説明

歯の知覚過敏処置用組成物

【課題】 歯の知覚敏感処置用組成物を開示する。
【解決手段】組成物は式Iの化合物
−A−M−B−M (I)
[式中、M及びMは独立して、一価又は二価の金属であり、Mは多価金属又は金属酸化物であり、A及びBは、独立して、C〜Cの二塩基酸、三塩基酸及び四塩基酸からなる群から選択される]を含む。また歯の知覚敏感処置の方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、象牙質に親和性を有し、かつ開いた象牙細管を効果的に閉鎖させる歯の知覚過敏処置用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの人々が知覚過敏な歯に悩まされており、この疾患はしばしば象牙質知覚過敏と称され、成人の集団においてよくある問題である。これは、他のいかなる歯の欠陥又は歯科病理学でも説明できない、化学、熱、触覚又は浸透圧の刺激に反応して、露出した象牙質で発生する一過性の痛みであると定義される。歯の外表面(エナメル質)のエロージョン及び/又は歯肉退縮は、しばしば象牙質細管の露出を招き、口腔から歯髄内神経線維への通路を提供する。象牙質を横断して圧力勾配が存在することがインビボで示されており、これは外部への流体の流れを引き起こす。この流体の流れは、触覚、熱(温又は冷)及び浸透圧の刺激(高濃度の砂糖など)に反応して撹乱又は増大し、その結果歯肉神経線維の機械的刺激受容体の反応となると考えられ、これは痛みとして感じられる。神経減感剤及び象牙質細管閉鎖剤が歯の知覚過敏の治療に使用されてきた。硝酸カリウム及び/又はバイオグラス、非晶質リン酸カルシウムなどを含有する特別の練り歯磨きが、象牙質知覚過敏に悩まされている消費者により通常使用されている。歯の知覚過敏の治療にやはり使用されるもう1つの閉鎖剤は、シュウ酸カリウムである。しかし、象牙質細管の有効な閉鎖は種々の要因に依存するので、これらの閉鎖剤はいずれも象牙質知覚過敏の軽減に完全には有効ではない。それ故、象牙質に対する改善された親和性を持ち、象牙質細管を有効に閉鎖する歯の知覚過敏処置用組成物の必要性は引き続き存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
歯の保護バリヤーを提供し、及び/又は露出した象牙質細管を有効に閉鎖することにより、歯の知覚過敏を低減させる特殊組成物を選択することにより、前述の目的を達成することができることが発見された。幾つかの実施形態においては、本発明は、口腔用組成物において、
a)少なくとも1つの、式Iの化合物
−A−M−B−M (I)
[式中、M及びMは、独立して、一価又は二価の金属であり、Mは多価金属又は金属酸化物であり、A及びBは、独立して、C〜Cの二塩基酸、三塩基酸及び四塩基酸からなる群から選択される]、
b)所望により香味料、
c)所望により甘味剤
d)所望によりpH緩衝剤、並びに、
e)少なくとも1つの、口腔内で許容できる溶媒、を含み、
口腔用組成物は2.0(又は約2)を超える(又は少なくとも2の)pHを有する、口腔用組成物を提供する。
【0004】
他の実施形態においては、本発明の組成物は、口腔用組成物において、
a)少なくとも1つの、式Iの化合物
−A−M−B−M (I)
[式中、M及びMは、独立して、一価又は二価の金属であり、Mは多価金属又は金属酸化物であり、A及びBは、独立して、C〜Cの二塩基酸、三塩基酸及び四塩基酸からなる群から選択される]、並びに、
b)少なくとも1つの、口腔内で許容できる溶媒、を含み、
組成物は実質的に水を含まない、口腔用組成物に関する。
【0005】
更に他の実施形態においては、本発明の組成物は、口腔用組成物において、
a)少なくとも1つの、式Iの化合物
−A−M−B−M (I)
[式中、M及びMは、独立して、一価又は二価の金属であり、Mは多価金属又は金属酸化物であり、A及びBは、独立して、C〜Cの二塩基酸、三塩基酸及び四塩基酸からなる群から選択される]、
b)少なくとも1つの追加の減感剤、並びに、
c)少なくとも1つの、口腔内で許容できる溶媒、を含む、口腔用組成物に関する。
【0006】
別の実施形態においては、本発明の組成物は、知覚敏感な歯の治療方法において、歯に組成物を少なくとも2回連続して適用する工程を含み、組成物は、
a)少なくとも1つの、式Iの化合物
−A−M−B−M (I)
[式中、M及びMは、独立して、一価又は二価の金属であり、Mは多価金属又は金属酸化物であり、A及びBは、独立して、C〜Cの二塩基酸、三塩基酸及び四塩基酸からなる群から選択される]、並びに、
b)少なくとも1つの、口腔内で許容できる溶媒、を含み、
適用の間隔は12時間(又は約12時間)を超えない(又は12時間未満)。
【0007】
更に他の実施形態においては、本発明の組成物は、歯の象牙質細管を閉鎖する方法に関し、歯に組成物を少なくとも2回連続して適用する工程を含み、組成物は、
a)少なくとも1つの、式Iの化合物
−A−M−B−M (I)
[式中、M及びMは、独立して、一価又は二価の金属であり、Mは多価金属又は金属酸化物であり、A及びBは、独立して、C〜Cの二塩基酸、三塩基酸及び四塩基酸からなる群から選択される]を含み、
b)歯を組成物に少なくとも10秒間(又は約10秒間)(又は10秒間を超えて)接触させて、
細管を少なくとも約5%(又は約5%を超えて)閉鎖させる工程を含む。
【0008】
更に他の実施形態においては、本発明の組成物は、歯の象牙質細管を閉鎖する方法において、歯に組成物を少なくとも2回連続して適用する工程を含み、組成物は、
a)少なくとも1つの、式Iの化合物
−A−M−B−M (I)
[式中、M及びMは、独立して、一価又は二価の金属であり、Mは多価金属又は金属酸化物であり、A及びBは、独立して、C〜Cの二塩基酸、三塩基酸及び四塩基酸からなる群から選択される]を含み、
b)歯を組成物にカルシウムの存在下で少なくとも20秒間接触させる工程を含み、
化合物はカルシウムとともに沈殿物を歯の上又は近傍に生成し、これにより、2分間(又は約2分間)の超音波処理した後に、生成した沈殿物の少なくとも30%(又は約30%)(又は30%を超える沈殿物)が歯の上に残るようにする。
【0009】
更に他の実施形態においては、本発明の組成物は、歯の上及び/又は歯の象牙質細管の上に沈殿物を堆積させる方法において、歯に組成物を少なくとも2回連続して適用する工程を含み、組成物は、
a)少なくとも1つの、式Iの化合物
−A−M−B−M (I)
[式中、M及びMは、独立して、一価又は二価の金属であり、Mは多価金属又は金属酸化物であり、A及びBは、独立して、C〜Cの二塩基酸、三塩基酸及び四塩基酸からなる群から選択される]を含み、
b)歯を組成物にカルシウムの存在下で少なくとも20秒間(又は約20秒間)(又は20秒を超えて)接触させる工程を含み、
