説明

正孔注入性材料、発光素子用材料、発光素子、有機化合物、モノマー及びモノマー混合物

【課題】電子受容性のドーパントを用いずとも充分な正孔注入性を有する発光素子用又は正孔注入性の高分子材料を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題を解決する本発明の材料の一つは下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマーよりなる正孔輸送性材料である。なお、式中Rは水素、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基のいずれかであり、式中Rは下記式(2)で表される基である。




(但し式中Ar〜Arは炭素数6〜14のアリール基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流を流すことによって発光する発光素子用の材料、特に正孔注入性を有する材料に関し、さらに詳しくは発光素子用の正孔注入性を有する高分子化合物材料(ポリマーとも言う)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機材料を有する発光素子を用いた発光装置やディスプレイの開発が盛んに行われている。発光素子は、一対の電極間に有機化合物を挟み込むことで作成されるが、液晶表示装置と異なりそれ自体が発光するのでバックライトなどの光源がいらない上、素子自体が非常に薄いため薄型軽量ディスプレイを作成するにあたり非常に有利である。
【0003】
発光素子の発光機構は、陰極から注入された電子および陽極から注入された正孔が有機化合物中の発光中心で再結合して分子励起子を形成し、その分子励起子が基底状態に戻る際にエネルギーを放出して発光するといわれている。励起状態には一重項励起と三重項励起が知られ、発光はどちらの励起状態を経ても可能であると考えられている。
【0004】
電極間に挟まれた有機化合物層は、積層構造となっていることが多く、この積層構造は「正孔輸送層、発光層、電子輸送層」という順に薄膜が積層された、機能分離型の積層構造が代表的である。正孔と電子が再結合する発光層を挟んで正孔の輸送性が高い材料による層を陽極として機能する電極側に、電子の輸送性が高い材料による層を陰極側に配置することによって効率良く正孔及び電子の輸送を行うことが出来、さらに正孔及び電子が再結合する確率も高めることができる。このような構造は非常に発光効率が高いため、現在研究開発が進められている発光表示装置はほとんどこのような構造が採用されている(例えば非特許文献1参照)。
【0005】
また、他の構造としては電極と正孔輸送層との間に正孔注入層を含む構造や、電極と電子輸送層との間に電子注入層を含む構造であっても良く、それぞれ正孔注入性に優れた材料、電子注入性に優れた材料で形成されている。また、隣接する2層以上の機能を同時に有する層を用いた積層構造を有していても良い。
【0006】
有機化合物を含む層は上記のように積層構造が代表的であるが、単層構造で形成されるものや、混合層であっても良く、また、発光層に対して蛍光性色素等がドーピングされていても良い。
【0007】
また、これら、それぞれの機能に特化した材料の開発が進められており、正孔注入層として用いることができる材料も低分子材料から高分子材料まで様々な提案がなされている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【0008】
なかでも高分子系の材料は、スピンコート法やインクジェット法などの手法によってインジウム錫酸化物(ITO:indium tin oxide)表面に成膜することができるのが大きな特徴である。特にインクジェット法は、液滴が基板に付着する位置を制御することによって、任意の微細パターンを形成することができ、低コストで簡便であるというメリットがあり、発光素子の作製技術として重要な役割を演じている。
【非特許文献1】Chihaya Adachi、外3名、ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライド フィジクス、Vol.27、No.2、1988、pp.L269−L271
【特許文献1】特開2000−150169号公報
【特許文献2】英国特許第2334959号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、正孔注入性の材料として知られている高分子材料であるポリエチレンジオキシチオフェン(略称:PEDOT)やポリアニリン等ではポリスチレンスルホン酸(略称:PSS)のような酸成分、特許文献1に記載されたような材料ではハロゲン化アンチモンを同時に使用する必要があった。これら酸成分及びハロゲン化アンチモンは電子受容性のドーパントとして用いられているが、前者は素子電極の腐食を起こす可能性があるため作製された製品の信頼性に不安があり、後者は猛毒であるアンチモンを用いることから工業的に使用は望ましくない。また、その他のドーパントを用いたとしても発光素子を作製するにあたり、用いる材料の種類は少ない方が良いのは言うまでもない。
【0010】
一方、特許文献2に記載されたような材料ではこれらのような電子受容性のドーパントは用いられていないが、当該材料を用いて作製された発光素子を駆動する為に28Vもの電圧を必要とし、当該材料が充分な正孔注入性を有しているとは言い難い。
【0011】
そこで、本発明では、電子受容性のドーパントを用いずとも充分な正孔注入性を有する発光素子用材料又は正孔注入性材料を提供することを課題とする。
【0012】
また、本発明では、電子受容性のドーパントを用いずとも充分な正孔注入性を有する発光素子用又は正孔注入性の高分子材料を提供することを課題とする。
【0013】
また、本発明では、電子受容性のドーパントを用いずとも充分な正孔注入性を有する発光素子用又は正孔注入性の高分子材料を合成するためのモノマーとなる有機化合物を提供することを課題とする。
【0014】
また、本発明では電子受容性のドーパントを用いずとも充分な正孔注入性を有し、且つ当該材料を用いて作製された発光素子の画素の不良の発生を抑制することができる発光素子用材料又は正孔注入性材料を提供することを課題とする。
【0015】
また、別の課題として、蒸着法により成膜される発光素子は材料の利用効率(材料効率)が小さいという問題もあった。
【0016】
そこで、本発明では上記課題に加えて材料効率の高い成膜方法を採用することが可能な発光素子用材料又は正孔注入性材料を提供することを課題とする。
【0017】
なお、駆動電圧が低く、初期不良の発生が少ない発光素子を提供することも本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決することが可能な本発明の材料の一つは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有し、イオン化ポテンシャルが4.9eV以上5.4eV以下のポリマーよりなる正孔注入性材料である。
【0019】
【化1】

(但し、式中Rは水素、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基のいずれかであり、Rはアリール基を示す。)
【0020】
また本発明の他の構成は、上記構成において式中Rで表されるアリール基が電子供与性の置換基を有する正孔注入性材料である。なお、当該電子供与性の置換基はハメット則における置換基定数σの値がが−2.1以上0.15以下の範囲内の値をとる置換基であることが望ましい。
【0021】
また、本発明の他の構成は、上記構成において式中Rで表されるアリール基がジアリールアミノ基を有する正孔注入性材料である。
【0022】
本発明の他の材料の一つは下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマーよりなる正孔注入性材料である。なお、式中Rは水素、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基のいずれかであり、式中Rは下記式(2)で表される基である。
【0023】
【化2】

【0024】
【化3】

(但し式中Ar〜Arは置換基を有しても有さずとも良い炭素数6〜14のアリール基を表す。)
【0025】
本発明の他の材料の一つは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する線状ポリマーよりなる正孔注入性材料である。なお、式中Rは水素、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基のいずれかであり、式中Rは下記一般式(2)で表される基である。
【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

(但し式中Ar〜Arは置換基を有しても有さずとも良い炭素数6〜14のアリール基を表す。)
【0028】
本発明の他の材料の一つは、下記構造式(3)で表される繰り返し単位を有するポリマーよりなる正孔注入性材料である。
【0029】
【化6】

【0030】
なお、これら材料は数平均分子量で2000以上500000以下の範囲の材料が好ましく、さらには数平均分子量が10000以上100000以下の範囲であることが望ましいい。また、各々分岐を有していても良く、末端基はどのような基であっても構わない。
【0031】
本発明の他の構成の一つは下記一般式(4)で表される有機化合物である。
【化7】

(但し式中Ar〜Arは置換基を有しても有さずとも良い炭素数6〜14のアリール基を表す。)
【0032】
本発明の他の構成の一つは下記構造式(5)で表される有機化合物である。
【化8】

【発明の効果】
【0033】
本発明の正孔注入性材料は、電子受容性のドーパントを用いずとも充分な正孔注入性を有する発光素子用材料又は正孔注入性材料である。
【0034】
また、本発明の正孔注入性材料は、電子受容性のドーパントを用いずとも充分な正孔注入性を有する発光素子用又は正孔注入性の高分子材料である。
【0035】
また、本発明の有機化合物を用いることにより、電子受容性のドーパントを用いずとも充分な正孔注入性を有する発光素子用又は正孔注入性の高分子材料を合成することができる。
【0036】
また、本発明の正孔注入性材料を用いることで、上記効果に加えて材料効率の高い成膜方法を採用することが可能な発光素子用材料又は正孔注入性材料を提供することができる。
【0037】
また、本発明の正孔注入性材料を用いて作製された本発明の発光素子は、正孔注入性層の形成の際、材料効率が良いインクジェット法に代表される液滴吐出法などの作製方法を用いることができる為、コストを抑えつつも良好な特性を有する発光素子とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0039】
なお、本発明において発光素子の一対の電極のうち、一方の電極の電位が他方の電極より高くなるような電圧をかけると、発光する。このとき高い電位を有する電極を陽極として機能する電極と言い、低い電位を有する電極を陰極として機能する電極という。
【0040】
また、本発明において特に断りの無い限り、正孔輸送層は、正孔の輸送性が電子の輸送性より高い物質で形成され発光層よりも陽極として機能する電極側に位置している層のことを言い、また、電子輸送層とは電子の輸送性が正孔の輸送性より高い物質で形成され、発光層よりも陰極として機能する電極側に位置している層のことを言う。また、正孔注入層とは陽極として機能する電極に接して設けられ、電極からの正孔注入障壁が小さい材料によりなる層であり、電子注入層とは陰極として機能する電極に接して設けられ、電極からの電子注入障壁が小さい材料によりなる層である。各々隣接する層は、それらの両方の機能を備える一つの層であっても良い。また、発光層がいずれかの機能を兼ねている場合もある。
【0041】
(実施の形態1)
本発明の一態様について説明する。
【0042】
本発明の正孔注入性材料は下記一般式(1)に表される繰り返し単位を有しするポリマーである。式中Rは水素、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基のいずれかであり、式中、Rはアリール基を示している。このような構成よりなるポリマーにおいてイオン化ポテンシャルが4.9eV以上5.4eV以下のポリマーは、金属からの正孔の受け取りをスムーズに行うことが可能なポリマーであり、正孔注入性材料として好適に使用することができる。
【0043】
【化9】

