説明

止水性を確認可能な遮水材の継手部の施工方法及び継手構造

【課題】遮水パネルの打設時に、継手部内への土砂の侵入を確実に防止して、止水材が所定の性能を発揮することを可能にし、かつ、継手部の止水性能を容易に、かつ迅速に確認することを可能とする遮水性を有する継手部の施工方法及び構造を提案する。
【解決手段】土砂の侵入を防止するパッカー105を雌継手部102b内に予め挿入した状態で第1の遮水パネル102を地盤108内に打設する。打設後、泥水を注入しながらパッカー105を雌継手部102b内から引き抜く。そして、第2の遮水パネル102の雄継手部102cを雌継手部102b内に挿入し、止水材111を雌継手部102bの内周面と雄継手部102cの外周面との両面に挟着し、継手部106の止水性を確保する。雄継手部102cの内周面102eと雌継手部102bの内周面102fとの間の空洞107内に泥水を貯留し、水位をモニタリングすることにより、止水材111の止水性能を確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮水材の連結時における遮水性を有する継手部の施工方法及び継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処分場における汚染水の漏洩防止や港湾施設建設時における遮水材として鋼管矢板、遮水パネル等が多く用いられている。特に、廃棄物処分場で遮水性護岸構造等に用いられる場合には、鋼管矢板、遮水パネル等の遮水材の継手部を介して処分場から外部への汚染水の浸出を防止することが必要である。
【0003】
遮水材の継手部内には、モルタル、アスファルト混合物等の止水材が充填されており、この止水材により汚染水が継手部を通過して場外に浸出しないように構成されている。この止水材の止水性能を高めるために、止水材を充填する前に、遮水材の打設時に継手部内に侵入した土砂をウォタージェット、エアーリフト等の除去方法により除去し、洗浄することが一般的である。
【0004】
しかし、継手部は径が小さいために、土砂の除去及び洗浄作業の作業性が悪く、時間を要するという問題点があった。また、遮水材の打設深度が深くなるとウォタージェット、エアーリフト等の効率が低下するために、土砂の除去が困難となり、多大な時間を要するという問題点があった。
【0005】
そこで、特許文献1には、打設時の継手部内への土砂の侵入を防止する方法として、図15に示すように、遮水材1を打設する前に、遮水材本体2の一方の側面に遮水材本体2の縦方向、つまり遮水材本体を打設する方向に沿って一体に固定され、スリットSを有する管状の雌継手部3内に予め雌継手部3の径よりやや小さい径の底蓋付き円筒管4を挿入し、遮水材1を打設した後に、底蓋付き円筒管4を引き抜く方法が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、打設時の継手部内への土砂の侵入を防止する方法として、遮水材を打設する前に、雌継手部内に予め発泡スチロール、発泡ウレタン、低強度モルタル、薬液等の充填材を充填し、遮水材を打設した後に充填材をすべて破壊し、撤去された後に継手内にモルタル、アスファルト混合物等の止水材を充填する方法が提案されている。
【特許文献1】特許3009845
【特許文献2】特開2002−105949
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されている雌継手部内に底蓋付き円筒管を挿入する方法は、遮水材を打設する際に、雌継手部と底蓋付き円筒管との隙間に小さな砂や粘性土が入り込み、噛み込んでしまい、打設した後に円筒管を引き抜くことが困難となり、引き抜きに時間を要するという問題点があった。
【0008】
また、特許文献2に記載されている雌継手部内に発泡スチロール、発泡ウレタン等の充填材を充填する方法は、遮水材を打設する際の土砂の侵入を防ぐことは可能であるが、充填材はすべて破砕されるために、充填材の再利用が不可能であるという問題点があった。
【0009】
