ポリマー吐出工程(図1のステップS12)の流れを示すフローチャートである。同図に示すように、めっき用触媒担持ポリマー吐出工程が開始されると(ステップS20)、吐出条件設定工程(ステップS22)において、導電性パターンの幅に対応する吐出条件が設定され、加熱工程(ステップS24)により導電性パターンが形成される基材の加熱が開始される。
【0062】
吐出条件設定工程により設定される吐出条件には、基材上の形成されるドットの直径(ドットサイズ)D1、ドット間ピッチW、吐出時の液滴の直径(吐出液滴径)D2が含まれる。
【0063】
本例に示すめっき用触媒担持ポリマーのパターン形成では、次式(11)の関係を満たすようにドットサイズD1、ドット間ピッチW、吐出液滴径D2が決められる。
【0064】
D1<W<D2 …(11)
なお、めっき用触媒担持ポリマーの積層パターンを形成する場合には、一層目(最下層)のパターンを形成するための吐出条件と、二層目以降のパターンを形成するための吐出条件がそれぞれ設定される。
【0065】
一層目のパターンを形成するための吐出条件と二層目以降のパターンを形成するための吐出条件を同一条件としてもよいし、異なる条件としてもよい(詳細後述)。
【0066】
加熱工程は、めっき用触媒担持ポリマー液が吐出される間の基材の表面温度を一定範囲に維持するものである。基材の表面温度は45℃以上、好ましくは60℃以上に維持される。基材が加熱され基材の表面温度が上記した温度範囲に維持されると、めっき用触媒担持ポリマー液により形成されるパターンの高精細化に寄与する(詳細後述)。
【0067】
次に、吐出条件設定工程(ステップS22)により設定された吐出条件に基づいて、めっき用触媒担持用ポリマー液の吐出が開始されると(ステップS26)、めっき用触媒担持用ポリマー液を所定の吐出周期で連続的に吐出させ、めっき用触媒担持用ポリマー液の連続パターンが形成される。
【0068】
めっき用触媒担持用ポリマー液の連続パターンが形成されると、吐出が終了され(ステップS28)、基材の加熱が停止され(ステップS30)、めっき用触媒担持ポリマー吐出工程は終了される(ステップS32)。
【0069】
図3は、図2に示すめっき用触媒担持ポリマー吐出工程に適用されるパターン形成システムを模式的に図示した説明図である。同図に示すパターン形成システム10は、基材12の裏側面を支持するプラテン14と、基材12の表面(密着補助層20が形成される面)にめっき用触媒担持ポリマー液16を吐出させるインクジェットヘッド18と、を備えている。
【0070】
基材12は、エポキシ基板12Aに平坦化膜12Bが形成されている。図3に示す基材12は、スピンコートによりエポキシプライマー剤(密着補助層)20が塗布されている。
【0071】
プラテン14はヒータ22が内蔵され、プラテン14の表面(基材12の支持面)の温度を検出する温度センサ24が備えられており、温度センサ24の検出結果に基づいてヒータ22による加熱量を制御することにより基材12の表面温度が一定範囲に保たれる。
【0072】
なお、プラテン14にヒータ22を内蔵する態様に代わり、基材12に対して非接触で熱エネルギーを付与する手段を備える態様も可能である。
【0073】
インクジェットヘッド18は、不図示の移動機構により基材12の表面との間に所定のクリアランスが維持されて移動可能に構成されている。例えば、基材12の表面と平行な面において、インクジェットヘッド18を二次元的に(xy方向へ)移動させる態様が可能である。
【0074】
なお、インクジェットヘッド18を一方向(図示の矢印線の方向)に移動させながら、プラテン14をインクジェットヘッド18の移動方向と直交する方向に間欠的に移動させる態様も可能である。
【0075】
さらに、基材12の全幅に対応する長さにわたって複数のノズルが並べられたノズル列を少なくとも一列備えたフルライン型ヘッドを備え、ノズルの配列方向と直交する方向へ基材12とインクジェットヘッド18とを相対的に移動させる態様も可能である。
【0076】
インクジェットヘッド18の詳細な図示は省略するが、めっき用触媒担持ポリマー液を吐出させるノズルと、該ノズルと連通する液室(圧力室)と、液室内の液体を加圧する加圧素子と、を備える態様がある。
【0077】
液室内の液体を加圧する加圧素子として、液室を変形させる圧電素子や、液室内の液体を加熱する加熱素子を適用可能である。
【0078】
また、基材12に形成されためっき用触媒担持ポリマー液のパターン(めっき用触媒担持ポリマー液のドットに符号26を付して図示)に硬化エネルギーを付与する硬化エネルギー付与部(図3中不図示、図4に符号46を付して図示)が具備されている。めっき用触媒担持ポリマーのパターンが形成された基材は、硬化エネルギー付与部の硬化エネルギー付与領域へ移動させ、硬化エネルギーが付与される。
【0079】
図4は、図3に示すパターン形成システム10の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、パターン形成システム10は、システム制御部30と、入出力インターフェイス(入出力I/F)32と、液情報取得部34と、メモリ35と、ヒータ制御部36と、吐出制御部38と、搬送制御部40と、硬化エネルギー付与制御部42と、を含んで構成される。
【0080】
システム制御部30は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ(不図示)との間の通信制御、メモリ35の読み書き制御等を行うとともに、各部を制御する制御信号を生成して、統括的に制御する。
【0081】
入出力インターフェイス32は、外部からのデータ(めっき用触媒担持ポリマー液のパターンデータ)入力及び外部への情報出力のインターフェイスであり、シリアルインターフェイス、パラレルインターフェイスが適宜適用される。
【0082】
液情報取得部34は、めっき用触媒担持ポリマー液の情報を取得し、該情報をシステム制御部30へ送出する。液情報取得部34は、バーコードやICタグ等の情報記憶体に記憶されている情報を読み取る形態でもよいし、オペレータにより該情報を入力する形態でもよい。
【0083】
メモリ35は、入出力インターフェイスを介して入力されためっき用触媒担持ポリマー液のパターンデータの一時記憶領域、データ処理を行う際の演算処理領域として機能するとともに、システムパラメータの記憶領域として機能する。
【0084】
メモリ35は、半導体記憶素子、磁気記憶素子などの各種記憶素子を適用することができる。また、複数の記憶素子を併用する態様も可能である。
【0085】
ヒータ制御部36は、温度センサ24の検出結果に基づいてシステム制御部30から送出される指令信号に基づいて、図3に示すプラテン14に内蔵されるヒータ22のオンオフ、加熱量を制御する。
【0086】
吐出制御部38は、入出力インターフェイス32を介した入力されためっき用触媒担持ポリマー液のパターンデータを予め設定された吐出条件に基づいてドットデータに変換し、該ドットデータに基づくインクジェットヘッド18の駆動電圧を生成する。
【0087】
吐出制御部38は、吐出条件を設定する吐出条件設定部と、入力されためっき用触媒担持ポリマー液のパターンデータをドットデータに変換する演算処理部と、該ドットデータに基づく駆動電圧(駆動波形)を生成する駆動電圧生成部と、を備えている。
【0088】
めっき用触媒担持ポリマー液の積層パターンを形成する場合には、一層目(最下層)のパターンを形成する吐出条件と、二層目以降のパターンを形成する吐出条件とを、同一条件としてもよいし、異なる条件としてもよい。
【0089】
駆動電圧生成部は、駆動波形生成部と、該駆動波形を電圧増幅、電流増幅する増幅処理部と、増幅処理後の駆動波形を駆動電圧として出力する出力部と、を備えている。
【0090】
搬送制御部40は、めっき用触媒担持ポリマー液のパターンデータ(ドットデータ)に基づいて、インクジェットヘッド18とプラテン14(基材12)とを相対移動させる搬送駆動部44の動作を制御する。
【0091】
搬送駆動部44は、インクジェットヘッド18をガイドに沿って移動させる移動機構と、該移動機構の駆動源となるモータと、含んで構成される。インクジェットヘッド18の位置やプラテン14(基材12)の位置を検出する位置検出素子を備える態様が好ましい。
【0092】
位置検出素子として、モータの回転軸に取り付けられるロータリーエンコーダや、インクジェットヘッド18の移動方向に延在して設けられるリニアエンコーダなどが挙げられる。
【0093】
硬化エネルギー付与制御部42は、システム制御部30の指令信号に基づいて硬化エネルギー付与部46の動作を制御する。
【0094】
なお詳細な図示は省略するが、図1に示すめっき用触媒付与工程(ステップS16)及びめっき工程(ステップS18)を実現するための手段を備えた導電性パターン形成システムを構成することも可能である。
【0095】
〔吐出条件の説明〕
(吐出パラメータ)
次に、本例に示すパターン形成方法(システム)の吐出条件について説明する。図5は、めっき用触媒担持ポリマー液の吐出パラメータを説明する図である。なお、同図中、図3と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0096】
インクジェットヘッド18から吐出された吐出液滴16の直径(吐出液滴16の形状を球形状と仮定し、吐出液滴16の体積から求めた直径)D1、基材上に形成されたドット26の直径(吐出液滴16が単独で基材に着弾し形状が安定した状態のドットの直径)D2、基材上に形成されたドット26のドット間ピッチWは、図示の通りとなっている。
【0097】
(システム条件)
ヘッドシステム:DMP−2831(FUJIFILM Dimatix社製)
インクジェットヘッド:DMC−11610
吐出周波数:4キロヘルツ
吐出速度:6ミリメートル毎秒
(めっき用触媒担持ポリマー液の調製)
分子量20000のポリマー(高分子量ポリマー):5%
アセトニトリル(沸点が82℃の低沸点溶媒):45%
シクロヘキサノン(沸点が156℃の中沸点溶媒):30.95%
プロピレンカーボネート(沸点が240℃の高沸点溶媒):19%
界面活性剤(表面張力調整剤):0.05%
図同に示す吐出液滴16の直径D1、ドット26の直径D2、ドット間ピッチWの関係が上記式(11)の関係を満たすことで、好ましい微細パターンが形成される。
【0098】
ここで、ポリマーの分子量が20000の場合は良好な吐出が実現されるが、ポリマーの分子量が大きくなると吐出特性が悪くなり、分子量が50000を超えると(例えば、分子量60000)、インクジェット方式による吐出が困難になることが実験により明らかになっている。
【0099】
したがって、インクジェット方式による吐出性能の観点から、ポリマーの分子量は50000以下が好ましく、20000以下がより好ましい。
【0100】
また、高分子量のポリマーの質量比率を小さくすると、吐出性能が良化し、ノズルの乾燥を回避され、オープンタイムが長くなる。高分子量ポリマーの質量比率を10重量パーセント以上とすると正常吐出がされない場合がありうるので、高分子量ポリマーの質量比率は10質量パーセント未満とするとよい。
【0101】
(溶媒の調製)
図6は、沸点が異なる複数種類の溶媒が混合された混合溶媒における質量比から計算された沸点(揮発性)と、めっき用触媒担持ポリマー液のパターン幅との関係を示すグラフである。
【0102】
上記しためっき用触媒担持ポリマー液の調製を変更し、高沸点溶媒、中沸点溶媒、低沸点溶媒の質量比を変更し、この変更の影響を考察する。なお、基材の温度は室温(25℃)である。
【0103】
同図における混合溶媒の沸点がT1℃の場合は、上記した質量比の高沸点溶媒(19質量%)、中沸点溶媒(30.95質量%)、低沸点溶媒(45質量%)を含有しためっき用触媒担持ポリマー液が用いられている。
【0104】
一方、沸点がT2℃の場合(高沸点溶媒及び低沸点溶媒に代わり中沸点溶媒が混合された中沸点溶媒のみを含む場合)は、混合溶媒の沸点がT1℃の場合と比較してパターン幅が増加していることが把握される。
【0105】
また、混合溶媒の沸点がT3℃の場合(低沸点溶媒に代わり中沸点溶媒が混合された場合)は、溶媒の沸点がT2℃の場合と比較してさらにパターン幅が増加していることが把握される。
【0106】
すなわち、揮発性(質量比より計算した混合溶媒の沸点)とパターン幅とは相関しており、低沸点溶媒の混合より(混合溶媒の沸点がより低い場合に)、パターン幅が大きく減少していることが把握される。
