説明

歯牙漂白系

少なくとも1種の過酸化物を含むゲルと、少なくとも1種の遷移金属化合物(特に、少なくとも1種の低原子番号遷移金属化合物、さらに特定すると、グルコン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、またはそれらの混合物を含む、少なくとも1種の鉄(II)化合物)を含むゲルとを患者の口腔に適用する、歯牙漂白系および歯牙漂白法が開示される。ゲル化剤も含まれる。過酸化物の活性化により、患者の歯牙が漂白される。系の使用には光の適用を伴ってもよいし、伴わなくてもよい。
系はさらに、必要に応じて、過敏性を処置する可能性を持つ、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、またはそれらの混合物を含む過敏性低減化合物含有の、追加のゲルも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連する出願へのクロスリファレンス〕
本出願は、2004年11月9日出願の米国仮特許出願第60/626,407号“Tooth Whitening Compositions”、2004年11月26日出願の第60/631,121号“Whitening System”、2005年1月22日出願の第60/643,309号“Dental Whitening”、および2005年2月15日出願の第60/653,421号“Whitening System Capable of Effective Whitening Action”の便益を主張し、これらの内容は参照により本開示に含まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、歯牙漂白組成物に関する。特に、本発明は、2成分の歯牙漂白系に関する。
【背景技術】
【0003】
歯牙は、内側の象牙質層と、獲得被膜と呼ばれる保護膜に覆われた、外側の硬いエナメル質層とからなる。歯牙のエナメル層は、いくらか多孔質の表面を形成するヒドロキシアパタイトミネラルの結晶からなる。被膜またはエナメル質は、着色や変色の対象となりうる。エナメル質層が多孔質という性質を持つので、着色成分や変色成分がエナメル質に浸透し、歯牙を変色させると考えられている。
【0004】
人の歯に日常的に接する、または触れる物質の多くが歯牙の"着色"、または"白さ"の減少を起こし得る。特に、食品、タバコ製品、および紅茶やコーヒーといった液体を摂取することで、歯牙の着色が起こる傾向にある。これらの着色または変色物質がエナメル質に浸透し、目に見える歯牙の変色を起こす可能性がある。
【0005】
この問題を解決する一つの手段が、歯牙漂白である。練り歯磨き、ゲル、粉状といった歯磨剤には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の過酸化物、過炭酸塩および過ホウ酸塩、または過酸化水素含有の複合物を含み、活性酸素や過酸化水素を遊離させる漂白剤を含有するものがある。
【0006】
一般的に用いられる歯牙漂白剤は、過酸化水素、過酸化カルバミド(CO(NH2)2 H2O2)または過酸化水素(Perhydrol)‐尿素を含む。尿素類および過酸化水素類は市販の組成物において用いられており、また歯科医も漂白ゲルを用い、一般的に用いられるのは過酸化水素を含むもの(Discus Dental社“DayWhite”として入手可能)、および過酸化水素と過酸化尿素の混合物を含むもの(Discus Dental社“NiteWhite”として入手可能)である。
【0007】
従来技術において、十分に高い粘度と唾液中での難溶解性を有し、歯牙漂白剤が歯面と接触することにより歯面の漂白効果をもたらすことができるよう、患者の歯牙に装着した歯科用トレーを、約2時間を超える期間にわたって大きな機械的圧力が歯科用トレーから歯牙にかからないように維持および保持するのに十分な粘着性を持つマトリックス物質を生成するための、高濃度カルボキシポリメチレン組成物の使用が開示されている。
【0008】
歯牙漂白で得られる漂白の程度は(1)1日あたりのトレーの装着時間の長さ、(2)トレー装着日数、(3)漂白剤に対する歯牙の感受性、および(4)活性過酸化物の濃度に依存する。最大限の漂白のためには、1日あたり約18から20時間程度の処置促進期間をとることが推奨される。
【0009】
一部の漂白組成物に対する懸念の一つは、効果的な漂白のために長い時間が必要とされることである。もう一つは、組成物における高濃度の漂白剤の存在である。これらは共に、処置後に歯牙の過敏性を引き起こす可能性がある。したがって、通常またはより少量の漂白剤でより高い漂白作用をもたらし、より短い時間で効果的な漂白を行うことが可能な歯牙漂白組成物が必要とされる。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、第1の成分が少なくとも1種の過酸化物を含み、第2の成分が少なくとも1種の遷移金属化合物を含んだ口腔へ使用可能な(orally compatible)活性剤を含む、2成分の歯牙漂白系を開示する。遷移金属化合物は、過酸化物の漂白作用を触媒し、標準的またはより低濃度の過酸化物で、改良された漂白作用をもたらす。
【0011】
本発明はまた、第1のゲル成分が少なくとも1種の過酸化物を含み、第2の成分が、少なくとも1種の低酸化状態の遷移金属化合物を含んだ口腔へ使用可能な活性剤ゲルを含む、2成分の歯牙漂白系を開示する。金属化合物は、過酸化物の漂白作用を触媒し、低濃度の過酸化物でより速く、効果的な漂白作用をもたらす。
【0012】
本発明はさらに、第1のゲル成分が少なくとも1種の過酸化物を含み、第2のゲル成分が、少なくとも1種の低酸化状態の遷移金属化合物を含んだ口腔へ使用可能な活性剤ゲルを含む、2成分の歯牙光脱色系を開示する。金属化合物は、過酸化物の漂白作用を触媒し、光の照射によって、標準的またはより低濃度の過酸化物で、より速く効果的な漂白作用をもたらす。
【0013】
本発明の一態様において、過酸化物は、例えば、第1のゲル成分の重量に対し約5%から約35%まで存在する。
【0014】
本発明の他の態様において、活性剤ゲル成分の比率は、例えば、約1:2から約5:1である。
【0015】
本発明の他の態様において、系中の2成分は、2筒シリンジに入れて提供してもよい。一実施形態において、シリンジは、注出用先端部を備えてもよい。他の実施形態において、注出用先端部は、発泡に用いられる。さらなる実施形態において、先端部は、ミキサーを含んでもよい。
【0016】
本発明の更なる態様において、遷移金属化合物は、活性剤ゲル成分の重量に対し、約0.01%から約4%の濃度で存在する。
【0017】
上に開示した組成物のいずれも、非発泡、泡状、または発泡性の状態とすることができ、すべてより速い漂白作用をもたらすことができる。
【0018】
本発明はまたさらに、少なくとも1種の過酸化物を含む第1の成分と、少なくとも1種の遷移金属化合物と少なくとも1種の発泡剤とを含む第2の成分と、を含む2成分の発泡性組成物であって、2成分が結合し半減期が少なくとも約10分の泡が生成される組成物、を開示する。
【0019】
遷移金属化合物は、過酸化物の漂白作用を触媒し、低濃度の過酸化物で、改良された漂白作用をもたらす。
【0020】
一実施形態において、2成分の発泡性組成物は、少なくとも1種の過酸化物の水溶液を含んだ第1の成分と、少なくとも1種の遷移金属化合物と少なくとも1種の固形発泡剤とを含んだ第2の成分と、を含む。
【0021】
他の実施形態において、2成分の発泡性組成物は、少なくとも1種の過酸化物の水溶液と、少なくとも1種の過酸化物安定剤とをイオンスカベンジャーの形態で含んだ第1の成分と、少なくとも1種の発泡剤と、少なくとも1種の遷移金属化合物による過酸化物活性剤とを含んだ第2の成分とを含み、活性剤は、過酸化物の迅速な分解と、発泡剤によらないさらなる起泡作用を促進する。
【0022】
さらに、本発明は、少なくとも1種の過酸化物を含んだ第1の成分と、少なくとも1種の発泡剤と、低酸化状態の遷移金属化合物を含んだ第2の成分とを含み、2成分が結合し、半減期が少なくとも約10分の泡を生成する、光活性化可能な2成分の発泡性組成物を含む。
【0023】
本発明はまたさらに、水相において少なくとも1種の過酸化物を含み、且つ油相において少なくとも1種の遷移金属化合物と少なくとも1種の発泡剤とを含んでおり、この2相が結合して、半減期が少なくとも約10分の泡を生成する、1成分の多相発泡性組成物を含む。
【0024】
一態様において、上述の組成物のいずれにも、単数または複数の歯牙の再石灰化および神経鈍麻を助長するために、再石灰化剤を含めることができる。
【0025】
本発明はまた、2成分の歯牙漂白系を使用する方法であって、
(a) 少なくとも1種の過酸化物を含んだ第1のゲル成分を調製する;
(b) 過酸化物ゲルの漂白作用を触媒できる少なくとも1種の遷移金属化合物を含んだ活性剤ゲルを調製する;
(c) 歯牙へ過酸化物ゲルおよび活性剤ゲルを塗布する;
(e) 歯牙に光を照射する;
ステップを含み、
前記漂白系は、非発泡、泡状、または発泡性の状態とできる方法を提供する。
【0026】
さらに、本発明は、
第1のゲル成分が少なくとも1種の過酸化物を含み、第2のゲル成分が、少なくとも1種の、過酸化物の漂白作用を触媒し、標準的またはより低濃度の過酸化物でより効果的な漂白作用をもたらすための低酸化状態の遷移金属化合物を含む口腔へ使用可能な活性剤ゲルを含む、2成分の漂白ゲルと、