は、堆積した沈殿物の少なくとも5%(又は約5%)(又は5%を超える)の濃度で沈殿物中に存在する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】0.5%シュウ酸カリウム製剤で7回処理した後に撮られた、エッチングされた象牙質小片の走査型電子顕微鏡画像。処理後の象牙質小片表面上の最少量のシュウ酸塩の沈殿物及び/又は象牙質細管閉鎖を示している。
【図2】0.5%シュウ酸カリウム製剤で14回処理した後に撮られた、エッチングされた象牙質小片の走査型電子顕微鏡画像。処理後の象牙質小片表面上の最少量のシュウ酸塩の沈殿物及び/又は象牙質細管閉鎖を示している。
【図3】0.5%シュウ酸カリウム製剤で21回処理した後に撮られた、エッチングされた象牙質小片の走査型電子顕微鏡画像。処理後の象牙質小片表面上の最少量のシュウ酸塩の沈殿物及び/又は象牙質細管閉鎖を示している。
【図4】0.5%シュウ酸カリウム製剤で28回処理した後に撮られた、エッチングされた象牙質小片の走査型電子顕微鏡画像。処理後の象牙質小片表面上の最少量のシュウ酸塩の沈殿物及び/又は象牙質細管閉鎖を示している。
【図5】0.5%酸化シュウ酸チタンカリウム製剤で7回処理した後に撮られた、エッチングされた象牙質小片の走査型電子顕微鏡画像。処理後の象牙質小片表面上のかなりの酸化シュウ酸チタンの沈殿物及び/又は事実上完全な象牙質細管の閉鎖を示している。
【図6】0.5%酸化シュウ酸チタンカリウム製剤で14回処理した後に撮られた、エッチングされた象牙質小片の走査型電子顕微鏡画像。処理後の象牙質小片表面上のかなりの酸化シュウ酸チタンの沈殿物及び/又は事実上完全な象牙質細管の閉鎖を示している。
【図7】0.5%酸化シュウ酸チタンカリウム製剤で21回処理した後に撮られた、エッチングされた象牙質小片の走査型電子顕微鏡画像。処理後の象牙質小片表面上のかなりの酸化シュウ酸チタンの沈殿物及び/又は事実上完全な象牙質細管の閉鎖を示している。
【図8】0.5%酸化シュウ酸チタンカリウム製剤で28回処理した後に撮られた、エッチングされた象牙質小片の走査型電子顕微鏡画像。処理後の象牙質小片表面上のかなりの酸化シュウ酸チタンの沈殿物及び/又は事実上完全な象牙質細管の閉鎖を示している。
【図9】図1〜図8の象牙質小片の処理に使用されたものと同一の成分を有するが、シュウ酸カリウム又は酸化シュウ酸チタンカリウムを含有しない製剤による処理前のエッチングされた象牙質小片の走査型電子顕微鏡画像。処理前と処理後で象牙質小片表面上の沈殿物及び/又は象牙質細管閉鎖に変化がないことを示している。
【図10】図1〜図8の象牙質小片の処理に使用されたものと同一の成分を有するが、シュウ酸カリウム又は酸化シュウ酸チタンカリウムを含有しない製剤で28回処理した後に撮られた、エッチングされた象牙質小片の走査型電子顕微鏡画像。処理前と処理後で象牙質小片表面上の沈殿物及び/又は象牙質細管閉鎖に変化がないことを示している。
【図11】0.5%シュウ酸カリウムを含有する製剤(製剤B)で28回処理した後、通常のパルスで超音波処理機を使用し2分間超音波処理をした、エッチングされた象牙質小片の走査型電子顕微鏡画像。
【図12】0.5%酸化シュウ酸チタンカリウムを含有する製剤(製剤D)で28回処理した後、通常のパルスで超音波処理機を使用し2分間超音波処理をした、エッチングされた象牙質小片の走査型電子顕微鏡画像。図11及び図12のこれらの象牙質小片の画像とこれらの対応する図4及び図8に示される28日処理の画像との比較は、酸化シュウ酸チタンカリウム製剤により生成された沈殿物の安定性がシュウ酸カリウム製剤による沈殿物の安定性に比較して向上していることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の組成物は、本明細書に記載される本発明の必須要素及び制限事項、並びに本明細書に記載される追加若しくは任意の成分、構成要素、又は制限事項を含み、これらからなり、又はこれらから本質的になることができる。
【0012】
参照により全体が本明細書に組み込まれるすべての文書は、これらが本明細書に矛盾しない範囲においてのみ組み込まれる。
【0013】
百分率、部分及び比率はすべて、特に指定しない限り、本発明の組成物の総重量に基づいている。列挙された成分に関連するこのような重量はすべて活性レベルに基づいているので、特に指定しない限り、市販の物質に含まれることがある担体又は副産物を含まない。
【0014】
本明細書で使用するとき、用語「安全かつ有効な量」とは、当業者の適切な判定範囲内で、明白な利益、例えば歯の脱感作を有意に生じさせるのに十分な局所又はシステム活性であるが、深刻な副作用を回避するように十分に少ない、すなわち合理的な利益対危険比を提供する、化合物又は組成物の量を意味する。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「閉鎖された」又は「閉鎖」は、象牙質細管の又は象牙質細管への露出した開口部が部分的に、実質的に、又は完全に塞がれることを意味する。
【0016】
本発明の組成物は、少なくとも1つの、式Iの化合物
−A−M−B−M (I)
[式中、M及びMは、独立して、一価又は二価の金属であり、Mは多価金属又はその金属酸化物であり、A及びBは、独立して、C〜Cの二塩基酸、三塩基酸及び四塩基酸、所望によりC〜Cの二塩基酸又は三塩基酸、所望によりC〜Cの二塩基酸又は三塩基酸、あるいは所望によりCの二塩基酸からなる群から選択される]を含む。
【0017】
好適な一価金属の例には、Na、K及びLi、所望によりNa又はK、あるいは所望によりKが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
好適な二価の金属の例には、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZn、所望によりMg、Ba及びZn、又は所望によりMgが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
好適な多価金属の例には、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Tc、Re、Os、Ir、Hg、Ce、Sn、Eu、Yb、Pa及びU、所望によりTi、Sn、Mn及びFe、又は所望によりTiが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
好適な金属酸化物の例には、Ba、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Tc、Re、Os、Ir、Hg、Ce、Sm、Eu、Yb、Pa及びUの対応する酸化物、所望によりBa、Ti、Sr、Sn、Zr、Mn及びFeの対応する酸化物、所望によりBa、Ti、Sr、Sn、Zrの対応する酸化物、又は所望によりTiの対応する酸化物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
