説明

欠陥検出方法、欠陥検出装置、および欠陥検出プログラム

【課題】スジ状欠陥を精度よく検出する欠陥検出方法、欠陥検出装置、および欠陥検出プログラムを提供する。
【解決手段】欠陥検出方法は、被検査物の撮像画像に対して検査対象画素を順次選定する検査対象画素選定工程、比較対象画素群を設定する比較対象画素群設定工程、最小輝度差を求める最小輝度差算出工程、および欠陥強調値を求める欠陥強調値算出工程、を有する欠陥強調処理工程と、欠陥強調値から欠陥候補画素を抽出する欠陥候補抽出工程ST31、欠陥候補画素群に外接する検査外接四角形を検出する外接四角形設定工程ST33、検査外接四角形の長辺に対する短辺の寸法比を算出する寸法比算出工程ST34、検査外接四角形に対する欠陥候補画素群の面積比を算出する面積比算出工程ST35、および寸法比および面積比に基づいてスジ状欠陥を特定する欠陥特定工程ST36を有する欠陥検出工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物を撮像した画像を処理することで、被検査物のスジ状欠陥を検出する欠陥検出方法、欠陥検出装置、および欠陥検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブルプリント基板の配線封止面の異物や傷の欠陥検出では、画像処理手法の一つであるフィルター処理を用いて欠陥検出を行っている(例えば特許文献1〜2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の検査方法では、検査物の撮像画像に対して、平滑化フィルターによりノイズを除去し、1次微分フィルターを用いることでスジ状のムラ欠陥を検出する。
また、特許文献2に記載の画像検査方法では、撮像画像に2次微分フィルターを適用した後に所定輝度閾値に対して二値化した画像、および透過画像を所定輝度閾値に対して二値化した画、またはこれらの二値化画像を合成した画像の2次特徴量を算出し、算出された2次特徴量から欠陥を検出する。
【0004】
また、本出願人は、検査対象点と、その周囲に配置された複数の比較対象点との輝度値の差をそれぞれ求め、各輝度値差データのうち、値が最大のものを検査対象点の欠陥強調値とし、欠陥強調値に基づいて、欠陥候補を抽出する欠陥検出方法を提案している(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−189293号公報
【特許文献2】特開2007−309679号公報
【特許文献3】特開2007−285753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のような1次微分を用いた欠陥検出方法では、シミ状の欠陥まで検出されるため、スジ状欠陥のみを選択的に検出することが困難であるという問題がある。また、特許文献2の欠陥検出方法では、撮像画像を二値化処理した画像、および撮像画像に2次微分フィルターを適用した上で二値化処理した画像から欠陥検出を実施するが、2次微分フィルターを用いる場合、シェーディングの影響による誤検出のおそれがあり、欠陥検出精度が悪化する問題がある。
これに対し、本出願人が提案した特許文献3の欠陥検出方法では、直線状のスジ状欠陥を良好に検出することはできるが、欠陥内で角度が変化する場合、スジ状欠陥として検出されない場合があり、別途検出方法を設ける必要があるという問題がある。また、スジ状欠陥とシミ状欠陥との双方が検出されるため、これらを判別することが困難である。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みて、スジ状欠陥を精度よく検出する欠陥検出方法、欠陥検出装置、および欠陥検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の欠陥検出方法は、被検査物を撮像した撮像画像に対して欠陥強調フィルターを用いて欠陥強調処理を行う欠陥強調処理工程と、前記欠陥強調処理工程で得られた各画素の欠陥強調値に基づいて欠陥を検出する欠陥検出工程と、を備え、前記欠陥強調処理工程は、前記撮像画像に対して、検査対象画素を順次選定する検査対象画素選定工程と、選定された検査対象画素の中心から所定距離離れた比較対象画素を検査対象画素の周囲に略円形状に複数配置し、これらの比較対象画素のうち前記検査対象画素を挟んで互いに点対称の位置に配置される一対の比較対象画素をセットとした比較対象画素群を複数設定する比較対象画素群設定工程と、比較対象画素群に含まれる各比較対象画素の輝度値と、前記検査対象画素の輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を比較対象画素群毎に求める最小輝度差算出工程と、比較対象画素群毎に算出された最小輝度差のうち、値が最大となる最小輝度差を前記検査対象画素の欠陥強調値とする欠陥強調値算出工程と、を有し、前記欠陥検出工程は、前記欠陥強調値が所定の欠陥閾値以上となる画素を欠陥候補画素として抽出する欠陥候補抽出工程と、互いに隣接する前記欠陥候補画素を欠陥候補画素群とし、この欠陥候補画素群に外接する外接長方形のうち、面積が最小となる外接長方形を検査外接四角形として設定する外接四角形設定工程と、前記欠陥候補画素の慣性軸方向に沿う前記検査外接四角形の長辺寸法、および前記慣性軸方向に直交する幅方向に沿う前記検査外接四角形の短辺寸法を計測するとともに、長辺寸法に対する短辺寸法の比である寸法比を算出する寸法比算出工程と、前記検査外接四角形に対する前記欠陥候補画素群の面積比を算出する面積比算出工程と、前記寸法比算出工程にて算出される寸法比が所定の寸法比閾値未満となる場合、または前記面積比算出工程にて算出される面積比が所定の面積比閾値未満となる場合に、前記欠陥候補画素群をスジ状欠陥として特定する欠陥特定工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明では、欠陥強調フィルターを用いた欠陥強調処理工程において、選定された検査対象画素と、その周囲に略円形状に複数配置される比較対象画素とを設定する。そして、比較対象画素を、前記検査対称画素を挟んで互いに点対称の位置に配置される一対の比較対称画素をセットとした複数の比較対象画素群に分け、これらの比較対象画素群に含まれる比較対象画素と検査対象画素との輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を選択し、さらに、複数の比較対象画素群に対してそれぞれ選択された最小輝度差のうち、値が最大となる最小輝度差を前記検査対象画素の欠陥強調値としている。これにより、検査対象画素を含み、かつ、いずれかの比較対象画素群は含まない欠陥を検出できる。なお、本発明の欠陥強調フィルターとは、欠陥強調工程を実施する上でのアルゴリズムを示し、すなわち、検査対象画素選定工程、比較対象画素群設定工程、最小輝度算出工程、および欠陥強調値算出工程の各工程を、撮像画像の各画素に対して実施して、ある空間周波数の成分のみを強調値として選択的に残し、他の空間周波数の成分を抑える処理を指す。
このような欠陥強調処理工程では、検査対象画素部分に欠陥がなく、周囲の画素と輝度差が無い場合には、前記最小輝度差は非常に小さい値になる。また、検査対象画素に欠陥があっても、その欠陥がいずれかの比較対象画素部分まで広がっている場合には、その欠陥部分に含まれる検査対象画素および比較対象画素の輝度差は殆ど無いため、前記最小輝度差も非常に小さい値になる。一方、検査対象画素に欠陥が存在し、かつ、周囲のいずれかの比較対象画素群には欠陥が無い場合、検査対象画素の輝度値は、比較対称画素群のいずれの比較対象画素の輝度値とも差があるため、最小輝度差も比較的大きな値になる。これにより、いずれかの比較対象画素群の内側に納まる大きさの欠陥が存在する場合に、最小輝度差は比較的大きな値となり、欠陥が強調されることになる。
