機能膜形成方法及び電気光学素子の製造方法
【課題】基板上に機能膜を形成することにより製造される素子の製造において、機能性インクを基板上に吐出配置し、減圧乾燥を施して機能性インクから機能膜を形成する際に、機能膜の膜厚形状を均一にすることのできる機能膜形成方法を提供する。
【解決手段】有機EL素子10の製造において、有機発光層形成用インクから有機発光層22を形成する際に、減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施す基板12上に吐出配置する有機発光層形成用インクに含有される溶媒の量と当該基板12上に吐出配置する塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、基板12上に吐出配置する塗工液の量を設定する。
【解決手段】有機EL素子10の製造において、有機発光層形成用インクから有機発光層22を形成する際に、減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施す基板12上に吐出配置する有機発光層形成用インクに含有される溶媒の量と当該基板12上に吐出配置する塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、基板12上に吐出配置する塗工液の量を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に機能膜を形成することにより製造される素子の機能膜の形成方法に関する。本発明は更に、基板上に形成された機能膜を有する電気光学素子の製造方法に関する。ここでいう素子ないし電気光学素子は、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子などであり、ただしそれのみに限定されない。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット法を用いた成膜技術が注目されている。インクジェット法は、用いるヘッドの解像度に応じて微少なインクを所望の位置に吐出することが可能であることから、微細なパターンの形成や、所望の膜厚を備えた薄膜の形成が容易であるという特長を有する。この特長を利用し、インクジェット法は微細な塗り分けが必要な有機EL素子やカラーフィルタの製造などに利用されている。また、ペースト状の機能性材料を微細な単数または複数の吐出口を有するノズルから連続的に吐出して基板上に所定のパターンを形成するノズル法が提案されている。
【0003】
これらインクジェット法やノズル法を有機EL素子の有機発光膜の形成に応用する場合には、所要量のEL材料を所定の溶媒に分散または溶解させてインク化した機能性インクを用いることにより、蒸着法やスパッタ法に比べてEL材料の利用効率を向上させることができるという利点が得られる。
【0004】
インクジェット法やノズル法を用いて、表示素子の基板上の画素を形成すべき位置に機能性インクを吐出設置した後に、その基板を乾燥させて当該画素の機能膜を形成する技術が知られている。その乾燥工程において、基板上の画素の位置によって乾燥スピードが異なることにより、画素間で機能膜の膜厚形状にばらつきが生じることも知られている。例えば、表示素子の画素アレイ形成領域(有効領域)の外側には機能性インクが吐出設置されず、そのため機能性インクに含有される溶媒が存在しない場合には、乾燥工程の実行中に有効領域内に溶媒雰囲気の濃度勾配が生じる。そのため、有効領域の外周に近い部分に位置する画素では、乾燥スピードが画素の位置によって異なったものとなりやすく、膜厚形状がばらつきやすい。一方、有効領域の内側部分に位置する画素どうしは、乾燥スピードが一定のため膜厚形状が均一になりやすい。
【0005】
有機EL素子では、個々の画素の有機発光膜の膜厚形状が、当該画素の発光領域を決定する一要因になる。即ち、膜厚が薄い箇所は電気抵抗が低いため電流が集中して流れ強く発光する。また寿命の点では、大きな電流が流れる部分ほど劣化が早くなる。そのため、画素の膜厚形状は凸形状や凹形状ではなく、平坦な形状が良いとされている。画素の膜厚形状は、乾燥工程における機能性インクの乾燥スピードの影響を受けることが知られている。乾燥スピードが速いと凸形状になり、遅いと凹形状になる。平坦な形状はその中間の乾燥スピードで得られる。
【0006】
そこで吐出領域の内外の乾燥スピードを均一にする為に、画素と画素とを区画している区画壁の頂部に凹部を形成し、その凹部に配置した機能液(機能性インク)を乾燥させる際にその機能液から蒸散する溶媒の蒸気を利用して、画素の機能膜の膜厚形状を平坦化するようにした電気光学装置の製造方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−276479
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この特許文献1の方法を用いれば、有機EL素子の有効領域の内外の機能性インクの乾燥スピードを均一にし、その乾燥スピードを調整することで、有効領域全面で膜厚形状を平坦にすることができが、しかしながら、表示素子の基板のサイズ、有効領域のサイズが変更になると、その度に乾燥スピードを調整しなければならないという面倒が生じる。
【0009】
本発明の目的は、基板上に機能膜を形成することにより製造される例えば有機EL素子などの素子の製造において、機能性インクを基板上に吐出配置し、減圧乾燥を施して機能性インクから機能膜を形成する際に、素子の基板サイズ、有効領域サイズに関係なく、機能性インクの乾燥スピードを均一にすることができ、もって、素子の有効領域における機能膜の膜厚形状を均一にすることのできる、機能膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、基板上に機能膜を形成することにより製造される素子の機能膜の形成方法であって、素子の機能を提供する領域である基板上の有効領域に溶媒を含有する機能性インクを吐出配置する工程と、素子の機能を提供しない領域である基板上の無効領域に溶媒を含有する塗工液を吐出配置する工程と、前記機能性インク及び前記塗工液を吐出配置した基板を減圧乾燥機に搬入し該減圧乾燥機内において減圧乾燥を施して前記機能性インクから機能膜を形成する工程とを含んで成る機能膜形成方法において、前記減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施す基板上に吐出配置する前記機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上に吐出配置する前記塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、当該基板上に吐出配置する前記塗工液の量を設定することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、上記方法において、前記機能性インク及び前記塗工液は吐出ノズルヘッドまたはインクジェットヘッドを介して基板上へ吐出配置し、その際に、前記吐出ノズルヘッドまたは前記インクジェットヘッドに対して基板の有効領域及び無効領域を相対的に複数回走査移動することで所要量の前記機能性インク及び前記塗工液を吐出配置することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、上記方法において、基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクを基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液として用いるか、または、基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクに含有されている溶剤を基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液として用いることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、上記方法において、前記減圧乾燥機内において一度にただ1枚の基板に減圧乾燥を施し、当該基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、当該基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液の量を設定することを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、上記方法において、前記減圧乾燥機内において一度に複数枚の基板に減圧乾燥を施し、それら複数枚の基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクに含有される溶媒の量とそれら複数枚の基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、それら複数枚の基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液の量を設定することを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、上記方法において、前記減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施す前記複数枚の基板のうちの少なくとも1枚の基板を、有効領域を有さず無効領域だけを有するダミー基板とすることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、上記方法において、基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクに含有される溶媒の量に応じて基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液の量を調節することを特徴とする。
【0017】
また、請求項8に記載の発明は、基板上に形成された機能膜を有する電気光学素子の製造方法であって、上記機能膜形成方法を用いて前記機能膜を形成することを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の発明は、上記製造方法において、前記電気光学素子は有機エレクトロルミネッセンス素子であり、前記機能膜は有機エレクトロルミネッセンス発光膜であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板上に機能膜を形成することにより製造される例えば有機EL素子などの素子の製造において、機能性インクを基板上に吐出配置し、その基板に減圧乾燥を施して機能性インクから機能膜を形成する際に、素子の基板サイズ、有効領域サイズに関係なく、機能性インクの乾燥スピードを均一にし、素子の有効領域における機能膜の膜厚と形状を均一とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】有機EL素子の模式的断面図である。
【図2】インクジェット法を用いて本発明を実施する際に使用されるインクジェット装置の具体例を示した全体構成図である。
【図3】図2のインクジェット装置のインクジェットヘッドの模式図である。
【図4】基板の各領域に関する概略図である。
【図5】基板の各領域に関する概略図である。
【図6】本発明を実施する際に使用される減圧乾燥機の具体例を示した概略図である。
【図7】減圧乾燥工程における乾燥スピードと機能膜の形状とを示した模式図である。
【図8】減圧乾燥工程における減圧開始からの経過時間と減圧乾燥機のチャンバー内の圧力とを示したグラフである。
【図9】ノズル法を用いて本発明を実施する際に使用される吐出ノズル装置の具体例を示した全体構成図である。
【図10】図9の吐出ノズル装置の吐出ノズルヘッドの断面模式図である。
【図11】減圧乾燥機に搬入した基板の具体例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。尚、以下の説明では、有機EL素子の基板を製造する場合に即して本発明の実施の形態を説明するが、本発明は対象を有機EL素子に限定するものではなく、その他の表示ディスプレイの表示画面を構成する電気光学素子にも好適に適用し得るものであり、総括的に述べるならば、本発明は、基板上に機能膜を形成することにより製造される素子の機能膜の形成方法と、基板上に形成された機能膜を有する電気光学素子の製造方法とに関するものである。そのような電気光学素子としては、例えばカラーフィルタ、回路基板、薄膜トランジスタ、マイクロレンズ、バイオチップ等があり、またそれらのみに限定されない。
【0022】
以下の説明では、有機EL素子の正孔輸送層と電子ブロック層と有機発光層とを総称して機能層と呼び、それら機能層3層をインクジェット法またはノズル法を用いて形成する場合について説明する。また、機能膜とは、機能層を構成する薄膜の意であるが、両者は実体上同一物であるため、本願においては「機能層」なる用語と「機能膜」なる用語とを同義的に使用している。また、インクジェット法またはノズル法による機能層の形成方法の詳細については後述することとし、まずは、有機EL素子の全体構成とその製造方法の概要とについて、図1の断面図を参照して説明する。
【0023】
図1に示すように、有機EL素子10は基板12上に形成される。基板12としては透光性基板が好適に用いられ、例えば、ガラス基板やプラスチック製のフィルムまたはシートなどが用いられる。プラスチック製のフィルムを用いると、巻取りにより高分子EL素子の製造が可能となり、安価にディスプレイパネルを提供できる。プラスチック製のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート等を用いることができる。また、これらのフィルムには、水蒸気バリア性、酸素バリア性を示す酸化ケイ素といった金属酸化物、窒化ケイ素といった酸化窒化物やポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物からなるバリア層を必要に応じて設けることが好ましい。
【0024】
透光性基板12の上には陽極としてパターニングした画素電極14を形成する。画素電極14の材料としては、ITO(インジウム錫複合酸化物)、IZO(インジウム亜鉛複合酸化物)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アルミニウム複合酸化物等の透明電極材料等が使用できる。なお、低抵抗であること、耐溶媒性があること、透明性があることなどからITOを用いることが好ましい。ITOなどの薄膜をスパッタ法により透光性基板上に形成したならば、その薄膜をフォトリソグラフィ法によりパターニングしてライン状の画素電極14を形成する。
【0025】
ライン状の画素電極14を形成後、隣り合う画素電極14の間に感光性材料を用いてフォトリソグラフィ法により隔壁16を形成する。隔壁16を形成する感光性材料としてはポジ型レジスト、ネガ型レジストのどちらも使用可能であるが、絶縁性を備えている必要がある。隔壁16が十分な絶縁性をもたない場合には、隔壁16を通して隣り合う画素電極に電流が流れてしまい表示不良が発生するおそれがある。具体的には、その感光性材料として、ポリイミド系、アクリル樹脂系、ノボラック樹脂系、フルオレン系の様々な感光性材料が使用可能であり、またそれらのみに限定されない。また、その感光性材料に、有機EL素子の表示品位を上げる目的で、光遮光性材料を含有させるのもよい。