さらに、特許文献1及び特許文献2に記載されている遮水材の継手部内を完全に止水材にて充填する方法では、止水材を充填した後に継手部の止水性能を確認することができないという問題点があった。さらに、遮水材の継手部に地震等の水平力が作用した場合には、継手部に鋼管軸方向のせん断力が作用し、作用せん断力が継手せん断耐力を上回ると継手部の管状雌継手部又は雄継手部と止水材との間にずれが発生して止水材が管状雌継手部又は雄継手部から剥離し、この剥離面が水みちとなる可能性が生じるが、このとき継手部の止水性能を確認することができないという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、遮水パネルの打設時に、遮水パネルの継手部内への土砂の侵入を確実に防止すると共に、止水材が所定の止水性能を発揮することを可能とし、さらに、止水材を充填した後の継手部内に形成される空洞に泥水を貯留して泥水の水位をモニタリングすることにより継手部の止水性能を容易に、かつ迅速に確認することが可能な遮水性を有する継手部の施工方法及び継手構造を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明の遮水性を有する継手部の施工方法は、スリットを有する管状雌継手部を縦方向に沿って一体的に端部に形成してなる第1の遮水材と、凸状部を有する雄継手部を縦方向に沿って一体的に端部に形成してなる第2の遮水材とを用い、前記雄継手部の前記凸状部を前記管状雌継手部内に挿入して係合する遮水材の継手部の施工方法において、前記管状雌継手部内に膨縮可能な防護体を挿入した後に該防護体が膨張することによって該防護体を前記管状雌継手部内面に密着した前記第1の遮水材を地盤内に打設し、前記防護体を収縮すると共に前記管状雌継手部内に泥水などの液体を注入することによって前記スリットから土砂の侵入を防止しながら前記防護体を前記管状雌継手部内から引き抜き、前記第2の遮水材の前記凸状部の外面に水膨潤性の止水材を取り付けた後、前記第2の遮水材が前記スリットを通過するように前記凸状部を前記管状雌継手部内に挿入して、前記管状雌継手部と前記雄継手部とを係合すると共に前記スリット周辺と前記凸状部の前記外面との間を前記止水材で充填してなることを特徴とする(第1の発明)。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記スリットと対向する前記管状雌継手部の内面と前記凸状部との間に貯留された液体を液位のモニタリング用に使用するようにしてなることを特徴とする。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記管状雌継手部に前記スリットを覆う防護板を貼付することを特徴とする。
【0014】
第4の発明は、第1〜第3のいずれかの発明において、前記防護体は、流体が通過可能な筒体と、筒体の外周側に配設され、作動流体圧により膨縮可能な袋状の膨張体とを備えることを特徴とする。
【0015】
第5の発明は、スリットを有する管状雌継手部を縦方向に沿って一体的に端部に形成してなる第1の遮水材と、凸状部を有する雄継手部を縦方向に沿って一体的に端部に形成してなる第2の遮水材とを用い、前記雄継手部の前記凸状部を前記管状雌継手部内に挿入して係合してなる遮水材の継手構造であって、前記スリットと前記凸状部との間が止水材で充填され、前記スリットと対向する前記管状雌継手部の内面と前記凸状部との間に水などの液体が貯留されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、遮水パネルの打設時に、遮水パネルの継手部内への土砂の侵入を確実に防止することができるために、止水材が所定の止水性能を十分に発揮することができる。また、止水材を充填した後の継手部内に形成される空洞に泥水を貯留し、泥水の水位をモニタリングすることにより、継手部の止水性能を容易に、かつ迅速に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の第一実施形態に係る遮水材の設置状況を示す側面図である。図1に示すように、廃棄物処分場100とその周囲地盤101との間の遮水壁を構成する遮水材として、例えば、遮水パネル102の列が不透水性地層103に至る深さまで打設されている。不透水性地層103の上には、透水性地層104が存在する。
【0019】
