説明

欠陥抽出装置、方法、プログラム

【課題】キズ等の欠陥が強調された欠陥抽出画像を生成することができる。
【解決手段】被検査物の欠陥を抽出する欠陥抽出装置であって、被検査物を撮像した対象画像からマスク画像を生成するマスク画像生成部と、マスク画像により対象画像をマスクして、対象画像に撮像された被検査物の欠陥を抽出する抽出部とを備え、マスク画像生成部は、対象画像における、輝度がより高い部分を膨張させ、輝度がより低い部分を収縮させる高輝度強調部と、対象画像における、輝度がより高い部分を収縮させ、輝度がより低い部分を膨張させる低輝度強調部と、高輝度強調部および低輝度強調部が出力した画像の差分をとってマスク画像を生成する差分処理部と、を有する欠陥抽出装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥抽出装置、方法、プログラムに関する。本発明は、特に、ガラス等の脆性材料の欠陥を抽出する欠陥抽出装置、コンピュータを当該欠陥抽出装置として機能させるプログラム、および、当該材料の欠陥を抽出する方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、ミラー製品等の検査において、キズの有無検出が非常に重要となっている。例えば液晶露光装置のマスク用基板には2.0μm程度の長さのキズも許容されない。このため、被検査物を色々な角度から人の目で確認する目視検査が主流である。
【0003】
また、カラー液晶ディスプレイの色むらを検出する方法が知られている(例えば特許文献1を参照)。この方法によれば、カラー液晶ディスプレイに映し出された画面を撮影し、撮影した画像と当該画像を上下左右方向および斜め方向にずらした画像との輝度の差を算出して色むら部分を強調した合成画像を作成することにより、当該カラー液晶ディスプレイの色むらを検出することができる。
【特許文献1】特開平2−193271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばガラス表面のキズの検出は、新たなキズが付かないように、非接触にて検出できる方法を用いることが望ましく、したがって、被検査物の表面を撮影した画像から画像処理によりキズを検出することが望ましい。しかしながら、被検査物の表面に存在する欠陥により生じる輝度むらの振幅が、撮影した画像における輝度のランダムノイズの振幅とほとんど同じであるか、あるいは当該ランダムノイズの振幅よりも小さい場合は、欠陥部分を強調した画像を得ることは難しく、結果として当該欠陥を判定することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、被検査物の欠陥を抽出する欠陥抽出装置であって、被検査物を撮像した対象画像からマスク画像を生成するマスク画像生成部と、マスク画像により対象画像をマスクして、対象画像に撮像された被検査物の欠陥を抽出する抽出部とを備え、マスク画像生成部は、対象画像における、輝度がより高い部分を膨張させ、輝度がより低い部分を収縮させる高輝度強調部と、対象画像における、輝度がより高い部分を収縮させ、輝度がより低い部分を膨張させる低輝度強調部と、高輝度強調部および低輝度強調部が出力した画像の差分をとってマスク画像を生成する差分処理部と、を有する欠陥抽出装置が提供される。
【0006】
また、本発明の第2の形態においては、コンピュータを、被検査物の欠陥を抽出する欠陥抽出装置として機能させるプログラムであって、コンピュータを、被検査物を撮像した対象画像における、輝度がより高い部分を膨張させ、輝度がより低い部分を収縮させた画像、および、対象画像における、輝度がより高い部分を収縮させ、輝度がより低い部分を膨張させた画像の差分をとってマスク画像を生成するマスク画像生成部と、マスク画像により対象画像をマスクして、対象画像に撮像された被検査物の欠陥を抽出する抽出部として機能させるプログラムが提供される。
【0007】
また、本発明の第3の形態においては、被検査物の欠陥を抽出する方法であって、被検査物を撮像した対象画像における、輝度がより高い部分を膨張させ、輝度がより低い部分を収縮させた画像、および、対象画像における、輝度がより高い部分を収縮させ、輝度がより低い部分を膨張させた画像の差分をとってマスク画像を生成するマスク画像生成段階と、マスク画像により対象画像をマスクして、対象画像に撮像された被検査物の欠陥を抽出する抽出段階とを備える方法が提供される。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、欠陥抽出装置100の概略を示す機能ブロック図である。欠陥抽出装置100は、被検査物の表面、裏面、あるいは内部等に存在する微小な線状のキズ等の欠陥を検出する装置であり、被検査物の表面を撮像した対象画像における欠陥部分を強調する画像フィルタとして機能する。欠陥抽出装置100は、対象画像調整部110と、マスク画像生成部120と、抽出部130とを備える。
