説明

機能性繊維布

【課題】大気中の窒素酸化物を効率的に分解・除去することができる機能性繊維布を提供すること。
【解決手段】本発明は、光触媒を担持させた無機系多孔質吸着剤が、繊維表面に、高分子バインダーによって固着されている機能性繊維布である。また、さらに、本発明は、ヒドラジン誘導体が、高分子バインダーによって固着されている機能性繊維布である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維の物理的、化学的特性を維持しつつ、光触媒反応を得ることができる機能性繊維布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大気中の窒素酸化物を減らす方法として、燃焼ガス及び廃棄ガスの発生装置に触媒装置の浄化装置を付加して、大気中に放出される窒素酸化物を減らす装置が提案されている。また、地下駐車場やトンネルには、排気装置に当該浄化装置を付加した設備が提案されている。
【0003】
また、近年、二酸化チタンに代表される光触媒の酸化・還元反応を利用して、防汚性、消臭性、抗菌性、防かび性等の機能を付与する技術が提案されている。それに伴い、光触媒には窒素酸化物除去性能が存在することも報告されている。そのような状況の中、窒素酸化物除去性能を有する光触媒が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、特許文献2には、繊維表面に金属層を有し、当該金属層表面に二酸化チタン層が積層されている繊維構造物が開示されている。
【0005】
特許文献3には、繊維からなる基材表面に、フッ素系、シリコン系、炭化水素系、又はアクリル酸系化合物からなるプラズマ重合膜が形成されており、当該被膜表面に二酸化チタン層が形成されている機能性構造物が開示されている。
【0006】
特許文献4には、繊維表面にアミノ樹脂製被膜が形成されており、当該被膜表面に二酸化チタンを含む被膜が形成されている繊維構造物が開示されている。
【特許文献1】特許第3276297号公報
【特許文献2】特開2000−192368号公報
【特許文献3】特開2000―117880号公報
【特許文献4】特開平11−100771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、大気中に放出された窒素酸化物を簡便に浄化する方法は提案されていなかった。特許文献1のように、窒素酸化物除去性能を有した光触媒酸化チタンは提案されているが、研究の結果、特許文献1に記載の光触媒をバインダーによって繊維布に固着させただけでは、窒素酸化物除去効果が得られないことが分かった。
【0008】
また、特許文献2〜4に記載の繊維布は、繊維劣化を防止するため多層構造を採用しているが、窒素酸化物除去効果という面では、期待できない。
【0009】
それゆえ、本発明の目的は、大気中の窒素酸化物を分解・除去することができる機能性繊維布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成を有する。本発明は、光触媒を担持させた無機系多孔質吸着剤が、繊維表面に、高分子バインダーによって固着されている機能性繊維布である。さらに、ヒドラジン誘導体が、高分子バインダーによって固着されているとよい。一実施形態において、光触媒は、酸化チタンであり、無機系多孔質吸着剤は、多孔質シリカである。また、好ましくは、無機系多孔質吸着剤に光触媒を担持させたハイブリッド型ガス吸着剤において、無機系多孔質吸着剤が50〜90重量%であり、光触媒が10〜50重量%であるとよい。より好ましくは、無機系多孔質吸着剤に光触媒を担持させたハイブリッド型ガス吸着剤において、無機系多孔質吸着剤が70〜85重量%であり、光触媒が15〜30重量%であるとよい。また、好ましくは、無機系多孔質吸着剤の粒径は、2〜40μmであり、光触媒の粒径は、1μm以下であるとよい。より好ましくは、無機系多孔質吸着剤の粒径は、2〜10μmであり、光触媒の粒径は、5〜20nmであるとよい。好ましくは、光触媒の粒径は、無機系多孔質吸着剤の粒径の1/10以下であるとよい。より好ましくは、光触媒の粒径は、無機系多孔質吸着剤の粒径の1/50以下であるとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光触媒を担持させた無機系多孔質吸着剤がバインダー樹脂表面から突出すると考えられるので、効率的に窒素酸化物を吸着し、光触媒効果によって窒素酸化物を分解・除去することができ、結果、窒素酸化物除去性能を繊維布に付与することができることとなる。また、バインダー樹脂による吸着効果も期待できる。さらに、ヒドラジン誘導体を用いることによって、黄ばみ防止を実現することができる。