幾つかの実施形態では、M及び/又はMは、独立して、Na、K及びLiからなる群から選択される。所望により、M及びMの両方がKである。
【0022】
幾つかの実施形態では、MはTi、Sr、Sn、Mg、Ca、Mn及びZrからなる群から選択される。所望により、MはTi、Sr、Sn、Mg、Ca、Mn及びZrの酸化物からなる群から選択される。他の実施形態では、MはTi又はTiの酸化物からなる群から選択される。
【0023】
好適な二塩基酸の例には、シュウ酸、コハク酸、メチルコハク酸、ジグリコール酸、グルタル酸(すなわちペンタン二酸)、3,5,5−トリメチルペンタン二酸、ヘキサン二酸、3,5,5−トリメチルヘキサン二酸、2,4,4−トリメチルヘキサン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−二酢酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、フマル酸、シュウ酸、テレフタル酸、フタル酸及びイソフタル酸、ヒドロキシコハク酸、マロン酸、アジピン酸、セバシン酸及び酒石酸、所望によりシュウ酸、コハク酸、又は所望によりシュウ酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
好適な三塩基酸の例にはクエン酸が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0025】
好適な四塩基酸の例には、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,1,2,3−プロパンテトラカルボン酸、1,1,4,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼントリカルボン酸及びエチレンジアミン四酢酸、又は所望により1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
幾つかの実施形態では、式Iの化合物は、酸化シュウ酸チタンカリウム(「KTO」)(シュウ酸チタンカリウムとも称される)、酸化クエン酸チタンカリウム、シュウ酸チタンカルシウム及びシュウ酸チタンカルシウムカリウム、所望により酸化シュウ酸チタンカリウム(「KTO」)、酸化クエン酸チタンカリウム、又は所望により酸化シュウ酸チタンカリウム(「KTO」)からなる群から選択される。
【0027】
本発明の組成物は、組成物の総重量を基準として、0.01%(又は約0.01%)〜10.0%(又は約10.0%)、所望により0.1%(又は約0.1%)〜7.0%(又は約7.0%)、又は所望により1%(又は約1%)〜5.0%(又は約5.0%)の、少なくとも1つの、式Iの化合物を含む。
【0028】
幾つかの実施形態においては、本発明の組成物は、口腔内で許容できる溶媒を含む。口腔内で許容できる溶媒には、水;エタノール;n−プロパノール;又はグリセリン、ソルビトール及びポリエチレングリコールなどの多価アルコール;並びにこれらの任意の混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、口腔内で許容できる溶媒は約0.1%〜約99.9%、所望により約1%〜約90%、又は所望により約10%〜約75%の濃度で存在し得る。
【0029】
他の幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、実質的に水を含まない。本明細書で使用するとき、「実質的に含まない」とは、5%(又は約5%)未満、所望により3%(又は約3%)未満、所望により1%(又は約1%)未満、所望により0.5%(又は約0.5%)未満、所望によりゼロ(又は無水)を意味する。
【0030】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は,少なくとも2(又は約2)、所望により2.5(又は約2.5)〜7.0(又は約7.0)、所望により3.5(又は約3.5)〜6.0(又は約6.0)、又は所望により3.2(又は約3.2)〜4.5(又は約4.5)のpHを有する。
【0031】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物のpHは、従来の酸/塩系を用いて緩衝されてもよい。通常の緩衝系には、リン酸及びリン酸ナトリウム塩、又はクエン酸及びクエン酸ナトリウム塩が挙げられる。本発明に使用する好適な酸/酸塩緩衝液の組み合わせには、組成物の約1重量%まで、所望により組成物の約0.05重量%〜約0.75重量%、及び又は所望により組成物の約0.1重量%〜約0.5重量%までの量のクエン酸−クエン酸ナトリウム、リン酸−リン酸ナトリウム、一塩基リン酸ナトリウム、二塩基リン酸ナトリウム、酢酸−酢酸ナトリウム、コハク酸−コハク酸ナトリウム、アコニット酸−アコニット酸ナトリウム及び安息香酸−安息香酸ナトリウムが挙げられる。
【0032】
任意成分
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は他の歯の減感剤を更に含む。追加の歯の減感剤の例には、クエン酸カリウム、塩化カリウム、硝酸カリウム、クエン酸、クエン酸塩、塩化ストロンチウム及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。更に、米国特許第5735942号、第5891233号、第6086374号、第6244871号、第6338751号及び第6365132号に記載されている生理活性ガラス材料は本明細書で有用であり、それぞれの内容全体を本明細書に参照により援用する。また米国特許第5015628号、第5981475号、第6448374号及び第6780844号に記載されているホスホペプチドも本明細書で有用であり、それぞれの内容全体を本明細書に参照により援用する。
【0033】
幾つかの実施形態において、更なる歯の減感剤は硝酸カリウムである。幾つかの実施形態において、追加の歯の減感剤の濃度は、組成物の0.1重量%(又は約0.01重量%)〜10重量%(又は約10重量%)、所望により0.1重量%(又は約0.1重量%)〜8重量%(又は約8重量%)、又は所望により1重量%(又は約1重量%)〜7重量%(又は約7重量%)である。
【0034】
フッ化物イオン源は虫歯予防活性物質として口腔ケア組成物に使用されていることがよく知られており、これも本発明の組成物に組み込んでよい。フッ化物イオンは、この目的のために、多数の口腔ケア組成物、特に練り歯磨きに含有される。このような練り歯磨きを開示する特許には、米国特許第3538230号、第3689637号、第3711604号、第3911104号、第3935306号及び第4040858号が挙げられ、これらの内容全体を本明細書に参照により援用する。
【0035】