【0026】
続いて、隔壁16で囲まれた個々の領域(個々の画素領域)に、正孔輸送層18、電子ブロック層20、及び有機発光層22を順次積層して形成する。それら機能層はインクジェット法により形成することもでき、ノズル法により形成することもできる。それら機能層をインクジェット法を用いて形成する場合には、隔壁16を形成する際に隔壁16の形状をマトリクス状としておき、ノズル法を用いて形成する場合には、隔壁16を形成する際に隔壁16の形状をストライプ状としておく。いずれの場合にも、隔壁16の高さは0.5〜5.0μmの範囲内とすることが好ましい。隣り合う画素電極14の間に設ける隔壁16は、画素電極14上に吐出配置する機能性インクの広がりを抑え、また、透明導電膜24の端部からのショート発生を防止する。隔壁16が低すぎるとショートの防止効果が得られないことがあり注意が必要である。
【0027】
隔壁16の形成後、まず正孔輸送層18を形成する。インクジェット法またはノズル法を用いてこの正孔輸送層18を形成するには、正孔輸送材料を有機溶媒に溶解または分散させて調製した機能性インクである正孔輸送層形成用インクを使用する。この正孔輸送層形成用インクに用いる有機溶媒としては、インクジェットヘッドまたはインク吐出ヘッドへのイオンアタックが少ないものを選択するのがよい。また、形成する正孔輸送層18の体積低効率は、発光効率の点から、1×106Ω・cm以下とすることが好ましい。
【0028】
正孔輸送層形成用インクの溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、テトラクロロエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルフォルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルコキシアルコール等の極性溶媒などを用いることができる。
【0029】
正孔輸送層18を形成するには、正孔輸送層形成用インクを基板1上の画素領域へ吐出配置し、そして、その吐出配置した正孔用インクに減圧乾燥を施す。これら工程の詳細については後述する。
【0030】
正孔輸送層18の形成後、続いて電子ブロック層20を形成する。電子ブロック層20は、正孔輸送層18から有機発光層22へ注入された電子がそのまま陰極へ通過することのないように、電子をブロックするための層であり、電子ブロック性物質で構成される。インクジェット法またはノズル法により電子ブロック層20を形成するには、電子ブロック性物質を溶媒に溶解または分散させて調製した機能性インクである電子ブロック層形成用インクを用いる。
【0031】
電子ブロック性物質としては、例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(以下PVKともいう)、ポリ(パラ−フェニレンビニレン)、カルバゾールビフェニル(以下CBPともいう)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)―1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(以下NPDともいう)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(以下TPDともいう)、4,4’−ビス(10−フェノチアジニル)ビフェニルや、2,4,6−トリフェニル−1,3,5−トリアゾール、ポリフルオレン誘導体、トリフェニルアミンとフルオレンの共重合体などを用いることができる。
【0032】
電子ブロック層20の形成後、続いて有機発光層22を形成する。有機発光層22は、電流を通すことにより発光する層であり、有機発光材料で構成される。インクジェット法またはノズル法により有機発光層22を形成するには、有機発光材料を溶媒に溶解または分散させて調製した機能性インクである有機発光層形成用インクを用いる。
【0033】
有機発光材料としては、例えば、クマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’―ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系等の発光性色素をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に分散させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系やポリフルオレン系の高分子材料などを用いることができる。
【0034】
電子ブロック層形成用インク及び有機発光層形成用インクの溶媒としては、例えば、シメン、テトラリン、クメン、デカリン、ジュレン、シクロヘキシルベンゼン、ジヘキシルベンゼン、テトラメチルベンゼン、及びジブチルベンゼンなどを用いることができる。また、使用する溶媒は、沸点が220℃以上、室温での蒸気圧が0.10〜10mmHgのものとすれば更に好ましい。
【0035】
また、夫々の機能層18、20、22を形成するための夫々の機能性インクは、粘度が3〜20cpsの範囲内にあり、表面張力が25〜35mN/mの範囲内にあるものとすることが好ましい。上記溶媒を用いることで、吐出に適した粘度に調整できるため、それら機能層18、20、22の形成が容易となる。上記溶媒によれば、材料の溶解度が大きいため、機能性インク作成後の内容物の析出を防ぐことができる。また、インクジェット法またはノズル法を用いた機能層形成において、溶媒の揮発、或いは内容物の析出による吐出時の目詰まりや飛行曲がりを防ぎ、安定した吐出を実現するためには、機能性材料の溶解度が大きく、高沸点ないし低蒸気圧の溶媒を用いることが望ましい。
【0036】
有機発光層22の形成後、続いて陰極層24を画素電極のラインパターンと直交するラインパターンで形成する。陰極層24の材料としては、有機発光層の発光特性に応じたものを使用すればよく、例えば、リチウム、マグネシウム、バリウム、イッテルビウム、アルミニウムなどの金属単体やこれらと金、銀などの安定な金属との合金などを用いることができる。また、インジウム、亜鉛、錫などの導電性酸化物を用いることもできる。陰極層24の形成方法としてはマスクを用いた真空蒸着法による形成方法が挙げられる。
【0037】
最後に、以上に説明した有機EL素子の様々な構成体を、外部の酸素や水分から保護するためにガラスキャップ26と接着剤28を用いて密閉封止することで、有機EL素子である有機ELディスプレイパネルが得られる。なお、透光性基板1が可撓性を有するものである場合には、封止剤と可撓性フィルムを用いて封止を行うこともある。
【0038】
なお、以上に説明した有機EL素子は、陽極である画素電極と陰極層との間に、陽極層側から順に正孔輸送層18、電子ブロック層20、及び有機発光層22を積層した構成のものであるが、有機EL素子の構成はこれに限られない。例えば、陽極層と陰極層との間に、正孔輸送層及び有機発光層に加えて、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層といった機能層を必要に応じて形成した積層構造とすることもでき、それら機能層も、有機発光層22などと同様の形成方法で形成することができる。
【0039】
以上に説明した有機EL素子の機能層である正孔輸送層18、電子ブロック層20、及び有機発光層22を構成する個々の機能膜は、本発明に係る機能膜形成方法を採用することにより好適に形成することができる。ただし、本発明に係る機能膜形成方法は、これら機能層を構成する機能膜を形成することに限定されるものではなく、様々な素子の様々な機能膜を形成するために利用し得るものである。
【0040】
以下の説明では、本発明の実施の形態として、インクジェット法を用いた実施の形態とノズル法を用いた実施の形態とについて説明する。
【0041】
インクジェット法を用いた実施の形態とノズル法を用いた実施の形態とのいずれにおいても、本発明に係る機能膜形成方法は、基板上に機能膜を形成することにより製造される素子の機能膜の形成方法であって、素子の機能を提供する領域である基板上の有効領域に溶媒を含有する機能性インクを吐出配置する工程と、素子の機能を提供しない領域である基板上の無効領域に溶媒を含有する塗工液を吐出配置する工程と、前記機能性インク及び前記塗工液を吐出配置した基板を減圧乾燥機に搬入し該減圧乾燥機内において減圧乾燥を施して前記機能性インクから機能膜を形成する工程とを含む。
【0042】
まず、インクジェット法を用いた本発明の実施の形態について説明する。図2は、インクジェット法を用いて本発明を実施する際に使用されるインクジェット装置の具体例を示した全体構成図である。インクジェット装置30は、インクジェットヘッド32を複数配列したインクジェットヘッドユニット34、基板12を載置する搬送ステージ36、それにインクジェットヘッド32の機能性インク吐出動作を制御するインクジェットヘッドコントローラ38を備えている。
【0043】
図3はインクジェットヘッド32の構造を示した模式図である。同図に示したように、インクジェットヘッド32は複数のノズル40を備えている。それら複数のノズル40はその吐出動作のタイミングによって、A相、B相、C相の3つの相に編成されており、各相のノズルは一列に配置されている。この場合、各相のノズル40からは各々異なったタイミングで機能性インクが吐出され、例えば、ノズルA相、ノズルB相、ノズルC相(以下A相、B相、C相と記す)の同じ行からインクが吐出されるタイミングはA、B、Cの順でずれる。この方式(以下、シェアウェーブモードと記載)では各ノズルの間隔、例えばA相〜B相、B相〜C相の間隔を狭めて、高密度なインクジェットヘッドとすることができるため、高精細な吐出パターン形成が必要有機EL素子の製造に適している。かかる構成の公知のインクジェットヘッドとしては、例えば特開2008−238031に開示されているものなどがある。
【0044】
このシェアウェーブモードのインクジェットヘッド32を用いて基板上の所望の場所にインクを吐出配置するには、以下のようにして吐出パターン情報を形成する。まず、インクジェットヘッド32を駆動制御するインクジェットヘッドコントローラ38は、インクジェットヘッドパラメータ情報と吐出パターンとを保持している。インクジェットヘッドパラメータ情報は、インクジェットヘッド32を駆動するための情報である。吐出パターン情報は、インクジェットヘッド32の位置情報を引数として、個々のノズルからの吐出動作を記述した情報である。ノズルの吐出動作を実行させるために、インクジェットヘッドコントローラ38は、個々のノズルへ吐出パターン情報を転送し、それによって吐出動作が行われる。
【0045】
また、インクジェットヘッドコントローラ38がインクジェットヘッド32を駆動するための情報であるインクジェットヘッドパラメータ情報は、個々のインクジェットヘッド32ごとに最適の電圧値のパラメータを設定できるものとすることが好ましい。これは、全てのインクジェットヘッド32の駆動電圧を同じ値に設定した場合には、それらインクジェットヘッド32からの吐出量が個体差によりばらつくため、基板上にインクを均一に吐出することができなくなるおそれがあるからである。インクジェットヘッド32ごとに最適の電圧値のパラメータを設定できるようにすることによって、インクジェットヘッド32ごとの吐出量を制御することが可能となり、各画素における機能性インクの吐出量を調整することができる。
【0046】
インクジェットヘッドコントローラ38における、位置情報を認識または計測して出力する手段は、予め入力された基板のサイズ、隔壁パターンのピッチ、画素部のパターン等の基板のパラメータと、インクジェットヘッド及びノズルの位置情報と、吐出装置の基板の置き台の移動量等のパラメータ(以下、合わせて吐出パターン情報と記載)から、ノズルが基板上へ吐出するインクの着弾位置を算出する。別法として、吐出装置に設置したカメラによって、基板表面の画像を取得して処理し、それによってインクの着弾位置を算出するようにしてもよい。
【0047】
インクジェットヘッドコントローラ38においては更に、基板上の隔壁パターンに対するインクジェットヘッド32及びノズル40の相対位置を算出したならば、この情報を基に、インクの着弾位置が、インクを吐出設置すべき領域にあるか否かをプログラムにより処理判断する。ノズルから吐出するインクの着弾位置がその領域内にある場合にのみ、当該ノズルを有効ノズルと判断してインクの吐出を行わせ、そうではないノズルは無効ノズルと判断してインクの吐出を行わせない。
【0048】
図5は、ノズルが有効か否かの判断の具体例である。インクジェットヘッド32のノズル40のうち、画素部の直上部にあたるノズルについては有効と判断し、それ以外のノズルは無効と判断して、吐出パターン情報を生成する。
【0049】
有機EL素子では、基板上の隔壁16で囲まれ発光する各画素の領域(即ち有機EL素子の発光機能を提供する領域)が有効領域であり、基板上のそれ以外の領域(即ち有機EL素子の発光機能を提供しない領域)が無効領域である。有効領域には上記方法で機能性インクを吐出配置する。無効領域には、上記のインクジェットヘッドユニット内に搭載されている別ヘッドから溶媒を含有する塗工液を吐出配置する。この無効領域に吐出配置する塗工液としては、有効領域に吐出配置する機能性インクに含有されている溶媒そのものを、この塗工液として用いるとよい。また、無効領域における吐出パターンは、有効領域と同様の隔壁パターンが基板全面にあると想定して、有効領域と同様に作成するとよい。ただし、基板の周囲の所定幅の領域(例えば端縁部から10mmまでの範囲の領域)は、基板のハンドリングの便を考慮して溶媒を吐出配置しない領域、即ち禁止領域とするのがよい。また、無効領域の仮想パターンの画素1個あたりに吐出配置される量の塗工液に含有される溶剤量が、有効領域の実際の画素1個あたりに吐出配置される量の機能性インクに含有される溶剤量と同一であるようにするのもよい。これらについては図4及び図5を参照されたい。
【0050】
有機EL素子の基板のサイズによって、その基板上の有効領域に吐出配置する機能性インクの総量は異なるものとなり、そこに含有される溶媒の量も異なるものとなる。しかるに本発明においては、減圧乾燥機に搬入可能な最大サイズの基板に対応した機能性インクの吐出量と、その基板に良好な機能膜を形成するために必要とされる量の塗工液の吐出量とに基づいて、それら機能性インク及び塗工液に含有される総溶媒量をもって基準総溶媒量とし、そして、基板のサイズがいかなる大きさである場合にも、減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施す基板上に吐出配置された機能性インク及び塗工液に含有される総溶媒量が常にこの基準総溶媒量となるようにする。即ち、減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施す基板上に吐出配置する機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上に吐出配置する塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、当該基板上に吐出配置する塗工液の量を設定するようにする。