【0012】
また、光触媒と無機系多孔質吸着剤との配合比率や、光触媒及び無機系多孔質吸着剤の粒径を適切なものとすることによって、窒素酸化物の分解・除去性能をより効率的なものとすることができる。
【0013】
高分子バインダーで、光触媒を担持させた無機系多孔質吸着剤を繊維表面に固着させる工程として、たとえば、シルクスクリーン印刷などを使うことができ、非常に簡便かつ安価に、窒素酸化物除去性能を有する機能性繊維布を提供することができる。
【0014】
本発明のこれらおよび他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る発明は、光触媒を担持させた無機系多孔質吸着剤が、繊維表面に、高分子バインダーによって固着されている機能性繊維布である。
【0016】
光触媒とは、そのバンドギャップ以上のエネルギーを有する波長の光を照射すると光触媒機能を発現する粒子のことであり、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)などの公知の金属化合物半導体を1種または2種以上用いることができる。特に、優れた光触媒機能を有し、化学的に安定でかつ無害である酸化チタンが好ましい。酸化チタンとは、酸化チタンの他、含水酸化チタン、水和酸化チタン、オルソチタン酸、メタチタン酸、水酸化チタン酸と一般に呼ばれるものを含み、結晶型は限定されないが、アナターゼ型が好ましい。
【0017】
無機系多孔質吸着剤とは、無機系の多孔体のことであり、シリカ、アルミナ、ゼオライト、セピオライト、モンモリナイトなどを1種または2種以上用いることができる。特に、無機系多孔質吸着剤として、多孔質シリカが好ましい。
【0018】
無機系多孔質吸着剤に光触媒を担持させることによって得られるハイブリッド型ガス吸着剤(以下、ハイブリッド吸着剤という)を、高分子バインダーで繊維表面に固着させることによって、機能性繊維布が得られる。
【0019】
高分子バインダーとは、ハイブリッド吸着剤を繊維表面に固着させるための合成樹脂のことである。高分子バインダーとして、アクリル酸エステル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョンなどが挙げられる。風合いの観点から、アクリル酸エステル樹脂の場合のガラス転移点(Tg)は、−30〜−15℃の範囲が好ましい。
【0020】
好ましくは、ハイブリッド吸着剤は、無機系多孔質吸着剤が50〜90重量%、光触媒が10〜50重量%で構成されるとよい。より好ましくは、ハイブリッド吸着剤は、無機系多孔質吸着剤が70〜85重量%、光触媒が15〜30重量%で構成されるとよい。ハイブリッド吸着剤において、無機系多孔質吸着剤が50%以下、光触媒が10%以下の場合、窒素酸化物の分解性能が低下するものの、無機系多孔質吸着剤を使用しない場合と比べ、ある程度の窒素酸化物の分解性能は得られる。したがって、ハイブリッド吸着剤は、上記配合比率に限定されるものではない。
【0021】
好ましくは、無機系多孔質吸着剤の粒径は2〜40μmであるとよい。また、好ましくは、光触媒の粒径は1μm以下であるとよい。
【0022】
より好ましくは、無機系多孔質吸着剤の粒径は2〜10μmであるとよい。また、より好ましくは、5〜20nmであるとよい。
【0023】
無機系多孔質吸着剤に光触媒を担持させたハイブリッド吸着剤を製造するためには、好ましくは、光触媒の粒径が無機系多孔質吸着剤の粒径の1/10以下であるとよい。より好ましくは、光触媒の粒径が無機系多孔質吸着剤の粒径の1/50以下であるとよい。
【0024】
次に、第1の実施形態に係る機能性繊維布の製造方法の一例について説明する。まず、水にキレート分散剤を添加して、撹拌し、溶解する。次に、得られた溶液を撹拌しながら、無機系多孔質吸着剤を徐々に添加し、均一に分散させる。次に、無機系多孔質吸着剤が添加された溶液を撹拌しながら、光触媒粒子を徐々に添加して、光触媒粒子を均一に分散させる。その後、撹拌しながら超音波振動を加え、無機系多孔質吸着剤に光触媒を担持させて、ペースト液を作成する。当該ペースト液に、バインダー樹脂を添加して、混合する。その後、アクリル系増粘剤を用いて、粘度を調整して、配合液を得る。当該配合液を、シルクスクリーンを用いて、繊維布上に印捺し、予備乾燥を行う。さらに、ベーキング(熱入れ)を行って、繊維布上に、ハイブリッド吸着剤を固着させる。これによって、光触媒を担持させた無機系多孔質吸着剤が、繊維表面に、高分子バインダーによって固着されている機能性繊維布が得られる。