【0044】
式中Rで示されるアリール基は電子供与性の置換基を有することが望ましく、当該電子供与性の置換基はハメット則における置換基定数σの値が−2.1以上0.15以下の範囲であると、この場合電子供与性のドーパントを用いること無く正孔注入性材料として好適に用いることができなお良い。
【0045】
電子供与性のドーパントを用いること無く正孔注入性材料として特に好適に用いることができるポリマーとする為には、式中Rで表されるアリール基がジアリールアミノ基を有するアリール基であればよい。
【0046】
ジアリールアミノ基を有するアリール基のうち、下記一般式(2)で表される基は特に好ましい。
【0047】
【化10】

【0048】
なお、上記式中、Ar〜Arはそれぞれ炭素数6〜14のアリール基であり、当該アリール基に置換基はあってもなくとも良い。またArとArは縮合していても良い。
【0049】
このような構成よりなるポリマーはイオン化ポテンシャルが4.9eV以上5.4eV以下のポリマーとすることができ、金属からの正孔の受け取りをスムーズに行うことが可能なポリマーであり、正孔注入性材料として好適に使用することができる。
【0050】
上記一般式(1)で表される本発明の正孔注入性材料についての代表例を以下に示す。但し、本発明の正孔注入性材料はこれに限定されない。
【0051】
【化11】

【0052】
【化12】

【0053】
【化13】

【0054】
【化14】

【0055】
【化15】

【0056】
【化16】

【0057】
【化17】

【0058】
【化18】

【0059】
【化19】

【0060】
【化20】

【0061】
【化21】

【0062】
【化22】

【0063】
【化23】

【0064】
【化24】

【0065】
【化25】

【0066】
【化26】

【0067】
【化27】

【0068】
【化28】

【0069】
【化29】

【0070】
【化30】

【0071】
【化31】

【0072】
【化32】

【0073】
【化33】

【0074】
【化34】

【0075】
【化35】

【0076】
【化36】

【0077】
【化37】

【0078】
【化38】

【0079】
【化39】

【0080】
【化40】

【0081】
【化41】

【0082】
【化42】

【0083】
【化43】

【0084】
【化44】

【0085】
【化45】

【0086】
【化46】

【0087】
【化47】

【0088】
【化48】

【0089】
【化49】

【0090】
【化50】

【0091】
【化51】

【0092】
【化52】

【0093】
【化53】

【0094】
【化54】

【0095】
【化55】

【0096】
【化56】

【0097】
【化57】

【0098】
【化58】

【0099】
【化59】

【0100】
【化60】

【0101】
【化61】

【0102】
【化62】

【0103】
【化63】

【0104】
【化64】

【0105】
なお、本発明の正孔注入性材料は末端基に関して制限はなく、合成方法に関しての制限もない。
【0106】
また、本発明の正孔注入性材料は分子ごとに2種類以上の上記式(2)で表される基が混在している材料となっていても良いし、1分子中に2種類以上の上記式(2)で表される基が混在している共重合体よりなる材料であっても良い。
【0107】
また、分岐度も結晶性や密度、固さに影響をおよぼすが、正孔注入性に関しての影響は小さい為、結晶性や密度、固さを公知の方法により反応を制御し使用者が適宜設計することが可能である。
【0108】
なお、当該ポリマーの数平均分子量は2000以上500000以下の範囲の材料が好ましく、さらに好ましくは数平均分子量が10000以上100000以下の範囲であることが望ましい。
【0109】
このようなポリマーよりなる正孔注入性材料は電子受容性のドーパントを用いずとも充分に大きな正孔注入性を有し、単独で発光素子の正孔注入層を形成する材料とすることができる。
【0110】
また、このようなポリマーよりなる本発明の正孔注入性材料を発光素子の正孔注入層を形成する材料として用いると、正孔注入性層の形成の際、インクジェット法に代表される液滴吐出法などの材料効率が良い作製方法を用いることができる為、コストを抑えつつも良好な特性を有する発光素子とすることができる。
【0111】
すなわち、電極の腐食の心配や毒性の強い物質の使用、駆動電圧の上昇無しにコストを抑えつつも良好な特性を有する発光素子を作製することができる。
【0112】
さらに、このようなポリマーよりなる発光素子用の正孔注入性材料はインクジェット法に代表される液滴吐出法による成膜を行うことが可能である為、材料効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0113】
(実施の形態2)
本発明の一態様として、実施の形態1に示したような本発明の正孔注入性材料を合成する為に用いる本発明のモノマーである有機化合物について説明する。
【0114】
本発明のモノマーは、下記一般式(4)で表される有機化合物である。なお、上記式中、Ar〜Arはそれぞれ炭素数6〜14のアリール基であり、当該アリール基に置換基はあってもなくとも良い。またArとArは縮合していても良い。
【0115】
【化65】

【0116】
上記一般式(4)で表される有機化合物を重合することで本発明の一態様となる下記一般式(1)により表されるポリマーである正孔注入性材料を合成することができる。
【0117】
【化66】

但し、式中Rは水素、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基のいずれかであり、式中、Rは下記式(2)で表される基である。
【0118】
【化67】

上記式中、Ar〜Arはそれぞれ炭素数6〜14のアリール基であり、当該アリール基に置換基はあってもなくとも良い。またArとArは縮合していても良い。
【0119】
上記一般式(4)で表される本発明の有機化合物をモノマーとして重合することで、電子受容性のドーパントを用いずとも充分に大きな正孔注入性を有し、単独で発光素子の正孔注入層を形成することが可能なポリマーである実施の形態1に記載したような本発明の正孔注入性材料を合成することが出来るようになる。
【0120】
また、上記一般式(4)で表され、且つ異なる構造を有する少なくとも2種類以上の有機化合物の混合物であるモノマー混合物を共重合することで、上記式(1)において、Rで表される置換基の種類が2種類以上のポリマーである本発明の正孔注入性材料を合成することが出来るようになる。異なる種類のモノマーによる共重合体とすることで、分子量や結晶性、ガラス転移温度などの設計を容易とすることが出来ると考えられる。
【0121】
上記一般式(4)で表される有機化合物として、例えば構造式(5)で表される有機化合物がある。
【0122】
【化68】

【0123】
(実施の形態3)
本発明の一態様として、本発明の発光素子について説明する。図1に本発明の発光素子の構造の一例を示した。
【0124】
本発明の発光素子は正孔注入層が下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマーよりなる正孔注入性材料により形成されている。なお、式中Rは水素、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基のいずれかであり、式中Rは下記一般式(2)で表される基のいずれかである。
【0125】
【化69】