また、この時、前記複数の比較対象画素を、前記検査対象画素を挟んで互いに点対称の位置に配置された一対に比較対象画素を1セットとした複数の比較対象画素群に分けているので、スジ状欠陥も適切に検出できる。すなわち、比較対象画素を複数の比較対象画素群に分けない場合では、複数の比較対象画素の少なくとも一つと、検出対象画素とに重なるスジ状欠陥がある場合、そのスジ状欠陥上の各画素の輝度値の差は小さいため、前記最小輝度差も小さな値となり、欠陥を検出することができない。一方、本発明のように、略円形状に複数配置された比較対象画素を、複数の比較対象画素群に分け、各比較対象画素群毎に最小輝度差を算出している場合、各比較対象画素の位置が異なるため、一方の比較対象画素群の比較対象画素にスジ状欠陥が重なってそのスジ状欠陥を検出できなくても、他の比較対象画素群の比較対象画素は前記スジ状欠陥と重ならず、そのスジ状欠陥を検出できる。
【0010】
以上により、上記欠陥強調値を用いることで、シミ状欠陥およびスジ状欠陥の両方の欠陥を強調でき、精度よく欠陥部分を抽出することができる。本発明では、さらに、欠陥検出工程において、上記のように検出される欠陥強調値に基づいて、欠陥候補画素をピックアップする。そして、互いに隣接する欠陥候補画素を欠陥候補画素群とし、これらの欠陥候補画素に外接する検査外接四角形に基づいて、寸法比および面積比をそれぞれ算出する。ここで、前記面積比が面積比閾値未満となる場合、または、寸法比が寸法比閾値未満となる場合に、スジ状欠陥として検出する。
すなわち、直線状のスジ状欠陥では、その慣性軸方向と検査外接四角形の長辺方向とが略一致するため、検査外接四角形の短辺寸法とスジ状欠陥の幅寸法とが略同一寸法となる。一方、シミ状欠陥では、幅寸法が大きくなるため、検査外接四角形の長辺寸法に対する短辺寸法の寸法比は1に近い値となる。これに対して、スジ状欠陥では、幅寸法が小さく、検査外接四角形の長辺に対する短辺の寸法比も小さく、例えば0に近い値となる。すなわち、寸法比閾値として、0に限りなく近い値を設定することで、細い略直線形状のスジ状欠陥を検出することができる。
また、スジ状欠陥では、直線状の欠陥に限らず、途中で角度が変化する折れ線状の欠陥や、曲線状の欠陥、環状の欠陥なども考えられるが、この場合、検査外接四角形の短辺長さ寸法も増大する。このようなスジ状欠陥に対しては、検査外接四角形に対する欠陥候補画素群の面積比を用いる。すなわち、シミ状の欠陥では、検査外接四角形に対する欠陥候補画素群の面積比が大きく、1に近い値となる。これに対して、スジ状欠陥は線状であり、面積が小さいため、面積比が0に近い値となる。したがって、面積比が面積比閾値より小さい欠陥候補画素群をスジ状欠陥として検出することができる。これにより、シミ状欠陥およびスジ状欠陥が混在する欠陥候補画素群からスジ状欠陥のみを良好に検出することができる。
【0011】
本発明の欠陥検出方法では、前記最小輝度差算出工程は、前記検査対象画素の輝度値から、比較対象画素群に含まれる各比較対象画素の輝度値を減算した明欠陥輝度差データから明欠陥最小輝度差を算出する明欠陥最小輝度差算出工程、および比較対象画素群に含まれる各比較対象画素の輝度値から、前記検査対象画素の輝度値を減算した暗欠陥輝度差データから暗欠陥最小輝度差を算出する暗欠陥最小輝度差算出工程と、を備え、前記欠陥強調値算出工程は、前記明欠陥最小輝度差および前記暗欠陥最小輝度差に基づいて、明欠陥強調値および暗欠陥強調値をそれぞれ求め、前記欠陥検出工程は、前記明欠陥強調値および前記暗欠陥強調値に基づいて、スジ状明欠陥およびスジ状暗欠陥をそれぞれ検出することが好ましい。
【0012】
この発明では、最小輝度差算出工程は、検査対象画素の輝度値から比較対象画素の輝度値を減算した輝度値データの最小値である明欠陥最小輝度差、および比較対象画素の輝度値から検査対象画素の輝度値を減算した輝度値データの最小値である暗欠陥最小輝度差を求め、これらの明欠陥最小輝度差および暗欠陥最小輝度差のそれぞれに対して、その後の工程を実施する。
最小輝度差を算出する際に、検査対象画素の輝度値から比較対象画素の輝度値を引いた値のみを用いる場合、暗欠陥を検出することができず、また、比較対象画素の輝度値から検査対象画素の輝度値を引いた値のみを用いる場合では、明欠陥を検出することができない。一方、検査対象画素の輝度値と比較対象画素の輝度値の差分の絶対値を用いて欠陥強調値を求める方法も考えられるが、この場合、明欠陥と暗欠陥との判別が困難であり、例えば明欠陥のみを検出したい場合や、暗欠陥のみを検出したい場合に、これらを判別するための別工程を設ける必要がある。これに対して、本発明では、最小輝度差算出工程において、明欠陥最小輝度差および暗欠陥最小輝度差をそれぞれ算出し、これらの明欠陥最小輝度差、および暗欠陥最小輝度差に対して、前記欠陥強調値算出工程および前記欠陥検出工程を実施することで、明欠陥と暗欠陥とを明確に分けて検出することができる。したがって、明欠陥および暗欠陥のうちいずれか一方のみを選択的に検出したい場合でも、容易に欠陥検出処理を実施することができる。
【0013】
本発明の欠陥検出方法では、前記欠陥強調処理工程は、検査対象画素から比較対象画素までの距離が異なる複数の欠陥強調フィルターを用いて欠陥強調処理を実施することが好ましい。
【0014】
この発明では、比較画素設定工程において、前記検査対象画素から所定画素離れて略円形状に配置される前記比較対象画素を設定する。このような方法では、検査対象画素から比較対象画素までの距離が異なる複数の欠陥強調フィルターが用いられるため、様々なサイズのスジ状欠陥を検出することが可能となる。また、検査対象画素と比較対象画素との距離を変えて設定した複数の欠陥強調フィルターに基づいて強調され、検出されたスジ状欠陥を合成することで、各サイズのスジ状欠陥を例えば1つの欠陥検出結果画像にまとめて表示させるなどすることができる。また、より多くの比較対象画素に対する欠陥強調値が算出されるため、より精度よく欠陥を抽出することができ、欠陥検出の信頼性を一層高めることができる。
【0015】
本発明の欠陥検出方法では、前記欠陥強調処理工程は、前記欠陥検出工程により検出する前記スジ状欠陥の幅寸法に応じて、前記検査対象画素から前記比較対象画素までの距離が設定された欠陥強調フィルターを用いて前記欠陥強調処理を実施することが好ましい。
【0016】
この発明では、欠陥として検出するスジ状欠陥の幅寸法に応じて検査対象画素から比較対象画素までの距離が設定された欠陥強調フィルターを用いて、欠陥強調処理を行う。
すなわち、検査対象画素から比較対象画素までの距離が所定距離(比較画素選択距離)に設定された欠陥強調フィルターを用い、この比較対象画素を選択した場合、比較画素選択距離の2倍、すなわち、検査対象画素を挟んで相対する比較対象画素間の距離よりも大きい線幅のスジ状欠陥は検出せず、この比較対象画素間の距離より小さいスジ状欠陥を検出する。したがって、検出対象となるスジ状欠陥の線幅に応じて比較画素選択距離を設定した欠陥強調フィルターを用いて欠陥強調処理を行うことで、所望の線幅のスジ状欠陥を精度よく検出することができる。
【0017】
また、この時、前記欠陥強調処理工程は、前記検査対象画素から前記比較対象画素までの距離が、前記欠陥検出工程により検出する前記スジ状欠陥の幅寸法に対して所定画素分大きい距離となる欠陥強調フィルターを用いて前記欠陥強調処理を実施することが好ましい。
【0018】
この発明では、比較画素選択距離が、検出したスジ状欠陥の線幅よりも、例えば2〜3画素分だけ大きく設定された欠陥強調フィルターを用いることが好ましい。このような欠陥強調フィルターを用いることで、目的とする線幅のスジ状欠陥の検出漏れや過検出を防止でき、精度の高い欠陥検出を実施することができる。
【0019】