【0025】
このようにして得られた機能性繊維布を旗や幟、横断幕、帆、テントなどに応用することによって、大気中の窒素酸化物(NOx)を分解除去することができる。
【0026】
第1の実施形態に係る発明では、ハイブリッド吸着剤がバインダー樹脂表面から突出することになると思われる。したがって、ハイブリッド吸着剤が効率的に窒素酸化物を吸着し、光触媒効果によって窒素酸化物を分解・除去することができ、結果、窒素酸化物除去性能を繊維布に付与することができるものと考えられる。また、バインダー樹脂による吸着効果も期待できる。また、光触媒と無機系多孔質吸着剤との配合比率や、光触媒及び無機系多孔質吸着剤の粒径を適切なものとすることによって、窒素酸化物の分解・除去性能をより効率的なものとすることができる。
【0027】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る発明は、第1の実施形態に係る発明に加え、さらに、ヒドラジン誘導体が高分子バインダーによって固着されている機能性繊維布である。すなわち、第2の実施形態に係る発明は、光触媒を担持させた無機系多孔質吸着剤とヒドラジン誘導体とが、繊維表面に、高分子バインダーによって固着されている機能性繊維布である。
【0028】
ヒドラジン誘導体とは、ヒドラジン(H2N−NH2)の誘導体である。ヒドラジン誘導体を添加することによって、NOxガスによる黄ばみを防止することができる。好ましくは、ヒドラジン誘導体として、構造式1で表される1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)や、構造式2で表されるビューレトリートリ(ヘキサメチレン−N,N−ジメチルセミカルバジド)などを用いると、黄ばみ防止をより効果的に実現することができる。
【化1】

【化2】

【0029】
次に、第2の実施形態に係る機能性繊維布の製造方法の一例について説明する。まず、水にキレート分散剤を添加して、撹拌し、溶解する。次に、得られた溶液を撹拌しながら、無機系多孔質吸着剤を徐々に添加し、均一に分散させる。次に、無機系多孔質吸着剤が添加された溶液を撹拌しながら、光触媒粒子を徐々に添加して、光触媒粒子を均一に分散させる。その後、撹拌しながら超音波振動を加え、無機系多孔質吸着剤に光触媒を担持させて、ペースト液を作成する。当該ペースト液に、ヒドラジン誘導体をメタノール及び水で溶解した溶液を添加し、バインダー樹脂を添加して、混合する。その後、アクリル系増粘剤を用いて、粘度を調整して、配合液を得る。当該配合液を、シルクスクリーンを用いて、繊維布上に印捺し、予備乾燥を行う。さらに、ベーキング(熱入れ)を行って、繊維布上に、ハイブリッド吸着剤を固着させる。これによって、光触媒を担持させた無機系多孔質吸着剤が、繊維表面に、高分子バインダーによって固着されている機能性繊維布が得られる。
【0030】
このようにして得られた機能性繊維布を旗や幟、横断幕、帆、テントなどに応用することによって、大気中の窒素酸化物(NOx)を分解除去することができる。
【0031】
第2の実施形態に係る発明では、ハイブリッド吸着剤がバインダー樹脂表面から突出することになると思われる。したがって、第1の実施形態と同様、ハイブリッド吸着剤が効率的に窒素酸化物を吸着し、光触媒効果によって窒素酸化物を分解・除去することができ、結果、窒素酸化物除去性能を繊維布に付与することができるものと考えられる。また、バインダー樹脂による吸着効果も期待できる。さらに、ヒドラジン誘導体が繊維表面に固着されているので、NOxガスによる黄ばみを防止することができる。
【0032】
なお、第1の実施形態と同様に、光触媒と無機系多孔質吸着剤との配合比率や、光触媒及び無機系多孔質吸着剤の粒径を適切なものとすることによって、窒素酸化物の分解・除去性能をより効率的なものとすることができる。
【実施例】
【0033】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
