説明

歯科用シリコーン系硬化性組成物

【課題】 親水性を有する歯科用シリコーン系硬化性組成物で、しかも長期保存させても添加物等の分離が生じ難く、保存安定性にも優れたものを開発すること。
【解決手段】 シリコーンのケイ素原子に、連結基を介して分岐ポリグリセロール鎖が少なくとも1つ結合した分岐ポリグリセロール変性シリコーンを含有してなる歯科用シリコーン硬化性組成物であって、具体的には、末端に不飽和結合をもつ有機基を分子内に少なくとも2個以上有するオルガノポリシロキサン(A)、分子内にSiH基を少なくとも3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)、分子内にSiH基を2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)、ヒドロシリル化反応触媒物質(D)、充填材(E)、及び上記分岐ポリグリセロール変性シリコーン(F)を含有する付加反応型シリコーン硬化性組成物が好適な態様である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用材料、特に歯科用シリコーン材料として有用な硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用シリコーン材料としては、義歯床用の裏装材や歯科用印象材等が挙げられる。いずれも術者が使用直前に必要量の計量・練和等を行い、適切な処置や加工を経て硬化させるものである。
【0003】
そのようなシリコーン系硬化性組成物としては、含有される反応性オルガノポリシロキサン化合物の硬化反応の違いによって縮合型シリコーン系硬化性組成物と付加反応型シリコーン系硬化性組成物が主に挙げられる
前者は反応基として水酸基を有しており、反応過程で縮合反応を起こして硬化するものであるが、その際にアルコール等の脱離物があることが欠点として挙げられる。
【0004】
後者は反応基としてビニル基とSi−H基を有しており、反応過程でこれらが付加反応をおこして硬化するものであり、特別な脱離物がない利点から、歯科用シリコーン系硬化性組成物として数多く用いられている。
【0005】
これらの歯科用シリコーン系硬化性組成物は一般的に疎水性が非常に強く、耐着色性に優れる特長を有している反面、しばしばその性質が歯科用シリコーン材料として用いる上で問題になることがあった。
【0006】
シリコーン系硬化性組成物を歯科材料として用いる場合、その使用対象の多くが口腔内であり、中でも口腔粘膜や歯牙などの口腔内組織と接するものが大半である。これらはいずれも唾液等で湿潤状態にあり、用いられる歯科材料も親水性、さらに好ましくは保湿性を有しているものが望まれている。
【0007】
例えば、歯科用印象材は、より均一で精度のよい印象採得を行うために、親水性を有していることが好ましい。上記シリコーン系硬化性組成物を印象材として用いた場合、疎水性が高いために精密な印象採得を行いにくい問題がある。
【0008】
近年は、シリコーン系硬化性組成物に対して界面活性剤を添加して親水性を付与させることが主流となっており、それによって臨床使用上、実用的には問題のないレベルまで改善されている。
【0009】
しかしながら、これらの界面活性剤を多く配合させると保存中に印象材ペーストから少しずつブリードしてくる傾向にある。定期的に使用している場合には特に支障はないが、長期間使用しなかった場合には容器の先端部分に、わずかではあるが透明な界面活性剤が分離している。その場合、使用する直前に術者がブリードした界面活性剤部分を取り除いた後に使用しなければならないことから、長期保存によっても分離の心配のないシリコーン系硬化性組成物の開発が望まれている。
【0010】
また、シリコーン系硬化性組成物は軟質義歯裏装材として好適に用いられている。軟質義歯裏装材は古く等して口腔粘膜に対して不適合となった義歯に対して裏打ちする材料のことで、口腔内で口腔粘膜と直接接する部分であり義歯を口腔内で保持させる役割も有している。
【0011】
従来、このような軟質義歯裏装材としては、主にポリ(メタ)アクリレート系のもの(例えば、特許文献1参照)と、シリコーンゴム系のもの(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0012】
ポリ(メタ)アクリレート系の軟質裏装材は、一般にメチルメタクリレート、エチルメタクリレート等の(メタ)アクリレート系のラジカル重合性単量体の重合硬化体を主成分とする。代表的な製品形態としては、(メタ)アクリレート系の単量体を主成分とする液材と、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリレート系の重合体を主成分とする粉材からなっており、さらに重合開始剤が液材と粉材に適宜分配して配合されており、この両材を混合することにより、(メタ)アクリレート系の単量体が重合する。(メタ)アクリレート系の重合体は一種の充填材として作用すると共に、混合時に(メタ)アクリレート系の単量体に溶解あるいは膨潤して、組成物全体をペースト状あるいは餅状にする効果があり、これにより適度な操作性を得ることができる。
【0013】
このようなポリ(メタ)アクリレート系の重合硬化体は、強度に優れる一方でそのままでは軟質裏装材として必要な柔軟さを有さないため、可塑剤を配合する必要がある。このような可塑剤としては、ジオクチルフタレートやジブチルフタレート等の可塑剤が主に用いられている。
【0014】
他方、シリコーンゴムは本来的に生体適合性が高いため、シリコーンゴム系の軟質裏装材も幅広く用いられている。一般に、シリコーンゴムは弾性に富む柔らかい材料であるため、このようなシリコーンゴム系の軟質義歯裏装材においては別途可塑剤の配合を必要としない。そのことから軟質義歯裏装材としてシリコーン系硬化性組成物が多用されているが、近年多く見られるようになってきた低唾液分泌者、いわゆる口腔乾燥症の患者にとっては口腔粘膜の乾燥、荒れと、それらに伴う義歯とのなじみの著しい低下が義歯の口腔内での維持安定の妨げとなっている。このような患者にとって適度な親水性、親和性を有している軟質義歯裏装材を使用すると、義歯の口腔内での安定しやすくなることから、そのような性質を有する軟質義歯裏装材が求められており、その元となるシリコーン系硬化性組成物の開発が望まれている。
【0015】
【特許文献1】特開2002−119523号公報
【特許文献2】特許第3277503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上の背景にあって本発明は、親水性を有する歯科用シリコーン系硬化性組成物であって、しかも長期保存させても添加物等の分離が生じ難く、保存安定性にも優れたものを開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、シリコーンのケイ素原子に、連結基を介して分岐ポリグリセロール鎖が少なくとも1つ結合した分岐ポリグリセロール変性シリコーンを既存のシリコーン系硬化性組成物中に加えることで該組成物に親水性を付与でき、しかも該変性シリコーンが組成物中より全く分離しないことを見出した。
【0018】
即ち、本発明はシリコーンのケイ素原子に、連結基を介して分岐ポリグリセロール鎖が少なくとも1つ結合した分岐ポリグリセロール変性シリコーンを含有してなる歯科用シリコーン系硬化性組成物である。
【発明の効果】
【0019】
本発明における歯科用シリコーン系硬化性組成物は、分岐ポリグリセロール変性シリコーンを含むことを特徴としており、それによって該組成物が親水性を有し、且つその変性シリコーンが分離し難く長期保存にも優れている効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明における歯科用シリコーン系硬化性組成物は、シリコーンのケイ素原子に、連結基を介して分岐ポリグリセロール鎖が少なくとも1つ結合した分岐ポリグリセロール変性シリコーンを含有してなることを特徴としている。このうちシリコーンは、公知のものが特に制限なく用いることができる。中でも歯科用シリコーン系硬化性組成物としては室温条件下において10分程度で容易に硬化するものが歯科材料に適用する上で有用であることから、縮合反応によって硬化するシリコーンの組合せか、付加反応によって硬化するシリコーンの組合せが適している。特に後者はアルコール等の副生物がなく、また硬化時の重合発熱がないことからより好適である。
【0021】
本発明における歯科用シリコーン系硬化性組成物の最大の特徴であるポリグリセロール変性シリコーンは、シリコーンのケイ素原子に連結基を介して少なくとも1つの分岐ポリグリセロール鎖が結合したものであれば特に制限なく使用することができる。
【0022】
本発明に使用される分岐ポリグリセロール変性シリコーンは、分岐基として1個以上の下記構造式(1)
【0023】
【化1】