歯のエナメル質へのフッ化物イオンの適用は、歯をう食から保護する役割を果たす。多種多様なフッ化物イオン生成物質が、本発明の組成物の可溶性フッ化物源として採用され得る。好適なフッ化物イオン生成物質の例は、1970年10月20日に発行されたBrinerらの米国特許第3,535,421号及び1972年7月18日に発行されたWidderらの米国特許第3,678,154号に見られ、両特許の内容全体を本明細書に参照により援用する。幾つかの実施形態では、本明細書に用いられるフッ化物イオン供給源には、フッ化第一スズ、モノフルオロリン酸塩、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム及びフッ化アンモニウムが挙げられる。他の実施形態では、フッ化ナトリウムが組み込まれる。幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、約50ppm〜10,000ppm、所望により約100ppm〜3000ppmのフッ化物イオンを、歯の表面に接触する水溶液中に供給する。
【0036】
リン酸塩も本発明の組成物に有用である。リン酸塩には、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、ポリホスホン酸塩及びこれらの混合物が挙げられる。ピロリン酸塩はデンタルケア製品に使用されることが中でも一番よく知られている。ピロリン酸塩から得られるピロリン酸塩イオンが歯に送達される。本発明の組成物に有用なピロリン酸塩としては、ピロリン酸ジアルカリ金属塩、ピロリン酸テトラアルカリ金属塩及びこれらの混合物が挙げられる。無水和物並びに水和物としての二水素ピロリン酸二ナトリウム(Na)、ピロリン酸四ナトリウム(Na)及びピロリン酸四カリウム(K)が好ましい種である。幾つかの実施形態では、ピロリン酸塩はピロリン酸四ナトリウム塩である。
【0037】
ピロリン酸塩は、Kirk & Othmer,Encyclopedia of Clinical Technology Third Edition,Volume 17,Wiley−lnterscience Publishers(1982)に更に詳しく記述されており、Kirk & Othmerに組み込まれているすべての参考資料を含め内容全体を本明細書に参照により援用する。追加の抗結石剤には、米国特許第4590066号に開示されているピロリン酸塩又はポリリン酸塩;米国特許第3429963号、第4304766号及び第4661341号に開示されているものなどのポリアクリレート及び他のポリカルボキシレート;米国特許第4846650号に開示されているものなどのポリエポキシコハク酸塩;1937年2月15日の英国特許第490,384号に開示されているエチレンジアミン四酢酸;米国特許第3678154号に開示されているニトリロ三酢酸及び関連化合物;米国特許第3737533号、第3988443号及び第4877603号に開示されているポリホスホン酸塩が挙げられ、引用した特許はすべて内容全体を本明細書に参照により援用する。幾つかの実施形態では、リン酸塩には、ピロリン酸カリウム及びピロリン酸ナトリウム;トリポリリン酸ナトリウム;エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホネート、1−アザシクロヘプタン−1,1−ジホスホネート及び直鎖アルキルジホスホネートなどのジホスホネート;リン酸三カルシウム、直鎖カルボン酸、クエン酸亜鉛ナトリウム、並びに上述のリン酸塩のいずれかの混合物が挙げられる。幾つかの実施形態では、リン酸塩は、2008年8月7日に公開されたKarlinsey,Robert L.の米国第20080187500 A1号に記載されている、リン酸三カルシウムにラウリル硫酸ナトリウムを加えたものであり、この公開は内容全体を本明細書に参照により援用する。
【0038】
本発明の組成物に組み込む場合、リン酸塩は約0.01%〜約10%、所望により約0.1%〜約7%、及び所望により約0.5%〜約5%の濃度で存在することができる。
【0039】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物は精油も含む。精油は、合成又は植物から蒸留、圧出、若しくは抽出により得られる揮発性の芳香性油である。通常精油はそれが得られた植物の香り又は香味を持っている。精油は、本発明の歯磨組成物として使用される場合には、抗歯肉炎活性を提供する。これらの精油の幾つかは香味剤としても機能する。本発明の精油には、チモール、メントール、サリチル酸メチル(冬緑油)及びユーカリプトールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
化学式5−メチル2−(1−メチルエチル)フェノールとしても知られているチモールは、Thymu svulgaris Labiatae及びMonarda punctata Labiataeの精油から得られる。チモールは芳香及び香味を有する白色の結晶性粉末である。チモールは有機溶媒に可溶性であるが、脱イオン水にはわずかに溶解するだけである。
【0041】
メントールは主として薄荷油から単離される。市販品としては、メントールは油の冷却を伴うプロセスで得られるL−メントールの結晶として入手できる。通常約40%〜約65%のメントールを含有するペパーミント油の分留が、もう1つの重要なメントールの供給源である。L−メントールの合成源も入手可能である。
【0042】
ユーカリプトールはユーカリの木から得ることができる。樟脳臭及び涼味を持つこの精油は、治療効果を付与するために菓子の製剤においてメントールなどの他の精油と組み合わされることが多い。メントールとユーカリプトールとの組み合わせは広く使用されている。メントールとユーカリプトールとの組み合わせの特に好ましい用途には、本発明によれば練り歯磨き又は歯科用ゲルなどの歯磨剤が挙げられる。
【0043】
サリチル酸メチルは多くの精油の主成分であり、冬緑油(Gaultheria procumbens)及びスィートバーチ(Betula lenta)の約99%を占める。独特の爽やかな香りを持つサリチル酸メチルは、うがい剤、チューインガム並びにその他の経口剤及び医薬品に広く使用される。
【0044】
本発明の組成物において使用できる精油の量は、0.001(又は約0.001)〜1%(又は約1%)のチモール、0.001(又は約0.001)〜1%(又は約1%)のサリチル酸メチル、0.001(又は約0.001)〜15%(又は約15%)のメントール及び0.001(又は約0.001)〜1%(又は約1%)のユーカリプトールであり、これらの量は歯肉炎の予防に臨床的に有効である。所望により、本発明による組成物は、約0.064%のチモール、約0.060%のサリチル酸メチル、約0.042%のメントール及び約0.092%ユーカリプトールを含有し、これらの量は歯肉炎の予防に臨床的に有効である。
【0045】
