説明

止水材、止水材の施工方法、及びその止水材を使用した止水方法

【課題】シート状の防水材9が下側から差し込まれるように配置されて、外壁材100と外壁材100の室内側に位置する柱材200との間に段差が生じた場合に、容易に段差を解消することのできる止水材1を、コストを抑えて提供する。
【解決手段】隣接する外壁材100,100間の目地を塞ぐために、前記両外壁材100,100と前記外壁材100の室内側に位置する柱材200との間に、前記柱材200に沿って配置される前記目地幅より幅の広い帯状の止水材1において、前記外壁材100側に配置されるシール板2と、前記柱材200側に配置される底上げ板4を一体成形してなり、前記底上げ板4を前記シール板2の端部から任意の長さだけ剥離可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する外壁材間の目地を塞ぐために、外壁材と外壁材の室内側に位置する柱材との間に配置される止水材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物における隣接する外壁材間には目地が生じ、この目地から進入する水を阻止するために、外壁材と外壁材の室内側に位置する柱材との間には、目地幅より幅の広い帯状の止水材が配置されている。
この止水材は、柱材に沿って外壁材の垂直方向に相当する長さだけ配置されるが、さらに、バルコニーや下屋などが外壁材に接続する場合は、弾性シート又は鋼板を複合させたシートなどの防水材を外壁材と柱材との間に差し込むように配置することが行われる。
例えば、図5は従来例に係る止水材6を外壁材100と柱材200の間に配置した状態を示す断面図であり、その下端部にはシート状の防水材9が下側から差し込まれるように配置されている。
【0003】
このように防水材9が配置された場合には、防水材9と止水材6が重複する部分において、止水材6は防水材9の厚さだけ外壁材100側に底上げされた状態となり、防水材9と重複していない部分と段差が生じてしまう。そのため防水材9と重複していない部分では止水材6と外壁材100との間に空隙が生じ、防水性が低下する恐れがある。
そこで、このような空隙を埋めるために、従来は防水材9の厚さ相当の埋設部材8を用意し、止水材6に貼付することにより段差を解消していた。
【0004】
従って、図5のA−A断面図である図6に示すように、防水材9と重複していない部分では、室内側から柱材200、埋設部材8、リップ部7を有する止水材6、外壁材100の順に配置されている。
また、図5のB−B断面図である図7に示すように、防水材9と重複した部分では、室内側から柱材200、防水材9、リップ部7を有する止水材6、外壁材100の順に配置されている。
【0005】
一方、特許文献1には、隣接する外壁材間の目地に挿入する目地材の目地挿入側端に、高さ調節部材を破断可能に複数個連設して、目地幅の広狭に応じて高さ調節部材を適宜除去することにより、目地材のシール舌片が目地外にはみ出すことを防止する発明が記載されている。
また、特許文献2には、隣接する外壁材間の目地を塞ぐために、中間部を波板状に形成した帯状の止水材を隣接する外壁材の背面部に接合し、中間部が目地の広狭の動きに追従して変形することのできる発明が記載されている。
【特許文献1】実開昭63−85708号公報
【特許文献2】特開2001−323576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のように防水材9の厚さ相当の埋設部材8を止水材6に貼付する方法では、止水材6と防水材9の配置予定位置の関係を把握したうえで、必要となる埋設部材8の長さを決定して調整し、止水材6に貼付するという工程が必要となる。従って、いったん完成した止水材6に後加工で埋設部材8を貼付しなければならず、加工数増加によるコスト上昇要因となる。
【0007】
また、特許文献1又は特許文献2に記載された発明は、隣接する外壁材間の目地の広狭に対して対応する技術に関するものであり、防水材9を配置した場合のように、外壁材と外壁材の室内側に位置する柱材との間に段差が生じてしまうような状況には対応することができない。
【0008】