【0051】
ここで、基板サイズが最大サイズである場合、ないしは最大サイズとそれほどの差がない場合には、減圧乾燥機内において一度にただ1枚の基板に減圧乾燥を施すことになるため、当該基板上の有効領域に吐出配置する機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上の無効領域に吐出配置する塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、当該基板上の無効領域に吐出配置する塗工液の量を設定すればよい。
【0052】
一方、基板サイズが最大サイズと比べてかなり小さい場合には、減圧乾燥機内において一度に複数枚の基板に減圧乾燥を施すようにし、その場合、それら複数枚の基板上の有効領域に吐出配置する機能性インクに含有される溶媒の量とそれら複数枚の基板上の無効領域に吐出配置する塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、それら複数枚の基板上の無効領域に吐出配置する塗工液の量を設定すればよい。
【0053】
更にその場合に、減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施すそれら複数枚の基板のうちの少なくとも1枚の基板を、有効領域を有さず無効領域だけを有するダミー基板とするのもよく、そうすることによって基板上に吐出配置する溶媒の量の設定が容易になる。
【0054】
先に説明した機能性インキ及び塗工液の吐出動作を行わせるための所要の情報を生成して、基板上に吐出配置すべき塗工液の量を設定したならば、インクジェットヘッドコントローラ38でインクジェットヘッド32を制御しつつ、基板12を載置した搬送ステージ36を駆動し、インクジェットヘッド32に対して基板の有効領域及び無効領域を相対的に複数回走査移動することで所要量の機能性インク及び塗工液の吐出配置を行う。以上によって、インクジェット装置30を用いて基板12上に機能性インク及び塗工液を吐出配置する工程が完了する。
【0055】
続いて、基板に減圧乾燥を施す工程を実行する。この工程は、機能性インク及び塗工液を吐出配置した基板を減圧乾燥機に搬入し、減圧乾燥機内において減圧乾燥を施して、機能性インクから機能膜を形成する工程である。この減圧乾燥の工程では、有効領域の機能性インクの乾燥が進行するのと並行して、無効領域の塗工液の溶媒が気化して蒸散する。
【0056】
図6に減圧乾燥機50の概略図を示す。減圧乾燥機50のチャンバー52の内部には、基板12を載置する水平なステージ54と、それと平行で凹凸が無い天板56とが配設されている。チャンバー52には、その内部を真空にするための第1真空ポンプ58及び第2真空ポンプ60が、夫々第1バルブ62及び第2バルブ64を介して接続されている。ステージ54は温度制御可能なホットプレートとして構成されている。
【0057】
第1真空ポンプ58はロータリーポンプであり、粗引きに用いる。第2真空ポンプ60はターボ分子ポンプであり、チャンバー52内を高真空度な状態に減圧可能である。第1ポンプ58を作動させて粗引きを行った後に第2ポンプ60を作動状態にしてチャンバー52内の真空度を高めて所要の減圧状態とする。そのため、第1真空ポンプ58の作動時間及び到達圧、並びに第2真空ポンプの作動時間及び到達圧を設定可能にしてある。
【0058】
また、減圧乾燥する時のステージ54の温度を変化させることも可能としてある。ステージ54の温度は、基板12上の有効領域の機能性インクの乾燥スピード及び無効領域の塗工液の溶媒の蒸散スピードに影響を及ぼす。なお、機能膜の発光特性に影響を与えないようにステージ54の上限温度は60℃までに規制している。
【0059】
基板上の機能性インクの乾燥スピード及び塗工液の溶剤の蒸散スピードは、(1)減圧乾燥機50のチャンバー52内において一度に減圧乾燥を施す基板上に吐出配置した機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上に吐出配置する塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量(以下、チャンバー内総溶媒量という)(2)チャンバー52内の減圧条件、それに、(3)ステージ54の温度に依存する。そして、機能性インクの乾燥スピードは、その機能性インクが乾燥することで形成される各画素の機能膜の膜厚形状に影響を及ぼす。
【0060】
図7に、乾燥スピードが早い場合、遅い場合、その中間の場合に夫々形成される各画素の機能膜の膜厚形状を模式的な断面図で示した。乾燥スピードが速いと図中右側の画素のように機能膜は凸形状になり、遅いと図中左側の画素のように機能膜は凹形状になり、それらの中間の適当な乾燥スピードのときに、図中中央の画素のように機能膜は平坦形状になる。乾燥スピードそのものを測定することは技術的に困難であるため、乾燥スピードを測定するよりも、上述した(1)チャンバー内総溶媒量、(2)チャンバー52内の減圧条件、それに(3)ステージ54の温度という3つのパラメータを様々に設定して、その結果として形成された機能膜の膜厚形状を測定することで、膜厚形状が平坦形状になる条件を実験的に導出する方法を採用することが好ましい。
【0061】
減圧条件に関しては、粗引き用の第1真空ポンプ58から高真空度を達成するための第2ポンプ60へ切替えるタイミングが早いほど乾燥スピードは速くなる。例えば、チャンバー内圧力を、第1真空ポンプ58で50Paまで減圧した後に、第2真空ポンプ60で15Paまで減圧するより、第1真空ポンプ58で100Paまで減圧した後に、第2真空ポンプ60で15Paまで減圧する方が乾燥スピードは速くなる。また、ホットプレートで構成したステージ54の温度は、高温にするほど乾燥スピードは速くなる。図8に、減圧乾燥工程における減圧開始からの経過時間とチャンバー内の圧力との関係のグラフを示した。
【0062】
上記3つのパラメータのうち、減圧乾燥機のチャンバー内の減圧条件と減圧乾燥機のステージの温度とは、有機EL素子の設計仕様にかかわらず任意に設定可能である。しかるに従来の技法では、チャンバー内総溶媒量に関する任意の設定が不可能であった。それが不可能であったのは、有機EL素子を製造する際に基板に吐出配置する機能性インクの量によってチャンバー内総溶媒量が決定されていたからである。これに対して本発明によれば、基板の無効領域に吐出配置する塗工液の量を適宜設定して、チャンバー内総溶媒量を設定するようにしているため、乾燥スピードの最適調整が可能となる。また更に、画素アレイ領域の周囲に無効領域を設定すれば、画素アレイ領域の周辺部と中央部とで減圧乾燥工程における気化溶媒の濃度勾配を抑制することができるため、全ての画素において機能膜の膜厚形状を均一に、好適な形状にすることができ、ひいては発光輝度ムラの無いEL素子を製造することが可能である。
【0063】
次に、ノズル法を用いた本発明の実施の形態について説明する。図10は、ノズル法を用いて本発明を実施する際に使用される吐出ノズル装置の具体例を示した全体構成図である。吐出ノズル装置80は、機能性インクを貯留するインク供給タンク82と、吐出ノズル86(図10参照)を有する吐出ノズルヘッド84とを備えている。インク供給タンク82の中の機能性インクはインク供給チューブ88を通って吐出ノズルヘッド84へ供給される。インク供給タンク82は、タンク内を加圧することで機能性インクを吐出ノズルヘッド84へ流すことができるようにしてある。インク供給タンク82と吐出ノズルヘッド84との間に、インク流量を測定するための流量計90が装備されている。流量調整コントローラ92によって、インク供給タンク82の加圧力を制御することで、インク流量を制御することができる。また、流量計90の値を流量調整コントローラ92に転送し、その値に基づいて加圧力を制御できるようにしてある。
【0064】
吐出ノズル装置80は更に、基板12を載置する可動ステージ94を備えている。可動ステージ94は、水平直線方向であるY方向と、水平面内の回転方向であるθ方向とに可動であり、それらの方向に移動制御される。吐出ノズルヘッド84は、Y方向に直交する水平直線方向であるX方向に可動であり、その方向に移動制御される。可動ステージ94と吐出ノズルヘッド84とは、それぞれの位置情報により同期して移動制御される。それらの制御により、基板上の各画素の領域に、機能膜を形成するための機能性インクが精度良く塗工される。また、流量調整コントローラ92を、可動ステージ94と吐出ノズル64の位置情報と同期して制御することで、それらの位置により吐出量を調整することが可能である。
【0065】
図10は、吐出ノズルヘッド84の構造を示した模式図である。機能性インクは、インク供給チューブ88から円柱や直方体状のケース96に入る。ケース96はSUS等の金属材料製とすることが一般的であるが、インク耐性があればどのようなものを用いても構わない。ケース内部はマニホールドとなっており、直径5μmから20μm程度の微小な穴の空いた吐出ノズル86から基板へ機能性インクが垂直に吐出される。吐出ノズル86はポリイミド等のフィルムが一般的だが、精度良く穴をあけることができればどのようなものでも構わない。
【0066】
吐出ノズル装置80を用いて機能性インクや塗工液を基板上に吐出配置する際には、インクジェット装置を用いる場合と異なり、吐出を断続的に行うとノズル詰まりや飛行曲がりを発生し易いため、吐出は連続的に行うことが好ましい。それゆえ、基板上の機能性インクを吐出配置すべきでない部分等をマスキングしたりダミーパターンを設けたりするなどして、連続的な吐出を行えるようにするとよい。また、そのようにする場合には、有効領域に吐出配置する機能性インクをそのまま、無効領域に吐出配置する塗工液として用いるようにするとよい。
【0067】
以上に説明した点以外では、このノズル法を用いた実施の形態でも、先に説明したインクジェット法を用いた実施の形態と変わるところはなく、吐出ノズルに対して基板の有効領域及び無効領域を相対的に複数回走査移動することで所要量の機能性インク及び塗工液の吐出配置を行い、そして、基板上に機能性インク及び塗工液を吐出配置する工程が完了したならば、それに続いて、先に説明したインクジェット法を用いた実施の形態と同様の減圧乾燥工程を実行する。そして、基板上に吐出配置する塗工液の量に関しては、減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施す基板上に吐出配置する機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上に吐出配置する塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、当該基板の無効領域に吐出配置する塗工液の量を設定する。
【0068】
更に、このノズル法を用いた実施の形態でも、基板サイズが最大サイズである場合、ないしは最大サイズとそれほどの差がなく、減圧乾燥機内において一度にただ1枚の基板に減圧乾燥を施す場合には、当該基板上の有効領域に吐出配置する機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上の無効領域に吐出配置する塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、当該基板上の無効領域に吐出配置する塗工液の量を設定すればよく、一方、基板サイズが最大サイズと比べてかなり小さい場合には、減圧乾燥機内において一度に複数枚の基板に減圧乾燥を施すようにし、その場合、それら複数枚の基板上の有効領域に吐出配置する機能性インクに含有される溶媒の量とそれら複数枚の基板上の無効領域に吐出配置する塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、それら複数枚の基板上の無効領域に吐出配置する塗工液の量を設定すればよい。更にその場合に、減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施すそれら複数枚の基板のうちの少なくとも1枚の基板を、有効領域を有さず無効領域だけを有するダミー基板とするのもよく、そうすることによって基板上に吐出配置する溶媒の量の設定が容易になる。
【実施例】
【0069】
次に、本発明の実施例について説明する。以下に説明する実施例は、大小2通りの大きさのガラス基板上に夫々に有機EL素子を製造したものであり、その製造に際して、それら有機EL素子の電子ブロック層と有機発光層とを、インクジェット法を用いた本発明に係る機能膜形成方法に従って形成したものである。
【0070】
大寸法(以下、サイズ1という)のガラス基板の寸法は、約400mm×320mmであり、このガラス基板の上にスパッタ法を用いてITO(インジウム−錫酸化物)薄膜を形成し、フォトリソグラフィ法と酸溶液によるエッチングでITO膜をパターニングして画素電極を形成した。画素電極のラインパターンは、線幅60μm、スペース60μmであり、ラインが約2880×540形成されるパターンとした。
【0071】
小寸法(以下、サイズ2という)のガラス基板の寸法は、約100mm×80mmであり、このガラス基板の上にスパッタ法を用いてITO(インジウム−錫酸化物)薄膜を形成し、フォトリソグラフィ法と酸溶液によるエッチングでITO膜をパターニングして画素電極を形成した。画素電極のラインパターンは、線幅70μm、スペース60μmであり、ラインが約590×159形成されるパターンとした。
【0072】
次に、画素電極どうしの間を延在する絶縁隔壁(バンク)から成る絶縁層を以下のようにして形成した。まず、画素電極を形成したガラス基板上にポリイミド系のレジスト材料を全面スピンコートした。そのスピンコートの条件は、150rpmで5秒間回転させた後、500rpmで20秒間回転させる1回コーティングとし、絶縁層の高さを3.5μmとした。こうして基板上の全面に塗布したフォトレジスト材料にフォトリソグラフィ法を適用して、画素電極の間にマトリックスパターンを有する絶縁層を形成した。この絶縁層は撥液性を有するものであり、そのマトリックスサイズは、いずれの基板においても、130μm(バンク幅60μm)×390μm(バンク幅80μm)とした。
【0073】
次に、スリット法によって正孔輸送層を形成した。スリット法により正孔輸送層を形成するためのインクは、PEDOT/PSS(ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン)/(ポリスチレンスルフォネート)溶液であるバイトロンP CH−8000(エイチ・シー・スタルク社製)を用いて、インクの固形分濃度が1.5%、粘度が1cps、溶剤の蒸気圧が1.1kPaとなるように調製したものを用いた。このインク及び版を用いて湿度45%、温度25℃の条件下において、スリット法にて基板全面に正孔輸送層を形成した。その後、画素領域外の不要部のインクをウエスで拭き取り、200℃、30分間、大気中で乾燥を行い正孔輸送層を形成した。これによって形成された正孔輸送層の膜厚は50nmであった。
