説明

機能性金属酸化物層及びその製造方法

【課題】 安価で、かつ高性能な機能性金属酸化物層を簡易に生産性よく製造することのできる機能性金属酸化物層の製造方法、およびその製造方法によって得られる機能性金属酸化物層を提供すること。
【解決手段】 金属酸化物からなる微粒子と、この金属酸化物を構成している金属元素の金属からなる微粒子とを含有する塗液を調製する工程と、塗液を支持体に被着させる工程と、塗液の層から溶媒を蒸発させ、金属酸化物微粒子と金属微粒子とを含有する微粒子層を形成する工程と、微粒子層に酸化性雰囲気中においてプラズマを照射することによって、金属酸化物微粒子間を直接、及び/又は、少なくとも一部が酸化された金属微粒子を介して連結し、機能性金属酸化物層を形成する。金属酸化物微粒子層に接して金属層を積層し、これにプラズマを照射して、機能性金属酸化物層を形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛からなる透明導電層などの機能性金属酸化物層及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、金属酸化物を主成分とする薄膜(以下、金属酸化物膜と略記する。)を機能性材料として用いる研究・開発が盛んに行われている。金属酸化物膜は、光機能性材料、電子機能性材料、および化学生体機能材料などとして用いることができ、透明電極、太陽電池、光メモリ、電解質材料、および触媒材料などへの応用が報告されている。
【0003】
例えば、金属酸化物からなる透明導電膜は、液晶表示装置やタッチパネルなど、光の出入りを伴うエレクトロニクス装置の透明電極や、塵埃の付着を嫌う光透過性部材(クリーンルームのパーティションなど)の静電気除去膜などとして用いられている。従来、透明導電膜の材料としては、主として、インジウム・スズ酸化物(ITO)や、フッ素がドープされたスズ酸化物(FTO)などが用いられてきた。とりわけ、ITOは可視光透過率および電気伝導度が高いことから、液晶ディスプレイなどの画像表示装置、タッチパネル、太陽電池、および光センサなどの透明導電膜として広く用いられている。しかし、インジウムは資源量が少なく、将来、資源が不足するおそれがあることなどから、資源量が豊富で安価な酸化亜鉛膜などでITO膜を代替しようとする研究・開発も行われている。
【0004】
さて、ITO膜や酸化亜鉛膜などの金属酸化物膜を基材上に形成する方法としては、乾式法と湿式法とがある。乾式法では、真空蒸着法やスパッタリング法などによって金属酸化物材料などを基材上に成膜する。これらの方法では、高品位の金属酸化物膜が得られるが、その製造には高価な真空装置などが必要であり、また、バッチ式の製造方法になるため、生産性が低くなる。これらの結果、製造コストが高くなる。また、基材が高温に曝されるため、基材の材料が耐熱性の高いガラス等に限定され、ガラス転移温度が低い有機樹脂に成膜することが難しい。また、高品位の成膜を行うには基材温度を比較的高く保つことが必要であるので、有機樹脂に比較的低い温度で成膜したとしても、導電膜としての十分な性能が得られない。
【0005】
一方、湿式法には、金属微粒子または金属酸化物微粒子を有機溶媒中に分散させた塗液を塗布する方法や、金属アルコキシドの加水分解生成物からなるゾルを塗布するゾル・ゲル法などがある。湿式法では、真空装置などの高価な装置を用いずに、連続的に生産性よく金属酸化物膜を形成することができるが、導電性など、金属酸化物膜の性能は、乾式法で得られる金属酸化物膜に劣ることが多い。例えば、金属微粒子または金属酸化物微粒子からなる層を形成する場合、塗液の層から溶媒を蒸発させるだけでは微粒子同士のつながりが十分ではない。従って、通常、所望の導電性を得るには、微粒子層を250℃以上の高温に加熱して、微粒子同士を融着させる加熱処理工程が必要である。また、ゾル・ゲル法でも、通常、所望の導電性を得るには、ゲル層を300℃以上の高温に加熱して結晶化させる加熱処理工程が必要である。このような加熱処理工程によって、生産性が低下してコスト高になることや、基材の材料が耐熱性のある材料に限定され、有機樹脂フィルム等に成膜することができないことなどの問題が生じる。
【0006】
そこで後述の特許文献1には、金属アルコキシドまたは金属塩から得られる金属酸化物ゾルを支持体上に塗布して金属酸化物ゲル薄膜を形成した後、該薄膜にプラズマ処理を行うことを特徴とする、金属酸化物含有皮膜およびその製造方法が提案されている。また、金属アルコキシドまたは金属塩、および有機化合物を混合して得られる金属酸化物ゾルを支持体上に塗布して、有機化合物を含有する金属酸化物ゲル薄膜を形成した後、該薄膜にプラズマ処理を行うことを特徴とする、金属酸化物含有皮膜およびその製造方法が提案されている。該有機化合物は、大気圧下での沸点が200℃以上の有機化合物を用いるのがよく、例えば、有機ポリマーを用いるのがよいとされている。
【0007】
特許文献1には、下記のように説明されている。
【0008】
従来、グロー放電(プラズマ)処理は、基材表面に親水性を付与させるなど、表面を改質する手段として知られてきた。しかし、発明者は、上記金属酸化物ゾルを基材上に塗布し、ゲル化させ、溶媒を蒸発させた後に、プラズマ処理すると、プラズマ処理が表面の改質だけでなく、膜中あるいは材料中の構造にも影響を及ぼすことを、発見した。すなわち、プラズマ処理時間が長くなるほど、膜の強度や屈折率が上昇し、プラズマ処理によって金属−酸素−金属結合による3次元架橋が形成されていることを確認した。しかも、プラズマ処理の過程において、基材の温度が低温に保たれていることを確認した。従って、この金属酸化物含有皮膜の製造方法は、耐熱性が低い基材に対しても適用できる。
【0009】
金属酸化物ゲルに添加する有機化合物は、金属酸化物との膜を形成できるものであれば使用可能であるが、大気圧下で沸点が200℃以上の化合物が好ましい。大気圧下での沸点が200℃未満の有機化合物では、金属酸化物のマトリックスができあがる前に揮発してしまい、十分な効果を得ることができない。