本発明の欠陥検出装置は、被検査物を撮像した撮像画像に対して欠陥強調フィルターを用いて欠陥強調処理を行う欠陥強調処理手段と、前記欠陥強調処理工程で得られた各画素の欠陥強調値に基づいて欠陥を検出する欠陥検出手段と、を備え、前記欠陥強調処理手段は、前記撮像画像に対して、検査対象画素を順次選定する検査対象画素選定手段と、選定された検査対象画素の中心から所定距離離れた比較対象画素を検査対象画素の周囲に略円形状に複数配置し、これらの比較対象画素のうち前記検査対象画素を挟んで互いに点対称の位置に配置される一対の比較対象画素をセットとした比較対象画素群を複数設定する比較対象画素群設定手段と、比較対象画素群に含まれる各比較対象画素の輝度値と、前記検査対象画素の輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を比較対象画素群毎に求める最小輝度差算出手段と、比較対象画素群毎に算出された最小輝度差のうち、値が最大となる最小輝度差を前記検査対象画素の欠陥強調値とする欠陥強調値算出手段と、を有し、前記欠陥検出手段は、前記欠陥強調値が所定の欠陥閾値以上となる画素を欠陥候補画素として抽出する欠陥候補抽出手段と、互いに隣接する前記欠陥候補画素を欠陥候補画素群とし、この欠陥候補画素群に外接する外接長方形のうち、面積が最小となる外接長方形を検査外接四角形として設定する外接四角形設定手段と、前記欠陥候補画素の慣性軸方向に沿う前記検査外接四角形の長辺寸法、および前記慣性軸方向に直交する幅方向に沿う前記検査外接四角形の短辺寸法を計測するとともに、長辺寸法に対する短辺寸法の比である寸法比を算出する寸法比算出手段と、前記検査外接四角形に対する前記欠陥候補画素群の面積比を算出する面積比算出手段と、前記寸法比算出工程にて算出される寸法比が所定の寸法比閾値未満となる場合、または前記面積比算出工程にて算出される面積比が所定の面積比閾値未満となる場合に、前記欠陥候補画素群をスジ状欠陥として特定する欠陥特定手段と、を有することを特徴とする。
【0020】
この発明は、上述した欠陥検出方法を実施する欠陥検出装置であり、上記欠陥検出方法の発明と同様の作用および効果を享受でき、欠陥強調値に基づいて高精度に欠陥候補画素を抽出することができ、これらの欠陥候補画素から、スジ状欠陥のみを精度よく検出することができる。
【0021】
本発明の欠陥検出プログラムは、演算手段により読み込まれて演算処理される欠陥検出プログラムであって、前記欠陥検出プログラムは、被検査物を撮像した撮像画像に対して欠陥強調フィルターを用いて欠陥強調処理を行う欠陥強調処理手段と、前記欠陥強調処理工程で得られた各画素の欠陥強調値に基づいて欠陥を検出する欠陥検出手段と、を備え、前記欠陥強調処理手段は、前記撮像画像に対して、検査対象画素を順次選定する検査対象画素選定手段と、選定された検査対象画素の中心から所定距離離れた比較対象画素を検査対象画素の周囲に略円形状に複数配置し、これらの比較対象画素のうち前記検査対象画素を挟んで互いに点対称の位置に配置される一対の比較対象画素をセットとした比較対象画素群を複数設定する比較対象画素群設定手段と、比較対象画素群に含まれる各比較対象画素の輝度値と、前記検査対象画素の輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を比較対象画素群毎に求める最小輝度差算出手段と、比較対象画素群毎に算出された最小輝度差のうち、値が最大となる最小輝度差を前記検査対象画素の欠陥強調値とする欠陥強調値算出手段と、を有し、前記欠陥検出手段は、前記欠陥強調値が所定の欠陥閾値以上となる画素を欠陥候補画素として抽出する欠陥候補抽出手段と、互いに隣接する前記欠陥候補画素を欠陥候補画素群とし、この欠陥候補画素群に外接する外接長方形のうち、面積が最小となる外接長方形を検査外接四角形として設定する外接四角形設定手段と、前記欠陥候補画素の慣性軸方向に沿う前記検査外接四角形の長辺寸法、および前記慣性軸方向に直交する幅方向に沿う前記検査外接四角形の短辺寸法を計測するとともに、長辺寸法に対する短辺寸法の比である寸法比を算出する寸法比算出手段と、前記検査外接四角形に対する前記欠陥候補画素群の面積比を算出する面積比算出手段と、前記寸法比算出工程にて算出される寸法比が所定の寸法比閾値未満となる場合、または前記面積比算出工程にて算出される面積比が所定の面積比閾値未満となる場合に、前記欠陥候補画素群をスジ状欠陥として特定する欠陥特定手段と、を有することを特徴とする。
【0022】
この発明は、上述した欠陥検出方法を実施するために用いられるプログラムであり、上記欠陥検出方法の発明と同様の作用および効果を享受でき、欠陥強調値に基づいて高精度に欠陥候補画素を抽出することができ、これらの欠陥候補画素から、スジ状欠陥のみを精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態に係る欠陥検出装置の構成を示すブロック図。
【図2】制御装置の概略構成を示すブロック図。
【図3】欠陥強調フィルターの比較対象画素配置の一例を示す図。
【図4】撮像画像の画像データ上に設定される検査対象画素および比較対象画素を示す図。
【図5】直線状のスジ状欠陥の一例を示す図。
【図6】折線状のスジ状欠陥の一例を示す図。
【図7】環状のスジ状欠陥の一例を示す図。
【図8】シミ状欠陥の一例を示す図。
【図9】本実施の形態の欠陥検出装置の動作を示すフローチャート。
【図10】欠陥強調処理工程の処理を示すフローチャート。
【図11】欠陥検出工程の処理を示すフローチャート。
【図12】撮像画像の一例を示す図。
【図13】図12の撮像画像に対する明欠陥強調画像を示す図。
【図14】図12の撮像画像に対する暗欠陥強調画像を示す図。
【図15】図13に対する明欠陥特定画像を示す図。
【図16】図14に対する暗欠陥特定画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔欠陥検出装置の構成〕
図1は本発明の一実施の形態に係る欠陥検出装置の構成を示すブロック図である。
本実施の形態の欠陥検出装置100は、フレキシブル基板や、液晶パネル(TFTパネル)、半導体ウェハなどの被検査物1の欠陥を検出するものである。被検査物1は、XYステージ2上に載置され、平面的に移動可能に構成されている。
欠陥検出装置100は、顕微鏡4、CCDカメラ5、制御装置6、表示装置7を備えている。
【0025】
顕微鏡4は、被検査物1を拡大してCCDカメラ5で撮影するために設けられており、被検査物1の欠陥を検出するために十分な倍率を有するものが用いられている。
CCDカメラ5は、顕微鏡4を介して被検査物1を撮影する撮像手段である。
制御装置6は、CCDカメラ5を制御し、被検査物1を検出する画像処理手段である。表示装置7は、制御装置6に接続された液晶ディスプレイなどの表示装置である。
【0026】
図2は、制御装置6の概略構成を示すブロック図である。
この制御装置6は、例えばパーソナルコンピュータなどを用いることができ、CCDカメラ5により撮像された撮像画像を処理して、被検査物1の欠陥を検出する。そして、この制御装置6は、図2に示すように、画像入力手段60と、欠陥強調処理手段61と、欠陥検出手段62とを備えている。また、本実施の形態では、制御装置6は、HDDやメモリなどの記憶手段を備え、この記憶手段に記録されるプログラムとして欠陥強調処理手段61および欠陥検出手段62が記憶されている。そして、制御装置6に設けられるCPU(Central Processing Unit)により、記憶手段から欠陥強調処理手段61や欠陥検出手段62などのプログラムが読み出され、演算処理により欠陥の検出処理が実行される。
なお、本実施の形態では、上記のように、欠陥強調処理手段61および欠陥検出手段62がプログラムとして記憶手段に記憶され、CPUにより適宜読み出されて処理が実行される構成を例示するが、これに限定されない。すなわち、欠陥強調処理手段61や欠陥検出手段62は、ICチップなどの集積回路により構成され、画像入力手段60から入力される撮像画像の画像データを適宜処理することで欠陥を検出する構成としてもよい。
【0027】
画像入力手段60は、CCDカメラ5から撮像された撮像画像の画像データが入力され、その画像データを図示しない記憶手段に記憶する。
【0028】
欠陥強調処理手段61は、取得した画像に対して、欠陥強調フィルターを用いて、欠陥強調処理を行う欠陥強調処理工程を実施するものであり、検査対象画素選定手段611と、比較対象画素群設定手段612と、最小輝度差算出手段613と、欠陥強調値算出手段614とを備える。
【0029】
検査対象画素選定手段611は、撮像画像において検査対象画素を順次選定する検査対象画素選定工程を実施する。