【0107】
これは、基材に着弾したドットはエッジ部から溶媒の蒸発が起こるため、低沸点溶媒が添加されることで溶媒の蒸発が促進され、ドットの広がりが抑えられたためと考えられる。
【0108】
なお、沸点が異なる複数種類の溶媒が混合された混合溶媒の沸点(質量比から計算した混合溶媒沸点)の算出の詳細は後述する。
【0109】
(基材の温度)
次に、基材の温度について説明する。図7は、基材の温度とパターン幅との関係を示すグラフである。同図に示すように、基材の温度を室温(25℃)から徐々に上げると、パターン幅が減少することが把握される。
【0110】
すなわち、基材の温度を45℃温度以上とすることで、基材とめっき用触媒担持ポリマー液との接触線の固着が促進され、パターン幅の微細化が可能となる。また、基材の表面温度を60以上とすることで、よりパターン幅の微細化が促進される。
【0111】
(ドット間ピッチの説明)
次に、ドット間ピッチについて説明する。図8は、ドット間ピッチとパターン幅との関係を示すグラフであり、図9(a)から(g)は、ドット間ピッチとパターンの平面形状(顕微鏡写真を模式的に図示)との関係を示す説明図である。
【0112】
基材の温度を60℃とし、ドット間ピッチWは吐出液滴の直径D1の2分の1からドットの直径D2を超えるまで定量的に変えている。なお、吐出液滴の直径(上記式(11)のD1)の例として20マイクロメートル、基材に形成されるドットの直径(上記式(11)のD2)の例として60マイクロメートルとすることができる。
【0113】
図8に示すように、ドット間ピッチを広げることでパターン幅が減少することが把握される。一方、図9(f)に示すドット間ピッチW≒ドットの直径D2の場合、図9(g)に示すドット間ピッチW>ドットの直径D2の場合は、パターンにジャギー(パターンの一部が切れた状態になる現象)が発生している。
【0114】
なお、図9(e)に示すドット間ピッチWがドットの直径D2よりもやや小さい場合は、パターンのエッジに厚みが薄くなる部分が存在するものの、パターンにジャギーは発生していない。
【0115】
他方、ドット間ピッチWを吐出液滴の直径D1以下まで狭めると、図9(a)に示すようにパターン幅が太く、かつ、不均一となり、また、図9(b)に示すようにパターン幅が太くなり、好ましい微細パターンとはならない。
【0116】
ドット間ピッチWを小さくすると(パターンのドット密度を高くすると)、パターンの単位長さあたりの液量(液体積)が増えるためにパターンの幅が太くなる。したがって、パターン幅をより微細化させるためにはドット間ピッチWを大きくして単位長さあたりの液量を少なくするとよい。
【0117】
一方、ドット間ピッチWを大きくし過ぎると、隣接するドット同士が離れてしまい、パターン切れが発生する可能性がある。
【0118】
ドット間ピッチWを吐出液滴の直径D1を超える値(W>D1)とすることでパターンの単位長さあたりの液滴量を抑えつつ、ドット間ピッチWが吐出液滴の直径D1を超える値となっても、ドット間ピッチWをドットの直径D2未満とすることで隣接するドット同士を確実につなげることが可能となる。
【0119】
例えば、ノズルの直径が21マイクロメートルの場合に吐出液滴の直径は25マイクロメート程度になると推測されるので、ドット間ピッチWは25マイクロメートルを超える値とされる。
【0120】
一方、パターン幅が不均一になる原因はバルジが発生しているためと考えられる。より高密度に描画を行うとバルジの発生が顕著に現れる。また、吐出周波数が1キロヘルツ以上の場合は、バルジが不均一な間隔で発生する。
【0121】
吐出方向、吐出量の微小な揺らぎや、基板の不規則な微小凹凸の存在により、その不均一な位置を基点としてパターン幅が局所的に大きくなることで、バルジが発生すると考えられる。
【0122】
したがって、ドット間ピッチWをドットの直径D2未満(W<D2)とすることで、バルジの発生を回避しうると考えられる。
【0123】
すなわち、ドット間ピッチWが、吐出液滴の直径(D1)を超え、かつ、ドットの直径(D2)未満となって隣接するドットが重なるように、ドット間ピッチW、吐出液滴の直径D1、ドットの直径D2の関係が上記式(11)の関係を満たし、適切なドット間ピッチWが選択されることで、図9(c)から(e)に示すように、良好な平面形状を有する微細パターンを形成しうる。
【0124】
特に、ドット間ピッチWをドットの直径D2の2分の1以下とすることで(W≦D2/2)、より好ましい微細積層パターンを形成しうる。
【0125】
上記の如く構成されためっき用触媒担持ポリマーのパターン形成方法(システム)によれば、めっき用触媒担持ポリマー液が高沸点溶媒を含むことでインジェット方式による良好な吐出性能が確保され、かつ、めっき用触媒担持ポリマー液が低沸点溶媒を含むことで該液の濡れ広がりが抑制され、めっき用触媒担持ポリマーのパターンの微細化が可能となる。
【0126】
また、基材を加熱して表面温度が60℃に維持されることで、めっき用触媒担持ポリマーのパターンの接触線の固着が促進され、めっき用触媒担持ポリマーのパターンの微細化が可能となる。
【0127】
さらに、吐出液滴の直径D1、ドットの直径D2、ドット間ピッチWのとの関係が、D1<W<D2を満たすことで、良好なめっき用触媒担持ポリマーの微細パターンを形成しうる。
【0128】
〔積層化の説明〕
(単層の平坦化)
次に、めっき用触媒担持ポリマー液パターンの積層化について説明する。図10(a)は、単層(一層)のめっき用触媒担持ポリマー液のパターンの平面形状(上図)及び立体形状(下図)を模式的に図示した説明図である。
【0129】
めっき用触媒担持ポリマー液は、低沸点溶媒が45質量%、中沸点溶媒が30.95質量%、高沸点溶媒が19質量%混合され、基材を加熱して表面温度が60℃に維持されている。
【0130】
図10(a)から(c)の上段に示す平面形状は、顕微鏡写真の画像を模式的に図示したものであり、下段に示す立体形状は形状測定マイクロスコープによる画像を模式的に図示したものである。
【0131】
図10(a)は、単層のめっき用触媒担持ポリマー液のパターンが図示されている。パターンの微細化は実現されているものの、膜厚(d1)が不足している。
【0132】
図10(b)は、図10(a)に図示した単層のめっき用触媒担持ポリマー液のパターンを二層積層させためっき用触媒担持ポリマー液のパターンが図示されている。同図に示すように、パターンの微細な幅はほぼ維持されつつ、膜厚が約二倍(d1×2)となっている。
【0133】
図10(c)は、図10(a)に図示したパターンを四層積層させためっき用触媒担持ポリマー液のパターンが図示されている。同図に示すように、パターンの幅がほぼ維持されつつ、膜厚は単層の膜厚に積層数を乗じた値とはならないものの、単層の膜厚の約三倍(d1×3)となっている。
【0134】
すなわち、めっき用触媒担持ポリマー液のパターンの積層化は可能であり、単層パターンの形成を繰り返して積層させることで、所望の膜厚を有する多層(積層)パターンを形成しうる。
【0135】
めっき用触媒担持ポリマー液のパターンを積層するには、ドットの乾燥(溶媒の蒸発)が最適化され、各層又は少なくとも最下層となる一層目がある程度平坦化される必要がある。
【0136】
図11(a)から(c)は、混合溶媒の揮発性がドット(パターン)の表面形状に及ぼす影響を示す説明図である。図11(a)は、上記した低沸点溶媒が45質量%、中沸点溶媒が30.95質量%、高沸点溶媒が19質量%混合される混合溶媒(図6に示す沸点T1℃の混合溶媒)が用いられためっき用触媒担持ポリマー液が使用されたドットの立体形状を表している。同図に示すドット26Aは、極端な凹凸が生じていない。
【0137】
図11(b)は、高沸点溶媒及び低沸点溶媒に代わり中沸点溶媒を添加した溶媒(図6に示す沸点がT2℃の中沸点溶媒のみ)が用いられためっき用触媒担持ポリマー液ドットの立体形状を表している。同図に示すドット26Bは、端部に極端な凹凸が生じており(丸により囲まれた部分)、いわゆるコーヒーしみ現象が生じている。
【0138】
図11(c)は、高沸点溶媒が19質量%、中沸点溶媒が75.95質量%混合される混合溶媒(図6に示す沸点がT3℃の混合溶媒)が用いられためっき用触媒担持ポリマー液が使用されたドットの立体形状を表している。同図に示すドット26Cは、図11(a)に示すドット26Aと同様に極端な凹凸が生じていない。
【0139】
基材上のドットにおける溶媒の蒸発は、基材とドットと気体との境界からが起こる。溶媒の蒸発によりドットの中心からドットの端部へ対流が発生し、この対流によりポリマー成分が運ばれることでドットの端部においてポリマー成分の局在が起こり、乾燥後にドットの端部が凸形状となる。
【0140】
一方、めっき用触媒担持ポリマー液に高沸点溶媒を含有することで、基材とドットと気体(大気)との境界からの蒸発の速度が小さくなり、ドットの中心からドットの端部への対流も小さくなり、乾燥後にドットの平坦化がなされる。
【0141】
(ドット間ピッチ)
図12は、二層目以降を形成(積層)する際のドット間ピッチとパターンの平面形状との関係を示す説明図である。
【0142】
図12(a)は、ドット間ピッチWを吐出液滴の直径D1と略同一とした場合であり、二層目以降がパターンの幅からはみ出すことがある。
【0143】
図12(b)から(d)は、ドット間ピッチWを吐出液滴の直径D1を超えドットの直径D2未満とした場合であり、良好な微細積層パターンが形成される。特に、図12(b)に示すように、ドット間ピッチWがドットの直径D2の2分の1となる場合には、より好ましい微細積層パターンを形成しうる。
【0144】
なお、図12(d)に示すように、良好な微細パターンを形成しうる場合でも、ドット間ピッチWがより広げられると、二層目以降のパターンのエッジに厚みが薄い部分が生じてしまうことがありうる。
【0145】
図12(e)は、ドット間ピッチをドットの直径と略同一とした場合であり、図9(f),(g)と同様にジャギーが発生している。
【0146】
すなわち、めっき用触媒担持ポリマー液の積層パターンを形成する場合には、吐出液滴の直径D1、ドットの直径D2、ドット間ピッチWの関係が、上式(11)を満たすことで、好ましい積層パターンが形成される。
【0147】
また、ドット間ピッチWをドットの直径D2の2分の1以下とすることで(W≦D2/2)、より好ましい微細積層パターンを形成しうる。
【0148】
また、基材を加熱せずに積層パターンを形成すると、下層を形成する液と上層を形成する液の性質が同じであることにより液が濡れ広がりやすくなり積層パターンの形成が困難になるので、基材を加熱して表面温度を60℃(室温(25℃)の二倍を超える温度)に維持することで液の濡れ広がりが抑制され、微細なパターンの幅を維持しつつ積層が可能となる。
【0149】
さらに、めっき用触媒担持ポリマー液に低沸点溶媒を含有することで、濡れ広がりを抑制する効果を高めることが可能となる。
【0150】
以上まとめると、めっき用触媒担持ポリマーを用いて積層パターンを形成する場合には、めっき用触媒担持ポリマー液に高沸点溶媒を含有することで、ドットの乾燥工程が最適化され、ドット(パターン)の表面形状が良好になる(より平坦化される)。
【0151】
また、基材を加熱して表面温度を60℃とすることで、めっき用触媒担持ポリマー液の濡れ広がりが防止され、パターンの微細化が可能となる。さらに、めっき用触媒担持ポリマー液に低沸点溶媒を含有することで、めっき用触媒担持ポリマー液の濡れ広がりを防止する効果を高めることが可能となる。
【0152】
さらにまた、二層目以降のパターンを形成する際に、吐出液滴の直径D1、ドットの直径D2、ドット間ピッチWの関係が、上式(11)を満たすことで、好ましい積層パターンが形成される。なお、微細パターン形成の観点から積層数は、2から4程度とすることが好ましい。
【0153】
本例では、二層目以降のパターン形成における吐出条件を明示したが、該吐出条件は一層目(最下層)のパターンを形成する吐出条件に適用可能である。また、一層目のパターンを形成する吐出条件と二層目以降のパターンを形成する吐出条件とを共通化することも可能である。
【0154】
〔その他〕
(基板の材料)
