説明

機能性電解液添加剤及びこれを含む電気化学素子

本発明は、(a)電解質塩、(b)有機溶媒、及び(c)機能性電解液添加剤をと含有する電池用電解液、及び該電解液を含む電気化学素子を提供する。
本発明による電気化学素子は、電解液の構成成分として使用する添加剤の基本骨格構造及び極性多重側鎖によって電解液との副反応を引き起こす正極活物質の表面を効率よく制御することにより、電池の性能を低下させることなく電池の安全性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の性能を低下させることなく電池の安全性を向上することができる電解液添加剤を含有する電解液、及び該電解液を含む電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー保存技術についての関心が高まっている。電池の適用分野が携帯電話、カムコーダ、及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーへまで拡大していく中で、該電池の研究及び開発に関する努力が次第に具体化している。電気化学素子は、このような側面から最も注目されている分野であり、その中でも充放電の可能な二次電池の開発が関心の焦点となっており、近年、この種の電池の開発に当たり、容量密度及び比エネルギーを向上させるための新規な電極及び電池の設計に関する研究開発が進められている。
【0003】
現在適用されている二次電池のうち1990年代初めに開発されたリチウムイオン電池は、水溶液電解液を使用するNi−MH、Ni−Cd、硫酸−鉛電池などの従来の電池に比べて作動電圧が高く、且つエネルギー密度が遥かに大きいという長所から脚光を浴びている。しかしながら、この種のリチウムイオン電池は、有機電解液の使用による発火及び爆発などの安全性の問題が存在し、また作製工程が比較的に複雑であるという短所がある。
【0004】
電池の安全性評価及び安全性の確保は極めて重要である。最も重要な考慮事項は、電池の誤動作によりユーザに対して傷害を被らせてはいけないということであり、かかる目的から、電池の安全規格は、電池内における発火及び発煙などを厳しく規制している。よって、安全性問題を解決すべく、様々な解決方法が提示されてきている。
【0005】
電池の発熱を防止するために保護回路を取り付ける方法や、セパレータによる熱閉塞を用いた方法などが提案されているが、このうち保護回路の利用は、電池パックの小型化及び低コスト化に大きな制約を与え、セパレータによる熱閉塞機構は、発熱が急激に発生する際に有効に作用しない場合が多い。また、近年、電解液添加剤による解決方法が提示されているが、この方法では、充電の電流値や電池の内部抵抗によってジュール発熱が変わり、タイミングが一様でないという短所がある。したがって、かかる安全機構は、電池の諸性能の低下を常に伴うようになる。
【0006】
一方、リチウム二次電池の熱的不安全性は、主に正極活物質と電解液との副反応に起因する。すなわち、正極は、充電状態において非常に不安定な構造を示し、特に高温でその度合いが一層酷くなる。不安定な構造を有する充電状態の正極は、電解液と激しい発熱反応を起こしながら、構造崩壊を起こすことで酸素を放出するようになる。このような発熱反応と放出酸素によって電池内において急激な発熱が生じ、最終的には電池が爆発する状態に至るようになる。したがって、このような正極−電解液との副反応による反応熱を制御するのが電池の安全性の向上に大きく寄与する。現在これに係る研究は、主に新規な正極活物質の開発に焦点をおいており(日本特開平08−273665号、米国特許第02/07251号)、これら特許に開示されている正極活物質の場合において、従来の正極活物質に比べてある程度の発熱反応の制御は可能となるものの、電池の性能または容量低下が必然的に伴うという短所を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上記のような従来技術の問題点に鑑みて、電池の安全性を確保する上で核心である正極−電解液との副反応による反応熱を制御可能な特定の高安全性添加剤を電解液の一構成成分として取り入れた結果、電池の性能を低下させることなく電池の安全性を向上させることができるという知見を見い出して本発明を完成するに至った。
【0008】
したがって、本発明は、上記高安全性添加剤を含有する電解液、及び該電解液を含む電気化学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(a)電解質塩と、(b)有機溶媒、及び(c)下記一般式Iで示される化合物及び一般式IIで示される化合物の群から選ばれた1種以上の化合物とを含有する電池用電解液、及び該電解液を含む電気化学素子、好ましくは、リチウム二次電池を提供する。
【0010】
また、本発明は、下記一般式Iで示される化合物及び一般式IIで示される化合物の群から選ばれた1種以上の化合物が電極の表面の一部または全部に存在することを特徴とする電極、及び該電極を備える電気化学素子、好ましくは、リチウム二次電池を提供する。
【化1】