重量比で約3%から約5%のアルカリ金属塩(硝酸カリウムなど)と、約1100ppm以下の濃度のフッ化物イオンの源を含み、2成分の漂白ゲルと同程度の粘度を有する、1成分の粘性ゲルと、
を含む、過敏性低減効果を有する歯牙漂白系を提供する。
【0027】
上記の優位性および他の優位性と併せて、本発明を、以下に示す本発明の実施形態の詳細な説明を以って、最もよく理解することができるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に述べる詳細な説明は、本発明の態様に従って提供される、ここに例示する歯牙漂白組成物の説明を意図したものであって、本発明が準備され利用される唯一の形態を表すことを意図したものではない。以下の説明は、本発明による歯牙漂白組成物の特徴およびその準備と利用のためのステップを示すものである。しかし、この歯牙漂白組成物に含まれる同一または同等の作用と成分は、本発明の趣旨および範囲内に含まれるとされる他の実施形態によっても実現できると理解されたい。
【0029】
特に他に定めない限りは、ここで使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術の当業者に共通に理解されるものと同じ意味を有する。ここで述べるものと同様または同等のあらゆる方法、装置、および材料を本発明の実施または試行に使用することができるが、ここでは例示する方法、装置、および材料について説明する。
【0030】
本開示中で言及する刊行物は参照により、例えば、それらの刊行物に記載され、ここに記載する発明との関連で利用される可能性のある組成物および方法を説明および開示する目的を以って、本開示に含まれる。前述・後述の、および本文全体において記載あるいは議論される刊行物は、あくまでそれらが本願の出願日前の開示であるという理由から提示するものである。本開示のいかなる内容も、本発明者たちの発明がそのような先発明の開示に先立つものではない、という容認とは解釈されるべきものではない。
【0031】
歯冠部は、エナメル質、象牙質、および歯髄からなる。ヒトの口腔において、エナメル質は獲得被膜に覆われている。通常、着色された外観を呈する原因となる歯牙組織は、
エナメル質、象牙質、および獲得被膜である。歯牙のエナメル質は主に、無機質からなり、その大部分はヒドロキシアパタイト結晶の形をとり、さらに、主にコラーゲンという形で約5%の有機物も含みうる。これに対し、象牙質はその20%がコラーゲンを含むタンパク質で構成され、残りは無機質、主に、エナメル質においてみられるのと同様のヒドロキシアパタイト結晶からなる。獲得被膜は、歯牙の表面に連続的に形成される、タンパク層またはタンパクマトリックスである。獲得被膜は強度の機械的清掃によって剥離することがあるが、その後すぐ、迅速に再生する。
【0032】
歯牙の変色は、内因性および/または外因性の着色から生じる可能性がある。着色化合物がエナメル質そして象牙質にまで浸透すると、内因性の着色が発生する。あるいは、そのような着色が歯牙内部の原因によってもたらされる場合もある。この種の着色は、一般的に、化学的方法による歯牙清掃によってのみ除去できる。
【0033】
上記のように、歯牙漂白で得られる漂白の程度は(1)歯牙と漂白剤の接触時間の長さ、(2)処置が行なわれる日数、(3)漂白剤に対する歯牙の感受性、および(4)活性過酸化物の濃度に依存する。最大限の漂白のためには、高濃度の漂白組成物による長時間の処置が一般的に推奨される。高濃度の漂白組成物は監督下にない家庭での使用に勧められないため、このような処置は通常、歯科医院において行なわれる。しかしながら、処置時間が長いことは、通院にも適さない。高濃度の漂白組成物による処置の後に光源を用いた照射を行なう場合でさえ、完了するには1回の通院で通常1時間以上が求められる。家庭での処置では、比較的低濃度の漂白組成物に長時間の処置が伴っても、やはり歯科での処置と同じ良好な結果は得られない。
【0034】
本発明の発明者は、少なくとも1種の過酸化物を含んだ第1のゲル(“過酸化物ゲル”)と、漂白作用を触媒する少なくとも1種の遷移金属化合物を含んだゲル(“活性剤ゲル”)とを含有する2成分の歯牙漂白組成物を含む、漂白組成物を発明した。結果もたらされる組成物は、標準的またはより低濃度の過酸化物でも優れた漂白特性を有する。
【0035】
本発明はまた、他の光活性化可能な漂白組成物と比較して、より短い漂白時間で、より迅速・効果的な漂白作用をもたらす2成分の歯牙漂白組成物も対象とする。
【0036】
典型的な過酸化物ゲルは、金属イオンを含まない過酸化物を含有する。金属イオンを含まない好適な過酸化物の例として、過酸化水素、および過酸化尿素(過酸化カルバミド)、過酸化グリセリル(glyceryl peroxide)、 過酸化ベンゾイルなどを含む有機過酸化物がある。一般的に、過酸化水素、過酸化カルバミド、およびそれらの混合物が用いられるが、より広く用いられるのは過酸化水素である。漂白ゲル中に存在する過酸化物の総量は、例えば、過酸化物ゲルの重量に対して約5%から約35%、さらに例示すれば、過酸化物ゲルの重量に対して約10%から約32%、さらにまた例示すれば、過酸化物を含むゲルの重量に対して約12%から約25%の範囲をとる。
【0037】
過酸化水素を使用する際には、通常50%水溶液として用意する。単独で使用される際に、その量は例えば、約10%から約60%(乾燥重量で5%から30%)、さらに例示すると、約20%から40%(乾燥重量で10%から20%)におよぶ。
【0038】
一方、過酸化カルバミドを用いる場合には、例えば、過酸化水素と組み合わせて、約9%から約20%、さらに例示すれば、約5%から約16%の量で用いる。一方、過酸化水素も含まれる場合は、例えば、50%水溶液として用意され、通常約5%から約50%(乾燥重量で2.5%から25%)の量で含まれる。
【0039】
上述のように、本発明による組成物は、非発泡、泡状、または発泡性の組成物とすることができる。一般的に、泡状の組成物は、非発泡の組成物中に存在するものと比べ、同等またはより高濃度の過酸化物を含んでよい。一方、発泡性の組成物は、発泡後の過酸化物の濃度が標準的なゲル中に存在するのと同等またはより高濃度となるよう、未発泡の状態でより高濃度の過酸化物を含んでもよい。発泡性の組成物では、上述した過酸化物の量は、発泡後の状態に含まれるものとしてもよい。
【0040】
エチレンジアミン四酢酸の塩、ジエチレントリアミン五酢酸の塩、Monsanto Chemical Companyから入手可能なDequest(商標)のようなホスホン酸塩、および2’,2’-ジホスホン酸アザシクロヘプチルのような金属イオン封鎖剤が、通常、過酸化物を含む組成物中に存在する可能性のある金属イオン(例えばFe(III)、Mn(II)、Cu(II))をキレートすることによって過酸化物を含む組成物を安定させる、キレート剤として使われる。少量の遷移金属化合物が漂白組成物の活性剤ゲル成分中に存在すると、驚くべきことに、その化合物は、漂白組成物の過酸化物ゲル成分の触媒剤として働き、1種または複数種の過酸化物が、歯科で通常用いられる標準的な濃度、またはそれよりも低い濃度で存在する場合でも、同じ効果を得るのに必要な時間が、例えば少なくとも約15%、さらに例示すれば、少なくとも約20%、さらにまた例示すれば、少なくとも約25%短縮される。
【0041】
典型的な遷移金属は低原子番号のものであって、例えば原子番号21から30におよぶ低原子番号の遷移金属を含む。また、有用なものとしては、低酸化状態のもの、例えば、鉄(II)、マンガン(II)、コバルト(II)、銅(II)、およびそれらの混合物、さらに例示すれば、鉄(II)が含まれる。
【0042】
特定の理論に拘束されることは意図しないが、上述の遷移金属化合物は、フェントン反応や光フェントン(photoFenton)反応に参与し、低酸化状態の遷移金属、例えばFe(II)が、過酸化水素などの過酸化物と、熱によって、または光の照射によって反応し、下に例示するように、過酸化物からのヒドロキシラジカル、ペルヒドロキシアニオン、またはスーパーオキシドラジカルのような活性漂白種の解離を促進すると推測される。
H2O2 + Fe2+ --> Fe3++ HO- + HO*
【0043】
驚くべきことに、低酸化状態の遷移金属は、下に例証するように漂白作用において再生されるので、ごく少量の遷移金属化合物、例えば重量比で約0.01%から約4%、さらに例示すれば、約0.03%から約2%、さらにまた例示すれば、重量比で約0.04%から約1%、のみが必要とされる。
HO* + Fe3+ --> HO++ Fe2+
【0044】
さらに、遷移金属化合物は、ゲルから沈殿せず溶液中に留まっている状態で最も効果を発揮すると推測される。したがって、遷移金属化合物が、過酸化物ゲルと混合された後の活性剤ゲル成分に良好な溶解度を有するよう、アニオンを選択してもよい。このアニオンは、グルコン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、およびそれらの混合物を含んでもよい。また、アニオンのキレート作用は、過酸化物の分解を触媒するのではなくむしろ過酸化物を安定させる傾向があるが、触媒作用には全く関与しないと推測される。よって、グルコン酸イオンは遷移金属とキレートする能力を持つものの、単に遷移金属の溶解度を助長するために含まれており、そのキレート効果は無視してよい。
【0045】
活性剤ゲル中に存在する遷移金属化合物の量も、それらの溶解度に影響を及ぼす。可溶性の化合物が、よりよい触媒となる傾向がある。したがって、上述のように、有用な(usefuel)遷移金属化合物は溶液から沈殿しないものと推測される。幸い、この種の化合物は、少量で効果を奏する。遷移金属化合物を可溶性および低濃度とする効果により、過酸化物ゲルの漂白作用が向上される。