【0074】
次に、インクジェット法を用いた本発明に係る機能膜形成法により、電子フロック層を形成した。電子ブロック層形成用インクは、電子ブロック材料を溶媒に溶解して、インク中の電子ブロック材料の濃度が1.0重量%となるように調製したものを用いた。電子ブロック材料としては、ポリフルオレン誘導体からなる電子ブロック材料を用いた。インク溶媒組成は、シクロヘキシルベンゼン(沸点237.5℃)を99重量%とした。この電子ブロック層形成用インクの表面張力はプレート法により測定したところ、約34.3mN/mであった。インクの粘度はE型粘度計で測定したところ9.2cps(25℃)であった。溶剤の蒸気圧は0.975mmHg(67.5℃)であった。
【0075】
このように調製した電子ブロック層形成用インクを、上で説明したインクジェット法を用いて、基板上の正孔輸送層まで形成された有効領域に吐出設置することとし、画素1個あたりのインク吐出量は120pリットルとした。画素1個あたりのインク吐出量をこの値とするとき、サイズ1の基板では、その有効領域に吐出配置する電子ブロック層形成用インクに含有される溶媒量の計算値は約186.6μリットルになり、サイズ2の基板では、その有効領域に吐出配置する電子ブロック層形成用インクに含有される溶媒量の計算値は約11.26μリットルになる。また、基板上の無効領域に吐出設置する塗工液としては、溶剤であるシクロヘキシルベンゼンのみから成る塗工液を使用することとした。
【0076】
減圧乾燥機としては、チャンバーサイズが420mm×350mmで、ステージサイズが410mm×330mmのものを使用することとした。サイズ1の基板がこの減圧乾燥機に搬入可能な最大サイズの基板に相当する。この減圧乾燥機と、上述した電子ブロック層形成用インク及び塗工液とを使用して、基板に減圧乾燥を施したときに、その各画素の電子ブロック層の膜厚形状を平坦で均一にすることのできる減圧乾燥条件を実験的に決定した。実験的に決定された減圧乾燥条件は、第1真空ポンプ58の到達圧を50Pa、第2真空ポンプ60の到達圧を15Paとし、ホットプレート温度(ステージ54の温度)を40℃とし、チャンバー内総溶媒量を約190.29μリットルにするというものであった。既述のごとく、チャンバー内総溶媒量とは、減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施す基板上に吐出配置する機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上に吐出配置する塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量である。
【0077】
このチャンバー内総溶媒量の目標値である約190.29μリットルから、サイズ1の基板の有効領域に吐出配置する電子ブロック層形成用インクに含有される溶媒量の計算値である約186.6μリットルを差し引くことで、基板の無効領域に吐出配置する塗工液に含有される溶媒量が約3.67μリットルになるようにするものと決定した。この実施例では塗工液は100%溶剤から成るため、このことは、基板の無効領域に吐出配置する塗工液の総吐出量を3.67μリットルに設定することを意味しており、この程度の少量の塗工液であれば、サイズ1の基板上に設定する無効領域に吐出配置することが可能であるため、その塗工液の全量をサイズ1の基板上に吐出配置することとした。
【0078】
同様に、チャンバー内総溶媒量の目標値である190.29μリットルから、サイズ2の基板の有効領域に吐出配置する電子ブロック層形成用インクに含有される溶媒量の計算値である約11.26μリットルを差し引くことで、基板の無効領域に吐出配置する塗工液に含有される溶媒量が約179.04μリットルになるようにするものと決定した。この実施例では塗工液は100%溶剤から成るため、このことは、基板の無効領域に吐出配置する塗工液の総吐出量を179.04μリットルに設定することを意味しているが、これ程の大量の塗工液となると、その全量をサイズ2の基板の無効領域に吐出配置することが困難である。そこで、サイズ2の基板の無効領域に吐出配置する塗工液の総排出量は、約179.04μリットルのうちの約0.25μリットルにとどめて、差分の約178.78μリットルの塗工液は、別基板であるダミー基板(素ガラス)上に吐出配置することとした。別基板は計4枚で、150mm×320mmのものを2枚、100mm×110mmのものを2枚を使用して、それら4枚の基板上に約178.78μリットルの塗工液を吐出配置することとした。
【0079】
電子ブロック層形成用インクから成る機能性インクの吐出量と、溶剤から成る塗工液の吐出量とを以上のように定めた上で、インクジェット装置を使用して、サイズ1の基板、サイズ2の基板、及び4枚のダミー基板に、機能性インク及び塗工液を吐出配置した。
【0080】
続いて、図6に示したように、サイズ1の基板12を減圧乾燥機50のチャンバ内52のステージ54上に載置して、上記減圧乾燥条件に従って減圧乾燥を施した。また図11に示したように、サイズ2の基板12及び4枚のダミー基板98を減圧乾燥機のチャンバ52内のステージ54上に載置して、上記減圧乾燥条件に従って減圧乾燥を施した。このとき、図示の如く、有効領域を有する基板12はステージ54の中央に配置し、それを囲むようにして4枚のダミー基板98を配置した。減圧乾燥後に、サイズ1及びサイズ2の基板の各画素における電子ブロック層の膜厚形状を観察したところ、平坦で均一な形状に形成されていた。
【0081】
この減圧乾燥後に、サイズ1の基板及びサイズ2の基板を窒素置換オーブンに搬入し、200℃、15分間の焼成処理を施した。焼成処理後の電子ブロック層の膜厚を計測したところ、その膜厚は20nmであった。
【0082】
次に、インクジェット法を用いた本発明に係る機能膜形成法により、有機発光層を形成した。有機発光層形成用インクは、有機発光材料を溶媒に溶解して、インク中の有機発光材料の濃度が1.0重量%となるように調製したものを用いた。有機発光材料としては、ポリ(パラフェニレンビニレン)誘導体からなる高分子蛍光体を用いた。インク溶媒組成は、シクロヘキシルベンゼンを99重量%とした。この有機発光層形成用インクの表面張力はプレート法により測定したところ、約35mN/mであった。
【0083】
このように調製した有機発光層形成用インクを、上で説明したインクジェット法を用いて、基板上の電子ブロック層まで形成された有効領域に吐出設置することとし、画素1個あたりのインク吐出量は180pリットルとした。画素1個あたりのインク吐出量をこの値とするとき、サイズ1の基板では、その有効領域に吐出配置する有機発光層形成用インクに含有される溶媒量の計算値は約279.9μリットルになり、サイズ2の基板では、その有効領域に吐出配置する有機発光層形成用インクに含有される溶媒量の計算値は約16.88μリットルになる。また、基板上の無効領域に吐出設置する塗工液としては、溶剤であるシクロヘキシルベンゼンのみから成る塗工液を使用することとした。
【0084】
上述した減圧乾燥機と、これら有機発光層形成用インク及び塗工液とを使用して、基板に減圧乾燥を施したときに、その各画素の有機発光層の膜厚形状を平坦で均一にすることのできる減圧乾燥条件を実験的に決定した。実験的に決定された減圧乾燥条件は、第1真空ポンプ58の到達圧を100Pa、第2真空ポンプ60の到達圧を15Paとし、ホットプレート温度(ステージ54の温度)を40℃とし、また、チャンバー内総溶媒量を約285.43μリットルとするというものであった。
【0085】
このチャンバー内総溶媒量の目標値である約285.4μリットルから、サイズ1の基板の有効領域に吐出配置する有機発光層形成用インクに含有される溶媒量の計算値である約279.9μリットルを差し引くことで、基板の無効領域に吐出配置する塗工液に含有される溶媒量が約5.50μリットルになるようにするものと決定した。この実施例では塗工液は100%溶剤から成るため、このことは、基板の無効領域に吐出配置する塗工液の総吐出量を5.50μリットルに設定することを意味しており、この程度の少量の塗工液はサイズ1の基板上に設定する無効領域に吐出配置することが可能であるため、その塗工液の全量をサイズ1の基板上に吐出配置することとした。
【0086】
同様に、チャンバー内総溶媒量の目標値である285.4μリットルから、サイズ2の基板の有効領域に吐出配置する電子ブロック層形成用インクに含有される溶媒量の計算値である約16.88μリットルを差し引くことで、基板の無効領域に吐出配置する塗工液に含有される溶媒量が約268.55μリットルになるようにするものと決定した。この実施例では塗工液は100%溶剤から成るため、このことは、基板の無効領域に吐出配置する塗工液の総吐出量を268.55μリットルに設定することを意味しているが、これ程の大量の塗工液となると、その全量をサイズ2の基板の無効領域に吐出配置することが困難である。そこで、サイズ2の基板の無効領域に吐出配置する塗工液の総排出量は、約268.55μリットルのうちの約0.36μリットルにとどめて、差分の約268.171μリットルの塗工液は、別基板であるダミー基板(素ガラス)上に吐出配置することとした。別基板は計4枚で、150mm×320mmのものを2枚、100mm×110mmのものを2枚を使用して、それら4枚の基板上に約268.171μリットルの塗工液を吐出配置することとした。
【0087】
有機発光層形成用インクから成る機能性インクの吐出量と、溶剤から成る塗工液の吐出量とを以上のように定めた上で、インクジェット装置を使用して、サイズ1の基板、サイズ2の基板、及び4枚のダミー基板に、機能性インク及び塗工液を吐出配置した。
【0088】
続いて、上で説明した電子ブロック層を形成したときと同様にして、サイズ1の基板及びサイズ2の基板に減圧乾燥を施した。減圧乾燥後に、サイズ1及びサイズ2の基板の各画素における有機発光層の膜厚形状を観察したところ、平坦で均一な形状に形成されていた。
【0089】
この減圧乾燥後に、サイズ1の基板及びサイズ2の基板を窒素置換オーブンに搬入し、130℃、10分間の焼成処理を施した。焼成処理後の有機発光層の膜厚を計測したところ、その膜厚は80nmであった。
【0090】
更に、有機発光層上に、Ba、Alからなる陰極層を画素電極のラインパターンと直交するようなラインパターンで抵抗加熱蒸着法によりマスク蒸着して形成した。最後にこれらの有機EL構成体を、外部の酸素や水分から保護するために、ガラスキャップと接着剤を用いて密閉封止し、有機EL素子である有機ELディスプレイパネルを作製した。これにより得られた有機EL素子の表示部の周辺部には各画素電極に接続されている陽極側の取り出し電極と、陰極側の取り出し電極があり、これらを電源に接続することにより、得られた有機EL素子の点灯表示確認を行い、発光状態のチェックを行った。その結果、全面で発光輝度ムラが無い有機EL素子が得られたことが確認された。
【符号の説明】
【0091】
10 有機EL素子
12 基板
14 画素電極
16 隔壁
18 正孔輸送層
20 電子ブロック層
22 有機発光層
24 陰極層
26 ガラスキャップ
28 接着剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に機能膜を形成することにより製造される素子の機能膜の形成方法に関する。本発明は更に、基板上に形成された機能膜を有する電気光学素子の製造方法に関する。ここでいう素子ないし電気光学素子は、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子などであり、ただしそれのみに限定されない。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット法を用いた成膜技術が注目されている。インクジェット法は、用いるヘッドの解像度に応じて微少なインクを所望の位置に吐出することが可能であることから、微細なパターンの形成や、所望の膜厚を備えた薄膜の形成が容易であるという特長を有する。この特長を利用し、インクジェット法は微細な塗り分けが必要な有機EL素子やカラーフィルタの製造などに利用されている。また、ペースト状の機能性材料を微細な単数または複数の吐出口を有するノズルから連続的に吐出して基板上に所定のパターンを形成するノズル法が提案されている。
【0003】
これらインクジェット法やノズル法を有機EL素子の有機発光膜の形成に応用する場合には、所要量のEL材料を所定の溶媒に分散または溶解させてインク化した機能性インクを用いることにより、蒸着法やスパッタ法に比べてEL材料の利用効率を向上させることができるという利点が得られる。
【0004】
インクジェット法やノズル法を用いて、表示素子の基板上の画素を形成すべき位置に機能性インクを吐出設置した後に、その基板を乾燥させて当該画素の機能膜を形成する技術が知られている。その乾燥工程において、基板上の画素の位置によって乾燥スピードが異なることにより、画素間で機能膜の膜厚形状にばらつきが生じることも知られている。例えば、表示素子の画素アレイ形成領域(有効領域)の外側には機能性インクが吐出設置されず、そのため機能性インクに含有される溶媒が存在しない場合には、乾燥工程の実行中に有効領域内に溶媒雰囲気の濃度勾配が生じる。そのため、有効領域の外周に近い部分に位置する画素では、乾燥スピードが画素の位置によって異なったものとなりやすく、膜厚形状がばらつきやすい。一方、有効領域の内側部分に位置する画素どうしは、乾燥スピードが一定のため膜厚形状が均一になりやすい。
【0005】
有機EL素子では、個々の画素の有機発光膜の膜厚形状が、当該画素の発光領域を決定する一要因になる。即ち、膜厚が薄い箇所は電気抵抗が低いため電流が集中して流れ強く発光する。また寿命の点では、大きな電流が流れる部分ほど劣化が早くなる。そのため、画素の膜厚形状は凸形状や凹形状ではなく、平坦な形状が良いとされている。画素の膜厚形状は、乾燥工程における機能性インクの乾燥スピードの影響を受けることが知られている。乾燥スピードが速いと凸形状になり、遅いと凹形状になる。平坦な形状はその中間の乾燥スピードで得られる。
【0006】
そこで吐出領域の内外の乾燥スピードを均一にする為に、画素と画素とを区画している区画壁の頂部に凹部を形成し、その凹部に配置した機能液(機能性インク)を乾燥させる際にその機能液から蒸散する溶媒の蒸気を利用して、画素の機能膜の膜厚形状を平坦化するようにした電気光学装置の製造方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−276479
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この特許文献1の方法を用いれば、有機EL素子の有効領域の内外の機能性インクの乾燥スピードを均一にし、その乾燥スピードを調整することで、有効領域全面で膜厚形状を平坦にすることができが、しかしながら、表示素子の基板のサイズ、有効領域のサイズが変更になると、その度に乾燥スピードを調整しなければならないという面倒が生じる。
【0009】