【0024】
で表わされる分岐ポリグリセロール基(以下、基(1)という)を含有するものである。分岐ポリグリセロール鎖の構造は、a個の基(1)、b個の下記構造式(2)で表されるグリシドール基(以下、基(2)という)、c個の下記構造式(3)で表されるグリセロール基(以下、基(3)という)、及び末端基としてd個の下記構造式(4)で表されるグリセロール基(以下、基(4)という)が結合してなるものである。
【0025】
【化2】

【0026】
シリコーンのケイ素原子に結合する、該分岐ポリグリセロール鎖は、少なくとも1個有していれば良いが、本発明の効果を良好に発揮させるためには2個以上有しているのが好ましい。また、その分岐ポリグリセロール鎖に含まれるヒドロキシル基(−OH基)の総数/シリコーン中のシロキサン結合を構成するケイ素原子の総数の値が0.01〜5、より好ましくは0.02〜3となるように分岐ポリグリセロール鎖の数を制御することが、シリコーン系硬化性組成物との均一性混の面から好ましい。
【0027】
分岐ポリグリセロール鎖中において、基(1)、(2)及び(3)は、任意の配列で相互に結合していてもよい。基(1)の数が多いほど分岐構造が発達しており、各分岐鎖の末端に、基(4)が存在する。
【0028】
本発明において、分岐ポリグリセロール鎖中の、基(1)、(2)、(3)及び(4)の平均結合総数(a+b+c+d)は、後述するNMR解析ないし前駆体シリコーンとの分子量比較により求められ、好ましくは3以上であり、本発明の分岐ポリグリセロール変性シリコーンが適度なシリコーン的性質を堅持するためには、3〜201であることがより好ましく、3〜51であることが特に好ましい。
【0029】
分岐ポリグリセロール鎖中、分岐の割合は、十分な親水性付与効果を有するために、a/(a+b+c+d)が、1/20〜1/2が好ましく、1/10〜1/2がより好ましい。
【0030】
基(1)の数(即ち、a)は、分岐ポリグリセロール鎖中、1〜100個存在することが好ましく、2〜50個存在することがより好ましい。基(4)の数(即ち、d)は、分岐ポリグリセロール鎖中、2〜101個存在することが好ましく、3〜51個存在することが更に好ましい。基(2)の数(即ち、b)、基(3)の数(即ち、c)は、同一又は異なって、0〜198個存在することが好ましく、0〜96個存在することがより好ましい。
【0031】
本発明の分岐ポリグリセロール変性シリコーンにおける、シリコーンのケイ素原子と、前述の分岐ポリグリセロール鎖を結合する連結基は、エーテル基又はエステル基を有する2価の基であることが好ましい。
【0032】
エーテル基を有する2価の基としては、一般式(5)で表わされる基(以下、連結基(5)という)が好ましい。なお、連結基(5)は、(R側がシリコーン鎖のケイ素原子に結合し、(AO)側が分岐ポリグリセロール鎖に結合する。
−(R−O−(AO)− (5)
(式中、Rは、置換基を有していてもよい、炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基、アルケニレン基又は炭素数6〜22のアリーレン基、好ましくは炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基又はアルケニレン基、AOは炭素数1〜4のアルキレンオキシ基(オキシアルキレン基ともいう)又は炭素数6〜10のアリーレンオキシ基(オキシアリーレン基ともいう)、好ましくは炭素数1〜4のアルキレンオキシ基、pは0又は1の数、qは0〜30の数を示し、q個のAOは同一でも異なっていてもよい。)
エステル基を有する2価の基としては、一般式(6)で表わされる基(以下、連結基(6)という)が好ましい。なお、連結基(6)は、R側がシリコーン鎖のケイ素原子に結合し、(AO)側が分岐ポリグリセロール鎖に結合する。
−R−COO−(AO)− (6)
(式中、Rは、置換基を有していてもよい、炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基、アルケニレン基又は炭素数6〜22のアリーレン基、好ましくは炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基又はアルケニレン基、rは0〜30の数、AOは前記の意味を示し、r個のAOは同一でも異なっていてもよい。)
連結基(5)及び(6)において、R及びR中のアリーレン基は、アルキレンアリーレン基、アリーレンアルキレン基、アルキレンアリーレンアルキレン基を含む。R及びRとしては、好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは1〜12のアルキレン基又はアルケニレン基であり、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン、テトラデカメチレン、ペンタデカメチレン、ヘキサデカメチレン基等が挙げられる。これらの中ではエチレン、プロピレン又はトリメチレン基がさらに好ましく、合成の容易さの観点から、エチレン基又はトリメチレン基が特に好ましい。
【0033】
pは0又は1であるが、合成の容易さの観点から、1が好ましい。q及びrは、同一又は異なって、0〜15が好ましく、0〜5が特に好ましい。合成の容易さの観点からは0が最も好ましい。
【0034】
q個のAO、r個のAOは、同一又は異なって、交互、ランダム又はブロックあるいはこれら以外の周期配列であっても良いし、何れの形態で結合していてもよい。AOは、好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基又はフェニレンオキシ基であり、更に好ましくはエチレンオキシ基である。
【0035】
連結基(5)及び連結基(6)において、AOのアルキレンオキシ基又はアリーレンオキシ基の酸素側で分岐ポリグリセロール鎖に結合し、アルキレンオキシ基又はアリーレンオキシ基のアルキレン又はアリーレン側で、連結基が含有するエーテル基又はエステル基に結合する。
【0036】
及びR中の置換基として、ヒドロキシ基、アミノ基(炭素数1〜22)、イミノ基(炭素数1〜22)、カルボキシ基、アルコキシ基(炭素数1〜22)、アシル基(炭素数1〜22)等が挙げられる。
【0037】
これらの中で好ましい連結基は、下記一般式(7)で表される連結基(以下、連結基(7)という)である。なお、連結基(7)では、トリメチレン側がシリコーン鎖のケイ素原子に結合し、酸素原子側が分岐ポリグリセロール鎖に結合する。
−CHCHCH−O−CHCHO− (7)
また、本発明の分岐ポリグリセロール変性シリコーンにおける、シリコーン鎖のケイ素原子と前述の分岐ポリグリセロール鎖を結合する連結基は、オキシフェニレン基を含有することが好ましい。そのような連結基の中では、下記一般式(8)で表される基(以下、連結基(8)という)又は一般式(9)で表わされる基(以下、連結基(9)という)が好ましい。なお、連結基(8)では、(R側がシリコーン鎖のケイ素原子に結合し、(AO)側が分岐ポリグリセロール鎖に結合する。また、連結基(9)では、(R側がシリコーン鎖のケイ素原子に結合し、(AO)及び(AO)側が分岐ポリグリセロール鎖に結合する。
【0038】
【化3】