水150重量部に対し、キレート分散剤15重量部を添加して撹拌し、溶解する。次に、撹拌しながら、平均粒径4μmの無機系多孔質吸着剤(東ソー・シリカ株式会社製:ニップジェルCX−400)90重量部を徐々に添加して均一に分散させる。次に、撹拌しながら、平均粒径3〜8μmのアパタイト酸化チタン光触媒(太平化学産業株式会社製:PHOTOHAP PCAP−100)10重量部を徐々に添加して均一に分解させる。その後、撹拌しながら30分間超音波振動を与えて、無機系多孔質吸着剤に光触媒を担持させて、ペースト液を製造する。併せて、ヒドラジン誘導体(1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド))(日本ヒドラジン工業株式会社製:HN−130)20重量部を、メタノール40重量部及び水40重量部で溶解した溶液(以下、ヒドラジン誘導体溶液という)を製造する。ヒドラジン誘導体溶液25重量部を当該ペースト液に添加し、水85重量部、及び、バインダー樹脂としてアクリル酸エステル共重合樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製:F−15)125重量部を添加して混合する。次に、アクリル系増粘剤を用いて粘度を8000〜10000CPS(20℃)に調整した配合液を得た。配合液を、シルクスクリーンを用いて、ポリエステルポンジー上に120g/m2(Wet)印捺し、105℃にて5分間予備乾燥を行い、さらに150℃にて3分間ベーキングを行って、実施例1に係る機能性繊維布を得た。
【0035】
(実施例2)
実施例2では、無機系多孔質吸着剤を95重量部とし、アパタイト酸化チタン光触媒を5重量部とした以外は、実施例1と同様である。
【0036】
(実施例3)
実施例3では、無機系多孔質吸着剤を97重量部とし、アパタイト酸化チタン光触媒を3重量部とした以外は、実施例1と同様である。
【0037】
(実施例4)
実施例4では、無機系多孔質吸着剤を80重量部とした。また、実施例1において、アパタイト酸化チタン光触媒のみを用いたところを、代わりに、アパタイト酸化チタン光触媒10重量部及び平均粒径7nmの光触媒酸化チタン(石原産業株式会社製:ST−30L)10重量部を用いることとした。それ以外は、実施例1と同様である。
【0038】
(実施例5)
実施例5では、無機系多孔質吸着剤を80重量部とした。また、実施例1において、アパタイト酸化チタン光触媒を用いたところを、代わりに、平均粒径7nmの光触媒酸化チタン(石原産業株式会社製:ST−30L)20重量部を用いることとした。それ以外は、実施例1と同様である。
【0039】
(実施例6)
実施例6では、実施例5で用いたヒドラジン誘導体溶液を用いないこととした。それ以外は、実施例5と同様である。
【0040】
(比較例)
水150重量部に対して、キレート分散剤15重量部を添加して撹拌し、溶解する。次に、撹拌しながら、平均粒径7nmの光触媒酸化チタン(石原産業株式会社製:ST−30L)20重量部を徐々に添加し均一に分散させる。さらに、水85重量部、及びバインダー樹脂としてアクリル酸エステル共重合樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製:F−15)125重量部を添加し混合する。次に、アクリル系増粘剤を用いて粘度を8000〜10000CPS(20℃)に調整して、配合液を得た。当該配合液を実施例1と同様の工程で、繊維表面に固着させ、比較例となる機能性繊維布を得た。
【0041】
実施例1〜6及び比較例によって得られた機能性繊維布の試料を、下記に示す方法で評価した。まず、実施例1〜6及び比較例によって得られた機能性繊維布の試料を幅75mm、長さ75mmに切断して評価片とした。その後、光触媒材料の空気浄化性能試験(日本工業規格(JIS R1701−1))に準じた光照射容器内に、試験片を入れて封入した。実施例1〜6及び比較例において、試験温度を25℃、相対湿度を50%とし、窒素酸化物(NO及びNO2)を供給濃度が1.05ppmとなるように毎分0.5リットルで当該光照射容器に供給し、検知装置を用いて、NOxガスの濃度を測定した。ブラックライトの紫外線強度は、10W/m2とした。実施例1〜6及び比較例において、ブラックライトによって5時間以上紫外線を照射した後、一端消灯し、NOxガスの濃度が一定に達したところで、再度、紫外線を照射し、20分後のNOxガスの濃度を記録した。得られた結果を表1に示した。
【0042】
【表1】

【0043】
比較例より、無機系多孔質吸着剤を用いずに、単に、光触媒を繊維表面に高分子バインダーで固着させただけでは、NOx除去の効果が得られないことが分かった。
【0044】
また、実施例1〜3より、ハイブリッド吸着剤において、無機系多孔質吸着剤が90重量%よりも大きく、光触媒が10重量%未満である場合、NOx除去の効果はある程度得られることが分かる。しかし、ハイブリッド吸着剤において、無機系多孔質吸着剤が90重量%以下であり、かつ、光触媒が10重量%以上であることが好ましいことが分かる。