そこで、本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、シート状の防水材が下側から差し込まれるように配置されて、外壁材と外壁材の室内側に位置する柱材との間に段差が生じた場合に、容易に段差を解消することのできる止水材を、コストを抑えて提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決するために、請求項1に係る発明の止水材は、隣接する外壁材(100,100)間の目地を塞ぐために、前記両外壁材(100,100)と前記外壁材(100)の室内側に位置する柱材(200)との間に、前記柱材(200)に沿って配置される前記目地幅より幅の広い帯状の止水材(1)において、前記外壁材(100)側に配置されるシール板(2)と、前記柱材(200)側に配置される底上げ板(4)を一体成形してなり、前記底上げ板(4)を前記シール板(2)の端部から任意の長さだけ剥離可能としたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記底上げ板(4)の前記シール板(2)と接する面に、複数の突条(5)を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係る発明の止水材の施工方法は、隣接する外壁材(100,100)間の目地を塞ぐために、前記両外壁材(100,100)と前記外壁材(100)の室内側に位置する柱材(200)との間に、前記柱材(200)に沿って配置され、かつ、前記外壁材(100)側に配置されるシール板(2)と、前記柱材(200)側に配置される底上げ板(4)を一体成形してなり、前記底上げ板(4)を前記シール板(2)の端部から任意の長さだけ剥離可能とした、前記目地幅より幅の広い帯状の止水材(1)の施工方法であって、前記止水材(1)と前記柱材(200)の間に下側から垂直方向に差し込まれるように配置されるシート状の防水材(9)の差し込み長さ分だけ、前記底上げ板(4)を前記シール板(2)から剥離してカットし、前記両外壁材(100,100)と前記柱材(200)の間に配置することを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に係る発明の止水材を使用した止水方法は、隣接する外壁材(100,100)間の目地を塞ぐために、前記両外壁材(100,100)と前記外壁材(100)の室内側に位置する柱材(200)との間に、前記柱材(200)に沿って配置され、かつ、前記外壁材(100)側に配置されるシール板(2)と、前記柱材(200)側に配置される底上げ板(4)を一体成形してなり、前記底上げ板(4)を前記シール板(2)の端部から任意の長さだけ剥離可能とした、前記目地幅より幅の広い帯状の止水材(1)と、前記柱材(200)の室外側下端部に配置されるシート状の防水材(9)を、前記防水材(9)の配置予定位置と前記止水材(1)の配置予定位置における前記防水材(9)と前記止水材(1)の重複部分だけ、前記底上げ板(4)を前記シール板(2)から剥離してカットした後に、前記柱材(200)の室外側に取り付け、さらに外側から前記外壁材(100)を前記目地を形成するように所定間隔を空けて取り付けることを特徴とする。
【0013】
なお、括弧内の記号は、発明を実施するための最良の形態および図面に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、隣接する外壁材間の目地を塞ぐために、目地幅より幅の広い帯状の止水材を、両外壁材と外壁材の室内側に位置する柱材との間に柱材に沿って配置するので、目地から進入する水を止水材によって阻止することができる。
【0015】
さらに、配置する止水材は、外壁材側に配置されるシール板と柱材側に配置される底上げ板を一体成形し、底上げ板をシール板の端部から任意の長さだけ剥離することができるように形成される。従って、止水材と柱材の間に防水材等のシート状の部材が部分的に差し込まれて外壁材と柱材の間で段差が生じた場合に、シート状の部材が差し込まれた長さだけ底上げ板をシール板から剥離してカットすることにより、容易に段差を解消し防水性を確保することができる。
このため、従来のように段差を埋めるための埋設部材を後工程で貼付するのに比べて、必要なだけ底上げ板をカットすればよいので、作業が容易であり加工コストを抑えることができる。
【0016】
また、本発明によれば、底上げ板のシール板と接する面に複数の突条を設けるので、底上げ板をシール板から剥離するときに、手で容易に剥ぎ取ることができ、さらに作業が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、図1乃至図3を参照して、本発明の実施形態1に係る止水材について説明する。