【0039】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい、炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基又はアルケニレン基、uは0又は1の数、vは0〜30の数、AOは前記の意味を示し、v個のAOは同一でも異なっていてもよい。)
【0040】
【化4】

【0041】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい、炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基又はアルケニレン基、zは0又は1の数、xは0〜30の数、yは0〜30の数、AOは前記の意味を示し、x個及びy個のAOは同一でも異なっていてもよい。)
連結基(8)及び連結基(9)に於いて、(R及び(Rは、シリコーン鎖のケイ素原子と、本発明の連結基が含有するオキシフェニレン基のフェニレン基とを結ぶ基であるが、R及びRは、好ましくは、炭素数1〜16、特に好ましくは1〜12のアルキレン基又はアルケニレン基であり、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン、テトラデカメチレン、ペンタデカメチレン、ヘキサデカメチレン基等が挙げられる。これらの中ではエチレン、プロピレン又はトリメチレン基がさらに好ましく、合成の容易さの観点から、エチレン基又はトリメチレン基が特に好ましい。
【0042】
u及びzは、0又は1であるが、合成の容易さの観点から何れも1がより好ましい。
【0043】
連結基(8)及び連結基(9)に於いて、AOは、分岐ポリグリセロール鎖と、本発明の連結基が含有するオキシフェニレン基の酸素原子とを結ぶオキシアルキレン基又はオキシアリーレン基であり、オキシアルキレン基又はオキシアリーレン基の酸素側で分岐ポリグリセロール鎖に結合し、オキシアルキレン基又はオキシアリーレン基のアルキレン又はアリーレン側でオキシフェニレン基の酸素原子に結合する。AOとして、オキシエチレン基、オキシプロピレン基又はオキシフェニレン基が好ましく、これらの中ではオキシエチレン基が特に好ましい。
【0044】
v、x及びyはそれぞれ、0〜30の数であるが、0〜15が好ましく、0〜5が更に好ましい。合成の容易さ、反応のし易さの観点からは0が最も好ましい。v、x並びにyが0以外の数である場合、v個のAO、x個のAO、y個のAOは、同一又は異なっていても良く、異なる場合、それらAOの相互の結合様式は、交互型、ブロック型あるいはこれら以外の周期配列であっても良いし、又はランダム型であってもよい。
【0045】
連結基(8)に於いて、オキシフェニレン基のフェニレン基に結合した、酸素原子と(R基(uが0の場合はシリコーン鎖上のケイ素原子)の結合様式は、互いにオルト位、メタ位、パラ位の何れであっても良く、又これらの混合であっても良い。また連結基(9)に於いて、オキシフェニレン基のフェニレン基に結合した、2個の酸素原子と(R基(zが0の場合はシリコーン鎖上のケイ素原子)のうち何れの2個についても、その結合様式は、互いにオルト位、メタ位、パラ位の何れであっても良く、又これらの混合であっても良い。
【0046】
本発明のオキシフェニレン基含有連結基の中で、最も好ましいものは、下記一般式(10)で表される連結基(以下、連結基(10)という)である。なお、連結基(10)では、トリメチレン側がシリコーン鎖のケイ素原子に結合し、酸素原子側が分岐ポリグリセロール鎖に結合する。
【0047】
【化5】

【0048】
連結基(10)に於いて、オキシフェニレン基のフェニレン基に結合した、酸素原子とトリメチレン基の結合様式は、オルト位、メタ位、パラ位の何れであっても良く、又これらの混合であっても良いが、合成の容易さの観点から、オルト位、パラ位又はこれらの混合物であることがより好ましい。
【0049】
本発明の分岐ポリグリセロール変性シリコーンを形成するシリコーンは、ケイ素原子を2つ以上有するポリシロキサンから誘導されるものであり、ポリシロキサンの形状は直鎖状、分岐鎖状、環状の何れであってもよい。また、ポリシロキサンの数平均分子量は、好ましくは300〜70万、より好ましくは300〜20万、更に好ましくは1000〜2万である。数平均分子量は、後述するゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(以下、GPCという)法や、光散乱法等により求めることが出来る。
【0050】
本発明の分岐ポリグリセロール変性シリコーンとしては、下記一般式(11)で表わされる直鎖状シリコーン(以下、シリコーン(11)という)が好ましい。
【0051】
【化6】

