説明

歯科用椅子の自動前垂れ突出量調整装置

【課題】 前垂れを水平(伏倒)した時に、該前垂れの先端側が伸長するものが開発されている。従って、このような前垂れにあっては、患者の伸長に合わせて伸長度合いを変えることで前記したような問題は解決できるが、しかし、従来の前垂れを伸長できるものにあっては、歯科医やアシスタントが患者の伸長に合わせて伸長度合い調整するものであることから、その作業が面倒であると共に調整に時間が掛かるといった問題があった。
【解決手段】 背凭れ3に対して上下動可能に装着された枕31の変位量に応じて前垂れ4の伸長量を所定の伸長量に調整することで、仰臥姿勢の患者の足長さと前垂れの長さとが一致するようにした歯科用椅子の自動前垂れ伸縮量調整装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用椅子(以下、単に椅子という)に着座している患者の身長に合わせて、該患者を治療姿勢のために仰臥状態としても基台前垂れから突出する移動前垂れの先端から足先が出ないようにした歯科用椅子の自動前垂れ突出量調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において椅子の高さを患者の身長に合わせて調整する技術として、例えば、実公平6−20513号公報に開示の考案がある。この考案は、椅子を床面に固定する固定部と、該固定部に対して上下動する治療台と、前記固定部に対して治療台の昇降度合いを表示する目盛りを設けたり、電気的に検出して表示部で表示したりするものであり、何れも歯科医が自分の治療し易いように前記目盛りや表示部の値を確認しながら歯科医自身が椅子の上下動をするものである。
【特許文献1】実公平6−20513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記した従来例にあっては、椅子の高さを目盛りや表示部の値を見ながら調整するものが開示されている。また、治療時において安楽な姿勢がとれるように患者の腿から先を乗せる前垂れが開示されているが、このような前垂れは治療状態時には水平状態となり、平常時には患者が座り易いように座部に対して垂直になるのである。そして、前記前垂れが水平状態となった場合に、身長の大きな患者の場合には足先が前垂れから出っ張り、また、身長の低い患者の場合には履いているスリッパが邪魔になるといった問題がある。
【0004】
そこで、近年、前垂れを水平(伏倒)した時に、該前垂れの先端側が伸長するものが開発されている。従って、このような前垂れにあっては、患者の伸長に合わせて伸長度合いを変えることで前記したような問題は解決できるが、しかし、従来の前垂れを伸長できるものにあっては、歯科医やアシスタントが患者の伸長に合わせて伸長度合い調整するものであることから、その作業が面倒であると共に調整に時間が掛かるといった問題があった。
【0005】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、患者の身長に合わせて上下動させる枕の上下動量に合わせて、前垂れの伸長量が自動的に調整されるので、歯科医やアシスタントによる調整を全く必要とせず、また、前垂れの伸長は前垂れの寝角度が所定以上になってから行われるようにしたので、前垂れの下端が床面に当接するのを防止できる歯科用椅子の自動前垂れ突出量調整装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の歯科用椅子の自動前垂れ伸縮量調整装置は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、背凭れに対して上下動可能に装着された枕の変位量に応じて前垂れの伸長量を所定の伸長量に調整することで、仰臥姿勢の患者の足長さと前垂れの長さとが一致するようにしたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の手段は、上下動可能な座部と、該座部に対して起伏可能に取付けられた背凭れと、該背凭れの上部に上下動自在に取付けられた枕と、前記座部に対して伏倒可能に取付けられた前垂れとから構成された歯科用椅子において、前記背凭れに対して枕を上下動した移動量を検出する枕高さ検出センサと、前記座部側に取付けられた傾動前垂れに対して伸縮可能に構成された移動前垂れの伸縮量を検出する前垂れ伸縮量検出センサと、前記枕を上下動して前記枕高さ検出センサが検出した変位量に応じて前記移動前垂れ検出センサが所定の伸縮量の値を検出すると前記移動前垂れの伸縮を停止する制御手段とより構成し、前記制御手段により患者の身長にあった分だけ移動前垂れの伸縮量を調整することを特徴とする。