図2は、本発明の第一実施形態に係る遮水パネルの設置状況を示す平面図である。図2に示すように、板状の遮水材である遮水パネル102は、パネル本体102aと、その一方の側面にパネル本体の縦方向、つまりパネル本体を打設する方向に沿って一体に固定され、スリットSを有する丸形管状の雌継手部102bと、他方の側面にパネル本体の縦方向に沿って一体に固定され、断面C字形状(=凸状部)の雄継手部102cとを備える。
【0020】
また、第1の遮水パネル102の雌継手部102bと、この雌継手部102b内に挿入されている第2の遮水パネル102の断面C字形状の雄継手部102cとは、スリットS周辺と雄継手部102cとの間に充填されている止水材111を介して係合している。
【0021】
そして、雄継手部102cの止水面102eと、スリットSと対向する雌継手部102bの内周面102fとの間に水などの液体を貯留可能な空洞107が形成され、遮水パネル102の遮水性を有する継手部106が構築される。
【0022】
この遮水性を有する継手部106の施工方法を遮水パネル102の設置手順にしたがって以下に示す。
【0023】
図3は、本発明の第一実施形態に係る防護体の斜視図である。図3に示すように、防護体105は、水、泥水等の流体が通過可能な筒体のパイプ105aと、パイプ105aの外周側に周着され、窒素、水等の作動流体圧により膨縮可能なゴムからなる円筒形状の膨張体105bと、膨張体105bに作動流体を供給するチューブ105cとを備える。防護体105は、本実施形態では、例えば、パッカーを用いる。
【0024】
また、膨張体105bは、チューブ105cを介して窒素、水等の流体を供給する供給装置(図示せず)に接続される。
【0025】
パイプ105aは、膨張体105bが周着された両端部外周面に、膨張体105bの軸方向の相対的滑りを防止するための多数の係止溝を形成してなり、さらに、膨張体105bから突出された両端部の外周面に隣接するパイプ105a接続用のねじ溝が形成されている。したがって、遮水パネルの長さに応じて複数のパッカー105を直列に接続して用いることが可能であり、複数の膨張体105bにそれぞれチューブを接続して、膨張体105bの膨縮の個別操作が可能である。
【0026】
なお、防護体は、本実施形態では、パイプと膨張体とが一体化されたパッカーを用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、泥水注入用の注入管と膨縮可能なコンクリート型枠用の袋体とを組み合わせるように別個のものであっても孔底まで送水が可能で、かつ、作動流体圧により膨張して雌継手部内に密着可能であり、打設に耐え得るという条件を満たすものであればよい。また、膨張体の作動圧は施工現場の地盤状況、使用可能流体等の現場環境に応じて適宜変更する。
【0027】
図4は、本発明の第一実施形態に係る遮水パネルの設置手順を示すフロー図である。また、図5〜図9は、本発明の第一実施形態に係る遮水パネルの設置手順を示す図である。
【0028】
まず、図4のS10において、図5に示すように、遮水パネル102を地盤内に打設する前に、土砂の侵入を防止する膨縮可能なパッカー105を遮水パネルの縦方向の長さと同程度になるように複数本を直列に接続して遮水パネル102の雌継手部102b内に予め挿入する。
挿入した後に、供給装置を駆動し、チューブ105cを介して窒素を膨張体105bに供給して膨張させ、膨張体105bを雌継手部102bの内周面に密着させる。
膨張体105bは、内部に補強繊維が設けられた円筒形のゴム体であり、これにより、膨張体105bは、ゴム体のみでは耐えられない高圧の作動流体圧にも補強繊維により耐え得るので、雌継手部102bの内周面に対して高圧で密着可能であり、かつ、スリット程度の隙間があっても局部的に膨張せず、一様に膨張する。
【0029】
なお、本実施形態において、膨張体105bの作動流体に窒素を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、水でもよい。
【0030】
また、本実施形態では、例えば、長さ3.5m、対象孔径75mmのパッカー105を複数台直列に接続し、これらパッカー105の設定圧は0.3MPaとする。なお、パッカー105の使用台数、径の大きさ及び設定圧は、これに限定されるものではなく、遮水パネルの打設深度、施工現場の地盤状況、使用可能流体等の現場環境に応じて適宜変更する。