図1は本発明の実施形態1に係る止水材1の断面図であり、図2は図1の止水材1の底上げ板4をシール板2から剥離した状態を示す斜視図である。また、図3は図1の止水材1を外壁材100と外壁材100の室内側に位置する柱材200の間に配置した状態を示す断面図である。
【0018】
図1及び図2に示すように実施形態1に係る止水材1は、シール板2と底上げ板4からなる帯状の部材である。シール板2は外壁材100側に配置され、外壁材100と弾接する複数のリップ部3を備えている。また、底上げ板4は柱材200側に配置される平板である。
なお、シール板2の形状は外壁材100と弾接して防水性を発揮できるものであれば、リップ部3を備えたものとは異なる形状であってもよい。ただし、シール板2の底上げ板4と接する面は平面状に形成される。
止水材1の材質としてはエチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)に代表される合成ゴムや熱可塑性エラストマー(TPE)等を用い、シール板2と底上げ板4を押出等により一体成形する。
また、止水材1の幅は、止水材1を配置して塞ごうとする外壁材100,100間の目地幅よりも広くする。
さらに、底上げ板4をシール板2の端部から、刃物等を用いることなく手動によって任意の長さだけ剥離可能となるように成形する。
【0019】
次に、実施形態1に係る止水材1を外壁材100と柱材200の間に施工して、隣接する外壁材100,100間の目地を塞ぐ止水方法について説明する。
ここで図3に示すように、止水材1と柱材200の間には、下側から垂直方向に防水材9が差し込まれるように配置されている。この防水材9は弾性シート又は鋼板を複合させたシート等により構成されている。
【0020】
まず、防水材9と止水材1を外壁材100と柱材200の間の配置予定位置にそれぞれ配置した場合に、防水材9と止水材1の重複する部分の垂直方向の長さ(図3のL)を測定する。
次に、止水材1の底上げ板4を長さLだけシール板2の端部から剥離してカットする。
次に、防水材9と不要な底上げ板4をカットした後の止水材1を、柱材200の室外側に取り付ける。この場合、防水材9を柱材200の室外側下端部に取り付けてその上から止水材1を取り付けてもよいし、止水材1を取り付けてから防水材9を差し込んで取り付けてもよい。
最後に、外側から複数の外壁材100を目地を形成するように所定間隔(目地幅)を空けて取り付ける。
【0021】
なお、防水材9と止水材1の重複する部分の垂直方向の長さLは、設計段階で測定して不要な底上げ板4をカットした止水材1を予め用意してもよいし、現場で取り付けるときに測定してその場で不要な底上げ板4をカットしてもよい。
また、長さLが止水材1の幅方向において一定でない場合、例えば防水材9が斜めに差し込まれるような場合には、これに応じて底上げ板4を斜めにカットすればよい。
【0022】
実施形態1に係る止水材1によれば、隣接する外壁材100,100間の目地を塞ぐために、目地幅より幅の広い帯状の止水材1を、両外壁材100,100と外壁材100の室内側に位置する柱材200との間に柱材200に沿って配置するので、目地から進入する水を止水材1によって阻止することができる。
【0023】
さらに、配置する止水材1は、外壁材100側に配置されるシール板2と柱材200側に配置される底上げ板4を一体成形し、底上げ板4をシール板2の端部から任意の長さだけ剥離することができるように形成される。従って、止水材1と柱材200の間にシート状の防水材9が部分的に差し込まれて外壁材100と柱材200の間で段差が生じた場合に、防水材9が差し込まれた長さだけ底上げ板4をシール板2から剥離してカットすることにより、容易に段差を解消し防水性を確保することができる。
このため、従来のように段差を埋めるための埋設部材8を後工程で貼付するのに比べて、必要なだけ底上げ板4をカットすればよいので、作業が容易であり加工コストを抑えることができる。
【0024】
なお、上記実施形態1は、止水材1と柱材200の間に下側から防水材9が差し込まれるように配置される場合についてのものであるが、防水材を差し込む場合に限られるものではない。すなわち、止水材と柱材の間に何らかのシート状部材を差し込んで段差が生じる場合に効果を有するものであり、例えば、上側から差し込まれる場合であっても適用することが可能である。
【0025】
次に、図4を参照して、本発明の実施形態2に係る止水材について説明する。
図4は本発明の実施形態2に係る止水材1の断面図である。
【0026】
図4に示すように実施形態2に係る止水材1は、シール板2と底上げ板4からなる帯状の部材である。シール板2は外壁材100側に配置され、外壁材100と弾接する複数のリップ部3を備えている。また、底上げ板4は柱材200側に配置され、底上げ板4のシール板2と接する面には複数の突条5が設けられている。
【0027】
実施形態2に係る止水材1も実施形態1と同様に、外壁材100と柱材200の間に配置され、隣接する外壁材100,100間の目地を塞ぐように施工される。
【0028】
実施形態2に係る止水材1によれば、底上げ板4のシール板2と接する面に複数の突条5を設けるので、底上げ板4をシール板2から剥離するときに、手で実施形態1のものと比較して一層容易に剥ぎ取ることができ、さらに作業が容易となる。
なお、実施形態2においては複数の突条5をシール板2のリップ部3に対応する位置に設けており、止水材1を外壁材100と柱材200の間に取り付けたときに、シール圧力が低下しないように形成している。従って、シール板2の形状に応じて、シール圧力が低下しないように突条5の位置を決定するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態1に係る止水材の断面図である。
【図2】実施形態1に係る止水材の底上げ板をシール板から剥離した状態を示す斜視図である。
【図3】実施形態1に係る止水材を外壁材と柱材の間に配置した状態を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る止水材の断面図である。
【図5】従来例に係る止水材を外壁材と柱材の間に配置した状態を示す断面図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】図5のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 止水材
2 シール板
3 リップ部
4 底上げ板
5 突条
6 止水材
7 リップ部
8 埋設部材
9 防水材
100 外壁材
200 柱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する外壁材間の目地を塞ぐために、前記両外壁材と前記外壁材の室内側に位置する柱材との間に、前記柱材に沿って配置される前記目地幅より幅の広い帯状の止水材において、
前記外壁材側に配置されるシール板と、前記柱材側に配置される底上げ板を一体成形してなり、
前記底上げ板を前記シール板の端部から任意の長さだけ剥離可能としたことを特徴とする止水材。
【請求項2】
前記底上げ板の前記シール板と接する面に、複数の突条を設けたことを特徴とする請求項1に記載の止水材。
【請求項3】
隣接する外壁材間の目地を塞ぐために、前記両外壁材と前記外壁材の室内側に位置する柱材との間に、前記柱材に沿って配置され、かつ、前記外壁材側に配置されるシール板と、前記柱材側に配置される底上げ板を一体成形してなり、前記底上げ板を前記シール板の端部から任意の長さだけ剥離可能とした、前記目地幅より幅の広い帯状の止水材の施工方法であって、
前記止水材と前記柱材の間に下側から垂直方向に差し込まれるように配置されるシート状の防水材の差し込み長さ分だけ、前記底上げ板を前記シール板から剥離してカットし、前記両外壁材と前記柱材の間に配置することを特徴とする止水材の施工方法。
【請求項4】
隣接する外壁材間の目地を塞ぐために、前記両外壁材と前記外壁材の室内側に位置する柱材との間に、前記柱材に沿って配置され、かつ、前記外壁材側に配置されるシール板と、前記柱材側に配置される底上げ板を一体成形してなり、前記底上げ板を前記シール板の端部から任意の長さだけ剥離可能とした、前記目地幅より幅の広い帯状の止水材と、
前記柱材の室外側下端部に配置されるシート状の防水材を、
前記防水材の配置予定位置と前記止水材の配置予定位置における前記防水材と前記止水材の重複部分だけ、前記底上げ板を前記シール板から剥離してカットした後に、前記柱材の室外側に取り付け、
さらに外側から前記外壁材を前記目地を形成するように所定間隔を空けて取り付けることを特徴とする止水材を使用した止水方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−63546(P2006−63546A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244605(P2004−244605)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】