【0011】
対象画像調整部110は、被検査物の表面を撮像した対象画像を入力して、当該対象画像における特定方向のエッジを強調した画像に変換してマスク画像生成部120へと出力する。本例において被検査物は、ガラス等の脆性材料であり、例えば液晶露光装置用のマスクに用いるガラス基板であってよい。
【0012】
マスク画像生成部120は、縦続接続された複数のステージ(第1ステージ121、第2ステージ122、および第3ステージ123)を有する。マスク画像生成部120は、対象画像調整部110により変換された対象画像からマスク画像を生成して抽出部130へと出力する。
【0013】
抽出部130は、対象画像調整部110において変換された対象画像をマスク画像生成部120において生成されたマスク画像によりマスクして、当該対象画像に撮像された被検査物のキズなどの欠陥を抽出した欠陥抽出画像を生成する。
【0014】
図2は、対象画像調整部110の構成を示す機能ブロック図である。対象画像調整部110は、入力部201および方向性フィルタ202を有する。入力部201は、例えば被検査物の表面を撮像装置により撮像した対象画像を入力して、方向性フィルタ202へと出力する。なお、入力部201は、ガウスフィルタを有して、入力された対象画像における高域ノイズを低減または除去したローパス(Low−Pass)画像を方向性フィルタ202へと出力してもよい。
【0015】
方向性フィルタ202は、例えばガボール(Gabor)フィルタであり、入力部201から入力された対象画像における特定方向のエッジを強調して、エッジが強調された対象画像をマスク画像生成部120および抽出部130へと出力する。なお、本例において、対象画像調整部110は、対象画像における互いに異なる特定方向のエッジを強調した複数の対象画像に変換する複数の方向性フィルタを有し、それぞれの方向性フィルタが、複数の対象画像を、マスク画像生成部120の複数のステージ(第1ステージ121、第2ステージ122、および第3ステージ123)および抽出部130に順次入力してもよい。
【0016】
図3は、第1ステージ121の構成を示す機能ブロック図である。第1ステージ121は、入力部301、低輝度強調部302、入力部303、高輝度強調部304、および差分処理部305を有する。入力部301は、対象画像調整部110の方向性フィルタ202から特定方向のエッジが強調された対象画像を入力し、当該対象画像を低輝度強調部302へと出力する。
【0017】
低輝度強調部302は、入力部301から対象画像を入力し、当該対象画像について、輝度がより高い部分を収縮させ、輝度がより低い部分を膨張させる。この低輝度強調部302は、縦続に接続された第1平滑化部321、収縮フィルタ322、収縮フィルタ323、および収縮フィルタ324を有する。
【0018】
第1平滑化部321は、例えばヒストグラム平滑化(Equalize Histgram)フィルタであり、入力部301からの対象画像のヒストグラムを平滑化する。本例において、第1平滑化部321は、対象画像を、各画素の輝度の分布が階調毎に均一に、またはより均一化するように各画素の輝度をより分散した対象画像に変換する。
【0019】
収縮フィルタ322は、例えばエロージョン(Erosion)フィルタであり、第1平滑化部321が変換した対象画像について、輝度がより高い部分を収縮させ、輝度がより低い部分を膨張させる。本例において、収縮フィルタ322は、対象画像における予め定められた基準輝度よりも大きい画素(対象画素)の各々について、当該対象画素に隣接する画素のうち、当該基準輝度よりも小さい輝度の画素の数が予め定められた数よりも多い場合に、当該対象画素の輝度を最小(例えば黒色)としてよい。
【0020】
収縮フィルタ323および収縮フィルタ324は、例えば収縮フィルタ322と同様のエロージョン(Erosion)フィルタであり、1つ前の収縮フィルタが変換した対象画像について、輝度がより高い部分を収縮させ、輝度がより低い部分を膨張させる。なお、低輝度強調部302に配される収縮フィルタの数は、入力する対象画像の収縮の度合いを決めるものであり、対象画像から抽出したい欠陥の大きさ等に応じて予め決定してもよい。
【0021】
入力部303は、方向性フィルタ202から対象画像が入力すると、当該対象画像を高輝度強調部304へと出力する。高輝度強調部304は、膨張フィルタ341および二値化処理部342を有する。膨張フィルタ341は、例えばダイレージョン(Dilasion)フィルタであり、入力部303から対象画像が入力すると、当該対象画像について、輝度がより高い部分を膨張させ、輝度がより低い部分を収縮させる。