【0046】
過酸化物とゲルの安定性をともに改良するため、他の成分を加えてもよい。これらはゲル化剤、ゲル安定剤、界面活性剤、強イオン成分を有するあらゆる化合物、pH調製剤、湿潤剤を含み、また、ゲル安定性を向上するその他の補助剤を過酸化物ゲルおよび活性剤成分双方に加えることができる。
【0047】
ゲル化剤の例には、親水性部分と疎水性部分双方を有する、例えばエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマーなどの、非イオン性界面活性剤が含まれる。コポリマーは、プロピレンオキシド(疎水性成分)とエチレンオキシド(親水性成分)のブロックコポリマーであってもよい。プロピレンオキシドブロックは、通常、2つのエチレンオキシドブロックに挟まれている。このような疎水性成分と親水性成分を有する非イオン性界面活性剤は、疎水性部分および親水性部分を増分的に変えていくことにより、文字通り何百もの形が考えられる。さらに、エチレンオキシド/プロピレンオキシドのヘテロ構造または交互構造を、分子の内部または末端に導入してもよい。一般に使用されるものには、BASF社(North Mount Olive, New Jersey, USA)から入手可能なPluronic F-127、P-84、またはそれらの混合物が含まれる。
【0048】
過酸化物ゲルおよび活性剤ゲル双方の調製に適したその他のゲル化剤には、例えば、他の非イオン性界面活性剤、例えば有効な疎水性部分の数が制限されており、親水性部分の変更によってのみその界面活性能力を変化させる種類が含まれ、適している。
【0049】
漂白ゲルの調製に用いることのできるさらにその他のゲル化剤は、安定したゲルを提供できる量の、例えばセルロースガム、フュームドシリカ、例えばCabot社提供のCAB-O-SILフュームドシリカ、および乳化ろう、例えばCroda社提供のPolawax(乳化ろうNF)またはCrodafos CES (セテアリルアルコール(および)リン酸ジセチル(および)セテス-10リン酸)、およびそれらの混合物を含む。セルロースガムの例として、Hercules社のヒドロキシメチル‐プロピルセルロース(hydroxymethyl propylcellulose)、Klucel GFがある。
【0050】
ゲル中に存在する界面活性剤の量によって、ゲル生成の可否とともに、ゲル安定性が決まる。ゲル化剤が少なすぎてはゲルが全く生成されない可能性がある。ゲル化剤が多すぎると、ゲル形成が不可能である。ゲル化剤が適切な範囲内で含まれると、安定したゲルが生成される。ゲル化剤中の疎水性成分の典型的な割合は、例えば、約10%から約80%、さらに例示すれば、約30%から約60%、さらにまた例示すれば、約31%から約38%、そしてさらにまた例示すれば、約33%から約36%におよぶ。
【0051】
例えば、非イオン性界面活性剤は、安定した歯牙用過酸化物ゲルを提供できる量であって、例えば、過酸化物の重量に対し例えば約15%から約45%、さらに例示すれば、重量比で約20%から約40%、にわたる量で含んでもよい。活性剤ゲル成分において、非イオン性活性剤は、例えば約15%から約30%、さらに例示すれば、約20%から約25%含んでもよい。
【0052】
総分子量も様々にすることができる。例えば、分子量は、約300から約20,000、さらに例示すれば、約5,000から約12,000の範囲とすることができる。
【0053】
上述のように、ゲルの安定性を補助するために加えることのできるその他の成分として、強イオン成分を有するあらゆる化合物を含んでもよい。典型的なものは、アルカリ化合物、(例えば硝酸カリウム等のカリウム化合物、および硝酸ナトリウム等のナトリウム化合物)、ビタミンE油、アニス、オイゲノール、天然ミント香料、またはそれらの混合物を含む。効果的であるがあまり好んで用いられないものには、重金属-ハロゲン化合物(heavy metal halide)、特に塩素含有化合物、が含まれる。
【0054】
例えば、ビタミンE油、アニス、オイゲノール、天然ミント香料、およびそれらの混合物のような不溶性安定剤を、漂白ゲル中の両成分に、ゲル形成の安定性を補助するために加えてもよい。
【0055】
例えば、安定剤の合計重量%は、過酸化物ゲルにおいては、例えば約1%から約20%、さらに例示すれば、約0.25%から約5%、さらにまた例示すれば、約0.5%から4%、さらにまた例示すれば、約1%から約3%、活性剤ゲルにおいては、例えば約1%から約20%、さらに例示すれば、約2%から約15%、さらにまた例示すれば、約4%から約12%にわたる。
【0056】
アルカリ金属(例えば硝酸カリウムを含むカリウム化合物、およびナトリウム化合物)を加える際は、過酸化物ゲルを安定させ、ゲルの保存期間を延ばすため、範囲内のより多い量で含んでもよい。硝酸カリウム等、後に詳述するようにゲルの過敏性低減効果を高めるものもある。
【0057】
例えば、過酸化物ゲルは、カルシウム、ストロンチウム、またはそれらの組み合わせの源も含むことができる。過酸化物成分中のカルシウム、ストロンチウム、またはそれらの組み合わせの源は、例えば、カルシウム化合物、ストロンチウム化合物、またはそれらの混合物、さらに例示すれば、硝酸カルシウムを、重量比で例えば約0.25%から約1.5%、さらに例示すれば、重量比で約0.3%から約1%含んでもよい。
【0058】
カルシウム化合物が過酸化物を含むゲル中に存在する場合は、活性剤ゲルにも、例えばリン酸イオンの源を含めるのが有用である。例えば、活性剤ゲル中のリン酸イオンの源は、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸水素二ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、またはそれらの混合物を含んでもよい。リン酸イオンの源は、例えば、重量比で約0.2%から約5%、さらに例示すれば、約0.2%から約4%の量で含めることができる。
【0059】
2つのゲル成分が混合されると、リン酸イオンの源と結合し、各種アモルファスリン酸カルシウムおよび/またはアモルファスリン酸ストロンチウムを形成する。
【0060】
アモルファスカルシウム化合物、例えばアモルファスリン酸カルシウム(ACP)、アモルファスフッ化リン酸カルシウム(ACPF)、アモルファス炭酸リン酸カルシウム(ACCP)、アモルファス炭酸リン酸カルシウム(ACCP)、アモルファスフッ化炭酸リン酸カルシウム(ACCPF)が、歯牙の再石灰化促進に有用である。これらのアモルファス化合物は米国特許第5,037,639、 5,268,167、 5,437,857、 5,562,895、 6,000,341、 6,056,930号に開示されており、各々の開示内容は参照によって全体が本開示に含まれる。
【0061】
アモルファスカルシウム化合物に加えて、アモルファスストロンチウム化合物、例えばアモルファスリン酸ストロンチウム(ASP)、アモルファスフッ化リン酸ストロンチウム(ASPF)、アモルファスリン酸ストロンチウムカルシウム(ASCP)、アモルファス炭酸リン酸ストロンチウムカルシウム(ASCCP)、アモルファスフッ化炭酸リン酸ストロンチウム(ASCPF)、アモルファスフッ化炭酸リン酸ストロンチウムカルシウム(ASCCPF)を、上述のように再石灰化に用いてもよい。これらの化合物は米国特許第5,534,244号に開示されており、その内容は、参照によって全体が本開示に含まれる。
【0062】
アモルファスリン酸カルシウムまたはその他上述のものを歯牙に塗布すると、参照により本開示に含まれる上述の米国特許第5,037,639、 5,268,167、 5,460,803、 5,534,244、 6,000,341、 6,056,930に記載のように、歯面に沈着してヒドロキシアパタイトと混じりあい、歯牙のエナメル質の再石灰化を助長する。
【0063】
上記の化合物のうちいくつかは、歯のフッ化物処理にも利用できる。上のすべてのアモルファス化合物、またはアモルファス化合物を形成する溶液は、歯の組織上または組織内に適用されると、さらに、虫歯、歯根の露出、および象牙質過敏性のような歯牙の欠陥の防止、および/または修復を補助する。
【0064】
驚くべきことに、組成物中に含まれるアモルファスカルシウム化合物および/またはアモルファスストロンチウム化合物は、過敏性低減剤としての作用も持つ。実際に、本発明の発明者たちは、アモルファスリン酸カルシウムのもたらす神経鈍麻効果は、後述のものを含む通常用いられる典型的な神経鈍麻剤以上、さもなくば少なくとも同程度であることを発見した。したがって、アモルファスカルシウム化合物またはアモルファスストロンチウム化合物を含むことにより、従来の神経鈍麻剤の代替とできる可能性がある。
【0065】
実施上は、可能な限りまたは使用できる限りのリン酸塩を用いてよい。ただし、リン酸二水素ナトリウムが重量比で約4%を超える量で含まれると、ゲルの安定性に影響を及ぼす可能性がある。
【0066】
驚くべきことに、上述の範囲において存在する第1の成分中のリン酸塩成分は、ゲルの安定化の作用も持つ。その量は重量比で例えば約0.5%から約5%、さらに例示すれば、重量比で約1%から約4%の範囲とすることができる。それを超える量になると、安定化効果は徐々に減少する。リン酸二水素ナトリウムについては、重量比で約4%を超える量で含まれると、ゲルの安定性に影響を及ぼす可能性がある。