【0010】
これらの有機化合物のあるものは、その性質により、3次元架橋された金属酸化物のネットワーク中に、独立した有機相として分散した状態で存在し、プラズマ処理後の金属酸化物膜の構造や性質に影響を与える場合がある。例えば、チタン、ジルコニウム、インジウム、およびスズなどのアルコキシドを用いた場合には、ゲル薄膜は、プラズマ処理過程で有機化合物のほとんどを排除してしまい、有機化合物の痕跡は残らず、稠密で均一な金属酸化物膜が形成される。一方、ケイ素のアルコキシドを用いた場合には、シロキサンのマトリクスが特に強固な3次元架橋構造のゲルを作りやすいためと思われるが、プラズマ処理過程で有機物がゲル薄膜から抜け出ていった後も、有機相が占めていた領域が空孔として残り、多孔性の膜が形成されやすい。この性質は、多孔性シリカ層による低屈折率層の形成に利用することができる。
【0011】
また、後述の特許文献2には、平均一次粒子径が1nm以上かつ200nm以下の酸素欠損型金属酸化物微粒子を含む塗布液を基材上に塗布して塗布膜とし、この塗布膜に酸化性雰囲気中にてプラズマまたは電磁波を照射することにより、前記基材上に透明導電膜を形成することを特徴とする、透明導電膜およびその形成方法が提案されている。
【0012】
特許文献2の実施例1には、下記のように説明されている。
【0013】
まず、スズSnを5%含むスズ添加酸化インジウム(ITO)微粒子(平均一次粒子径が30nm以下。)を、窒素ガスN2雰囲気中において900℃にて還元処理した。この結果、図8に示すように、化学量論的組成である酸素飽和型ITO微粒子102の表面がIn−Sn合金層103にて被覆された構造を有するITO微粒子101の粉末を得た。このITO微粒子101粉末の酸素含有量は16.0質量%であった。
【0014】
次に、このITO粉末101を濃度が5質量%となるように酢酸ブチルに分散させ、塗布液を調製した。この塗布液をスピンコート法によりガラス基板上に塗布し、膜厚が約300nmの塗布膜を形成した。得られた塗布膜に、加熱装置を用いず、大気圧下にて出力100W/cm2のプラズマを照射した。ここでは、プラズマ発生用電極と基材との距離を5mmとし、反応ガスとして90%N2−10%O2の混合ガスを用い、塗布膜の表面に対して垂直にプラズマを照射した。
【0015】
プラズマ照射時間を3分、5分、10分の3通りに設定し、得られた透明導電膜に対して表面抵抗(シート抵抗:Ω/□)、可視光透過率(%)を測定し、プラズマ処理時間が長くなるほど、表面抵抗が減少し、プラズマ処理によって金属−酸素−金属結合の形成による3次元架橋が形成されていることを確認した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1に提案されている金属酸化物膜およびその製造方法では、金属アルコキシドの加水分解生成物からなるゾル状態の塗布液を用いる。金属アルコキシドの加水分解生成物は反応性が高いので、膜質の面内均一性が良好な塗膜をこの塗布液を用いて形成することは難しい。また、金属アルコキシドは高価であるので、製造コストが高くなるという問題点もある。特許文献2に提案されている透明導電膜の形成方法では、二次凝集を防止しながらITO微粒子101を調製する工程が、煩雑で、かつ困難である。
【0017】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、安価で、かつ高性能な機能性金属酸化物層を簡易に生産性よく製造することのできる機能性金属酸化物層の製造方法、およびその製造方法によって得られる機能性金属酸化物層を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
即ち、本発明は、
金属酸化物からなる微粒子(以下、金属酸化物微粒子と略称する。)と、この金属酸 化物を構成している金属元素の金属からなる微粒子(以下、金属微粒子と略称する。) とを含有する塗液を調製する工程と、
前記塗液を支持体に被着させる工程と、
前記塗液の層から溶媒を蒸発させ、前記金属酸化物微粒子と前記金属微粒子とを含有 する微粒子層を形成する工程と、
前記微粒子層に酸化性雰囲気中においてプラズマを照射することによって、前記金属 酸化物微粒子間を直接、及び/又は、少なくとも一部が酸化された前記金属微粒子を介 して連結し、機能性金属酸化物層を形成する工程と
を有する、第1の機能性金属酸化物層の製造方法に係わるものである。
【0019】
また、
金属酸化物からなる微粒子(以下、金属酸化物微粒子と略称する。)と、この金属酸化物を構成している金属元素の金属からなる微粒子(以下、金属微粒子と略称する。)とを含有する微粒子層が、酸化性雰囲気中においてプラズマ照射されてなり、前記金属酸化物微粒子間が直接、及び/又は、少なくとも一部が酸化された前記金属微粒子を介して連結されている、第1の機能性金属酸化物層に係わるものである。
【0020】
また、
金属酸化物からなる微粒子(以下、金属酸化物微粒子と略称する。)を含有する塗液 を調製する工程と、
前記塗液を支持体に被着させる工程と、
前記塗液の層から溶媒を蒸発させ、前記金属酸化物微粒子を含有する金属酸化物微粒 子層を形成する工程と、
前記金属酸化物微粒子層に接して、前記金属酸化物を構成している金属元素の金属か らなる微粒子又は薄膜の層(以下、金属層と略称する。)を積層して形成する工程と、
前記金属層及び前記金属酸化物微粒子層に酸化性雰囲気中においてプラズマを照射す ることによって、前記金属酸化物微粒子間を直接、及び/又は、少なくとも一部が酸化 された前記金属層を介して連結し、機能性金属酸化物層を形成する工程と
を有する、第2の機能性金属酸化物層の製造方法に係わるものである。
【0021】
また、