【0022】
二値化処理部342は、例えば適応二値化(Adaptive Threshold)フィルタであり、膨張フィルタ341において変換された対象画像を二値化する。本例において、二値化処理部342は、膨張フィルタ341から入力する対象画像における各画素の輝度が、当該画素を含む予め定められた領域内の全ての画素の平均輝度より高い場合に当該画素の輝度を最大輝度とし、低い場合に当該画素の輝度を最小輝度とすることにより、対象画像を明暗2種類の輝度の画像に変換してよい。なお、上記予め定められた範囲は、例えば二値化の対象画素の周辺n×n画素の範囲等であってよい。
【0023】
差分処理部305は、高輝度強調部304および低輝度強調部302のそれぞれにおいて変換された画像の差分をとってマスク画像を生成する。より具体的には、差分処理部305は、低輝度強調部302において変換された対象画像における各画素と、高輝度強調部304において変換された対象画像における対応する各画素との輝度の差の絶対値に応じた輝度を有するマスク画像を生成してよい。
【0024】
第2ステージ122および第3ステージ123は、それぞれ、第1ステージ121と略同様の構成、すなわち、入力部301、低輝度強調部302、入力部303、高輝度強調部304、および差分処理部305に対応する構成を有する。したがって、これらの図示を省略する。なお、第2ステージ122および第3ステージ123の各々における、入力部301に対応する入力部は、前段の第1ステージ121または第2ステージ122の差分処理部から出力されるマスク画像を入力する。
【0025】
また、第2ステージ122および第3ステージ123においては、第1平滑化部321に対応する平滑化部を有しなくてもよい。また、マスク画像生成部120のステージの段数は、1または複数とすることができる。また、入力部303および高輝度強調部304は、複数のステージ間で共通であってもよい。
【0026】
図4は、抽出部130の構成を示す機能ブロック図である。抽出部130は、入力部401、収縮フィルタ402、入力部403、第2平滑化部404、および抽出処理部405を有する。入力部401は、マスク画像生成部120の第3ステージ123からマスク画像を入力し、当該マスク画像を収縮フィルタ402へと出力する。収縮フィルタ402は、例えば収縮フィルタ322、323、324と同様のエロージョン(Erosion)フィルタであり、入力部401から入力されるマスク画像について、輝度がより高い部分を収縮させ、輝度がより低い部分を膨張させる。
【0027】
入力部403は、対象画像調整部110からの対象画像を入力し、当該対象画像を第2平滑化部404へと出力する。第2平滑化部404は、例えば第1平滑化部321と同様のヒストグラム平滑化フィルタであり、入力部403から対象画像を入力し、当該対象画像のヒストグラムを平滑化する。抽出処理部405は、第2平滑化部404においてヒストグラムが平滑化された対象画像を、マスク画像でマスクし、当該対象画像における、当該マスク画像の対応領域の輝度が予め指定された基準輝度以下の領域を抽出した欠陥抽出画像を生成する。
【0028】
本例において、抽出処理部405は、対象画像とマスク画像との激烈和(Drastic Sum)をとることにより、欠陥抽出画像を生成してもよい。ここで、上記激烈和は、対象画像とマスク画像の対応する各画素の組について、両方の輝度が最小でない場合は出力画像における対応する画素の輝度を最大とし、一方の輝度が最小である場合は、出力画像における対応する画素の輝度を他方の画素の輝度とする。これにより、抽出処理部405は、対象画像に撮像されているキズ等の欠陥が強調された欠陥抽出画像を出力する。
【0029】
また、抽出処理部405は、生成した欠陥抽出画像にさらに補正処理をしてもよい。例えば、抽出処理部405は、上記欠陥抽出画像の各画素の輝度を反転し、さらに、クロージング(Closing)処理をしてもよい。クロージング(Closing)処理は、例えば、入力画像に対して、輝度がより高い部分を膨張させ、輝度がより低い部分を収縮させるダイレージョン(Dilasion)処理と、輝度がより高い部分を収縮させ、輝度がより低い部分を膨張させるエロージョン(Erosion)処理とを組み合わせた処理であってよい。これにより、上記欠陥抽出画像における欠陥部分がより明確となる。
【0030】
図5および図6は、欠陥抽出装置100の動作の各段階を示すフローチャートである。また、図7〜図18は、当該各段階における対象画像、マスク画像、または欠陥抽出画像の一例である。以下において、本実施形態の欠陥抽出装置100が被検査物の表面を撮像した対象画像から欠陥抽出画像を生成するまでの各段階の処理フローを説明する。