比較対象画素群設定手段612は、検査対象画素選定手段611により選定された検査対象画素の中心から、所定距離(比較画素選択距離)だけ離れた比較対象画素を検査対象画素の周囲に略円形状に複数配置し、これらの比較対象画素を複数の比較対象画素群に分けて設定する比較対象画素群設定工程を実施する。また、予め検査対象画素と比較対象画素の位置関係を求めた欠陥強調フィルター構成を用いて、比較対象画素を選択してもよい。図3は、比較対象画素選択距離を7画素に設定した欠陥強調フィルター構成の一例を示す図である。この欠陥強調フィルター構成70は、図3に示すように、検査対象画素に対応する中心画素71と、この中心画素71から7画素分離れた位置に略円環状に配置される複数の比較対象画素に対応する比較設定画素72とを備えている。そして、比較対象画素群設定手段612は、撮像画像から検査対象画素選定手段611により選定された検査対象画素O(図4参照)と、中心画素71とが一致するように欠陥強調フィルター構成70を重ね合わせ、撮像画像上の比較設定画素72と重なり合う画素を比較対象画素S〜S56(図4参照)として設定すればよい。
【0030】
なお、図3において、欠陥強調フィルター構成70として、中心画素71から比較設定画素72までの比較画素選択距離を、7画素として設定しているが、これは、被検査物1において検査すべきスジ状欠陥の線幅により適宜設定される。すなわち、記憶手段には、比較画素選択距離が異なる複数の欠陥強調フィルター構成70が記憶されており、比較対象画素群設定手段612は、例えば検査者が設定入力した設定事項に応じて、欠陥強調フィルター構成70を切り替えて比較対象画素を設定する。例えば、図3に示すような欠陥強調フィルター構成70により選択される比較対象画素では、1つの比較対象画素群を構成する、検査対象画素を挟んで相対する一対の比較対象画素間の距離が14画素となるが、この場合、スジ状欠陥の線幅が12画素以下となるスジ状欠陥を精度よく検出可能となる。この時、検査者によりさらに細い線幅のスジ状欠陥を検出する旨の要求信号、例えば線幅が5画素分程度のスジ状欠陥を検出する旨の設定入力が入力された場合、欠陥強調フィルター構成70は、比較対象画素間の距離が7〜8画素程度、すなわち比較画素選択距離が3〜4画素となる欠陥強調フィルター構成70を読み出し、この欠陥強調フィルター構成70により比較対象画素を設定する。
また、比較対象画素群設定手段612は、設定した比較対象画素を複数の比較対象画素群に分割する。本実施の形態では、比較対象画素群設定手段612は、検査対象画素を挟んで互いに点対称となる位置に配置される一対の比較対象画素をセットとした比較対象画素群を設定する。例えば、図3に示すような欠陥強調フィルター構成70を用いた場合、検査対象画素に対して、図4に示すような56個の比較対象画素が設定される。この場合、比較対象画素Sと検査対象画素を挟んで点対称の位置関係となる比較対象画素Sn+28(ただし、n=1,2,3…28)を比較対象画素群として設定する。
【0031】
最小輝度差算出手段613は、比較対象画素群に含まれる各比較対象画素の輝度値と、前記検査対象画素の輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を比較対象画素群毎に求める最小輝度差算出工程を実施する。
具体的には、最小輝度差算出手段613は、各比較対象画素群に対して、明欠陥最小輝度差および暗欠陥最小輝度差を算出する。
明欠陥最小輝度差の算出では、まず、次式(1)(2)に示す式に基づいて、明欠陥輝度差Fwsnを算出する。
【0032】
【数1】

【0033】
この後、最小輝度差算出手段613は、次式(3)により、式(1)(2)にて算出された明欠陥輝度差Fwsnのうち、値が小さい一方を明欠陥最小輝度差Dwsnとして算出する。
【0034】
【数2】

【0035】
一方、暗欠陥最小輝度差の算出は、次式(4)(5)に示す式に基づいて、暗欠陥輝度差Fbsnを算出する。
【0036】
【数3】

【0037】
そして、最小輝度差算出手段613は、次式(6)により、式(4)(5)にて算出された暗欠陥輝度差Fbsnのうち、値が小さい一方を暗欠陥最小輝度差Dbsnとして算出する。
【0038】
【数4】

【0039】
欠陥強調値算出手段614は、式(7)に示すように、比較対象画素群毎に算出された明欠陥最小輝度差Dwsn、暗欠陥最小輝度差Dbsnのうち、値が最大となる値と求め、それぞれ明欠陥強調値R1、暗欠陥強調値R2とする。
【0040】
【数5】

【0041】
欠陥検出手段62は、欠陥強調処理手段61で処理された結果である明欠陥強調値R1、暗欠陥強調値R2から、欠陥候補画素を抽出し、さらに、これらの欠陥候補画素からスジ状欠陥のみを検出する。この欠陥検出手段62は、図2に示すように、欠陥候補抽出手段621と、外接四角形設定手段622と、寸法比算出手段623と、面積比算出手段624と、欠陥特定手段625と、を備えている。
【0042】
欠陥候補抽出手段621は、欠陥強調処理手段61により算出される欠陥強調値R1,R2を所定の閾値と比較して、欠陥候補画素を抽出する欠陥候補抽出工程を実施する。この閾値としては、次式(8)(9)に示すような明欠陥閾値wslevelと、暗欠陥閾値bslevelとが設定され、それぞれ明欠陥強調値R1,暗欠陥強調値R2と比較することで明欠陥候補画素および暗欠陥候補画素をそれぞれ抽出する。
【0043】
【数6】

【0044】
上記式(8)(9)において、avr(明)、avr(暗)は、それぞれ明欠陥強調値R1の平均値、暗欠陥強調値R2の平均値であり、σ(明)、σ(暗)は、それぞれ明欠陥強調値R1、暗欠陥強調値R2の標準偏差であり、α1、α2、β1、β2は、それぞれ任意の定数であり、検査対象となる撮像画像の状況により決定される。また、明欠陥強調値R1、暗欠陥強調値R2が負の値となる画素も存在するが、明欠陥強調値R1が負の値の場合、暗欠陥であることを示し、暗欠陥強調値R2が負の値の場合、明欠陥であることを示すものであるため、avr(明)、avr(暗)およびσ(明)、σ(暗)の計算において、これらの欠陥強調値R1,R2の負の値は、省いて各閾値が算出される。
【0045】
また、欠陥強調処理手段61で処理された画像に対し、メディアンフィルタなどを適用してノイズ除去処理を行ってから、欠陥候補抽出手段621による欠陥候補画素の抽出処理を実行してもよい。
【0046】
外接四角形設定手段622は、欠陥候補抽出手段621により抽出された欠陥候補画素のうち、互いに隣接する画素に欠陥候補画素がある場合、これらの欠陥候補画素を連結した欠陥候補画素群81(図5〜図8参照)として検出する。ここで、外接四角形設定手段622は、例えば欠陥候補画素の周囲8画素を検査し、この8画素内に欠陥候補画素がある場合に互いに隣接する欠陥候補画素として認識し、欠陥候補画素群81として検出する。
【0047】
そして、外接四角形設定手段622は、検出した欠陥候補画素群81に外接する検査外接四角形82を設定する外接四角形設定工程を実施する。
具体的には、外接四角形設定手段622は、欠陥候補画素群81の外周部に配置される外周欠陥候補画素を検出し、この外周欠陥候補画素の少なくとも3点以上に接する外接長方形を検出する。そして、外接四角形設定手段622は、これらの検出される外接長方形のうち、面積が最小となる外接長方形を検査外接四角形82として設定する。ここで、この検査外接四角形82の長辺に沿う一方向が欠陥候補画素群の慣性主軸方向となる。
【0048】
寸法比算出手段623は、外接四角形設定手段622により設定された検査外接四角形82の長辺の長さ寸法l、および短辺の長さ寸法hを計測し、長辺の寸法に対する短辺の寸法の比である寸法比M1(=h/l)を算出する寸法比算出工程を実施する。
面積比算出手段624は、外接四角形設定手段622により設定された検査外接四角形82内の欠陥候補画素群81の面積を計測する。これには、例えば欠陥候補画素群81を形成する欠陥候補画素の個数mを計測し、1画素分の面積aと掛け合わせることで算出する。そして、面積比算出手段624は、検査外接四角形82に対する欠陥候補画素群81の面積比M2(=ma/lh)を算出する面積比算出工程を実施する。
【0049】
欠陥特定手段625は、寸法比算出手段623および面積比算出手段624により算出される寸法比M1および面積比M2を、寸法比閾値N1および面積比閾値N2と比較して、スジ状欠陥を特定する欠陥特定工程を実施する。
ここで、図5から図8に、欠陥候補画素群81の例を示す。図5は、直線状のスジ状欠陥の一例を示す図である。図6は、折線状のスジ状欠陥の一例を示す図である。図7は、環状のスジ状欠陥の一例を示す図である。図8は、シミ状欠陥の一例を示す図である。