【0067】
また、リン酸塩はさらに第1の成分のpH調整の作用も持つ。系のpHは、例えば約5から約8、さらに例示すれば、約5.5から約6.5とすることができる。
【0068】
本発明の一実施形態において、活性剤ゲルは、例えば、約2から約7、さらに例示すれば約3から6、さらにまた例示すれば、約3から約5.5のpHを有する。遷移金属化合物を溶液から沈殿させないために、低いほうのpHを活性剤ゲルに適用してもよい。また一方で、高pHでも遷移金属化合物が沈殿しないように、何らかの化合物を加えてもよい。これには、グリコン酸(glyconic acid)、没食子酸、またはそれらの混合物が含まれる。通常、没食子酸が、高pHへの添加物として使われる。
【0069】
上述のように、活性剤ゲルのpHが低いほど、遷移金属化合物が沈殿する可能性が低くなる。しかしながら、低pHであると歯牙の脱灰の原因となる可能性がある。本発明では、アモルファスリン酸カルシウムまたはその他上述のものの添加、短い接触時間、および過酸化物を低濃度とすることにより、約1から約3という低pHを組成物に適用することができる。いずれの要素も、またそれらの組み合わせも、脱灰作用の低減を補助することができる。
【0070】
ゲルの安定性を向上するために加える追加の成分を、一方もしくは両方の成分に添加してもよい。
【0071】
PLURONIC(登録商標)製品の製造者によれば、プロピレングリコールやエチレングリコールのようなグリコール類は、生成したPLURONIC(登録商標)ゲルを分解させる傾向があるため、推奨されない。従って、いかなるプロピレングリコールも含むことは望ましくなく、過酸化物ゲル中の湿潤剤は、通常いかなるグリコール類も含まない。
【0072】
驚くべきことに、活性剤ゲルの処方においては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、またはそれらの混合物のようなグリコールは、実に、ゲル形成および安定性を助長することができる。例えば、重量比で約5%から重量比で約20%、さらに例示すれば、重量比で約10%から約15%という量を適用できる。加えて、その他の無毒性グリコールが使用されてもよい、または、含まれていてもよい。
【0073】
2成分が混合されると、驚くべきことに、活性剤ゲルに含まれるいかなるグリコールも混合されたゲルの安定性に影響を及ぼさず、漂白ゲルはあたかもグリコールを全く含んでいないかのように、塗布することができる。
【0074】
過酸化物を含むゲルに用いられ、ゲルを改良するポリオールの例は、重量比で約1%から重量比で約10%、さらに例示すれば、重量比で約2%から約5%の量の、脂肪族ポリオールも含む。典型的なポリオールとしてグリセリン(Merck Index #4493, 12th Ed.)を、重量比で約2%まで含んでもよい。活性剤ゲルでは、グリセリンのような脂肪族ポリオールを、例えば重量比で約2%から重量比で約15%、さらに例示すれば、重量比で約4%から12%の量で含んでもよい。
【0075】
熱、光、および/または化学物質の付加に加え、漂白過程において得られる漂白の程度は上述のように、一般的に(1)歯牙が漂白剤に接触している時間の長さ、(2)処置の行われる日数、(3)漂白剤に対する歯牙の感受性、および(4)活性過酸化物の濃度、に依存する。最大限の漂白のためには、前述のように、高濃度の漂白組成物を用いた長時間の処置が一般的に推奨される。
【0076】
過酸化物の漂白活性は、一般的に組成物に含まれる過酸化物の実際の濃度ではなく、活性過酸化物の利用度(availability)によって決定される。過酸化物が溶液中に存在する場合は、利用度は高い。しかし溶液は性質上、患者の歯に塗布した際保持が容易でなく、そして/または、やはり所望の位置に一定の時間定着させておくのが難しいので、作用を持続させるためには扱いにくい。したがって、より長い接触時間を必要とする低濃度の過酸化物溶液は、溶液という環境下では実用的でない。溶液の過酸化物濃度をより高くしても、漂白効果は高くなるが、定着と長時間にわたる接触の問題を解決できないため、やはり溶液という環境には適さない。また、患者の口腔内の軟組織に接触する高濃度の過酸化物溶液は、組織損傷を起こす可能性がある。したがって、組成物を定着させ効果的な漂白作用を維持しつつ組織損傷の可能性が最小限となるよう、非発泡の系について前述したように、さまざまなゲル化剤、増粘剤、粘着促進剤(adhesion promoter)、および/または同様の添加物を使用してもよい。これにより、ペースト状、ゲル状、および同様の形状の、効果的な漂白系が生成される。使用される添加物の中には、組成物の保持と漂白作用に関しては効果的であるが、特に組成物がアクリル酸のポリマー(カルボマー)由来の増粘剤または粘着促進剤、ピロリドン類増粘剤(pyrrolidone analog thickeners)、またはその他を含む場合、活性過酸化物の利用度を低めることにより漂白活性をいくぶん減少させるものがあると推測されている。そのような添加物は、ゲル内でのイオン相互作用および共有結合相互作用による過酸化物の漂白活性の低下を招き、歯牙漂白に望まれる効果に対し不利に働く可能性がある。
【0077】
泡状とすることが、上述の添加物を使用せずに、定着性を高める手段となりうる。泡状の組成物はまた、活性過酸化物の活性をいくらか妨げてしまうような可能性のある添加物を多量に含むことなく長時間の接触を可能にし、漂白活性をさらに高めることができる。泡は、同量またはより多量の活性成分、およびより少量の非活性成分を含むよう調合してもよい。所定の体積で考えて、ゲル化剤、増粘剤、粘着促進剤などの非活性成分の量が、無発泡の状態と比較して、発泡した状態においてより少ない量となるようにしてもよい。理論に拘束されることは意図しないが、空気がゲル化剤、増粘剤、粘着促進剤、またはそれらの混合物のような非活性成分の機能を果たし必要な定着性を与えながらも、非発泡のゲルの定着性のために必要とされる量の他の非活性成分と比べ、空気分子が同じ程度まで活性過酸化物の利用度を妨げることは通常ない、と推測されている。したがって、泡状の組成物はゲル化剤、増粘剤、粘着促進剤あるいは同様の非活性成分をより多く含む組成物と同じ定着性を持つが、過酸化物の存在する濃度が同じ場合でも、漂白作用のための活性過酸化物の利用度がより多くなる。つまり泡状とすることにより、実質的にゲル化剤の代わりに気泡を利用して定着性を作り出すことができる。
【0078】
このように、本発明による泡状または発泡性の組成物は、溶液の場合における問題を起こすことなく、必要に応じて漂白活性の度合いを高めることができる。泡状の組成物は使用中、定着の問題なく扱いやすいだけでなく、活性過酸化物の利用度を妨げないためより高濃度の活性過酸化物を供給することができる。同時に、目に見えない隙間に浸透したりして溝を埋めることにより、歯牙の前面だけでなく歯間の表面にも効果的な漂白作用をもたらすことができる。したがって、目下他の漂白系には与えられていないあらゆる利点が、泡状とすることにより提供できる可能性がある。
【0079】
泡にすると、一般的に、無発泡の状態よりも表面張力が低くなるので、単分子の厚さの膜程度にまで薄く広がることができ、同時に表面積がより大きくなることにより、無発泡の状態と比べ、同量の漂白組成物でもより広範囲を覆うことができる。表面張力を低下させる能力によって、着色汚れの除去を容易にすることもできる。
【0080】
毛管作用の力と表面張力のため、発泡させた泡自体が良好な湿潤剤でもあり、上述のようにより小さな隙間に漂白溶液を浸透させることができる。また、様々な大きさと形の泡が分布することにより、ごく微小な箇所への迅速な浸透が可能となる。このように、泡とすることによって、活性過酸化物分子をさらに深く浸透させることが可能となる。
【0081】
さらに、活性過酸化物が発泡物中の気泡に内包されると推測される。気泡が崩壊すると、内部の活性過酸化物が放出され、漂白作用を発揮する。
【0082】
泡の生成は、何らかの撹拌または泡立動作、発泡剤の使用、およびそれらの組み合わせによって行うことができる。実施形態によっては、泡が直前に生成されるよう組成物を発泡性とするために、発泡剤を含んでもよい。発泡剤によっては、より大きな表面積に広がらせることにより、固体表面へのゲルの粘着性増加を促進することもできる。他の実施形態においては、発泡剤を用いて、または発泡剤を用いずに、使用の直前に撹拌によって泡を生成してもよい。
【0083】
このように、組成物によっては、少なくとも1種の発泡剤を含む。様々な種類の発泡剤が適しており、異なった方法で泡を生成することができる。好適な発泡剤は、アニオン性、非イオン性、両性、双性、カチオン性、またはそれらの混合物などの何らかの界面活性剤を含むことができる。
【0084】
これらのうち泡の生成を促進するものとしないものがある。その起泡性によってのみ有用な界面活性剤もあれば、起泡せず乳化剤または湿潤剤としてのみ作用するものもある。また、発泡を減少させる働きをするものすらある。界面活性剤の機能は、属する種類によって決定されるとは限らない。
【0085】