【0031】
欠陥抽出装置100の対象画像調整部110は、被検査物の表面を撮像した対象画像を入力して、方向性フィルタ202により、当該対象画像における特定方向のエッジを強調した画像に変換する(ステップS100)。図7は、方向性フィルタ202としてガボールフィルタを用いた場合における対象画像調整部110が出力する画像の一例である。次に、ステージ処理回数Nを0とする(ステップS110)。
【0032】
膨張フィルタ341は、対象画像調整部110から入力部303を介して入力した対象画像に対して、ダイレージョン処理を行う(ステップS120)。図8は、膨張フィルタ341において変換された画像の一例である。
【0033】
二値化処理部342は、膨張フィルタ341において変換された対象画像に対して、適応二値化処理を行うことにより、対象画像を明暗の2値の輝度を有する画像に変換する(ステップS130)。図9は、二値化処理部342において変換された画像の一例である。
【0034】
第1平滑化部321は、方向性フィルタ202から入力部301を介して入力した対象画像に対して、ヒストグラム平滑化処理を行う(ステップS140)。図10は、第1平滑化部321において変換された画像の一例である。
【0035】
収縮フィルタ322、323、324は、それぞれ、第1平滑化部321が変換した対象画像、または、前段に配された収縮フィルタから出力される対象画像に対して、エロージョン(Erosion)処理を行う(ステップS150)。図11は、3つの収縮フィルタ322、323、324により変換された画像の一例である。
【0036】
差分処理部305は、高輝度強調部304および低輝度強調部302のそれぞれにおいて変換された画像の差分をとってマスク画像を生成する(ステップS160)。図12は、第1ステージ121の差分処理部305により生成されたマスク画像の一例である。
【0037】
次に、対象画像のステージ処理回数Nに1を加える(ステップS170)。そして、当該ステージ処理回数Nが3でない場合には(ステップ180;NO)、ステップS150に戻る。これにより、繰り返し処理によって、第1ステージ121による処理の後に第2ステージ122および第3ステージ123の処理を行う。
【0038】
第2ステージ122は、第1ステージ121の差分処理部305から入力されるマスク画像を、第1ステージ121の低輝度強調部302と同様に変換する(ステップS150)。図13は、第2ステージ122の低輝度強調部により変換されたマスク画像の一例である。
【0039】
また、第2ステージ122は、対象画像調整部110からの対象画像を、第1ステージ121の高輝度強調部304と同様に変換する。そして、第2ステージ122は、変換した各画像の差分をとってマスク画像を生成する(ステップS160)。図14は、第2ステージ122により生成されたマスク画像の一例である。
【0040】
第3ステージ123は、第2ステージ122からのマスク画像を、第1ステージ121の低輝度強調部302と同様に変換する(ステップS150)。図15は、第3ステージ123の低輝度強調部において変換されたマスク画像の一例である。
【0041】
また、第3ステージ123は、対象画像調整部110からの対象画像を、第1ステージ121の高輝度強調部304と同様に変換する。そして、第3ステージ123は、変換した各画像の差分をとってマスク画像を生成する(ステップS160)。図16は、第3ステージ123において生成されたマスク画像の一例である。
【0042】
収縮フィルタ402は、第3ステージ123からのマスク画像に対して、エロージョン処理を行う(ステップS190)。次に、第2平滑化部404は、対象画像調整部110からの対象画像のヒストグラムを平滑化する(ステップS200)。そして、抽出処理部405は、第2平滑化部404においてヒストグラムが平滑化された対象画像と、収縮フィルタ402において変換された上記マスク画像との激烈和をとり、さらにクロージング処理等の補正処理をすることにより欠陥抽出画像を生成する(ステップS210)。図17は、抽出部130において生成された欠陥抽出画像の一例である。
【0043】
以上に示したように、欠陥抽出装置100は、被検査物を撮像した対象画像に基づいて、被検査物表面の微小な凹凸、塵等により生じる輝度むら、および、撮像装置の各受光素子の誤差等の影響を受けずに、当該被検査物の表面、裏面、あるいは内部等に存在する微小な線状のキズ等の欠陥が強調された欠陥抽出画像を生成することができる。なお、欠陥抽出装置100は、特定方向のエッジを強調した対象画像を異なる複数の特定方向についてそれぞれ生成し、それぞれの対象画像について欠陥抽出画像を生成してよい。この場合、欠陥抽出装置100は、それぞれの欠陥抽出画像の論理和をとることにより上記複数の特定方向における欠陥抽出画像を生成してもよい。これにより、当該被検査物の表面、裏面、あるいは内部等に複数方向にわたって存在するキズ等の欠陥が強調された欠陥抽出画像を生成することができる。