【0045】
実施例5(ハイブリッド吸着剤において、無機系多孔質吸着剤が80重量%で、光触媒が20重量%)が最もNOx除去効果が高いものであった。したがって、実施例5が最良値の近傍であると予想されるので、無機系多孔質吸着剤が50〜90重量%であり、光触媒が10〜50重量%であること好ましく、無機系多孔質吸着剤が70〜85重量%であり、光触媒が15〜30重量%であることより好ましいと推測される。
【0046】
実施例4〜6では、平均粒径7nmの光触媒酸化チタンを用いている。一方、実施例1〜3では、平均粒径3〜8μmのアパタイト酸化チタン光触媒を用いている。無機系多孔質吸着剤の平均粒径は、4μmである。ハイブリッド吸着剤における光触媒の配合比率が違うため一概には断定できないが、実施例5が最良値の近傍であると予想されるので、無機系多孔質吸着剤の粒径は2〜40μmであり、光触媒の粒径は1μm以下であることが好ましく、無機系多孔質吸着剤の粒径は2〜10μmであり、光触媒の粒径は5〜20nmであることがより好ましいと推測される。当然、光触媒の粒径は、0よりも大きいことは言うまでもない。
【0047】
同様に、光触媒の粒径は無機系多孔質吸着剤の粒径の1/10以下であることが好ましく、光触媒の粒径は前記無機系多孔質吸着剤の粒径の1/50以下であることがより好ましいと推測される。当然、当該粒径の比率は0よりも大きいことは言うまでもない。
【0048】
また、実施例5及び6の結果より、光触媒と無機系多孔質吸着剤との配合比率や、光触媒及び無機系多孔質吸着剤の粒径に関するより好ましい実施形態は、ヒドラジン誘導体の有無に関わらず、窒素酸化物除去性能という面において、適用可能であることが分かった。
【0049】
比較例と実施例1〜6との比較によって、無機系多孔質吸着剤と光触媒とを組み合わせれば、NOx除去効果が得られることが確認されたので、本発明は、光触媒と無機系多孔質吸着剤との配合比率や、光触媒及び無機系多孔質吸着剤の粒径に限定されるものではない。
【0050】
実施例5及び実施例6を、三ヶ月間、暴露した結果、実施例6は、実施例5に比べ、黄ばみが進行していたことが確認できた。これによって、ヒドラジン誘導体が黄ばみ防止に有効に作用していることが確認できた。
【0051】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る機能性繊維布は、窒素酸化物を分解・除去することができ、環境汚染防止など極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒を担持させた無機系多孔質吸着剤が、繊維表面に、高分子バインダーによって固着されている機能性繊維布。
【請求項2】
さらに、ヒドラジン誘導体が、前記高分子バインダーによって固着されている請求項1に記載の機能性繊維布。
【請求項3】
前記光触媒は、酸化チタンであり、
前記無機系多孔質吸着剤は、多孔質シリカである、請求項1に記載の機能性繊維布。
【請求項4】
前記無機系多孔質吸着剤に前記光触媒を担持させたハイブリッド型ガス吸着剤において、
前記無機系多孔質吸着剤が50〜90重量%であり、
前記光触媒が10〜50重量%である、請求項1に記載の機能性繊維布。
【請求項5】
前記無機系多孔質吸着剤に前記光触媒を担持させたハイブリッド型ガス吸着剤において、
前記無機系多孔質吸着剤が70〜85重量%であり、
前記光触媒が15〜30重量%である、請求項4に記載の機能性繊維布。
【請求項6】
前記無機系多孔質吸着剤の粒径は、2〜40μmであり、
前記光触媒の粒径は、1μm以下である、請求項1に記載の機能性繊維布。
【請求項7】
前記無機系多孔質吸着剤の粒径は、2〜10μmであり、
前記光触媒の粒径は、5〜20nmである、請求項6に記載の機能性繊維布。
【請求項8】
前記光触媒の粒径は、前記無機系多孔質吸着剤の粒径の1/10以下である、請求項1に記載の機能性繊維布。
【請求項9】
前記光触媒の粒径は、前記無機系多孔質吸着剤の粒径の1/50以下である、請求項8に記載の機能性繊維布。

【公開番号】特開2008−223175(P2008−223175A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63868(P2007−63868)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(594101260)井上染工株式会社 (5)
【出願人】(502428179)有限会社ライズケミカルリサーチ (1)
【Fターム(参考)】