本発明に適用される基材(基板)は、寸度的に安定なものであることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、ガラス基材、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂(SiO2、SiON、若しくはITOを有していてもよい)、ビスマレインイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、シアネート樹脂等、フェノール樹脂、アラミド樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリフェニレンエーテル、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート)、金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が含まれる。本発明に使用される基材としては、エポキシ樹脂又はポリイミド樹脂が好ましい。
【0155】
基材は、一般的には、平板状の基材(各種の基板)が用いられるが、必ずしも平板状の基材に限定されず、円筒形などの任意の形状の基材を用いてもよい。
【0156】
(密着補助層液)
密着補助層に用いるラテックスは、少なくとも、アニオン系分散剤及びノニオン系分散剤から選択された少なくとも1種の分散剤、樹脂粒子、及び水系分散媒を含むものである。具体的には、本発明におけるラテックスは、水に不溶な樹脂粒子が水又は水溶性の分散媒中に分散したものであり、アニオン系分散剤又はノニオン系分散剤を含むものである。
【0157】
ここで、水系分散媒とは、水、又は水に90質量%以下の水混和性の有機溶媒を混合した混合溶媒である。水混和性の有機溶媒としては、例えば、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などの水溶性可燃性液体が挙げられる。
【0158】
<水溶性可燃性液体>
水系分散媒に用いられる水溶性可燃性液体について説明する。
【0159】
ケトン系溶剤としては、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、γ−ブチロラクトン、ヒドロキシアセトンなどが挙げられる。
【0160】
エステル系溶剤としては、酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリコール酸メチル、グリコール酸エチルなどが挙げられる。
【0161】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、1−メトキシー2−プロパノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、3−アセチル−1−プロパノール、2−(アリルオキシ)エタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−アミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、(±)−2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−ジメチルアミノエタノール、2,3−エポキシ−1−プロパノール、エチレングリコール、2−フルオロエタノール、ジアセトンアルコール、2−メチルシクロヘキサノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、グリセリン、2,2’,2”−ニトリロトリエタノール、2−ピリジンメタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エタノール、2,3−ブタンジオール、2−ブトキシエタノール、2,2’−チオジエタノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、ジグリセリン、2,2’−メチルイミノジエタノール、1,2−ペンタンジオールなどが挙げられる。他に、アルコール系溶剤には、3−アミノ−1−プロパノール、メタクリル酸トリフルオロエチル、ペンタデカフルオロオクタノールなどのアルコール誘導体も含まれる。
【0162】
エーテル系溶剤としては、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]エーテル、1、2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール、2−エトキシエタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−イソブトキシエタノール、2− 2−イソブトキシエトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシ酢酸、2−メトキシエタノールなどが挙げられる。
【0163】
グリコール系溶剤としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0164】
アミン系溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0165】
チオール系溶剤としては、メルカプト酢酸、2−メルトカプトエタノールなどが挙げられる。
【0166】
ハロゲン系溶剤としては、3−ブロモベンジルアルコール、2−クロロエタノール、3−クロロ−1,2−プロパンジオールなどが挙げられる。
【0167】
上記溶剤以外の水溶性可燃性液体に包含される溶剤としては、乳酸メチル、乳酸エチル、モルホリン、N−エチルモルホリン、ぎ酸、酢酸などが挙げられる。
【0168】
混合溶媒中に含まれる水溶性可燃性液体は、総含有量が上記範囲であれば、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0169】
ラテックスが含む樹脂粒子を構成する樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア/ウレタン、SBR(スチレン−ブタジエン系)、MBR(MMA/ブタジエン、アクリル/ブタジエン)、NBR(アクリロニトリル/ブタジエン)、NR(天然ゴム)、アクリルゴム、BR(ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、IR(イソプレンゴム)、VP(SBR/ジビニルピリジン)、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)及びこれらの共重合体などが挙げられる。ラテックスとしては、特に、シアノ基を含む樹脂粒子を含むものが好ましい。
【0170】
そのようなラテックスとしては、市販品を用いてもよく、具体的には、Nipol 1561(日本ゼオン(株))、Nipol 1562(日本ゼオン(株))、Nipol 1577K(日本ゼオン(株))、Nipol LX110(日本ゼオン(株))、LX 531(日本ゼオン(株))、LX 531B(日本ゼオン(株))、Nipol SX1503A(日本ゼオン(株))、LX 513(日本ゼオン(株))、NK−300(日本エイアンドエル(株))、NK−301(日本エイアンドエル(株))として市販されるものを用いてもよい。これら市販品のラテックスには、後述するようなアニオン系分散剤及び/又はノニオン系分散剤が含まれる。
【0171】
また、樹脂粒子としては、種類の異なるものが併用されていてもよい。併用できる樹脂粒子としては、例えば、SBRとNR、IRとNR、CRとNR、NBRでニトリル量が異なるもの、SBRでスチレン量が異なるもの、SBRとVP、NBRとMBR、SBRとNBR、SBRとMBR、BRとCR、NBRとVP、CRとVPなどが挙げられる。
【0172】
ラテックスに含まれるアニオン系分散剤又はノニオン系分散剤について説明する。
【0173】
<アニオン系分散剤>
アニオン系分散剤としては、例えば、牛脂脂肪酸、部分水添牛脂脂肪酸、オレイン酸、パルミチン酸、ドデシル硫酸等の脂肪酸及びそのカリウム塩、ナトリウム塩等の脂肪酸塩;ロジン酸、水添ロジン酸等の樹脂酸及びそのナトリウム塩、カリウム塩等の樹脂酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸及びそのナトリウム塩等のアルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。これらのアニオン系分散剤の中でも、使いやすさの点からは、オレイン酸やパルミチン酸などの長鎖脂肪酸及びその塩が好ましい。
【0174】
<ノニオン系分散剤>
ノニオン系分散剤としては、例えば、ポリエチレングリコールエステル型、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体等のプルロニック型等の各分散剤が挙げられ、エチレングリコール型の分散剤が好ましい。
【0175】
アニオン系分散剤又はノニオン系分散剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの分散剤の併用態様としては、アニオン系分散剤のみを2種以上用いる態様、ノニオン系分散剤のみを2種以上用いる態様、1種又は2種以上のアニオン系分散剤と1種又は2種以上のノニオン系分散剤を用いる態様のいずれであってもよい。併用する際には、アニオン系分散剤としては長鎖脂肪酸及びその塩とノニオン系分散剤としてはエチレングリコール型の分散剤を組み合わせて使うことが特に好ましい。
【0176】
基材とラテックスとの接触により形成された樹脂層Aの膜厚は、適宜設定することができるが、0.01マイクロメートル以上5マイクロメートル以下が好ましく、0.06マイクロメートル以上3マイクロメートル以下がより好ましく、1マイクロメートル以上2マイクロメートル以下が最も好ましい。
【0177】
(めっき用触媒担持ポリマー液)
本発明に係る配線構造体製造方法(装置)に適用されるめっき用触媒担持ポリマー液は、所定の官能基を有するポリマーと、所定の沸点を示す溶媒が含有される。該溶媒が所定の沸点を有することによって、優れた連続吐出安定性やパターン形成性を示すインクが得られる。
【0178】
<ポリマー>
本発明のめっき用触媒担持ポリマー液に使用されるポリマーは、無電解めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基(以後、適宜「相互作用性基」とも称する)と重合性官能基とを含有するポリマーである。ポリマー中に相互作用性基が含まれることによって、後述するめっき触媒に対する優れた吸着性が達成され、結果としてめっき処理の際に十分な厚さのめっき膜(金属膜)を得ることができる。また、ポリマー中に重合性官能基が含まれることにより、後述する基板との優れた密着性が発現されるとともに、膜中で架橋反応が進行し強度に優れたポリマー層を得ることができる。
【0179】
[相互作用性基]
相互作用性基としては、後述するめっき触媒などと相互作用を形成すれば、その種類は特に限定されない。例えば、極性基(親水性基)や、多座配位を形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などの非解離性官能基(解離によりプロトンを生成しない官能基)が挙げられる。特に、上記インクを用いて得られるポリマー層の吸水性、吸湿性を低減するためには、金属イオン吸着能を示す部位としての非解離性官能基を用いることが好ましい。
【0180】
極性基としては、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有する官能基、又は、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、N−ヒドロキシ構造を含む基、フェノール性水酸基、水酸基などの負の荷電を有するか、負の荷電に解離しうる酸性基が挙げられる。これらは、解離基の対イオンの形で、又は非解離状態の形でも金属イオンと吸着する。
【0181】