本発明の目的は、基板上に機能膜を形成することにより製造される例えば有機EL素子などの素子の製造において、機能性インクを基板上に吐出配置し、減圧乾燥を施して機能性インクから機能膜を形成する際に、素子の基板サイズ、有効領域サイズに関係なく、機能性インクの乾燥スピードを均一にすることができ、もって、素子の有効領域における機能膜の膜厚形状を均一にすることのできる、機能膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、基板上に機能膜を形成することにより製造される素子の機能膜の形成方法であって、素子の機能を提供する領域である基板上の有効領域に溶媒を含有する機能性インクを吐出配置する工程と、素子の機能を提供しない領域である基板上の無効領域に溶媒を含有する塗工液を吐出配置する工程と、前記機能性インク及び前記塗工液を吐出配置した基板を減圧乾燥機に搬入し該減圧乾燥機内において減圧乾燥を施して前記機能性インクから機能膜を形成する工程とを含んで成る機能膜形成方法において、前記減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施す基板上に吐出配置する前記機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上に吐出配置する前記塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、当該基板上に吐出配置する前記塗工液の量を設定することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、上記方法において、前記機能性インク及び前記塗工液は吐出ノズルヘッドまたはインクジェットヘッドを介して基板上へ吐出配置し、その際に、前記吐出ノズルヘッドまたは前記インクジェットヘッドに対して基板の有効領域及び無効領域を相対的に複数回走査移動することで所要量の前記機能性インク及び前記塗工液を吐出配置することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、上記方法において、基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクを基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液として用いるか、または、基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクに含有されている溶剤を基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液として用いることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、上記方法において、前記減圧乾燥機内において一度にただ1枚の基板に減圧乾燥を施し、当該基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、当該基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液の量を設定することを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、上記方法において、前記減圧乾燥機内において一度に複数枚の基板に減圧乾燥を施し、それら複数枚の基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクに含有される溶媒の量とそれら複数枚の基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、それら複数枚の基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液の量を設定することを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、上記方法において、前記減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施す前記複数枚の基板のうちの少なくとも1枚の基板を、有効領域を有さず無効領域だけを有するダミー基板とすることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、上記方法において、基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクに含有される溶媒の量に応じて基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液の量を調節することを特徴とする。
【0017】
また、請求項8に記載の発明は、基板上に形成された機能膜を有する電気光学素子の製造方法であって、上記機能膜形成方法を用いて前記機能膜を形成することを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の発明は、上記製造方法において、前記電気光学素子は有機エレクトロルミネッセンス素子であり、前記機能膜は有機エレクトロルミネッセンス発光膜であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板上に機能膜を形成することにより製造される例えば有機EL素子などの素子の製造において、機能性インクを基板上に吐出配置し、その基板に減圧乾燥を施して機能性インクから機能膜を形成する際に、素子の基板サイズ、有効領域サイズに関係なく、機能性インクの乾燥スピードを均一にし、素子の有効領域における機能膜の膜厚と形状を均一とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】有機EL素子の模式的断面図である。
【図2】インクジェット法を用いて本発明を実施する際に使用されるインクジェット装置の具体例を示した全体構成図である。
【図3】図2のインクジェット装置のインクジェットヘッドの模式図である。
【図4】基板の各領域に関する概略図である。
【図5】基板の各領域に関する概略図である。
【図6】本発明を実施する際に使用される減圧乾燥機の具体例を示した概略図である。
【図7】減圧乾燥工程における乾燥スピードと機能膜の形状とを示した模式図である。
【図8】減圧乾燥工程における減圧開始からの経過時間と減圧乾燥機のチャンバー内の圧力とを示したグラフである。
【図9】ノズル法を用いて本発明を実施する際に使用される吐出ノズル装置の具体例を示した全体構成図である。
【図10】図9の吐出ノズル装置の吐出ノズルヘッドの断面模式図である。
【図11】減圧乾燥機に搬入した基板の具体例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。尚、以下の説明では、有機EL素子の基板を製造する場合に即して本発明の実施の形態を説明するが、本発明は対象を有機EL素子に限定するものではなく、その他の表示ディスプレイの表示画面を構成する電気光学素子にも好適に適用し得るものであり、総括的に述べるならば、本発明は、基板上に機能膜を形成することにより製造される素子の機能膜の形成方法と、基板上に形成された機能膜を有する電気光学素子の製造方法とに関するものである。そのような電気光学素子としては、例えばカラーフィルタ、回路基板、薄膜トランジスタ、マイクロレンズ、バイオチップ等があり、またそれらのみに限定されない。
【0022】
以下の説明では、有機EL素子の正孔輸送層と電子ブロック層と有機発光層とを総称して機能層と呼び、それら機能層3層をインクジェット法またはノズル法を用いて形成する場合について説明する。また、機能膜とは、機能層を構成する薄膜の意であるが、両者は実体上同一物であるため、本願においては「機能層」なる用語と「機能膜」なる用語とを同義的に使用している。また、インクジェット法またはノズル法による機能層の形成方法の詳細については後述することとし、まずは、有機EL素子の全体構成とその製造方法の概要とについて、図1の断面図を参照して説明する。
【0023】
図1に示すように、有機EL素子10は基板12上に形成される。基板12としては透光性基板が好適に用いられ、例えば、ガラス基板やプラスチック製のフィルムまたはシートなどが用いられる。プラスチック製のフィルムを用いると、巻取りにより高分子EL素子の製造が可能となり、安価にディスプレイパネルを提供できる。プラスチック製のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート等を用いることができる。また、これらのフィルムには、水蒸気バリア性、酸素バリア性を示す酸化ケイ素といった金属酸化物、窒化ケイ素といった酸化窒化物やポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物からなるバリア層を必要に応じて設けることが好ましい。
【0024】
透光性基板12の上には陽極としてパターニングした画素電極14を形成する。画素電極14の材料としては、ITO(インジウム錫複合酸化物)、IZO(インジウム亜鉛複合酸化物)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アルミニウム複合酸化物等の透明電極材料等が使用できる。なお、低抵抗であること、耐溶媒性があること、透明性があることなどからITOを用いることが好ましい。ITOなどの薄膜をスパッタ法により透光性基板上に形成したならば、その薄膜をフォトリソグラフィ法によりパターニングしてライン状の画素電極14を形成する。
【0025】
ライン状の画素電極14を形成後、隣り合う画素電極14の間に感光性材料を用いてフォトリソグラフィ法により隔壁16を形成する。隔壁16を形成する感光性材料としてはポジ型レジスト、ネガ型レジストのどちらも使用可能であるが、絶縁性を備えている必要がある。隔壁16が十分な絶縁性をもたない場合には、隔壁16を通して隣り合う画素電極に電流が流れてしまい表示不良が発生するおそれがある。具体的には、その感光性材料として、ポリイミド系、アクリル樹脂系、ノボラック樹脂系、フルオレン系の様々な感光性材料が使用可能であり、またそれらのみに限定されない。また、その感光性材料に、有機EL素子の表示品位を上げる目的で、光遮光性材料を含有させるのもよい。
【0026】
続いて、隔壁16で囲まれた個々の領域(個々の画素領域)に、正孔輸送層18、電子ブロック層20、及び有機発光層22を順次積層して形成する。それら機能層はインクジェット法により形成することもでき、ノズル法により形成することもできる。それら機能層をインクジェット法を用いて形成する場合には、隔壁16を形成する際に隔壁16の形状をマトリクス状としておき、ノズル法を用いて形成する場合には、隔壁16を形成する際に隔壁16の形状をストライプ状としておく。いずれの場合にも、隔壁16の高さは0.5〜5.0μmの範囲内とすることが好ましい。隣り合う画素電極14の間に設ける隔壁16は、画素電極14上に吐出配置する機能性インクの広がりを抑え、また、透明導電膜24の端部からのショート発生を防止する。隔壁16が低すぎるとショートの防止効果が得られないことがあり注意が必要である。
【0027】
隔壁16の形成後、まず正孔輸送層18を形成する。インクジェット法またはノズル法を用いてこの正孔輸送層18を形成するには、正孔輸送材料を有機溶媒に溶解または分散させて調製した機能性インクである正孔輸送層形成用インクを使用する。この正孔輸送層形成用インクに用いる有機溶媒としては、インクジェットヘッドまたはインク吐出ヘッドへのイオンアタックが少ないものを選択するのがよい。また、形成する正孔輸送層18の体積低効率は、発光効率の点から、1×106Ω・cm以下とすることが好ましい。
【0028】
正孔輸送層形成用インクの溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、テトラクロロエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルフォルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルコキシアルコール等の極性溶媒などを用いることができる。
【0029】
正孔輸送層18を形成するには、正孔輸送層形成用インクを基板1上の画素領域へ吐出配置し、そして、その吐出配置した正孔用インクに減圧乾燥を施す。これら工程の詳細については後述する。
【0030】
正孔輸送層18の形成後、続いて電子ブロック層20を形成する。電子ブロック層20は、正孔輸送層18から有機発光層22へ注入された電子がそのまま陰極へ通過することのないように、電子をブロックするための層であり、電子ブロック性物質で構成される。インクジェット法またはノズル法により電子ブロック層20を形成するには、電子ブロック性物質を溶媒に溶解または分散させて調製した機能性インクである電子ブロック層形成用インクを用いる。
【0031】
電子ブロック性物質としては、例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(以下PVKともいう)、ポリ(パラ−フェニレンビニレン)、カルバゾールビフェニル(以下CBPともいう)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)―1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(以下NPDともいう)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(以下TPDともいう)、4,4’−ビス(10−フェノチアジニル)ビフェニルや、2,4,6−トリフェニル−1,3,5−トリアゾール、ポリフルオレン誘導体、トリフェニルアミンとフルオレンの共重合体などを用いることができる。
【0032】
電子ブロック層20の形成後、続いて有機発光層22を形成する。有機発光層22は、電流を通すことにより発光する層であり、有機発光材料で構成される。インクジェット法またはノズル法により有機発光層22を形成するには、有機発光材料を溶媒に溶解または分散させて調製した機能性インクである有機発光層形成用インクを用いる。
【0033】
有機発光材料としては、例えば、クマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’―ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系等の発光性色素をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に分散させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系やポリフルオレン系の高分子材料などを用いることができる。
【0034】
電子ブロック層形成用インク及び有機発光層形成用インクの溶媒としては、例えば、シメン、テトラリン、クメン、デカリン、ジュレン、シクロヘキシルベンゼン、ジヘキシルベンゼン、テトラメチルベンゼン、及びジブチルベンゼンなどを用いることができる。また、使用する溶媒は、沸点が220℃以上、室温での蒸気圧が0.10〜10mmHgのものとすれば更に好ましい。
【0035】