【0052】
(式中、R、R、R、t個のR、t個のR、R10、R11、R12は、同一又は異なって、分岐ポリグリセロール鎖が結合した連結基、置換基を有していてもよく、フッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基又はアルコキシ基、あるいは炭素数6〜22のアリール基を示し、R、R、R、t個のR、t個のR、R10、R11、R12のうち少なくとも1つは分岐ポリグリセロール鎖が結合した連結基である。tは0〜10,000の数を示す。)
シリコーン(11)において、R、R、R、t個のR、t個のR、R10、R11、R12のうち分岐ポリグリセロール鎖が結合した連結基以外の基は、同一又は異なって、置換基を有していてもよく、フッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基又はアルコキシ基、あるいは炭素数6〜22のアリール基であり、炭素数1〜22のアルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、トリフルオロプロピル等が挙げられ、炭素数1〜22のアルケニル基としては、ビニル基やアリル基が挙げられ、炭素数1〜22のアルコキシ基としては、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、フェノキシ基等が挙げられる。これらの中では、炭素数1〜12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、ビニル基、アリル基、又は炭素数6〜12のアリール基が好ましく、更に好ましくは炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基であり、特に好ましくはメチル基、プロピル基又はフェニル基である。このうち、汎用性及び価格の点からはメチル基がより好ましいが、耐熱性の点からはフェニル基がより好ましい。
【0053】
シリコーン(11)において、R〜R12が有していても良い置換基として、フェニル基、フェノール基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基(炭素数0〜14)、イミノ基、(アミノエチル)アミノ基、(ジメチルアミノエチル)アミノ基、ポリオキシアルキレン基、メルカプト基、及びエポキシ基等が挙げられる。これらの置換基を有する場合、R〜R12としてプロピル基が特に好ましい。
【0054】
シリコーン(11)において、R、R、R、t個のR、t個のR、R10、R11、R12のうち少なくとも1つ、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個であり、分岐ポリグリセロール鎖が結合した連結基である。この連結基は、シリコーン(11)の側鎖、片末端及び/又は両末端のいずれに位置していても良いし、またその混合物でも良い。
【0055】
〜Rからなる群から選ばれる1個と、R10〜R12からなる群から選ばれる1個が、分岐ポリグリセロール鎖が結合した連結基を示し、残余のR〜R及びR10〜R12、t個のR、t個のRが他の基を示す場合、本発明の分岐ポリグリセロール変性シリコーンは、両末端置換型の分岐ポリグリセロール変性シリコーンとなり、水中やその他溶媒中に於いて相互に連結して高次構造を採り易く非常に好ましい。その際、残余のR〜R及びR10〜R12、t個のR、t個のRは、メチル基であることが特に好ましい。
【0056】
また、前記したように、その分岐ポリグリセロール鎖に含まれるヒドロキシル基(−OH基)の総数/シリコーン中のシロキサン結合を構成するケイ素原子の総数の値は0.01〜5、より好ましくは0.02〜3となるように分岐ポリグリセロール鎖の数を制御することが、シリコーン系硬化性組成物との均一混合の面から好ましい。
【0057】
シリコーン(11)中のtは、0〜10,000の数を示し、好ましくは1〜3,000の数を、特に好ましくは5〜500の数を示す。
【0058】
本発明の分岐ポリグリセロール変性シリコーンの数平均分子量は、好ましくは500〜50万、特に好ましくは750〜20万である。この数平均分子量の測定方法は、後述するように、GPC(ポリスチレン又はポリエチレングリコール換算)による。
【0059】
本発明の分岐ポリグリセロール変性シリコーンは、シリコーン中のケイ素原子数(Si)と分岐ポリグリセロール鎖中の基(1)、(2)、(3)及び(4)の合計数(以下グリセロール基数という)(G)の比(G/Si)が、0.001〜50が好ましく、0.05〜10がより好ましく、0.1〜3が特に好ましい。
【0060】
本発明中の分岐ポリグリセロール変性シリコーンに於いて、前記のシリコーン的特徴や、前記の親水的性質を著しく阻害しない限りに於いて、分岐ポリグリセロール鎖中に、少量のエチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基が存在していてもよい。エチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基が分岐ポリグリセロール鎖中にランダムに存在してもよいし、複数のエチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基が連鎖をなして分岐ポリグリセロール鎖中にブロック的に存在していてもよい。この際、複数のエチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基からなるブロックは、分岐ポリグリセロール鎖の連結基の近傍に存在してもよいし、末端に存在してもよいし、あるいは中程に存在していてもよい。エチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基が存在する場合は、グリセロール基1モル当量に対して、エチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基は0.001〜0.5モル当量存在することが好ましく、0.02〜0.2モル当量存在することが更に好ましい。
【0061】
上記説明した、本発明の歯科用シリコーン系硬化性組成物において最も特徴的成分である分岐ポリグリセロール変性シリコーンの製造方法や確認方法は、特開2004−339244号公報により公知であり、この方法により適宜製造して使用すればよい。また、本発明において、最も好適に使用される上記分岐ポリグリセロール変性シリコーンは、前記シリコーン(11)に属する化合物である「ソフケアGS−G」(商品名;花王株式会社製)〔ビス(ポリグリセリル−3−オキシフェニルプロピル)ジメチコン〕が市販品として入手できる。
【0062】
分岐ポリグリセロール変性シリコーンの添加量としては、シリコーン系硬化性組成物中の未反応の反応性オルガノポリシロキサン成分の総量100重量部に対して0.1〜20重量部、より好ましくは0.3〜10重量部が好適である。
【0063】
次に、本発明における歯科用シリコーン系硬化性組成物中に含まれる他の成分について説明する。該歯科用シリコーン系硬化性組成物は、何らかの手段で最終的に硬化反応を起こす反応性オルガノポリシロキサンが含有されているものであれば特に制限されるものではないが、歯科材料として用いられる場合により簡便且つ短時間で硬化することが好ましいことから、室温で硬化反応を起こす付加重合型シリコーンが好適な組成物として例示される。
【0064】
付加反応を起こすシリコーン系硬化性組成物の組合せとしては、末端に不飽和結合を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素原子に直結した水素原子を有するハイドロジェンポリシロキサン、及び重合触媒の組合せが一般的である。
【0065】
末端に不飽和結合をもつ有機基を分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン(以下成分(A)と略す)は、末端に不飽和結合をもつ有機基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンであれば分子内に存在する他の有機基の構造は制限されず、直鎖状であっても分枝鎖状であってもよく、更にこれらの混合物であってもよい。
【0066】
成分(A)の分子内に存在する、末端に不飽和結合をもつ有機基としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基及びエチニル基等が例示されるが、合成のし易さからケイ素原子に結合したビニル基が最も有利である。これらの末端不飽和結合をもつ有機基は、オルガノシロキサンの分子鎖の末端または中間のいずれに存在しても、あるいはその両方に存在しても良いが、硬化後の弾性体が優れた物理的性質を有するためには、少なくとも1個は分子の末端に存在していることが好ましい。
【0067】
成分(A)の分子中に存在する上記の末端に不飽和結合をもつ有機基以外のケイ素原子に結合した有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等のアルキル基、フェニル基のようなアリール基、クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等の置換アルキル基等が例示されるが、これらのうち合成し易く、かつ硬化後に良好な物理的性質を与えるという点から、メチル基が最も好ましい。
【0068】
成分(A)の分子を構成するシロキサン単位の数(重合度に相当する)は特に限定されないが、歯科用印象材として好適な性質、即ち、硬化後において適度の硬度を有し、かつ充分な伸び、機械的強度が得られるようにするために、該シロキサン単位は50〜5000個、特に100〜2000個であることが好ましい。
【0069】
本発明に使用する成分(A)の代表的なものを具体的に示せば、
【0070】
【化7】

