説明

歯牙漂白用組成物

【課題】 歯の漂白用組成物をマウスピースへ適量を取り出すことが可能な歯牙漂白用組成物を提供する。
【解決手段】 歯の漂白用組成物を、多価アルコール:50〜90重量%、多価アルコールに膨潤可能な増粘材:1〜30重量%、カルシウムキレート剤:0.5〜10重量%、酸化亜鉛:0.1〜2重量%から成る歯牙漂白用組成物とする。更に漂白効果を高めるために、過酸化水素誘導体を過酸化水素換算で2〜25重量%を含むことが好ましい歯牙漂白用組成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素の沈着した歯牙を漂白するための歯牙漂白用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、歯の白さは美容上重要な要素であると考えられており、若い女性を中心として歯を白くしたいという希望は強く、歯牙の漂白(以下、ホワイトニングと称する)を求めるケースが増加している。ホワイトニングは、歯牙を削らずに歯の着色を化学的に分解することにより歯牙を白くする方法である。ホワイトニングの方法には歯科医院で行う「オフィスホワイトニング」と、歯科医師の指導のもと自宅で行う「ホームホワイトニング」の二種類があり、それらを併用して行うこともある。
【0003】
一般的に、オフィスホワイトニングは歯科医師や歯科衛生士が高濃度の過酸化水素が配合された組成物(例えば特許文献1〜3参照。)を用いて行う治療法であり、1〜1.5時間の施術を1〜6回通院して行う必要がある。この方法は短時間で高い漂白効果を得ることができるが歯科医院へ何度も通院する必要がある。一方、ホームホワイトニングは低濃度の過酸化水素が配合された歯牙漂白用組成物を使用して歯を漂白する方法であり、漂白についての説明を受けるために1、2回通院すれば、後は自宅で1日2〜6時間の漂白を数週間行えばよく、漂白効果が現れるまでに時間はかかるものの頻繁に通院する必要が無く、就寝中や勤務中でも漂白を行うことができるため好まれている。
【0004】
ホームホワイトニングはシリンジ内に充填された歯牙漂白用組成物を、その患者専用のマウスピースへ患者自身が取り出しマウスピースを歯牙に装着することで実施される。しかしながら、従来のホームホワイトニング用の歯牙漂白用組成物は無色透明なため適量をマウスピースへ取り出すことが困難であった。例えば歯牙漂白用組成物をマウスピースへ必要以上に多量に取り出してしまった場合には、歯牙漂白用組成物が盛られたマウスピースを歯牙へ装着したとき歯牙漂白用組成物がマウスピースから溢れ出してしまい、歯牙漂白用組成物に配合された過酸化物によって歯肉や口唇を侵襲してしまうという問題があった。それを避けるために、過酸化物を用いずに光触媒作用を有する二酸化チタンを併用した歯牙の漂白方法も提案されているが(例えば、特許文献4参照。)、この漂白方法は特別な光照射器を必要とするためホームホワイトニングには適していない。
【0005】
一方、マウスピースへ取り出した量が少なかった場合には、歯牙漂白用組成物が歯牙の隅々まで行き渡らず、結果として漂白にムラが生じてしまう虞があった。
【0006】
【特許文献1】特開平8−143436号公報
【特許文献2】特開平5−320033号公報
【特許文献3】特開平8−113520号公報
【特許文献4】特開平11−092351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、歯の漂白用組成物をマウスピースへ適量を取り出すことが可能な歯牙漂白用組成物を提供することを課題とする。
【0008】
本発明者等は前記課題を解決するために鋭意検討した結果、過酸化物と反応せず、更に漂白過程の歯牙を着色してしまう虞もない白色顔料である酸化亜鉛に着目し、過酸化物が配合された歯牙漂白用組成物に酸化亜鉛で白色を着ければシリンジからマウスピースへ取り出したときに量を容易に確認することが可能となり、かつ、白色であるためマウスピースと共に使用しても外見的に違和感がないことを見出して本発明を完成した。
【0009】
即ち本発明は、多価アルコール:50〜90重量%、多価アルコールに膨潤可能な増粘材:1〜30重量%、カルシウムキレート剤:0.5〜10重量%、酸化亜鉛:0.1〜2重量%から成る歯牙漂白用組成物であり、更に過酸化水素誘導体を過酸化水素換算で2〜25重量%を含むことが好ましい歯牙漂白用組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る歯牙漂白用組成物は、歯の漂白用組成物をマウスピースへ適量を取り出すことが可能な優れた歯牙漂白用組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る歯牙漂白用組成物に用いる多価アルコールとしては従来の歯を漂白する組成物で用いられていた物質を挙げることができ、例えば、グリセリン,ジグリセリン,ポリグリセリン,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,ポリエチレングリコール,モノメチルエーテルである。
【0012】
本発明に係る歯牙漂白用組成物への多価アルコールの配合量は50〜90重量%である。多価アルコールの配合量が50重量%より少ないと組成物が硬くなりすぎてシリンジからマウスピースへ取り出すのが困難となり、90重量%を超えて配合すると組成物の粘度が低すぎてマウスピースを歯牙へ装着したときにマウスピースと歯牙との隙間から多く漏れてしまう。
【0013】
本発明に係る歯牙漂白用組成物に用いる多価アルコールに膨潤可能な増粘材としては、カルボキシポリメチレン,カルボキシメチルセルロース,カルボキシメチルセルロースナトリウム,カルボキシメチルセルロースカルシウム,メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体,ポリアクリル酸ナトリウム,メチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ポリビニルピロリドン等を例示することができる。
【0014】
本発明に係る歯牙漂白用組成物への多価アルコールに膨潤可能な増粘材の配合量は1〜30重量%である。多価アルコールに膨潤可能な増粘材の配合量が1重量%より少ないと組成物の粘度が低すぎてマウスピースを歯牙へ装着したときに多く漏れ出してしまい、30重量%を超えて配合すると本組成物が硬すぎてシリンジからマウスピースへ取り出すのが困難となる。
【0015】
本発明に係る歯牙漂白用組成物に用いるカルシウムキレート剤としては、カルシウムを化学的に取り込む作用があり歯表面の付着物と結びついて歯表面の付着物を浮かす作用を有するものであれば特に限定されず、クエン酸,グリシン,メタリン酸,トリポリリン酸,テトラポリリン酸,ピロリン酸,オルソリン酸,ヘキサメタリン酸,メタリン酸ナトリウム,トリポリリン酸ナトリウム,テトラポリリン酸ナトリウム,ピロリン酸ナトリウム,オルソリン酸ナトリウム,ヘキサメタリン酸ナトリウム,メタリン酸カリウム,トリポリリン酸カリウム,テトラポリリン酸カリウム,ピロリン酸カリウム,オルソリン酸カリウム,ヘキサメタリン酸カリウム等を例示することができる。
【0016】
本発明に係る歯牙漂白用組成物へのカルシウムキレート剤の配合量は0.5〜10重量%である。カルシウムキレート剤の配合量が0.5重量より少ないと歯表面の付着物を浮かす作用が得られ難く、10重量%を超えて配合すると組成物の安定性が低下する虞があるので好ましくない。
【0017】
本発明に係る歯牙漂白用組成物に用いる酸化亜鉛は、カルシウムキレート剤や後述する過酸化物と反応しない白色顔料であり、歯牙漂白用組成物の安定性を低下させずに組成物に白色を付けることができる。本発明に係る歯牙漂白用組成物への酸化亜鉛の配合量は0.1〜2.0重量%、より好ましくは0.1〜1.0重量%である。酸化亜鉛の配合量が0.1重量%より少ないと組成物の色が薄過ぎて量の確認や識別が困難であり、2.0重量%を超えると着色が強くなり過ぎるばかりか組成物が硬くなりすぎてシリンジからマウスピースへ取り出すのが困難となる。
【0018】
本発明に係る歯牙漂白用組成物に用いられる過酸化水素誘導体は、漂白作用を有する成分の一つであり、マウスピースに盛られて歯牙に装着されたときに唾液中の水分と反応して過酸化水素を発生するか、水溶液としたときに過酸化水素を発生し得るものであれば特に限定されない。具体的には、過酸化水素,過酸化ポリビニルピロリドン,過酸化尿素,過ほう酸ナトリウム,過炭酸ナトリウムを挙げることができる。
【0019】
本発明に係る歯牙漂白用組成物への過酸化水素誘導体の配合量は、過酸化水素換算で2〜25重量%である。2重量%未満ではその効果を得難く、25重量%を超えて配合しても漂白効果に顕著な差が見られず安全性の面からも有利ではない。
【0020】
本発明に係る歯牙漂白用組成物は前記の構成成分を必須とするが、この他、pH調整剤や知覚過敏防止剤,防腐剤や香料等の各種添加剤を漂白効果が損なわれない範囲で任意に含有させても良い。
【実施例】
【0021】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0022】
表1の配合に従い、歯牙漂白用組成物を作製した。
<効果の確認>
表1に示した配合の各歯牙漂白用組成物を専用トレーに取り出した後に歯牙へ装着し、溢れ出たときの取り除きやすさを確認した。
【0023】
<表1> (重量%)