【0008】
請求項3の手段は、上下動可能な座部と、該座部に対して起伏可能に取付けられた背凭れと、該背凭れの上部に上下動自在に取付けられた枕と、前記座部に対して伏倒可能に取付けられた前垂れとから構成された歯科用椅子において、前記背凭れに対して枕を上下動した移動量を検出する枕高さ検出センサと、前記座部側に取付けられた傾動前垂れに対して伸縮可能に構成された移動前垂れの伸縮量を検出する前垂れ伸縮量検出センサと、前記傾動前垂れの起伏量を検出する前垂れ角検出センサと、前記枕を上下動して前記枕高さ検出センサが検出した変位量に応じて前記前垂れ角検出センサが所定の伏倒量の値になるまで傾動前垂れを伏倒させ、かつ、傾動前垂れが所定の伏倒量となった値を前垂れ角検出センサが検出した後に、前記移動前垂れの伸縮を開始させ所定の伸縮量の値になるまで前記移動前垂れを伸縮させる制御手段とより構成し、前記制御手段により背凭れの伏倒に連動して伸縮前垂れの伸縮が行われることで、移動前垂れの下端と床面とが接触することがないようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項4の手段は、上下動可能な座部と、該座部に対して起伏可能に取付けられた背凭れと、該背凭れの上部に上下動自在に取付けられた枕と、前記座部に対して伏倒可能に取付けられた前垂れとから構成された歯科用椅子において、前記背凭れに対して枕を上下動した移動量を検出する枕高さ検出センサと、前記背凭れの起伏量を検出する背凭れ角検出センサと、前記座部側に取付けられた傾動前垂れに対して伸縮可能に構成された移動前垂れの伸縮量を検出する前垂れ伸縮量検出センサと、前記傾動前垂れの起伏量を検出する前垂れ角検出センサと、前記枕を上下動して前記枕高さ検出センサが検出した変位量に応じて前記前垂れ角検出センサが所定の伏倒量の値になるまで傾動前垂れを伏倒させ、かつ、前記移動前垂れ検出センサが所定の伸縮量の値になるまで前記移動前垂れを伸縮させ、また、前記背凭れが所定の伏倒量となった値を前記角検出センサが検出した後に、前記移動前垂れを伸縮させる制御手段とより構成し、前記制御手段により背凭れの伏倒に連動して伸縮前垂れの伸縮が行われることで、移動前垂れの下端と床面とが接触することがないようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は前記したように、枕を患者の身長に合わせて上下動することで、仰臥姿勢の患者の身長に合わせて前垂れを伸長することが自動的におこなわれるので、歯科医やアシスタントの手間を省くことができ、しかも、身長の高い患者の足先が前垂れからはみ出ることがなく、また、身長の低い患者の場合に履いているスリッパが伸長時に撥ね飛ばされることがない。
【0011】
また、前垂れの伏倒が所定の寝角度になるまで前垂れの伸長が行われることがないので、前垂れの先端が床面に当接して破損したり衝撃が発生して患者を驚かせることもない。
【0012】
さらに、前垂れの伏倒は背凭れの伏倒に連動して行われるので、患者の仰臥姿勢への移行がスムースに行われ安定した仰臥姿勢が得られると共に背凭れの伏倒が所定の寝角度になるまで前垂れの伸長が行われることがないので、前垂れの先端が床面に当接して破損したり衝撃が発生して患者を驚かせることもない等の効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、背凭れに対して上下動可能に装着された枕の変位量に応じて前垂れの伸長量を所定の伸長量に調整する。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明に係る歯科用椅子の自動高さ調整装置の一実施例を図面と共に説明する。
図1〜図4は歯科用椅子の構造を示し、図1は全体の背面側から見たシート等を削除した斜視図、図2は図1の側面図、図3は図1の背凭れ部分を背面側から見た斜視図、図4は前垂れを背面側から見た斜視図である。