【0071】
(ただし、Phはフェニル基を示す)で示されるオルガノポリシロキサン等が挙げられる。尚、上記化合物及び後述する実施例、比較例に用いられる化合物中の各繰り返し構成単位の結合順序は全く任意であり、構造式中に示される繰り返し構成単位の数は単に各構成単位の総量の平均を示すに過ぎない。
【0072】
本発明における(B)の分子内のSiH基を少なくとも3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(以下、成分(B)と略す)は、上記成分(A)を架橋させてゴム弾性体とする働きを持つ成分である。成分(A)と反応して架橋構造となるためには、SiH基が分子内に少なくとも3個必要である。3個より少ないと架橋構造とならずゴム弾性体が得られない。
【0073】
成分(B)は分子内にSiH基を3個以上有するものであればその構造は特に限定されない。成分(B)の分子内に存在する水素原子以外のケイ素原子に結合した有機基も特に限定されず、前述の成分(A)の分子内に存在する有機基(末端に不飽和基を有するものを含む)と同様のものが例示されるが、合成が容易で、かつ硬化後に良好な物理的性質を与えるという点から、メチル基が最も好ましい。かかる成分(B)は、直鎖状、分枝状または環状のいずれであっても良くこれらの混合物であっても良い。
【0074】
成分(B)の分子を構成するSiH基を有しないシロキサン単位の数(重合度に相当する)は特に限定されないが、歯科用印象材として好適な性質、即ち、硬化後において適度の硬度を有し、かつ充分な伸び、機械的強度が得られるようにするために、該シロキサン単位は2〜2000個、特に5〜500個であることが好ましい。
【0075】
本発明に使用する成分(B)の代表的なものを具体的に示せば、
【0076】
【化8】

【0077】
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。上記化合物及び後述する実施例、比較例に用いられる成分(B)においても、成分(A)と同様に分子内の各繰り返し構成単位の結合順序は全く任意である。
【0078】
本発明に使用する(C)の分子中にケイ素原子に結合している水素原子を2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(以下、成分(C)と略す)はSiH基を分子中に2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであれば制限なく使用できる。水素原子以外のケイ素原子に結合した有機基としては、前述の成分(B)と同じであり、中でも合成が容易で、かつ硬化後に良好な物理的性質を与えるという点から、メチル基が最も好ましい。かかる成分(C)は、直鎖状、分枝状または環状のいずれであっても良くこれらの混合物であっても良い。
【0079】
成分(C)の分子を構成するSiH基を有しないシロキサン単位の数(重合度に相当する)は特に限定されないが、歯科用印象材として好適な性質、即ち、硬化後において適度の硬度を有し、かつ充分な伸び、機械的強度が得られるようにするために、該シロキサン単位は0〜1000個、特に5〜500個であることが好ましい。
【0080】
本発明に使用する成分(C)の代表的なものを具体的に示せば、
【0081】
【化9】