【0044】
なお、欠陥抽出装置100において、低輝度強調部302の第1平滑化部321、および、高輝度強調部304の膨張フィルタ341は、対象画像の画質、あるいは、対象画像から抽出したい欠陥抽出画像の画質等に応じて省かれてもよい。また、欠陥抽出装置100は、対象画像調整部110に入力する対象画像の明暗が逆である場合、各ステージの収縮フィルタに替えて膨張フィルタを配し、膨張フィルタに替えて収縮フィルタを配することが好ましい。また、この場合、抽出処理部405は、対象画像とマスク画像の対応する各画素の組について、例えば激烈積をとることにより、両方の輝度が最大でない場合は出力画像における対応する画素の輝度を最小とし、一方の輝度が最大である場合は、出力画像における対応する画素の輝度を他方の画素の輝度とすることが好ましい。
【0045】
図18は、本実施形態に係る欠陥抽出装置1900のハードウェア構成の一例を示す。本実施形態に係る欠陥抽出装置1900は、ホストコントローラ2082により相互に接続されるCPU2000、RAM2020、グラフィックコントローラ2075、及び表示装置2080を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ2084によりホストコントローラ2082に接続される通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、及びCD−ROMドライブ2060を有する入出力部と、入出力コントローラ2084に接続されるROM2010、フレキシブルディスクドライブ2050、及び入出力チップ2070を有するレガシー入出力部とを備える。
【0046】
ホストコントローラ2082は、RAM2020と、高い転送レートでRAM2020をアクセスするCPU2000及びグラフィックコントローラ2075とを接続する。CPU2000は、ROM2010及びRAM2020に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィックコントローラ2075は、CPU2000等がRAM2020内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得し、表示装置2080上に表示させる。これに代えて、グラフィックコントローラ2075は、CPU2000等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。
【0047】
入出力コントローラ2084は、ホストコントローラ2082と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、CD−ROMドライブ2060を接続する。通信インターフェイス2030は、ネットワークを介して他の装置と通信する。ハードディスクドライブ2040は、欠陥抽出装置1900内のCPU2000が使用するプログラム及びデータを格納する。CD−ROMドライブ2060は、CD−ROM2095からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。
【0048】
また、入出力コントローラ2084には、ROM2010と、フレキシブルディスクドライブ2050、及び入出力チップ2070の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM2010は、欠陥抽出装置1900が起動時に実行するブート・プログラム、及び/又は、欠陥抽出装置1900のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスクドライブ2050は、フレキシブルディスク2090からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。入出力チップ2070は、フレキシブルディスクドライブ2050を入出力コントローラ2084へと接続すると共に、例えばパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を入出力コントローラ2084へと接続する。
【0049】
RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク2090、CD−ROM2095、又はICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM2020を介して欠陥抽出装置1900内のハードディスクドライブ2040にインストールされ、CPU2000において実行される。