【0031】
次に、図4のS11において、図6に示すように、雌継手部102b内にパッカー105を装着した状態で第1の遮水パネル102にバイブロハンマー等にて振動を与えるか又はディゼルハンマーや油圧ハンマーにて打撃振動を与えながら(図示せず)所定の地盤108内に遮水パネル102を打設する。打設する際は、遮水パネル102の雌継手部102b内にパッカー105が装着されているために雌継手部102b内に土砂は侵入しない。
【0032】
なお、本実施形態では、遮水パネル102を無水で打設する方法を示したが、これに限定されるものではなく、遮水パネル打設時に雌継手部先端付近の地盤を柔らかくして打設を容易にすると共に孔壁の変形、破壊を防止するために、パッカー105のパイプ105aの孔底側端部からウォータジェット等にて泥水又はベントナイト泥水等の液体を注入する方法を用いてもよい。
【0033】
次に、図4のS12において、図7に示すように、第1の遮水パネル102を打設した後に、複数のパッカー105の膨張体105bの圧力を孔底側から孔口側へ順番に開放しながら、パイプ105aの孔底側端部から雌継手部102b内に泥水を注入して雌継手部102b内を泥水にて充満する。つまり、膨張体105bが収縮することにより生じる膨張体105bの外周面と雌継手部102bの内周面102fとの隙間109に泥水を充満する。この泥水がスリットを介して孔壁を支え、孔壁の崩落を防ぎ、スリットからの土砂の侵入を防止する。
【0034】
そして、パッカー105の膨張体105bが完全に収縮し、雌継手部102b内に泥水が充満している状態で、泥水を注入しながらパッカー105を雌継手部102b内から引き抜いて雌継手部102b内を泥水に置換する。パッカー105を引き抜く際は、泥水の注入速度をパッカー105の引き抜き速度よりも大きくし、泥水の水位が低下しないように注意する。
【0035】
なお、本実施形態では、雌継手部内に送水する液体に泥水を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、ベントナイト泥水でもよい。
【0036】
そして、図4のS13において、図8に示すように、第1の遮水パネル102の雌継手部102bの上方から、第2の遮水パネル102にバイブロハンマー等にて振動を与えるか又はディゼルハンマーや油圧ハンマーにて打撃振動を与えて、第2の遮水パネル102のパネル本体102aがスリットSを通過するように雄継手部102cを雌継手部102b内に挿入する。
【0037】
この雄継手部102cの左右両側部にそれぞれ一対の丸鋼110が溶接等により固定され、一対の丸鋼110間に水膨潤性及び硬化遅延性を有するゴム111等の止水材が予め貼付されている。止水材は、本実施形態においては、例えば、水膨潤性及び硬化遅延性を有するゴム111を用いる。なお、止水材は、これに限定されるものではなく、ウレタン樹脂等の水膨潤性及び硬化遅延性を有するものであればよい。
【0038】
最後に、図4のS14において、図9に示すように、ゴム111は泥水中にて徐々に膨張し、第1の遮水パネル102の雌継手部102bの内周面102fと第2の遮水パネル102の雄継手部102cの外周面102gとの両面に挟着して雌継手部102bと雄継手部102cとを係合する。
膨張したゴム111は、両面102f、102gに挟着することによって継手部106内の漏水経路をすべて遮断し、所定の時間が経過した後に、硬化して止水性を確保する。
【0039】
また、ゴム111は雌継手部102bの内周面102fと雄継手部102cの外周面102gとの間のみに充填されるために、雄継手部102cの内周面102eと、スリットSと対向する雌継手部102bの内周面102fとの間に、孔底まで貫通する液体が貯留可能な空洞107が形成される。
【0040】
そして、この空洞107内に水、泥水、ベントナイト泥水等の液体を貯留し、この液体の水位をモニタリングすることにより、ゴム111の止水性能を確認することが可能である。
【0041】