図5に示すような直線状のスジ状欠陥では、慣性主軸方向に沿う長さ寸法に対して、慣性主軸方向に直交する幅方向の長さ寸法の比、すなわち、検査外接四角形82の長辺に対する短辺の寸法比M1が小さい値(M1≒0)となる。一方、図8に示すようなシミ状欠陥では、検査外接四角形82の長辺に対する短辺の寸法比M1が大きくなる(例えば図8では、M1≒1)。したがって、欠陥特定手段625は、寸法比M1が所定の寸法比閾値N1より小さいか否かを判断することで、欠陥候補画素群81が直線状のスジ状欠陥であるか否かを判別することが可能となる。
【0050】
また、曲線状のスジ状欠陥や折れ線状、環状のスジ状欠陥では、曲率が小さい場合や折曲角度が小さい場合では、上記した直線状のスジ状欠陥と同様に、寸法比M1が十分小さいものとなり、スジ状欠陥として特定することが可能であるが、図6に示すように、検査外接四角形82の長辺と短辺との寸法差が小さい場合、寸法比M1の値が大きくなる。このような場合では、上記寸法比M1のみでは、スジ状欠陥であっても、シミ状欠陥として検出されない。これに対して、本実施の形態の欠陥検出装置100では、欠陥特定手段625は、面積比による欠陥検出をも実施する。
すなわち、図8に示すようなシミ状欠陥では、検査外接四角形82に対する欠陥候補画素群81の面積比M2が大きくなり、例えば図8では、M2≒1となる。これに対し、図6に示すような曲線上のスジ状欠陥や、図7に示すような環状のスジ状欠陥では、検査外接四角形82に対する欠陥候補画素群81の面積比M2が十分小さい値(M2≒0)となる。したがって、欠陥特定手段625は、面積比M2が所定の面積比閾値N2より小さいか否かを判断することで、欠陥候補画素群81が角度変化を有するスジ状欠陥であるか否かを判別することが可能となる。
欠陥特定手段625は、以上のように、寸法比M1が寸法比閾値N1より小さい場合、または面積比M2が面積比閾値N2より小さい場合のいずれか一方に当てはまる場合に、その欠陥候補画素群81をスジ状欠陥として特定する。
【0051】
〔欠陥検出装置の動作〕
次に、本実施の形態の欠陥検出装置による欠陥検出方法について説明する。
図9は、本実施の形態の欠陥検出装置100の動作を説明するためのフローチャートである。
【0052】
まず、被検査物1がXYステージ2にセットされると、制御装置6の画像入力手段60は、被検査物1の画像をCCDカメラ5で撮影し、その撮影画像の画像データを取得する画像取得工程(撮像工程)を行う(ST1)。このとき撮影画像の画像データは、図示しないA/D変換器により、例えば、256階調(8ビット)のデジタルデータとして、制御装置6に取り込まれる。
なお、被検査物1が液晶パネルなどの表示パネルの場合、表示パネル上に特定の画像パターンを表示させ、欠陥を検出しやすいようにしてもよい。例えば、暗欠陥を検出しやすいように全画面を白表示する全白画面パターン、明欠陥を検出しやすいように全画面を黒表示する全黒画面パターン、中間調の画面パターン等があり、検出したい欠陥種類に応じて適宜設定すればよい。
【0053】
次に、欠陥強調処理手段61は、取得された画像に対して欠陥を強調する欠陥強調処理工程を行う(ST2)。この欠陥強調処理工程ST2は、低コントラストの欠陥はそのままでは検出が難しいために、画像の中の欠陥成分のみを強調する処理を行うものである。欠陥強調処理工程ST2は、図10に示す処理フローで実施される。
【0054】
欠陥強調処理手段61は、まず、検査対象画素選定手段611により、検査対象となる検査対象画素を選定する検査対象画素選定工程を実行する(ST21)。
本実施の形態では、CCDカメラ5の各撮像画素単位で対象画素を選定するようにされている。
【0055】
次に、欠陥強調処理手段61は、比較対象画素群設定手段612により、比較対象画素群設定工程を実行する(ST22)。
すなわち、比較対象画素群設定手段612は、図3に示すような欠陥強調フィルター構成70を用い、図4に示すように、検査対象画素Oを中心とする円周方向に56個の比較対象画素S〜S56を設定する。
【0056】
なお、検査対象画素Oと比較対象画素S〜S56との距離が7画素である欠陥強調フィルター構成70により、比較対象画素S〜S56を設定したが、上記したように、検出対象となるスジ状欠陥の幅寸法に応じて適宜欠陥強調フィルター構成70が選択される。すなわち、本実施の形態では、検査対象画素Oと比較対象画素S〜S56との輝度差で欠陥を強調するため、スジ状欠陥は比較対象画素S〜S56で囲まれるエリア内に納まる幅寸法でなければ検出できない。従って、検出したいスジ状欠陥の大きさによって、前記検査対象画素Oと比較対象画素S〜S56の距離を設定すればよい。
【0057】
そして、比較対象画素群設定手段612は、これらの比較対象画素S〜S56を、検査対象画素Oを中心として点対称となる一対の比較対象画素をセットとした、28個の比較対象画素群に分けて設定する。
【0058】
次に、欠陥強調処理手段61は、最小輝度差算出手段613により最小輝度差算出工程を実行する(ST23)。具体的には、最小輝度差算出手段613は、まず第1の比較対象画素群(S,S29)の一対の比較対象画素を順に選択し、式(1)(2)に示すように、検査対象画素Oの輝度値から各比較対象画素S,S29の輝度値を引いて明欠陥輝度差Fws1,Fws29を求める。また、最小輝度差算出手段613は、各比較対象画素S,S29の輝度値から検査対象画素Oの輝度値を引いて暗欠陥輝度差Fbs1,Fbs29を求める。
【0059】
次に、最小輝度差算出手段613は、式(3)および式(6)を用いて、第1の比較対象画素群の各明欠陥輝度差Fws1,Fws29のうち、値が最小となる明欠陥最小輝度差Dws1、および、各暗欠陥輝度差Fbs1,Fbs29のうち、値が最小となる暗欠陥最小輝度差Dbs1を求める。
【0060】
次に、最小輝度差算出手段613は、第2の比較対象画素群の各画素を順次1画素ずつ選択しながら、上記処理と同様に、検査対象画素Oの輝度値から各比較対象画素S,S30の輝度値を引いた明欠陥輝度差Fws2,Fws30、および各比較対象画素S,S30の輝度値から検査対象画素Oの輝度値を引いた暗欠陥輝度差Fbs2,Fbs30を求める。そして、上記第1の比較画素群と同様に、これらの値の最小値である明欠陥最小輝度差Dws1、および暗欠陥最小輝度差Dbs1を求める。
最小輝度差算出手段613は、n=3〜28に対しても、上記第1の比較画素群、第2の比較画素群と同様の処理を実施し、明欠陥最小輝度差Dwsn、および暗欠陥最小輝度差Dbsnを順次求める。
【0061】
次に、欠陥強調処理手段61は、欠陥強調値算出手段614により、検査対象画素の欠陥強調値を設定する欠陥強調値算出工程を実行する(ST24)。具体的には、欠陥強調値算出手段614は、各比較対象画素群ごとに算出した明欠陥最小輝度差Dwsnのうちで、値が最大となるものを検査対象画素Oの位置の明欠陥強調値R1として設定し、各比較対象画素群ごとに算出した明欠陥最小輝度差Dwsnのうちで、値が最大となるものを検査対象画素Oの位置の暗欠陥強調値R2として設定する。
【0062】
欠陥強調処理手段61は、図10に示すように、取得した画像の全体にわたって欠陥強調処理が済んだか否かを判断し(ST25)、処理済みでない場合には、検査対象画素Oを移動させて別の検査対象画素Oを選定し(ST21)、比較対象画素群設定工程ST22、最小輝度差算出工程ST23、欠陥強調値算出工程ST24を行う。すなわち、検査対象画素OをCCDカメラ5の撮像画素単位に設定しているため、検査対象画素Oを撮像画素毎に順次移動して各工程ST21〜24を順次行えばよい。
【0063】
一方、ST25において処理済みであった場合には、欠陥強調処理手段61は、各画素毎に算出した欠陥強調値による欠陥強調画像を生成する(ST26)。すなわち、欠陥強調処理手段61は、明欠陥強調値R1に基づいた明欠陥強調画像を生成し、暗欠陥強調値R2に基づいた暗欠陥強調画像を生成する。ここで、本実施の形態では、欠陥強調処理手段61は、各欠陥強調値R1,R2を輝度値とした明欠陥強調画像および暗欠陥強調画像を生成するが、例えば各欠陥強調値R1,R2に応じたレベル値を設定し、このレベル値に応じて輝度値や色度を設定した強調画像を生成するものであってもよい。ここで、本実施の形態における欠陥検出処理のサンプルデータとして、図12に、撮像画像の一例を示し、図13に、図12の撮像画像に対する明欠陥強調画像を示し、図14に、図12の撮像画像に対する暗欠陥強調画像を示す。