上記式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜6個の低級アルキル基であり、
は、単一結合または
【化2】

であり、
Xは、
【化3】

であり、
nとmは、それぞれ0〜1000の整数であり、p及びqは、0〜20の整数であり(但し、p、qともに0である場合は除く)、rは1〜6の整数であり、
iとjは、それぞれ1〜1000の整数であり、sは1〜20の整数である。
【0011】
本明細書及び特許請求の範囲における用語のうち低級とは、炭素数6個以下、好ましくは5個以下の原子団基または化合物のことを意味する。
【0012】
低級アルキル基は、直鎖状または分岐状低級飽和脂肪族炭化水素を意味し、その特定の例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、イソブチル、t-ブチル、及びn-ペンチル基が挙げられる。
【0013】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0014】
本発明者らは、上記一般式Iで示されるものと同じモノマー化合物、硬化型開始剤、リチウム塩、及び有機溶媒を所定の含量比にて含有するリチウムポリマー電池用固体高分子電解液を開示したことがある(大韓民国登録特許第0419864号)。ここで、上記一般式Iで示される化合物は、架橋高分子のモノマー成分として使われたことに過ぎず、最終的に生成される架橋固体薄膜電解質の3次元網状構造を通じて機械的物性の向上及びそれによる電池の電気化学的安全性を向上しようとしていた。
【0015】
これに対し、本発明では、上記化合物を、正極−電解液との副反応によって発生する反応熱を効率よく制御することで電池の安全性を向上することができる電解液添加剤として使うことを特徴とする。
【0016】
上記添加剤によれば、後述するメカニズムのような電池の安全性の向上効果を期待することができる。
【0017】
すなわち、本発明による高安全性添加剤は、上記一般式I及び2で示すように、分子中の独特な化学構造、例えば、Si及びエーテル基などを有する基本骨格構造に、両末端に反応性の高いアクリル官能基が2〜4個導入されている構造をなしている。添加剤を含有する電解液が電池中に注入されていると、かかる極性を有する多重側鎖が正極活物質の表面に存在する酸素原子を含む極性基との水素結合などにより正極活物質粒子の表面に効率よく付着されることで、繰り返される充放電サイクル後にも持続的に存在することができ、これにより正極活物質と電解液との副反応が発生し得る正極活物質の活性部位(active site)を効率よく制御し、その結果、その発熱反応、例えば電解液と正極との副反応及び正極の構造崩壊から生じる発熱量を有意に低減させることができる。したがって、電解液の燃焼が加速化し熱暴走が生じることで電池の発火及び破裂が起きることを防止し、電池の安全性向上を図ることができる。
【0018】
また、上記添加剤の高い極性及び低い粘度による、電解液中におけるリチウムイオンの解離及び移動の低下をもたらさないため、添加剤の使用による電池の性能低下を最小化することができる。
【0019】
本発明による電池用電解液は、通常の電池用電解液成分、すなわち電解質塩及び有機溶媒からなる非水電解液に、上記一般式Iで示される化合物、一般式IIで示される化合物またはこれらの混合物を添加することにより得ることができる。
【0020】
上記化合物の具体的な例としては、下記一般式IIIで示される化合物が挙げられ、このとき、nとpは、それぞれ10及び3である。しかし、上記化合物がこれに制限されるものではない。
【化4】