したがって、遮水パネルの打設時に、遮水パネルの継手部内への土砂の侵入を確実に防止することができるために、止水材が所定の止水性能を十分に発揮することができる。また、止水材を充填した後の継手部内に形成される空洞に泥水を貯留し、泥水の水位をモニタリングすることにより、継手部の止水性能を容易に、かつ迅速に確認することができる。
【0042】
なお、本実施形態においては、雄継手部102cの左右両側部に水膨潤性及び硬化遅延性を有するゴム111を予め貼付する方法を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、雌継手部102bの内周面102fと雄継手部102cの外周面102gとの間に水膨潤性及び所定の硬化遅延性を有する接着剤等の止水材111を塗布、又は充填する方法でもよい。
【0043】
また、本実施形態に用いた水膨潤性及び硬化遅延性を有するゴム111は、弾性体であるので継手部106の変形に対する追従性を有しているために、地震等の変形時にも止水性能を維持する。
【0044】
次に、本発明における遮水パネルの継手部形状の異なる実施形態を示す。
下記に示す説明において、第一実施形態と同様の技術を用いたものと対応する部分には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0045】
図10は、本発明の第二実施形態に係るP−T継手遮水パネルの継手部を示す図である。図10に示すように、遮水パネル202は、パネル本体102aと、その一方の側面に固定される雌継手部102bと、他方の側面にパネル本体の縦方向に沿って一体に固定され、断面T字形状(=凸状部)を有するの雄継手部202cとを備える。
【0046】
また、第1の遮水パネル202の雌継手部102bと、この雌継手部102b内に挿入されている第2の遮水パネル202の断面T字形状の雄継手部202cとはゴム111を介して係合している。そして、かかる係合状態に雄継手部202cの外周面202eと、スリットSと対向する雌継手部102bの内周面102fとの間に、孔底まで貫通する液体が貯留可能な空洞207が形成される。
【0047】
この遮水性を有する継手部206の施工方法を遮水パネル202の設置手順にしたがって以下に示す。
【0048】
第一実施形態と同様に、雌継手部102b内にパッカー105を挿入した状態で第1の遮水パネル202を所定の地盤108内に打設する。そして、パッカー105の膨張体105bを完全に収縮し、雌継手部102b内に泥水が充満している状態で、泥水を注入しながらパッカー105を雌継手部102b内から引き抜いて雌継手部102b内を泥水に置換する。
【0049】
次に、第1の遮水パネル202の雌継手部102bの上方から、第2の遮水パネル202にバイブロハンマー等にて振動を与えるか又はディゼルハンマーや油圧ハンマーにて打撃振動を与えて、第2の遮水パネル202のパネル本体102aがスリットSを通過するように雄継手部202cを雌継手部102b内に打設して挿入する。この雄継手部202cの外面であるパネル本体側面の両側部にはゴム111が予め貼付されている。そして、膨張したゴム111は継手部206内の漏水経路である雌継手部102b内のスリットSの近傍部と雄継手部202cとの間を遮断し、止水性を確保する。
【0050】
また、ゴム111は雌継手部102b内のスリットSの近傍部と雄継手部202cとの間のみに充填されるために、雄継手部202cの外周面202eと、スリットSと対向する雌継手部102bの内周面102fとの間に、孔底まで貫通する液体が貯留可能な空洞207が形成される。
【0051】
そして、この空洞207内に泥水を貯留し、この泥水の水位をモニタリングすることにより、ゴム111の止水性能を確認することが可能である。
【0052】
図11は、本発明の第二実施形態に係るP−ストッパ付きT継手遮水パネルの継手部を示す図である。図11に示すように、遮水パネル212は、パネル本体102aと、雌継手部102bと、雄継手部202cと、雌継手部102b内への入り込みを防止するストッパ212gと、雌継手部102bからの抜け出しを防止するストッパ212hを備える。
【0053】