なお、欠陥強調処理手段61は、明欠陥あるいは暗欠陥のいずれか一方の欠陥強調値しか算出していない場合には、算出した欠陥強調値による欠陥強調画像のみを生成する。
以上により欠陥強調処理工程ST2が終了する。
【0064】
欠陥強調処理工程ST2が終了すると、図9に示すように、欠陥検出手段62は、欠陥強調処理工程ST2で得られた欠陥強調画像に基づいて、スジ欠陥を検出する欠陥検出工程を実行する(ST3)。図11は、欠陥検出手段62による欠陥検出処理を示すフローチャートである。
【0065】
欠陥検出処理では、まず、欠陥検出手段62は、欠陥候補抽出手段621により、欠陥候補画素を抽出する欠陥候補抽出工程を実施する(ST31)。
これには、欠陥検出手段62の欠陥候補抽出手段621は、明欠陥強調画像に対して、式(8)に示すような明欠陥を切り出す明欠陥閾値を設定し、暗欠陥強調画像に対して、式(9)に示すような暗欠陥を切り出す暗欠陥閾値を設定する。そして、欠陥候補抽出手段621は、明欠陥強調画像および暗欠陥強調画像の輝度値、すなわち明欠陥強調値R1および暗欠陥強調値R2と、設定した明欠陥閾値wslevelおよび暗欠陥閾値bslevelをと比較し、閾値以上となる画素を欠陥候補画素として切り出す。この際、欠陥候補抽出手段621は、明欠陥強調結果に対しては明欠陥閾値wslevel以上の画素を明欠陥候補画素として検出し、暗欠陥強調結果に対しては暗欠陥閾値bslevel以上の画素を暗欠陥候補画素として検出する。
【0066】
次に、欠陥検出手段62は、外接四角形設定手段622により、欠陥候補画素群81を設定する欠陥候補画素群抽出工程を実施し(ST32)、さらに、この欠陥候補画素群81に外接する検査外接四角形82を設定する外接四角形設定工程を実施する(ST33)。
【0067】
具体的には、欠陥候補画素群抽出工程では、外接四角形設定手段622は、ST31により抽出される各欠陥候補画素に対して、周囲8画素範囲内に他の欠陥候補画素があるか否かを判断する。そして、欠陥候補画素の周囲8画素内に他の欠陥候補画素がある場合、これらの欠陥候補画素を互いに関連付け、欠陥候補画素群81として抽出する。ここで、欠陥候補画素群81に含まれる欠陥候補画素の数が所定閾値未満である場合、欠陥候補画素がノイズであることが考えられるため、この欠陥候補画素群81に対しては、以降の処理を実施させない動作をしてもよい。
【0068】
また、ST33の外接四角形設定工程では、外接四角形設定手段622は、欠陥候補画素群81に含まれる外周欠陥候補画素を検出し、これらの外周欠陥候補画素に外接する外接長方形のうち、面積が最小となる外接長方形を検査外接四角形82として設定する。
【0069】
この後、欠陥検出手段62は、寸法比算出手段623によりST33の外接四角形設定処理にて設定された検査外接四角形82の長辺の長さ寸法lおよび短辺の長さ寸法hを計測する。そして、寸法比算出手段623は、長辺の長さに対する短辺の長さの比である寸法比M1を算出する寸法比算出工程を実施する(ST34)。
【0070】
また、欠陥検出手段62は、面積比算出手段624により、ST33の検査外接四角形82に対する欠陥候補画素群81の面積比を算出する面積比算出工程を実施する(ST35)。具体的には、面積比算出手段624は、例えば欠陥候補画素群81に含まれる欠陥候補画素の個数mを計測し、1画素分の面積aを掛け合わせることで欠陥候補画素群81の面積(ma)を算出し、検査外接四角形82の面積(lh)との面積比(ma/lh)を算出する。
【0071】
次に、欠陥検出手段62は、欠陥特定手段625により、欠陥候補画素群81からスジ状欠陥のみを特定する欠陥特定工程を実施する(ST36)。
具体的には、欠陥特定手段625は、ST34の寸法比算出処理にて算出される寸法比M1と所定の寸法比閾値N1(例えばN1=0.1)とを比較し、寸法比M1が寸法比閾値N1未満である場合にその欠陥候補画素群81をスジ状欠陥として特定する。また、欠陥特定手段625は、ST35の面積比算出処置にて算出される面積比M2と所定の面積比閾値N2(例えばN2=0.1)とを比較し、面積比M2が面積比閾値N2未満である場合に、その欠陥候補画素群81をスジ状欠陥として特定する。すなわち、欠陥特定手段625は、寸法比M1が寸法比閾値N1未満となる欠陥候補画素群81、または面積比M2が面積比閾値N2未満となる欠陥候補画素群81を検出し、スジ状欠陥として特定する。
【0072】
また、欠陥検出手段62は、特定したスジ状欠陥に基づいた欠陥特定画像を生成する。ここで、欠陥検出手段62は、明欠陥検出強調画像および暗欠陥強調画像に対して、それぞれ欠陥特定画像を生成する。すなわち、欠陥検出手段62は、図13に示すような明欠陥強調画像に対して検出されるスジ欠陥に基づいて、図15に示すような明欠陥特定画像を生成し、また、図14に示すような暗欠陥強調画像に対して検出されるスジ欠陥に基づいて、図16に示すような暗欠陥特定画像を生成する。
なお、これらの明欠陥特定画像および暗欠陥特定画像を合成して、1つの欠陥特定画像とする処理を実施してもよい。
【0073】
なお、上記実施の形態では、欠陥強調フィルター構成70として、中心画素71から比較設定画素72までの画素間距離が7画素である例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、検査対象となるスジ欠陥の幅寸法などが特に設定されない場合などでは、中心画素71から比較設定画素72までの画素間距離が異なる複数の欠陥強調フィルター構成70を用い、各欠陥強調フィルター構成70により設定された欠陥強調値R1,R2に基づいて、スジ状欠陥を特定する欠陥検出処理を実施してもよい。この場合、各欠陥強調フィルター構成70に対応して、様々なサイズのスジ状欠陥を検出することが可能となる。また、このように検出されたスジ状欠陥を合成して例えば1つの欠陥特定画像とすることで、様々な幅寸法のスジ状欠陥が表示した欠陥特定画像を得ることができる。
【0074】
〔実施の形態の作用効果〕
上述のように、本実施の形態の欠陥検出装置100では、欠陥強調処理手段61は、検査対象画素Oの周囲に複数の上記比較対象画素S〜S56を配置し、かつ、これらの上記比較対象画素S〜S56を複数の比較対象画素群に分けて設定し、前記検査対象画素Oの輝度値と、各比較対象画素S〜S56の輝度値との差を求め、比較対象画素群ごとに輝度差データが最も小さい最小輝度差Dwsn,Dbsnを算出し、これらの最小輝度差Dwsn,Dbsnのうち、値が大きいものを検査対象画素Oの欠陥強調値R1,R2としている。
そして、欠陥検出手段62は、欠陥候補抽出手段621により、上記のように算出された欠陥強調値R1,R2に基づいて欠陥候補画素を抽出し、外接四角形設定手段622により、互いに隣接する欠陥候補画素同士を連結した欠陥候補画素群81の検査外接四角形82を設定する。その後、欠陥検出手段62は、寸法比算出手段623により、検査外接四角形の長辺に対する短辺の寸法比M1を算出し、面積比算出手段624により、検査外接四角形に対する欠陥候補画素群81の面積比M2を算出する。そして、欠陥特定手段625は、寸法比M1が寸法比閾値N1未満となる欠陥候補画素群81、または面積比M2が面積比閾値N2未満となる欠陥候補画素群81を抽出し、これらの欠陥候補画素群81をスジ状欠陥として検出する。
【0075】
このため、欠陥検出装置100では、各比較対象画素群において最小輝度差を求めることで、各比較対象画素群において、前記検査対象画素Oを含み、かつ、比較対象画素で囲まれる領域内にあるシミ状欠陥および比較対象画素に囲われる領域内を通るスジ状欠陥を強調することができる。この時、各比較対象画素群は、比較対象画素の位置が互いに異なるため、一方の比較対象画素群では強調できない欠陥も、他方の比較対象画素群において強調できるため、各比較対象画素群の最小輝度差のうち、値が大きいものを検査対象画素Oの欠陥強調値とすることで、シミ状欠陥およびスジ状欠陥の欠陥候補画素を確実に強調して検出することができ、スジ状欠陥の角度による検出漏れなどを防止でき、欠陥検出感度を向上させることができる。