金属酸化物からなる微粒子(以下、金属酸化物微粒子と略称する。)を含有する金属酸化物微粒子層と、前記金属酸化物微粒子層に接して積層された、前記金属酸化物を構成している金属元素の金属からなる微粒子又は薄膜の層(以下、金属層と略称する。)とが、酸化性雰囲気中においてプラズマ照射されてなり、前記金属酸化物微粒子間が直接、及び/又は、少なくとも一部が酸化された前記金属層を介して連結されている、第2の機能性金属酸化物層に係わるものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1の機能性金属酸化物層の製造方法によれば、前記金属酸化物微粒子と前記金属微粒子とを含有する微粒子層に、酸化性雰囲気中においてプラズマを照射することによって、前記金属酸化物微粒子間を直接、及び/又は、少なくとも一部が酸化された前記金属微粒子を介して連結し、機能性金属酸化物層を形成する工程を有する。また、本発明の第2の機能性金属酸化物層の製造方法によれば、前記金属酸化物微粒子を含有する金属酸化物微粒子層に接して前記金属層を積層して形成する工程と、前記金属層及び前記金属酸化物微粒子層に酸化性雰囲気中においてプラズマを照射することによって、前記金属酸化物微粒子間を直接、及び/又は、少なくとも一部が酸化された前記金属層を介して連結し、機能性金属酸化物層を形成する工程とを有する。
【0023】
本発明者は、前記金属酸化物を構成している金属元素の金属からなる微粒子又は薄膜を共存させながら前記金属酸化物微粒子のプラズマ処理を行うことによって、前記金属酸化物微粒子間、及び/又は、前記金属酸化物微粒子と、少なくとも一部が酸化された前記金属微粒子又は前記金属薄膜との間に、金属元素−酸素−金属元素の結合が形成され、3次元架橋構造を有する機能性金属酸化物層を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。この際、前記金属微粒子又は前記金属薄膜は、サイズ効果によって、非加熱、すなわちプラズマ照射による非平衡状態下での架橋構造形成を促進する固溶相(擬似的なバインダー)のように機能する。
【0024】
本発明の第1及び第2の機能性金属酸化物層は、それぞれ、本発明の第1及び第2の機能性金属酸化物層の製造方法によって製造される。従って、安価で、かつ高性能な機能性金属酸化物層が簡易に生産性よく得られる。また、プラズマ処理の過程において、前記支持体の温度が低温に保たれるので、耐熱性が低い有機樹脂などを前記支持体の材料として用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1に基づく機能性金属酸化物層の作製工程の主要工程を示す断面図である。
【図2】同、機能性金属酸化物層の作製工程を示す概略図である。
【図3】同、機能性金属酸化物層の作製工程1の別の例を示す概略図である。
【図4】同、変形例に基づく機能性金属酸化物層の作製工程の主要工程を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に基づく機能性金属酸化物層の作製工程の特徴を示す断面図である。
【図6】同、機能性金属酸化物層の作製工程を示す説明するための概略図である。
【図7】同、変形例に基づく機能性金属酸化物層の作製工程を示す概略図である。
【図8】特許文献2に示されているITO微粒子の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の第1の機能性金属酸化物層の製造方法において、前記金属酸化物微粒子として導電性を有する金属酸化物微粒子を用い、前記機能性金属酸化物層として導電層を形成するのがよい。この際、前記導電層の導電性を、前記金属酸化物微粒子と前記金属微粒子との質量比によって制御するのがよく、例えば、前記金属酸化物微粒子と前記金属微粒子との質量比が100:1〜100:100であるのがよい。また、前記金属酸化物微粒子及び前記金属微粒子として、それぞれ、酸化亜鉛微粒子及び亜鉛微粒子を用い、前記機能性金属酸化物層として透明導電層を形成するのがよい。
【0027】
また、
前記金属酸化物微粒子と前記金属微粒子と高分子樹脂とを含有し、前記高分子樹脂の ガラス転位点より低い沸点をもつ有機溶媒を前記溶媒とする前記塗液を形成し、
前記高分子樹脂を含有する前記微粒子層から、前記プラズマの照射によって前記高分 子樹脂を除去することにより、前記機能性金属酸化物層に空孔を形成する
のがよい。
【0028】
この際、前記高分子樹脂として、数平均分子量が10000以下の高分子樹脂を用いるのがよく、前記高分子樹脂として、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエーテル、又はポリエステルを用いるのがよい。また、前記有機溶媒として、アルコール類、チオール類、又はこれらを主成分とする混合溶媒を用いるのがよい。
【0029】
本発明の第2の機能性金属酸化物層の製造方法において、前記金属層が前記金属酸化物微粒子層の表面の一部分を被覆し、残りの部分では前記金属酸化物微粒子層が露出するように、前記金属層を形成するのがよい。この際、前記金属層を、前記金属酸化物微粒子層の表面に一様に分布した多数の島状に形成するのがよい。あるいは、前記金属層を極薄の薄膜状に形成するのがよい。
【0030】
また、前記金属酸化物微粒子として導電性を有する金属酸化物微粒子を用い、前記機能性金属酸化物層として導電層を形成するのがよい。この際、前記導電層の導電性を、前記金属酸化物微粒子と前記金属層との質量比によって制御するのがよい。また、前記金属酸化物微粒子及び前記金属として、それぞれ、酸化亜鉛微粒子及び亜鉛を用いて、前記機能性金属酸化物層として透明導電層を形成するのがよい。
【0031】
また、
前記金属酸化物微粒子と高分子樹脂とを含有し、前記高分子樹脂のガラス転位点より 低い沸点をもつ有機溶媒を前記溶媒とする前記塗液を形成し、
前記高分子樹脂を含有する前記金属酸化物微粒子層から、前記プラズマの照射によっ て前記高分子樹脂を除去することにより、前記機能性金属酸化物層に空孔を形成する
のがよい。
【0032】