また、第1の遮水パネル212の雌継手部102bと、この雌継手部102b内に挿入されている第2の遮水パネル212の断面T字形状の雄継手部202c及びストッパ212hとはゴム111を介して係合している。そして、かかる係合状態に雄継手部202cの外周面202eと雌継手部102bの内周面102fとの間に液体が貯留可能な空洞207が形成される。
【0054】
第1の遮水パネル212を打設した後、第2の遮水パネル212を打設する際に、地盤の硬さの違いなどの影響によって、第2の遮水パネルの先端部が垂直に打ち込まれず、第1の遮水パネル212から離れる、あるいは近付く方向に第2の遮水パネル212の先端部が進む場合がある。このとき、雌継手部102b内への入り込みを防止するストッパ212g、及び雌継手部102bからの抜け出しを防止するストッパ212hの働きにより第2の遮水パネル212を所定の位置に打設することが可能となる。
【0055】
図12は、本発明の第二実施形態に係る角形−T継手遮水パネルの継手部を示す図である。図12に示すように、遮水パネル222は、パネル本体102aと、その一方の側面にパネル本体の縦方向に沿って一体に固定され、スリットSを有する角形管状の雌継手部222bと、雄継手部202cとを備える。
【0056】
また、第1の遮水パネル222の雌継手部222bと、この雌継手部222b内に挿入されている第2の遮水パネル222の断面T字形状の雄継手部202cとはゴム111を介して係合している。そして、かかる係合状態に雄継手部202cの外周面202eと雌継手部222bの内周面222fとの間に空洞207が形成される。
【0057】
図13は、本発明の第二実施形態に係る角形−ストッパ付きT継手遮水パネルの継手部を示す図である。図13に示すように、遮水パネル232は、パネル本体102aと、雌継手部222bと、雄継手部202cと、ストッパ212gと、ストッパ212hとを備える。
【0058】
また、第1の遮水パネル232の雌継手部222bと、この雌継手部222b内に挿入されている第2の遮水パネル232の断面T字形状の雄継手部202c及びストッパ212hとはゴム111を介して係合している。そして、かかる係合状態に雄継手部202cの外周面202eと雌継手部222bの内周面222fとの間に液体が貯留可能な空洞207が形成される。
【0059】
次に、本発明における遮水パネルの雌継手部の内周面にスリットを覆う防護板を貼付する実施形態を示す。
【0060】
図14(a)は、本発明の第三実施形態に係る遮水パネルの平面図で、図14(b)は、本発明の第三実施形態に係る遮水パネルの設置状況を示す平面図である。図14(a)に示すように、板状の遮水材である遮水パネル302は、パネル本体102aと、雌継手部102bと、雄継手部102cと、雌継手部102bの内周面にスリットS部を塞ぐように雌継手部の軸方向に沿って覆い貼付される防護板300とを備える。
【0061】
防護板300は、本実施形態では、例えば、切断可能なアスファルト系のシート材300を用いる。なお、本実施形態では、アスファルト系のシート材300を用いたが、これに限定されるものではなく、スリットからの土砂の侵入を防ぐ機能を有する薄い板状のものであればよく、例えば、樹脂系のシート材や薄い鉄板等でもよい。
【0062】
図14(b)に示すように、第1の遮水パネル302の雌継手部102bと、この雌継手部102b内に挿入されている第2の遮水パネル302の断面C字形状の雄継手部102cとは、スリットS周辺と雄継手部102cとの間に充填されているゴム111を介して係合している。そして、雄継手部102cの外周面102gと、スリットSと対向する雌継手部102bの内周面102fとの間に水などの液体を貯留可能な空洞107が形成され、遮水パネル302の遮水性を有する継手部306が構築される。
【0063】
この遮水性を有する継手部306の施工方法を遮水パネル102の設置手順にしたがって以下に示す。
【0064】
スリットSを塞ぐように覆い貼付されたアスファルト系のシート材300を内周面に有する雌継手部102b内に、第一実施形態と同様に、パッカー105を挿入した状態で第1の遮水パネル302を所定の地盤108内に打設する。打設する際は、遮水パネル302の雌継手部102b内にパッカー105が装着されているために雌継手部102b内に土砂は侵入しない。
【0065】