【0126】
【化70】

【0127】
また、上記式中Ar〜Arは炭素数6〜14のアリール基であり、置換基は有していても有していなくとも良い。また、ArとArは縮合していても良い。
【0128】
上記した本発明の正孔注入性材料を正孔注入層として用いた発光素子の態様について、図1を用いて説明する。
【0129】
図1には、基板200上に形成された第1の電極201と第2の電極207との間に正孔注入層202、正孔輸送層203、発光層204、電子輸送層205、電子注入層206よりなる有機層が挟まれた構造の発光素子が表されている。そして、正孔注入層202には、一般式(1)、(3)、構造式(6)〜(59)のいずれかの式で表される本発明の正孔注入性材料が含まれている。
【0130】
このような発光素子において、第1の電極201からは、本発明の正孔注入性材料よりなる正孔注入層202に正孔が注入され、第2の電極207から注入された電子と発光層204において再結合し、発光層204中に含まれる発光物質を励起状態にする。そして、励起状態の発光物質が基底状態に戻るときに光が生じ、発光する。
【0131】
このように、本発明の正孔注入性材料を正孔注入層202として用いると、第1の電極201からの正孔の注入障壁が小さい為、スムーズに第1の電極201から有機層へ正孔が注入され、駆動電圧を低下させることができる。また、酸成分やハロゲン化アンチモンなど電子供与性のドーパントを用いる必要がなく、電極の負傷や環境汚染の心配もない。なお、本形態の発光素子において、第1の電極201は陽極として機能し、第2の電極207は陰極として機能する。
【0132】
ここで、発光層204について特に限定は無いが、発光層204として機能する層には大きく分けて2つの態様がある。一つは発光中心となる発光物質の有するエネルギーギャップよりも大きいエネルギーギャップを有する材料(ホスト材料)からなる層に発光材料を分散して含むホストーゲスト型の層と、もう一つは発光材料のみで発光層を構成する層であるが、前者は濃度消光が起こりにくく、好ましい構成である。発光中心となる発光物質としては、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン(略称:DCJT)、4−ジシアノメチレン−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン、ペリフランテン、2,5−ジシアノ−1,4−ビス(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)ベンゼン、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、クマリン6、クマリン545T、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、9,9’−ビアントリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)や9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(略称:TBP)等が挙げられる。また、上記発光材料を分散してなる層を形成する場合に母体となるホスト材料としては、9,10−ジ(2−ナフチル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)等のアントラセン誘導体、4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)等のカルバゾール誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))などの金属錯体等を用いることができる。また、発光物質のみで発光層204を構成することのできる材料としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)などがある。
【0133】
また、第1の電極201について特に限定はないが、本形態のように、陽極として機能するときは、仕事関数の大きい物質で形成されていることが好ましい。具体的には、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、または珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)、酸化亜鉛を含む酸化インジウム(IZO)の他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)等を用いることができる。なお、第1の電極201は、例えばスパッタ法や蒸着法等を用いて形成することができる。
【0134】
また、第2の電極207について特に限定はないが、本形態のように、陰極として機能するときは、仕事関数の小さい物質で形成されていることが好ましい。具体的には、リチウム(Li)またはマグネシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属等を含んだアルミニウム等を用いることができる。なお、第2の電極207は、例えばスパッタ法や蒸着法等を用いて形成することができる。
【0135】
なお、発光した光を外部に取り出すために、第1の電極201と第2の電極207のいずれか一または両方は、インジウムスズ酸化物等のから成る電極、または可視光を透過出来るように数〜数十nmの厚さで形成された電極であることが好ましい。
【0136】
また、第1の電極201と発光層204との間には、図1に示すように、正孔輸送層203を有していてもいなくともよい。ここで、正孔輸送層203とは、第1の電極201から注入された正孔を発光層204へ輸送する機能を有する層である。
【0137】
なお、正孔輸送層203について、特に限定はなく、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:α−NPD)や4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:TPD)や4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(略称:MTDATA)などの芳香族アミン系(即ち、ベンゼン環−窒素の結合を有する)の化合物等によって形成されたものを用いることができる。
【0138】
また、正孔輸送層203は、以上に述べた物質から成る層を二以上組み合わせて形成した多層構造の層であってもよい。
【0139】
また、第2の電極207と発光層204との間には、図1に示すように、電子輸送層205を有していてもよいし、有していなくとも良い。ここで、電子輸送層とは、第2の電極207から注入された電子を発光層204へ輸送する機能を有する層である。このように、電子輸送層205を設け、第2の電極207と発光層204とを離すことによって、発光が金属に起因して消光することを防ぐことができる。
【0140】
なお、電子輸送層205について特に限定はなく、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等によって形成されたものを用いることができる。この他、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体等によって形成されたものであってもよい。また、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)等を用いて形成されたものであってもよい。
【0141】
また、電子輸送層205は、以上に述べた物質から成る層を二以上組み合わせて形成した多層構造の層であってもよい。
【0142】
また、第2の電極207と電子輸送層205との間には、図1に示すように、電子注入層206を有していてもいなくてもよい。ここで、電子注入層とは、陰極として機能する電極から電子輸送層205へ電子の注入を補助する機能を有する層である。なお、電子輸送層を特に設けない場合は、陰極として機能する電極と発光層との間に電子注入層を設け、発光層への電子の注入を補助してもよい。
【0143】
電子注入層206ついて特に限定はなく、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属の化合物を用いて形成されたものを用いることができる。この他、Alqまたは4,4−ビス(5−メチルベンズオキサゾル−2−イル)スチルベン(BzOs)等のように電子輸送性の高い物質と、マグネシウムまたはリチウム等のようにアルカリ金属又はアルカリ土類金属とを混合したものも、電子注入層206として用いることができる。
【0144】
以上に説明した本発明の発光素子において、正孔輸送層203、発光層204、電子輸送層205、電子注入層206は、それぞれ、蒸着法、またはインクジェット法、または塗布法等、いずれの方法で形成しても構わない。また、第1の電極201または第2の電極207についても、スパッタリング法または蒸着法等、いずれの方法を用いて形成しても構わない。
【0145】
以上のような構成を有する本発明の発光素子は、本発明の正孔注入性材料を用いて正孔注入層202を形成しているため、第1の電極201からの正孔の注入障壁が小さく、スムーズに第1の電極201から有機層へ正孔が注入され、駆動電圧が小さい発光素子である。また、本発明の発光素子は正孔注入性層の材料として、酸成分やハロゲン化アンチモンなど電子供与性のドーパントを用いる必要がなく、電極の負傷や環境汚染の心配もない。さらに、本発明の発光素子は正孔注入層202の材料として、材料効率の高い成膜方法を選択することが可能な本発明の正孔注入性材料を用いている為コスト的にも有利な発光素子である。
【0146】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の表示装置について図2、図3を参照し、作製方法を示しながら説明する。なお、本実施の形態ではアクティブマトリクス型の表示装置を作成する例を示したが、パッシブマトリクス型の表示装置であっても本発明の発光装置を適用することができるのはもちろんである。
【0147】
まず、基板50上に第1の下地絶縁層51a、第2の下地絶縁層51bを形成した後、さらに半導体層を第2の下地絶縁層51b上に形成する。(図2(A))
【0148】
基板50の材料としてはガラス、石英やプラスチック(ポリイミド、アクリル、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエーテルスルホンなど)等を用いることができる。これら基板は必要に応じてCMP等により研磨してから使用しても良い。本実施の形態においてはガラス基板を用いる。
【0149】
第1の下地絶縁層51a、第2の下地絶縁層51bは基板50中のアルカリ金属やアルカリ土類金属など、半導体膜の特性に悪影響を及ぼすような元素が半導体層中に拡散するのを防ぐ為に設ける。材料としては酸化珪素、窒化珪素、窒素を含む酸化珪素、酸素を含む窒化珪素などを用いることができる。本実施の形態では第1の下地絶縁層51aを窒化珪素で、第2の下地絶縁層51bを酸化珪素で形成する。本実施の形態では、下地絶縁層を第1の下地絶縁層51a、第2の下地絶縁層51bの2層で形成したが、単層で形成してもかまわないし、2層以上の多層であってもかまわない。また、基板からの不純物の拡散が気にならないようであれば下地絶縁層は設ける必要がない。
【0150】
続いて形成される半導体層は本実施の形態では非晶質珪素膜をレーザ結晶化して得る。第2の下地絶縁層51b上に非晶質珪素膜を25〜100nm(好ましくは30〜60nm)の膜厚で形成する。作製方法としては公知の方法、例えばスパッタ法、減圧CVD法またはプラズマCVD法などが使用できる。その後、500℃で1時間の加熱処理を行い水素出しをする。
【0151】
続いてレーザ照射装置を用いて非晶質珪素膜を結晶化して結晶質珪素膜を形成する。本実施の形態のレーザ結晶化ではエキシマレーザを使用し、発振されたレーザビームを光学系を用いて線状のビームスポットに加工し非晶質珪素膜に照射することで結晶質珪素膜とし、半導体層として用いる。
【0152】
非晶質珪素膜の他の結晶化の方法としては、他に、熱処理のみにより結晶化を行う方法や結晶化を促進する触媒元素を用い加熱処理を行う事によって行う方法もある。結晶化を促進する元素としてはニッケル、鉄、パラジウム、スズ、鉛、コバルト、白金、銅、金などが挙げられ、このような元素を用いることによって熱処理のみで結晶化を行った場合に比べ、低温、短時間で結晶化が行われるため、ガラス基板などへのダメージが少ない。熱処理のみにより結晶化をする場合は、基板50を熱に強い石英基板などにすればよい。
【0153】
続いて、必要に応じて半導体層にしきい値をコントロールする為に微量の不純物添加、いわゆるチャネルドーピングを行う。要求されるしきい値を得る為にN型もしくはP型を呈する不純物(リン、ボロンなど)をイオンドーピング法などにより添加する。
【0154】
その後、図2(A)に示すように半導体層を所定の形状に成形し、島状の半導体層52を得る。半導体層の成形は半導体層にフォトレジストを塗布し、所定のマスク形状を露光し、焼成して、半導体層上にレジストマスクを形成し、このマスクを用いてエッチングをすることにより行われる。
【0155】
続いて半導体層52を覆うようにゲート絶縁層53を形成する。ゲート絶縁層53はプラズマCVD法またはスパッタ法を用いて膜厚を40〜150nmとして珪素を含む絶縁層で形成する。本実施の形態では酸化珪素を用いて形成する。
【0156】
次いで、ゲート絶縁層53上にゲート電極54を形成する。ゲート電極54はタンタル、タングステン、チタン、モリブデン、アルミニウム、銅、クロム、ニオブから選ばれた元素、または元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で形成してもよい。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶珪素膜に代表される半導体膜を用いてもよい。また、AgPdCu合金を用いてもよい。
【0157】
また、本実施の形態ではゲート電極54は単層で形成されているが、下層にタングステン、上層にモリブデンなどの2層以上の積層構造でもかまわない。積層構造としてゲート電極を形成する場合であっても前段で述べた材料を使用するとよい。また、その組み合わせも適宜選択すればよい。ゲート電極54の加工はフォトレジストを用いたマスクを利用し、エッチングをして行う。
【0158】
続いて、ゲート電極54をマスクとして半導体層52に高濃度の不純物を添加する。これによって半導体層52、ゲート絶縁層53、及びゲート電極54を含む薄膜トランジスタ70が形成される。
【0159】
なお、薄膜トランジスタの作製工程については特に限定されず、所望の構造のトランジスタを作製できるように適宜変更すればよい。
【0160】
本実施の形態では、レーザ結晶化を使用して結晶化した結晶性シリコン膜を用いたトップゲートの薄膜トランジスタを用いたが、非晶質半導体膜を用いたボトムゲート型の薄膜トランジスタを画素部に用いることも可能である。非晶質半導体は珪素だけではなくシリコンゲルマニウムも用いることができ、シリコンゲルマニウムを用いる場合、ゲルマニウムの濃度は0.01〜4.5atomic%程度であることが好ましい。
【0161】
また非晶質半導体中に0.5nm〜20nmの結晶を粒観察することができる微結晶半導体膜(セミアモルファス半導体)を用いてもよい。また0.5nm〜20nmの結晶を粒観察することができる微結晶はいわゆるマイクロクリスタル(μc)とも呼ばれている。
【0162】
セミアモルファス半導体であるセミアモルファスシリコン(SASとも表記する)は、SiH、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiFなどをグロー放電分解することにより得ることができる。これらを水素、水素とヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈して用いることでSASの形成を容易なものとすることができる。希釈率は10倍〜1000倍の範囲であることが好ましい。グロー放電分解による被膜の反応生成は0.1Pa〜133Paの範囲の圧力で行えば良い。グロー放電を形成するための電力は1MHz〜120MHz、好ましくは13MHz〜60MHzの高周波電力を供給すれば良い。基板加熱温度は300度以下が好ましく、100〜250度の基板加熱温度が好適である。
【0163】
このようにして形成されたSASはラマンスペクトルが520cm−1よりも低波数側にシフトしており、X線回折ではSi結晶格子に由来するとされる(111)、(220)の回折ピークが観測される。未結合手(ダングリングボンド)を終端する為に水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。膜中の不純物元素として、酸素、窒素、炭素などの大気成分の不純物は1×1020/cm以下とすることが望ましく、特に、酸素濃度は5×1019/cm以下、好ましくは1×1019/cm以下とする。この膜で作製したTFTにしたときの電界効果移動度μ=1〜10cm/Vsecとなる。
【0164】
また、このSASをレーザでさらに結晶化して用いても良い。
【0165】
続いて、ゲート電極54、ゲート絶縁層53を覆って絶縁膜(水素を含む膜)59を窒化珪素により形成する。絶縁膜(水素を含む膜)59を形成したら480℃で1時間程度加熱を行って、不純物元素の活性化及び半導体層52の水素化を行う。
【0166】
続いて、絶縁膜(水素を含む膜)59を覆う第1の層間絶縁層60を形成する。第1の層間絶縁層60を形成する材料としては酸化珪素、アクリル、ポリイミドや珪素と酸素との結合で骨格構造が構成され、置換基として少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、アリール基)、フルオロ基、又は少なくとも水素を含む有機基及びフロオロ基を有する材料、いわゆるシロキサン、Low−k材料等をもちいるとよい。本実施の形態では酸化珪素膜を第1の層間絶縁層として形成した。(図2(B))
【0167】
次に、半導体層52に至るコンタクトホールを開口する。コンタクトホールはレジストマスクを用いて、半導体層52が露出するまでエッチングを行うことで形成することができ、ウエットエッチング、ドライエッチングどちらでも形成することができる。なお、条件によって一回でエッチングを行ってしまっても良いし、複数回に分けてエッチングを行っても良い。また、複数回でエッチングする際は、ウエットエッチングとドライエッチングの両方を用いても良い。(図2(C))
【0168】
そして、当該コンタクトホールや第1の層間絶縁層60を覆う導電層を形成する。当該導電層を所望の形状に加工し、接続部61a、配線61bなどが形成される。この配線はアルミニウム、銅、アルミニウムと炭素とニッケルの合金、アルミニウムと炭素とモリブデンの合金等の単層でも良いが、積層順にモリブデン、アルミニウム、モリブデンの積層構造や、チタン、アルミニウム、チタンやチタン、窒化チタン、アルミニウム、チタンといった積層構造でも良い。(図2(D))
【0169】
その後、接続部61a、配線61b、第1の層間絶縁層60を覆って第2の層間絶縁層63を形成する。第2の層間絶縁層63の材料としては自己平坦性を有するアクリル、ポリイミド、シロキサンなどの塗布膜が好適に利用できる。本実施の形態ではシロキサンを第2の層間絶縁層63として用いる。(図2(E))
【0170】
続いて第2の層間絶縁層63上に窒化珪素などで絶縁層を形成してもよい。これは後の画素電極のエッチングにおいて、第2の層間絶縁層63が必要以上にエッチングされてしまうのを防ぐ為に形成する。そのため、画素電極と第2の層間絶縁層のエッチングレートの比が大きい場合には特に設けなくとも良い。続いて、第2の層間絶縁層63を貫通して接続部61aに至るコンタクトホールを形成する。
【0171】
そして当該コンタクトホールと第2の層間絶縁層63(もしくは絶縁層)を覆って、透光性を有する導電層を形成したのち、当該透光性を有する導電層を加工して薄膜発光素子の第1の電極64を形成する。ここで第1の電極64は接続部61aと電気的に接触している。
【0172】
第1の電極64の材料としてはアルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)などの導電性を有する金属、又はそれらの合金、または金属材料の窒化物(TiN)、インジウム錫酸化物(ITO:indium tin oxide)、珪素を含有するITO(ITSO)、酸化インジウムに酸化亜鉛(ZnO)を混合したIZO(indium zinc oxide)等の金属酸化物などの導電膜により形成することができる。
【0173】
また、発光を取り出す方の電極は透明性を有する導電膜により形成すれば良く、ITO、ITSO、IZOなどの金属酸化物の他、Al、Ag等金属の極薄膜を用いる。また、第2の電極の方から発光を取り出す場合は台1の電極は反射率の高い材料(Al、Ag等)を用いることができる。本実施の形態ではITSOを第1の電極64として用いた(図3(A))。
【0174】
次に第2の層間絶縁層63(もしくは絶縁層)及び第1の電極64を覆って有機材料もしくは無機材料からなる絶縁層を形成する。続いて当該絶縁層を第1の電極64の一部が露出するように加工し、隔壁65を形成する。隔壁65の材料としては、感光性を有する有機材料(アクリル、ポリイミドなど)が好適に用いられるが、感光性を有さない有機材料や無機材料で形成してもかまわない。また、隔壁65の材料にカーボンナイトライドなどの黒色顔料や染料を分散材などを用いて分散し、隔壁65を黒くすることでブラックマトリクス用に用いても良い。隔壁65の第1の電極と接する側の端面は曲率を有し、当該曲率が連続的に変化するテーパー形状をしていることが望ましい(図3(B))。