アニオン性界面活性剤は、アルキル基の炭素原子数が約8から約20であるアルキル硫酸の水溶性化合物(アルキル硫酸ナトリウム等)、炭素原子数約8から約20である脂肪酸のスルホン化モノグリセリド(sulfonated monoglyceride)の水溶性化合物、およびそれらの混合物を含むが、これに限定されるものではない。アニオン性界面活性剤の例として、ラウリル硫酸ナトリウム、ココナッツモノグリセリドスルホン酸ナトリウム(sodium coconut monoglyceride sulfonates)、リン脂質、ラウリルサルコシン酸ナトリウムなどのサルコシン酸塩、タウリン酸塩、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム、およびドデシルベンゼン硫酸ナトリウムがある。このようなアニオン性界面活性剤の多くが米国特許第3,959,458号に開示されており、その内容全体が参照により本開示に含まれる。
【0086】
非イオン性界面活性剤は、親水性部分と疎水性部分を含む化合物(アルキレンオキシド基(性質上親水性)と、性質上脂肪族またはアルキル化芳香族である疎水性有機化合物との縮合によって生成できる)を含んでもよいが、これに限定されるものではない。好適な非イオン性界面活性剤の例として、低粘度のポロクサマー類(商品名Pluronicで販売)、低粘度のヒドロキシエチルセルロース、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンソルビタンエステル類(商品名Tweensで販売)、脂肪族アルコールエトキシラート類、アルキルフェノール類のポリエチレンオキシド縮合物、プロピレンオキシドとエチレンジアミンとの反応生成物とエチレンオキシドとの縮合から誘導される生成物、脂肪族アルコールのエチレンオキシド縮合物、長鎖第三級アミンオキシド類、長鎖第三級ホスフィンオキシド類、長鎖ジアルキルスルホキシド類、およびそれらの混合物を含む。
【0087】
両性界面活性剤としては、脂肪族部分が直鎖または分岐で、脂肪族置換基の1つが約8から約18の炭素原子を有し、かつ1つがアニオン性の親水性化置換基を有する、例えばカルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、ベタイン、具体的にはコカミドプロピルベタイン、およびそれらの混合物を含む、脂肪族第二級および第三級アミン誘導体があるが、これに限定されるものではない。
【0088】
これら非イオン性および両性界面活性剤の多くが米国特許第4,051,234号に開示されており、その内容全体が参照により本開示に含まれる。
【0089】
本発明において、例示された界面活性剤は、発泡性の組成物中に用いられた場合、起泡能力を持つだけでなく湿潤剤として作用する能力も持つものである。
【0090】
実際には、何らかの非対称分子が水に溶解すると、少なくとも弱い界面活性剤ができる。そのような弱い界面活性剤は、通常効果的な発泡剤とはならない可能性があるが、起泡用の注出手段を用いればその効果を向上させることができる。本発明で用いられる非対称分子は、上記の非イオン性界面活性剤のうちいくつかのように、親水性部分と疎水性部分を持つものを含む。そのような分子の一方の側はつまり性質上極性を持ち、水に溶けるが、もう一方の側は無極性であり、水を避ける。水中で、界面活性剤分子は極性を持つ側を水分子に向け、無極性の側が無極性分子を誘引できるようにした。本発明による泡状または発泡性の組成物においては、無極性の側が歯面の着色汚れの浮上を促進し、水で洗い流すことを可能にする、と推測されている。
【0091】
発泡剤の量は、例えば発泡性の組成物の重量比で約0.1%から約5%、さらに例示すれば、重量比で約0.5%から約3%、またさらに例示すれば、重量比で約1%未満という範囲をとることができる。
【0092】
他の発泡剤は、酸と塩基の反応生成物を含んでもよい。反応生成物は、例えば、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウムのようなアルカリ金属炭酸塩もしくはアルカリ金属重炭酸塩、または重炭酸マグネシウム、重炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムもしくは炭酸カルシウムのようなアルカリ土類金属炭酸塩もしくはアルカリ土類金属重炭酸塩を含む。使用する量は、例えば重量比で約1%から約10%、さらに例示すれば、約3%から約7%、またさらに例示すれば、組成物の重量に対して約3.5%から5.5%の範囲をとってもよい。使用する量は、必要な泡の量にもよる。このように、発泡剤の量を変えることにより、生成される泡の量もそれに応じて変化させることができる。
【0093】
一般的に、酸と塩基の比率は、例えば、重量比で約1:0.5から1:25、さらに例示すれば、約1:1から1:4の範囲をとる。好適な酸は、水溶性のカルボン酸、リン酸、硝酸、および/または硫酸のような強酸を含む。
【0094】
また、発泡剤はガス状物質でもよい。ガス状物質は、不活性ガス、または塩基性の過酸化水素溶液と酸性の溶液の混合により生成されるガスであってもよい。
【0095】
漂白作用は活性過酸化物が歯牙と接触した際に起こる為、例えば泡を使用直前に生成するならば、泡はそれほど長時間持続するものでなくてもよい。活性成分が気泡に内包されると推測するならば、泡は持続するものとし、もたらされる液体の量、つまり泡状物質中の気泡の崩壊による活性過酸化物の放出を制御して、バランスを取るようにしてもよい。したがって、例示された組成物は発泡性であるだけでなく、より長い持続性と、崩壊性を持つ泡を生成する能力も備えるものである。
【0096】
発泡性の組成物から生成される泡の半減期は一般的に、例えば、少なくとも約10分、さらに例示すれば、約10分から約120分である。泡の半減期が10分であるということは、生成から10分の間に50%の気泡が崩壊し内包されていた漂白剤が放出される、または泡の体積が50%減少し、約20分の間に気泡の75%が崩壊している、または泡の体積が75%減少するということを意味する
【0097】
泡の崩壊時間または半減期は多くの要因によって決まる。例えば、生成される泡の量が多いほど崩壊時間は長くなる。また、増粘剤および/または他の不活性成分の粘度が低いほど崩壊時間は短くなる。崩壊時間は、組成物中の他の添加物で、例えば界面活性剤や防腐剤などの界面活性をもつものの性質、および環境にも依存する。例えば、より乾燥した環境では気泡の崩壊がより速くなる可能性がある。
【0098】
泡状の組成物においては、崩壊性を持つ泡を容器に封入した際の半減期は一般的に非常に長くなっており、例えば少なくとも1ヶ月、さらに例示すれば、少なくとも3ヶ月である。使用中、発泡物中の気泡の崩壊は、水または溶媒の周囲への流出、および患者の口腔内の唾液などの状況によって促進される。包装は、包装または容器が開封され、中身が空気と接触した後に泡状の組成物が所望の保存期間を有するよう設計してもよい。使い捨て包装を設計してもよい。
【0099】
例えば、低粘度のゲル化剤または増粘剤を用いてもよい。それらが活性過酸化物の利用度を、高粘度のゲル化剤と同じ程度妨げる可能性は低い。粘度は例えば、通常約10,000cps未満、さらに例示すれば、約8,000cps未満、またさらに例示すれば、約5,000cps未満である。
【0100】
好適な発泡剤は、主要発泡剤として少なくともラウリル硫酸ナトリウムをいくらか含む発泡性の界面活性剤を含む。
【0101】
上述のように、持続性、つまり製品が残存する能力はあらゆる漂白用組成物において望ましい性質のひとつである。一方、容易に洗い流せる性質が製品に望まれているのであれば、発泡性の界面活性剤の使用は想定されない。しかしながら、一般的に漂白組成物は、持続性と洗い流しの容易さの双方を備えていることが望まれる。それが望まれている場合、起泡用の注出用先端部、または起泡用のミキサーを含む注出用先端部である“泡立てポンプ”において生成した泡を用いてもよい。そのような起泡手段によっても、例えば0.5%未満といった最小限の界面活性剤を用いながら、望ましい性質を備えた泡を生成することができる。同時に、所望の効果をもたらすために、他の発泡剤を添加するなどして添加物を組み合わせることも選択できる。
【0102】
ゲルは周知の方法のいずれかを用いて調製することができる。典型的には、過酸化物ゲルを調製する際には、過酸化物と、グリセリン等の安定化用ポリオールと、過酸化物を所望の濃度とするのに十分な量の水とが完全に混和された後、任意の化合物、例えば硝酸カルシウムおよび/または硝酸カリウムが添加され、完全に溶解するまで高速で混合される。PLURONIC(登録商標)F-127等のゲル化剤は、完全に分散し、生成される組成物の性状がほぼホイップ状となるまで、高速で添加される。
【0103】
オイゲノールおよび/または天然ミント香料、好ましくは不希釈のものが次に加えられ、漂白ゲルを増粘させる。このゲルを外界温度で約30分から約40分、または所望の粘度がもたらされるまで混合し、真空脱ガスを行う。
【0104】
あるいは、オイゲノールおよび/または天然ミント香料を追加した後、過酸化物ゲルを、ゲル化剤を液化するのに十分な低い温度、PLURONIC(登録商標)F-127を用いる場合は約10°Fで貯蔵し、ゲルに封入されている空気を表面へ上昇させ、気泡としてすくい取るか、真空脱ガスによって除去してもよい。
【0105】
過酸化物ゲルにおいては、水が例えば重量比で約10%から約20%、さらに例示すれば、約13%から16%含まれる。活性剤ゲルでは、水が例えば重量比で約30%から70%、さらに例示すれば、重量比で約40%から約60%含まれる。
【0106】
漂白系の両成分は、実質的に研磨剤を含まないものとすることができる。
【0107】
本発明の実施に伴い提供される過酸化物ゲルの、限定ではない例は、以下の通りである:
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【0110】
【表3】