そして、パッカー105を完全に収縮し、雌継手部102b内に泥水が充満している状態で、泥水を注入しながらパッカー105を雌継手部102b内から引き抜く。ここで、スリットSを塞ぐようにアスファルト系のシート材300が雌継手部102b内に貼付されているために、パッカー105の膨張体105bが収縮することにより生じる膨張体105bの外周面と雌継手部102bの内周面102fとの隙間に土砂が侵入しない。
【0066】
次に、第1の遮水パネル302の雌継手部102bの上方から、第2の遮水パネル302にバイブロハンマー等にて振動を与えるか又はディゼルハンマーや油圧ハンマーにて打撃振動を与えて、第2の遮水パネル302のパネル本体102aにてアスファルト系のシート材を破断しながら、第2の遮水パネル302のパネル本体102aがスリットSを通過するように雄継手部102cを雌継手部102b内に挿入する。
【0067】
この雄継手部102cの左右両側部にそれぞれ一対の丸鋼110が溶接等により固定され、一対の丸鋼110間に水膨潤性及び硬化遅延性を有するゴム111が予め貼付されている。
ゴム111は泥水中にて徐々に膨張し、第1の遮水パネル302の雌継手部102bの内周面102fと第2の遮水パネル302の雄継手部102cの外周面102gとの両面に挟着して雌継手部102bと雄継手部102cとを係合する。
また、ゴム111は雌継手部102bの内周面102fと雄継手部102cの外周面102gとの間のみに充填されるために、雄継手部102cの内周面102eと、スリットSと対向する雌継手部102bの内周面102fとの間に、孔底まで貫通する液体が貯留可能な空洞107が形成される。
【0068】
そして、この空洞107内に水、泥水、ベントナイト泥水等の液体を貯留し、この液体の水位をモニタリングすることにより、ゴム111の止水性能を確認することが可能である
したがって、第二、三実施形態に係る遮水パネルの施工方法においても、遮水パネルの打設時に、遮水パネルの継手部内への土砂の侵入を確実に防止できるために、止水材が所定の止水性能を発揮することが可能となる。また、止水材を充填した後の継手部内に形成される空洞に泥水を貯留し、泥水の水面をモニタリングすることにより、継手部の止水性能を容易に、かつ迅速に確認することが可能となる。
【0069】
なお、すべての実施形態において、板状の遮水材である遮水パネルの接続方法について示したが、これに限定されるものではなく、例えば、管状の遮水材である鋼管矢板でもよい。また、すべての実施形態において、遮水パネルを地盤内に打設する方法を示しているが、地盤内に限定されるものではなく、例えば、ソイルセメント内に打設することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第一実施形態に係る遮水材の設置状況を示す側面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る遮水パネルの設置状況を示す平面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る防護体の斜視図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係る遮水パネルの設置手順を示すフロー図である。
【図5】本発明の第一実施形態に係る遮水パネルの雌継手部内にパッカーを挿入し、膨張させた状態を示す図である。
【図6】本発明の第一実施形態に係る第1の遮水パネルを地盤内に打設した状態を示す図である。
【図7】本発明の第一実施形態に係るパッカーを収縮し、雌継手部内を泥水で充満した状態を示す図である。
【図8】本発明の第一実施形態に係る第2の遮水パネルを打設した状態を示す図である。
【図9】本発明の第一実施形態に係る継手部に止水材を充填した状態を示す図である。
【図10】本発明の第二実施形態に係るP−T継手遮水パネルの継手部を示す図である。
【図11】本発明の第二実施形態に係るP−ストッパ付きT継手遮水パネルの継手部を示す図である。
【図12】本発明の第二実施形態に係る角形−T継手遮水パネルの継手部を示す図である。
【図13】本発明の第二実施形態に係る角形−ストッパ付きT継手遮水パネルの継手部を示す図である。