【0082】
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。上記化合物及び後述する実施例、比較例に用いられる成分(C)においても、成分(B)と同様に分子内の各繰り返し構成単位の結合順序は全く任意である。
【0083】
本発明の歯科用印象材において、上記成分(A)、(B)及び(C)の配合割合としては、十分に硬化するものであれば特に限定されないが、印象材として適度な弾性歪を発現させるために成分(C)のSiH基の水素原子の総個数が成分(B)のSiH基の水素原子の総個数に対して、0.05〜2倍になる比であり、且つ成分(B)と成分(C)のSiH基の水素原子の総個数が成分(A)の末端不飽和結合の総個数に対して0.5〜5倍になる比であることが好ましい。これは、成分(B)と成分(C)のSiH基の水素原子の総個数が成分(A)の末端不飽和基の総個数に対して少なすぎる場合は硬化性が不充分となることがあり、また多すぎる場合は過剰のSiH基の水素原子が残存するために硬化時の水素発生による発泡や経時変化が生ずる場合があるためである。従って、特に好ましい配合割合としては、成分(C)のSiH基の水素原子の総個数が成分(B)のSiH基の水素原子の総個数に対して、0.1〜1倍になる比で、且つ成分(B)と成分(C)のSiH基の水素原子の総個数が成分(A)の末端不飽和結合の総個数に対して2〜4倍になる比であることが望ましい。
【0084】
また、物性に著しい影響を与えない範囲で、末端に不飽和結合をもつ有機基を分子内に1個しか含まないオルガノポリシロキサンや分子内にSiH基を1個しか含まないオルガノハイドロジェンポリシロキサンを添加してもよい。
【0085】
本発明に使用される成分(D)ヒドロシリル化反応触媒(以下、成分(D)と略す)は、通常のヒドロシリル化反応に用いられるものであれば制限なく使用することができ、例えば塩化白金酸、そのアルコール変性物、白金のビニルシロキサン錯体等を挙げることができる。なお、保存性を高めるためには、白金のビニルシロキサン錯体のようなクロル分の少ないものが好適である。
【0086】
この成分(D)の配合量特に限定されないが一般的には、白金重量換算でシリコーン系硬化性組成物中の未反応の反応性オルガノポリシロキサン成分の総量100重量部に対して0.1〜1000ppmの範囲とすれば良く、40〜500ppmがより好ましい。配合量が0.1ppm未満の場合は、成分(A)及び成分(B)の不飽和結合含有シリコーンと成分(C)のSiHシロキサンの架橋反応が充分に進行せず、1000ppmより多い場合は、白金黒の析出により硬化体が黄色く、或はひどいときには黒く着色したり、架橋反応の制御が困難になる等の問題点が生じる傾向にある。
【0087】
本発明に使用される成分(E)充填材(以下成分(E)と略す)は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)より得られるシリコーンゴムの補強材としての働きをする。
【0088】
成分(E)としては、一般に粉砕石英、溶融シリカ、湿式シリカ、乾式シリカ、珪藻土、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子等のシリカ系粉末、酸化アルミニウム、珪酸アルミニウム、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化ジルコニウム、カーボンブラック等が挙げられ、必要に応じてこれらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0089】
また、これらの充填材は必要に応じてその表面をポリジメチルシロキサンやオクタメチルシクロテトラシロキサンなどのポリオルガノシロキサン類、ヘキサメチルシラザンや1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルシラザンなどのシラザン類及びビニルトリエトキシシランなどのオルガノシラン類等の有機ケイ素化合物で処理したものを用いることができる。
【0090】
成分(E)の好適な添加量は、シリコーン系硬化性組成物中の未反応の反応性オルガノポリシロキサン成分の総量100重量部に対して4〜500重量部であり、更に好ましい添加量は7〜30重量部である。
本特許における歯科用シリコーン系硬化性組成物には、高分子量のポリオルガノシロキサン生ゴムやパラフィンワックス等を添加することができる。更に、必要に応じて黒色白金あるいは微粒パラジウム等を水素ガス吸収剤として添加できる。
【0091】
また、その物性を著しく低下しない範囲で更に他の添加剤を添加してもよい。かかる添加剤としては、反応抑制剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、酸化防止剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0092】
本発明の歯科用シリコーン系硬化性組成物は歯科用材料として用いられる。シリコーン系硬化性組成物はその成分を変えることで軟性材料から比較的硬い硬質材料まで幅広く用いることができる。
【0093】
中でも本発明中の硬化性組成物は、歯科用印象材や歯科用軟質義歯裏装材に対して好適に用いられる。
【0094】
例えば、歯科用印象材はシリコーン以外に寒天、アルギン酸塩、多硫化ゴム、ポリエーテル等が用いられているが、寒天、アルギン酸塩印象材あるいはその連合印象は臨床的に適度な弾性を有しているものの永久変形が大きい上に、水分の蒸発による経時的な寸法変化が大きく、引き裂き強度が小さい等の欠点があった。また、多硫化ゴムは臭いが強く硬化が緩慢なため、特殊な用途の印象に限られ、ポリエーテルゴム印象材は弾性が小さく、吸水膨張する欠点があった。
【0095】
上記印象材に対して、シリコーン系硬化性組成物を用いて作製された印象材は一般的に硬化性が優れ、硬化時の収縮が非常に小さく、副生物も生じず且つ無味無臭で発熱もほとんど無いという非常に優れた性質を有している反面、疎水性が高いことが大きな課題であった。
【0096】
近年、上記の付加型シリコーンに対して界面活性剤を添加して親水性を付与
させることが主流となっており、それによって臨床使用上、実用的には問題のないレベルまで改善されているが、これらの界面活性剤を多く配合させると保存中に印象材ペーストから少しずつブリードしてくる傾向にある。定期的に使用している場合には特に支障はないが、長期間使用しなかった場合には容器の先端部分に、わずかではあるが透明な界面活性剤が分離している。その場合、使用する直前に術者がブリードした界面活性剤部分を取り除いた後に使用しなければならない。
【0097】
本発明中の歯科用シリコーン系硬化性組成物は変性シリコーンを配合させることにより親水性を有していることから、上記課題を解決するために好適に用いることができる。
【0098】
本発明の歯科用シリコーン系硬化性組成物を歯科用印象材として用いる方法としては、通常、成分(A)、成分(B)及び/又は成分(C)並びに成分(D)が同時に共存しない(即ち、保存中にヒドロシリル化反応が起こらない)形態、例えば変性シリコーン、成分(A)、成分(D)、成分(E)、及び必要に応じて添加剤を含むペースト甲、並びに、変性シリコーン、成分(A)、成分(B)及び/又は成分(C)、成分(E)、及び必要に応じて添加剤を含むペースト乙からなる2包装型として調製され、使用直前に両者を混合して使用するのが一般的である。ペースト甲、乙の製造方法としては、必要成分を適量計量し、ニーダー、プラネタリー等の一般的な混練機によって均一になるまで混練することにより得ることができる。
【0099】
また、本発明中の歯科用シリコーン系硬化性組成物を歯科材料として最適に用いられるものとして歯科用軟質義歯裏装材が挙げられる。
【0100】
軟質義歯裏装材は古く等して口腔粘膜に対して不適合となった義歯に対して裏打ちする材料のことで、口腔内で口腔粘膜と直接接する部分であり義歯を口腔内で保持させる役割も有している。
【0101】
軟質義歯裏装材としては、主にポリ(メタ)アクリレート系のものと、シリコーンゴム系のものが知られている。
【0102】
ポリ(メタ)アクリレート系の軟質義歯裏装材は、一般にメチルメタクリレート、エチルメタクリレート等の(メタ)アクリレート系のラジカル重合性単量体の重合硬化体を主成分とするが、そのままでは軟質義歯裏装材として必要な柔軟さを有さないため、ジオクチルフタレートやジブチルフタレート等の可塑剤を配合する必要がある。
【0103】
他方、シリコーンゴムは本来的に生体適合性が高いため、シリコーンゴム系の軟質裏装材も幅広く用いられている。一般に、シリコーンゴムは弾性に富む柔らかい材料であるため、このようなシリコーンゴム系の軟質義歯裏装材においては別途可塑剤の配合を必要としないことから多用されている。
【0104】
一方、近年多く見られるようになってきた低唾液分泌者、いわゆる口腔乾燥症の患者にとっては口腔粘膜の乾燥に伴う義歯とのなじみの著しい低下が義歯の口腔内での維持安定の妨げとなっている。このような患者にとって適度な親水性、親和性を有している軟質義歯裏装材を使用すると、義歯の口腔内での安定しやすくなることから、そのような性質を有する軟質義歯裏装材が求められており、その元となるシリコーン系硬化性組成物の開発が望まれている。
【0105】
本発明における歯科用シリコーン系硬化性組成物は、変性シリコーン配合の効果により親水性を有しており上記のような口腔乾燥症の患者用の軟質義歯裏装材として特に有用である。
【0106】
本発明の歯科用シリコーン系硬化性組成物を軟質義歯裏装材として用いる方法としては、通常、成分(A)、成分(B)及び/又は成分(C)並びに成分(D)が同時に共存しない(即ち、保存中にヒドロシリル化反応が起こらない)形態、例えば変性シリコーン、成分(A)、成分(D)、成分(E)、及び必要に応じて添加剤を含むペースト甲、並びに、変性シリコーン、成分(A)、成分(B)及び/又は成分(C)、成分(E)、及び必要に応じて添加剤を含むペースト乙からなる2包装型として調製され、使用直前に両者を混合して使用するのが一般的である。ペースト甲、乙の製造方法としては、必要成分を適量計量し、ニーダー、プラネタリー等の一般的な混練機によって均一になるまで混練することにより得ることができる。
【0107】
またこの軟質義歯裏装材には、シリコーン樹脂の中でも特に柔軟なシリコーンゴムからなる粘膜調整材も含まれる。
【実施例】
【0108】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0109】
以下に実施例及び比較例に使用した(A)から(F)成分を示す。
・成分(A)〔不飽和シロキサン〕
用いた成分(A)を以下の表1にまとめた。
【0110】
【表1】