また、夫々の機能層18、20、22を形成するための夫々の機能性インクは、粘度が3〜20cpsの範囲内にあり、表面張力が25〜35mN/mの範囲内にあるものとすることが好ましい。上記溶媒を用いることで、吐出に適した粘度に調整できるため、それら機能層18、20、22の形成が容易となる。上記溶媒によれば、材料の溶解度が大きいため、機能性インク作成後の内容物の析出を防ぐことができる。また、インクジェット法またはノズル法を用いた機能層形成において、溶媒の揮発、或いは内容物の析出による吐出時の目詰まりや飛行曲がりを防ぎ、安定した吐出を実現するためには、機能性材料の溶解度が大きく、高沸点ないし低蒸気圧の溶媒を用いることが望ましい。
【0036】
有機発光層22の形成後、続いて陰極層24を画素電極のラインパターンと直交するラインパターンで形成する。陰極層24の材料としては、有機発光層の発光特性に応じたものを使用すればよく、例えば、リチウム、マグネシウム、バリウム、イッテルビウム、アルミニウムなどの金属単体やこれらと金、銀などの安定な金属との合金などを用いることができる。また、インジウム、亜鉛、錫などの導電性酸化物を用いることもできる。陰極層24の形成方法としてはマスクを用いた真空蒸着法による形成方法が挙げられる。
【0037】
最後に、以上に説明した有機EL素子の様々な構成体を、外部の酸素や水分から保護するためにガラスキャップ26と接着剤28を用いて密閉封止することで、有機EL素子である有機ELディスプレイパネルが得られる。なお、透光性基板1が可撓性を有するものである場合には、封止剤と可撓性フィルムを用いて封止を行うこともある。
【0038】
なお、以上に説明した有機EL素子は、陽極である画素電極と陰極層との間に、陽極層側から順に正孔輸送層18、電子ブロック層20、及び有機発光層22を積層した構成のものであるが、有機EL素子の構成はこれに限られない。例えば、陽極層と陰極層との間に、正孔輸送層及び有機発光層に加えて、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層といった機能層を必要に応じて形成した積層構造とすることもでき、それら機能層も、有機発光層22などと同様の形成方法で形成することができる。
【0039】
以上に説明した有機EL素子の機能層である正孔輸送層18、電子ブロック層20、及び有機発光層22を構成する個々の機能膜は、本発明に係る機能膜形成方法を採用することにより好適に形成することができる。ただし、本発明に係る機能膜形成方法は、これら機能層を構成する機能膜を形成することに限定されるものではなく、様々な素子の様々な機能膜を形成するために利用し得るものである。
【0040】
以下の説明では、本発明の実施の形態として、インクジェット法を用いた実施の形態とノズル法を用いた実施の形態とについて説明する。
【0041】
インクジェット法を用いた実施の形態とノズル法を用いた実施の形態とのいずれにおいても、本発明に係る機能膜形成方法は、基板上に機能膜を形成することにより製造される素子の機能膜の形成方法であって、素子の機能を提供する領域である基板上の有効領域に溶媒を含有する機能性インクを吐出配置する工程と、素子の機能を提供しない領域である基板上の無効領域に溶媒を含有する塗工液を吐出配置する工程と、前記機能性インク及び前記塗工液を吐出配置した基板を減圧乾燥機に搬入し該減圧乾燥機内において減圧乾燥を施して前記機能性インクから機能膜を形成する工程とを含む。
【0042】
まず、インクジェット法を用いた本発明の実施の形態について説明する。図2は、インクジェット法を用いて本発明を実施する際に使用されるインクジェット装置の具体例を示した全体構成図である。インクジェット装置30は、インクジェットヘッド32を複数配列したインクジェットヘッドユニット34、基板12を載置する搬送ステージ36、それにインクジェットヘッド32の機能性インク吐出動作を制御するインクジェットヘッドコントローラ38を備えている。
【0043】
図3はインクジェットヘッド32の構造を示した模式図である。同図に示したように、インクジェットヘッド32は複数のノズル40を備えている。それら複数のノズル40はその吐出動作のタイミングによって、A相、B相、C相の3つの相に編成されており、各相のノズルは一列に配置されている。この場合、各相のノズル40からは各々異なったタイミングで機能性インクが吐出され、例えば、ノズルA相、ノズルB相、ノズルC相(以下A相、B相、C相と記す)の同じ行からインクが吐出されるタイミングはA、B、Cの順でずれる。この方式(以下、シェアウェーブモードと記載)では各ノズルの間隔、例えばA相〜B相、B相〜C相の間隔を狭めて、高密度なインクジェットヘッドとすることができるため、高精細な吐出パターン形成が必要有機EL素子の製造に適している。かかる構成の公知のインクジェットヘッドとしては、例えば特開2008−238031に開示されているものなどがある。
【0044】
このシェアウェーブモードのインクジェットヘッド32を用いて基板上の所望の場所にインクを吐出配置するには、以下のようにして吐出パターン情報を形成する。まず、インクジェットヘッド32を駆動制御するインクジェットヘッドコントローラ38は、インクジェットヘッドパラメータ情報と吐出パターンとを保持している。インクジェットヘッドパラメータ情報は、インクジェットヘッド32を駆動するための情報である。吐出パターン情報は、インクジェットヘッド32の位置情報を引数として、個々のノズルからの吐出動作を記述した情報である。ノズルの吐出動作を実行させるために、インクジェットヘッドコントローラ38は、個々のノズルへ吐出パターン情報を転送し、それによって吐出動作が行われる。
【0045】
また、インクジェットヘッドコントローラ38がインクジェットヘッド32を駆動するための情報であるインクジェットヘッドパラメータ情報は、個々のインクジェットヘッド32ごとに最適の電圧値のパラメータを設定できるものとすることが好ましい。これは、全てのインクジェットヘッド32の駆動電圧を同じ値に設定した場合には、それらインクジェットヘッド32からの吐出量が個体差によりばらつくため、基板上にインクを均一に吐出することができなくなるおそれがあるからである。インクジェットヘッド32ごとに最適の電圧値のパラメータを設定できるようにすることによって、インクジェットヘッド32ごとの吐出量を制御することが可能となり、各画素における機能性インクの吐出量を調整することができる。
【0046】
インクジェットヘッドコントローラ38における、位置情報を認識または計測して出力する手段は、予め入力された基板のサイズ、隔壁パターンのピッチ、画素部のパターン等の基板のパラメータと、インクジェットヘッド及びノズルの位置情報と、吐出装置の基板の置き台の移動量等のパラメータ(以下、合わせて吐出パターン情報と記載)から、ノズルが基板上へ吐出するインクの着弾位置を算出する。別法として、吐出装置に設置したカメラによって、基板表面の画像を取得して処理し、それによってインクの着弾位置を算出するようにしてもよい。
【0047】
インクジェットヘッドコントローラ38においては更に、基板上の隔壁パターンに対するインクジェットヘッド32及びノズル40の相対位置を算出したならば、この情報を基に、インクの着弾位置が、インクを吐出設置すべき領域にあるか否かをプログラムにより処理判断する。ノズルから吐出するインクの着弾位置がその領域内にある場合にのみ、当該ノズルを有効ノズルと判断してインクの吐出を行わせ、そうではないノズルは無効ノズルと判断してインクの吐出を行わせない。
【0048】
図5は、ノズルが有効か否かの判断の具体例である。インクジェットヘッド32のノズル40のうち、画素部の直上部にあたるノズルについては有効と判断し、それ以外のノズルは無効と判断して、吐出パターン情報を生成する。
【0049】
有機EL素子では、基板上の隔壁16で囲まれ発光する各画素の領域(即ち有機EL素子の発光機能を提供する領域)が有効領域であり、基板上のそれ以外の領域(即ち有機EL素子の発光機能を提供しない領域)が無効領域である。有効領域には上記方法で機能性インクを吐出配置する。無効領域には、上記のインクジェットヘッドユニット内に搭載されている別ヘッドから溶媒を含有する塗工液を吐出配置する。この無効領域に吐出配置する塗工液としては、有効領域に吐出配置する機能性インクに含有されている溶媒そのものを、この塗工液として用いるとよい。また、無効領域における吐出パターンは、有効領域と同様の隔壁パターンが基板全面にあると想定して、有効領域と同様に作成するとよい。ただし、基板の周囲の所定幅の領域(例えば端縁部から10mmまでの範囲の領域)は、基板のハンドリングの便を考慮して溶媒を吐出配置しない領域、即ち禁止領域とするのがよい。また、無効領域の仮想パターンの画素1個あたりに吐出配置される量の塗工液に含有される溶剤量が、有効領域の実際の画素1個あたりに吐出配置される量の機能性インクに含有される溶剤量と同一であるようにするのもよい。これらについては図4及び図5を参照されたい。
【0050】
有機EL素子の基板のサイズによって、その基板上の有効領域に吐出配置する機能性インクの総量は異なるものとなり、そこに含有される溶媒の量も異なるものとなる。しかるに本発明においては、減圧乾燥機に搬入可能な最大サイズの基板に対応した機能性インクの吐出量と、その基板に良好な機能膜を形成するために必要とされる量の塗工液の吐出量とに基づいて、それら機能性インク及び塗工液に含有される総溶媒量をもって基準総溶媒量とし、そして、基板のサイズがいかなる大きさである場合にも、減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施す基板上に吐出配置された機能性インク及び塗工液に含有される総溶媒量が常にこの基準総溶媒量となるようにする。即ち、減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施す基板上に吐出配置する機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上に吐出配置する塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、当該基板上に吐出配置する塗工液の量を設定するようにする。
【0051】
ここで、基板サイズが最大サイズである場合、ないしは最大サイズとそれほどの差がない場合には、減圧乾燥機内において一度にただ1枚の基板に減圧乾燥を施すことになるため、当該基板上の有効領域に吐出配置する機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上の無効領域に吐出配置する塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、当該基板上の無効領域に吐出配置する塗工液の量を設定すればよい。
【0052】
一方、基板サイズが最大サイズと比べてかなり小さい場合には、減圧乾燥機内において一度に複数枚の基板に減圧乾燥を施すようにし、その場合、それら複数枚の基板上の有効領域に吐出配置する機能性インクに含有される溶媒の量とそれら複数枚の基板上の無効領域に吐出配置する塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、それら複数枚の基板上の無効領域に吐出配置する塗工液の量を設定すればよい。
【0053】
更にその場合に、減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施すそれら複数枚の基板のうちの少なくとも1枚の基板を、有効領域を有さず無効領域だけを有するダミー基板とするのもよく、そうすることによって基板上に吐出配置する溶媒の量の設定が容易になる。
【0054】
先に説明した機能性インキ及び塗工液の吐出動作を行わせるための所要の情報を生成して、基板上に吐出配置すべき塗工液の量を設定したならば、インクジェットヘッドコントローラ38でインクジェットヘッド32を制御しつつ、基板12を載置した搬送ステージ36を駆動し、インクジェットヘッド32に対して基板の有効領域及び無効領域を相対的に複数回走査移動することで所要量の機能性インク及び塗工液の吐出配置を行う。以上によって、インクジェット装置30を用いて基板12上に機能性インク及び塗工液を吐出配置する工程が完了する。
【0055】
続いて、基板に減圧乾燥を施す工程を実行する。この工程は、機能性インク及び塗工液を吐出配置した基板を減圧乾燥機に搬入し、減圧乾燥機内において減圧乾燥を施して、機能性インクから機能膜を形成する工程である。この減圧乾燥の工程では、有効領域の機能性インクの乾燥が進行するのと並行して、無効領域の塗工液の溶媒が気化して蒸散する。
【0056】
図6に減圧乾燥機50の概略図を示す。減圧乾燥機50のチャンバー52の内部には、基板12を載置する水平なステージ54と、それと平行で凹凸が無い天板56とが配設されている。チャンバー52には、その内部を真空にするための第1真空ポンプ58及び第2真空ポンプ60が、夫々第1バルブ62及び第2バルブ64を介して接続されている。ステージ54は温度制御可能なホットプレートとして構成されている。
【0057】
第1真空ポンプ58はロータリーポンプであり、粗引きに用いる。第2真空ポンプ60はターボ分子ポンプであり、チャンバー52内を高真空度な状態に減圧可能である。第1ポンプ58を作動させて粗引きを行った後に第2ポンプ60を作動状態にしてチャンバー52内の真空度を高めて所要の減圧状態とする。そのため、第1真空ポンプ58の作動時間及び到達圧、並びに第2真空ポンプの作動時間及び到達圧を設定可能にしてある。
【0058】
また、減圧乾燥する時のステージ54の温度を変化させることも可能としてある。ステージ54の温度は、基板12上の有効領域の機能性インクの乾燥スピード及び無効領域の塗工液の溶媒の蒸散スピードに影響を及ぼす。なお、機能膜の発光特性に影響を与えないようにステージ54の上限温度は60℃までに規制している。
【0059】
基板上の機能性インクの乾燥スピード及び塗工液の溶剤の蒸散スピードは、(1)減圧乾燥機50のチャンバー52内において一度に減圧乾燥を施す基板上に吐出配置した機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上に吐出配置する塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量(以下、チャンバー内総溶媒量という)(2)チャンバー52内の減圧条件、それに、(3)ステージ54の温度に依存する。そして、機能性インクの乾燥スピードは、その機能性インクが乾燥することで形成される各画素の機能膜の膜厚形状に影響を及ぼす。
【0060】
図7に、乾燥スピードが早い場合、遅い場合、その中間の場合に夫々形成される各画素の機能膜の膜厚形状を模式的な断面図で示した。乾燥スピードが速いと図中右側の画素のように機能膜は凸形状になり、遅いと図中左側の画素のように機能膜は凹形状になり、それらの中間の適当な乾燥スピードのときに、図中中央の画素のように機能膜は平坦形状になる。乾燥スピードそのものを測定することは技術的に困難であるため、乾燥スピードを測定するよりも、上述した(1)チャンバー内総溶媒量、(2)チャンバー52内の減圧条件、それに(3)ステージ54の温度という3つのパラメータを様々に設定して、その結果として形成された機能膜の膜厚形状を測定することで、膜厚形状が平坦形状になる条件を実験的に導出する方法を採用することが好ましい。