【図14(a)】本発明の第三実施形態に係る遮水パネルの平面図である。
【図14(b)】本発明の第三実施形態に係る遮水パネルの設置状況を示す平面図である。
【図15】従来の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
100 廃棄物処分場
101 周囲地盤 102 遮水パネル
102a パネル本体 102b 雌継手部
102c 雄継手部 102e 内周面
102f 内周面 102g 外周面
103 不透水性地層 104 透水性地層
105 パッカー 105a パイプ
105b 膨張体 105c チューブ
106 継手部 107 空洞
108 地盤 109 隙間
110 丸鋼 111 ゴム(=止水材)
202 遮水パネル
202c 雄継手部 202e 外周面
206 継手部 207 空洞
212 遮水パネル
212c 雄継手部 212g ストッパ
222 遮水パネル
222b 雌継手部 222f 内周面
232 遮水パネル
300 シート材(=防護板) 302 遮水パネル
S スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリットを有する管状雌継手部を縦方向に沿って一体的に端部に形成してなる第1の遮水材と、凸状部を有する雄継手部を縦方向に沿って一体的に端部に形成してなる第2の遮水材とを用い、前記雄継手部の前記凸状部を前記管状雌継手部内に挿入して係合する遮水材の継手部の施工方法において、
前記管状雌継手部内に膨縮可能な防護体を挿入した後に該防護体が膨張することによって該防護体を前記管状雌継手部内面に密着した前記第1の遮水材を地盤内に打設し、
前記防護体を収縮すると共に前記管状雌継手部内に泥水などの液体を注入することによって前記スリットから土砂の侵入を防止しながら前記防護体を前記管状雌継手部内から引き抜き、
前記第2の遮水材の前記凸状部の外面に水膨潤性の止水材を取り付けた後、前記第2の遮水材が前記スリットを通過するように前記凸状部を前記管状雌継手部内に挿入して、前記管状雌継手部と前記雄継手部とを係合すると共に前記スリット周辺と前記凸状部の前記外面との間を前記止水材で充填してなることを特徴とする遮水性を有する継手部の施工方法。
【請求項2】
前記スリットと対向する前記管状雌継手部の内面と前記凸状部との間に貯留された液体を液位のモニタリング用に使用するようにしてなることを特徴とする請求項1記載の継手部の施工方法。
【請求項3】
前記管状雌継手部に前記スリットを覆う防護板を貼付することを特徴とする請求項1又は2に記載の遮水性を有する継手部の施工方法。
【請求項4】
前記防護体は、流体が通過可能な筒体と、筒体の外周側に配設され、作動流体圧により膨縮可能な袋状の膨張体とを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の遮水性を有する継手部の施工方法。
【請求項5】
スリットを有する管状雌継手部を縦方向に沿って一体的に端部に形成してなる第1の遮水材と、凸状部を有する雄継手部を縦方向に沿って一体的に端部に形成してなる第2の遮水材とを用い、前記雄継手部の前記凸状部を前記管状雌継手部内に挿入して係合してなる遮水材の継手構造であって、
前記スリットと前記凸状部との間が止水材で充填され、前記スリットと対向する前記管状雌継手部の内面と前記凸状部との間に水などの液体が貯留されていることを特徴とする遮水材の継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14(a)】
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【図14(b)】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−193966(P2006−193966A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6194(P2005−6194)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000133881)株式会社テノックス (62)
【Fターム(参考)】