【0111】
【表4】

【0112】
【表5】

【0113】
【表6】

【0114】
【表7】

【0115】
【表8】

【0116】
【表9】

【0117】
【表10】

【0118】
【表11】

【0119】
【表12】

【0120】
【表13】

【0121】
【表14】

【0122】
【表15】

【0123】
【表16】

【0124】
【表17】

【0125】
【表18】

【0126】
【表19】

【0127】
【表20】

【0128】
【表21】

【0129】
【表22】

【0130】
【表23】

【0131】
【表24】

【0132】
【表25】

【0133】
【表26】

【0134】
【表27】

【0135】
【表28】

【0136】
活性剤ゲルを調製する方法の例は、以下の通りである:活性剤ゲルを調製するには、鉄(II)化合物の水溶液を、好ましくは硝酸カリウムと、リン酸二水素ナトリウムと、活性剤ゲル中の成分の所望の濃度を得るのに十分な量の水と組み合わせ、すべての成分が完全に溶解するまで混合する。混合物をリン酸水素二ナトリウムなどのpH調整剤を用い滴定し、所望のpHにする。
【0137】
グリセリンおよび/またはその他のポリオール類を、プロピレングリコールとともに混合物に加え、溶解するまで混合する。それからゲル化剤を混合物に高速で混ぜ入れ、固いゲルを生成する。最後に、天然ハッカ油など何らかの天然ミント香料をゲルに混ぜ入れ、活性剤ゲルをさらに固くする。ゲルは外界温度で約30分から40分、または所望の粘度が得られるまで混合された後、約75から100Torr、例えば100Torr未満で真空脱ガスされる。
【0138】
本発明の実施にともない提供される活性剤ゲルの、限定ではない例は、以下の通りである:
【0139】
【表29】

【0140】
【表30】

【0141】
【表31】

【0142】
【表32】

【0143】
【表33】

【0144】
【表34】

【0145】
【表35】

【0146】
【表36】

【0147】
【表37】

【0148】
【表38】

【0149】
【表39】

【0150】
【表40】

【0151】
【表41】

【0152】
【表42】

【0153】
【表43】

【0154】
【表44】

【0155】
【表45】

【0156】
上のいずれか、もしくは全ての処方、または前述した組成物のいずれも、泡状とすることができる。実施形態によっては、発泡剤を加えてもよい。
【0157】
本発明による歯牙漂白組成物を包装するにあたっては、使用前に過酸化物ゲルと活性剤ゲルを分離しておくために都合のよいいかなる方法を利用してもよい。例えば、単一の容器を隔室で仕切り、過酸化物ゲルと活性剤ゲルを別個の隔室に封入し、同時に注出して歯牙への塗布前に混合してもよい。または、過酸化物ゲルと活性剤ゲルを別個の容器に封入し、各相を容器から注出して使用直前に混合してもよい。包装の例は米国特許第5,819,988、6,065,645、6,394,314、6,564,972、および6,698,622号に開示されており、参照により本開示に含まれる。また、注出器は起泡用の撹拌器またはポンプを備えてもよい。
【0158】
記載されるすべての包装方法において、シリンジまたは2室容器は、注出用先端部、またはミキサーを有する注出用先端部を備えてもよい。ミキサーはダイナミックミキサーでもスタティックミキサーでもよい。スタティックミキサーの例は、参照によって本開示に含まれる、米国特許第5,819,988、6,065,645、6,394,314、6,564,972、6,698,622号に同じく開示されているものを含む。ダイナミックミキサーの例は、参照によりその内容が本開示に含まれる、米国特許第6,443,612号、および6,457,609号、ならびに米国特許公開第2002/0190082号に開示されているものを含む。
【0159】
本発明の典型的な一実施例、2成分は2筒シリンジ(two barrel syringe)の別個の区画に入れて提供することができる。使用直前に、シリンジを作動させることにより、2成分が例えば1:2から5:1の割合(過酸化物ゲル対活性剤ゲル)で混合され、さらに例示すれば、ゲルは4:1の割合で混合される。混合した漂白ゲルはシリンジから直接歯面に塗布される。本発明は、漂白ゲルにおいて最終的に望まれる過酸化物の濃度によって、過酸化物ゲルと活性剤ゲルのその他の組み合わせ方も想定する。典型的には、漂白ゲル中の過酸化物の濃度は、例えば、上述のように約5%から約45%、さらに例示すれば、約10%から約40%である。
【0160】
漂白組成物を使用する方法の例として、光の使用を伴い漂白組成物を活性化するものがある。この方法の一つの例が、2003年11月17日出願の米国第10/715,681号“Tooth Whitening Process”、2005年6月30日出願の米国第11/173839号“Illumination System For Dentistry Applications”、2005年6月30日出願の米国第11/173371号“Support Structure for Dental Applications”に詳述されており、これらの内容は全て参照により本開示に含まれる。
【0161】
あらかじめ、過酸化物ゲルおよび/または漂白ゲルが冷蔵されていた場合は、双方を使用前に室温にし、粘性のゲルにもどすことが推奨される。過酸化物ゲルと活性剤ゲルを混合した際、生成される漂白ゲルは、塗布した際歯牙上に留まることができるよう、十分な固さのものであってもよい。典型的に、ゲル(1種または複数種)は、例えば、使用の少なくとも6時間前、さらに例示すれば、使用前夜に冷蔵から解除し、室温にする。あるいは、冷蔵されたゲルは、穏やかな加熱、例えば、ゲルを入れた容器を温水(約120° F/49° C)に約10分間つけることにより、より速く室温にしてもよい。ゲル(1種または複数種)をこのように加熱する場合、慣習的にはゲルを混合し歯牙に塗布する前に5分ほど待ち、ゲルを歯牙に塗布した際、その温度により患者に不快感や創傷を与えないよう配慮される。
【0162】
本発明の態様に沿った方法の第1段階では、少しの間、防護処置無しでは漂白組成物に接触してしまう歯牙以外の表面を保護するための、歯牙の隔離を行ってもよい。任意で、口唇を保護するために口唇に市販の保護リップクリームを塗布する。口唇へのクリームの塗布に綿棒を用いてもよい。クリームは、処置中に口唇の水分を保ち、光の照射に対する保護を強化するよう設定されている。典型的なリップクリームは、パラアミノ安息香酸を含まない、高SPF値(例えば30以上)のクリームを含む。
【0163】
次に、Discus Dental社(Culver City, CA)の Zoom!(登録商標) Retractorのような開口器を、口唇を歯牙から引き離すために装着させる。歯科医はさらなる隔離のため、任意で医療用のペトリュームジェリーを上下前庭に塗布し、その部分を2インチ四方四重ガーゼ(Banta Healthcare Group)、コットンロール、またはその他、口腔内で露出した残りの部分を保護するのにふさわしい寸法の、適切な素材で覆ってもよい。
【0164】
歯茎と漂白組成物の接触、および歯茎への光の照射に対する防護として、歯肉に保護材を装着させてもよい。好ましくは、Discus Dental社の Liquidam(登録商標) Dental Damのような、光重合型歯科用レジンを塗布、硬化させる。通常、保護材の塗布前に歯肉を乾燥させる。この、一般的に光重合型レジンからなる保護材は、歯肉を完全に保護するのに十分な量を、直接歯肉に注出してもよい。塗布は、漂白処置を受ける部分から、遠心に少なくとも歯牙1本分先までにおよぶ。縁辺部を覆うガーゼや開口器にいたるまで、上下におよんで塗布してもよい。デンタルダムの装着が完了したら、漂白処置中に漏れが生じ組織の酸化が起こらないよう、ダムがエナメル質に封着されていることを確認するため、縁辺部を再点検する。
【0165】
使用の直前に、過酸化物ゲルと活性化ゲルを混合して漂白ゲルを生成することができる。この漂白ゲルを、例えば2筒シリンジの先端部から、歯面に直接塗布する。ゲルは、約1mmから2mmの厚さまで塗布する。ゲルを適切に塗布するために、ブラシを用いてもよい。あるいは、漂白組成物をダッペンディッシュまたはミキシングパッド上に注出し、ブラシを用いて歯面に塗布してもよい。もし漂白組成物の塗布中に漂白ゲルと組織との接触が起きた場合は、酸化した組織にビタミンE油を塗布してもよい。この油剤は、組織を鎮静し、漂白処置を継続できるよう保護膜を形成する。
【0166】
漂白ゲルを歯牙に塗布したら、ショートアークメタルハライドランプ(short art metal halide lamp)などのランプを患者のスマイルゾーンに向け、漂白剤ゲルに光を照射し、漂白過程を始動する。好適なランプの一例は、Ushio America社(Cypress, California)のSMR-150UV1, モデル番号 04-1001である。
【0167】
しばしば、不要または有害な波長を除去するため、ランプ正面にフィルターを設置することもある。好適なフィルターは、UVフィルター、(Optical Industrial 社、Houston、Texasから入手可能、Part No. 03‐1013)IRフィルター(Swift Glass 社、 Elmira, NY から入手可能、part No. 03‐1017)、および/またはディフューザーフィルター(Edmund Industrial Optics社、Barrington, NJから入手可能、 part No. 03‐1020)を含む。
【0168】
赤外線波長をすべてフィルターすることによって、患者に対して発せられる熱を低減するためには、IRフィルターを選択することができる。紫外線波長を全部ではなくある程度、除去するためには、UVフィルターも選択することができる。また、UVフィルターは約345nm未満の紫外線波長をフィルターし、約400nmを超える波長の約10から15%のみを通過させる。ディフューザーフィルターは、口腔内の標的位置に対し照射される光の強度を最低限にすべく、光線を拡散させるように設定することができる。典型的な一実施形態において、ランプの端をディフューザーフィルターから約118mmの位置に定めることができる。
【0169】
ランプが所定の位置に固定されスマイルゾーンが照らされた後、光を起動することにより漂白サイクルが開始する。ここで、本発明の組成物は、およそ、例えば10分から20分、さらに例示すれば、15分のサイクルを伴う。照射設備を最近使っていなかった場合、数分間の準備サイクルを起動してもよい。サイクルの最後に患者の歯牙からゲルを吸引し、湿したガーゼで残留ゲルを全て除去する。
【0170】
本発明の漂白組成物および上述の照射設備については、漂白ゲルの塗布および光起動サイクルを2回および3回利用してもよい。一方、所望の漂白程度に到達するために必要であれば、より多くのサイクルを利用してもよい。
【0171】
最後のサイクルの完了後、ランプを退け、残留した漂白ゲルを歯牙から吸引および拭掃する。それから隔離材(ガーゼ、コットンロール、歯肉保護材)を除去し、開口器は装着させたまま、口腔を完全に濯ぎ吸引する。隣接歯間に残留した歯科用レジン材をすべて除去するため、歯間フロスを用いてもよい。
【0172】
上述のように、本発明の組成物が、同一量、さもなくばより多量の過酸化物を含むが遷移金属化合物触媒を含まない漂白ゲルと同等の漂白効果をもたらすのに必要な時間は、約15%短い。代表的な実験結果を下記に示す:
【0173】
臨床手順フロー図
ズーム1系:

【0174】
開口器はまだ装着させたまま、様々な後処理を任意で行うことができる。例えば、歯牙の表面部分を乾燥させ、フッ化物溶液(例えば1.1%中性フッ化ナトリウム)を、歯牙に2mmから3mmの厚さで、例えば直接注出して塗布し、約5分歯面に滞留させてから吸引および濯ぎを行ってもよい。
【0175】
上述のように、本発明の漂白系は、1種または複数種の遷移金属化合物を含まないものと比べて、標準的、またはより少量の過酸化物を用いつつ、より迅速に漂白効果をもたらすことができる。同じ漂白手順を用いて、遷移金属化合物を含むゲルと含まないゲルとの例示的な比較実験を行った。結果を以下に示す:
【0176】
臨床手順フロー図
ズーム2系:

【0177】
ズーム2組成物(グルコン酸鉄(II)、の追加以外ズーム1組成物と同一)では、同等の漂白効果を得るために必要な時間は、各“Zoom Light TX”(光照射)ステップにつき、20分から、15分へと短縮されている。
【0178】
泡状の系は、上述のものと同じ方法に従って塗布できる。泡状の系に対しては、無発泡の系と同等の効果をもたらすために必要な時間を短縮することができる。
【0179】
上述のように、本発明によれば、組成物中に存在する過酸化物の濃度が標準的またはより低くとも、歯牙漂白を達成するのに必要な時間がより短くなる。さらに、アモルファスリン酸カルシウムまたはアモルファスリン酸ストロンチウムは、過敏性低減効果を促進することもできる。しかしながら、塗布時間の短縮、過酸化物濃度の低減、およびアモルファスリン酸化合物をもってしても、一部の患者においては処置後にやはり過敏性が生じるかもしれない。そのような患者に対しては、別途ゲルによる処置を施してもよい。この神経鈍麻ゲルは、例えば約 500 ppm から約1500 ppm、さらに例示すれば、約 800 から約 1100 ppmの間の濃度で溶解されたフッ化ナトリウムと、例えば重量比で約2.5% から 6% 、さらに例示すれば、3% から約5%で溶解された硝酸カリウムとを含有した、硝酸カリウム神経鈍麻剤ゲルを含む。ゲル化のための基質は、過酸化物ゲルまたは活性剤ゲルについて上述したように、主にエチレンオキシドのブロックコポリマー、例えばPLURONIC(登録商標)F-127を含む。このゲル化剤は、ゲルの重量に対して約20%から約40%、さらに例示すれば、ゲルの約25%から約35%含まれる。
【0180】
他の成分を含んでもよい。これには、ゲル安定剤、または漂白系において有用な上述の成分のようなものまたはそのすべてが含まれる。安定剤は、例えば、重量比で約0.1%から約8%、さらに例示すれば、約1%から約5%含まれる。
【0181】
グリセリンのような脂肪族ポリオール類も、重量比で例えば約0%から約10%、さらに例示すれば、約1%から約4%の量で含んでよい。
【0182】
水は、例えば約50%から約70%、さらに例示すれば、約55%から約65%の量で含まれる。
【0183】
この生成物は一般的に、漂白セッションの後、歯科医院でも家庭でも、上述した漂白ゲルの塗布に用いられるのと同様の方法で塗布できる。患者の歯牙に直接、臨床的に有意な時間、通常5分から15分間塗布しておき、吸引してもよい。代替的な塗布の方法として、“ナイトガード(night guard)”型の、歯型に合った歯科用トレーを用いてもよい。
【0184】
歯科医がより容易に塗布でき、また目下入手可能な製品よりも著しく容易に除去できるという点で、ゲルの取り扱いに関する特性の顕著な改良がなされている。使い易さにおける改良は、より迅速な処置、“診療時間(office time)”の短縮、およびコスト削減、歯科医院の収益性向上の可能性につながる。また、第二の利点といえるのが、組成物の湿潤能力向上とゴム性の低減であり、これは活性成分の利用度の拡大および全体的有効性向上の可能性を示唆する。
【0185】
神経鈍麻ゲルは、上述の過酸化物ゲルおよび/または活性剤ゲルと同様に生成することができる。この神経鈍麻ゲルの代表的な処方を以下に例示する:
【0186】
【表46】