非解離性官能基としては、具体的には、金属イオンと配位形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基、含リン官能基などが好ましい。より具体的には、イミド基、ピリジン基、3級のアミノ基、アンモニウム基、ピロリドン基、アミジノ基、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリミジン基、ピラジン基、キナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン基構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基などの含酸素官能基、チオエーテル基、チオキシ基、チオフェン基、チオール基、スルホキシド基、スルホン基、スルフィット基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基、フォスフィン基、ホスフェート基、ホスホルアミド基などの含リン官能基、塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基、及び不飽和エチレン基などが挙げられる。また、隣接する原子又は原子団との関係により非解離性を示す態様であれば、イミダゾール基、ウレア基、チオウレア基を用いてもよい。さらに、シクロデキストリンやクラウンエーテルなどの包接能を有する化合物に由来する官能基であってもよい。
【0182】
中でも、極性が高く、めっき触媒などへの吸着能が高いことから、エーテル基(より具
体的には、−O−(CH2)n−O−(nは1から5の整数)で表される構造)、又は、シアノ基が特に好ましく、シアノ基がさらに好ましい。
【0183】
[重合性基]
重合性基としては、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基などが挙げられるが、後述する基板との反応性の観点からは、ラジカル重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、例えば、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基、イタコン酸エステル基、クロトン酸エステル基、イソクロトン酸エステル基、マレイン酸エステル基などの不飽和カルボン酸エステル基、スチリル基、アリル基などが挙げられる。中でも、メタクリル酸エステル基(メタアクリロイル基)、アクリル酸エステル基(アクリロイル基)、アリル基、スチリル基が好ましく、アクリロイル基、メタクリロイル基が特に好ましい。
【0184】
<ポリマーの好適態様>
[式(1)で表されるユニット]
上記ポリマーの好適態様の一つとして、基板との反応性により優れる点から、次式(1)で表されるユニット(繰り返し単位)が含有されるポリマーが挙げられる。該ユニットは、重合性基を有するユニット(重合性基含有ユニット)である。
【0185】
【化1】
【0186】
当該式(1)中、R1からR4は、それぞれ独立して、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。R1からR4が、置換又は無置換のアルキル基である場合、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1から2のアルキル基がより好ましい。
【0187】
より具体的には、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
【0188】
なお、R1としては、水素原子、メチル基、又は、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。R2としては、水素原子、メチル基、又は、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。R3としては、水素原子が好ましい。R4としては、水素原子が好ましい。
【0189】
Y及びZは、それぞれ独立して、単結合、又は、置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1から11)、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数6から12)、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。該有機基は、発明の効果を損なわない範囲で、ヒドロキシ基などの置換基を有していてもよい。
【0190】
置換又は無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチル基、ヘキシル基、又は、これらの基がメトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換されたものが好ましい。置換又は無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニル基、又は、メトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換されたフェニル基が好ましい。
【0191】
Y及びZとしては、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、エーテル基(−O−)、置換又は無置換の芳香族炭化水素基などが好ましく挙げられる。
【0192】
L1は、置換又は無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上記Y及びZで表される有機基と同義であり、例えば、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、又は、これらを組み合わせた基などが挙げられる。
【0193】
L1としては、無置換のアルキル基、又は、ウレタン結合若しくはウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、無置換のアルキル基及びウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。なお、ここで、L1の総炭素数とは、L1で表される置換又は無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
【0194】
L1の構造として、より具体的には、次式(1−1)、次式(1−2)、又は、次式(1−3)で表される構造であることが好ましい。
【0195】
【化2】
【0196】
当該式(1−1)及び当該式(1−2)中、Ra及びRbは、それぞれ独立して、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる群より選択される2つ以上の原子を用いて形成される2価の有機基である。好ましくは、置換若しくは無置換の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はブチレン基や、エチレンオキシド基、ジエチレンオキシド基、トリエチレンオキシド基、テトラエチレンオキシド基、ジプロピレンオキシド基、トリプロピレンオキシド基、テトラプロピレンオキシド基が挙げられる。
【0197】
[式(4)で表されるユニット]
上記式(1)で表されるユニットの好適態様として、次式(4)で表されるユニットが挙げられる。
【0198】
【化3】
【0199】
当該式(4)中、R1、R2、Z及びL1は、上記式(1)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。Tは、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子又はアルキル基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1から5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0200】
[式(5)で表されるユニット]
上記式(4)で表されるユニットの好適態様として、次式(5)で表されるユニットが挙げられる。
【0201】
【化4】
【0202】
当該式(5)中、R1、R2、及びL1は、上記式(1)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。T及びQは、それぞれ独立して、酸素原子又はNR(Rは、水素原子又はアルキル基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0203】
上記式(4)及び上記式(5)において、Wは、酸素原子であることが好ましい。また、上記式(4)及び上記式(5)において、L1は、無置換のアルキレン基、又は、ウレタン結合若しくはウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。
【0204】
ポリマー中における上記式(1)で表されるユニットの含有量は特に制限されないが、後述する基板との密着性、保存安定性、及び合成難易度の観点で、全ユニット(100モル%)に対して、5モル%以上50モル%以下が好ましく、5モル%以上40モル%以下がより好ましい。
【0205】
5モル%未満の場合、反応性(硬化性、重合性)が低下することがあり、50モル%を超える場合、ポリマーの合成の際にゲル化が起きやすく、反応の制御が難しくなる。
【0206】
[式(2)で表されるユニット]
上記ポリマーの好適態様の一つとして、めっき触媒の優れた吸着性点から、次式(2)で表されるユニット(繰り返し単位)を有するポリマーが挙げられる。該ユニットは、相互作用性基を含有するユニット(相互作用性基含有ユニット)である。
【0207】
【化5】
【0208】
当該式(2)中、R5は、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。
R5で表される置換又は無置換のアルキル基は、上述したR1からR4で表される置換又は無置換のアルキル基と同義である。R5としては、水素原子、メチル基、又は、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
【0209】
X及びL2は、それぞれ独立に、単結合、又は置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上述の通りである。Xとしては、好ましくは、単結合、エステル基、アミド基、エーテル基であり、より好ましくは、単結合、エステル基、アミド基であり、最も好ましくは、単結合、エステル基である。
【0210】
L2は、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい態様の1つである。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、さらに、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を含んでいてもよい。中でも、L2は、総炭素数が1から15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。
【0211】
なお、ここで、総炭素数とは、例えば、L2で表される置換又は無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
【0212】
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、及びこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシル基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、さらには、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0213】
Wは、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表す。Wはポリマー直鎖から直接結合してもよい。つまり、前述のX及びL2が単結合となり、Wが直接炭素原子に結合してもよい。非解離性官能基の定義は、上述の通りである。
【0214】
上記式(2)で表されるユニットの好適態様の一つとして、次式(6)で表されるユニットが挙げられる。
【0215】
【化6】
【0216】
当該式(6)中、R5、X及びL2の定義は、上記式(2)中の各基と同義である。上記式(2)で表されるユニットの他の好適態様として、次式(7)で表されるユニットが挙げられる。
【0217】
【化7】
【0218】
当該式(7)中、R5及びL2の定義は、上記式(2)中の各基と同義である。R6は、無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基を表す。ポリマー中における上記式(2)で表されるユニットの含有量は特に制限されないが、めっき触媒又はその前駆体に対する吸着性、合成のしやすさの観点から、ポリマー中の全ユニット(100モル%)に対して、20モル%以上90モル%以下が好ましく、さらに好ましくは30モル%以上80モル%以下である。