【0111】
・成分(B)及び(C)
用いた成分(B)SiHシロキサン及び成分(C)SiHシロキサンを、表2にまとめた。
【0112】
【表2】

【0113】
また用いた成分(D)から成分(F)は以下の通りである。
・成分(D):〔ヒドロシリル化反応触媒物質〕
白金−ジビニルジシロキサン錯体
・成分(E):〔充填材〕
ヒュームドシリカ「レオロシールZD−30ST」(トクヤマ製)
無水珪酸(和光純薬製)
・成分(F):〔分岐ポリグリセロール変性シリコーン〕
ソフケアGS−G(花王株式会社製)〔ビス(ポリグリセリル−3−オキシフェニルプロピル)ジメチコン〕
また、比較例において成分(F)代替として以下の化合物を用いた。
【0114】
ジメチルポリシロキサン
(TSL451−10、東芝シリコーン製、DMSと略す。)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(和光純薬製、POLと略す。
【0115】
また、実施例、比較例において歯科用シリコーン系硬化性組成物は下記の方法により評価した。
(1)親水性の評価
23℃の恒温室中で、各実施例比較例に示された組成を有するペースト甲、乙を等量ずつ計り取り、両者をスパチュラで30秒間練和した後、直径20mm、厚さ2mmの硬化体を作成した。接触角測定器(松永科学製)にて直径2mmの蒸留水滴との30秒後の接触角を測定した。その接触角が小さいほど、硬化体の親水性が高いことを意味する。
(2)硬度の測定方法
柔軟性の指標であるショアA硬度は、JIS−K7215(デュロメータ タイプA)に基づいて測定した。測定は練和後37℃で一晩静置した時点で行った。
(3)保存によるペーストからの液分離
ペースト甲、乙をそれぞれ23℃の恒温室中でそれぞれ静置1ヵ月間のペーストからの液分離の有無を観察した。
【0116】
評価は以下の3段階で行った。
【0117】
A;まったく液分離が見られなかった。
【0118】
B;目視でわずかな液状の浮きが見られた。
【0119】
C;透明な液体の分離が確認された。
(4)軟質義歯裏装材吸着保持性評価試験
表4の重合割合で示した化合物をそれぞれ計量し、プラネタリーミキサー(井上製作所製)で約4時間混合し、ペースト甲と乙を得た。このペーストをそれぞれ等量計り取り、両者を練和して以下に示す方法で評価した。
【0120】
有歯顎の上顎の義歯床を作成(「アクロン」GC社製)し、その表面に前述の方法で調製したペースト練和物を裏装した後、速やかに被験者の上顎粘膜に押し当てて上顎粘膜の形状を裏装材に印記させた。37℃の水中に24時間浸漬した。実験の直前に、口腔内の唾液を拭き取り、一時的に口腔内が乾燥している状態とした後、裏装材面を粘膜側にして口腔内に装着し、上顎から落ちるまでの時間(維持時間)を測定した。この実験を5回繰り返しその平均値を維持時間とした。
(5)印象材印象精度評価試験
プラネタリーミキサー(井上製作所製)で約4時間混合し、ペースト甲と乙を得た。このペーストをそれぞれ等量計り取り、両者を練和して以下に示す方法で印象精度を評価した。
【0121】
23℃の恒温室中で表4に示す組成を有するペースト甲、乙を等量ずつ計り取り、両者をスパチュラで30秒間練和した後、細線再現性評価用冶具(JIS T6513準拠)に対して、前もって前述の方法で調製し、練和したペーストをやや多めに盛り付け、ただちにガラス板で圧接させた後そのまま35℃の恒温水槽内で硬化させた。
【0122】
硬化後、サンプルを冶具より外し、ただちに目視もしくは拡大鏡を用いてサンプルを観察し、25mmの全長を再現した最も微細な線を印象精度の値とした。なお、上述の細線再現性評価用冶具には幅75、50、及び20μmの細線が施してあり、これらのより細い線までサンプルに再現できたものほど印象精度が高いことを意味している。
【0123】
実施例1
表3に示した組成で軟質義歯裏装材用のペースト甲、ペースト乙をそれぞれ調製した。なお、調製はプラネタリーミキサーを用いて行った。これらのペーストを等量ずつ計りとり、スパチュラを用いてすばやく練和した。得られた練和物を用いてそれぞれ評価を行った。結果を表4に示した。
【0124】
表4に示したように、水との接触角が68°であり、親水的になっていることがわかった。なお、通常水との接触角が90°を超えていれば疎水的であり90°以下であれば親水的であるとされている。また乾燥した口腔粘膜面に対して20秒間保持されており、保持力が上がっていることが示された。また硬度も33であり、軟質裏装材としての特性を十分有していることもわかった。さらに、1ヶ月保存後もペーストからの液分離も見られなかった。
【0125】
実施例2〜3
成分(F)の分岐ポリグリセロール変性シリコーンの添加量をかえたこと以外は実施例1と同様にして評価を行った。組成を表3、結果を表4に示した。
【0126】
表4に示しているように、いずれの組成も接触角が90°以下で親水的になっており、口腔粘膜面への保持力も上がっていることが示された。またいずれも軟質義歯裏装材に適した硬度を有していた。さらに、1ヶ月保存後もペーストからの液分離も見られなかった。
【0127】
実施例4〜6
成分(F)の分岐ポリグリセロール変性シリコーンをペースト乙の側に添加し、おのおの添加量をかえたこと以外は実施例1と同様にして評価を行った。組成を表3、結果を表4に示した。
【0128】
表4に示しているように、いずれの組成も接触角が90°以下で親水的になっており、口腔粘膜面への保持力も上がっていることが示された。またいずれも軟質義歯裏装材に適した硬度を有していた。さらに、1ヶ月保存後もペーストからの液分離も見られなかった。
【0129】
実施例7
成分(F)の分岐ポリグリセロール変性シリコーンをペースト甲及び乙の側に分配添加したこと以外は実施例1と同様にして評価を行った。組成を表3、結果を表4に示した。
【0130】
表4に示しているように、接触角が67°で親水的になっており、口腔粘膜面への保持力も上がっていることが示された。硬度も33を示しており軟質義歯裏装材に適した硬度を有していた。さらに、1ヶ月保存後もペーストからの液分離も見られなかった。
【0131】
実施例8〜14
成分(A)の不飽和シロキサン及び成分(B)、(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの種類または配合量をかえること以外は実施例1と同様にして評価を行った。組成を表3、結果を表4に示した。
【0132】
表4に示しているように、いずれの組成も接触角が90°以下で親水的になっており、口腔粘膜面への保持力も上がっていることが示された。またいずれも軟質義歯裏装材に適した硬度を有していた。さらに、1ヶ月保存後もペーストからの液分離も見られなかった。
【0133】
比較例1
成分(F)の分岐ポリグリセロール変性シリコーンを加えずに、その他の成分は実施例1と同様にしてペーストを調製し、実施例1と同様にして評価を行った。組成を表3、結果を表4に示した。
【0134】
表4に示したように、水との接触角が110°であり、極めて疎水的であることがわかった。また乾燥した口腔粘膜面に対する吸着はまったく見られず、このような状態に対してほとんど保持力を有していないことがわかった。
【0135】
比較例2〜3
成分(F)の分岐ポリグリセロール変性シリコーンを、グリコール部分を有していない直鎖のポリシロキサンに変え、その他の成分は実施例1と同様にしてペーストを調製し、実施例1と同様にして評価を行った。組成を表3、結果を表4に示した。
【0136】
表4に示したように、いずれの組成も水との接触角が110°であり、極めて疎水的であることがわかった。また乾燥した口腔粘膜面に対する吸着はまったく見られず、このような状態に対してほとんど保持力を有していないことがわかった。
【0137】
比較例4
成分(F)の分岐ポリグリセロール変性シリコーンを、界面活性剤に変え、その他の成分は実施例1と同様にしてペーストを調製し、実施例1と同様にして評価を行った。組成を表3、結果を表4に示した。
【0138】
表4に示したように、高い親水性、及び保持力を示すものの、保存による液分離が著しいものであった。
【0139】
【表3】