【0015】
図において、1は公知の座部2を上下動させるための座部昇降機構にして、台座11に一端が固定され他端が座部2の裏面に取付けされた昇降用シリンダ12と、座部2の中心位置に一端が取付けられ他端が台座11に取付けられたスライド機構13とから構成されている。
【0016】
さらに、本発明の座部昇降機構にあっては、一端が上下動する座部1側に軸支され他端が他のリンク14aに軸支されたリンク14bとからなるリンク機構14と、該リンク機構の前記リンク14bに取付けられリンク14bの回動に伴って回転するギア14cと噛合するギア15aが回転軸に取付けられた前記台座11側に固定されたポテンショメータである座部高さ検出センサ15とが取付けられている。ここで、座部高さ検出センサ15としては、ポテンショメータに限定されるものではなく、エンコーダ等の座部2の高さを検出するものであればよい。
【0017】
このように構成した座部2の昇降手段は、後述する各種の制御をと行う制御手段より座部2の上昇指令が椅子側に設けられている制御回路に入力されると、図示しないポンプを駆動して油を座部用シリンダ12内に供給して座部2を上昇させる。該座部2が上昇するとリンク機構14が変位してリンク14bのギア14cが座部高さ検出センサ15のギア15aを回転させるので、座部高さ検出センサ15よりの変化量が制御手段に送出される。従って、制御手段はこの変化量を監視することで座部2の上昇量を把握できる。
【0018】
なお、制御手段から座部2の下降指令が出されると、昇降用シリンダ12の油を抜くための電磁弁が動作され座部2は下降する。この座部2の下降によって前記したと同様に座部高さ検出センサ15が作動されて変化量が制御手段に送出される。なお、前記座部2の昇降手段としてシリンダを使用したもので説明したが、公知のモータを使用して座部2の昇降を行うようにしてもよい。
【0019】
3は図3に詳述する前記座部2の後方に回転自在に軸支された背凭れにして、座部2と背凭れ3との間には背凭れ3の起伏動作をさせるための座部用シリンダ21が取付けられると共に伏倒状態の背凭れ2を起立させるためのスプリング22が取付けられている。また、背凭れ3の下端には一端が軸支されたリンク23aと、一端が前記リンク23aの他端と軸支された連結リンク23bと、一端が前記連結リンク23bの他端と軸支され他端が座部2の裏面に軸支されたリンク23cとから構成されたリンク機構23が取付けられている。
【0020】
そして、リンク23bは中間部が座部2の裏面に回動自在に軸支され、該回動部分にはポテンショメータである背凭れ角検出センサ24が取付けられ、リンク23bの回転量を検出するようになっている。25は座部2に取付けられた手摺りである。なお、背凭れ角検出センサ24はポテンショメータに限定されるものではなく、背凭れ3の起伏角度を検出できるものであればどのようなセンサであってもよい。
【0021】
このように構成した背凭れ3の起伏手段は、制御手段より背凭れ3の伏倒指令が椅子側に設けられている制御回路に入力されると、背凭れ用シリンダ21の油を抜くための電磁弁が動作され背凭れ3は伏倒する。該背凭れ3が伏倒するとリンク機構23の連結リンク23bが回転して該連結リンク23bが背凭れ角検出センサ24されるので、該背凭れ角検出センサ24よりの変化量が制御手段に送出される。従って、制御手段はこの変化量を監視することで背凭れの伏倒量を把握できる。
【0022】
なお、制御手段から背凭れ3の起立指令が出されると、図示しないポンプを駆動して油を背凭れ用シリンダ21内に供給して背凭れ3を起立させる。この背凭れ3の起立によって前記したと同様に背凭れ角検出センサ24が作動されて変化量が制御手段に送出される。なお、前記背凭れ3の起伏手段としてシリンダを使用したもので説明したが、モータを駆動源に使用して行うことも可能である。
【0023】
前記背凭れ3の背面には、枕31を上下動させるための第1シリンダ32と、該シリンダ32のラム32a先端に取付けられ枕31を治療部位(歯の上側か下側)に応じて前後方向に移動させるための第2シリンダ33が取付けられている。そして、前記第1シリンダ32のラム32a吐出、収納されることにより上下動する上下動部材34が背凭れ3に対してガイドレール35と後方への抜けを防止するための前記ガイドレール35側に固定された覆い板35とによって上下動自在にガイドされている。
