説明

歪補償装置および歪補償方法

【課題】歪補償の精度を向上させる。
【解決手段】歪補償装置10は、増幅器で生じる信号の歪みを補償する。記憶部11は、歪補償に用いられる複数の補償係数を記憶する。選択部12は、信号の電力レベルを示す指標値に対応する補償係数を複数の補償係数の中から選択する。選択部12は、電力レベルが閾値を超えるか否か判定し、判定結果に応じて、対数演算を用いずに算出される第1の指標値または対数演算を用いて算出される第2の指標値を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歪補償装置および歪補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の無線通信装置の間で信号を送信する無線通信システムでは、アンテナから放射する前に送信信号を増幅する増幅器(電力増幅器と呼ぶこともある)が用いられる。増幅器は、入力信号の電力レベルと出力信号の電力レベルの関係が線形にならないという、非線形な増幅特性をもつことがある。増幅器の非線形性は、送信信号に歪みを生じさせ、隣接周波数への電力漏洩によるチャネル間干渉や無線通信品質の低下の原因となり得る。
【0003】
そこで、増幅器を通過した送信信号の歪みを抑制するため、前置歪み(プリディストーション)方式の歪補償装置を無線通信装置に設けることがある。プリディストーション方式の歪補償装置(前置歪み装置(プリディストータ)と呼ぶこともある)は、増幅器に入力する前の送信信号に、増幅特性と逆特性の歪みを付与する。逆特性の歪みの付加によって、増幅器を通過した送信信号の歪みが抑制され、増幅器の非線形性が補償される。
【0004】
例えば、歪補償装置は、送信信号の電力レベルに応じた補償係数を用いて、当該送信信号の歪補償を行う。歪補償装置には、歪補償に用いられる複数の補償係数をルックアップテーブル(LUT:Lookup Table)に格納し、送信信号の電力レベルに応じたアドレスを指定してLUTから補償係数を読み出すものがある。また、歪補償装置には、歪補償前の元の送信信号と増幅器を通過した送信信号から生成されるフィードバック信号とを比較して、両者の差が小さくなるように補償係数を更新するものがある。
【0005】
また、複数の補償係数の間で更新頻度に大きな差異が生じないようにするため、LUTの各アドレスが指定される頻度を監視し、指定頻度が均等化されるように、電力レベルに比例したアドレスをLUTの実際のアドレスに変換する歪補償装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第03/103163号
【特許文献2】特開2007−49251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、歪補償装置では、例えば、電力レベルを示すある指標値(例えば、電力値、振幅、電力値の対数など)に比例するように、補償係数をLUTなどの記憶領域に格納しておき、指標値から補償係数を選択することが考えられる。しかし、1つの指標値を使用して補償係数を選択する方法では、電力レベルによって補償精度に偏りが生じ、広範囲の電力レベルの補償精度を効率的に向上することが難しいという問題がある。
【0008】
例えば、電力値や振幅に比例するように複数の補償係数を用意すると、平均より小さい電力レベルの範囲に対して、平均より大きい電力レベルの範囲よりも少ない補償係数しか割り当てられない可能性があり、低電力レベル側の補償精度が低下するおそれがある。また、電力値の対数に比例するように複数の補償係数を用意すると、平均より大きい電力レベルの範囲に対して、平均より小さい電力レベルの範囲よりも少ない補償係数しか割り当てられない可能性があり、高電力レベル側の補償精度が低下するおそれがある。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、歪補償の精度が向上した歪補償装置および歪補償方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
増幅器で生じる信号の歪みを補償する歪補償装置が提供される。歪補償装置は、記憶部と選択部とを有する。記憶部は、歪補償に用いられる複数の補償係数を記憶する。選択部は、信号の電力レベルを示す指標値に対応する補償係数を、記憶部に記憶された複数の補償係数の中から選択する。選択部は、電力レベルが閾値を超えるか否か判定し、判定結果に応じて、対数演算を用いずに算出される第1の指標値または対数演算を用いて算出される第2の指標値を指標値として使用する。
【0011】
また、増幅器で生じる信号の歪みを補償する歪補償方法が提供される。歪補償方法では、信号の電力レベルが閾値を超えるか否か判定し、判定結果に応じて、電力レベルを示す指標値として対数演算を用いずに算出される第1の指標値または対数演算を用いて算出される第2の指標値を選択する。歪補償に用いられる複数の補償係数の中から、選択した第1の指標値または第2の指標値に対応する補償係数を選択する。
【発明の効果】
【0012】
歪補償の精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態の歪補償装置を示す図である。
【図2】第2の実施の形態の無線通信システムを示す図である。
【図3】増幅器の入出力特性の例を示す図である。
【図4】非線形歪により生じる漏洩電力の例を示す図である。
【図5】第2の実施の形態の歪補償部を示すブロック図である。
【図6】ルックアップテーブルの例を示す図である。
【図7】電力値と補正前アドレスとの対応例を示す図である。
【図8】振幅と補正前アドレスとの対応例を示す図である。
【図9】対数と補正前アドレスとの対応例を示す図である。
【図10】アドレス生成部の例を示すブロック図である。
【図11】アドレス生成部の第1の変形例を示すブロック図である。
【図12】アドレス生成部の第2の変形例を示すブロック図である。
【図13】アドレス生成部の第3の変形例を示すブロック図である。
【図14】アドレス生成部の第4の変形例を示すブロック図である。
【図15】アドレス生成部の第5の変形例を示すブロック図である。
【図16】電力値および対数と補正後アドレスとの対応例を示す図である。
【図17】振幅および対数と補正後アドレスとの対応例を示す図である。
【図18】アドレス生成方法を示す第1のフローチャートである。
【図19】アドレス生成方法を示す第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態を図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態の歪補償装置を示す図である。歪補償装置10は、非線形な増幅特性をもつ増幅器を用いることで生じる信号の歪みを補償する。歪補償装置10は、例えば、増幅器に入力される前の信号に対して増幅器と逆特性の歪みを付与するプリディストーション方式の歪補償装置であり、基地局などの無線通信装置に搭載され得る。
【0015】
歪補償装置10は、記憶部11、選択部12および補償処理部13を有する。
記憶部11は、歪補償に用いられる複数の補償係数を記憶する。補償係数は、例えば、信号の同相成分(I成分)に対応する実数部と信号の直交成分(Q成分)に対応する虚数部を含む複素数である。記憶部11は、揮発性または不揮発性のメモリでもよく、記憶部11の記憶領域は、ルックアップテーブル(LUT)として利用されてもよい。例えば、記憶部11は、補償係数をアドレスに対応付けて記憶し、選択部12から指定されるアドレスに対応する補償係数を補償処理部13に出力する。
【0016】
選択部12は、信号の電力レベルを示す指標値を算出し、記憶部11に記憶された複数の補償係数の中から、指標値に対応する補償係数を選択する。例えば、選択部12は、指標値に比例するアドレスを生成し、記憶部11に対してアドレスを指定する。ここで、選択部12は、信号の電力レベルが閾値を超えるか否か判定し、判定結果に応じて、指標値14(第1の指標値)または指標値15(第2の指標値)を使用する。
【0017】
指標値14は、対数演算を用いずに算出される値であり、例えば、信号の電力値や振幅である。指標値15は、対数演算を用いて算出される値であり、例えば、電力値の対数である。選択部12は、例えば、電力レベルが閾値を超えるとき指標値14を使用し、電力レベルが閾値以下のとき指標値15を使用する。また、選択部12は、例えば、選択した指標値14または指標値15に比例するアドレスを生成し、記憶部11に対してアドレスを指定する。この場合、電力レベルが閾値を超えるときの指標値14の取り得る値が、記憶部11の第1のアドレス範囲に対応付けられ、電力レベルが閾値以下のときの指標値15の取り得る値が、記憶部11の第2のアドレス範囲に対応付けられる。
【0018】
これにより、例えば、高電力レベル側では、指標値14の取り得る値に比例するように補償係数が用意され、低電力レベル側では、指標値15の取り得る値に比例するように補償係数が用意される。なお、電力レベルの高低は、指標値14,15を含む複数の指標値の1つと閾値とを比較することで判定してもよいし、複数の指標値の1つから生成されるアドレスと閾値とを比較することでも判定してもよい。
【0019】
補償処理部13は、記憶部11から読み出された補償係数を信号に適用する(例えば、I成分およびQ成分を含むデジタル信号に補償係数を乗算する)ことで、歪補償を行う。補償係数が適用された信号は、例えば、アナログ信号に変換されて増幅器に入力される。なお、歪補償装置10は、歪補償前の元の信号と増幅器を通過した信号から生成されるフィードバック信号とを比較し、両者の差異が小さくなるように、記憶部11に記憶された補償係数を更新してもよい。その場合、選択部12が選択した補償係数が更新される。
【0020】
第1の実施の形態の歪補償装置10によれば、信号の電力レベルが閾値を超えるか否か判定され、判定結果に応じて、電力レベルを示す指標値として、対数演算を用いずに算出される指標値14または対数演算を用いて算出される指標値15が選択される。そして、記憶部11に記憶された歪補償に用いられる複数の補償係数の中から、選択された指標値14または指標値15に対応する補償係数が選択される。
【0021】
1つの指標値のみを使用すると、電力レベルによって補償精度に偏りが生じ得る。例えば、補償係数にアクセスするためのアドレスとして、指標値14に比例するアドレスのみ生成されると、低電力レベル側の補償係数が少なくなり、指標値15に比例するアドレスのみ生成されると、高電力レベル側の補償係数が少なくなることがある。これに対し、電力レベルの高低に応じて指標値14,15を使い分けることで、補償係数の数の偏りを抑制でき、広範囲の電力レベルにわたって補償精度を効率的に向上させることができる。
【0022】
以下に説明する第2の実施の形態では、歪補償装置を備える基地局の例を挙げる。ただし、第1の実施の形態の歪補償装置10や第2の実施の形態で説明する歪補償装置は、移動局など種々の無線通信装置に搭載することが可能である。
【0023】
[第2の実施の形態]
図2は、第2の実施の形態の無線通信システムを示す図である。第2の実施の形態の無線通信システムは、基地局100および移動局20を有する。基地局100は、移動局20を含む複数の移動局と無線通信を行う。図2には、基地局100から移動局20に無線信号を送信するために用いられる回路の例が記載されている。
【0024】
基地局100は、送信信号生成部101、SP(Serial Parallel)変換部102、DA(Digital Analog)変換部103、直交変調器104、周波数変換部105,112、増幅器106、アンテナ107、搬送波生成部108、方向性結合器111、直交検波器113、AD(Analog Digital)変換部114および歪補償部115を有する。
【0025】
送信信号生成部101は、送信信号としてシリアルなデジタル信号列を生成する。送信信号には、移動局20宛てのユーザデータ信号や無線制御信号が含まれ得る。
SP変換部102は、送信信号生成部101が生成したシリアルなデジタル信号列を、I成分とQ成分の2系列のデジタル信号列に変換する。例えば、SP変換部102は、デジタル信号列の各ビットを交互にI成分またはQ成分に振り分ける。
【0026】
DA変換部103は、SP変換部102が生成したI成分およびQ成分を含むデジタル信号列を、歪補償部115を介して取得する。DA変換部103は、I成分およびQ成分毎にデジタル信号をアナログベースバンド信号に変換する。
【0027】
直交変調器104は、DA変換部103が生成したI成分のアナログベースバンド信号に、搬送波生成部108が生成する基準搬送信号(コサイン信号)を乗算する。また、直交変調器104は、DA変換部103が生成したQ成分のアナログベースバンド信号に、搬送波生成部108が生成する基準搬送信号を90度移相した信号(サイン信号)を乗算する。そして、直交変調器104は、I成分とQ成分の乗算結果を加算することで、直交変調されたアナログベースバンド信号を生成する。
【0028】
周波数変換部105は、直交変調器104が生成したアナログベースバンド信号に、局部発振器(図示せず)の発振信号をミキシングすることで、アナログベースバンド信号を高周波数の無線周波信号に変換(アップコンバート)する。
【0029】
増幅器106は、周波数変換部105が生成した無線周波信号の電力を増幅する。ただし、増幅器106は、入力された無線周波信号の電力レベルと出力される無線周波信号の電力レベルの関係が線形にならないという、非線形な増幅特性をもつ。
【0030】
アンテナ107は、増幅器106で増幅された無線周波信号を、方向性結合器111を介して取得し、無線周波信号を空中に放射する。なお、アンテナ107は、送信専用のアンテナでもよいし、送受信兼用のアンテナであってもよい。
【0031】
搬送波生成部108は、所定周波数の基準搬送信号を生成し、直交変調器104および直交検波器113に基準搬送信号を供給する。
方向性結合器111は、増幅器106で増幅された無線周波信号の電力の一部を、周波数変換部112に出力する。アンテナ107に出力される電力と周波数変換部112に出力される電力の比が予め設定され、後者は前者に比べて十分に小さいことが好ましい。
【0032】
周波数変換部112は、方向性結合器111で取り出された無線周波信号に、局部発振器(図示せず)の発振信号をミキシングすることで、無線周波信号を低周波数のアナログベースバンド信号に変換(ダウンコンバート)する。
【0033】
直交検波器113は、周波数変換部112が生成したアナログベースバンド信号に、搬送波生成部108が生成する基準搬送信号(コサイン信号)を乗算し、I成分のアナログベースバンド信号を抽出する。また、直交検波器113は、周波数変換部112が生成したアナログベースバンド信号に、搬送波生成部108が生成する基準搬送信号を90度移相した信号(サイン信号)を乗算し、Q成分のアナログベースバンド信号を抽出する。
【0034】
AD変換部114は、直交検波器113で抽出されたI成分およびQ成分のアナログベースバンド信号をそれぞれデジタル信号に変換して、フィードバック信号を生成する。
歪補償部115は、非線形な増幅特性をもつ増幅器106を用いることで生じる送信信号の歪みを、プリディストーション方式によって補償する。歪補償部115は、例えば、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)をとして実装される。歪補償部115は、SP変換部102からI成分およびQ成分を含む送信信号を取得し、送信信号の電力レベルに応じた補償係数を適用することで、当該送信信号に増幅器106の増幅特性と逆特性の歪みを付与する。また、歪補償部115は、フィードバック信号をAD変換部114から取得し、歪補償前の元の送信信号とフィードバック信号との差異が小さくなるように、補償係数を継続的に更新していく。
【0035】
図3は、増幅器の入出力特性の例を示す図である。増幅器は、理想的には、入力信号の電力レベルと出力信号の電力レベルとが比例するという、線形な増幅特性をもつことが好ましい。しかし、増幅器106の増幅特性は、入力信号の電力レベルが低い区間では、理想的な増幅特性に近い傾向にある一方(線形領域)、入力信号の電力レベルが高い区間では、理想的な増幅特性から離れる傾向にある(非線形領域)。
【0036】
線形領域を大きくする方法として、増幅器106が処理できる電力レベルの上限を引き上げる方法も考えられる。しかし、その場合には、増幅器106が過剰な増幅能力をもつことになり、増幅器106の回路規模やコストの点で不利になる。また、増幅器の高性能化に伴って増幅特性が複雑化し、入力信号の電力レベルが低い区間でも、増幅特性が線形にならないこともある。そのため、歪補償部115が、広範囲な電力レベルにわたって、送信信号の歪みを精度よく補償できることが好ましい。
【0037】
図4は、非線形歪により生じる漏洩電力の例を示す図である。図4において、周波数帯A1−A2が、基地局100が無線通信に用いる所望の周波数帯であり、周波数帯A1−B1および周波数帯A2−B2が、所望の周波数帯に隣接する周波数帯である。
【0038】
隣接周波数帯への電力漏洩は抑制されることが好ましく、ACPR(Adjacent Channel Power Ratio)が小さいことが好ましい。ACPRは、周波数帯A1−A2の電力の合計と周波数帯A1−B1および周波数帯A2−B2の電力の合計との比に相当する。漏洩電力は、隣接周波数帯の無線チャネルへの干渉雑音となり、当該無線チャネルの通信品質が低下する原因となる。増幅器106で生じる送信信号の歪みは、隣接周波数帯の漏洩電力を増大させるため、精度よく補償されることが好ましい。
【0039】
図5は、第2の実施の形態の歪補償部を示すブロック図である。歪補償部115は、アドレス生成部131、メモリ133、乗算器121,143,145,146、加算器147、減算器144、遅延部132,134,141および共役部142を有する。
【0040】
乗算器121は、SP変換部102から取得するI成分およびQ成分を含む送信信号に対し、メモリ133から出力される複素数として表現された補償係数を乗算する。補償係数が適用された送信信号は、DA変換部103、直交変調器104および周波数変換部105を介して、増幅器106に入力される。なお、乗算器121は、送信信号に対して補償係数を適用する前置歪部に含まれ、第1の実施の形態の補償処理部13の一例である。
【0041】
アドレス生成部131は、SP変換部102から取得する送信信号の電力レベルに対応するアドレスを生成する。アドレス生成部131は、生成したアドレスを、読み出しアドレスとしてメモリ133に出力し、書き込みアドレスとして遅延部132に出力する。アドレス生成にあたり、アドレス生成部131は、電力レベルを示す離散値を指標値として算出し、指標値をアドレスに変換する。指標値には、電力値、振幅および電力値の対数が含まれる。アドレス生成部131は、電力レベルに応じて、複数の指標値を使い分ける。なお、アドレス生成部131は、第1の実施の形態の選択部12の一例である。
【0042】
遅延部132は、アドレス生成部131が生成したアドレスを一定時間だけ保持することで、アドレスがメモリ133に入力されるタイミングを遅延させる。遅延部132の遅延時間は、例えば、送信信号に補償係数が適用されてから、当該送信信号が増幅器106を通過し増幅後の送信信号から生成されたフィードバック信号が歪補償部115に入力されるまでに要する時間(フィードバック時間)に相当する。
【0043】
メモリ133は、複数の補償係数がアドレスに対応付けられて格納されるルックアップテーブル(LUT)を記憶する。メモリ133は、アドレス生成部131から読み込みアドレスが入力されるアドレスポートと、遅延部132から書き込みアドレスが入力されるアドレスポートを有する。また、メモリ133は、乗算器121に補償係数を出力する出力ポートと、加算器147から補償係数が入力される入力ポートを有する。
【0044】
メモリ133は、アドレス生成部131からアドレスが入力されると、LUTの当該アドレスが示す位置に格納されている補償係数を、乗算器121および遅延部134に出力する。また、メモリ133は、遅延部132からアドレスが入力されると、LUTの当該アドレスが示す位置に、加算器147から入力された補償係数を書き込む。なお、メモリ133は、第1の実施の形態の記憶部11の一例である。
【0045】
遅延部134は、メモリ133が出力した補償係数を一定時間だけ保持することで、補償係数が乗算器143および加算器147に入力されるタイミングを遅延させる。遅延部134の遅延時間は、例えば、上記のフィードバック時間に相当する。
【0046】
遅延部141は、SP変換部102から取得した送信信号を一定時間だけ保持することで、送信信号が減算器144に入力されるタイミングを遅延させる。遅延部141の遅延時間は、例えば、上記のフィードバック時間に相当する。
【0047】
共役部142は、AD変換部114からフィードバック信号を取得する。フィードバック信号は、周波数変換部112、直交検波器113およびAD変換部114(帰還系)を用いて生成され、I成分およびQ成分を含むデジタル信号である。共役部142は、フィードバック信号の共役複素数を算出し、乗算器143に出力する。
【0048】
乗算器143は、共役部142から取得する共役複素数に、遅延部134から取得する現在の補償係数を乗算し、乗算結果を乗算器145に出力する。
減算器144は、遅延部141から取得する元の送信信号から、AD変換部114から取得するフィードバック信号を減算し、減算結果を乗算器145に出力する。
【0049】
乗算器145は、乗算器143の乗算結果と減算器144の減算結果とを乗算する。
乗算器146は、乗算器145の乗算結果に定数を乗算する。
加算器147は、遅延部134から取得する現在の補償係数に乗算器146の乗算結果を加算し、算出された値を新たな補償係数として、メモリ133に出力する。なお、遅延部141、共役部142、乗算器143,145,146、加算器147および減算器144は、メモリ133に記憶された補償係数を更新する係数算出部に含まれる。
【0050】
ここで、補償係数の演算をモデル化するため、ある時刻tの歪補償前の送信信号をx(t)、送信信号x(t)の電力値をp=|x(t)|2、電力値pに対応する更新前の補償係数をhn-1(p)、増幅器106の増幅関数をf(p)、定数をμと定義する。すると、フィードバック信号はy(t)=hn-1(p)・x(t)・f(p)、減算器144の減算結果はe(t)=x(t)−y(t)と算出される。また、乗算器143の乗算結果は、歪補償を行わなかった場合の増幅器106を通過した後の送信信号に相当し、u*(t)=hn-1(p)・y*(t)=x(t)・f(p)と算出される。
【0051】
そして、更新後の補償係数は、hn(p)=hn-1(p)+μ・e(t)・u*(t)と算出される。なお、x(t),y(t),e(t),h(p),f(p),u(t)は複素数であり、アスタリスク“*”は共役複素数を意味する。このような演算により、送信信号とフィードバック信号との差が小さくなるように、補償係数が継続的に更新される。各補償係数は、時間の経過に伴って、最適な値に収束することが期待される。なお、上記の補償係数の演算方法は一例であり、他の演算方法を用いてもよい。
【0052】
図6は、ルックアップテーブルの例を示す図である。図6に示すようなLUTがメモリ133に記憶される。LUTは、所定数の補償係数を記憶できる記憶領域を有し、各補償係数をアドレスによって識別する。例えば、LUTは、アドレス#0〜#100に対応付けて、101個の補償係数(補償係数#0〜#100)を記憶する。
【0053】
後述するように、第2の実施の形態では、送信信号の電力レベルの平均値(0dB)をアドレス#50に対応付け、平均未満の電力レベルをアドレス#0〜#49に対応付け、平均を超える電力レベルをアドレス#51〜#100に対応付ける。これにより、平均を超える電力レベルの送信信号に対して、50通りの補償係数が用意され、また、平均未満の電力レベルの送信信号に対して、50通りの補償係数が用意されることになる。
【0054】
前述のように、アドレス生成部131は、LUTのアドレスを生成するにあたり、複数の指標値(電力値、振幅および電力値の対数)を使い分ける。ただし、ここではまず、各指標値に比例するように生成される補正前のアドレスについて説明する。なお、送信信号生成部101が生成する送信信号の電力値の平均(0dB)がP=A2=100000であり、歪補償の対象とする電力レベルの範囲が+10dB〜−40dBであるとする。
【0055】
図7は、電力値と補正前アドレスとの対応例を示す図である。電力値からアドレスを生成する場合、アドレス生成部131は、例えば、電力値0〜1000000を、LUTのアドレス#0〜#100に比例的に対応付ける。この場合、分解能として、アドレス1つに対応する電力値は10000となる。アドレス生成部131は、例えば、電力値を10000で割って四捨五入した値をアドレスとする。
【0056】
電力値10(−40dB)に、アドレス#0が対応する。電力値10000(−10dB)に、アドレス#1が対応する。電力値100000(0dB)に、アドレス#10が対応する。電力値1000000(+10dB)に、アドレス#100が対応する。このアドレスを補正しない場合、電力レベルが平均を超える送信信号に対して用意されるアドレスの数と電力レベルが平均未満の送信信号に対して用意されるアドレスの数との比は、10:90となり、前者の補償精度が相対的に低くなる。
【0057】
図8は、振幅と補正前アドレスとの対応例を示す図である。振幅からアドレスを生成する場合、アドレス生成部131は、例えば、電力値の平方根を振幅として算出し、振幅0〜1000を、LUTのアドレス#0〜#100に比例的に対応付ける。この場合、分解能として、アドレス1つに対応する振幅は10となる。アドレス生成部131は、例えば、振幅を10で割って四捨五入した値をアドレスとする。
【0058】
振幅3.2(−40dB)に、アドレス#0が対応する。振幅10(−30dB)に、アドレス#1が対応する。振幅31.6(−20dB)に、アドレス#3が対応する。振幅100(−10dB)に、アドレス#10が対応する。振幅316.2(0dB)に、アドレス#32が対応する。振幅1000(+10dB)に、アドレス#100が対応する。このアドレスを補正しない場合、電力レベルが平均を超える送信信号に対して用意されるアドレスの数と電力レベルが平均未満の送信信号に対して用意されるアドレスの数との比は、32:68となり、前者の補償精度が相対的に低くなる。
【0059】
図9は、対数と補正前アドレスとの対応例を示す図である。対数からアドレスを生成する場合、アドレス生成部131は、例えば、電力値Pから10log10Pを計算する。ただし、歪補償の下限を−40dBにするため、対数演算の際、電力値の最小値が10になるようにクリッピング(正規化)する。アドレス生成部131は、例えば、対数10〜60を、LUTのアドレス#0〜#100に比例的に対応付ける。この場合、分解能として、アドレス1つに対応する対数は20となる。アドレス生成部131は、例えば、対数から10を引いて2倍した値をアドレスとする。
【0060】
対数10(−40dB)に、アドレス#0が対応する。対数20(−30dB)に、アドレス#20が対応する。対数30(−20dB)に、アドレス#40が対応する。対数40(−10dB)に、アドレス#60が対応する。対数50(0dB)に、アドレス#80が対応する。対数60(+10dB)に、アドレス#100が対応する。このアドレスを補正しない場合、電力レベルが平均を超える送信信号に対して用意されるアドレスの数と電力レベルが平均未満の送信信号に対して用意されるアドレスの数との比は、80:20となり、後者の補償精度が相対的に低くなる。
【0061】
図10は、アドレス生成部の例を示すブロック図である。アドレス生成部131は、電力算出部151、電力アドレス変換部152、振幅算出部154、振幅アドレス変換部155、対数算出部157、対数アドレス変換部158、遅延部153,156,159,161および選択部162を有する。
【0062】
電力算出部151は、SP変換部102から取得した送信信号x(t)の電力値P=|x(t)|2を算出する。電力アドレス変換部152は、電力算出部151が算出した電力値を、アドレス#50〜#100の何れかのアドレスに変換する。電力アドレス変換部152は、演算部152a、補正部152bおよびクリップ部152cを有する。
【0063】
演算部152aは、図7に示すように、電力値を10000で割って四捨五入した値をアドレスとして算出する。補正部152bは、演算部152aが算出したアドレスを50/90倍し44.5を足して四捨五入することで、補正前のアドレス#10〜#100がアドレス#50〜#100に変換されるようにする。クリップ部152cは、補正部152bで補正されたアドレスを、下限50かつ上限100になるようクリッピングする。
【0064】
振幅算出部154は、SP変換部102から取得した送信信号の電力値Pを算出し、振幅A=P1/2を算出する。振幅アドレス変換部155は、振幅算出部154が算出した振幅を、アドレス#50〜#100の何れかのアドレスに変換する。振幅アドレス変換部155は、演算部155a、補正部155bおよびクリップ部155cを有する。
【0065】
演算部155aは、図8に示したように、振幅を10で割って四捨五入した値をアドレスとして算出する。補正部155bは、演算部155aが算出したアドレスを50/68倍し26.5を足して四捨五入することで、補正前のアドレス#32〜#100がアドレス#50〜#100に変換されるようにする。クリップ部155cは、補正部155bで補正されたアドレスを、下限50かつ上限100になるようクリッピングする。
【0066】
対数算出部157は、SP変換部102から取得した送信信号の電力値Pを算出し、電力値の下限がP=10になるようにクリッピングして対数10log10Pを算出する。対数アドレス変換部158は、対数算出部157が算出した対数を、アドレス#0〜#50の何れかのアドレスに変換する。対数アドレス変換部158は、演算部158a、補正部158bおよびクリップ部158cを有する。
【0067】
演算部158aは、図9に示したように、対数から10を引いて2倍した値をアドレスとして算出する。補正部158bは、演算部158aが算出したアドレスを50/80倍して四捨五入することで、補正前のアドレス#0〜#80がアドレス#0〜#50に変換されるようにする。クリップ部158cは、補正部158bで補正されたアドレスを、下限0かつ上限50になるようクリッピングする。
【0068】
遅延部153は、電力アドレス変換部152が生成したアドレス(アドレス#50〜#100の何れか)を一時的に保持する。遅延部156は、振幅アドレス変換部155が生成したアドレス(アドレス#50〜#100の何れか)を一時的に保持する。遅延部159は、対数アドレス変換部158が生成したアドレス(アドレス#0〜#50の何れか)を一時的に保持する。使用される指標値によってアドレス生成の速度が異なることから、アドレス出力のタイミングを揃えるために、遅延部153,156,159を用いる。
【0069】
遅延部161は、電力算出部151が算出した電力値を一時的に保持する。
選択部162は、遅延部161から取得する電力値と平均の電力値を示す閾値とを比較する。閾値として、例えば、図7に示した電力値100000を用いる。選択部162は、電力値が閾値を超える場合、遅延部153から取得する電力値に応じたアドレスまたは遅延部156から取得する振幅に応じたアドレスを選択する。電力値と振幅の何れを採用するかは、選択部162に設定しておく。また、選択部162は、電力値が閾値以下の場合、遅延部159から取得する対数に応じたアドレスを選択する。選択部162は、選択したアドレスを遅延部132およびメモリ133に出力する。
【0070】
なお、図10の例では、アドレス生成部131は、送信信号の電力レベルが平均を超えるか否かを電力値から判定したが、他の指標値やアドレスから判定してもよい。
図11は、アドレス生成部の第1の変形例を示すブロック図である。図11に示す変形例では、アドレス生成部131は、図10の遅延部161および選択部162に代えて、遅延部161aおよび選択部162aを有する。
【0071】
遅延部161aは、振幅算出部154が算出した振幅を保持する。
選択部162aは、遅延部161aから取得する振幅と平均の振幅を示す閾値とを比較する。閾値として、例えば、図8に示した振幅316.2を用いる。選択部162aは、振幅が閾値を超える場合、遅延部153または遅延部156から取得するアドレスを選択し、振幅が閾値以下の場合、遅延部159から取得するアドレスを選択する。
【0072】
図12は、アドレス生成部の第2の変形例を示すブロック図である。図12に示す変形例では、アドレス生成部131は、図10の遅延部161および選択部162に代えて、遅延部161bおよび選択部162bを有する。
【0073】
遅延部161bは、対数算出部157が算出した振幅を保持する。
選択部162bは、遅延部161bから取得する対数と平均の対数を示す閾値とを比較する。閾値として、例えば、図9に示した対数50を用いる。選択部162bは、対数が閾値を超える場合、遅延部153または遅延部156から取得するアドレスを選択し、対数が閾値以下の場合、遅延部159から取得するアドレスを選択する。
【0074】
なお、振幅や対数は電力値よりもデータ量が小さいため、電力レベルが平均を超えるか否かの判定に振幅または対数を用いることで、回路規模を低減することができる。
図13は、アドレス生成部の第3の変形例を示すブロック図である。図13に示す変形例では、アドレス生成部131は、図10の遅延部161および選択部162に代えて、遅延部161cおよび選択部162cを有する。
【0075】
遅延部161cは、電力アドレス変換部152が生成したアドレスを保持する。
選択部162cは、遅延部161cから取得するアドレスと閾値=50とを比較する。選択部162cは、アドレスが閾値を超える場合(50以上の場合)、遅延部153または遅延部156から取得するアドレスを選択し、アドレスが閾値以下の場合(50である場合)、遅延部159から取得するアドレスを選択する。
【0076】
図14は、アドレス生成部の第4の変形例を示すブロック図である。図14に示す変形例では、アドレス生成部131は、図10の遅延部161および選択部162に代えて、遅延部161dおよび選択部162dを有する。
【0077】
遅延部161dは、振幅アドレス変換部155が生成したアドレスを保持する。
選択部162dは、遅延部161dから取得するアドレスと閾値=50とを比較する。選択部162dは、アドレスが閾値を超える場合(50以上の場合)、遅延部153または遅延部156から取得するアドレスを選択し、アドレスが閾値以下の場合(50である場合)、遅延部159から取得するアドレスを選択する。
【0078】
図15は、アドレス生成部の第5の変形例を示すブロック図である。図15に示す変形例では、アドレス生成部131は、図10の遅延部161および選択部162に代えて、遅延部161eおよび選択部162eを有する。
【0079】
遅延部161eは、対数アドレス変換部158が生成したアドレスを保持する。
選択部162eは、遅延部161eから取得するアドレスと閾値=49とを比較する。選択部162eは、アドレスが閾値を超える場合(50である場合)、遅延部153または遅延部156から取得するアドレスを選択し、アドレスが閾値以下の場合(49以下の場合)、遅延部159から取得するアドレスを選択する。
【0080】
図16は、電力値および対数と補正後アドレスとの対応例を示す図である。図16の例では、送信信号の電力レベルが平均を超えるとき、指標値として電力値が選択されるように、アドレス生成部131が設定されている場合を考える。
【0081】
前述のアドレス生成方法によって、電力値100000〜1000000(0dB〜+10dB)が、LUTのアドレス#50〜#100に対応付けられる。また、対数10〜50(−40dB〜0dB)が、LUTのアドレス#0〜#50に対応付けられる。
【0082】
アドレス生成部131は、電力レベルが平均を超えるとき、電力値から算出されたアドレスを選択する。また、アドレス生成部131は、電力レベルが平均未満のとき、対数から算出されたアドレスを選択する。電力レベルが平均にほぼ等しいときは、電力値から算出されるアドレスと対数から算出されるアドレスは同一であり、何れを選択してもよい。
【0083】
図17は、振幅および対数と補正後アドレスとの対応例を示す図である。図17の例では、送信信号の電力レベルが平均を超えるとき、指標値として振幅が選択されるように、アドレス生成部131が設定される場合を考える。
【0084】
前述のアドレス生成方法によって、振幅316.2〜1000(0dB〜+10dB)が、LUTのアドレス#50〜#100に対応付けられる。また、対数10〜50(−40dB〜0dB)が、LUTのアドレス#0〜#50に対応付けられる。
【0085】
アドレス生成部131は、電力レベルが平均を超えるとき、振幅から算出されたアドレスを選択する。また、アドレス生成部131は、電力レベルが平均未満のとき、対数から算出されたアドレスを選択する。電力レベルが平均にほぼ等しいときは、振幅から算出されるアドレスと対数から算出されるアドレスは同一であり、何れを選択してもよい。
【0086】
図18は、アドレス生成方法を示す第1のフローチャートである。図18のフローチャートでは、送信信号の電力レベルが平均を超えるとき、指標値として振幅が選択されるように、アドレス生成部131が設定される場合を考える。
【0087】
(ステップS11)電力算出部151は、送信信号の電力値を算出する。対数算出部157は、送信信号の電力値を算出し、電力値Pから対数(10log10P)を算出する。なお、電力算出部151と対数算出部157とは、並列に動作できる。このとき、振幅算出部154は、振幅を算出してもよいし、動作を停止していてもよい。
【0088】
(ステップS12)演算部152aは、電力値から第1のアドレスを生成する。例えば、演算部152aは、電力値を10000で割って四捨五入する。演算部158aは、対数から第3のアドレスを生成する。例えば、演算部158aは、対数から10を引いて2倍する。なお、演算部152aと演算部158aとは、並列に動作できる。このとき、演算部155aは、第2のアドレスを生成してもよいし、動作を停止していてもよい。
【0089】
(ステップS13)補正部152bは、第1のアドレスを補正する。例えば、補正部152bは、第1のアドレスを50/90倍して44.5を足す。補正部158bは、第3のアドレスを補正する。例えば、補正部158bは、第3のアドレスを50/80倍する。なお、補正部152bと補正部158bとは、並列に動作できる。このとき、補正部155bは、第2のアドレスを補正してもよいし、動作を停止していてもよい。
【0090】
(ステップS14)クリップ部152cは、補正後の第1のアドレスを、アドレス#50〜#100の範囲にクリッピングする。クリップ部158cは、補正後の第3のアドレスを、アドレス#0〜#50の範囲にクリッピングする。なお、クリップ部152cとクリップ部158cとは、並列に動作できる。このとき、クリップ部155cは、第2のアドレスをクリッピングしてもよいし、動作を停止していてもよい。
【0091】
(ステップS15)選択部162は、遅延部161から取得する電力値と閾値とを比較することで、電力レベルが平均を超えているか判断する。ただし、電力値に代えて、振幅や対数、第1〜第3のアドレスを用いてもよい。その場合、閾値は、電力レベルの判定に用いる指標値やアドレスによって異なる。電力レベルが平均を超える場合、処理をステップS16に進め、それ以外の場合、処理をステップS17に進める。
【0092】
(ステップS16)選択部162は、電力値から生成された第1のアドレスを選択する。そして、選択部162は、処理をステップS18に進める。
(ステップS17)選択部162は、対数から生成された第3のアドレスを選択する。
【0093】
(ステップS18)選択部162は、ステップS16またはステップS17で選択したアドレスを、読み出しアドレスとしてLUTを記憶するメモリ133に出力し、また、書き込みアドレスとして遅延部132に出力する。
【0094】
図19は、アドレス生成方法を示す第2のフローチャートである。図19のフローチャートでは、送信信号の電力レベルが平均を超えるとき、指標値として振幅が選択されるように、アドレス生成部131が設定される場合を考える。
【0095】
(ステップS21)振幅算出部154は、送信信号の電力値を算出し、電力値から振幅を算出する。対数算出部157は、送信信号の電力値を算出し、電力値から対数を算出する。なお、振幅算出部154と対数算出部157とは、並列に動作できる。このとき、電力算出部151は、電力値を算出してもよいし、動作を停止していてもよい。
【0096】
(ステップS22)演算部155aは、振幅から第2のアドレスを生成する。例えば、演算部155aは、振幅を10で割って四捨五入する。演算部158aは、対数から第3のアドレスを生成する。例えば、演算部158aは、対数から10を引いて2倍する。なお、演算部155aと演算部158aとは、並列に動作できる。このとき、演算部152aは、第1のアドレスを生成してもよいし、動作を停止していてもよい。
【0097】
(ステップS23)補正部155bは、第2のアドレスを補正する。例えば、補正部155bは、第2のアドレスを50/68倍して26.5を足す。補正部158bは、第3のアドレスを補正する。例えば、補正部158bは、第3のアドレスを50/80倍する。なお、補正部155bと補正部158bとは、並列に動作できる。このとき、補正部152bは、第1のアドレスを補正してもよいし、動作を停止していてもよい。
【0098】
(ステップS24)クリップ部155cは、補正後の第2のアドレスを、アドレス#50〜#100の範囲にクリッピングする。クリップ部158cは、補正後の第3のアドレスを、アドレス#0〜#50の範囲にクリッピングする。なお、クリップ部155cとクリップ部158cとは、並列に動作できる。このとき、クリップ部152cは、第1のアドレスをクリッピングしてもよいし、動作を停止していてもよい。
【0099】
(ステップS25)選択部162は、遅延部161から取得する電力値と閾値とを比較することで、電力レベルが平均を超えているか判断する。ただし、電力値に代えて、振幅や対数、第1〜第3のアドレスを用いてもよい。電力レベルが平均を超える場合、処理をステップS26に進め、それ以外の場合、処理をステップS27に進める。
【0100】
(ステップS26)選択部162は、振幅から生成された第2のアドレスを選択する。そして、選択部162は、処理をステップS28に進める。
(ステップS27)選択部162は、対数から生成された第3のアドレスを選択する。
【0101】
(ステップS28)選択部162は、ステップS26またはステップS27で選択したアドレスを、読み出しアドレスとしてLUTを記憶するメモリ133に出力し、また、書き込みアドレスとして遅延部132に出力する。
【0102】
第2の実施の形態の無線通信システムによれば、送信信号の電力レベルが平均を超えるか否かに応じて、電力値または振幅から生成されるアドレスと対数から生成されるアドレスとを使い分けて、補償係数の読み出しおよび書き込みが行われる。これにより、電力レベルが平均を超えるときと電力レベルが平均未満のときの間で、選択可能な補償係数の数の偏りを低減でき(例えば、両者の数を同一にでき)、補償精度の偏りを抑制できる。
【0103】
また、電力値、振幅および対数それぞれについて補償精度が高いアドレス区間を抽出して採用することで、平均を超える電力レベルに対応するアドレス区間および平均未満の電力レベルに対応するアドレス区間それぞれの中での補償精度の偏りも抑制できる。なお、第2の実施の形態では、2つの指標値を使い分けるにあたり、電力レベルの平均(0dB)を境界としたが、平均以外の電力レベルを境界としてもよい。また、第2の実施の形態では、LUTのアドレスの中心値(アドレス#50)を分割の境界としたが、中心値以外のアドレスを境界としてもよい。
【符号の説明】
【0104】
10 歪補償装置
11 記憶部
12 選択部
13 補償処理部
14,15 指標値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅器で生じる信号の歪みを補償する歪補償装置であって、
歪補償に用いられる複数の補償係数を記憶する記憶部と、
信号の電力レベルを示す指標値に対応する補償係数を、前記記憶部に記憶された前記複数の補償係数の中から選択する選択部と、を有し、
前記選択部は、前記電力レベルが閾値を超えるか否か判定し、判定結果に応じて、対数演算を用いずに算出される第1の指標値または対数演算を用いて算出される第2の指標値を前記指標値として使用する、歪補償装置。
【請求項2】
前記電力レベルが閾値を超えるとき前記第1の指標値を使用し、前記電力レベルが閾値以下のとき前記第2の指標値を使用する、請求項1記載の歪補償装置。
【請求項3】
前記記憶部では、前記複数の補償係数がアドレスによって識別され、
前記選択部は、前記第1の指標値または前記第2の指標値から変換したアドレスを用いて、選択される補償係数を指定する、請求項1記載の歪補償装置。
【請求項4】
前記電力レベルが閾値を超える場合の前記第1の指標値の取り得る値が第1のアドレス範囲に対応付けられ、前記電力レベルが閾値以下の場合の前記第2の指標値の取り得る値が第2のアドレス範囲に対応付けられる、請求項3記載の歪補償装置。
【請求項5】
前記判定では、前記第1および第2の指標値を含む複数の指標値の1つと閾値とを比較する、請求項1記載の歪補償装置。
【請求項6】
前記判定では、前記第1および第2の指標値を含む複数の指標値の1つから変換したアドレスと閾値とを比較する、請求項1記載の歪補償装置。
【請求項7】
前記第1の指標値は信号の電力値または振幅であり、前記第2の指標値は信号の電力値に対数演算を行うことで算出される値である、請求項1記載の歪補償装置。
【請求項8】
増幅器で生じる信号の歪みを補償する歪補償方法であって、
信号の電力レベルが閾値を超えるか否か判定し、判定結果に応じて、前記電力レベルを示す指標値として対数演算を用いずに算出される第1の指標値または対数演算を用いて算出される第2の指標値を選択し、
歪補償に用いられる複数の補償係数の中から、選択した前記第1の指標値または前記第2の指標値に対応する補償係数を選択する、歪補償方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−78018(P2013−78018A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217256(P2011−217256)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】