この際、前記高分子樹脂として、数平均分子量が10000以下の高分子樹脂を用いるのがよく、前記高分子樹脂として、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエーテル、又はポリエステルを用いるのがよい。また、前記有機溶媒として、アルコール類、チオール類、又はこれらを主成分とする混合溶媒を用いるのがよい。
【0033】
本発明の第1及び第2の機能性金属酸化物層において、前記金属酸化物微粒子が導電性を有し、前記機能性金属酸化物層が導電層であるのがよい。例えば、前記金属酸化物微粒子、及び前記金属微粒子又は前記金属が、それぞれ、酸化亜鉛微粒子、及び亜鉛微粒子又は亜鉛であり、前記機能性金属酸化物層が透明導電層であるのがよい。この際、前記酸化亜鉛微粒子がアルミニウム及び/又はガリウムを含有するのがよい。
【0034】
また、有機樹脂からなる支持体に設けられているのがよい。
【0035】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に具体的かつ詳細に説明する。
【0036】
[実施の形態1]
実施の形態1では、主として、請求項1〜12に記載した第1の機能性金属酸化物層およびその製造方法の例について説明する。
【0037】
図1は、実施の形態1に基づく機能性金属酸化物層9の製造方法の主要工程を示す断面図である。図1(a)は、支持体1上に、分散剤3で被覆された金属酸化物微粒子2と、分散剤5で被覆された金属微粒子4とを含有する微粒子層7を形成した状態を示している。金属微粒子4は、金属酸化物微粒子2を構成している金属元素の金属からなる微粒子である。
【0038】
機能性金属酸化物層9を、光学特性を向上させる部材、例えば透明導電層や高屈折率層として作製する場合には、金属酸化物微粒子2および金属微粒子4の平均粒子径は、10〜100nmであるのがよく、例えば約10nmであるのがよい。この場合、機能性金属酸化物層9の面内方向で均質な導電性を得ることができ、かつ、白濁もヘイズ値で1程度に抑えられるので好ましい。平均粒子径がこれより小さいと、二次凝集によって分散性が悪くなり、金属酸化物微粒子2および金属微粒子4を層中に均一に分散させることが難しくなる不都合がある。平均粒子径がこれより大きいと、後述のプラズマ照射によって微粒子間を連結することが難しくなる不都合がある。また、微粒子層7の厚さは50〜200nmであるのがよく、例えば約100nmであるのがよい。この場合、均一な厚さを有し、例えば導電性の良好な機能性金属酸化物層9が得られるので好ましい。厚さが50nmより小さいと、均一な厚さの層を形成できず、例えば導電性が低下する不都合がある。厚さが200nmより大きいと、厚さ方向で均質な機能性金属酸化物層9を得ることが難しくなる不都合がある。
【0039】
次に、工程4で酸化性雰囲気中において微粒子層7にプラズマを照射すると、図1(b)に示すように、金属酸化物微粒子2および金属微粒子4をそれぞれ被覆している分散剤3および分散剤5が除去され、金属酸化物微粒子2同士、および金属酸化物微粒子2と金属微粒子4とが直接接触している微粒子層8が形成される。この状態でさらにプラズマを照射すると、図1(c)に示すように、金属酸化物微粒子2間が直接、及び/又は、少なくとも一部が酸化された金属微粒子4を介して連結され、機能性金属酸化物層9が形成される。このとき、金属酸化物微粒子2間、及び/又は、金属酸化物微粒子2と、少なくとも一部が酸化された金属微粒子4との間に、金属元素−酸素−金属元素の結合による3次元架橋構造が形成される。この際、金属微粒子4は、サイズ効果によって、非加熱、すなわちプラズマ照射による非平衡状態下での架橋構造形成を促進する固溶相(擬似的なバインダー)のように機能する。
【0040】
実用的には、金属酸化物微粒子2として導電性を有する金属酸化物微粒子を用い、機能性金属酸化物層9として導電層、とくに透明導電層を形成するのがよい。この際、導電層の導電性を、金属酸化物微粒子2と金属微粒子4との質量比によって制御するのがよい。例えば、金属酸化物微粒子2と金属微粒子4との質量比を100:1〜100:100とするのがよい。このようであると、機能性金属酸化物層9の導電性を半金属的な導電性から金属的な導電性まで変化させることが可能になるからである。金属微粒子4の比率が上記より少ないと、導電性がほとんど得られない不都合があり、金属微粒子4の比率が上記より多いと、金属光沢が顕著になり透明性が失われる不都合がある。
【0041】
例えば、金属酸化物微粒子2および金属微粒子4として、それぞれ、酸化亜鉛微粒子および亜鉛微粒子を用いて、機能性金属酸化物層9として透明導電層を形成するのがよい。既述したように、金属酸化物からなる透明導電層は、液晶表示装置やタッチパネルなど、光の出入りを伴うエレクトロニクス装置の透明電極や、塵埃の付着を嫌う光透過性部材の静電気除去膜などとして有用である。金属酸化物微粒子2の材料は導電性があればよく、これ以外はとくに限定されるものではない。このうち、亜鉛は資源量が豊富で安価であり、酸化亜鉛膜は、実験室レベルではITO膜に比べてほとんど遜色のない導電性および可視光透過性を示すことから、本発明を効果的に適用できる。また、酸化チタンや酸化銅などの金属酸化物の微粒子にも、本発明を効果的に適用することができる。
【0042】
また、酸化亜鉛微粒子2が、アルミニウム及び/又はガリウムを含有するのがよい。酸化亜鉛は酸化物半導体であるので、これらの不純物を導入することによってキャリア濃度を増加させ、導電性を向上させることができる。本発明者は、酸化亜鉛微粒子に亜鉛微粒子を共存させることによって酸化亜鉛結晶に酸素欠陥を作り出すこと、および酸化亜鉛微粒子にアルミニウムやガリウムをドープすることによってキャリア濃度を増加させることによって、酸化亜鉛からなる金属酸化物層9の導電性を半金属的な導電性から金属的な導電性まで変化させることができることを見いだした。すなわち、酸化亜鉛微粒子に対する亜鉛微粒子の質量比、または酸化亜鉛微粒子にドープするアルミニウムまたはガリウムのドープ量を変えることによって、酸化亜鉛からなる金属酸化物層9の導電性を10-8〜104Ω-1・cm-1に制御でき、かつ金属酸化物層9の透明性も確保することができる。その際、酸化亜鉛微粒子と亜鉛微粒子との質量比は100:1〜100:100とするのがよい。