【0061】
減圧条件に関しては、粗引き用の第1真空ポンプ58から高真空度を達成するための第2ポンプ60へ切替えるタイミングが早いほど乾燥スピードは速くなる。例えば、チャンバー内圧力を、第1真空ポンプ58で50Paまで減圧した後に、第2真空ポンプ60で15Paまで減圧するより、第1真空ポンプ58で100Paまで減圧した後に、第2真空ポンプ60で15Paまで減圧する方が乾燥スピードは速くなる。また、ホットプレートで構成したステージ54の温度は、高温にするほど乾燥スピードは速くなる。図8に、減圧乾燥工程における減圧開始からの経過時間とチャンバー内の圧力との関係のグラフを示した。
【0062】
上記3つのパラメータのうち、減圧乾燥機のチャンバー内の減圧条件と減圧乾燥機のステージの温度とは、有機EL素子の設計仕様にかかわらず任意に設定可能である。しかるに従来の技法では、チャンバー内総溶媒量に関する任意の設定が不可能であった。それが不可能であったのは、有機EL素子を製造する際に基板に吐出配置する機能性インクの量によってチャンバー内総溶媒量が決定されていたからである。これに対して本発明によれば、基板の無効領域に吐出配置する塗工液の量を適宜設定して、チャンバー内総溶媒量を設定するようにしているため、乾燥スピードの最適調整が可能となる。また更に、画素アレイ領域の周囲に無効領域を設定すれば、画素アレイ領域の周辺部と中央部とで減圧乾燥工程における気化溶媒の濃度勾配を抑制することができるため、全ての画素において機能膜の膜厚形状を均一に、好適な形状にすることができ、ひいては発光輝度ムラの無いEL素子を製造することが可能である。
【0063】
次に、ノズル法を用いた本発明の実施の形態について説明する。図10は、ノズル法を用いて本発明を実施する際に使用される吐出ノズル装置の具体例を示した全体構成図である。吐出ノズル装置80は、機能性インクを貯留するインク供給タンク82と、吐出ノズル86(図10参照)を有する吐出ノズルヘッド84とを備えている。インク供給タンク82の中の機能性インクはインク供給チューブ88を通って吐出ノズルヘッド84へ供給される。インク供給タンク82は、タンク内を加圧することで機能性インクを吐出ノズルヘッド84へ流すことができるようにしてある。インク供給タンク82と吐出ノズルヘッド84との間に、インク流量を測定するための流量計90が装備されている。流量調整コントローラ92によって、インク供給タンク82の加圧力を制御することで、インク流量を制御することができる。また、流量計90の値を流量調整コントローラ92に転送し、その値に基づいて加圧力を制御できるようにしてある。
【0064】
吐出ノズル装置80は更に、基板12を載置する可動ステージ94を備えている。可動ステージ94は、水平直線方向であるY方向と、水平面内の回転方向であるθ方向とに可動であり、それらの方向に移動制御される。吐出ノズルヘッド84は、Y方向に直交する水平直線方向であるX方向に可動であり、その方向に移動制御される。可動ステージ94と吐出ノズルヘッド84とは、それぞれの位置情報により同期して移動制御される。それらの制御により、基板上の各画素の領域に、機能膜を形成するための機能性インクが精度良く塗工される。また、流量調整コントローラ92を、可動ステージ94と吐出ノズル64の位置情報と同期して制御することで、それらの位置により吐出量を調整することが可能である。
【0065】
図10は、吐出ノズルヘッド84の構造を示した模式図である。機能性インクは、インク供給チューブ88から円柱や直方体状のケース96に入る。ケース96はSUS等の金属材料製とすることが一般的であるが、インク耐性があればどのようなものを用いても構わない。ケース内部はマニホールドとなっており、直径5μmから20μm程度の微小な穴の空いた吐出ノズル86から基板へ機能性インクが垂直に吐出される。吐出ノズル86はポリイミド等のフィルムが一般的だが、精度良く穴をあけることができればどのようなものでも構わない。
【0066】
吐出ノズル装置80を用いて機能性インクや塗工液を基板上に吐出配置する際には、インクジェット装置を用いる場合と異なり、吐出を断続的に行うとノズル詰まりや飛行曲がりを発生し易いため、吐出は連続的に行うことが好ましい。それゆえ、基板上の機能性インクを吐出配置すべきでない部分等をマスキングしたりダミーパターンを設けたりするなどして、連続的な吐出を行えるようにするとよい。また、そのようにする場合には、有効領域に吐出配置する機能性インクをそのまま、無効領域に吐出配置する塗工液として用いるようにするとよい。
【0067】
以上に説明した点以外では、このノズル法を用いた実施の形態でも、先に説明したインクジェット法を用いた実施の形態と変わるところはなく、吐出ノズルに対して基板の有効領域及び無効領域を相対的に複数回走査移動することで所要量の機能性インク及び塗工液の吐出配置を行い、そして、基板上に機能性インク及び塗工液を吐出配置する工程が完了したならば、それに続いて、先に説明したインクジェット法を用いた実施の形態と同様の減圧乾燥工程を実行する。そして、基板上に吐出配置する塗工液の量に関しては、減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施す基板上に吐出配置する機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上に吐出配置する塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、当該基板の無効領域に吐出配置する塗工液の量を設定する。
【0068】
更に、このノズル法を用いた実施の形態でも、基板サイズが最大サイズである場合、ないしは最大サイズとそれほどの差がなく、減圧乾燥機内において一度にただ1枚の基板に減圧乾燥を施す場合には、当該基板上の有効領域に吐出配置する機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上の無効領域に吐出配置する塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、当該基板上の無効領域に吐出配置する塗工液の量を設定すればよく、一方、基板サイズが最大サイズと比べてかなり小さい場合には、減圧乾燥機内において一度に複数枚の基板に減圧乾燥を施すようにし、その場合、それら複数枚の基板上の有効領域に吐出配置する機能性インクに含有される溶媒の量とそれら複数枚の基板上の無効領域に吐出配置する塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、それら複数枚の基板上の無効領域に吐出配置する塗工液の量を設定すればよい。更にその場合に、減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施すそれら複数枚の基板のうちの少なくとも1枚の基板を、有効領域を有さず無効領域だけを有するダミー基板とするのもよく、そうすることによって基板上に吐出配置する溶媒の量の設定が容易になる。
【実施例】
【0069】
次に、本発明の実施例について説明する。以下に説明する実施例は、大小2通りの大きさのガラス基板上に夫々に有機EL素子を製造したものであり、その製造に際して、それら有機EL素子の電子ブロック層と有機発光層とを、インクジェット法を用いた本発明に係る機能膜形成方法に従って形成したものである。
【0070】
大寸法(以下、サイズ1という)のガラス基板の寸法は、約400mm×320mmであり、このガラス基板の上にスパッタ法を用いてITO(インジウム−錫酸化物)薄膜を形成し、フォトリソグラフィ法と酸溶液によるエッチングでITO膜をパターニングして画素電極を形成した。画素電極のラインパターンは、線幅60μm、スペース60μmであり、ラインが約2880×540形成されるパターンとした。
【0071】
小寸法(以下、サイズ2という)のガラス基板の寸法は、約100mm×80mmであり、このガラス基板の上にスパッタ法を用いてITO(インジウム−錫酸化物)薄膜を形成し、フォトリソグラフィ法と酸溶液によるエッチングでITO膜をパターニングして画素電極を形成した。画素電極のラインパターンは、線幅70μm、スペース60μmであり、ラインが約590×159形成されるパターンとした。
【0072】
次に、画素電極どうしの間を延在する絶縁隔壁(バンク)から成る絶縁層を以下のようにして形成した。まず、画素電極を形成したガラス基板上にポリイミド系のレジスト材料を全面スピンコートした。そのスピンコートの条件は、150rpmで5秒間回転させた後、500rpmで20秒間回転させる1回コーティングとし、絶縁層の高さを3.5μmとした。こうして基板上の全面に塗布したフォトレジスト材料にフォトリソグラフィ法を適用して、画素電極の間にマトリックスパターンを有する絶縁層を形成した。この絶縁層は撥液性を有するものであり、そのマトリックスサイズは、いずれの基板においても、130μm(バンク幅60μm)×390μm(バンク幅80μm)とした。
【0073】
次に、スリット法によって正孔輸送層を形成した。スリット法により正孔輸送層を形成するためのインクは、PEDOT/PSS(ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン)/(ポリスチレンスルフォネート)溶液であるバイトロンP CH−8000(エイチ・シー・スタルク社製)を用いて、インクの固形分濃度が1.5%、粘度が1cps、溶剤の蒸気圧が1.1kPaとなるように調製したものを用いた。このインク及び版を用いて湿度45%、温度25℃の条件下において、スリット法にて基板全面に正孔輸送層を形成した。その後、画素領域外の不要部のインクをウエスで拭き取り、200℃、30分間、大気中で乾燥を行い正孔輸送層を形成した。これによって形成された正孔輸送層の膜厚は50nmであった。
【0074】
次に、インクジェット法を用いた本発明に係る機能膜形成法により、電子フロック層を形成した。電子ブロック層形成用インクは、電子ブロック材料を溶媒に溶解して、インク中の電子ブロック材料の濃度が1.0重量%となるように調製したものを用いた。電子ブロック材料としては、ポリフルオレン誘導体からなる電子ブロック材料を用いた。インク溶媒組成は、シクロヘキシルベンゼン(沸点237.5℃)を99重量%とした。この電子ブロック層形成用インクの表面張力はプレート法により測定したところ、約34.3mN/mであった。インクの粘度はE型粘度計で測定したところ9.2cps(25℃)であった。溶剤の蒸気圧は0.975mmHg(67.5℃)であった。
【0075】
このように調製した電子ブロック層形成用インクを、上で説明したインクジェット法を用いて、基板上の正孔輸送層まで形成された有効領域に吐出設置することとし、画素1個あたりのインク吐出量は120pリットルとした。画素1個あたりのインク吐出量をこの値とするとき、サイズ1の基板では、その有効領域に吐出配置する電子ブロック層形成用インクに含有される溶媒量の計算値は約186.6μリットルになり、サイズ2の基板では、その有効領域に吐出配置する電子ブロック層形成用インクに含有される溶媒量の計算値は約11.26μリットルになる。また、基板上の無効領域に吐出設置する塗工液としては、溶剤であるシクロヘキシルベンゼンのみから成る塗工液を使用することとした。
【0076】
減圧乾燥機としては、チャンバーサイズが420mm×350mmで、ステージサイズが410mm×330mmのものを使用することとした。サイズ1の基板がこの減圧乾燥機に搬入可能な最大サイズの基板に相当する。この減圧乾燥機と、上述した電子ブロック層形成用インク及び塗工液とを使用して、基板に減圧乾燥を施したときに、その各画素の電子ブロック層の膜厚形状を平坦で均一にすることのできる減圧乾燥条件を実験的に決定した。実験的に決定された減圧乾燥条件は、第1真空ポンプ58の到達圧を50Pa、第2真空ポンプ60の到達圧を15Paとし、ホットプレート温度(ステージ54の温度)を40℃とし、チャンバー内総溶媒量を約190.29μリットルにするというものであった。既述のごとく、チャンバー内総溶媒量とは、減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施す基板上に吐出配置する機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上に吐出配置する塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量である。
【0077】
このチャンバー内総溶媒量の目標値である約190.29μリットルから、サイズ1の基板の有効領域に吐出配置する電子ブロック層形成用インクに含有される溶媒量の計算値である約186.6μリットルを差し引くことで、基板の無効領域に吐出配置する塗工液に含有される溶媒量が約3.67μリットルになるようにするものと決定した。この実施例では塗工液は100%溶剤から成るため、このことは、基板の無効領域に吐出配置する塗工液の総吐出量を3.67μリットルに設定することを意味しており、この程度の少量の塗工液であれば、サイズ1の基板上に設定する無効領域に吐出配置することが可能であるため、その塗工液の全量をサイズ1の基板上に吐出配置することとした。
【0078】
同様に、チャンバー内総溶媒量の目標値である190.29μリットルから、サイズ2の基板の有効領域に吐出配置する電子ブロック層形成用インクに含有される溶媒量の計算値である約11.26μリットルを差し引くことで、基板の無効領域に吐出配置する塗工液に含有される溶媒量が約179.04μリットルになるようにするものと決定した。この実施例では塗工液は100%溶剤から成るため、このことは、基板の無効領域に吐出配置する塗工液の総吐出量を179.04μリットルに設定することを意味しているが、これ程の大量の塗工液となると、その全量をサイズ2の基板の無効領域に吐出配置することが困難である。そこで、サイズ2の基板の無効領域に吐出配置する塗工液の総排出量は、約179.04μリットルのうちの約0.25μリットルにとどめて、差分の約178.78μリットルの塗工液は、別基板であるダミー基板(素ガラス)上に吐出配置することとした。別基板は計4枚で、150mm×320mmのものを2枚、100mm×110mmのものを2枚を使用して、それら4枚の基板上に約178.78μリットルの塗工液を吐出配置することとした。
【0079】
電子ブロック層形成用インクから成る機能性インクの吐出量と、溶剤から成る塗工液の吐出量とを以上のように定めた上で、インクジェット装置を使用して、サイズ1の基板、サイズ2の基板、及び4枚のダミー基板に、機能性インク及び塗工液を吐出配置した。
【0080】
続いて、図6に示したように、サイズ1の基板12を減圧乾燥機50のチャンバ内52のステージ54上に載置して、上記減圧乾燥条件に従って減圧乾燥を施した。また図11に示したように、サイズ2の基板12及び4枚のダミー基板98を減圧乾燥機のチャンバ52内のステージ54上に載置して、上記減圧乾燥条件に従って減圧乾燥を施した。このとき、図示の如く、有効領域を有する基板12はステージ54の中央に配置し、それを囲むようにして4枚のダミー基板98を配置した。減圧乾燥後に、サイズ1及びサイズ2の基板の各画素における電子ブロック層の膜厚形状を観察したところ、平坦で均一な形状に形成されていた。