【0140】
【表4】

【0141】
実施例15
表5に示した組成で印象材用のペースト甲、ペースト乙をそれぞれ調製した。なお、調製はプラネタリーミキサーを用いて行った。これらのペーストを等量ずつ計りとり、スパチュラを用いてすばやく練和した。得られた練和物を用いてそれぞれ評価を行った。結果を表6に示した。
【0142】
表7に示したように、水との接触角が38°であり、親水的になっていることがわかった。なお印象材としては水との接触角が70°を下回るのが望ましいとされている。また印象精度も測定下限である20μmを示しており、印象材として高い印象精度を有していることがわかった。さらに、1ヶ月保存後もペーストからの液分離も見られなかった。
【0143】
実施例16〜17
成分(F)の分岐ポリグリセロール変性シリコーンの添加量をかえたこと以外は実施例15と同様にして評価を行った。組成を表5、結果を表6に示した。
【0144】
表6に示しているように、いずれの組成も接触角が70°以下で親水的になっていた。また印象精度も測定下限である20μmを示しており、印象材として高い印象精度を有していることがわかった。さらに、1ヶ月保存後もペーストからの液分離も見られなかった。
【0145】
実施例18〜20
成分(F)の分岐ポリグリセロール変性シリコーンをペースト乙の側に添加し、おのおの添加量をかえたこと以外は実施例15と同様にして評価を行った。組成を表5、結果を表6に示した。
【0146】
表6に示しているように、いずれの組成も接触角が70°以下で親水的になっていた。また印象精度も測定下限である20μmを示しており、印象材として高い印象精度を有していることがわかった。さらに、1ヶ月保存後もペーストからの液分離も見られなかった。
【0147】
実施例21
成分(F)の分岐ポリグリセロール変性シリコーンをペースト甲及び乙の側に分配添加したこと以外は実施例15と同様にして評価を行った。組成を表5、結果を表6に示した。
【0148】
表6に示しているように、接触角が37°を示しており親水的になっていた。また印象精度も測定下限である20μmを示しており、印象材として高い印象精度を有していることがわかった。さらに、1ヶ月保存後もペーストからの液分離も見られなかった。
【0149】
実施例22〜28
成分(A)の不飽和シロキサン及び成分(B)、(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの種類または配合量をかえること以外は実施例15と同様にして評価を行った。組成を表5、結果を表6に示した。
【0150】
表6に示しているように、いずれの組成も接触角が70°以下で親水的になっていた。また印象精度も測定下限である20μmを示しており、印象材として高い印象精度を有していることがわかった。さらに、1ヶ月保存後もペーストからの液分離も見られなかった。
【0151】
比較例5
成分(F)の分岐ポリグリセロール変性シリコーンを加えずに、その他の成分は実施例15と同様にしてペーストを調製し、実施例1と同様にして評価を行った。組成を表5、結果を表6に示した。
【0152】
表6に示したように、水との接触角が80°であり、印象材としては親水性が不足していることがわかった。また印象精度も75μmまでしか再現できず、精度も十分でないことがわかった。
【0153】
比較例6〜7
成分(F)の分岐ポリグリセロール変性シリコーンを、グリコール部分を有していない直鎖のポリシロキサンに変え、その他の成分は実施例15と同様にしてペーストを調製し、実施例15と同様にして評価を行った。組成を表5、結果を表6に示した。
【0154】
表6に示したように、いずれの組成も水との接触角が80°であり、印象材としては親水性が不足していることがわかった。また印象精度も75μmまでしか再現できず、精度も十分でないことがわかった。
【0155】
比較例8
成分(F)の分岐ポリグリセロール変性シリコーンを、界面活性剤に変え、その他の成分は実施例15と同様にしてペーストを調製し、実施例15と同様にして評価を行った。組成を表5、結果を表6に示した。
【0156】
表6に示したように、高い親水性、及び高い印象精度を示すものの、保存による液分離が著しいものであった。
【0157】
【表5】

【0158】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンのケイ素原子に、連結基を介して分岐ポリグリセロール鎖が少なくとも1つ結合した分岐ポリグリセロール変性シリコーンを含有してなる歯科用シリコーン系硬化性組成物。
【請求項2】
末端に不飽和結合をもつ有機基を分子内に少なくとも2個以上有するオルガノポリシロキサン(A)、分子内にSiH基を少なくとも3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)、分子内にSiH基を2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)、ヒドロシリル化反応触媒物質(D)、充填材(E)、及びシリコーンのケイ素原子に、連結基を介して分岐ポリグリセロール鎖が少なくとも1つ結合した分岐ポリグリセロール変性シリコーン(F)を含有する組成物からなる請求項1記載の歯科用シリコーン系硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか一項に記載の歯科用シリコーン系硬化性組成物を用いて調製された歯科用シリコーン印象材。
【請求項4】
請請求項1〜2のいずれか一項に記載の歯科用シリコーン系硬化性組成物を用いて調製された歯科用シリコーン軟質義歯裏装材。

【公開番号】特開2009−13137(P2009−13137A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179239(P2007−179239)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(391003576)株式会社トクヤマデンタル (222)
【Fターム(参考)】