【0021】
上記一般式I、一般式II及び/または一般式IIIで示される化合物は、アルキレンオキシド基が側鎖として導入されたポリアルキルシロキサン高分子を基本骨格構造とし、その両末端にまたは側鎖として極性側鎖、例えばアクリル官能基が導入された構造となっており、このような構造により、上述した安全性の向上効果を奏することができる。特に、分子中に含まれた側鎖の強い極性基は、電極表面の活性部位をマスキングすることで、電解液と正極との副反応及び正極の構造崩壊から生じる発熱を低減させる。さらには、低分子量のポリアルキレンオキシドや、その他、当業界に知られた伝導度を向上することができる極性多重側鎖などの導入により、イオン伝導度の向上といった優れた化学的物性を付与することができる。
【0022】
上述した一般式I及び/または一般式IIで示される化合物の他、上記一般式I及び/または一般式IIで示される化合物に、当業界に知られた伝導度を向上するための官能基、例えば極性基を追加的に含むとか置換された化合物も本発明の範疇に属する。
【0023】
上記ら化合物は、当業界に知られた通常の方法にて調製することができ、一例として、本発明者らが出願済の大韓民国特許登録第0419864号に開示された方法によって合成可能である。
【0024】
上述した高安全性添加剤の含量は、特に制限されないが、電解液100重量%に対して0.01〜95重量%の範囲で使用することが好ましい。添加剤の含量が0.01重量%未満の場合は、正極の表面における反応制御が不十分となり、所望の発熱量制御効果が期待できず、95重量%を超える場合は、電解液の粘度の上昇によって電解液を注液し難くなるだけでなく、電解液の粘度上昇及びイオン伝導度の低減などによって電池の性能低下をもたらし得る。
【0025】
本発明による高安全性添加剤が添加されてよい電解液は、Aのような構造の塩であり、Aは、Li、Na、K、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれたアルカリ金属陽イオンを表し、Bは、PF、BF、Cl、Br、I、ClO、AsF、CHCO、CFSO、N(CFSO、C(CFSO、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれた陰イオを表し、上記塩は、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ−ブチロラクトン、またはこれらの混合物からなる群から選ばれた有機溶媒に溶解または解離される。しかし、本発明において使用してよい電解液は、上記ら例に限定されるものではない。
【0026】
また、本発明は、上記一般式Iで示される化合物及び一般式IIで示される化合物の群から選ばれた1種以上の化合物が電極の表面の一部または全部に存在することを特徴とする電極を提供する。
【0027】
上記電極は、正極及び/または負極であればよく、特に正極活物質と電解液との副反応の発生及び正極の構造崩壊を効率よく制御するために正極であることが好ましい。しかし、それに制限されることではない。
【0028】
本発明による上記化合物が電極の表面に存在する電極は、上述した電解液を使って充放電サイクルを繰り返し行うと、電解液中の上記化合物が可逆的リチウムイオンとともに電極活物質の表面に自然発生的に形成されることにより得ることができ、または上記化合物を電極活物質の表面にコーティングすることにより得ることができ、または電極を形成するための材料として化合物を使用することにより得ることができる。なお、上記電極は、予め作製しておいた電極の表面に化合物をコーティングすることにより得ることもできる。
【0029】
上記電極では、化合物中に存在する極性側鎖が電極活物質の表面に付着された状態で存在すればよく、これにより電極活物質と電解液との副反応の発生を抑え、上述した安全性の向上効果を奏することができる。特に電極活物質の表面に付着された上記化合物中の極性側鎖は、相互水素結合などのような化学結合を形成することで電極活物質の表面の一部または全部に一種の保護膜を形成することができる。よって、上記化合物は、充放電サイクルが繰り返されてもダメージを受けることなく電池内において安定して存在することができる。
【0030】
このように、上記一般式I及び/または一般式IIで示される化合物が電極に導入されると、電極活物質、例えば炭素材、転移金属及び転移金属酸化物を安定化させることで、充放電サイクルの繰り返し時に電極活物質から転移金属の一部が溶出することを抑えることができるのみならず、電池への外部からの物理的衝撃により電解液が電極の表面と直接的に反応することで生じる発熱反応を効率よく制御し、電極活物質の構造崩壊を防止することにより電池内における温度上昇による発火及び破裂現象を抑えることができる。
【0031】
本発明による電極は、当業界に知られた通常の方法にて電極活物質を電極の電流集電体に付着した状態で作製することができ、その一実施例を挙げると、正極活物質または負極活物質を含む電極スラリーを電流集電体上に塗布し乾燥して作製する。このとき、選択的に導電剤及び/またはバインダーを少量添加することができる。
【0032】
上記電極活物質中の正極活物質の非制限的な例としては、従来の電気化学素子の正極に使用していた通常の正極活物質を使用すればよく、特定の非制限的な例としては、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物、またはこれらの混合物からなる複合酸化物などのようなリチウム吸着物質を使用すればよい。負極活物質の非制限的な例としては、従来の電気化学素子の負極に使用していた通常の負極活物質を使用すればよく、特定の非制限的な例としては、リチウム金属またはリチウム合金、炭素、石油コークス、活性炭、グラファイト、金属酸化物,またはその他の炭素類などのようなリチウム吸着物質を使用すればよい。正極電流集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの混合物からなる箔を含み、負極電流集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケル、銅合金、またはこれらの混合物からなる箔を含む。
【0033】
本発明の他の実施の形態として、正極と、負極と、セパレータ、及び電解液を含む電気化学素子において、上記電解液が、上記化合物が添加された電解液であり、及び/または正極と負極の何れか一方または両方が、上記化合物が含まれた電極であることを特徴とする。
【0034】
上記電気化学素子は、電気化学反応をする全ての素子を含み、具体的に例を挙げると、あらゆる種類の一次、二次電池、燃料電池、太陽電池またはキャパシタなどがある。特に、リチウム二次電池が好ましく、より好ましくは、リチウムイオン二次電池である。
【0035】
本発明による高安全性添加剤が添加された電解液を含む電気化学素子は、当業界に知られた通常の方法にて作製すればよく、その一実施の形態を挙げると、正極と負極とでセパレータを挟んで組み立てた後、上記添加剤が添加された電池用電解液を注入することで作製すればよい。その他、上記化合物が導入された電極を単独で使用してもよく、または上記高安全性添加剤が含有された電解液との組み合わせにて使用してもよい。
【0036】
セパレータとしては、特に制限されないが、当業界において通常に使用するポリオレフィン系セパレータを使用すればよい。
【0037】
本発明における電解液の注入は、最終製品の作製工程及び要求物性に応じて電気化学素子の作製工程中の適切な段階で行えばよい。すなわち、電気化学素子の組立の前または電気化学素子の組み立ての最終段階などで行えばよい。
【0038】
上記のようにして作製された電気化学素子は、上述したメカニズムにより向上した安全性を示し、このとき、正極の高安全性添加剤が導入された電解液に対する発熱量は、上記高安全性添加剤が導入されていない電解液の発熱量に比べて0.01J/g以上小さくなることが好ましい。
【0039】
また、正極の電解液に対する発熱量が最大になる温度は、高安全性添加剤が導入されていない正極の電解液に対する発熱量が最大になる温度に比べて0.01℃以上高いことが好ましい。
【発明の効果】
【0040】
本発明は、正極と電解液との反応を制御することができる高安全性添加剤を電解液に導入することによって、電池の性能を低下させることなく電池の安全性を有意に向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がそれら実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1.添加剤が導入された電解液及びこれを含むリチウム二次電池の作製
(正極の作製)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)94重量%、導電剤としてカーボンブラック3重量%、結合剤としてPVDF3重量%を溶剤であるN−メチル−2ピロリドン(NMP)に添加して正極混合物スラリーを調製し、該正極混合物スラリーを厚さ20μmの正極集電体であるアルミニウム(Al)箔に塗布し、乾燥を実施して正極を作製した。その後、該正極をロールプレスにかけた。
【0043】
(負極の作製)
負極活物質として炭素粉体96重量%、結合剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)3重量%、導電剤としてカーボンブラック1重量%を溶剤であるN−メチル−2ピロリドン(NMP)に添加して負極混合物スラリーを調製し、該負極混合物スラリーを厚さ10μmの負極集電体である銅(Cu)箔に塗布し、乾燥を実施して負極を作製した。その後、該負極をロールプレスにかけた。
【0044】
(電解液の調製)
電解液(エチレンカーボネート(EC)/プロピレンカーボネート(PC)/ジエチルカーボネート(DEC)=30/20/50重量%、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)1モル)に下記一般式IIIで示されるTA10化合物を5重量%混合した。
【化5】