カルボキシビニルポリマー:商品名 カーボポール,日光ケミカルズ社製
ポリビニルピロリドン:商品名 K−90,株式会社日本触媒製
【0024】
実施例1〜実施例14に示した酸化亜鉛が配合された歯牙漂白用組成物は、量を確認しながら適量をマウスピースへ取り出すことができた。また、必要以上に多量に取り出して歯牙へ装着した際に歯牙漂白用組成物がマウスピースから溢れてしまっても使用者が容易に気づいて除去することができた。一方、酸化亜鉛が配合されていない比較例1〜比較例3においては、歯牙漂白用組成物が無色透明であることからマウスピースへ必要以上に多量に取り出してまった。また、マウスピースを歯牙へ装着した際にマウスピースから歯牙漂白用組成物が溢れてしまったときには気が付き難く、透明なので除去もし難かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アルコール:50〜90重量%、多価アルコールに膨潤可能な増粘材:1〜30重量%、カルシウムキレート剤:0.5〜10重量%、酸化亜鉛:0.1〜2重量%から成る歯牙漂白用組成物。
【請求項2】
更に、過酸化水素誘導体を2〜25重量%含む請求項1に記載の歯牙漂白用組成物。

【公開番号】特開2009−242290(P2009−242290A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90338(P2008−90338)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】