【0175】
次に、隔壁65に覆われていない第1の電極64を覆って、正孔注入層を成膜する。この正孔注入層は実施の形態1に記載の一般式(1)、(3)、構造式(6)〜(59)のいずれかの式で表される本発明の正孔注入性材料を用いて形成し、塗布にはインクジェット法を用いるとよい。続いて、発光層としてAlqにクマリン6を重量比1:0.005、膜厚35nm、電子輸送層としてはAlqを膜厚10nmとなるように蒸着する。これにより第1の電極64上に正孔注入層、発光層、電子輸送層からなる有機層66が形成される。
【0176】
続いて有機層66を覆う第2の電極67を形成する。これによって第1の電極64と第2の電極67との間に発光層を含む有機層を挟んでなる発光素子93を作製することができ、第1の電極に第2の電極より高い電圧をかけることによって発光を得ることができる。第2の電極67の形成に用いられる電極材料としては第1の電極の材料と同様の材料を用いることができる。本実施の形態ではアルミニウムを第2の電極として用いた。
【0177】
なお、本実施の形態では、正孔注入層を第1の電極上に形成したが、第1の電極上には電子輸送層を設け、積層順を反転させた構成としても良い。この場合、第1の電極にかける電圧を第2の電極にかける電圧より低くすることで発光を得ることができる。
【0178】
その後、プラズマCVD法により窒素を含む酸化珪素膜を第2のパッシベーション膜として形成する。窒素を含む酸化珪素膜を用いる場合には、プラズマCVD法でSiH、NO、NHから作製される酸化窒化ケイ素膜、またはSiH、NOから作製される酸化窒化ケイ素膜、あるいはSiH、NOをArで希釈したガスから形成される酸化窒化ケイ素膜を形成すれば良い。
【0179】
また、第1のパッシベーション膜としてSiH、NO、Hから作製される酸化窒化水素化ケイ素膜を適用しても良い。もちろん、第1のパッシベーション膜は単層構造に限定されるものではなく、他のケイ素を含む絶縁層を単層構造、もしくは積層構造として用いても良い。また、窒化炭素膜と窒化ケイ素膜の多層膜やスチレンポリマーの多層膜、窒化ケイ素膜やダイヤモンドライクカーボン膜を窒素を含む酸化珪素膜の代わりに形成してもよい。
【0180】
続いて発光素子を水などの劣化を促進する物質から保護するために、表示部の封止を行う。対向基板を封止に用いる場合は、絶縁性のシール材により、外部接続部が露出するように貼り合わせる。対向基板と素子基板との間の空間には乾燥した窒素などの不活性気体を充填しても良いし、シール材を画素部全面に塗布しそれにより対向基板を貼り合わせても良い。シール材には紫外線硬化樹脂などを用いると好適である。シール材には乾燥剤や基板間のギャップを一定に保つための粒子を混入しておいても良い。続いて外部接続部にフレキシブル配線基板を貼り付けることによって、表示装置が完成する。
【0181】
以上のように作製した表示装置の構成の1例を図4参照しながら説明する。なお、形が異なっていても同様の機能を示す部分には同じ符号を付し、その説明を省略する部分もある。本実施の形態では、LDD構造を有する薄膜トランジスタ70が接続部61aを介して発光素子93に接続している。
【0182】
図4(A)は第1の電極64が透光性を有する導電膜により形成されており、基板50側に有機層66より発せられた光が取り出される構造である。なお94は対向基板であり、発光素子93が形成された後、シール材などを用い、基板50に固着される。対向基板94と素子との間に透光性を有する樹脂88等を充填し、封止することによって発光素子93が水分により劣化することを防ぐ事ができる。また、樹脂88が吸湿性を有していることが望ましい。さらに樹脂88中に透光性の高い乾燥剤89を分散させるとさらに水分の影響を抑えることが可能になるためさらに望ましい形態である。
【0183】
図4(B)は第1の電極64と第2の電極67両方が透光性を有する導電膜により形成されており、基板50及び対向基板94の両方に光を取り出すことが可能な構成となっている。また、この構成では基板50と対向基板94の外側に偏光板90を設けることによって画面が透けてしまうことを防ぐことができ、視認性が向上する。偏光板90の外側には保護フィルム91を設けると良い。
【0184】
なお、表示機能を有する本発明の表示装置には、アナログのビデオ信号、デジタルのビデオ信号のどちらを用いてもよい。デジタルのビデオ信号を用いる場合はそのビデオ信号が電圧を用いているものと、電流を用いているものとに分けられる。発光素子の発光時において、画素に入力されるビデオ信号は、定電圧のものと、定電流のものがあり、ビデオ信号が定電圧のものには、発光素子に印加される電圧が一定のものと、発光素子に流れる電流が一定のものとがある。またビデオ信号が定電流のものには、発光素子に印加される電圧が一定のものと、発光素子に流れる電流が一定のものとがある。この発光素子に印加される電圧が一定のものは定電圧駆動であり、発光素子に流れる電流が一定のものは定電流駆動である。定電流駆動は、発光素子の抵抗変化によらず、一定の電流が流れる。本発明の発光表示装置及びその駆動方法には、電圧で駆動する方法、電流で駆動する方法のどちらを用いてもよく、また定電圧駆動、定電流駆動のどちらを用いてもよい。
【0185】
本実施の形態は実施の形態1乃至実施の形態3の適当な構成と組み合わせて用いることが可能である。
【0186】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一形態に相当する発光装置のパネルの外観について図5を用いて説明する。図5(A)は基板上に形成されたトランジスタおよび発光素子を対向基板4006との間に形成したシール材によって封止したパネルの上面図であり、図5(B)は図5(A)の断面図に相応する。また、このパネルに搭載されている発光素子の有する構造は、実施の形態4に示したような構成である。
【0187】
基板4001上に設けられた画素部4002と信号線駆動回路4003と走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また、画素部4002と信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004の上に対向基板4006が設けられている。よって画素部4002と信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004とは基板4001とシール材4005と対向基板4006とによって充填材4007と共に密封されている。
【0188】
また、基板4001上に設けられた画素部4002と信号線駆動回路4003と走査線駆動回路4004とは薄膜トランジスタを複数有しており、図5(B)では信号線駆動回路4003に含まれる薄膜トランジスタ4008と、画素部4002に含まれる薄膜トランジスタ4010とを示す。
【0189】
また、発光素子4011は、薄膜トランジスタ4010と電気的に接続されている。
【0190】
また、引き回し配線4014は画素部4002と信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004とに、信号、または電源電圧を層供給する為の配線に相当する。引き回し配線4014は、引き回し配線4015a,4015bを介して接続端子4016と接続されている。接続端子4016はフレキシブルプリントサーキット(FPC)4018が有する端子と異方性導電膜4019を介して電気的に接続されている。
【0191】
なお、充填材4007としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、ポリビニルクロライド、アクリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルブチラル、またはエチレンビニレンアセテートを用いる事ができる。
【0192】
なお、本発明の発光装置は発光素子を有する画素部が形成されたパネルと、該パネルにICが実装されたモジュールとをその範疇に含む。
【0193】
本実施の形態のような構成のパネル及びモジュールは、発光素子にシロキサン結合により構成された骨格を有する複合材料が用いられていることから耐熱性や耐久性に優れたパネル及びモジュールである。また、当該骨格に電子又は正孔注入もしくは輸送性を付与している有機基と電子の授受を行うことができる材料がさらに添加されている複合材料が用いられていることから、正孔又は電子の注入もしくは輸送性が向上し、さらには導電性が向上したパネル及びモジュールとすることができる。
【0194】
また、正孔又は電子の注入もしくは輸送性が向上し、さらに導電性が向上した複合材料を用いて第1の電極上の機能層の厚さを100nm以上に厚く形成することで、駆動電圧の大幅上昇を招かずに第1の電極上のゴミなどによる不良の発生を低減させることができる。
【0195】
本実施の形態は実施の形態1乃至実施の形態4の適当な構成と組み合わせて用いることが可能である。
【0196】
(実施の形態6)
実施の形態5にその一例を示したようなモジュールを搭載した本発明の電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。それらの電子機器の具体例を図6に示す。
【0197】
図6(A)は発光表示装置でありテレビ受像器やパーソナルコンピュータのモニターなどがこれに当たる。筐体2001、表示部2003、スピーカー部2004等を含む。本発明の発光表示装置は表示部2003の発光素子に実施の形態1に記載の発光素子用材料を用いている為、安価に製造することが可能な発光表示装置である。画素部にはコントランスを高めるため、偏光板、又は円偏光板を備えるとよい。例えば、封止基板へ1/4λ板、1/2λ板、偏光板の順にフィルムを設けるとよい。さらに偏光板上に反射防止膜を設けてもよい。
【0198】
図6(B)は携帯電話であり、本体2101、筐体2102、表示部2103、音声入力部2104、音声出力部2105、操作キー2106、アンテナ2108等を含む。本発明の携帯電話は表示部2103の発光素子に実施の形態1に記載の発光素子用材料を用いている為、安価に製造することが可能な携帯電話である。
【0199】
図6(C)はコンピュータであり、本体2201、筐体2202、表示部2203、キーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウス2206等を含む。本発明のコンピュータは表示部2203の発光素子に実施の形態1に記載の発光素子用材料を用いている為、安価に製造することが可能なコンピュータである。図6(C)ではノート型のコンピュータを例示したが、デスクトップ型のコンピュータなどにも適用することが可能である。
【0200】
図6(D)はモバイルコンピュータであり、本体2301、表示部2302、スイッチ2303、操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。本発明のモバイルコンピュータは表示部2302の発光素子に実施の形態1に記載の発光素子用材料を用いている為、安価に製造することが可能なモバイルコンピュータである。
【0201】
図6(E)は携帯型のゲーム機であり、筐体2401、表示部2402、スピーカー部2403、操作キー2404、記録媒体挿入部2405等を含む。本発明の携帯型ゲーム機は表示部2402の発光素子に実施の形態1に記載の発光素子用材料を用いている為、安価に製造することが可能な携帯型ゲーム機である。
【0202】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。
【0203】
(実施の形態7)
図7には下面発光、両面発光、上面発光の例を示した。図7(A)、(B)は図7(C)における第1の層間絶縁層を自己平坦性を有する材料で形成し、薄膜トランジスタに接続する配線と発光素子の第1の電極64を同じ層間絶縁層上に形成した場合の構成である。図7(A)は発光素子の第1の電極64のみを透光性を有する材料で形成し、発光装置の下部に向かって光が射出する下面発光の構成、図7(B)はITOやITSO、IZOなど透光性を有する材料を第2の電極67として形成することで図7(B)のように両面より光を取り出すことのできる両面発光の発光表示装置を得ることが可能となる。なお、アルミニウムや銀など厚膜で形成すると非透光性であるが、薄膜化すると透光性を有するようになるため、アルミニウムや銀の透光性を有する程度の薄膜で第2の電極67を形成しても両面発光とすることができる。
【0204】
(実施の形態8)
本実施の形態では、実施の形態5で示したパネル、モジュールが有する画素回路、保護回路及びそれらの動作について説明する。なお、図2、図3に示してきた断面図は駆動用TFT1403と発光素子1405の断面図となっている。
【0205】
図8(A)に示す画素は、列方向に信号線1410及び電源線1411、1412、行方向に走査線1414が配置される。また、スイッチング用TFT1401、駆動用TFT1403、電流制御用TFT1404、容量素子1402及び発光素子1405を有する。
【0206】
図8(C)に示す画素は、駆動用TFT1403のゲート電極が、行方向に配置された電源線1412に接続される点が異なっており、それ以外は図8(A)に示す画素と同じ構成である。つまり、図8(A)(C)に示す両画素は、同じ等価回路図を示す。しかしながら、列方向に電源線1412が配置される場合(図8(A))と、行方向に電源線1412が配置される場合(図8(C))とでは、各電源線は異なるレイヤーの導電膜で形成される。ここでは、駆動用TFT1403のゲート電極が接続される配線に注目し、これらを作製するレイヤーが異なることを表すために、図8(A)(C)として分けて記載する。
【0207】
図8(A)(C)に示す画素の特徴として、画素内に駆動用TFT1403と電流制御用TFT1404が直列に接続されており、駆動用TFT1403のチャネル長L(1403)、チャネル幅W(1403)、電流制御用TFT1404のチャネル長L(1404)、チャネル幅W(1404)は、これらの関係がL(1403)/W(1403):L(1404)/W(1404)=5〜6000:1を満たすように設定するとよい。
【0208】
なお、駆動用TFT1403は、飽和領域で動作し発光素子1405に流れる電流値を制御する役目を有し、電流制御用TFT1404は線形領域で動作し発光素子1405に対する電流の供給を制御する役目を有する。両TFTは同じ導電型を有していると作製工程上好ましく、本実施の形態ではnチャネル型TFTとして形成する。また駆動用TFT1403には、エンハンスメント型だけでなく、ディプリーション型のTFTを用いてもよい。上記構成を有する本発明は、電流制御用TFT1404が線形領域で動作するために、電流制御用TFT1404のVgsの僅かな変動は、発光素子1405の電流値に影響を及ぼさない。つまり、発光素子1405の電流値は、飽和領域で動作する駆動用TFT1403により決定することができる。上記構成により、TFTの特性バラツキに起因した発光素子の輝度ムラを改善して、画質を向上させた表示装置を提供することができる。
【0209】
図8(A)〜(D)に示す画素において、スイッチング用TFT1401は、画素に対するビデオ信号の入力を制御するものであり、スイッチング用TFT1401がオンとなると、画素内にビデオ信号が入力される。すると、容量素子1402にそのビデオ信号の電圧が保持される。なお図8(A)(C)には、容量素子1402を設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、ビデオ信号を保持する容量がゲート容量などでまかなうことが可能な場合には、容量素子1402を設けなくてもよい。
【0210】
図8(B)に示す画素は、TFT1406と走査線1415を追加している以外は、図8(A)に示す画素構成と同じである。同様に、図8(D)に示す画素は、TFT1406と走査線1415を追加している以外は、図8(C)に示す画素構成と同じである。
【0211】
TFT1406は、新たに配置された走査線1415によりオン又はオフが制御される。TFT1406がオンとなると、容量素子1402に保持された電荷は放電し、電流制御用TFT1404がオフとなる。つまり、TFT1406の配置により、強制的に発光素子1405に電流が流れない状態を作ることができる。そのためTFT1406を消去用TFTと呼ぶことができる。従って、図8(B)(D)の構成は、全ての画素に対する信号の書き込みを待つことなく、書き込み期間の開始と同時又は直後に点灯期間を開始することができるため、デューティ比を向上することが可能となる。
【0212】
図8(E)に示す画素は、列方向に信号線1410、電源線1411、行方向に走査線1414が配置される。また、スイッチング用TFT1401、駆動用TFT1403、容量素子1402及び発光素子1405を有する。図8(F)に示す画素は、TFT1406と走査線1415を追加している以外は、図8(E)に示す画素構成と同じである。なお、図8(F)の構成も、TFT1406の配置により、デューティ比を向上することが可能となる。
【0213】
以上のように、多様な画素回路を採用することができる。特に、非晶質半導体膜から薄膜トランジスタを形成する場合、駆動用TFT1403の半導体膜を大きくすると好ましい。そのため、上記画素回路において、電界発光層からの光が封止基板側から射出する上面発光型とすると好ましい。
【0214】
このようなアクティブマトリクス型の発光装置は、画素密度が増えた場合、各画素にTFTが設けられているため低電圧駆動でき、有利であると考えられている。
【0215】
本実施の形態では、一画素に各TFTが設けられるアクティブマトリクス型の発光装置について説明したが、一列毎にTFTが設けられるパッシブマトリクス型の発光装置を形成することもできる。パッシブマトリクス型の発光装置は、各画素にTFTが設けられていないため、高開口率となる。発光が電界発光層の両側へ射出する発光装置の場合、パッシブマトリクス型の表示装置を用いる透過率が高まる。
【0216】
これらのような画素回路をさらに有する本発明の表示装置は、当該表示装置の有する発光素子の電極として当該発光素子が有する構成及び求める性能に適した材料を使用することが出来る上、上記各々の特徴を有する表示装置とすることができる。
【0217】
続いて、図8(E)に示す等価回路を用い、走査線及び信号線に保護回路としてダイオードを設ける場合について説明する。
【0218】
図9には、画素部1500にスイッチング用TFT1401、1403、容量素子1402、発光素子1405が設けられている。信号線1410には、ダイオード1561と1562が設けられている。ダイオード1561と1562は、スイッチング用TFT1401又は1403と同様に、上記実施の形態に基づき作製され、ゲート電極、半導体層、ソース電極及びドレイン電極等を有する。ダイオード1561と1562は、ゲート電極と、ドレイン電極又はソース電極とを接続することによりダイオードとして動作させている。
【0219】
ダイオードと接続する共通電位線1554、1555はゲート電極と同じレイヤーで形成している。従って、ダイオードのソース電極又はドレイン電極と接続するには、ゲート絶縁層にコンタクトホールを形成する必要がある。
【0220】
走査線1414に設けられるダイオードも同様な構成である。
【0221】
このように、本発明によれば、入力段に設けられる保護ダイオードを同時に形成することができる。なお、保護ダイオードを形成する位置は、これに限定されず、駆動回路と画素との間に設けることもできる。
【0222】
このような保護回路を有する本発明の表示装置は、その表示措置の発光素子に実施の形態1に記載の発光素子用材料を用いている為、安価に製造することが可能であり、且つ上記構成を有することで、表示装置としての信頼性をさらに高めることが可能となる。
【実施例1】
【0223】
(合成例)
合成例としてポリ{4−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニル]アミノスチレン}(略称:PStDPA)の合成方法について説明する。
【0224】
[ステップ1] N−(4−ジフェニルアミノ)フェニルアニリンの合成。
【0225】
1000mLエーレンマイヤーフラスコに、トリフェニルアミン25.19g(0.102mol)、N−ブロモコハク酸イミド18.05g(0.102mol)、酢酸エチル400mLを入れ、空気中室温で一晩(約12時間)攪拌した。反応終了後、有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液で2回洗浄後、水層を酢酸エチルで2回抽出し、有機層とあわせて飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムにより乾燥後、自然ろ過、濃縮し、得られた無色固体を酢酸エチル、ヘキサンにより再結晶したところ無色粉末状固体を22.01g、収率66%で得た。核磁気共鳴法(NMR)によって、この無色粉末状固体がN,N−ジフェニル−N−(4−ブロモフェニル)アミンであることを確認した。核磁気共鳴法(NMR)による測定結果を以下に示す。
【0226】
この化合物の1H−NMRを次に示す。1H−NMR(300MHz,CDCl)δppm:7.32(d,2H,J=8.7Hz),7.29−7.23(m,4H),7.08−7.00(m,6H),6.94(d,2H,J=8.7Hz)
【0227】
また、N,N−ジフェニル−N−(4−ブロモフェニル)アミンの合成スキームを次式に示す。
【0228】
【化71】

【0229】
N,N−ジフェニル−N−(4−ブロモフェニル)アミン(559mg、6mmol)、ジベンジリデンアセトンパラジウム(略称:Pd(dba))(345mg、0.6mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド(略称:t−BuONa)(577mg、6mmol)の脱水トルエン溶液(5mL)を脱気した後、アニリン(559mg、6mmol)とトリ−tert−ブチルホスフィン(略称:P(t−Bu))(0.37mL、1.8mmol)を加え、窒素雰囲気下80℃、5時間加熱撹拌を行った。薄膜クロマトグラフィーで原料のN,N−ジフェニル−N−(4−ブロモフェニル)アミンが無くなったことを確認した後、飽和食塩水を加え、水層を酢酸エチル約100mLで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムによって脱水し、濾過した。ろ液を濃縮した後、酢酸エチル:ヘキサン=1:20のシリカゲルカラムにて精製を行った(収率42%)。
【0230】
核磁気共鳴法(NMR)によって、得られた固体がN−(4−ジフェニルアミノ)フェニルアニリンであることを確認した。
【0231】
この化合物の1H−NMRを次に示す。1H−NMR(300MHz,CDCl) d ppm:7.32(d,2H,J=8.7Hz),7.29−7.23(m,5H),7.08−7.00(m,6H),6.94(d,2H,J=8.7Hz)
【0232】
また、N−(4−ジフェニルアミノ)フェニルアニリンの合成スキームを次式に示す。
【0233】
【化72】

【0234】
[ステップ2] 4−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニル]アミノベンズアルデヒドの合成。
【0235】
窒素気流下、合成したN−(4−ジフェニルアミノ)フェニルアニリン10.0g(29.8mmol)、Pd(dba)2200mg(0.348mmol)、t−BuONa11.0g(114mmol)の乾燥トルエン懸濁液100mLに、2−(4−ブロモフェニル)−1,3−ジオキソラン4.09g(17.9mmol)とP(t−Bu)43%ヘキサン溶液、0.3mLを加え、3時間、80℃で攪拌した。
【0236】
反応混合物をフロリジール、アルミナ、セライトで濾過し、ろ液を飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過、濃縮した。得られた黄色固体をテトラヒドロフラン(THF)約100mLに溶解した後、当該溶液に3%塩酸を約50mL加え、一晩(約12時間)室温にて攪拌した。反応溶液を酢酸エチルで抽出した後、得られたオイル状の粗生成物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒)で精製することで、黄色固体を6.76g、収率86%で得た。核磁気共鳴法(NMR)によって、この黄色固体が4−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニル]アミノベンズアルデヒドであることを確認した。
【0237】
この化合物のNMRスペクトルを図10に示す。また1H−NMRを次に示す。1H NMR(300MHz、CDCl)δppm:9.79(s、1H)、7.68(d、J=9.0Hz)、6.89−7.40(m、23H)。
【0238】
また、4−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニル]アミノベンズアルデヒドの合成スキームを次式に示す。
【0239】
【化73】

【0240】
[ステップ3] 本発明のモノマーの一つである有機化合物、4−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニル]アミノスチレンの合成。
【0241】
窒素雰囲気下、ヨウ化メチルトリフェニルホスホニウム9.31g(23.0mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(100mL)の懸濁液に、(1.58mol/L)のn−ブチルリチウム15mLを−40℃で滴下した。滴下終了後0℃にて1時間攪拌した。得られた反応溶液にステップ2で合成した4−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニル]アミノベンズアルデヒド6.76g(15.4mmol)の乾燥テトラヒドロフラン溶液を加え、室温にて一晩(約12時間)攪拌した。
【0242】
反応混合物をセライトでろ過した後、水を加え、有機層を酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過、濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒)で精製することで、淡黄色固体を4.54g、収率81%で得た。核磁気共鳴法(NMR)によって、この淡黄色固体が4−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニル]アミノスチレン(略称:StDPA)であることを確認した。
【0243】
この化合物のNMRスペクトルを図11に示す。また1H−NMRを次に示す。1H NMR(300MHz、CDCl)δppm:6.94−7.30(m、23H)、6.64(dd、1H、J=11、18Hz)、5.62(dd、J=18Hz)、5.13(s、1H、J=11Hz)。
【0244】
また、本発明のモノマーの一つである有機化合物、4−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニル]アミノスチレン(StDPA)の合成スキームを次式に示す。
【0245】
【化74】

【0246】
[ステップ4] 本発明のポリマーの一つである正孔注入性材料、ポリ{4−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニル]アミノスチレン}の合成。
【0247】
ステップ3で合成した4−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニル]アミノスチレン(StDPA)4.22g(9.63mmol)と、アゾイソビスブチロニトリル112mg(0.68mmol)の乾燥トルエン(10mL)混合物を脱気した後、60℃にて3日間加熱した。反応溶液をエーテルに再沈殿し、析出した淡黄色固体をろ過により回収した。この淡黄色固体を減圧下乾燥させることで、淡黄色固体を3.41g、収率81%で得た。核磁気共鳴法(NMR)によって、この淡黄色固体が本発明のポリマーの一つである正孔注入性材料、ポリ{4−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニル]アミノスチレン}(略称:PStDPA)であることを確認した。
【0248】
この化合物の1H−NMRスペクトルを図12に示す。また1H−NMRを次に示す。1H−NMR(300MHz、CDCl)δppm:1.20−2.5(br、3H)、6.30−7.40(br、23H)。
【0249】
また、本発明のポリマーの一つである正孔注入性材料、ポリ{4−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニル]アミノスチレン}(略称:PStDPA)の合成スキームを次式に示す。
【0250】
【化75】

【0251】
以上のようにして、次式(3)で表されるような繰り返し単位を有する、本発明の正孔注入性材料で線状ポリマーであるPStDPAを合成することができる。
【0252】
【化76】

【0253】
得られたPStDPAをゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)によって分子量測定したところ、ポリスチレン換算で数平均分子量が18000、重量平均分子量は44000であることが分かった。
【0254】
続いて、合成したPStDPAの熱物性に関して説明する。
【0255】
合成したPStDPAの分解温度を示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA、セイコー電子工業製、型番:TG/DTA320)を用いて窒素雰囲気下10℃/minの昇温速度の条件で測定した。その結果、重量損失開始温度は391℃であった。
【0256】
また、合成したPStDPAのガラス転移温度について、示差走査熱量分析装置(DSC:Differencial Scanning Calorimetry、パーキンエルマー製、型番:Pyris1 DSC)を用いて調べた。測定結果から、作製したPStDPAのガラス転移温度は143℃であることが分かった。
【0257】
なお、末端基に関しては上記合成方法により合成された本発明の材料は両端に下記式(60)〜(62)から選ばれる基をそれぞれ独立に有する材料や、一端に下記式(60)〜(62)から選ばれる基を有し、もう一端に下記式(63)〜(66)から選ばれる基を有する材料の混合物となる。
【0258】
【化77】

【0259】
【化78】

【0260】
なお、上記式中Rは下記式(67)に表される置換基である。
【0261】
【化79】

【実施例2】
【0262】
本実施例では、実施例1で合成したPStDPAの薄膜状態におけるイオン化ポテンシャル及び吸収スペクトルを測定した結果を説明する。
【0263】
PStDPAの薄膜はガラス基板上にスピンコート法により成膜した。
【0264】
合成したPStDPA薄膜の詳しい作製方法について説明する。まず、PStDPA150mgをトルエン30mLに溶かした。この溶液を5μmのフィルターに通し、このろ液をスピンコート法によりガラス基板上に塗布した。スピンコート法による塗布は500rpmで2秒回転させた後、600rpmで60秒回転させることによって行った。続いて塗布したPStDPAをガラス基板ごと120℃で1時間焼成し、PStDPA薄膜を完成させた。
【0265】
完成したPStDPA薄膜の膜厚をエリプソメーター(日本Philip社製、型番PZ2000)により測定したところ、30nmであった。
【0266】
合成したPStDPAの薄膜状態のイオン化ポテンシャル及び吸収スペクトルについて光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)及び紫外可視吸収分光光度計(日本分光社製、V−550)を用いて測定した。
【0267】
測定結果から合成したPStDPAの薄膜状態におけるイオン化ポテンシャルは−5.19eVであった。
【0268】
また、吸収スペクトルの長波長側の吸収端の波長をエネルギーギャップとし、LUMO準位を求めたところ、LUMO準位は−1.89eVであった。
【0269】
なお、図13に測定データを示す。
【実施例3】
【0270】
本実施例では、一対の電極間にPStDPAの薄膜を挟んだ素子の電流−電圧特性について説明する。
【0271】
まず、測定に用いた素子の素子構造について説明する。当該素子はガラス基板上に形成され、ガラス基板側から順に第1の電極(透明電極:ITSO、110nm)、PStDPA薄膜(30nm)、第2の電極(アルミニウム、150nm)と積層されている構造とした。
【0272】
次に当該素子の詳しい作製方法について説明する。
【0273】
まず、ガラス基板上に第1の電極を形成した。本実施例ではITSOをスパッタリング法により形成することで第1の電極とした。なお、本発明において第1の電極の形状は2mm×2mmとした。次に第1の電極上にPStDPA薄膜を形成するための前処理として、多孔質の樹脂(代表的にはPVA(ポリビニルアルコール)製、ナイロン製など)で基板表面を洗浄し、200℃で1時間熱処理を行った。
【0274】
前処理を行った後、PStDPA150mgをトルエン30mLに溶かした溶液を5μmのフィルターで濾過し、このろ液をスピンコート法により第1の電極上に塗布した。スピンコート法による塗布は500rpmで2秒回転させた後、600rpmで60秒回転させることによって行った。続いて塗布したPStDPAをガラス基板ごと120℃で1時間焼成し、PStDPA薄膜を完成させた。
【0275】
続いて、成膜したPStDPA薄膜上に第2の電極としてアルミニウムを抵抗加熱による真空蒸着法により150nm成膜し、素子を完成させた。
【0276】
上記方法によって作製した素子の電流−電圧特性を測定した結果を図14に示す。横軸が電圧(単位:V)、縦軸が電流密度(単位:mA/cm)である。
【0277】
測定はケースレー・インスツルメント社製、型番:2400型ソースメータを用いて、上記で作製した素子の第1の電極を陽極、第2の電極を陰極として、電圧をかけることによって行った。電圧は0Vから20Vまで0.2V刻みで印可し、各電圧における電流値を計測し、電流密度に換算した。
【0278】
測定結果より、電極間にPStDPA薄膜のみを有する素子では膜厚30nmの状態において、3Vの電圧を印可したとき11.8mA/cmの電流密度を示すことが分かった。また、オーム電流の領域が存在しないことから、第1の電極からPStDPA薄膜への正孔の注入障壁が小さく、キャリアの注入性に優れていることが分かった。
【実施例4】
【0279】
本実施例ではPStDPAを正孔注入層として用いた発光素子の発光特性について図15に示す。図15のグラフでは横軸に輝度(単位:cd/m)、縦軸に電流効率(cd/A)をとっている。
【0280】
発光特性の測定を行った本実施例における発光素子は、ガラス基板上に形成され、ガラス基板側から順に第1の電極(透明電極:ITSO、110nm)、正孔注入層(PStDPA:30nm)、正孔輸送層(α−NPD:20nm)、電子輸送層及び発光層(Alq:50nm)、第2の電極(Al−Li:150nm)と積層されている構造とした。
【0281】
当該発光素子の作製方法について説明する。まず、ガラス基板上に第1の電極を形成した。本実施例ではITSOをスパッタリング法により形成することで第1の電極とした。なお、本発明において第1の電極の形状は2mm×2mmとした。
【0282】
次に第1の電極上にPStDPA薄膜を形成するための前処理として、多孔質の樹脂(代表的にはPVA(ポリビニルアルコール)製、ナイロン製など)で基板表面を洗浄し、200℃で1時間熱処理を行い、UVオゾン処理を370秒行った。
【0283】
前処理を行った後、PStDPA150gをトルエン30mLに溶かした溶液を5μmのフィルターに通し、スピンコート法により第1の電極上にPStDPAを塗布した。スピンコート法による塗布は500rpmで2秒回転させた後、600rpmで60秒回転させることによって行った。続いてガラス基板上に塗布したPStDPAをガラス基板ごと120℃で1時間焼成し、PStDPA薄膜を完成させた。
【0284】
PStDPA薄膜を成膜した後、正孔輸送層としてα−NPDを20nm、続いて電子輸送層を兼ねた発光層としてAlqを50nm、それぞれ抵抗加熱による真空蒸着法によって成膜した。さらにAlq膜を形成した後、第2の電極としてAl−Liを真空蒸着法により150nm蒸着して本発明の発光素子を完成させた。
【0285】
このように作製した発光素子に関して発光の電流効率を測定した。この際、第1の電極を陽極、第2の電極を陰極とし、ケースレー・インスツルメント社製、型番:2400型ソースメータを用いて電圧をかけることによって行った。電圧は0Vから20Vまで0.2V刻みで印可し、各電圧における電流値と輝度を計測した。輝度は色彩輝度計(TOPCON TECHNOHOUSE社製、型番:BM−5A)を用いて計測した。
【0286】
測定結果より、PStDPAを正孔注入層として用いた発光素子の最大電流効率は約3.7cd/Aであった。
【0287】
比較例として正孔注入層に4,4’−ビス〔N−(4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(略称:DNTPD)を用いて作製した発光素子の発光特性を図15に同時に示した。
【0288】
発光特性の測定を行った比較例における発光素子は、ガラス基板上に形成され、ガラス基板側から順に第1の電極(透明電極:ITSO、110nm)、正孔注入層(DNTPD:30nm)、正孔輸送層(α−NPD:20nm)、電子輸送層としても機能する発光層(Alq:50nm)、第2の電極(Al−Li:150nm)と積層されている構造とした。実施例4とは正孔輸送層の材料が異なるのみの構成となっている。
【0289】
比較例における発光素子の作製方法について説明する。まず、ガラス基板上に第1の電極を形成した。本実施例ではITSOをスパッタリング法により形成することで第1の電極とした。なお、本発明において第1の電極の形状は2mm×2mmとした。
【0290】
次に第1の電極上にDNTPDを成膜するための前処理として、多孔質の樹脂(代表的にはPVA(ポリビニルアルコール)製、ナイロン製など)で基板表面を洗浄し、200℃で1時間熱処理を行い、UVオゾン処理を370秒行った。
【0291】
前処理を行った後、正孔注入層としてDNTPDを30nm、正孔輸送層としてα−NPDを20nm、電子輸送層を兼ねた発光層としてAlqを50nm、それぞれ抵抗加熱による真空蒸着法によって順に成膜した。さらにAlq膜を形成した後、第2の電極としてAl−Liを真空蒸着法により150nm蒸着して本発明の比較例の発光素子を完成させた。
【0292】
作製した素子に関しては実施例4の素子と同様に測定を行った。測定の結果比較例の発光素子の最大電流効率は約3.0cd/Aであった。
【0293】
実施例4及び比較例の結果からPStDPAを正孔注入層として用いた発光素子はDNTPDを正孔注入層として用いた発光素子より良い電流効率を示すことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0294】
【図1】本発明の発光素子を表す図。
【図2】本発明の発光素子の作成工程を表す図。
【図3】本発明の発光素子の作成工程を表す図。
【図4】表示装置の構成を例示した図。
【図5】本発明の発光装置の上面図及び断面図。
【図6】本発明が適用可能な電子機器の例示した図。
【図7】表示装置の構成を例示した図。
【図8】表示装置の画素回路一例を示す図。
【図9】表示装置の保護回路の一例を示す図。
【図10】4−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニル]アミノベンズアルデヒドのNMRスペクトル。
【図11】4−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニル]アミノスチレンのNMRスペクトル。
【図12】ポリ{4−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニル]アミノスチレン}のNMRスペクトル。
【図13】PStDPA薄膜の吸収スペクトル。
【図14】PStDPAを正孔注入層として用いた素子の電流―電圧曲線。
【図15】PStDPAを正孔注入層として用いた素子の発光特性。
【符号の説明】
【0295】
50 基板
51a 下地絶縁層
51b 下地絶縁層
52 半導体層
53 ゲート絶縁層
54 ゲート電極
59 絶縁膜(水素を含む膜)
60 層間絶縁層
61a 接続部
61b 配線
63 層間絶縁層
64 電極
65 隔壁
66 有機層
67 電極
70 薄膜トランジスタ
88 樹脂
89 乾燥剤
90 偏光板
91 保護フィルム
92 電極
93 発光素子
94 対向基板
200 基板
201 電極
202 正孔注入層
203 正孔輸送層
204 発光層
205 電子輸送層
206 電子注入層
207 電極
1401 スイッチング用TFT
1402 容量素子
1403 駆動用TFT
1404 電流制御用TFT
1405 発光素子
1406 TFT
1410 信号線
1411 電源線
1412 電源線
1414 走査線
1415 走査線
1500 画素部
1554 共通電位線
1555 共通電位線
1561 ダイオード
1562 ダイオード
2001 筐体
2003 表示部
2004 スピーカー部
2101 本体
2102 筐体
2103 表示部
2104 音声入力部
2105 音声出力部
2106 操作キー
2108 アンテナ
2201 本体
2202 筐体
2203 表示部
2204 キーボード
2205 外部接続ポート
2206 ポインティングマウス
2301 本体
2302 表示部
2303 スイッチ
2304 操作キー
2305 赤外線ポート
2401 筐体
2402 表示部
2403 スピーカー部
2404 操作キー
2405 記録媒体挿入部
4001 基板
4002 画素部
4003 信号線駆動回路
4004 走査線駆動回路
4005 シール材
4006 対向基板
4007 充填材
4008 薄膜トランジスタ
4010 薄膜トランジスタ
4011 発光素子
4014 配線
4015a 配線
4015b 配線
4016 接続端子
4018 フレキシブルプリントサーキット(FPC)
4019 異方性導電膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含み、
式中Rは水素、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基のいずれかであり、
式中Rはアリール基を示し、
イオン化ポテンシャルが4.9eV以上5.4eV以下のポリマーよりなる正孔注入性材料。
【化1】

【請求項2】
請求項1において、式中Rで示される前記アリール基が電子供与性の置換基を有する正孔注入性材料。
【請求項3】
請求項2において、前記電子供与性の置換基はハメット則における置換基定数σの値が−2.1以上0.15以下の範囲内の値を取る置換基である正孔注入性材料。
【請求項4】
請求項1において、式中Rで表される前記アリール基がジアリールアミノ基を有するアリール基である正孔注入性材料。
【請求項5】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有し、
式中Rは水素、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基のいずれかであり、
式中Rは下記式(2)で表されるいずれかの基であるポリマーよりなる正孔注入性材料。
(但し式中Ar〜Arは炭素数6〜14のアリール基を表す。)
【化2】

【化3】

【請求項6】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有し、
式中Rは水素、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基のいずれかであり、
式中Rは下記式(2)で表されるいずれかの基である線状ポリマーよりなる正孔注入性材料。
(但し式中Ar〜Arは炭素数6〜14のアリール基を表す。)
【化4】

【化5】

【請求項7】
下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有するポリマーよりなる正孔注入性材料。
【化6】

【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の正孔注入性材料がポリ{4−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニル]アミノスチレンである正孔注入性材料。
【請求項9】
イオン化ポテンシャルが4.9eV以上5.4eV以下である請求項5乃至請求項8のいずれか一項に記載の正孔注入性材料。
【請求項10】
数平均分子量が2000以上500000以下である請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の正孔注入性材料。
【請求項11】
数平均分子量が10000以上100000以下である請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の正孔注入性材料。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の正孔注入性材料よりなる発光素子用材料。
【請求項13】
請求項12に記載の発光素子用材料を用いた発光素子。
【請求項14】
下記一般式(4)で表される有機化合物。
(但し式中Ar〜Arは炭素数6〜14のアリール基を表す。)
【化7】

【請求項15】
下記一般式(4)で表される有機化合物よりなるモノマー。
(但し式中Ar〜Arは炭素数6〜14のアリール基を表す。)
【化8】

【請求項16】
下記一般式(4)で表される少なくとも2種類の有機化合物よりなるモノマー混合物。
(但し式中Ar〜Arは炭素数6〜14のアリール基を表す。)
【化9】

【請求項17】
下記構造式(5)で表される有機化合物。
【化10】

【請求項18】
下記構造式(5)で表される有機化合物を含むモノマー混合物。
【化11】

【請求項19】
下記構造式(5)で表される有機化合物よりなるモノマー。
【化12】




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−237592(P2006−237592A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20015(P2006−20015)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】