【0045】
(電池の作製)
上記正極、負極、及びポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン(PP/PE/PP)の3層からなるセパレータを積層方式で組み立てて電池を作製し、該電池にTA10が導入された電解液を注入して最終的にリチウム二次電池を作製した。
【0046】
比較例1
電解液添加剤が導入されていない通常の電解液を使用したことを除いては、上記実施例1と同法にてリチウム二次電池を作製した。
【0047】
実験例1.リチウム二次電池の安全性評価
本発明による高安全性添加剤が導入された電解液を含むリチウム二次電池の安全性を評価するために、下記のような実験を実施した。
【0048】
試料としては、実施例1で作製したリチウム二次電池及び対照群として通常の電解液を使用した比較例1の電池を使用した。各電池を4.2Vまで充電させた後、該電池を分解して正極のみを取り外し、示差走査熱量分析装置(DSC:Differential Scanning Calorimetry)を利用して400℃までの熱的安全性を評価した。
【0049】
実験の結果、本発明による添加剤を導入した実施例1のリチウム二次電池は、従来の通常の電解液を使用した比較例1の電池に比べて発熱量が大きく減少したことが分かった(図1参照)。これは、本発明による添加剤を電解液に導入すると、電池の熱的安全性が向上することを意味する。
【0050】
実験例2.リチウム二次電池の性能評価
本発明による高安全性添加剤が導入された電解液を含むリチウム二次電池のC-rate特性を評価するために、下記のような実験を実施した。
【0051】
試料としては、実施例1で作製したリチウム二次電池及び対照群として通常の電解液を使用した比較例1の電池を使用した。電池容量が760mAhである各電池を、0.2C、0.5C、1C、2Cの放電速度にてサイクリングをし、これらの放電容量をC-rate特性別に示した。
【0052】
実験の結果、本発明による高安全性添加剤が導入された実施例1のリチウム二次電池は、従来の通常の電解液を使用した比較例1の電池に比べて2C放電でのみ僅かに低下した性能をみせ、1Cの放電速度まで等しい高率放電(C-rate)特性を示した(図2参照)。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1及び比較例1による各電池における正極と電解液との反応による発熱量をそれぞれ示すグラフである。
【図2】実施例1及び比較例1による各電池における充放電容量をそれぞれ示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)電解質塩と、
(b)有機溶媒と、及び
(c)下記一般式(I)で示される化合物及び一般式(II)で示される化合物の群から選ばれた1種以上の化合物とを含んでなることを特徴とする、電池用電解液。
【化1】