【0050】
コンピュータにインストールされ、コンピュータを被検査物の欠陥を抽出する欠陥抽出装置1900として機能させるプログラムは、被検査物を撮像した対象画像における、輝度がより高い部分を膨張させ、輝度がより低い部分を収縮させた画像、および、当該対象画像における、輝度がより高い部分を収縮させ、輝度がより低い部分を膨張させた画像の差分をとってマスク画像を生成するマスク画像生成モジュールと、当該マスク画像により当該対象画像をマスクして、当該対象画像に撮像された当該被検査物の欠陥を抽出する抽出モジュールとを備える。これらのプログラム又はモジュールは、CPU2000等に働きかけて、コンピュータを、被検査物の欠陥を抽出する欠陥抽出装置1900として機能させる。
【0051】
これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータに読み込まれることにより、ソフトウェアと上述した各種のハードウェア資源とが協働した具体的手段である、被検査物を撮像した対象画像における、輝度がより高い部分を膨張させ、輝度がより低い部分を収縮させた画像、および、当該対象画像における、輝度がより高い部分を収縮させ、輝度がより低い部分を膨張させた画像の差分をとってマスク画像を生成するマスク画像生成部と、当該マスク画像により当該対象画像をマスクして、当該対象画像に撮像された当該被検査物の欠陥を抽出する抽出部として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態における欠陥抽出装置1900の使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の表示システムが構築される。
【0052】
一例として、欠陥抽出装置1900と外部の装置等との間で通信を行う場合には、CPU2000は、RAM2020上にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理内容に基づいて、通信インターフェイス2030に対して通信処理を指示する。通信インターフェイス2030は、CPU2000の制御を受けて、RAM2020、ハードディスクドライブ2040、フレキシブルディスク2090、又はCD−ROM2095等の記憶装置上に設けた送信バッファ領域等に記憶された送信データを読み出してネットワークへと送信し、もしくは、ネットワークから受信した受信データを記憶装置上に設けた受信バッファ領域等へと書き込む。このように、通信インターフェイス2030は、DMA(ダイレクト・メモリ・アクセス)方式により記憶装置との間で送受信データを転送してもよく、これに代えて、CPU2000が転送元の記憶装置又は通信インターフェイス2030からデータを読み出し、転送先の通信インターフェイス2030又は記憶装置へとデータを書き込むことにより送受信データを転送してもよい。
【0053】
また、CPU2000は、ハードディスクドライブ2040、CD−ROMドライブ2060(CD−ROM2095)、フレキシブルディスクドライブ2050(フレキシブルディスク2090)等の外部記憶装置に格納されたファイルまたはデータベース等の中から、全部または必要な部分をDMA転送等によりRAM2020へと読み込ませ、RAM2020上のデータに対して各種の処理を行う。そして、CPU2000は、処理を終えたデータを、DMA転送等により外部記憶装置へと書き戻す。このような処理において、RAM2020は、外部記憶装置の内容を一時的に保持するものとみなせるから、本実施形態においてはRAM2020および外部記憶装置等をメモリ、記憶部、または記憶装置等と総称する。本実施形態における各種のプログラム、データ、テーブル、データベース等の各種の情報は、このような記憶装置上に格納されて、情報処理の対象となる。なお、CPU2000は、RAM2020の一部をキャッシュメモリに保持し、キャッシュメモリ上で読み書きを行うこともできる。このような形態においても、キャッシュメモリはRAM2020の機能の一部を担うから、本実施形態においては、区別して示す場合を除き、キャッシュメモリもRAM2020、メモリ、及び/又は記憶装置に含まれるものとする。
【0054】
また、CPU2000は、RAM2020から読み出したデータに対して、プログラムの命令列により指定された、本実施形態中に記載した各種の演算、情報の加工、条件判断、情報の検索・置換等を含む各種の処理を行い、RAM2020へと書き戻す。例えば、CPU2000は、条件判断を行う場合においては、本実施形態において示した各種の変数が、他の変数または定数と比較して、大きい、小さい、以上、以下、等しい等の条件を満たすかどうかを判断し、条件が成立した場合(又は不成立であった場合)に、異なる命令列へと分岐し、またはサブルーチンを呼び出す。