【0081】
この減圧乾燥後に、サイズ1の基板及びサイズ2の基板を窒素置換オーブンに搬入し、200℃、15分間の焼成処理を施した。焼成処理後の電子ブロック層の膜厚を計測したところ、その膜厚は20nmであった。
【0082】
次に、インクジェット法を用いた本発明に係る機能膜形成法により、有機発光層を形成した。有機発光層形成用インクは、有機発光材料を溶媒に溶解して、インク中の有機発光材料の濃度が1.0重量%となるように調製したものを用いた。有機発光材料としては、ポリ(パラフェニレンビニレン)誘導体からなる高分子蛍光体を用いた。インク溶媒組成は、シクロヘキシルベンゼンを99重量%とした。この有機発光層形成用インクの表面張力はプレート法により測定したところ、約35mN/mであった。
【0083】
このように調製した有機発光層形成用インクを、上で説明したインクジェット法を用いて、基板上の電子ブロック層まで形成された有効領域に吐出設置することとし、画素1個あたりのインク吐出量は180pリットルとした。画素1個あたりのインク吐出量をこの値とするとき、サイズ1の基板では、その有効領域に吐出配置する有機発光層形成用インクに含有される溶媒量の計算値は約279.9μリットルになり、サイズ2の基板では、その有効領域に吐出配置する有機発光層形成用インクに含有される溶媒量の計算値は約16.88μリットルになる。また、基板上の無効領域に吐出設置する塗工液としては、溶剤であるシクロヘキシルベンゼンのみから成る塗工液を使用することとした。
【0084】
上述した減圧乾燥機と、これら有機発光層形成用インク及び塗工液とを使用して、基板に減圧乾燥を施したときに、その各画素の有機発光層の膜厚形状を平坦で均一にすることのできる減圧乾燥条件を実験的に決定した。実験的に決定された減圧乾燥条件は、第1真空ポンプ58の到達圧を100Pa、第2真空ポンプ60の到達圧を15Paとし、ホットプレート温度(ステージ54の温度)を40℃とし、また、チャンバー内総溶媒量を約285.43μリットルとするというものであった。
【0085】
このチャンバー内総溶媒量の目標値である約285.4μリットルから、サイズ1の基板の有効領域に吐出配置する有機発光層形成用インクに含有される溶媒量の計算値である約279.9μリットルを差し引くことで、基板の無効領域に吐出配置する塗工液に含有される溶媒量が約5.50μリットルになるようにするものと決定した。この実施例では塗工液は100%溶剤から成るため、このことは、基板の無効領域に吐出配置する塗工液の総吐出量を5.50μリットルに設定することを意味しており、この程度の少量の塗工液はサイズ1の基板上に設定する無効領域に吐出配置することが可能であるため、その塗工液の全量をサイズ1の基板上に吐出配置することとした。
【0086】
同様に、チャンバー内総溶媒量の目標値である285.4μリットルから、サイズ2の基板の有効領域に吐出配置する電子ブロック層形成用インクに含有される溶媒量の計算値である約16.88μリットルを差し引くことで、基板の無効領域に吐出配置する塗工液に含有される溶媒量が約268.55μリットルになるようにするものと決定した。この実施例では塗工液は100%溶剤から成るため、このことは、基板の無効領域に吐出配置する塗工液の総吐出量を268.55μリットルに設定することを意味しているが、これ程の大量の塗工液となると、その全量をサイズ2の基板の無効領域に吐出配置することが困難である。そこで、サイズ2の基板の無効領域に吐出配置する塗工液の総排出量は、約268.55μリットルのうちの約0.36μリットルにとどめて、差分の約268.171μリットルの塗工液は、別基板であるダミー基板(素ガラス)上に吐出配置することとした。別基板は計4枚で、150mm×320mmのものを2枚、100mm×110mmのものを2枚を使用して、それら4枚の基板上に約268.171μリットルの塗工液を吐出配置することとした。
【0087】
有機発光層形成用インクから成る機能性インクの吐出量と、溶剤から成る塗工液の吐出量とを以上のように定めた上で、インクジェット装置を使用して、サイズ1の基板、サイズ2の基板、及び4枚のダミー基板に、機能性インク及び塗工液を吐出配置した。
【0088】
続いて、上で説明した電子ブロック層を形成したときと同様にして、サイズ1の基板及びサイズ2の基板に減圧乾燥を施した。減圧乾燥後に、サイズ1及びサイズ2の基板の各画素における有機発光層の膜厚形状を観察したところ、平坦で均一な形状に形成されていた。
【0089】
この減圧乾燥後に、サイズ1の基板及びサイズ2の基板を窒素置換オーブンに搬入し、130℃、10分間の焼成処理を施した。焼成処理後の有機発光層の膜厚を計測したところ、その膜厚は80nmであった。
【0090】
更に、有機発光層上に、Ba、Alからなる陰極層を画素電極のラインパターンと直交するようなラインパターンで抵抗加熱蒸着法によりマスク蒸着して形成した。最後にこれらの有機EL構成体を、外部の酸素や水分から保護するために、ガラスキャップと接着剤を用いて密閉封止し、有機EL素子である有機ELディスプレイパネルを作製した。これにより得られた有機EL素子の表示部の周辺部には各画素電極に接続されている陽極側の取り出し電極と、陰極側の取り出し電極があり、これらを電源に接続することにより、得られた有機EL素子の点灯表示確認を行い、発光状態のチェックを行った。その結果、全面で発光輝度ムラが無い有機EL素子が得られたことが確認された。
【符号の説明】
【0091】
10 有機EL素子
12 基板
14 画素電極
16 隔壁
18 正孔輸送層
20 電子ブロック層
22 有機発光層
24 陰極層
26 ガラスキャップ
28 接着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に機能膜を形成することにより製造される素子の機能膜の形成方法であって、素子の機能を提供する領域である基板上の有効領域に溶媒を含有する機能性インクを吐出配置する工程と、素子の機能を提供しない領域である基板上の無効領域に溶媒を含有する塗工液を吐出配置する工程と、前記機能性インク及び前記塗工液を吐出配置した基板を減圧乾燥機に搬入し該減圧乾燥機内において減圧乾燥を施して前記機能性インクから機能膜を形成する工程とを含んで成る機能膜形成方法において、
前記減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施す基板上に吐出配置する前記機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上に吐出配置する前記塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、当該基板上に吐出配置する前記塗工液の量を設定することを特徴とする機能膜形成方法。
【請求項2】
前記機能性インク及び前記塗工液は吐出ノズルヘッドまたはインクジェットヘッドを介して基板上へ吐出配置し、その際に、前記吐出ノズルヘッドまたは前記インクジェットヘッドに対して基板の有効領域及び無効領域を相対的に複数回走査移動することで所要量の前記機能性インク及び前記塗工液を吐出配置することを特徴とする請求項1記載の機能膜形成方法。
【請求項3】
基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクを基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液として用いるか、または、基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクに含有されている溶剤を基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液として用いることを特徴とする請求項1又は2記載の機能膜形成方法。
【請求項4】
前記減圧乾燥機内において一度にただ1枚の基板に減圧乾燥を施し、当該基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、当該基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液の量を設定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の機能膜形成方法。
【請求項5】
前記減圧乾燥機内において一度に複数枚の基板に減圧乾燥を施し、それら複数枚の基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクに含有される溶媒の量とそれら複数枚の基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、それら複数枚の基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液の量を設定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の機能膜形成方法。
【請求項6】
前記減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施す前記複数枚の基板のうちの少なくとも1枚の基板を、有効領域を有さず無効領域だけを有するダミー基板とすることを特徴とする請求項5記載の機能膜形成方法。
【請求項7】
基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクに含有される溶媒の量に応じて基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液の量を調節することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の機能膜形成方法。
【請求項8】
基板上に形成された機能膜を有する電気光学素子の製造方法であって、請求項1乃至7の何れか1項記載の機能膜形成方法を用いて前記機能膜を形成することを特徴とする電気光学素子の製造方法。
【請求項9】
前記電気光学素子は有機エレクトロルミネッセンス素子であり、前記機能膜は有機エレクトロルミネッセンス発光膜であることを特徴とする請求項8記載の電気光学素子の製造方法。
【請求項1】
基板上に機能膜を形成することにより製造される素子の機能膜の形成方法であって、素子の機能を提供する領域である基板上の有効領域に溶媒を含有する機能性インクを吐出配置する工程と、素子の機能を提供しない領域である基板上の無効領域に溶媒を含有する塗工液を吐出配置する工程と、前記機能性インク及び前記塗工液を吐出配置した基板を減圧乾燥機に搬入し該減圧乾燥機内において減圧乾燥を施して前記機能性インクから機能膜を形成する工程とを含んで成る機能膜形成方法において、
前記減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施す基板上に吐出配置する前記機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上に吐出配置する前記塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、当該基板上に吐出配置する前記塗工液の量を設定することを特徴とする機能膜形成方法。
【請求項2】
前記機能性インク及び前記塗工液は吐出ノズルヘッドまたはインクジェットヘッドを介して基板上へ吐出配置し、その際に、前記吐出ノズルヘッドまたは前記インクジェットヘッドに対して基板の有効領域及び無効領域を相対的に複数回走査移動することで所要量の前記機能性インク及び前記塗工液を吐出配置することを特徴とする請求項1記載の機能膜形成方法。
【請求項3】
基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクを基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液として用いるか、または、基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクに含有されている溶剤を基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液として用いることを特徴とする請求項1又は2記載の機能膜形成方法。
【請求項4】
前記減圧乾燥機内において一度にただ1枚の基板に減圧乾燥を施し、当該基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクに含有される溶媒の量と当該基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、当該基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液の量を設定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の機能膜形成方法。
【請求項5】
前記減圧乾燥機内において一度に複数枚の基板に減圧乾燥を施し、それら複数枚の基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクに含有される溶媒の量とそれら複数枚の基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液に含有される溶媒の量とを合計した総溶媒量が所定量になるように、それら複数枚の基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液の量を設定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の機能膜形成方法。
【請求項6】
前記減圧乾燥機内において一度に減圧乾燥を施す前記複数枚の基板のうちの少なくとも1枚の基板を、有効領域を有さず無効領域だけを有するダミー基板とすることを特徴とする請求項5記載の機能膜形成方法。
【請求項7】
基板上の有効領域に吐出配置する前記機能性インクに含有される溶媒の量に応じて基板上の無効領域に吐出配置する前記塗工液の量を調節することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の機能膜形成方法。
【請求項8】
基板上に形成された機能膜を有する電気光学素子の製造方法であって、請求項1乃至7の何れか1項記載の機能膜形成方法を用いて前記機能膜を形成することを特徴とする電気光学素子の製造方法。
【請求項9】
前記電気光学素子は有機エレクトロルミネッセンス素子であり、前記機能膜は有機エレクトロルミネッセンス発光膜であることを特徴とする請求項8記載の電気光学素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−66222(P2012−66222A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215364(P2010−215364)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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