【0024】
前記上下動部材34の上端には下端が前記第2シリンダ33のラム33aに接続された湾曲状の枕支持板36を摺動自在に支持するガイドローラ34aが取付けられ、また、前記枕支持板36の上端には枕31が固定されている。前記上下動部材34には側面にとテーパー面37aが形成された制御板37が取付けられ、この制御板37の前記テーパー面37aに摺接して回転するローラを有する回動板38aが背凭れ3側に回転自在に取付けられている。
【0025】
そして、前記回動板38aは同じく背凭れ3に固定されたポテンショメータである枕高さ検出センサ38の回転軸に取付けられている。39は第1,第2シリンダ32,33のラム32a,33aを下降させるためのスプリングである。なお、枕高さ検出センサ38はポテンショメータに限定されるものではなく、枕31の高さを検出できるものであればどのようなセンサであってもよい。
【0026】
このように構成した枕31の上下動手段は、制御手段より枕2の上昇指令が椅子側に設けられている制御回路に入力されると、図示しないポンプを駆動して油を第2シリンダ32内に供給して上下動部材34を上昇させる。該上下動部材34が上昇すると制御板37も共に上昇して、該制御板37のテーパー面37aが回動板38aを回動させて枕高さ検出センサ38よりの変化量が制御手段に送出される。従って、制御手段はこの変化量を監視することで枕31の上昇量を把握できる。
【0027】
なお、制御手段から枕31の下降指令が出されると、第1シリンダ32の油を抜くための電磁弁が動作され枕31は下降する。この枕31の下降によって前記したと同様に枕高さ検出センサ38が作動されて変化量が制御手段に送出される。なお、前記枕31の昇降手段としてシリンダを使用したもので説明したが、モータを駆動源に使用して行うことも可能である。
【0028】
4は図4に詳述する前記座板2の前方に回動自在に軸支された傾動前垂れ41と、該傾動前垂れ41に対して該傾動前垂れ41側に取付けられたガイドレール41aに摺動自在に案内されるガイド42aが取付けられた伸縮前垂れ42とからなる前垂れにして、前記傾動前垂れ41と座部2の間には傾動前垂れ41の起伏動作をさせるための前垂れ用シリンダ26が取付けられている。
【0029】
また、前記傾動前垂れ41と前記伸縮前垂れ42の先端に橋渡し固定された軸42bとの間には伸縮前垂れ42を傾動前垂れ41に対して摺動させるための摺動用シリンダ43が取付けられ、かつ、摺動用シリンダ43の吐出した状態のラム43aを収縮させるためのスプリング44が取付けられている。さらに、前記伸縮前垂れ42には側面にとテーパー面45aが形成された制御板45が取付けられ、この制御板45の前記テーパー面45aに摺接して回転するローラを有する回動板46aが傾動前垂れ41のガイドレール41a部分側に回転自在に取付けられている。
【0030】
そして、前記回動板46aは同じくガイドレール41a部分に固定されたポテンショメータである前垂れ突出量検出センサ46の回転軸に取付けられている。また、図示していないが、座部2と前垂れ4の傾動前垂れ41との間には前記前垂れ3のリンク機構23と同様なリンク機構が取付けられており、このリンク機構に前垂れ4の起伏角を検出する前垂れ角検出センサ47(図5参照)が取付けられている。なお、前垂れ突出量検出センサ46および前垂れ角検出センサ47はポテンショメータに限定されるものではなく、伸縮前垂れ42の傾動前垂れ41に対する突出量を検出できるもの、および、前垂れ4の起伏量を検出できるものであればどのようなセンサであってもよい。
【0031】
このように構成した前垂れ4の収縮手段は、制御手段より伸縮前垂れ42の伸長指令が椅子側に設けられている制御回路に入力されると、図示しないポンプを駆動して油を前垂れシリンダ26に供給すると共に摺動用シリンダ43内に供給して傾動前垂れ41を伏倒させ、かつ、伸縮前垂れ42を前方に突出させる。該伸縮前垂れ42が突出すると、制御板45も共に移動して、該制御板45のテーパー面45aが回動板46aを回動させて前垂れ突出量検出センサ46よりの変化量が制御手段に送出される。従って、制御手段はこの変化量を監視することで前垂れ4の突出量を把握できる。