【0043】
図2は、実施の形態1に基づく機能性金属酸化物層9の全作製工程を示す概略図である。
【0044】
工程1:塗液の調製
機能性金属酸化物層9を作製するには、まず、金属酸化物微粒子2と金属微粒子4とを適当な溶媒に分散させた塗液6を調製する(図2(a))。必要なら、金属酸化物微粒子2および金属微粒子4の表面をそれぞれ分散剤(先述した分散剤3および分散剤5)で被覆し、これと親和する溶媒に分散させる。例えば、酸化亜鉛微粒子の場合、分散剤3としてリン酸系分散剤、カルボン酸系分散剤、シランカップリング剤などを用い、溶媒としてメチルエチルケトンとトルエンとの混合溶媒などを用いる。
【0045】
工程2および工程3:塗液の被着および溶媒の除去
次に、塗液6を支持体1に被着させる。次に、この塗液の層から溶媒を蒸発させ、金属酸化物微粒子2と金属微粒子4とを含有する微粒子層7を形成する(図2(b))。支持体1の材料はとくに限定されるものではなく、金属、ガラス、シリコン、樹脂などを用いることができる。機能性金属酸化物層9が透明で、その透明性を活用したい場合には、支持体1の材料も透明であることが必要になる。とくに、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)フィルム、およびポリカーボネート(PC)フィルムなどの有機樹脂フィルムであると、耐熱性の低い支持体にも機能性金属酸化物層9を形成できる本発明の特徴が発揮されるので好ましい。
【0046】
塗液6を支持体1に被着させる方法もとくに限定されるものではなく、浸漬法、塗布法、および印刷法などを用いることができる。塗布法では、スピンコーター、ナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、グラビアロールコーター、カーテンコーター、スプレイコーター、およびダイコーターなどを用いることができる。また、印刷法ではインクジェットプリンターなどを用いることができ、塗液層をパターニングして形成し、フォトリソグラフィ等を用いずに所定の形状にパターニングした、機能性金属酸化物層9を得ることができる。
【0047】
支持体1が長尺のシート状である場合には、シート状の支持体が、工程1〜5をそれぞれ行う各装置間を走行するように、製造システムを構成するのがよい。この場合には、塗液6を支持体1に被着させる方法は、シート状の支持体1に塗液6を連続的に被着させることができる方法であることが好ましい。
【0048】
工程4:分散剤の除去
次に、微粒子層7を構成している金属酸化物微粒子2および金属微粒子4を被覆している分散剤を除去し、分散剤を含まない微粒子層8を形成する(図2(c))。分散剤を除去する方法としては、適当な溶媒を用いて溶解除去してもよいが、酸化性雰囲気中においてプラズマを照射して分散剤をアッシングするのが、次の工程とのつながりがよいので好ましい。
【0049】
工程5:プラズマを照射
次に、微粒子層8に酸化性雰囲気中においてプラズマを照射することによって、機能性金属酸化物層9を形成する(図2(d))。
【0050】
プラズマを照射する際の条件としては、雰囲気ガスの種類や圧力、プラズマ発生装置の構造、電界強度、放電条件などがあり、機能性金属酸化物層9の材料や形状に応じて適宜選択する。本発明では、雰囲気ガスとして酸素などの酸化性ガスを用いる。雰囲気ガスの圧力は1〜100Paであるのがよく、例えば約50Paであるのがよい。この場合、金属酸化物層9を構成する金属酸化物微粒子2に付着している分散剤3、および金属微粒子4に付着している分散剤5を過不足なく除去できるので好ましい。雰囲気ガス圧力がこれより小さいと、分散剤を除去しきれない不都合があり、雰囲気ガス圧力がこれより大きいと、工程4において金属微粒子4の酸化が進みすぎ、工程5において、金属酸化物微粒子2と金属微粒子4との間に、金属元素−酸素−金属元素の結合による3次元架橋構造を形成することが難しくなる不都合がある。処理速度を上げるには、対向電極になるべく高圧側で高出力条件を採用するのが好ましいが、電界強度を上げ過ぎると基材にダメージを与えることになる場合がある。プラズマ処理は、工程4の前、塗液層から溶媒が蒸発する前、または溶媒が蒸発している途中から行うこともできる。
【0051】
図3は、実施の形態1に基づく工程1の別の例を示す概略図である。この例では、金属酸化物微粒子2を適当な溶媒に分散させた分散液10aを調製する。必要なら、金属酸化物微粒子2の表面を被覆する分散剤3とともに、金属酸化物微粒子2に親和しやすい溶媒に分散させる。一方、金属微粒子4は、金属イオンを溶液中で還元することにより形成する。例えば、白金を触媒にして水素などで亜鉛イオンを還元して、亜鉛微粒子4の分散液10bを作製する。生成した亜鉛一次微粒子の二次凝集を防止して良好に分散させるためには、高分子樹脂もしくは上記分散剤を添加・混合させることで一次粒子間の接触を極力避ける。この後、分散液10aと分散液10bとを混合して、塗液6を形成する。
【0052】
図4は、実施の形態1の変形例に基づく機能性金属酸化物層の作製工程の主要工程を示す断面図である。
【0053】
この変形例では、まず、金属酸化物微粒子2と金属微粒子4と高分子樹脂11とを含有する塗液を調製する。この際、溶媒として、沸点が高分子樹脂11のガラス転位点よりも低い有機溶媒を用いる。これは、溶媒を蒸発させるときに高分子樹脂11が軟化し、この結果、金属酸化物微粒子2および金属微粒子4が流動して、分散の均一性が損なわれるのを未然に防止するためである。次に、この塗液を支持体1に被着させる。次に、この塗液の層から溶媒を蒸発させ、金属酸化物微粒子2と金属微粒子4と高分子樹脂11とを含有する微粒子層12を形成する(図4(a))。