(上記式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜6個の低級アルキル基であり、
は、単一結合または
【化2】

であり、
Xは、
【化3】

であり、
nとmは、それぞれ0〜1000の整数であり、
p及びqは0〜20の整数であるが、p、qともに0である場合は除く、
rは1〜6の整数であり、
iとjは、それぞれ1〜1000の整数であり、
sは1〜20の整数である。)
【請求項2】
前記化合物が、下記一般式(III)で示される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の電解液。
【化4】

(前記式中、nは10であり、pは3である。)
【請求項3】
前記化合物が、該化合物中に存在する極性側鎖が正極活物質粒子の表面に付着して正極活物質と電解液との副反応の発生または正極の構造崩壊を制御することにより電池の発熱量を低減させることを特徴とする、請求項1に記載の電解液。
【請求項4】
前記化合物の含量が、電解液100重量%に対して、0.01〜95重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の電解液。
【請求項5】
前記電解質塩が、Aのような構造の塩であり、Aは、アルキル金属陽イオンまたはその組み合わせであり、Bは、PF、BF、Cl、Br、I、ClO、AsF、CHCO、CFSO、N(CFSO、C(CFSO、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれた陰イオンであり、
有機溶媒が、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、及びγ−ブチロラクトンからなる群から選ばれた1種以上の溶媒であることを特徴とする、請求項1に記載の電解液。
【請求項6】
下記一般式(I)で示される化合物及び一般式(II)で示される化合物の群から選ばれた1種以上の化合物が電極の表面の一部または全部に存在することを特徴とする、電極。
【化5】

(上記式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜6個の低級アルキル基であり、
は、単一結合または
【化6】

であり、
Xは、
【化7】

であり、
nとmは、それぞれ0〜1000の整数であり、
p及びqは、0〜20の整数であるが、p、qともに0である場合は除く、
rは1〜6の整数であり、
iとjは、それぞれ1〜1000の整数であり、
sは1〜20の整数である。)
【請求項7】
前記化合物が、該化合物中に存在する極性側鎖により電極活物質の表面に付着されていることを特徴とする、請求項6に記載の電極。
【請求項8】
電極活物質の表面上に付着された化合物中に含まれた極性側鎖同士の化学結合により電極活物質の表面の一部または全部に保護膜を有することを特徴とする、請求項6に記載の電極。
【請求項9】
正極と、負極と、セパレータ、及び電解液とを含んでなり、
前記電解液が、請求項1〜5の何れかに記載の電解液であることを特徴とする、電気化学素子。
【請求項10】
正極と、負極と、セパレータ、及び電解液とを含んでなり、
前記正極と負極の何れか一方または両方が、請求項6〜8の何れかに記載の電極であることを特徴とする、電気化学素子。
【請求項11】
前記電気化学素子がリチウム二次電池であることを特徴とする、請求項9に記載の電気化学素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−538448(P2008−538448A)
【公表日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507547(P2008−507547)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【国際出願番号】PCT/KR2006/001456
【国際公開番号】WO2006/112663
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(502202007)エルジー・ケム・リミテッド (224)
【出願人】(591004043)コリア リサーチ インスティチュート オブ ケミカル テクノロジー (11)
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL TECHNOLOGY
【Fターム(参考)】