【0187】
本発明は特定の好ましい実施形態を参照して詳細に説明されているが、本発明はこれら厳密な実施形態に限定されるものではないということを理解されたい。むしろ、当業者は、本発明の実施のため目下最良の形態を説明する本開示に鑑みて、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、様々な変更および変種を想定することができる。特に、当業者に理解されるように、本発明は、変更可能と記載された特定の方法論、規格、試薬に限定されるものではないということを了承されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の過酸化物を含む第1のゲルと、
少なくとも1種の遷移金属塩を含む、口腔に使用可能な活性剤ゲルと、
を含む2成分の歯牙漂白系であって、
前記活性剤ゲルは、前記過酸化物の分解を触媒することを特徴とする歯牙漂白系。
【請求項2】
前記遷移金属は、原子番号約21から30の、低原子番号遷移金属であることを特徴とする、請求項1記載の歯牙漂白系。
【請求項3】
前記遷移金属は、鉄、マンガン、コバルト、銅、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2記載の歯牙漂白系。
【請求項4】
前記遷移金属は、活性化ゲル成分の重量に対し約0.01%から約4%の量で存在することを特徴とする、請求項1、2、または3記載の歯牙漂白系。
【請求項5】
少なくとも1種の過酸化物を含む第1のゲルと、
少なくとも1種の鉄(II)の塩を含む、口腔に使用可能な活性剤ゲルと、
を含む2成分の歯牙漂白系であって、
前記活性剤ゲルは、前記過酸化物の分解を触媒することを特徴とする歯牙漂白系。
【請求項6】
前記鉄(II)の塩は、グルコン酸鉄(II)、硫酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、酢酸鉄(II)、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5記載の2成分の歯牙漂白系。
【請求項7】
前記鉄(II)の塩は、重量比で約0.001%から約4%の量で存在することを特徴とする、請求項5または6記載の2成分の歯牙漂白系。
【請求項8】
前記過酸化物成分は、過酸化物を含むゲルの重量に対し、約5%から約35%の量で与えられていることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の歯牙漂白系。
【請求項9】
前記過酸化物を含むゲルは、カルシウムの源、脂肪族ポリオール、ゲル化剤、ゲル安定剤、発泡剤、グリセリン、水、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の歯牙漂白系。
【請求項10】
前記活性剤ゲルは、リン酸イオンの源、ゲル化剤、脂肪族ポリオール、ゲル安定剤、発泡剤、グリセリン、水、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の歯牙漂白系。
【請求項11】
前記ゲル化剤は、非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項9または10記載の2成分の歯牙漂白系。
【請求項12】
前記過酸化物を含むゲル化剤は、非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1から7記載の2成分の歯牙漂白系。
【請求項13】
前記非イオン性界面活性剤は、ブロックコポリマーを含むことを特徴とする、請求項12記載の2成分の漂白系。
【請求項14】
前記非イオン性界面活性剤は、疎水性ブロック成分と、親水性ブロック成分とを含むことを特徴とする、請求項12または13記載の2成分の漂白系。
【請求項15】
前記非イオン性界面活性剤は、エチレンオキシドブロックと、プロピレンオキシドブロックとを含むことを特徴とする、請求項14記載の2成分の漂白系。
【請求項16】
前記非イオン性界面活性剤は、過酸化物を含むゲル中に重量比約15%から約45%存在し、活性剤ゲル中に約15%から約30%存在することを特徴とする、請求項14または15記載の2成分の漂白系。
【請求項17】
前記カルシウムの源は、重量比約0.25%から重量比約1.5%の量で存在することを特徴とする、請求項9記載の2成分の漂白系。
【請求項18】
前記活性剤ゲルは、リン酸イオンの源をさらに含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の2成分漂白系。
【請求項19】
前記ゲル安定剤は、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム等のナトリウム塩、ビタミンE油、アニス、オイゲノール、天然ミント香料、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項9から16のいずれかに記載の2成分の漂白系。
【請求項20】
前記系は、発泡性であることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の2成分の漂白系。
【請求項21】
前記リン酸イオンの源は、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10または18記載の2成分の漂白系。
【請求項22】
前記漂白系は、光活性化可能であることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の2成分の歯牙漂白系。
【請求項23】
前記漂白系は、前記活性剤ゲル中の遷移金属塩を含まず同量またはより多量の過酸化物を含む漂白組成物と同じ漂白効果をもたらすための時間を、少なくとも約15%短縮することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の2成分の歯牙漂白系。
【請求項24】
少なくとも1種の過酸化物を含む第1のゲルと、
少なくとも1種の鉄(II)の塩と、少なくとも1種の発泡剤とを含む、口腔に使用可能な活性剤ゲルと、
を含む2成分の発泡性歯牙漂白系であって、
前記2成分は、結合し、半減期が約10分から約120分の泡を生成することを特徴とする歯牙漂白系。
【請求項25】
前記過酸化物を含むゲルは、カルシウムの源、脂肪族ポリオール、ゲル安定剤、発泡剤、グリセリン、水、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含むことを特徴とする、請求項24記載の2成分の発泡性歯牙漂白系。
【請求項26】
前記カルシウムの源は、重量比約0.25%から重量比約1.5%の量で存在することを特徴とする、請求項24または25記載の2成分の発泡性歯牙漂白系。
【請求項27】
前記活性剤ゲルは、リン酸イオンの源をさらに含むことを特徴とする、請求項24、25、または26記載の2成分の発泡性歯牙漂白系。
【請求項28】
前記ゲル安定剤は、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム等のナトリウム塩、ビタミンE油、アニス、オイゲノール、天然ミント香料、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項25記載の2成分の発泡性歯牙漂白系。
【請求項29】
前記リン酸イオンの源は、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項27記載の2成分の発泡性歯牙漂白系。
【請求項30】
前記活性剤ゲルは、リン酸イオンの源、グリコール、脂肪族ポリオール、ゲル安定剤、グリセリン、水、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含むことを特徴とする、請求項24から29のいずれかに記載の歯牙用2成分の発泡性歯牙漂白系。
【請求項31】
少なくとも1種の過酸化物を重量比で約5%から約35%含む第1のゲルと、
少なくとも1種の鉄(II)の塩を重量比で約0.01%から約4%含む、口腔に使用可能な活性剤ゲルと、
を含む光活性化可能な2成分の歯牙漂白系であって、
前記活性剤ゲルは、光の存在下で前記過酸化物の分解を触媒することを特徴とする歯牙漂白系。
【請求項32】
請求項31記載の光活性化可能な2成分の歯牙漂白系であって、
ゲル化剤、カルシウムの源、リン酸イオンの源、ゲル安定剤、発泡剤、pH調整剤、グリセリン、脂肪族ポリオール、水、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含むことを特徴とする歯牙漂白系。
【請求項33】
前記過酸化物ゲルは、
疎水性部分と親水性部分とを含む少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を重量比で約15から45%と、
少なくとも1種のカルシウム塩を重量比で約0.25%から約1.5%と、
少なくとも1種の脂肪族ポリオールを重量比で約1から約5%と、
硝酸カリウム、硝酸ナトリウム等のナトリウム塩、ビタミンE油、アニス、オイゲノール、天然ミント香料、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のゲル安定剤を約0.25%から約5%と、
を含み、
前記口腔に使用可能な活性剤ゲルは、
疎水性部分と親水性部分とを含む非イオン性界面活性剤を重量比で少なくとも約15から約30%と、
リン酸イオンの源を重量比で約0.5から約5%と、
少なくとも1種のグリコールを重量比で約5から約20%と、
少なくとも1種の脂肪族ポリオールを重量比で約2から約15%と、
を含むことを特徴とする、請求項31または32記載の光活性化可能な2成分の歯牙漂白系。
【請求項34】
前記系は、発泡性であることを特徴とする、請求項31から33のいずれかに記載の光活性可能な2成分の歯牙漂白系。
【請求項35】
前記漂白系は、前記活性剤ゲル中の遷移金属塩を含まず同量またはより多量の過酸化物を含む漂白組成物と同じ漂白効果をもたらすための時間を、少なくとも約15%短縮することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の2成分の歯牙漂白系。
【請求項36】
前記漂白系は、前記活性剤ゲル中の遷移金属塩を含まず同量の過酸化物を含む漂白組成物と同じ漂白効果をもたらすための時間を、少なくとも約20%短縮することを特徴とする、請求項35記載の歯牙漂白系。
【請求項37】
前記過酸化物を含むゲル成分対前記使用可能な活性剤ゲルの前記比率は、約1:2から5:1であることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の2成分の歯牙漂泊系。
【請求項38】
前記過酸化物を含むゲル成分と、前記使用可能な活性剤ゲル成分は、2筒シリンジ(double-barreled syringe)内に封入されることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の2成分の歯牙漂白系。
【請求項39】
前記ゲルは、実質的に研磨剤を含まないことを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の2成分の歯牙漂白系。
【請求項40】
少なくとも1種の過酸化物を含む第1のゲルと、
前記過酸化物の漂白作用を触媒し、標準的またはより低い過酸化物の濃度で効果的な漂白をもたらす少なくとも1種の遷移金属塩を含む活性剤ゲルと、
を含んだ2成分の漂白ゲルと、
重量比で約3%から約5%の間の硝酸カリウムと、濃度約1000ppm以下のフッ化物イオンの源とを含んだ、前記2成分の漂白ゲルと同程度の粘度を有する、1成分の粘性ゲルと、
を含む、過敏性低減効果を有する歯牙漂白系。
【請求項41】
前記2成分の漂白ゲルは、発泡性であることを特徴とする、請求項40記載の歯牙漂白系。
【請求項42】
請求項40または41記載の歯牙漂白系であって、ゲル化剤、カルシウムの源、リン酸イオンの源、ゲル安定剤、発泡剤、pH調整剤、グリセリン、脂肪族ポリオール、水、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含むことを特徴とする、請求項40または41記載の歯牙漂白系。

【公表番号】特表2008−519773(P2008−519773A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540422(P2007−540422)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/040910
【国際公開番号】WO2006/053207
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(300057780)ディスカス デンタル インプレッションズ インコーポレーテッド (15)
【Fターム(参考)】