【0054】
次に、酸化性雰囲気中において微粒子層12にプラズマを照射すると、金属酸化物微粒子2および金属微粒子4をそれぞれ被覆している分散剤3および分散剤5が除去され、金属酸化物微粒子2同士、および金属酸化物微粒子2と金属微粒子4とが直接接触している微粒子層13が形成される(図4(b))。この状態でさらにプラズマを照射すると、金属酸化物微粒子2間が直接、及び/又は、少なくとも一部が酸化された金属微粒子4を介して連結され、機能性金属酸化物層15が形成される(図4(c))。このとき、微粒子層13に含まれていた高分子樹脂11もプラズマ照射によって分解除去されるので、高分子樹脂11が占めていた領域が空孔14になる。このようにして均一に分布する多数の空孔14を有する機能性金属酸化物層15が得られる。機能性金属酸化物層15が電極や触媒層である場合には、このような多孔構造は、反応場である表面の面積を増加させることができるので、好ましい。
【0055】
この際、高分子樹脂11として、数平均分子量が10000以下の高分子樹脂を用いるのがよい。この場合、適度な粘度をもつ塗液が形成され、高分子樹脂が塗液の層中で均一に分散するので好ましい。また、高分子樹脂11として、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエーテル、又はポリエステルを用いるのがよい。また、有機溶媒として、アルコール類、チオール類、またはこれらを主成分とする混合溶媒を用いるのがよい。これらの有機溶媒は適度な極性をもち、金属酸化物微粒子2および金属微粒子4に対して適度な強さで親和する。この結果、微粒子層12の構造が安定に保たれるので好ましい。
【0056】
[実施の形態2]
実施の形態2では、主として、請求項13〜26に記載した第2の機能性金属酸化物層およびその製造方法の例について説明する。
【0057】
図5は、実施の形態2に基づく機能性金属酸化物層の作製工程の特徴を示す断面図である。図5は、支持体1上に、分散剤3で被覆された金属酸化物微粒子2を含有する微粒子層21を形成した状態を示している。この後、金属酸化物微粒子層21に接して、金属酸化物を構成している金属元素の金属からなる金属層22を積層して形成する。図1(a)に示した実施の形態1では、金属酸化物微粒子2と金属微粒子4とが均一に混在する微粒子層7を形成したのに対し、実施の形態2では、金属酸化物微粒子2を含有する層21と金属層22とを積層して形成する点が異なっている。
【0058】
金属層22は、金属酸化物を構成している金属元素の金属からなる層であればよく、金属微粒子4が層状に集積したものでもよく、また、連続した薄膜層であってもよい。
【0059】
この際、金属層22が金属酸化物微粒子層21の表面の一部分を被覆し、残りの部分では金属酸化物微粒子層21が露出するように、金属層22を形成するのがよい。例えば、金属層22を、金属酸化物微粒子層21の表面に一様に分布した多数の島状(アイランド状)に形成するのがよい。あるいは、金属層22を、極薄の薄膜状に形成するのがよい。これらのようにすると、プラズマが金属層22によって遮られにくくなり、金属酸化物微粒子層21に対するプラズマ照射をより効果的に行うことができる。
【0060】
金属酸化物微粒子2として導電性を有する金属酸化物微粒子を用い、機能性金属酸化物層25として導電層を形成するのがよい。この際、導電層の導電性を、金属酸化物微粒子2と金属層22との質量比によって制御するのがよい。
【0061】
図6は、実施の形態2に基づく機能性金属酸化物層25の全作製工程を説明するための概略図である。
【0062】
工程1:塗液の調製
機能性金属酸化物層25を作製するには、まず、金属酸化物微粒子2を適当な溶媒に分散させた塗液10aを調製する。必要なら、金属酸化物微粒子2の表面を分散剤3で被覆し、これと親和する溶媒に分散させる(図3参照)。
【0063】
工程2および工程3:塗液の被着および溶媒の除去
次に、塗液10aを支持体1に被着させる。次に、この塗液の層から溶媒を蒸発させ、金属酸化物微粒子2を含有する微粒子層21を形成する(図6(a))。
【0064】
工程4:金属層の形成
次に、微粒子層21に接して、金属酸化物を構成している金属元素の金属からなる微粒子または薄膜の層22(以下、金属層と略称する。)を積層して形成する(図6(b))。
【0065】
工程5:分散剤の除去
次に、微粒子層21を構成している金属酸化物微粒子2を被覆している分散剤を除去し、分散剤を含まない微粒子層23を形成する(図6(c))。分散剤を除去する方法としては、適当な溶媒を用いて溶解除去してもよいが、酸化性雰囲気中においてプラズマを照射して分散剤をアッシングするのが、次の工程とのつながりがよいので好ましい。すなわち、金属層22と金属酸化物微粒子層21に酸化性雰囲気中においてプラズマを照射すると、金属酸化物微粒子2を被覆している分散剤3が除去され、金属酸化物微粒子2同士、および金属酸化物微粒子2と金属層22とが直接接触している微粒子層23が形成される。
【0066】
工程6:プラズマ照射
次に、この状態でさらにプラズマを照射すると、金属酸化物微粒子2間が直接、及び/又は、少なくとも一部が酸化された金属層22を介して連結され、機能性金属酸化物層25が形成される(図6(e))。
【0067】
図7は、実施の形態2の変形例に基づく機能性金属酸化物層25の全作製工程を説明するための概略図である。ここでは金属層として極薄状の金属薄膜26を形成する。その他は、図6で示したと同様であるので説明を省略する。
【実施例】
【0068】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0069】
まず、酸化アルミニウムをドープした酸化亜鉛微粒子(平均1次粒子径10nm)4gと、ポリスチレン3.81gとを、メチルエチルケトン6.2gとトルエン4.6gと分散剤3であるシランカップリング剤1.96gとからなる混合溶媒に分散させた。
【0070】
次に、この分散液をポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム(厚さ10μm、屈折率1.53)上に、スピンコート法(回転数1500rpm)によって塗布した後、塗膜から溶媒を蒸発させ、酸化アルミニウムをドープした酸化亜鉛微粒子を含有する金属酸化物微粒子層21を形成した。
【0071】
次に、蒸着装置を用いて、金属酸化物微粒子層21上に、金属層22として亜鉛層をアイランド状に蒸着した。
【0072】
次に、金属酸化物微粒子層21に酸素雰囲気中においてプラズマを約3分間照射した。この間に、酸化亜鉛微粒子を被覆しているシランカップリング剤が除去され、さらに、酸化亜鉛微粒子間が直接、及び/又は、少なくとも一部が酸化された亜鉛層を介して連結され、機能性金属酸化物層25として酸化亜鉛層が形成される。この際、加熱処理は施していない。真空プラズマ放電処理装置の概要は下記の表1の通りである。
【0073】
【表1】

【0074】
上記条件で得られた酸化亜鉛層は、テスターの探針間を4mmに固定した抵抗測定で100kΩの抵抗値を示した。また、可視光域における光透過率は90%であった。
一方、プラズマ処理前の、亜鉛層がアイランド状に蒸着された金属酸化物微粒子層21は、上述したテスターによる抵抗測定で導通がなく、抵抗値は測定不可能な大きさであった。
【実施例2】
【0075】
まず、酸化アルミニウムをドープした酸化亜鉛微粒子(平均1次粒子径10nm)4gと、ポリスチレン3.81gとを、メチルエチルケトン4.93gとトルエン4.7gとシランカップリング剤3.37gとN,N−ジメチルドデシルアミンオキシド0.08gとからなる混合溶媒に分散させた。
【0076】
次に、この分散液をPETフィルム(厚さ10μm、屈折率1.53)上に、スピンコート法(回転数1500rpm)によって塗布した後、塗膜から溶媒を蒸発させ、酸化アルミニウムをドープした酸化亜鉛微粒子を含有する金属酸化物微粒子層21を形成した。
【0077】
次に、蒸着装置を用いて、金属酸化物微粒子層21上に、金属層22として亜鉛層をアイランド状に蒸着した。
【0078】
次に、金属酸化物微粒子層21に酸素雰囲気中においてプラズマを約3分間照射した。この間に、酸化亜鉛微粒子を被覆しているシランカップリング剤が除去され、さらに、酸化亜鉛微粒子間が直接、及び/又は、少なくとも一部が酸化された亜鉛層を介して連結され、機能性金属酸化物層25として酸化亜鉛層が形成される。この際、加熱処理は施していない。真空プラズマ放電処理装置の概要は上述した通りである。
【0079】
上記条件で得られた酸化亜鉛酸化亜鉛層は、上述したテスターによる抵抗測定で500kΩの抵抗値を示した。また、可視光域における透過率は90%であった。
【0080】
なお、酸化アルミニウムをドープしていない酸化亜鉛微粒子を用いた場合、実施例2と同じ条件で成膜した酸化亜鉛層は、上述したテスターによる抵抗測定で100MΩ以上の抵抗値を示した。
【0081】
以上、本発明を実施の形態および実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0082】
本発明の金属酸化物層は金属酸化物の特性により、さまざまな用途に用いることができる。例えば、導電性膜、帯電防止膜、電磁波遮蔽膜、半導体膜、および低誘電率膜などの電気的機能性膜や、反射防止フルム等に用いる低屈折率膜、紫外線遮蔽膜、赤外線遮蔽膜、反射膜、防眩性膜、および視野角拡大フィルムなどの光学的機能性膜や、ガス選択性透過膜、触媒膜、および電気化学装置の電極膜などの化学的機能性膜などとして用いることができる。とくに、金属酸化物が酸化亜鉛である場合、高屈折率で均一性の高い光学的機能性フィルムや透明電極や透明導電膜として用いることができる。
【符号の説明】
【0083】
1…支持体、2…金属酸化物微粒子、3…分散剤、4…金属微粒子、5…分散剤、
7…微粒子層(分散剤あり)、8…微粒子層(分散剤なし)、9…機能性金属酸化物層、
11…高分子樹脂、12…微粒子層(分散剤あり)、13…微粒子層(分散剤なし)、
14…空孔、15…機能性金属酸化物層、21…金属酸化物微粒子層(分散剤あり)、
22…金属層、23…金属酸化物微粒子層(分散剤なし)、
24…金属と金属酸化物微粒子とが入り混じった層、25…機能性金属酸化物層、
101…化学量論的組成である酸素飽和型ITO微粒子が、In−Sn合金層にて被覆された構造を有するITO微粒子、
102…化学量論的組成である酸素飽和型ITO微粒子、103…In−Sn合金層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特開2000−327310号公報(請求項8−15、第11,12,16及び17頁)
【特許文献2】特開2006−49107号公報(請求項1及び5、第4−9頁、図3)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物からなる微粒子(以下、金属酸化物微粒子と略称する。)と、この金属酸 化物を構成している金属元素の金属からなる微粒子(以下、金属微粒子と略称する。) とを含有する塗液を調製する工程と、
前記塗液を支持体に被着させる工程と、
前記塗液の層から溶媒を蒸発させ、前記金属酸化物微粒子と前記金属微粒子とを含有 する微粒子層を形成する工程と、
前記微粒子層に酸化性雰囲気中においてプラズマを照射することによって、前記金属 酸化物微粒子間を直接、及び/又は、少なくとも一部が酸化された前記金属微粒子を介 して連結し、機能性金属酸化物層を形成する工程と
を有する、機能性金属酸化物層の製造方法。
【請求項2】
前記金属酸化物微粒子として導電性を有する金属酸化物微粒子を用い、前記機能性金属酸化物層として導電層を形成する、請求項1に記載した機能性金属酸化物層の製造方法。
【請求項3】
前記導電層の導電性を、前記金属酸化物微粒子と前記金属微粒子との質量比によって制御する、請求項2に記載した機能性金属酸化物層の製造方法。
【請求項4】
前記金属酸化物微粒子と前記金属微粒子との質量比が100:1〜100:100である、請求項3に記載した機能性金属酸化物層の製造方法。
【請求項5】
前記金属酸化物微粒子及び前記金属微粒子として、それぞれ、酸化亜鉛微粒子及び亜鉛微粒子を用い、前記機能性金属酸化物層として透明導電層を形成する、請求項2に記載した機能性金属酸化物層の製造方法。
【請求項6】
前記金属酸化物微粒子と前記金属微粒子と高分子樹脂とを含有し、前記高分子樹脂の ガラス転位点より低い沸点をもつ有機溶媒を前記溶媒とする前記塗液を形成し、
前記高分子樹脂を含有する前記微粒子層から、前記プラズマの照射によって前記高分 子樹脂を除去することにより、前記機能性金属酸化物層に空孔を形成する
請求項1に記載した機能性金属酸化物層の製造方法。
【請求項7】
前記高分子樹脂として、数平均分子量が10000以下の高分子樹脂を用いる、請求項6に記載した機能性金属酸化物層の製造方法。
【請求項8】
金属酸化物からなる微粒子(以下、金属酸化物微粒子と略称する。)と、この金属酸化物を構成している金属元素の金属からなる微粒子(以下、金属微粒子と略称する。)とを含有する微粒子層が、酸化性雰囲気中においてプラズマ照射されてなり、前記金属酸化物微粒子間が直接、及び/又は、少なくとも一部が酸化された前記金属微粒子を介して連結されている、機能性金属酸化物層。
【請求項9】
前記金属酸化物微粒子が導電性を有し、導電層である、請求項8に記載した機能性金属酸化物層。
【請求項10】
前記金属酸化物微粒子及び前記金属微粒子が、それぞれ、酸化亜鉛微粒子及び亜鉛微粒子であり、透明導電層である、請求項9に記載した機能性金属酸化物層。
【請求項11】
前記酸化亜鉛微粒子がアルミニウム及び/又はガリウムを含有する、請求項10に記載した機能性金属酸化物層。
【請求項12】
有機樹脂からなる支持体に設けられている、請求項8に記載した機能性金属酸化物層。
【請求項13】
金属酸化物からなる微粒子(以下、金属酸化物微粒子と略称する。)を含有する塗液 を調製する工程と、
前記塗液を支持体に被着させる工程と、
前記塗液の層から溶媒を蒸発させ、前記金属酸化物微粒子を含有する金属酸化物微粒 子層を形成する工程と、
前記金属酸化物微粒子層に接して、前記金属酸化物を構成している金属元素の金属か らなる微粒子又は薄膜の層(以下、金属層と略称する。)を積層して形成する工程と、
前記金属層及び前記金属酸化物微粒子層に酸化性雰囲気中においてプラズマを照射す ることによって、前記金属酸化物微粒子間を直接、及び/又は、少なくとも一部が酸化 された前記金属層を介して連結し、機能性金属酸化物層を形成する工程と
を有する、機能性金属酸化物層の製造方法。
【請求項14】
前記金属層が前記金属酸化物微粒子層の表面の一部分を被覆し、他の部分では前記金属酸化物微粒子層が露出するように、前記金属層を形成する、請求項13に記載した機能性金属酸化物層の製造方法。
【請求項15】
前記金属層を、前記金属酸化物微粒子層の表面に一様に分布した多数の島状に形成する、請求項14に記載した機能性金属酸化物層の製造方法。
【請求項16】
前記金属層を極薄の薄膜状に形成する、請求項13に記載した機能性金属酸化物層の製造方法。
【請求項17】
前記金属酸化物微粒子として導電性を有する金属酸化物微粒子を用い、前記機能性金属酸化物層として導電層を形成する、請求項13に記載した機能性金属酸化物層の製造方法。
【請求項18】
前記導電層の導電性を、前記金属酸化物微粒子と前記金属層との質量比によって制御する、請求項17に記載した機能性金属酸化物層の製造方法。
【請求項19】
前記金属酸化物微粒子及び前記金属として、それぞれ、酸化亜鉛微粒子及び亜鉛を用いて、前記機能性金属酸化物層として透明導電層を形成する、請求項17に記載した機能性金属酸化物層の製造方法。
【請求項20】
前記金属酸化物微粒子と高分子樹脂とを含有し、前記高分子樹脂のガラス転位点より 低い沸点をもつ有機溶媒を前記溶媒とする前記塗液を形成し、
前記高分子樹脂を含有する前記金属酸化物微粒子層から、前記プラズマの照射によっ て前記高分子樹脂を除去することにより、前記機能性金属酸化物層に空孔を形成する、
請求項13に記載した機能性金属酸化物層の製造方法。
【請求項21】
前記高分子樹脂として、数平均分子量が10000以下の高分子樹脂を用いる、請求項20に記載した機能性金属酸化物層の製造方法。
【請求項22】
金属酸化物からなる微粒子(以下、金属酸化物微粒子と略称する。)を含有する金属酸化物微粒子層と、前記金属酸化物微粒子層に接して積層された、前記金属酸化物を構成している金属元素の金属からなる微粒子又は薄膜の層(以下、金属層と略称する。)とが、酸化性雰囲気中においてプラズマ照射されてなり、前記金属酸化物微粒子間が直接、及び/又は、少なくとも一部が酸化された前記金属層を介して連結されている、機能性金属酸化物層。
【請求項23】
前記金属酸化物微粒子が導電性を有し、導電層である、請求項22に記載した機能性金属酸化物層。
【請求項24】
前記金属酸化物微粒子及び前記金属が、それぞれ、酸化亜鉛微粒子及び亜鉛であり、透明導電層である、請求項23に記載した機能性金属酸化物層。
【請求項25】
前記酸化亜鉛微粒子がアルミニウム及び/又はガリウムを含有する、請求項24に記載した機能性金属酸化物層。
【請求項26】
有機樹脂からなる支持体に設けられている、請求項22に記載した機能性金属酸化物層。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−121810(P2011−121810A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280195(P2009−280195)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】