【0032】
なお、制御手段から前垂れ4の起立指令が出されると、シリンダ26,43の油を抜くための電磁弁が動作され傾動前垂れ41を起立させ、かつ、伸縮前垂れ42を傾動前垂れ41側に移動する。この伸縮前垂れ42の移動によって前記したと同様に前垂れ突出量検出センサ46が作動されて変化量が制御手段に送出される。なお、前記傾動前垂れ41の起伏手段と伸縮前垂れ42の移動手段してシリンダを使用したもので説明したが、モータを駆動源として使用することも可能である。
【0033】
次に、前記した各種のセンサよりの出力で椅子の高さ、前垂れの伸長を制御するための制御回路を図5と共に説明する。なお、図5において各センサと同一センサは同一符号で示しているので説明は省略する。
図において、5は患者のうがい時に操作するうがいスイッチや、治療を行うために患者を仰臥姿勢にためのプリセットスイッチ、仰臥姿勢から元の着座位置に戻すための復帰スイッチ、1つの歯科用椅子を複数の歯科医が使用する場合に、使用とする歯科医の身長に適した座部の高さ位置となるように選択するための切換スイッチ等からなるスイッチ群にして、椅子の側面とドクターテーブルに設けられている。
【0034】
6は以下のフローチャートで説明する動作を行わせる制御手段にして、枕31を上下動させた昇降量に対して座部2の上下動量や前垂れ4の伸縮前垂れ42の突出量を決定するためのデータがテーブルとして、あるいは、や演算式が記憶されているメモリが組み込まれて、また、前記データから読み出した値、あるいは、演算した結果値と座部2の高さが一致したか、前垂れ4の突出量が一致したかなどの演算も行うものである。さらに、前記メモリには、標準的な身長の人に着座してもらい枕31を上下動させ、着座している人の頭部と枕31とフィットする枕高さを基準値として記憶させておく。
【0035】
次に、図6の患者がうがいを行うために、患者と床面に固定されたカスピダー装置aのスピットンボールb(図8参照)との高さ位置を合わせてうがいが行い易いように座部2の高さ調整を行う場合の動作を説明する。
先ず、うがいスイッチが操作されたか否かを制御手段6は監視し(ステップS11)、操作されたと判断すると、枕31の高さが調整され固定された位置における枕高さ検出センサ38よりの値を読み込み、基準値との差を演算して取り込む(ステップS12)、そして、メモリから前記枕31の高さ位置に対する座部2の高さ補正値を読み込み、あるいは演算を行って補正値を得る(ステップS13)。
【0036】
ここで、前記補正値が予め設定した範囲を越えて高いかを判断し(ステップS14)、図8(a)に示すように身長の低い患者の場合のように低いと判断すると座部用シリンダ12に油を供給(ステップS15)すると共に常時座部高さ検出センサ15の比較を行い(ステップS16)、前記補正値と一致したと判断すると油の供給を停止して座部2を停止する(ステップS17)。
【0037】
次いで、前記ステップS14の比較において低くはないと判断した場合には、補正値と設定値とが同じであるか否かを判断し(ステップS18)、同じであると判断した場合には座部2の上下動を行わず動作は終了し、また、図8(b)に示すように身長の高い患者の場合のように高いと判断した場合には、座部用シリンダ12の油を抜くべく電磁弁を開放してシリンダ12内の油を排出すると(ステップS19)共に常時座部高さ検出センサ15の比較を行い(ステップS20)、前記補正値と一致したと判断すると電磁弁を閉じて座部2を停止する(ステップS21)。
【0038】
なお、前記した動作説明は背凭れ3および前垂れ4とが起立状態にある場合で説明したが、診療位置であるプリセット状態からの後述する復帰動作を行った後に行うこととなる。
【0039】
次に、着座状態から診療状態への移行動作を説明するに、前記したと同様に図示していないがプリセットスイッチが操作されたか否かを監視した後に操作されたと判断すると、枕31の高さから座部2の上下動量および前垂れ4の伸縮前垂れ42の突出量をメモリから読み出し、あるいは、演算して補正値として記憶する。そして、この補正値となるようにシリンダ12および43へ油を供給したり電磁弁を開放して座部高さ検出センサ15および前垂れ突出量検出センサ46の値を監視しながら制御するものである。
【0040】