あるいは又は精油に加えて、本発明の組成物は、抗菌剤として有効な量の、ポリフェノール(例えばトリクロサン)亜鉛塩、フッ化スズ、クロルヘキシジン、ヘキセチジン、サンギナリン、塩化ベンザルコニウム、サリチルアニリド、臭化ドミフェン、塩化セチルピリジニウム、塩化テトラデシルピリジニウム(TPC)、N−テトラデシル−4−エチルピリジニウム塩化物(TDEPC)、オクテニジン、デルモピノール、オクタピノール、及び他のピペリジン誘導体、ニシン(nicin)調製物、亜鉛/スズイオン剤;オーグメンチン、アモキシシリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、及びメトロニダゾール、並びにこれらの類似物及び塩などの抗生物質;オイゲノール、ゲラニオール、カルバクロール、シトラール、ヒノキチオール、カテコールなどの精油;過酸化水素、クロライトの金属塩、又は上述のすべての任意の組み合わせからなる群から選択される抗菌剤も含むことができる。
【0046】
上述の剤のいずれかの混合物もまた使用することができる。
【0047】
本発明の組成物は、アニオン性、非イオン性、両性、ベタイン、カチオン性の界面活性剤、及びこれらの混合物から選択される界面活性剤も含有することができる。好適なアニオン性界面活性剤には、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、スルホスクシネート、イセチオネート、アシルアミド、アルキルエーテルカルボン酸塩及びアルキルリン酸塩が挙げられ、ここでアルキル基は約6個の炭素原子〜約30個の炭素原子を含む。好適なカチオン性界面活性剤には、セチルピリジニウムクロライドが挙げられる。本発明の組成物における使用に好適な界面活性剤の総量は、全組成物の総重量を基準として、約1%〜約50%、所望により約5%〜約40%、又は所望により約8%〜約25%の範囲とすることができる。
【0048】
本発明における使用に好適な非イオン性界面活性剤の種類には、脂肪族アルコール酸又はアミドエトキシレート、モノグリセリドエトキシレート、ソルビタンエステルエトキシレート及びアルキルポリグリコシドが挙げられる。本発明の組成物において、これらの非イオン性界面活性剤は、組成物の総重量を基準として、約0.0%〜約30%、例えば約0.1%〜約20%及び約0.1%〜約15%の量で使用することができる。
【0049】
本発明における使用に好適な両性界面活性剤の部類には、アルキルイミノジプロプリオネート、アルキルアンホグリシネート(モノ又はジ)、アルキルアンホプロプリオネート(モノ又はジ)、アルキルアンホアセテート(モノ又はジ)、N−アルキルb−アミノプロプリオン酸、アルキルポリアミノカルボン酸塩及びリン酸化イミダゾリンが挙げられる。本発明の組成物において、これらの両性界面活性剤は、組成物の総重量を基準として、約0.1%〜約20%、例えば約0.1%〜約15%及び約0.1%〜約10%の量で使用することができる。
【0050】
本発明における使用に好適なベタインの種類には、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルスルタイン及びアルキルアミドスルタインが挙げられ、アルキル基は約6個の炭素原子〜約30個の炭素原子を有し、約10個〜14個の炭素原子が好ましい。本発明の組成物において、これらのベタイン界面活性剤は、クレンジング組成物の総重量を基準として、約0.1%〜約15%、例えば約0.1%〜約10%及び約0.1%〜約8%の量で使用することができる。
【0051】
本発明における使用に好適なカチオン性界面活性剤の部類には、アルキル四級化合物(モノ、ジ又はトリ)、ベンジル四級化合物(例えば、セチルピリジニウムクロライド)、エステル四級化合物、エトキシル化四級化合物、アルキルアミン及びこれらの混合物が挙げられ、アルキル基は約6個の炭素原子〜約30個の炭素原子を有し、約8個〜約22個の炭素原子が好ましい。本発明の組成物において、これらのカチオン性界面活性剤は、組成物の総重量を基準として、約0.01%〜約20%、所望により約0.05%〜約15%及び又は所望により約0.1%〜約10%の量で使用することができる。
【0052】
本発明の組成物はまた増粘剤、保湿剤、キレート化剤、及び風味剤、防腐剤などの添加物を含む1つ以上の任意の成分を非排他的に含むことができる。適切な粘性を組成物に付与することができる市販の増粘剤がこの発明に好適に使用できる。好適な増粘剤の例には、1)式:HO−(CHCHO)Hのポリエチレングリコールのモノ又はジエステル[式中、zは約3〜約200の整数]、及び2)約16〜約22個の炭素原子を含有する脂肪酸、エトキシル化ポリオールの脂肪酸エステル、脂肪酸及びグリセリンのモノ及びジエステルのエトキシル化誘導体、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース並びにこれらの混合物が非排他的に挙げられる。好ましい増粘剤には、ポリエチレングリコールエステルが挙げられ、より好ましくはイリノイ州ノースフィールドのStepan Company又はイタリア、ボローニャのComiel,S.p.A.から「PEG 6000 DS」の商品名で得られるPEG−150ジステアレートが挙げられる。
【0053】
幾つかの実施形態では、増粘剤は、本発明の組成物に約0.01%〜約10%、所望により約0.1〜約5%、又は所望により約0.2%〜約2.0%の濃度で含まれることができる。
【0054】
市販の保湿剤は、上に詳述されるように、可能性のある溶媒としての用途に加えてその保湿特性ゆえに、本発明の使用に好適である。保湿剤は、組成物の総重量を基準として、約0%〜約10%、好ましくは約0.5%〜約5%、より好ましくは約0.5%〜約3%の量で存在することができる。好適な保湿剤の例には非排他的に1)グリセリン、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール及びこれらの混合物を含む群から選択される水溶性液体ポリオール、2)式:HO−(R”O)−Hのポリアルキレングリコール[式中、R”は約2〜約3個の炭素原子を持つアルキレン基であり、bは約2〜約10の整数]、3)式:CH−C10−(OCHCH−OHのメチルグルコースのポリエチレングリコールエーテル[式中、cは約5〜約25の整数]、4)尿素、及び5)これらの混合物が挙げられ、グリセリンが好ましい保湿剤である。
【0055】
幾つかの実施形態では、保湿剤は本発明の組成物に約0.1%〜約40%、所望により約1.0〜約30%、又は所望により約5%〜約25%の濃度で組み込むことができる。
【0056】
幾つかの実施形態では、キレート化剤を本発明の組成物に組み込むことができる。好適なキレート化剤の例には、本発明の組成物を保護し保存することができるキレート化剤が挙げられる。式Iの化合物に四塩基酸を用いる可能性があるが、これに加えて所望によりエチレンジアミン四酢酸(「EDTA」)をキレート化剤として使用することができる。幾つかの実施形態では、キレート化剤はミシガン州ミッドランドのDow Chemical Companyから市販されている商標名「Versene 100XL」の四ナトリウムEDTAであり、組成物の総重量の約0〜約0.5%、及び所望により約0.05%〜約0.25%の量で存在してよい。
【0057】
好適な防腐剤には、安息香酸ナトリウム及びポリソルベート(polysorabate)が挙げられ、組成物中に組成物の総重量を基準として約0〜約0.2%、好ましくは約0.05%〜0.10%の量で存在する。
【0058】
本発明の組成物は、うがい剤、口内洗浄剤、歯磨剤、練り歯磨きなどのペースト、歯磨粉などの粉末、ゲル、錠剤、トローチ、マイクロカプセル、スプレー、ワニス又はストリップ(本明細書にその全体を参照により援用する、Kroptらの2007年6月7日に公開された米国特許出願公開第20070128130号に開示されている再石灰化ストリップ、又は両特許文書とも本明細書に全体を参照により援用する、Georgiadesらの2008年1月3日に公開された米国特許出願公開第20080003248号及びSagelらの2005年9月27日に発行された米国特許第6949240号に開示されているペルオキシド又は非ペルオキシド歯漂白ストリップなど)、これらのストリップのためのコーティングなどの形態であることができる。上述の説明で示唆したように、本発明の組成物は、本明細書に全体を参照により援用するMontgomeryの2008年2月21日に公開された米国特許出願公開第20080044363号に開示されている、歯ブラシ、デンタルピック、デンタルフロス、デンタルスプレーヤ又はミスタ及びデンタルペンなどの、従来の口腔ケアデバイスにより適用されることもできる。
【0059】
本発明の組成物は、歯ブラシ(手動式又は機械駆動)、歯ブラシの毛、デンタルフロス、デンタルピックなどからなる群から選択される歯科用具のコーティングとして又はそれらに含浸させるための含浸剤としてもまた有用であり得る。本発明の組成物は、歯科複合材料、歯科充填剤などのコーティングとして又は含浸剤としても有用であり得る。
【0060】
本発明の組成物の使用方法
本明細書において解説的に開示した発明は、本明細書において明確には開示されていないいかなる構成成分、成分、又は工程がなくても実行することができる。
【0061】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、知覚過敏な歯に少なくとも2回連続して、所望により少なくとも7(又は約7)(又はこれを超える)回連続して、又は所望により14(又は約14)回連続して、又は所望により21(又は約21)回連続して、又は所望により28(又は約28)回連続して適用される。
【0062】
知覚過敏な歯(単数又は複数)に適用する場合、幾つかの実施形態では、組成物は知覚過敏な歯に少なくとも10(又は約10)秒間(又はこれを超える時間)、所望により20(又は約20)秒間、所望により30(又は約30)秒間、所望により50(又は約50)秒間、所望により60(又は約60)秒間接触して留まらせる。
【0063】
幾つかの実施形態では、連続する適用間の時間間隔は、12(又は約12)時間を超えず(又はこれ未満)、所望により8(又は約8)時間、所望により4(又は約4)時間、所望により2(又は約2)時間、又は所望により1(又は約1)時間であるべきである。
【0064】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、式Iの化合物が、利用できるカルシウムとともに、歯の象牙質細管の少なくとも5%(又は約5%)(又はこれを超える)が閉鎖される、所望により象牙質細管の25%(又は約25%)が閉鎖される、所望により象牙質細管の40%(又は約40%)が閉鎖される、所望により象牙質細管の60%(又は約60%)が閉鎖される、所望により象牙質細管の75%(又は約75%)が閉鎖される、所望により象牙質細管の85%(又は約85%)が閉鎖される、所望により象牙質細管の95%(又は約95%)が閉鎖されるような沈殿堆積物を歯の上に形成するように知覚敏感な歯に適用される。
【0065】
幾つかの実施形態では、式IのMは、式Iの化合物とカルシウムから形成される沈殿堆積物中に少なくとも5%(又は約5%)(又はこれを超える)、所望により10%(又は約10%)、所望により20%(又は約20%)、又は所望により35%(又は約35%)の濃度で存在する。
【0066】
一度歯の上に形成されると、式Iの化合物及びカルシウムを含む沈殿堆積物が提供する安定性は、中国のBest And More Electronics[Shenzhen]Co.,Ltd.が製造した超音波処理機CD−4800(Digital Professional Ultrasonic Cleaner[CD−4800])を使用し約42KHztの通常のパルスで2(又は約2)分間超音波処理した後、その少なくとも5%(又は約5%)(又はこれを超える)、所望により30%(又は約30%)、所望により35%(又は約35%)、所望により50%(又は約50%)、所望により75%(又は約75%)、又は所望により90%(又は約90%)が歯に残るようなものである。このパルスでは、超音波処理機は通常、音波又は手による歯磨きに通常使用される力より強い力を提供する。本明細書で用いられる用語「沈殿堆積物」は、本出願に開示された式Iの化合物を含む組成物を適用した後、式Iの化合物と口腔内の流体中に存在するカルシウムとの沈殿物により歯の上に生成された堆積物及び/又はこの歯の細管を閉鎖する堆積物を意味する。式Iの化合物を含む本発明の組成物を加える前又は後に、カルシウムを水溶性のカルシウム塩として別個に口腔内に加えることによっても、式Iの化合物による沈殿堆積物の生成が発生又は促進される。好適な水溶性のカルシウム塩には、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、リン酸二水素カルシウム及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。水溶性のカルシウム塩の量は、モル基準で、本発明の組成物により供給される式Iの化合物の量を超えるべきである。
【0067】
本発明の本質及びその実施方法を更に説明するために幾つかの実施例を以下に示す。
【実施例】
【0068】
以下の実施例で示される本発明の組成物は、本発明の組成物の特定の実施形態を示すもので、本発明を限定するものではない。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者は、他の修正を実行することができる。
【0069】
口内洗浄剤の調製
液体の口内洗浄剤を調製し、酸化シュウ酸チタンカリウム(KTO)製剤の象牙質閉鎖効率を評価した。調製の方法は次の通りである。
【0070】
製剤容器に水、KTO、安息香酸及びポロキサマーを加え、溶解するまで混合した。ポロキサマーが溶解すると、アルコール、n−プロパノール、ソルビトール及び水を加え、次いで安息香酸ナトリウムを加え、溶解するまで混合した。pHが調べられ、約4.2であると判定された。
【0071】
上述の製剤混合物にメントール、チモール、ユーカリプトール、サリチル酸メチルを加え、均質になるまで混合した。均質な溶液が形成された後、サッカリンナトリウム及びFDCグリーン#3(1%溶液、純度調製済み)を加えた。均質になるまで製剤を混合した。製剤の最終pHは4.2であった。
【0072】
液体口内洗浄製剤の組成を表1に示す。
【表1】

【0073】
象牙質試料及び人工唾液の調製
KTO化合物及び本発明の製剤の象牙質閉鎖の有効性が以下のように論証された。
【0074】
象牙質小片(研磨済みでエッチングなし)は、Dental product testing,Division of Thermametric technologies Inc.,Indianapolis,Indiana,USAから入手した。象牙質小片は、汚れのある層(又は象牙質又はエナメル質の切削により生じた破片層)を完全に除くため、6%クエン酸に最大2分間浸漬し、次いですすぎ洗い及び脱イオン水中での音波処理により、エッチングした。
【0075】
シュウ酸カリウム(KO)はFluka,St.Louis,MO,(lot#:430462/1)から入手した。酸化シュウ酸チタンカリウム(KTO)二水和物は、Sigma,St.Louis MO(lot#51740)から入手した。
【0076】
人工唾液は、従来の装置及び実験室プロトコルで通常使用される手順を用いて、表2に示す組成を有するように調製された。
【表2】

pH=7.0
【0077】
比較試験及び分析
エッチングされた象牙質小片試料(全部で10枚)はすべてランダム化し、5つの処理グループに分けた。KTO製剤による細管閉鎖及び表面堆積の観察のために、走査型電子顕微鏡法(SEM)及び電子分散型分光法(EDS)による表面化学分析を行った。5つの処理グループは次の通りであった。
グループ1:製剤Aで処理した。
グループ2:製剤Bで処理した。
グループ3:製剤Cで処理した。
グループ4:製剤Dで処理した。
グループ5:製剤E(すなわち、KTOもKOも含まない)で処理した。
【0078】
グループ1〜5の処理計画は次のものからなった。
1.各グループの小片試料をそれぞれの処理製剤20mLで30秒間震盪させながら処理した。
2.各グループの小片試料を脱イオンHOで1分間すすいだ。
3.処理の間は小片試料を人工唾液組成物に浸漬し、1日に2回を超える処理は行わなかった。
4.工程1〜3の処理を合計28回繰り返した。
5.7、14、21及び28回の処理の後、象牙質試料をSEM及び/又はEDSにより分析した。分析の前に、小片を脱イオンHOで3分間すすぎ、風乾してSEM分析を行った。
【0079】
1グループ当たり2つの小片試料(小片1及び2)のEDS分析から得たデータを次の表3及び4に要約する。
【表3】

【表4】

【0080】
7回処理後では、0.5%KTO(製剤D)で処理した試料は、EDSの読みで検出されたイオウの割合(エッチングされた象牙質表面のEDSスペクトルは通常45〜50%のイオウを示す)の低下から明らかなように、エッチングされた象牙質表面に最高の親和性を示している。検出されるイオウの割合は、象牙質小片表面のイオウがKTO製剤による処理で生じた表面堆積物により被覆又はマスクされるために低下する。全くない訳ではないが、0.1%KTO(製剤C)で処理した試料では、検出されたイオウの割合が劇的に低下している。14回処理後では、0.5%KTO(製剤D)で処理した試料では、検出されたイオウの割合は低いままであり、0.1%KTO(製剤C)で処理した試料では更に顕著に低下している。
【0081】
これらの試料に行なわれる走査型電子顕微鏡法は、製剤D試料において象牙質表面上の表面沈殿物の開始又は生成を示唆しており、細管閉鎖の程度は処理回数とともに増大している。
【0082】
異なる製剤の象牙質細管閉鎖の有効性の半定量的比較のために、SEM分析、画像の等級付け及び細管閉鎖率の計算を行った。SEMデータの分析、画像の等級付け及び細管閉鎖率を得るための方法及び計算は、West NX,Addy,M,Hughes,J.(1998)J.Oral Rehabil,25,885に記載の方法に従って行なわれ、Lee SY,Kwon HK,Kim BI(2008)J.Oral Rehabil,35,847に記載の方法により確認された。上述のSEMデータの分析に基づき、製剤A〜Eの7、14、21及び28回処理における細管閉鎖率を決定し、表5に要約して示す。
【表5】

【0083】
異なる処理サイクル数及び異なるKTO濃度の処理前(処理以前)及び処理後の走査型電子顕微鏡の比較分析データ(表5及び図1〜4(KO処理)、図5〜8(KTO処理)、並びに表9及び10(オキザラート処理なし)に示す)は、明らかに細管閉鎖の強化された有効な増大をもたらす表面沈殿物の増加を証明している。
【0084】
形成された沈殿堆積物の持続性の測定
処理サイクル中に象牙質小片試料の上に堆積したKTO沈殿物の持続性(すなわち、沈殿物が歯の表面に留まる能力)を測定するために以下を行った。製剤B(0.5%KO)及び製剤D(0.5%KTO)で28回処理された象牙質小片を、通常のパルス(約42KHz)で超音波処理機CD−4800を使用して2分間(約2分間でもよい)超音波処理した。超音波処理をした小片(図11及び12)の画像をそれらに対応する図4及び図8に描かれる28日処理の画像と比較すると、KTOにより生成された沈殿堆積物(KTOにより生成された沈殿物の約92%が小片試料上に残っていた)は、KOにより生成された沈殿物(KOにより生成された沈殿物の約38%が小片試料上に残っていた)より超音波処理に対する抵抗性が高く、KTOにより生成された沈殿堆積物がKOにより生成された沈殿堆積物と比較して高い安定性を与えることを示している。理論に制限されるものではないが、式Iの化合物により生成された沈殿堆積物のこの改善された安定性は、より大きい歯の脱感作のみならず、より長い期間継続する歯の脱感作をも提供すると考えられる。
【0085】
表6及び表7に、本発明の組成物の更なるうがい剤の例を説明する実施例F〜Oを示す。実施例F〜Oは、上述の実施例A〜Eについて概略説明した方法で調製できる。
【表6】

【表7】

【0086】
表8は本発明の組成物の歯磨きの例を説明する実施例P〜Sを示す。実施例P〜Sは既存の歯磨きの混合技術により調製できる。実施例Sは本発明の無水歯磨きの実施形態を説明する。
【表8】

【0087】
〔実施の態様〕
(1) 口腔用組成物において、
a)少なくとも1つの、式Iの化合物
−A−M−B−M (I)
[式中、M及びMは、独立して、一価又は二価の金属であり、Mは多価金属又は金属酸化物であり、A及びBは、独立して、C〜Cの二塩基酸、三塩基酸及び四塩基酸からなる群から選択される]、並びに、
b)少なくとも1つの、口腔内で許容できる溶媒、
を含み、
前記組成物は実質的に水を含まない、口腔用組成物。
(2) M及びMは、独立して、Na、K及びLiからなる群から選択される一価の金属である、実施態様1に記載の組成物。
(3) 前記M及びMがKである、実施態様2に記載の組成物。
(4) Mが、Ti、Sr、Sn、Mg、Ca、Mn及びZrからなる群から選択される多価金属である、実施態様1に記載の組成物。
(5) MがTiである、実施態様4に記載の組成物。
(6) Mが、酸化バリウム(Ba)、酸化チタン(Ti)、酸化ストロンチウム(Sr)、酸化スズ(Sn)及び酸化ジルコニウム(Zr)からなる群から選択される金属酸化物である、実施態様1に記載の組成物。
(7) Mが酸化チタン(Ti)である、実施態様6に記載の組成物。
(8) 前記式Iの化合物が、酸化シュウ酸チタンカリウム、シュウ酸チタンカルシウム、酸化クエン酸チタンカリウム、シュウ酸チタンカルシウムカリウム及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様1に記載の組成物。
(9) 前記式Iの化合物が酸化シュウ酸チタンカリウムである、実施態様8に記載の組成物。
(10) 前記式Iの化合物が酸化クエン酸チタンカリウムである、実施態様8に記載の組成物。
【0088】
(11) 前記組成物が、うがい剤、口内洗浄剤、歯磨剤、ペースト、粉末、ゲル、錠剤、トローチ、マイクロカプセル、ストリップ又はストリップコーティングの形態である、実施態様1に記載の組成物。
(12) 前記組成物が、歯ブラシ、歯ブラシの毛、デンタルフロス及びデンタルピックからなる群から選択される歯科用具のコーティング又は含浸剤である、実施態様1に記載の組成物。
(13) 知覚敏感な歯の治療方法において、
前記知覚敏感な歯を、実施態様1に記載の組成物に少なくとも約10秒間接触させる工程を含む、方法。
(14) 口腔用組成物において、
a)少なくとも1つの、式Iの化合物
−A−M−B−M (I)
[式中、M及びMは、独立して、一価又は二価の金属であり、Mは多価金属又は金属酸化物であり、A及びBは、独立して、C〜Cの二塩基酸、三塩基酸及び四塩基酸からなる群から選択される]、
b)少なくとも1つの追加の減感剤、並びに、
c)少なくとも1つの、口腔内で許容できる溶媒、
を含み、
前記組成物は実質的に水を含まない、口腔用組成物。
(15) 前記追加の減感剤が、クエン酸カリウム、塩化カリウム、硝酸カリウム、クエン酸、クエン酸塩、塩化ストロンチウム、生理活性ガラス材料、ホスホペプチド及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様14に記載の組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔用組成物において、
a)少なくとも1つの、式Iの化合物
−A−M−B−M (I)
[式中、M及びMは、独立して、一価又は二価の金属であり、Mは多価金属又は金属酸化物であり、A及びBは、独立して、C〜Cの二塩基酸、三塩基酸及び四塩基酸からなる群から選択される]、並びに、
b)少なくとも1つの、口腔内で許容できる溶媒、
を含み、
前記組成物は実質的に水を含まない、口腔用組成物。
【請求項2】
及びMは、独立して、Na、K及びLiからなる群から選択される一価の金属である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記M及びMがKである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
が、Ti、Sr、Sn、Mg、Ca、Mn及びZrからなる群から選択される多価金属である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
がTiである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
が、酸化バリウム(Ba)、酸化チタン(Ti)、酸化ストロンチウム(Sr)、酸化スズ(Sn)及び酸化ジルコニウム(Zr)からなる群から選択される金属酸化物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
が酸化チタン(Ti)である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記式Iの化合物が、酸化シュウ酸チタンカリウム、シュウ酸チタンカルシウム、酸化クエン酸チタンカリウム、シュウ酸チタンカルシウムカリウム及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記式Iの化合物が酸化シュウ酸チタンカリウムである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記式Iの化合物が酸化クエン酸チタンカリウムである、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、うがい剤、口内洗浄剤、歯磨剤、ペースト、粉末、ゲル、錠剤、トローチ、マイクロカプセル、ストリップ又はストリップコーティングの形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、歯ブラシ、歯ブラシの毛、デンタルフロス及びデンタルピックからなる群から選択される歯科用具のコーティング又は含浸剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
口腔用組成物において、
a)少なくとも1つの、式Iの化合物
−A−M−B−M (I)
[式中、M及びMは、独立して、一価又は二価の金属であり、Mは多価金属又は金属酸化物であり、A及びBは、独立して、C〜Cの二塩基酸、三塩基酸及び四塩基酸からなる群から選択される]、
b)少なくとも1つの追加の減感剤、並びに、
c)少なくとも1つの、口腔内で許容できる溶媒、
を含み、
前記組成物は実質的に水を含まない、口腔用組成物。
【請求項14】
前記追加の減感剤が、クエン酸カリウム、塩化カリウム、硝酸カリウム、クエン酸、クエン酸塩、塩化ストロンチウム、生理活性ガラス材料、ホスホペプチド及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−32271(P2011−32271A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−173428(P2010−173428)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(506105814)マクニール−ピーピーシー・インコーポレーテツド (69)
【Fターム(参考)】