【0055】
また、CPU2000は、記憶装置内のファイルまたはデータベース等に格納された情報を検索することができる。例えば、第1属性の属性値に対し第2属性の属性値がそれぞれ対応付けられた複数のエントリが記憶装置に格納されている場合において、CPU2000は、記憶装置に格納されている複数のエントリの中から第1属性の属性値が指定された条件と一致するエントリを検索し、そのエントリに格納されている第2属性の属性値を読み出すことにより、所定の条件を満たす第1属性に対応付けられた第2属性の属性値を得ることができる。
【0056】
以上に示したプログラム又はモジュールは、外部の記録媒体に格納されてもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク2090、CD−ROM2095の他に、DVD及び/またはCD等の光学記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワーク及び/またはインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスク又はRAM等の記憶装置を記録媒体として使用し、ネットワークを介してプログラムを欠陥抽出装置1900に提供してもよい。
【0057】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】欠陥抽出装置100の概略を示す機能ブロック図である。
【図2】対象画像調整部110の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】第1ステージ121の構成を示す機能ブロック図である。
【図4】抽出部130の構成を示す機能ブロック図である。
【図5】欠陥抽出装置100の動作の各段階を示すフローチャートである。
【図6】欠陥抽出装置100の動作の各段階を示すフローチャートである。
【図7】方向性フィルタ202としてガボール(Gabor)フィルタを用いた場合における対象画像調整部110が出力する画像の一例である。
【図8】膨張フィルタ341において変換された画像の一例である。
【図9】二値化処理部342において変換された画像の一例である。
【図10】第1平滑化部321において変換された画像の一例である。
【図11】3つの収縮フィルタ322、323、324により変換された画像の一例である。
【図12】第1ステージ121の差分処理部305により生成されたマスク画像の一例である。
【図13】第2ステージ122により変換されたマスク画像の一例である。
【図14】第2ステージ122において生成されたマスク画像の一例である。
【図15】第3ステージ123により変換されたマスク画像の一例である。
【図16】第3ステージ123において生成されたマスク画像の一例である。
【図17】抽出部130において生成された欠陥抽出画像の一例である。
【図18】本実施形態に係る欠陥抽出装置100のハードウェア構成の一例を示す。
【符号の説明】
【0059】
100 欠陥抽出装置
110 対象画像調整部
120 マスク画像生成部
121 第1ステージ
122 第2ステージ
123 第3ステージ
130 抽出部
201 入力部
202 方向性フィルタ
301 入力部
302 低輝度強調部
321 第1平滑化部
322、323、324 収縮フィルタ
303 入力部
304 高輝度強調部
341 膨張フィルタ
342 二値化処理部
305 差分処理部
401 入力部
402 収縮フィルタ
403 入力部
404 第2平滑化部
405 抽出処理部
1900 欠陥抽出装置
2000 CPU
2010 ROM
2020 RAM
2030 通信インターフェイス
2040 ハードディスクドライブ
2050 フレキシブルディスクドライブ
2060 CD−ROMドライブ
2070 入出力チップ
2075 グラフィックコントローラ
2080 表示装置
2082 ホストコントローラ
2084 入出力コントローラ
2090 フレキシブルディスク
2095 CD−ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の欠陥を抽出する欠陥抽出装置であって、
前記被検査物を撮像した対象画像からマスク画像を生成するマスク画像生成部と、
前記マスク画像により前記対象画像をマスクして、前記対象画像に撮像された前記被検査物の欠陥を抽出する抽出部と、
を備え、
前記マスク画像生成部は、
前記対象画像における、輝度がより高い部分を膨張させ、輝度がより低い部分を収縮させる高輝度強調部と、