そして、上記のように検出された欠陥候補画素に対して、欠陥候補画素群81および検査外接四角形82を設定し、この検査外接四角形82に対する寸法比M1、および検査外接四角形82に対する欠陥候補画素群81の面積比M2を算出する。このような検査外接四角形82を用いたスジ状欠陥の検出では、欠陥候補画素群81が直線状のスジ状欠陥である場合、面積比M2はM2≒1となるが、検査外接四角形82の長辺に対する短辺の長さ寸法が小さくなり、寸法比M1が0に近い値となる。したがって、欠陥特定手段625では、この寸法比M1を寸法比閾値N1と比較することで、容易に欠陥候補画素群81から直線状のスジ状欠陥と検出することができる。また、欠陥候補画素群81が曲線状、折線状、または環状のスジ状欠陥である場合、寸法比M1は1に近い値となる場合もあるが、面積比M2は0に近い値となる。したがって、欠陥特定手段625では、この面積比M2を面積比閾値N2と比較することで、容易に曲線状、折線状、または環状のスジ状欠陥を検出することができる。
以上により、欠陥強調処理手段61により、欠陥候補画素を精度よく検出することができ、欠陥検出手段62により、これらの欠陥候補画素からスジ状欠陥を精度よく特定することができる。したがって、被検査物1からスジ状欠陥のみを検出する検査において、容易にかつ精度よくスジ状欠陥を検出することができる。
【0076】
また、最小輝度差算出手段613は、最小輝度差の算出において、式(1)(2)および式(4)(5)を用いることで、明欠陥最小輝度差Dwsnおよび暗欠陥最小輝度差Dbsnを求め、欠陥強調値算出手段614は、これらの明欠陥最小輝度差Dwsnおよび暗欠陥最小輝度差Dbsnから、それぞれ明欠陥強調値R1および暗欠陥強調値R2を求め、欠陥検出手段62では、これら明欠陥強調値R1および暗欠陥強調値R2に基づいて、スジ状明欠陥およびスジ状暗欠陥をそれぞれ検出する。
このため、明欠陥と暗欠陥とを分けてスジ状欠陥を検出することができ、欠陥検出精度をより向上させることができる。また、被検査物1における明欠陥、暗欠陥をそれぞれ分別して検出したい場合や、明欠陥および暗欠陥のうちいずれか一方を検出した場合にも容易に対応することができ、精度よく明欠陥のスジ状欠陥、暗欠陥のスジ状欠陥を検出することができる。
【0077】
また、欠陥強調処理手段61の比較対象画素群設定手段612は、検出すべきスジ状欠陥の幅寸法に応じて、欠陥強調フィルター構成70を選択して比較対象画素および比較対象画素群を設定する。
このため、例えば利用者の設定入力により、中心画素71から比較設定画素72までの画素間距離がより短い欠陥強調フィルター構成70を選択することで、より細かいスジ状欠陥のみを検出することができる。したがって、検出するスジ状欠陥の幅寸法を容易に変更することができ、検査目的に応じた適切な欠陥検出を実施することができる。
【0078】
また、この時、比較対象画素群設定手段612は、検出すべきスジ状欠陥の幅寸法に対して、中心画素71を挟んで配置される一対の比較設定画素72の画素間距離が2〜3画素だけ大きい欠陥強調フィルター構成70を用いて、比較対象画素および比較対象画素群を設定する。
欠陥強調フィルター構成70の中心画素71を挟んで配置される一対の比較設定画素72の画素間距離が、検出すべきスジ状欠陥の幅寸法と同寸法以上である場合、目的とする幅寸法のスジ状欠陥を検出することができるが、例えばスジ状欠陥の一部に幅寸法が大きくなる部分がある場合など、欠陥強調値が正しく算出されず、検出漏れが起こる場合がある。これに対して、上記のように、中心画素71を挟んで配置される一対の比較設定画素72の画素間距離が、検出すべきスジ状欠陥の幅寸法よりも2〜3画素大きい欠陥強調フィルター構成70を用いることで、より精度よくスジ状欠陥を検出することができる。なお、中心画素71を挟んで点対称配置される一対の比較設定画素72間の画素間距離が、検出すべきスジ状欠陥の幅寸法よりもさらに大きい欠陥強調フィルター構成70を用いてもよいが、この場合、欠陥でない良品部分も欠陥として検出してしまうなど過検出などが考えられるため、上記のように、検出対象のスジ状欠陥の幅寸法に対して、中心画素71を挟んで配置される一対の比較設定画素72の画素間距離が2〜3画素だけ大きい欠陥強調フィルター構成70を用いることが好ましい。
【0079】
そして、欠陥検出手段62の外接四角形設定手段622は、欠陥候補画素群81に外接する外接長方形のうち、面積が最小となるものと検査外接四角形82として設定する。そして、寸法比算出手段623および面積比算出手段624は、この検査外接四角形82に基づいてそれぞれ寸法比M1および面積比M2を算出する。
このような検査外接四角形82を設定することで、直線状のスジ欠陥がある場合、そのスジ欠陥の慣性軸方向と検査外接四角形の慣性軸方向(長辺に沿う方向)とを一致させることができる。すなわち、直線状のスジ欠陥の慣性軸方向に沿う長さ寸法と検査外接四角形82の長辺寸法とが略同一寸法となり、直線状のスジ欠陥の幅寸法と、検査外接四角形82の短辺寸法とが略同一寸法となる。したがって、検査外接四角形82の寸法比M1と寸法比閾値N1とを比較することで、直線状のスジ欠陥を容易に特定することができる。
また、面積比M2を用いて曲線状、折線状、環状などのスジ状欠陥を検出する場合において、上記のように検査外接四角形82を用いることで、検出精度を向上させることができる。すなわち、欠陥候補画素群81に外接する複数の外接長方形のうち、例えば面積が大きい外接四角形では、シミ状欠陥であっても、外接四角形の面積に対する欠陥候補画素の面積の比が小さくなる場合が考えられ、精度よくスジ状欠陥のみを検出することができない。これに対して、複数の外接長方形のうち、面積が最小となる外接長方形を検査外接四角形82とすると、曲線状、折線状、環状などのスジ状欠陥の場合のみ、面積比M2が小さくなり、シミ状欠陥では面積比M2が1に近い大きい値となる。したがって、このような検査外接四角形82を用いた面積比M2と面積比閾値N2とを比較することで、容易に、かつ精度よく曲線状、折線状、環状などのスジ状欠陥を検出することができる。
【0080】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上記実施の形態において、欠陥強調処理手段61および欠陥検出手段62は、記憶手段に記憶され、適宜CPUに読み出されて演算処理が実行されるプログラムとして構成される例を示したが、これに限定されるものではなく、例えばICチップなどの集積回路、各種ハードウェアにより構成されるものであってもよい。
【0081】
本発明は、被検査物1の撮像画像に、周囲と輝度差がある部分があれば検出できる。このため、本発明は、フレキシブル基板などにおける異物欠陥検出や、被検査物表面の傷や汚れの検出や、各種表示装置のスジ状欠陥の検出等に広く利用できる。
【0082】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【符号の説明】
【0083】
1…被検査物、61…欠陥強調処理手段、62…欠陥検出手段、70…欠陥強調フィルター構成、81…欠陥候補画素群、82…検査外接四角形、100…欠陥検出装置、611…検査対象画素選定手段、612…比較対象画素群設定手段、613…最小輝度差算出手段、614…欠陥強調値算出手段、621…欠陥候補抽出手段、622…外接四角形設定手段、623…寸法比算出手段、624…面積比算出手段、625…欠陥特定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を撮像した撮像画像に対して欠陥強調フィルターを用いて欠陥強調処理を行う欠陥強調処理工程と、
前記欠陥強調処理工程で得られた各画素の欠陥強調値に基づいて欠陥を検出する欠陥検出工程と、を備え、
前記欠陥強調処理工程は、
前記撮像画像に対して、検査対象画素を順次選定する検査対象画素選定工程と、
選定された検査対象画素の中心から所定距離離れた比較対象画素を検査対象画素の周囲に略円形状に複数配置し、これらの比較対象画素のうち前記検査対象画素を挟んで互いに点対称の位置に配置される一対の比較対象画素をセットとした比較対象画素群を複数設定する比較対象画素群設定工程と、
比較対象画素群に含まれる各比較対象画素の輝度値と、前記検査対象画素の輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を比較対象画素群毎に求める最小輝度差算出工程と、
比較対象画素群毎に算出された最小輝度差のうち、値が最大となる最小輝度差を前記検査対象画素の欠陥強調値とする欠陥強調値算出工程と、
を有し、
前記欠陥検出工程は、
前記欠陥強調値が所定の欠陥閾値以上となる画素を欠陥候補画素として抽出する欠陥候補抽出工程と、
互いに隣接する前記欠陥候補画素を欠陥候補画素群とし、この欠陥候補画素群に外接する外接長方形のうち、面積が最小となる外接長方形を検査外接四角形として設定する外接四角形設定工程と、
前記欠陥候補画素の慣性軸方向に沿う前記検査外接四角形の長辺寸法、および前記慣性軸方向に直交する幅方向に沿う前記検査外接四角形の短辺寸法を計測するとともに、長辺寸法に対する短辺寸法の比である寸法比を算出する寸法比算出工程と、
前記検査外接四角形に対する前記欠陥候補画素群の面積比を算出する面積比算出工程と、
前記寸法比算出工程にて算出される寸法比が所定の寸法比閾値未満となる場合、または前記面積比算出工程にて算出される面積比が所定の面積比閾値未満となる場合に、前記欠陥候補画素群をスジ状欠陥として特定する欠陥特定工程と、
を有することを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の欠陥検出方法において、
前記最小輝度差算出工程は、前記検査対象画素の輝度値から、比較対象画素群に含まれる各比較対象画素の輝度値を減算した明欠陥輝度差データから明欠陥最小輝度差を算出する明欠陥最小輝度差算出工程、および比較対象画素群に含まれる各比較対象画素の輝度値から、前記検査対象画素の輝度値を減算した暗欠陥輝度差データから暗欠陥最小輝度差を算出する暗欠陥最小輝度差算出工程と、を備え、
前記欠陥強調値算出工程は、前記明欠陥最小輝度差および前記暗欠陥最小輝度差に基づいて、明欠陥強調値および暗欠陥強調値をそれぞれ求め、
前記欠陥検出工程は、前記明欠陥強調値および前記暗欠陥強調値に基づいて、スジ状明欠陥およびスジ状暗欠陥をそれぞれ検出する
ことを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の欠陥検出方法において、
前記欠陥強調処理工程は、検査対象画素から比較対象画素までの距離が異なる複数の欠陥強調フィルターを用いて前記欠陥強調処理を実施する
ことを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の欠陥検出方法において、
前記欠陥強調処理工程は、前記欠陥検出工程により検出する前記スジ状欠陥の幅寸法に応じて、前記検査対象画素から前記比較対象画素までの距離が設定された欠陥強調フィルターを用いて前記欠陥強調処理を実施する
ことを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項5】
請求項4に記載の欠陥検出方法において、
前記欠陥強調処理工程は、前記検査対象画素から前記比較対象画素までの距離が、前記欠陥検出工程により検出する前記スジ状欠陥の幅寸法に対して所定画素分大きい距離となる欠陥強調フィルターを用いて前記欠陥強調処理を実施する
ことを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項6】
被検査物を撮像した撮像画像に対して欠陥強調フィルターを用いて欠陥強調処理を行う欠陥強調処理手段と、
前記欠陥強調処理工程で得られた各画素の欠陥強調値に基づいて欠陥を検出する欠陥検出手段と、を備え、
前記欠陥強調処理手段は、
前記撮像画像に対して、検査対象画素を順次選定する検査対象画素選定手段と、
選定された検査対象画素の中心から所定距離離れた比較対象画素を検査対象画素の周囲に略円形状に複数配置し、これらの比較対象画素のうち前記検査対象画素を挟んで互いに点対称の位置に配置される一対の比較対象画素をセットとした比較対象画素群を複数設定する比較対象画素群設定手段と、
比較対象画素群に含まれる各比較対象画素の輝度値と、前記検査対象画素の輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を比較対象画素群毎に求める最小輝度差算出手段と、
比較対象画素群毎に算出された最小輝度差のうち、値が最大となる最小輝度差を前記検査対象画素の欠陥強調値とする欠陥強調値算出手段と、
を有し、
前記欠陥検出手段は、
前記欠陥強調値が所定の欠陥閾値以上となる画素を欠陥候補画素として抽出する欠陥候補抽出手段と、
互いに隣接する前記欠陥候補画素を欠陥候補画素群とし、この欠陥候補画素群に外接する外接長方形のうち、面積が最小となる外接長方形を検査外接四角形として設定する外接四角形設定手段と、
前記欠陥候補画素の慣性軸方向に沿う前記検査外接四角形の長辺寸法、および前記慣性軸方向に直交する幅方向に沿う前記検査外接四角形の短辺寸法を計測するとともに、長辺寸法に対する短辺寸法の比である寸法比を算出する寸法比算出手段と、
前記検査外接四角形に対する前記欠陥候補画素群の面積比を算出する面積比算出手段と、
前記寸法比算出工程にて算出される寸法比が所定の寸法比閾値未満となる場合、または前記面積比算出工程にて算出される面積比が所定の面積比閾値未満となる場合に、前記欠陥候補画素群をスジ状欠陥として特定する欠陥特定手段と、
を有することを特徴とする欠陥検出装置。
【請求項7】
演算手段により読み込まれて演算処理される欠陥検出プログラムであって、
前記欠陥検出プログラムは、被検査物を撮像した撮像画像に対して欠陥強調フィルターを用いて欠陥強調処理を行う欠陥強調処理手段と、
前記欠陥強調処理工程で得られた各画素の欠陥強調値に基づいて欠陥を検出する欠陥検出手段と、を備え、
前記欠陥強調処理手段は、
前記撮像画像に対して、検査対象画素を順次選定する検査対象画素選定手段と、
選定された検査対象画素の中心から所定距離離れた比較対象画素を検査対象画素の周囲に略円形状に複数配置し、これらの比較対象画素のうち前記検査対象画素を挟んで互いに点対称の位置に配置される一対の比較対象画素をセットとした比較対象画素群を複数設定する比較対象画素群設定手段と、
比較対象画素群に含まれる各比較対象画素の輝度値と、前記検査対象画素の輝度値との差である輝度差データを求め、それらの輝度差データのうち、値が最小となる最小輝度差を比較対象画素群毎に求める最小輝度差算出手段と、
比較対象画素群毎に算出された最小輝度差のうち、値が最大となる最小輝度差を前記検査対象画素の欠陥強調値とする欠陥強調値算出手段と、
を有し、
前記欠陥検出手段は、
前記欠陥強調値が所定の欠陥閾値以上となる画素を欠陥候補画素として抽出する欠陥候補抽出手段と、
互いに隣接する前記欠陥候補画素を欠陥候補画素群とし、この欠陥候補画素群に外接する外接長方形のうち、面積が最小となる外接長方形を検査外接四角形として設定する外接四角形設定手段と、
前記欠陥候補画素の慣性軸方向に沿う前記検査外接四角形の長辺寸法、および前記慣性軸方向に直交する幅方向に沿う前記検査外接四角形の短辺寸法を計測するとともに、長辺寸法に対する短辺寸法の比である寸法比を算出する寸法比算出手段と、
前記検査外接四角形に対する前記欠陥候補画素群の面積比を算出する面積比算出手段と、
前記寸法比算出工程にて算出される寸法比が所定の寸法比閾値未満となる場合、または前記面積比算出工程にて算出される面積比が所定の面積比閾値未満となる場合に、前記欠陥候補画素群をスジ状欠陥として特定する欠陥特定手段と、
を有することを特徴とする欠陥検出プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−8482(P2011−8482A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150740(P2009−150740)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】