【0219】
<任意ユニット>
上記ポリマーは、水溶液に対する親和性が向上し、現像性がより向上する点から、さらに次式(3)で表されるユニットを有していてもよい。該ユニットは、イオン性極性基を有するユニットに該当する。
【0220】
【化8】
【0221】
当該式(3)中、R7は、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。R7で表される置換又は無置換のアルキル基は、上述したR1からR4で表される置換又は無置換のアルキル基と同義である。
【0222】
R7としては、水素原子、メチル基、又は、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。U及びL3は、それぞれ独立して、単結合、又は置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上述の通りである。Uの好ましい態様は、上記Xの好ましい態様と同じである。L3の好ましい態様は、上記L2の好ましい態様と同じである。
【0223】
Vは、イオン性極性基を表し、ポリマーの水溶液への現像性を付与しうるものであれば特に限定されない。具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸基が挙げられる。
【0224】
中でも、適度な酸性(他の官能基を分解しない)という点から、カルボン酸基が好ましく、電気配線として必要な低吸水性と、を両立するという観点で、特に、ポリマー主鎖に直接結合しているカルボン酸基、脂環構造と直接結合しているカルボン酸基(脂環式カルボン酸基)、ポリマー主鎖から離れたカルボン酸基(長鎖カルボン酸基)が好ましく、最も好ましくは、ポリマー主鎖に直結しているカルボン酸基である。
【0225】
このようなイオン性極性基は、ポリマーの一部に付加・置換させることで、ポリマー中に導入していてもよいし、また、イオン性極性基がペンダントされたモノマーを共重合することで、ポリマー中に導入してもよい。
【0226】
上記式(3)で表されるユニットにおいては、適度な酸性(他の官能基を分解しない)、アルカリ水溶液中では親水性を示し、水を乾燥すると環状構造により疎水性を示しやすいという点から、Vがカルボン酸基であり、且つ、L3のVとの連結部に4員から8員の環構造を有することが好ましい。
【0227】
ここで、4員から8員の環構造としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、フェニル基が挙げられ、中でも、シクロヘキシル基、フェニル基が好ましい。すなわち、この態様では、上記式(3)で表されるユニットの末端が脂環式カルボン酸基となる。
【0228】
また、上記式(3)で表されるユニットにおいては、適度な酸性(他の官能基を分解しない)、アルカリ水溶液中では親水性を示し、水を乾燥すると長鎖アルキル基構造により疎水性を示しやすいという点から、Vがカルボン酸基であり、且つ、L3の鎖長が6原子から18原子であることが好ましい。
【0229】
ここで、L3の鎖長とは、上記式(3)中のUとVとの距離を表し、UとVとの間が6原子から18原子の範囲で離間していることが好ましいことを意味する。L3の鎖長として、より好ましくは、6原子から14原子であり、さらに好ましくは、6原子から12原子である。
【0230】
一方、上記式(3)で表されるユニットにおいて、Vがカルボン酸基であり、且つ、U及びL3が単結合であることも好ましい態様の1つである。この態様であると、ポリマー主鎖でカルボン酸基が遮蔽されると予想され、その結果、疎水化でき、金属パターン形成直後において、基板と金属パターンとの密着性を高めることができ、また、ポリマー層の水に対する耐性を高めることができる。
【0231】
ポリマー中における上記式(3)で表されるユニットの含有量は特に制限されないが、水溶液による現像性と耐湿密着性の点から、ポリマー中の全ユニット(100モル%)に対して、20モル%以上70モル%以下が好ましく、さらに好ましくは20モル%以上60モル%以下である。
【0232】
特に好ましくは30モル%以上50モル%以下である。この範囲にて、より現像性と耐湿密着力を両立することができる。
【0233】
ポリマー中における上述したユニットの結合様式は特に限定されず、各ユニットがランダムに結合したランダム重合体であっても、各ユニットが同じ種類同士連結してブロック部を形成するブロックポリマーであってもよい。
【0234】
なお、上述したポリマーは、上記ユニット以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他のユニットを含んでいてもよい。但し、後述するように重合性基をポリマーに反応させて導入する場合は、100%導入することが困難な際には少量の反応性部分が残ってしまうことから、これが他のユニットとなる可能性もある。
【0235】
本例に適用されるめっき用触媒担持ポリマーの好ましい態様としては、上記式(1)で表されるユニットと、上記式(6)で表されるユニットとを有するポリマー、上記式(1)で表されるユニットと上記式(7)で表されるユニットとを有するポリマー、上記式(1)で表されるユニット、上記式(2)で表されるユニット、及び上記式(3)で表されるユニットを有するポリマーなどが挙げられる。
【0236】
本例に適用されるめっき用触媒担持ポリマーの重量平均分子量は、微細パターンを形成する観点から20000以下が好ましい。
【0237】
また、本例に適用されるめっき用触媒担持ポリマーの重合度としては、10量体以上のものを使用することが好ましく、さらに好ましくは20量体以上のものである。また、2000量体以下が好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
【0238】
<ポリマーの合成方法>
ポリマーの合成方法としては、以下の方法が好ましく挙げられる。
【0239】
i)相互作用性基を有するモノマー、及び重合性基を有するモノマーを共重合する方法、ii)相互作用性基を有するモノマー、及び二重結合前駆体を有するモノマーを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基を有するモノマー及び二重結合導入のための反応性基を有するモノマーを共重合させ、得られた反応性基を有するポリマーに、該反応性基と反応しうる重合性基を有するモノマーを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)する方法が挙げられる。
【0240】
合成適性の観点から、好ましい方法としては、上記ii)及び上記iii)の方法である。合成する際の重合反応の種類は特に限定されず、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などが挙げられるが、ラジカル重合で行うこと好ましい。また、上記のイオン性極性基を有するユニットを導入する場合は、イオン性極性基を有するモノマーを合わせて使用する。
【0241】
なお、本発明のポリマーは、特開2009−280905号公報の段落〔0097〕から〔0125〕に記載の方法などを参照して合成することができる。具体的には、上記ii)の合成方法において、二重結合前駆体を二重結合に変換するには、下記に示すように、B、Cで表される脱離基を脱離反応により除去する方法、つまり、塩基の作用によりCを引き抜き、Bが脱離する反応を使用する。
【0242】
なお、下記式中、Aは重合性基を有する有機団、R1〜R3は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基、B及びCはそれぞれ独立して脱離反応により除去される脱離基であり、B、Cのいずれか一方が水素原子であり、他方がハロゲン原子、スルホン酸エステル基、エーテル基、又はチオエーテル基を表す。ここでいう脱離反応とは、塩基の作用によりCが引き抜かれ、Bが脱離するものである。Bはアニオンとして、Cはカチオンとして脱離するものが好ましい。また、塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物又は炭酸塩、有機アミ化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。
【0243】
【化9】
【0244】
また、上記iii)の合成方法において、二重結合導入のための反応性基を有するモノマーとしては、反応性基としてカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、又はイソシアネート基を有するモノマーが挙げられる。また、反応性基を有するポリマーと反応させる重合性基を有するモノマーとしては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、ハロゲン化ベンジル基などの反応性基を有することが好ましい。
【0245】
ポリマー中の反応性基と、モノマー中の反応性基との組み合わせとしては、以下のようなパターンがある。
【0246】
すなわち、(ポリマーの反応性基、モノマーの反応性基)=(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)、(イソシアネート基、水酸基)、(イソシアネート基、カルボキシル基)、(エポキシ基、カルボキシル基)等を挙げることができる。
【0247】
なお、ポリマーの合成方法として、側鎖にヒドロキシル基を有するポリマー、及び、イソシアネート基と重合性基とを有する化合物を用い、該ヒドロキシル基に該イソシアネート基を付加させることによりL1中のウレタン結合を形成することが好ましい。
【0248】
また、ポリマーの合成方法として、側鎖にカルボキシル基を有するポリマー、及び、ハロゲン化ベンジル基と重合性基とを有する化合物を用い、該カルボキシル基に該ハロゲン化ベンジル基を付加させることによりL1中のメチレン基を形成することも好ましい。
【0249】
<溶媒>
本発明のインクジェットインクには、次式(A)で表される沸点の平均値を満たす溶媒類(液体類)が含有される。
【0250】
【数1】
【0251】
該溶媒は、上述したポリマーを溶解又は分散させることができる。本発明において、用いられる溶媒が所定の沸点を示すことにより、優れた連続吐出安定性や、ポリマー層の優れた形成性を示すインクを得ることができる。
【0252】
上記式(A)中、Wiインクジェットインク中のi番目の溶媒の溶媒全量に対する質量比(i番目の溶媒質量/全溶媒質量)(質量分率)を表す。Tbiはインクジェットインク中のi番目の溶媒の沸点(℃)(1気圧下)を表す。iは1からnの整数を表す。
【0253】
nはインクジェットインクに含有される溶媒の数を表し、具体的には、nは1以上の整数を表す。例えば、2種の溶媒を使用する場合はn=2となり、3種の溶媒を使用する場合はn=3となる。なお、nの上限は特に制限されないが、コストなどの観点より、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。上記式(A)中、Σは合計を表す。
【0254】
上記式(A)では、各溶媒の沸点値に、該溶媒の全溶媒中における質量分率を乗じて得た値を求め、それらを足した総和である。得られる値によって、インクジェット中の溶媒の揮発の程度を見積もることができる。
【0255】
より具体的には、1種の溶媒のみを使用する場合は、n=1となり、使用される溶媒の沸点値がT(b)に該当する。
【0256】
また、二種類の溶媒を併用する場合(溶媒Xの沸点:TX、溶媒Yの沸点:TY)、T
(b)は、次式
T(b)={TX×(溶媒Xの質量/全溶媒質量)}+{TY×(溶媒Yの質量/全溶媒質量)}
より求めることができる。さらに、三種類の溶媒を併用する場合(溶媒Xの沸点:TX、溶媒Yの沸点:TY、溶媒Zの沸点:TZ)、T(b)は、次式
T(b)={TX×(溶媒Xの質量/全溶媒質量)}+{TY×(溶媒Yの質量/全溶媒質量)}+{TZ×(溶媒Zの質量/全溶媒質量)}
より求めることができる。
【0257】
使用される溶媒は、非重合性溶媒(非重合性液体)であっても、重合性基を含有する重合性溶媒(重合性液体)であってもよい。なお、重合性溶媒は、重合性基を有する液状モノマーを意味する。重合性溶媒は、吐出可能な粘度を有していれば特に限定されないが、溶解性の観点より、分子量300以下、重合性官能基数2以下のものが特に好ましい。
【0258】
より具体的に、使用される溶媒としては、例えば、アルデヒド系溶媒(例えば、2−アルアルデヒド、ベンズアルデヒドなど)、エーテル系溶媒(例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピルエーテル、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエチルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなど)、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドンなど)、アミン系溶媒(例えば、トリエチルアミン、ピリジンなど)、脂肪族炭化水素系溶媒(例えば、シクロヘキサン、ヘプタンなど)、芳香族炭化水素系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニリン、クレソール、テトラリン)、アルコール系溶媒(例えば、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、グリセロール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、デカノールなど)、エステル系溶媒(例えば、エチルアセテート、プロピルアセテート、ジエチルカルボネート、エチルラクテート、2−エトキシエチルアセテート、エチルベンゾエート、プロピレンカルボネート、トリアセチンなどの)、ケトン系溶媒(例えば、2−ブタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなど)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル、シアノエチルアクリレートなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、トリクロロメタン、テトラクロロメタン)、硫黄系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド)、有機酸(例えば、酢酸)などが挙げられる。
【0259】
中でも、溶解性、インクジェットヘッド攻撃性、素材の選択性の観点より、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒(特に、(オリゴ)エチレングリコール誘導体、(オリゴ)プロピレングリコール誘導体)、重合性溶媒などが好ましい。
【0260】
本例に示すめっき用触媒担持ポリマー液に適用される溶媒は、上記したものの中で、沸点が異なる二種以上の混合溶媒として使用される。
【0261】
なお、沸点が異なる溶媒A(または溶媒B)が二種以上使用される場合は、全溶媒A量に対する各溶媒Aの質量分率に、各溶媒Aの沸点を乗じて得た値を足した値を、溶媒Aの沸点とする。溶媒Bの場合も同様である。より具体的には、各溶媒の沸点は、それぞれ次式(B)又は次式(C)で表される沸点である。
【0262】
【数2】
【0263】
式(B)中、WAiはインクジェットインク中のi番目の溶媒Aの溶媒A全量に対する質量比(i番目の溶媒A質量/全溶媒A質量)(質量分率)を表す。
【0264】
TAbiはインクジェットインク中のi番目の溶媒Aの沸点(℃)(1気圧下)を表す。iは1からnAの整数を表す。
【0265】
nAはインクジェットインクに含有される溶媒Aの数を表し、具体的には、nAは1以上の整数を表す。例えば、二種の溶媒Aを使用する場合はnA=2となり、3種の溶媒Aを使用する場合はnA=3となる。なお、nAの上限は特に制限されないが、コストなどの観点より、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。式(B)中、Σは合計を表す。
【0266】
式(C)中、WBiはインクジェットインク中のi番目の溶媒Bの溶媒B全量に対する質量比(i番目の溶媒B質量/全溶媒B質量)(質量分率)を表す。
【0267】
TBbiはインクジェットインク中のi番目の溶媒Bの沸点(℃)(1気圧下)を表す。iは1からnBの整数を表す。
【0268】
nBはインクジェットインクに含有される溶媒Bの数を表し、具体的には、nBは1以上の整数を表す。なお、nBの上限は特に制限されないが、コストなどの観点より、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。
【0269】
該好適態様において、インクジェット中、質量基準で溶媒Aが溶媒Bよりも多く含有される。言い換えると、インクジェットインク中における溶媒Aと溶媒Bとの質量比(溶媒Aの質量/溶媒Bの質量)は1を超える数値となる。
【0270】
該質量比としては、連続吐出安定性と、描画時のポリマー膜の面状の両立の点から、2以上がより好ましい。上限としては、通常、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。
【0271】
溶媒Bの好ましい態様としては、描画時のポリマー膜の面状良化の点から、重合性溶媒(重合性液体)が挙げられる。重合性溶媒としては、分子量が比較的小さく、ポリマー成分への溶解性が高い分子量300以下で2官能以下のものが望ましく、さらに、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基(式(1)内のW基)を有することが好ましい。
【0272】
具体的には、イミド基、ピリジン基、3級のアミノ基、アンモニウム基、ピロリドン基、アミジノ基、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリミジン基、ピラジン基、ナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン基構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基、N−ヒドロキシ構造を含む基、フェノール性水酸基、又は水酸基を含む、(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドなどが好ましい。
【0273】
<インクジェット方式への対応>
本発明に適用されるめっき用触媒担持ポリマー液は、上記ポリマーと上記溶媒とが含まれる。インクジェットインク中におけるポリマーの含有量は特に制限されないが、連続吐出安定性により優れる点で、インク全量に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、4質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0274】
インクジェットインク中における上記溶媒の含有量は特に制限されないが、連続吐出安定性により優れる点で、インク全量に対して、80質量%以上99質量%以下が好ましく、85質量%以上96質量%以下がより好ましい。
【0275】
<任意成分>
本発明に適用されるめっき用触媒担持ポリマー液は、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、ラジカル発生剤などを含有していてもよい。
【0276】
<界面活性剤>
本発明に適用されるめっき用触媒担持ポリマー液は、さらに界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤を含む場合、インクジェット吐出安定性、着弾時のレベリング性の点で好ましい。
【0277】
界面活性剤の例として、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、アンモニウムイオンを対イオンとするアニオン系界面活性剤、有機酸アニオンを対イオンとするカチオン系界面活性剤などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール誘導体が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、長鎖アルキルのベタイン類が挙げられる。アンモニウムイオンを対イオンとするアニオン系界面活性剤としては、例えば、長鎖アルキル硫酸アンモニウム塩、アルキルアリール硫酸アンモニウム塩、アルキルアリールスルホン酸アンモニウム塩、アルキルリン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸系高分子のアンモニウム塩などが挙げられる。
【0278】
めっき用触媒担持ポリマー液中の界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、インク全量に対して、5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2質量%以下がより好ましい。上記範囲内であれば、インクの他物性を損ねることなく、好ましい表面張力を得られる点で好ましい。
【0279】
<ラジカル発生剤>
本発明に適用されるめっき用触媒担持ポリマー液は、上記ポリマー中の重合性基の反応を促進する目的で、ラジカル発生剤(重合開始剤)を含有していてもよい。ラジカル発生剤は、ポリマーの種類にあわせて選択することができ、光ラジカル発生剤、熱ラジカル発生剤などが挙げられる。
【0280】
中でも、オキシムエステル類、アシルホスフィンオキサイド類、α―ヒドロキシアルキルケトン類、ロフィンダイマー類、及びトリハロメチルトリアジン類からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0281】
ラジカル発生剤の含有量は、インク全量に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上3質量%以下である。含有量が上述の範囲内であると、より良好な感度と強固な硬化部を形成することができる。
【0282】
〔インクジェットインクの製造方法〕
本発明に適用されるめっき用触媒担持ポリマー液の製造には、公知のインクジェットインクの製造方法を適用することが可能である。例えば、溶媒中に上記ポリマーを溶解させた後、インクジェットインクに必要な各成分(例えば、界面活性剤、ラジカル発生剤)を溶解させてインクジェットインクを調製することができる。
【0283】
<インクジェットインクの物性値>
本発明のインクジェットインクの物性値としては、インクジェットヘッドで吐出可能な範囲であれば特に限定されないが、インク粘度は安定吐出の観点から、吐出時のヘッド内の温度において20ミリパスカル秒以下であることが好ましく、2ミリパスカル秒以上15ミリパスカル秒以下であることがより好ましい。また、装置で吐出する際には、インクジェットインクの温度を20℃以上80℃以下の範囲でほぼ一定温度に保持することが好ましく、該温度範囲で粘度が20ミリパスカル秒となることがより好ましい。装置の温度を高温に設定すると、インクの粘度が低下し、より高粘度のインクを吐出可能となる。しかし、温度が高くなることにより、熱によるインクの変性や熱重合反応がヘッド内で発生したり、インクを吐出するノズル表面で溶剤が蒸発したりして、ノズル詰まりが起こりやすくなるため、50℃以下であることが好ましい。なお、上記粘度は、一般に用いられるE型粘度計(例えば、東機産業(株)製E型粘度計(RE−80L)を用いることにより測定される値である。
【0284】
また、インクジェットインクの25℃の表面張力(静的表面張力)としては、非浸透性
の基板に対する濡れ性の向上、及び吐出安定性の点で、20ミリニュートン毎メートル以上40ミリニュートン毎メートルが好ましく、20ミリニュートン毎メートル以上35ミリニュートン毎メートル以下がより好ましい。
【0285】
上述の表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計FACE SURFACE TENSIOMETER CBVB−A3など)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃、60%RHにて測定される値である。
【0286】
以上説明しためっき用触媒担持ポリマー(めっき用触媒担持ポリマー液)は、本発明の適用範囲を限定するものではなく、本発明の作用効果が得られる範囲において、適宜変更することが可能である。
【0287】
本例では、基板上の配線パターン描画を行う方法及び装置を例示したが、本発明は、樹脂製の筐体にパターンを形成する形態や、有機ELパネルなどの薄型パネルの作製にも適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0288】
以上、本発明に係る機能性液パターン形成方法、導電性パターン形成方法及びシステムについて詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよい。
【0289】
〔付記〕
上記に詳述した実施形態についての記載から把握される通り、本明細書では以下に示す
発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0290】
(発明1):めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により前記基材上に吐出させる機能性液体吐出工程と、前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、に前記基材を加熱する加熱工程と、を含むことを特徴とする機能性液体パターン形成方法。
【0291】
本発明によれば、めっき用触媒担持高分子化合物を含有する液によるパターンを形成する際に、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、D1<W<D2の関係を満たすことで、バルジやジャギーなどの発生を防止しうる。
【0292】
また、機能性液体に低沸点溶媒を含むことで、基材上における機能性液体の液滴(ドット)の溶媒の蒸発が促進され、パターンの広がりが抑制される。
【0293】
さらに、機能性液体を吐出させている間、基材を加熱することで機能性液体の濡れ広がりが抑制される。
【0294】
さらにまた、機能性液体に高沸点溶媒を含むことでインクジェット方式による好ましい液体吐出が実現される。
【0295】
(発明2):発明1に記載の機能性液体パターン形成方法において、前記高分子化合物の分子量は50000以下であることを特徴とする。
【0296】
かかる態様によれば、インクジェット方式による良好な吐出性能が維持される。
【0297】
インクジェット方式の吐出安定性の観点から、高分子化合物の分子量を20000以下とする態様がより好ましい。また、機能性液体における高分子化合物の質量比は5質量%以下が好ましい。
【0298】
(発明3):発明1又は2に記載の機能性液体パターン形成方法において、前記機能性液体吐出工程は、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式W≦D2/2の関係を満たす吐出条件に基づき、前記機能性液体を吐出させることを特徴とする。
【0299】
かかる態様によれば、パターン幅が均一な微細パターンを形成しうる。
【0300】
(発明4):発明1から3のいずれか1項に記載の機能性液体パターン形成方法において、前記加熱工程は、前記基材の表面温度が45℃以上となるように前記基材を加熱することを特徴とする。
【0301】
かかる態様によれば、基材上における機能性液体の濡れ広がりが防止され、好ましい微細パターンを形成しうる。
【0302】
かかる態様において、基材の表面温度を60℃以上とする態様が好ましい。
【0303】
(発明5):発明1から4のいずれかに記載の機能性液体パターン形成方法において、前記基材に密着補助層を形成する密着補助層形成工程を含み、前記機能性液体吐出工程は、密着補助層が形成された基材に前記機能性液体を吐出させることを特徴とする。
【0304】
かかる態様によれば、めっき用触媒担持高分子化合物と基材との密着性が確保される。
【0305】
(発明6):発明1から5のいずれかに記載の機能性液体パターン形成方法において、前記機能性液体吐出工程は、前記機能性液体のパターンを二層以上積層させるとともに、二層目以降のパターン形成において、前記機能性液体の液滴の直径D1、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、前記機能性液体を吐出させることを特徴とする。
【0306】
かかる態様によれば、二層目以降のパターンが下層のパターンからはみ出すことや、二層目以降のパターンにバルジやジャギーが発生することなく、好ましい微細積層パターンを形成しうる。
【0307】
かかる態様において、W≦D2/2の関係を満たす吐出条件に基づき前記機能性液体を吐出させることが好ましい。
【0308】
(発明7):発明6に記載の機能性液体パターン形成方法において、前記機能性液体吐出工程は、二層目以降のパターン形成が一層目のパターン形成と同一の吐出条件に基づくことを特徴とする。
【0309】
かかる態様によれば、一層目のパターンを形成する吐出条件と二層目以降のパターン形成する吐出条件とを共通化することで、吐出条件が最適化される。
【0310】
(発明8):めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を含有する機能性液体を、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により前記基材上に吐出させる機能性液体吐出工程と、前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、前記形成された機能性液体のパターンにめっき触媒又はめっき触媒前駆体を付与するめっき触媒付与工程と、前記めっき触媒又は前記めっき触媒前駆体が付与された機能性液体のパターンにめっき処理を施すめっき処理工程と、を含むことを特徴とする導電性パターン形成方法。
【0311】
本発明によれば、基材との密着性が確保された微細な導電性パターンを形成しうる。
【0312】
(発明9):発明8に記載の導電性パターン形成方法において、前記機能性液体吐出工程は、前記機能性液体のパターンを二層以上積層させるとともに、二層目以降のパターン形成において、前記機能性液体の液滴の直径D1、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、前記機能性液体を吐出させることを特徴とする。
【0313】
かかる態様によれば、機能性液体のパターンの厚みが十分に厚くされることで、基材の表面粗さの影響が排除された好ましい導電性パターンを形成しうる。
【0314】
(発明10):めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を含有する機能性液体を基材上に吐出させるインクジェットヘッドと、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、前記インクジェットヘッドの吐出を制御する吐出制御手段と、前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、を備えたことを特徴とする機能性液体パターン形成システム。
【0315】
本発明におけるインクジェットヘッドは、機能性液を吐出させるノズルと、ノズルと連通され、ノズルから吐出される機能性液が収容される液室と、該液室内の機能性液を加圧する加圧手段と、を備える態様がある。
【0316】
(発明11):発明10に記載の機能性液体パターン形成システムにおいて、前記吐出制御手段は、前記機能性液体のパターンを二層以上積層させるとともに、二層目以降のパターン形成において、前記機能性液体の液滴の直径D1、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、前記インクジェットヘッドの吐出を制御することを特徴とする請求項9に記載の機能性液体パターン形成システム。
【0317】
かかる態様において、一層目のパターンを形成する吐出条件と二層目のパターンを形成する吐出条件とを共通化する態様が好ましい。
【0318】
(発明12):めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を含有する機能性液体を基材上に吐出させるインクジェットヘッドと、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、前記インクジェットヘッドの吐出を制御する吐出制御手段と、前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、前記形成された機能性液体のパターンにめっき触媒又はめっき触媒前駆体を付与するめっき触媒付与手段と、前記めっき触媒又は前記めっき触媒前駆体が付与された機能性液体のパターンにめっき処理を施すめっき処理手段と、を備えたことを特徴とする導電性パターン形成システム。
【0319】
(発明13):発明12に記載の導電性パターン形成システムにおいて、前記吐出制御手段は、前記機能性液体のパターンを二層以上積層させるとともに、二層目以降のパターン形成において、前記機能性液体の液滴の直径D1、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、前記インクジェットヘッドの吐出を制御することを特徴とする。
【0320】
(発明14):めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により前記基材上に吐出させる機能性液体吐出工程と、前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、を含むことを特徴とする機能性液体パターン構造体製造方法。
【0321】
(発明15):めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式D1<W<D2の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により前記基材上に吐出させる機能性液体吐出工程と、前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、前記形成された機能性液体のパターンにめっき触媒又はめっき触媒前駆体を付与するめっき触媒付与工程と、前記めっき触媒又は前記めっき触媒前駆体が付与された機能性液体のパターンにめっき処理を施すめっき処理工程と、を含むことを特徴とする導電性パターン構造体製造方法。
【符号の説明】
【0322】
10…パターン形成システム、12…基材、14…プラテン、16…吐出液滴、18…インクジェットヘッド、20…密着補助層、22…ヒータ、24…温度センサ、26…ドット、30…システム制御部、36…ヒータ制御部、38…吐出制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により前記基材上に吐出させる機能性液体吐出工程と、
前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、
を含むことを特徴とする機能性液体パターン形成方法。
【請求項2】
前記高分子化合物の分子量は50000以下であることを特徴とする請求項1に記載の機能性液体パターン形成方法。
【請求項3】
前記機能性液体吐出工程は、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式
W≦D2/2
の関係を満たす吐出条件に基づき、前記機能性液体を吐出させることを特徴とする請求項1又は2に記載の機能性液体パターン形成方法。
【請求項4】
前記加熱工程は、前記基材の表面温度が45℃以上となるように前記基材を加熱することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の機能性液体パターン形成方法。
【請求項5】
前記基材に密着補助層を形成する密着補助層形成工程を含み、
前記機能性液体吐出工程は、密着補助層が形成された基材に前記機能性液体を吐出させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の機能性液体パターン形成方法。
【請求項6】
前記機能性液体吐出工程は、前記機能性液体のパターンを二層以上積層させるとともに、二層目以降のパターン形成において、前記機能性液体の液滴の直径D1、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、前記機能性液体を吐出させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の機能性液体パターン形成方法。
【請求項7】
前記機能性液体吐出工程は、二層目以降のパターン形成が一層目のパターン形成と同一の吐出条件に基づくことを特徴とする請求項6に記載の機能性液体パターン形成方法。
【請求項8】
めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により前記基材上に吐出させる機能性液体吐出工程と、
前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、
前記形成された機能性液体のパターンにめっき触媒又はめっき触媒前駆体を付与するめっき触媒付与工程と、
前記めっき触媒又は前記めっき触媒前駆体が付与された機能性液体のパターンにめっき処理を施すめっき処理工程と、
を含むことを特徴とする導電性パターン形成方法。
【請求項9】
前記機能性液体吐出工程は、前記機能性液体のパターンを二層以上積層させるとともに、二層目以降のパターン形成において、前記機能性液体の液滴の直径D1、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、前記機能性液体を吐出させることを特徴とする請求項8に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項10】
めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を基材上に吐出させるインクジェットヘッドと、
飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、前記インクジェットヘッドの吐出を制御する吐出制御手段と、
前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、
を備えたことを特徴とする機能性液体パターン形成システム。
【請求項11】
前記吐出制御手段は、前記機能性液体のパターンを二層以上積層させるとともに、二層目以降のパターン形成において、前記機能性液体の液滴の直径D1、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、前記インクジェットヘッドの吐出を制御することを特徴とする請求項10に記載の機能性液体パターン形成システム。
【請求項12】
めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を基材上に吐出させるインクジェットヘッドと、
飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、前記インクジェットヘッドの吐出を制御する吐出制御手段と、
前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、
前記形成された機能性液体のパターンにめっき触媒又はめっき触媒前駆体を付与するめっき触媒付与手段と、
前記めっき触媒又は前記めっき触媒前駆体が付与された機能性液体のパターンにめっき処理を施すめっき処理手段と、
を備えたことを特徴とする導電性パターン形成システム。
【請求項13】
前記吐出制御手段は、前記機能性液体のパターンを二層以上積層させるとともに、二層目以降のパターン形成において、前記機能性液体の液滴の直径D1、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、前記インクジェットヘッドの吐出を制御することを特徴とする請求項12に記載の導電性パターン形成システム。
【請求項14】
めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を含有する機能性液体を、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により前記基材上に吐出させる機能性液体吐出工程と、
前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、
を含むことを特徴とする機能性液体パターン構造体製造方法。
【請求項15】
めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を含有する機能性液体を、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により前記基材上に吐出させる機能性液体吐出工程と、
前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、
前記形成された機能性液体のパターンにめっき触媒又はめっき触媒前駆体を付与するめっき触媒付与工程と、
前記めっき触媒又は前記めっき触媒前駆体が付与された機能性液体のパターンにめっき処理を施すめっき処理工程と、
を含むことを特徴とする導電性パターン構造体製造方法。
【請求項1】
めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により前記基材上に吐出させる機能性液体吐出工程と、
前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、
を含むことを特徴とする機能性液体パターン形成方法。
【請求項2】
前記高分子化合物の分子量は50000以下であることを特徴とする請求項1に記載の機能性液体パターン形成方法。
【請求項3】
前記機能性液体吐出工程は、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式
W≦D2/2
の関係を満たす吐出条件に基づき、前記機能性液体を吐出させることを特徴とする請求項1又は2に記載の機能性液体パターン形成方法。
【請求項4】
前記加熱工程は、前記基材の表面温度が45℃以上となるように前記基材を加熱することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の機能性液体パターン形成方法。
【請求項5】
前記基材に密着補助層を形成する密着補助層形成工程を含み、
前記機能性液体吐出工程は、密着補助層が形成された基材に前記機能性液体を吐出させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の機能性液体パターン形成方法。
【請求項6】
前記機能性液体吐出工程は、前記機能性液体のパターンを二層以上積層させるとともに、二層目以降のパターン形成において、前記機能性液体の液滴の直径D1、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、前記機能性液体を吐出させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の機能性液体パターン形成方法。
【請求項7】
前記機能性液体吐出工程は、二層目以降のパターン形成が一層目のパターン形成と同一の吐出条件に基づくことを特徴とする請求項6に記載の機能性液体パターン形成方法。
【請求項8】
めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により前記基材上に吐出させる機能性液体吐出工程と、
前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、
前記形成された機能性液体のパターンにめっき触媒又はめっき触媒前駆体を付与するめっき触媒付与工程と、
前記めっき触媒又は前記めっき触媒前駆体が付与された機能性液体のパターンにめっき処理を施すめっき処理工程と、
を含むことを特徴とする導電性パターン形成方法。
【請求項9】
前記機能性液体吐出工程は、前記機能性液体のパターンを二層以上積層させるとともに、二層目以降のパターン形成において、前記機能性液体の液滴の直径D1、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、前記機能性液体を吐出させることを特徴とする請求項8に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項10】
めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を基材上に吐出させるインクジェットヘッドと、
飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、前記インクジェットヘッドの吐出を制御する吐出制御手段と、
前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、
を備えたことを特徴とする機能性液体パターン形成システム。
【請求項11】
前記吐出制御手段は、前記機能性液体のパターンを二層以上積層させるとともに、二層目以降のパターン形成において、前記機能性液体の液滴の直径D1、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、前記インクジェットヘッドの吐出を制御することを特徴とする請求項10に記載の機能性液体パターン形成システム。
【請求項12】
めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を基材上に吐出させるインクジェットヘッドと、
飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、前記インクジェットヘッドの吐出を制御する吐出制御手段と、
前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、
前記形成された機能性液体のパターンにめっき触媒又はめっき触媒前駆体を付与するめっき触媒付与手段と、
前記めっき触媒又は前記めっき触媒前駆体が付与された機能性液体のパターンにめっき処理を施すめっき処理手段と、
を備えたことを特徴とする導電性パターン形成システム。
【請求項13】
前記吐出制御手段は、前記機能性液体のパターンを二層以上積層させるとともに、二層目以降のパターン形成において、前記機能性液体の液滴の直径D1、前記機能性液体のドットの間隔W、前記機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、前記インクジェットヘッドの吐出を制御することを特徴とする請求項12に記載の導電性パターン形成システム。
【請求項14】
めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を含有する機能性液体を、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により前記基材上に吐出させる機能性液体吐出工程と、
前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、
を含むことを特徴とする機能性液体パターン構造体製造方法。
【請求項15】
めっき用触媒担持高分子化合物、190℃以上240℃未満の沸点を有する高沸点溶媒及び75℃以上105℃未満の沸点を有する低沸点溶媒を含有する機能性液体を含有する機能性液体を、飛翔中における機能性液体の液滴を球形状とみなしたときの直径D1、基材上に形成される機能性液体のドットの間隔W、前記基材上に形成される機能性液体のドットの直径D2が、次式
D1<W<D2
の関係を満たす吐出条件に基づき、インクジェット方式により前記基材上に吐出させる機能性液体吐出工程と、
前記機能性液体吐出工程における機能性液体の吐出開始から吐出終了までの間、前記基材を加熱する加熱工程と、
前記形成された機能性液体のパターンにめっき触媒又はめっき触媒前駆体を付与するめっき触媒付与工程と、
前記めっき触媒又は前記めっき触媒前駆体が付与された機能性液体のパターンにめっき処理を施すめっき処理工程と、
を含むことを特徴とする導電性パターン構造体製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図9】
【図10】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図9】
【図10】
【図12】
【公開番号】特開2013−8851(P2013−8851A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140729(P2011−140729)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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