次に、図7のフローチャートと共に前垂れ4の伸縮前垂れ42を突出させるための動作を説明する。なお、前垂れの突出動作が行われる前あるいは同時に座部2を降下させる動作が行われるが、この動作については前記うがい動作の場合と同じなので説明は省略する。
【0041】
プリセットスイッチが操作されると、制御手段6は背凭れ3の現在の状態が起きた状態か否かを背凭れ角センサ24の値から監視し(ステップS31)、起きた状態の場合には前垂れ4の伏倒も、伸縮前垂れ42の突出動作も行わせない(ステップS32)。次いで、背凭れシリンダ21内の油が電磁弁の開放により背凭れ3が全起伏角度の1/4だけ伏倒された範囲内が否かを監視し(ステップS33)、1/4の範囲内に達したと背凭れ角検出センサ24が検出した値になると、前垂れ用シリンダ26に油を供給して1/8まで前垂れ角検出センサ47の値を監視しながら伏倒方向に変位させる。この時、前垂れ摺動用シリンダ43に油を供給しない(ステップS34)。
【0042】
さらに、制御手段6は、背凭れ用シリンダ21に油が供給されて伏倒角度が2/4の範囲内か否かを監視し(ステップS35)、2/4の範囲内に達したと判断すると、さらに前垂れ用シリンダ26に油を供給して2/8まで前垂れ4を伏倒方向に変位させる。この時も前垂れ摺動用シリンダ43に油を供給しない(ステップS36)が、これは、前垂れ4がある程度まで伏倒する以前に伸縮前垂れ42を突出させると、該伸縮前垂れ42の下端と床面とが当たる可能性があるためである。
【0043】
次いで、制御手段6は、背凭れ用シリンダ21に油が供給されて伏倒角度が3/4の範囲内か否かを監視し(ステップS37)、3/4の範囲内に達したと判断すると、さらに前垂れ用シリンダ26に油を供給し続けて3/8まで前垂れ4を伏倒方向に変位させる。また、前垂れ摺動用シリンダ43に油を供給して伸縮前垂れ42を1/4だけ突出させる(ステップS38)。
【0044】
ここで、図9(a)に示すように患者の身長が高い人の場合には枕31を高くし、低い人の場合には低くするので、枕高さ検出センサ38よりの値から伸縮前垂れ42の突出量が決定される。そして、身長の高い患者で伸縮前垂れ42を全部突出させる場合については、背凭れ3を寝角度が最大位置まで伏倒させる(ステップS39)。また、前垂れ4を4/4(最大伏倒位置)まで寝かせ、また、伸縮前垂れ42を8/8(最大突出位置)まで突出させて(ステップS40)、制御手段6が設定位置が4/4に達したと判断するとここで制御は終了し(ステップS41)、椅子は診療姿勢となる。
【0045】
なお、図9(b)に示すように身長が低い患者の場合において、枕31が1/4までしか引き出されていない場合には、伸縮前垂れ42を1/4だけ出し、また、枕31が2/4までしか引き出されていない場合には、伸縮前垂れ42を2/4だけ出すという制御することで、着座している患者の足先が伸縮前垂れ42の先端が飛び出して、履いているスリッパー等ガ伸縮前垂れ42に蹴飛ばされて脱げるようなことがなくなる。
【0046】
また、前記したうがいポジションにある椅子、あるいは、診療ポジションにある椅子を基準値に戻すには、復帰スイッチを操作することで、歯科医毎の基準値における各センサの値を制御手段6が記憶しているので、前記各センサが記憶されている値となるように制御手段6が各シリンダを制御することで、各歯科医毎の基準位置に戻すことができる。
【0047】
さらに、本実施例では、座部2の高さ位置、背凭れ3の起伏位置および前垂れ4の突出位置をポテンショメータのような停止位置を保持する検出センサを用いているので、現在位置をメモリに記憶させる必要はないので、メモリの容量の小さなものが使用できるが、他の検出センサのようにメモリに現在位置を記憶させな必要が有るものであっても当然に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る歯科用椅子の自動高さ調整装置の一実施例を示す歯科用椅子全体の背面側から見た斜視図である。
【図2】同上の側面図である。
【図3】背凭れの背面図である。
【図4】前垂れの背面図である。
【図5】制御手段を示すシステムブロック図である。
【図6】うがいポジションに椅子の高さを調整するための動作を示すフローチャートである。