前記対象画像における、輝度がより高い部分を収縮させ、輝度がより低い部分を膨張させる低輝度強調部と、
前記高輝度強調部および前記低輝度強調部が出力した画像の差分をとってマスク画像を生成する差分処理部と、
を有する欠陥抽出装置。
【請求項2】
前記高輝度強調部は、
前記対象画像における、輝度がより高い部分を膨張させ、輝度がより低い部分を収縮させる膨張フィルタ(Dilate Filter)と、
前記膨張フィルタの出力画像を二値化する二値化処理部と、
を有する請求項1に記載の欠陥抽出装置。
【請求項3】
前記二値化処理部は、前記膨張フィルタの出力画像における各画素の輝度が、当該画素を含む予め定められた領域内の平均輝度より高い場合に当該画素の輝度を最大輝度とし、低い場合に当該画素の輝度を最小輝度とする請求項2に記載の欠陥抽出装置。
【請求項4】
前記低輝度強調部は、
前記対象画像のヒストグラムを平滑化する第1平滑化部と、
前記第1平滑化部の出力画像における、輝度がより高い部分を収縮させ、輝度がより低い部分を膨張させる収縮フィルタ(Erode Filter)と、
を有する請求項2または3に記載の欠陥抽出装置。
【請求項5】
前記抽出部は、
前記対象画像のヒストグラムを平滑化する第2平滑化部と、
ヒストグラムが平滑化された前記対象画像における、前記マスク画像の対応領域の輝度が予め指定された基準輝度以下の領域を抽出する抽出処理部と、
を有する請求項4に記載の欠陥抽出装置。
【請求項6】
前記抽出処理部は、ヒストグラムが平滑化された前記対象画像と前記マスク画像との激烈和(Drastic Sum)をとる請求項5に記載の欠陥抽出装置。
【請求項7】
前記マスク画像生成部は、前記差分処理部が出力した前記マスク画像を、輝度がより高い部分を収縮させ、輝度がより低い部分を膨張させて変換する収縮フィルタ(Erode Filter)を更に備える請求項5に記載の欠陥抽出装置。
【請求項8】
前記マスク画像生成部は、縦続接続された複数のステージを有し、
それぞれの前記ステージは、
初段においては前記対象画像を入力し、2段目以降においては前段の出力画像を入力する入力部と、
前記対象画像における、輝度がより高い部分を膨張させ、輝度がより低い部分を収縮させる前記高輝度強調部と、
初段においては前記対象画像、2段目以降においては前段の出力画像における、輝度がより高い部分を収縮させ、輝度がより低い部分を膨張させる前記低輝度強調部と、
前記高輝度強調部および前記低輝度強調部が出力した画像の差分をとってマスク画像を生成する前記差分処理部と、
を含む
請求項1に記載の欠陥抽出装置。
【請求項9】
前記対象画像における特定方向のエッジを強調する方向性フィルタを更に備え、
前記マスク画像生成部は、前記方向性フィルタにより変換された前記対象画像から前記マスク画像を生成し、
前記抽出部は、前記方向性フィルタにより変換された前記対象画像を前記マスク画像によりマスクして、前記対象画像に撮像された前記被検査物の表面における前記特定方向の欠陥を抽出する
請求項1に記載の欠陥抽出装置。
【請求項10】
コンピュータを、被検査物の欠陥を抽出する欠陥抽出装置として機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記被検査物を撮像した対象画像における、輝度がより高い部分を膨張させ、輝度がより低い部分を収縮させた画像、および、前記対象画像における、輝度がより高い部分を収縮させ、輝度がより低い部分を膨張させた画像の差分をとってマスク画像を生成するマスク画像生成部と、
前記マスク画像により前記対象画像をマスクして、前記対象画像に撮像された前記被検査物の欠陥を抽出する抽出部と
して機能させるプログラム。
【請求項11】
被検査物の欠陥を抽出する方法であって、
前記被検査物を撮像した対象画像における、輝度がより高い部分を膨張させ、輝度がより低い部分を収縮させた画像、および、前記対象画像における、輝度がより高い部分を収縮させ、輝度がより低い部分を膨張させた画像の差分をとってマスク画像を生成するマスク画像生成段階と、
前記マスク画像により前記対象画像をマスクして、前記対象画像に撮像された前記被検査物の欠陥を抽出する抽出段階と
を備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図18】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−229085(P2009−229085A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71289(P2008−71289)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】