説明

機関室局所消火ユニット

【課題】 火災感知してから放水までを短時間ででき、かつ、船舶建造時に混在工事を行う必要がない機関室局所消火ユニットを提供すること。
【解決手段】 機関室局所消火ユニット1は、消火用水を蓄積できる水槽11と、水槽11から消火用水を吸い込みかつ加圧して吐出し可能な加圧装置12と、複数の電磁弁13a,13b,…,13eと、火災センサーからの検出信号に基づいて加圧装置12のモータ12bを駆動させ検知範囲の消火対象部位の水噴霧器に連通する配管に接続されている電磁弁を開放制御させる消火制御盤14と、必要な配管15,16とを箱体17の内部に収納してユニット化してなり、加圧装置12のポンプ12a、電磁弁13a〜13e、ポンプ12aの吸込側配管15およびポンプ12aの吐出側から電磁弁13a〜13eに至る配管16を水槽11の底部より下部に配置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機関室局所を消火可能としたものであって、水槽、加圧装置、複数の電磁弁、制御装置等を一つの箱体内に収納して一体化してなる機関室局所消火ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶の船体後部は、機関室、居住区画および操舵機室に区画されていることは周知のとおりである。前記機関室には主機関が装備されており、当該機関室に隣接するエンジンケーシングには当該主機関の補機が装備されている。また、機関室には、主機関および補機関の燃料タンクが設置されている関係から、他の区画に比較して火災の危険性が高い区画である。なお、前記機関室およびエンジンケーシングは、他の区画(操舵機室、居住区間)と防火上厳密に区画されている。
前記機関室およびエンジンケーシングには、主推進機、発電機を回転させる内燃機関、ボイラー、焼却炉および加熱燃料油清浄器等の火災危険部分がある。これら火災危険部分のある領域(ゾーン)の上部にはそれぞれ火災センサー(赤外線式炎センサー)を配置し、各ゾーンを火災センサーで警戒可能としている。
【0003】
仮に、いずれかのゾーンで火災が発生すると、当該ゾーンの火災センサーがそれを感知し、当該ゾーンの上部に設けた水噴霧器に加圧水を供給して、前記水噴霧器から当該ゾーンの火災危険部分(消火対象部分)に水噴霧を行い消火できるようになっている。火災消火の原理は、水噴霧器から噴霧された水噴霧(ミスト)が炎により気化し、その気化熱を奪うことによって消火をするというものである。このような消火原理の水噴霧型消火装置は、当該機関室等のような消火対象部分の場合には、消火後に火災部分を汚さないという利点があることから、よく採用されている。
【0004】
ところで、このような水噴霧型消火装置としては、船舶の機関室の内部空間からなる保護区域の内部を所定の領域に区分した所定区画に対して消火剤である水を選択的に噴霧できる消火剤放出系統と、当該消火剤放出系統に消火剤である水を供給できる供給系統と、前記所定区画毎に各所定区画の上部に配置された火災センサーと、前記火災センサーからの火災検出信号により前記供給系統の運転を開始させるとともに、前記消火剤放出系統を火災検知した区画のみに消火剤である水を噴霧させるように制御する火災制御盤とからなるものが提供されている(特許文献1参照)。
かかる水噴霧型消火装置によれば、機関室等のような消火対象部分の場合には、消火後に火災部分を汚すことなく消火ができる。
【特許文献1】特開2002−269651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の水噴霧型消火装置によれば、清水タンク、加圧ポンプ、電磁弁、火災制御盤などが船尾楼内の操舵機室やその他の区画等にばらばらに配置されているため、それらの取り付け工事の工数がかかるほか、機器の納期が船舶建造工程に及ぼす影響が大きいという不都合があった。
さらに、上記従来の水噴霧型消火装置にあっては、局所消火の安全上の概念から、所定の場所が出火すると、一秒一刻を争って消火が開始されなければならないものの、水噴霧器が区画の上部に配置されているため加圧ポンプの位置より高い位置に配置されていることから、空気等が配管に侵入している恐れがあり、この空気の影響で加圧ポンプが動作していても水噴霧器から直ちに水噴霧が行われないという恐れがあった。
【0006】
本発明は、上述した従来の不都合を解消し、火災感知してから放水までを短時間ででき、かつ、船舶建造時に混在工事を行う必要がない機関室局所消火ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る機関室局所消火ユニットは、消火用水を蓄積できる水槽と、前記水槽から消火用水を吸い込みかつ加圧して吐出し可能な加圧装置と、複数の消火対象部位上部にそれぞれ設けた水噴霧器にそれぞれ連通する配管に各々が接続可能とされていてかつ前記加圧装置を構成するポンプの吐出口に連通している複数の電磁弁と、火災センサーからの検出信号に基づいて前記加圧装置を構成するモータを駆動させるとともに当該火災センサーの検知範囲の消火対象部位の水噴霧器に連通する配管に接続されている電磁弁を開放制御させる消火制御盤とを箱体内に収納してユニット化してなり、前記加圧装置のポンプ、電磁弁、前記ポンプの吸込側配管および前記ポンプの吐出側から電磁弁に至る配管は、前記水槽底部より下部に配置されていることを特徴とするものである。
さらに、本発明に係る機関室局所消火ユニットでは、前記箱体は、全ての消火対象部位より上方に配置してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記加圧装置のポンプ、電磁弁、前記ポンプの吸込側配管および前記ポンプの吐出側から電磁弁に至る配管は、前記水槽底部より下部に配置してあり、かつ、前記箱体を全ての消火対象部位より上方に配置してなるので、火災感知してから放水までを短時間でできる利点がある。
また、本発明によれば、水槽、ポンプと当該ポンプ駆動用モータからなる加圧装置、複数の電磁弁および消火制御装置を箱体内に収納してユニット化してなり、かつ、前記箱体を全ての消火対象部位より上方に配置してなるので、船舶建造時に混在工事を行う必要がないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1ないし図3は本発明の実施の形態に係る機関室局所消火ユニットを説明するための図である。ここに、図1は、本発明の実施の形態に係る機関室局所消火ユニットを船舶の船尾に配置するとともに他の機器との関係を示す図である。
本発明の実施の形態に係る機関室局所消火ユニット1は、船舶3の船尾部側の最上部に取り付けられている。ここで、船舶3の船尾部側には、図示最下部に配置された機関室31と、その機関室31の上側に配置されたエンジンケーシング32と、前記機関室31の上側であって前記エンジンケーシング32の後ろ側に配置された操舵機室33と、前記機関室31の図示上側であってエンジンケーシング32の前側に配置された居住区画34とが設けられている。
【0010】
前記機関室31には、主推進機35を駆動する主機関36と、主発電機と一体的に構成された内燃機関37と、加熱燃料油清浄器38とが設けられている。前記エンジンケーシング32には、ボイラー39と、焼却炉40とが設けられている。
前記機関室31において、前記主機関36の上部には、図1に示すように、例えば赤外線式炎センサーからなる火災センサー41と、前記火災センサー41とは所定の水平距離をもたせて水噴霧器51とが設けられている。前記内燃機関37の上部には、図1に示すように、例えば赤外線式炎センサーからなる火災センサー42と、前記火災センサー42とは所定の水平距離をもたせて水噴霧器52とが設けられている。さらに、前記加熱燃料油清浄器38の上部には、図1に示すように、例えば赤外線式炎センサーからなる火災センサー43と、前記火災センサー43とは所定の水平距離をもたせて水噴霧器53とが設けられている。
【0011】
前記エンジンケーシング32において、前記ボイラー39の上部には、図1に示すように、例えば赤外線式炎センサーからなる火災センサー44と、前記火災センサー44とは所定の水平距離をもたせて水噴霧器54とが設けられている。前記焼却炉40の上部には、図1に示すように、例えば赤外線式炎センサーからなる火災センサー45と、前記火災センサー45とは所定の水平距離をもたせて水噴霧器55とが設けられている。
前記水噴霧器51,52,…,55は、各配管56,57,…60をそれぞれ介して機関室局所消火ユニット1の系統別電磁弁(詳細は後述する)にそれぞれ連通されている。
【0012】
前記火災センサー41,42,…,45は、各配線46,47,…,50をそれぞれ介して居住区画34に設置された火災制御盤70に電気的にそれぞれ接続されている。したがって、火災制御盤70は、前記火災センサー41,42,…,45のいずれか一つあるいは複数で火災を検出したときには、その火災センサーにより火災発生ゾーンを特定し、火災センサーからの検出信号として配線71を介して機関室局所消火ユニット1の消火制御盤(詳細は後述する)に供給できるようになっている。
【0013】
次に、本発明の実施の形態に係る機関室局所消火ユニット1の構造の詳細を説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係る機関室局所消火ユニットを示す斜視図である。図3は、本発明の実施の形態に係る機関室局所消火ユニットの断面で概略側面図である。
【0014】
これらの図において、機関室局所消火ユニット1は、水槽11と、加圧装置12と、電磁弁13a,13b,…,13eと、消火制御盤14と、必要な配管15,16を所定の容積の箱体17の内部に収容し、かつ、前記加圧装置12のポンプ12aと、電磁弁13a,13b,…,13eと、前記ポンプ12aの吸入側に接続されている配管15および前記ポンプ12aの吐出側から電磁弁13a,13b,…,13eに至る配管16を前記水槽11の底部より下側に配置してなるものである。
【0015】
さらに詳細に説明すると、前記水槽11は、消火用水である清水を所定の容量蓄積できる水槽である。
前記加圧装置12は、ポンプ12aと、モータ12bとからなり、前記モータ12bが回転することにより前記ポンプ12aが回転駆動され、前記ポンプ12aが前記水槽11から配管16を介して消火用水を吸い込みかつ加圧して配管17に吐出し可能な装置である。
【0016】
前記電磁弁13a,13b,…,13eの入口側は、前記加圧装置12を構成するポンプ12aの吐出口に配管17を介して連通している。前記電磁弁13a,13b,…,13eの出口側は、複数の消火対象部位(主機関36、内燃機関37、加熱燃料油清浄器38、ボイラー39、焼却炉40)の上部にそれぞれ設けた水噴霧器51,52,…,55にそれぞれ連通する配管56,57,…60の各末端が各々接続可能とされている。また、
【0017】
前記消火制御盤14は、火災制御盤70からの火災検出信号を基に、前記加圧装置12のモータ12bを回転させるとともに、電磁弁13a,13b,…,13eを選択的に開放させることができる制御装置である。すなわち、前記消火制御盤14は、火災センサー(火災センサー41,42,…,45のうちの一つまたは複数)からの検出信号に基づいて、前記加圧装置12を構成するモータ12bを駆動させるとともに当該火災センサー(火災センサー41,42,…,45のうちの一つまたは複数)の検知範囲の消火対象部位の水噴霧器(水噴霧器51,52,…,55のうちの一つまたは複数)に連通する配管(配管56,57,…60のうちの一つまたは複数)に接続されている電磁弁(電磁弁13a,13b,…,13eのうちの一つまたは複数)を開放制御させるものである。なお、前記消火制御盤14には、図示しないが非常用電力または常用電力が供給されるようにしてある。
【0018】
また、前記箱体17は、図2および図3に示すように、所定の容積を有する直方体形状をしており、ドアー17aの図示反対側上部に水槽11を設け、前記水槽11の手前側に加圧装置12や電磁弁13a,13b,…,13eを設けるととも、ドアー17aから箱体17内に入ったときに右側になる位置の壁面に消火制御盤14を設けている。
このような機関室局所消火ユニット1の動作を簡単に説明する。この機関室局所消火ユニット1は、消火対象部位(主機関36、内燃機関37、加熱燃料油清浄器38、ボイラー39、焼却炉40)より上側に配置されていることは既に説明したとおりである。
【0019】
そこで、例えば機関室31における前記主機関36で火災が発生したとする。すると、火災センサー41が火災を検出し、その検出信号を火災制御盤70に与える。火災制御盤70は、火災発生ゾーンを特定し、警報を鳴動させるとともに、火災センサー41からの火災検出信号として機関室局所消火ユニット1の消火制御盤14に与える。
前記消火制御盤14は、前記加圧装置12のモータ12bに電力を与えて前記ポンプ12aを回転させる。これにより、前記加圧装置12のポンプ12aにより水槽11から配管15を介して清水が吸い込まれ、ポンプ12aによって加圧されて配管16に吐き出される。
【0020】
一方、前記消火制御盤14は、水噴霧器51,…に連通されている配管56に消火水を供給するため、前記電磁弁13aに電力を供給して電磁弁13aを開放させる。これにより、前記加圧装置12のポンプ12aから吐出された消火水は、配管16、電磁弁13a、配管56を介して水噴霧器51,…に供給される。水噴霧器51では、配管56を介して供給された消火水を霧状にして主機関36に噴霧する。水噴霧器51から噴霧された水噴霧(ミスト)が炎により気化し、その気化熱を奪うことによって主機関36で発生した火災を消火をすることがてきる。機関室31等のような消火対象部分の場合には、消火後に火災部分を汚さないという利点がある。
【0021】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る機関室局所消火ユニット1によれば、前記加圧装置12のポンプ12a、電磁弁13a,13b,…,13e、前記ポンプ12aの吸込側配管15および前記ポンプ12aの吐出側から電磁弁13a,13b,…,13eに至る配管16は、前記水槽11の底部より下部に配置してあり、かつ、前記箱体17を全ての消火対象部位(主機関36、内燃機関37、加熱燃料油清浄器38、ボイラー39および焼却炉40)より上方に配置してなるので、火災感知してから放水までを短時間でできる利点がある。
【0022】
また、本発明の実施の形態に係る機関室局所消火ユニット1によれば、水槽11、ポンプ12aと当該ポンプ12aを駆動するモータ12bからなる加圧装置12、複数の電磁弁13a,13b,…,13eおよび消火制御盤14を箱体17の内部に収納してユニット化してなり、かつ、前記箱体17を全ての消火対象部位(主機関36、内燃機関37、加熱燃料油清浄器38、ボイラー39および焼却炉40)より上方に配置してなるので、船舶建造時に混在工事を行う必要がないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る機関室局所消火ユニットを船舶の船尾に配置するとともに他の機器との関係を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る機関室局所消火ユニットを示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る機関室局所消火ユニットの断面で概略側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 機関室局所消火ユニット
3 船舶
11 水槽
12 加圧装置
12a ポンプ
12b モータ
13a,13b,…,13e 電磁弁
14 消火制御盤
15,16 配管
17 箱体
31 機関室
32 エンジンケーシング
36 主機関
37 内燃機関
38 加熱燃料油清浄器
39 ボイラー
40 焼却炉
41,42,…,45 火災センサー
51,52,…,55 水噴霧器
70 火災制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火用水を蓄積できる水槽と、前記水槽から消火用水を吸い込みかつ加圧して吐出し可能な加圧装置と、複数の消火対象部位上部にそれぞれ設けた水噴霧器にそれぞれ連通する配管に各々が接続可能とされていてかつ前記加圧装置を構成するポンプの吐出口に連通している複数の電磁弁と、火災センサーからの検出信号に基づいて前記加圧装置を構成するモータを駆動させるとともに当該火災センサーの検知範囲の消火対象部位の水噴霧器に連通する配管に接続されている電磁弁を開放制御させる消火制御盤とを箱体内に収納してユニット化してなり、
前記加圧装置のポンプ、電磁弁、前記ポンプの吸込側配管および前記ポンプの吐出側から電磁弁に至る配管は、前記水槽底部より下部に配置されていることを特徴とする機関室局所消火ユニット。
【請求項2】
前記箱体は、全ての消火対象部位より上方に配置してなることを特徴とする機関室局所消火ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−7263(P2007−7263A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193989(P2005−193989)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000146814)株式会社新来島どっく (101)
【Fターム(参考)】