【図7】診療ポジションに調整するための動作を示すフローチャートである。
【図8】うがいポジションの実施例における患者とスピットンボールとの関係を説明するための図であり、(a)は身長の低い患者の場合、(b)は身長の高い患者の場合の側面図である。
【図9】診療ポジションの実施例における患者と歯科医との関係を説明するための図であり、(a)は身長の高い患者の場合、(b)は身長の低い患者の場合の側面図である。
【符号の説明】
【0049】
12 座部用シリンダ
15 座部高さ検出センサ
2 座部
21 背凭れ用シリンダ
24 背凭れ角検出センサ
24 前垂れ用シリンダ
3 背凭れ
32 枕用シリンダ
38 枕高さ検出センサ
4 前垂れ
43 前垂れ用シリンダ
46 前垂れ突出量検出センサ
47 前垂れ角検出センサ
6 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背凭れに対して上下動可能に装着された枕の変位量に応じて前垂れの伸長量を所定の伸長量に調整することで、仰臥姿勢の患者の足長さと前垂れの長さとが一致するようにしたことを特徴とする歯科用椅子の自動前垂れ伸縮調整装置。
【請求項2】
上下動可能な座部と、該座部に対して起伏可能に取付けられた背凭れと、該背凭れの上部に上下動自在に取付けられた枕と、前記座部に対して伏倒可能に取付けられた前垂れとから構成された歯科用椅子において、前記背凭れに対して枕を上下動した移動量を検出する枕高さ検出センサと、前記座部側に取付けられた傾動前垂れに対して伸縮可能に構成された移動前垂れの伸縮量を検出する前垂れ伸縮量検出センサと、前記枕を上下動して前記枕高さ検出センサが検出した変位量に応じて前記移動前垂れ検出センサが所定の伸縮量の値を検出すると前記移動前垂れの伸縮を停止する制御手段とより構成し、前記制御手段により患者の身長にあった分だけ移動前垂れの伸縮量を調整することを特徴とする歯科用椅子の自動前垂れ伸縮調整装置。
【請求項3】
上下動可能な座部と、該座部に対して起伏可能に取付けられた背凭れと、該背凭れの上部に上下動自在に取付けられた枕と、前記座部に対して伏倒可能に取付けられた前垂れとから構成された歯科用椅子において、前記背凭れに対して枕を上下動した移動量を検出する枕高さ検出センサと、前記座部側に取付けられた傾動前垂れに対して伸縮可能に構成された移動前垂れの伸縮量を検出する前垂れ伸縮量検出センサと、前記傾動前垂れの起伏量を検出する前垂れ角検出センサと、前記枕を上下動して前記枕高さ検出センサが検出した変位量に応じて前記前垂れ角検出センサが所定の伏倒量の値になるまで傾動前垂れを伏倒させ、かつ、傾動前垂れが所定の伏倒量となった値を前垂れ角検出センサが検出した後に、前記移動前垂れの伸縮を開始させ所定の伸縮量の値になるまで前記移動前垂れを伸縮させる制御手段とより構成し、前記制御手段により背凭れの伏倒に連動して伸縮前垂れの伸縮が行われることで、移動前垂れの下端と床面とが接触することがないようにしたことを特徴とする歯科用椅子の自動前垂れ伸縮調整装置。
【請求項4】
上下動可能な座部と、該座部に対して起伏可能に取付けられた背凭れと、該背凭れの上部に上下動自在に取付けられた枕と、前記座部に対して伏倒可能に取付けられた前垂れとから構成された歯科用椅子において、前記背凭れに対して枕を上下動した移動量を検出する枕高さ検出センサと、前記背凭れの起伏量を検出する背凭れ角検出センサと、前記座部側に取付けられた傾動前垂れに対して伸縮可能に構成された移動前垂れの伸縮量を検出する前垂れ伸縮量検出センサと、前記傾動前垂れの起伏量を検出する前垂れ角検出センサと、前記枕を上下動して前記枕高さ検出センサが検出した変位量に応じて前記前垂れ角検出センサが所定の伏倒量の値になるまで傾動前垂れを伏倒させ、かつ、前記移動前垂れ検出センサが所定の伸縮量の値になるまで前記移動前垂れを伸縮させ、また、前記背凭れが所定の伏倒量となった値を前記角検出センサが検出した後に、前記移動前垂れを伸縮させる制御手段とより構成し、前記制御手段により背凭れの伏倒に連動して伸縮前垂れの伸縮が行われることで、移動前垂れの下端と床面とが接触することがないようにしたことを特徴とする歯科用椅子の自動前垂れ伸縮調整装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate