説明

残量警告システム

【課題】トラクタに装着する作業機により散布する内容物の残量を的確に警告し、かつ、汎用性の高い残量警告システムを提供することを目的とする。
【解決手段】警告装置10と、警告装置10と通信可能なセンサ20を有し、センサ20は、静電容量センサであって、作業機6が散布する内容物を収納する容器の非金属部分の外側側面から装着し、静電容量センサが感知する静電容量の変化により容器内の内容物を感知しなくなった場合、警告装置10で警告することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残量警告システムに関し、特に、トラクタに装着する作業機により散布する内容物の残量を的確に警告し、かつ、汎用性の高い残量警告システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、トラクタの後部に装着する作業機により肥料や薬剤などを散布する場合、散布する内容物の残量は作業機に有する目視用窓等をとおして、目視によりトラクタの運転者が確認する。
【0003】
一方、特許文献1には、農作業車における施肥装置において、肥料の残量を施肥タンク内のフロートが一定の位置まで下がったとき警告する発明が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、太陽電池からなる残量検出センサをホッパーに取付け、ホッパーの上部に取付けた、同じく太陽電池からなる基準センサとの間の起電力差を検出することにより、収納物により遮光されているか否かで肥料の残量を測定する残量検出装置が記載されている。
【特許文献1】実開平3−99917号公報
【特許文献2】特開昭63−33296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内容物を目視で確認する場合は、トラクタを運転する作業者は、後方の作業機側を確認しなければならず、安全性が低く、また、いつの間にか肥料がなくなり、気づかずにそのまま作業を続けてしまう場合がある。さらに、目視窓等で内容物の残量を確認する場合、窓に付着したほこりや土、窓にできた傷などにより、その確認が明確にできないこともある。
【0006】
また、特許文献1に記載の発明では、施肥タンク内のフロートをタンクの形状ごとに設計する必要があり、また、検出量等の設定の変更も容易でない。
【0007】
また、特許文献2に記載の発明では、少なくとも2つのセンサを必要とし、その配線取り付け等をしなければならない。さらに、残量検出センサは、ホッパー側からの光以外の光を通すと不正確になるので、その取付け、特に曲面への取付けは容易でない。さらに、光を通すか通さないかであるので、晴れている日や、曇りの日、夕方、早朝、日の差し方、内容物の光の通り具合、ホッパーの光の通り具合などにより、その制御をしなければならず、起電力差から正確な残量を検出するのはかなり大変であることが予想される。さらに、ホッパーは遮光性のものは使用できない。
【0008】
上記課題に鑑みて、本発明は、トラクタに装着する作業機により散布する内容物の残量を的確に警告し、かつ、汎用性の高い残量警告システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の残量警告システムは、トラクタに装着する作業機により散布される内容物の残量を警告する残量警告システムにおいて、警告装置と、当該警告装置と通信可能なセンサとを有し、前記センサは、静電容量センサであって、前記作業機の散布する内容物を収納する容器の非金属部分の外側側面から装着し、当該静電容量センサが感知する静電容量の変化により前記容器内の内容物を感知しなくなった場合、前記警告装置で警告することを特徴とするを特徴とする。
【0010】
さらに本発明の残量警告システムは、前記静電容量センサは、前記容器の外側側面にそって上下方向にスライドさせて位置調整できる取付金具を介して装着されていることを特徴とする。さらに本発明の残量警告システムは、前記静電容量センサと、前記警告装置は、トラクタと作業機の間に有する第1コネクタと、前記静電容量センサ近傍に有する第2コネクタとを介して、ハーネスで接続されていることを特徴とする。さらに本発明の残量警告システムは、前記ハーネスには、前記警告装置と前記第1のコネクタとの間に前記トラクタのバッテリに接続可能なコネクタを有することを特徴とする。さらに本発明の残量警告システムは、前記警告装置は、音と、光の少なくともいずれか一方で警告することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、残量警告システムにおいて、トラクタに装着する作業機により散布する内容物の残量を的確に警告し、かつ、汎用性の高いものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明の残量警告システムの一実施形態を示す配線図である。トラクタ1の後部に作業機6が装着されている。この作業機6は、トラクタからのPTOやその他の動力を基にして、作業機6が有する容器の内容物を圃場に散布する作業機である。散布するものは、例えば、肥料、種子、石灰、土壌改良剤など作業の必要に応じ様々なものがある。トラクタ1には、トラクタを運転するための運転席2があり、トラクタ1のバッテリとしてバッテリ3が備え付けられている。なお、トラクタ1に装着されている作業機であれば、トラクタ1の後部に限らず、トラクタ1の前部、側部等に装着される作業機でも、本発明は実現可能である。
【0014】
残量警告システム7は、警告装置10と、センサ20とが必要な構成である。これらの間に中間ハーネス17が接続されている。警告装置10は、作業機6に設けることも十分可能であるが、トラクタの運転者がトラクタの運転をしながら気づくことを考えれば運転席2の近傍に設けることが好ましい。さらには、運転席2の前方に設ければ、光による警告も後ろを振り向かずに気づくことができる。
【0015】
警告装置10には、外部出力用として、LED用端子11と、ブザー用端子12を有し、さらに、警告装置ハーネス13を有している。警告装置ハーネス13は、第1コネクタ(警告装置側)15と連結しており、第1コネクタ(中間ハーネス側)16と接続される。この第1コネクタ15、16は、トラクタ1に有するハーネス通し孔のグロメット5の近傍でトラクタ1より外側に配置されている。さらに、警告装置ハーネス13の途中からはバッテリ用コネクタ14へ分岐しており、このバッテリ用コネクタ14は、バッテリ3のバッテリ側コネクタ4と接続できるようになっており、トラクタのバッテリ3から、警告装置10や、センサ20の電源をとれるようになっている。
【0016】
警告装置10の警報は、光と音による警報が挙げられる。光による警報は、LEDによる警報や、内側にランプをいれ外面に文字で「残量少」とした警報等様々なものが考えられる。また、音による警報もブザー音や、音声によるもの等様々なもとのが考えられる。これらの方法を実現するために、警告装置10には、必要に応じてLEDやスピーカなどの必要な要素が組み込まれている。
【0017】
センサ20には、センサハーネス21と、その先端に第2コネクタ(センサ側)22が連結されている。第2コネクタ(センサ側)22はセンサ20の近傍に設けられている。そして、センサ20は、作業機6が有する容器の外側側面の非金属部分に取付けられている。センサ20の詳細について以下に述べる。
【0018】
センサ20は、静電容量センサである。静電容量センサは、センサ前面の測定距離範囲内(例えば、0〜10mmや0〜20mm)にある静電容量を調べることができるセンサである。誘電率は物質によって異なるため、測定範囲内にある物質の違いよって測定される静電容量は異なることとなる。静電容量センサを容器の外から設置した場合、容器の静電容量も含まれるが、内容物が測定範囲にあるかないかで、静電容量が異なるため、測定範囲において内容物がある場合とない場合の間でセンサのONOFFを設定しておけば、内容物がセンサの測定範囲内にあるかないかを知ることができる。そして、誘電率を考えると設置する容器の部分は非金属部分が好ましく、樹脂部に適用することができる。
【0019】
センサ20が、内容物を感知しなくなった場合、警告装置10に信号を通信するようにして、警告装置10で運転者に警告すれば、運転者は、センサ20が設置した高さには内容物がないことを知ることができる。
【0020】
センサ20の設置する高さは、内容物がなくなりかけて、トラクタの運転者に警告するのにふさわしい高さが好ましい。例えば内容物が残り5分の1から5分の2の間、さらに好ましくは3分の1の量になる高さ等である。内容物がなくなる、ぎりぎりの高さ(例えば残り5分の1以下)であると運転者が気づくのが遅れて内容物を散布しないままトラクタを進めてしまうことになる。また、内容物が十分に残っている量(例えば残り5分の2以上)であると、内容物を補充する回数が増えて効率的でなくなってしまうことになる。
【0021】
また、センサ20を複数個、それぞれ複数の高さに設置し、段階的に警告装置10に知らせることも可能である。例えば、段階に応じて警告装置10のLEDの色や発光量を変えて警報する場合や、最初は光だけで、次は、音も含める、もしくは音の量を変えていくなどの方法である。この場合のセンサ20の設置高さは、その警告内容に応じて任意に設定される。
【0022】
中間ハーネス17は、第1コネクタ(中間ハーネス側)16と、第2コネクタ(中間ハーネス側)18を有し、これらは、第1コネクタ(警告装置側)15と、第2コネクタ(センサ側)22とそれぞれ接続される。第1コネクタ15、16は、トラクタのグロメット5の外側に配置され、トラクタ1から作業機6をはずすときに当該接続をはずせば、配線も分離される。また、作業機6側のハーネスが断線等の不良となったとき、ハーネスのみの部品交換をすることができる。一方、第2コネクタ18、22は、センサ20のみ故障したときセンサ20の部品交換が可能となる。
【0023】
残量警告システム7の電源は、図1においては、バッテリ3により供給される。バッテリ3は、トラクタ1のバッテリであり、バッテリ用コネクタ14は日農工規格のコネクタであることが好ましい。また、バッテリがない場合でも対応できるよう、警告装置10に乾電池を搭載しておくことも可能である。さらに、太陽電池と接続することも考えられる。
【0024】
以下に、センサ20の取り付けについて具体例を述べる。
【実施例1】
【0025】
図2は、実施例1の散布機の側面図である。図3は、実施例1の散布機のトラクタ側からみた正面図である。実施例1の散布機はトラクタの後部に装着されて、容器30内の内容物を、アジテータ31を回転させながらシャッター32から落下させるものである。アジテータ31の回転は、トラクタ1のPTOや別に設けられたモータなどを動力源としている。シャッター32は、当該散布機の横方向(図3の横方向)に一定間隔で、孔が開いており、ここから、圃場へ内容物を散布することが可能となる。
【0026】
散布する内容物は、石灰や化学肥料、土壌改良剤などである。そして、容器30は耐食性を考えて、ステンレス等が使用される。容器30の形状は図に示されるように三角柱を横に倒し、一辺が下側になる形状である。容器30には、目視用窓34が備えられており、目視用窓34の材質は透明の樹脂である。つまり、目視用窓34の部分は非金属部となっている。この部分に、適した高さにセンサ20を取付けることにより、警告装置10での警告が可能となる。
【0027】
次に、センサ20の取付部の具体例を示す。
【0028】
図4は、センサ取付部の具体例を示す正面図である。図5は、図4のセンサ取付部の要部断面図である。図6は、センサ取付板40とセンサ20を示す正面図である。目視用窓34の外側にセンサ取付板40を取付け、そこにセンサ20を取付けることで、センサ20の高さ調整が可能なセンサ取付部となっている。センサ20は、センサ前面部23から目視用窓34を通し容器30内部の静電容量を感知することができる。なお、図5において、上側が容器内部、下側が外側となる。
【0029】
センサ取付板40は、四隅に、取付孔41を有し、中央上下方向に長方形の開口部43を有する。この開口部は、センサ20のセンサ前面部23より広い幅であり、センサ20が上下方向に移動できる範囲に開口している。一方、スライドミゾ42は、開口部43の両脇に上下方向に設けてあり、センサ取付孔49と当該スライドミゾ42に、ビス48と通すことでセンサ取付板40とセンサ20が固定される。スライドミゾ42の上下方向の長さは、センサ20が上下方向に移動できる範囲に設定される。これにより、ビス48を緩めるだけで、センサ20の上下方向の移動が楽に行うことができ、ビス48を締めることでセンサ20を固定できるので、高さの調節が容易となる。
【0030】
センサ20を取付ける前は、目視用窓34は、容器30に対して、第2のボルト47により6箇所固定されている状態である。これにセンサ取付板40を、カラー45を介して四隅を第1のボルト46で固定することにより、今まで、目視用窓34だけであったものに、部品の追加だけで、上下方向に設定可能にセンサ20を取付けることができる。
【実施例2】
【0031】
図7は、実施例2の散布機の側面図である。実施例2の散布機は、フレーム57の有する装着部53を介して装着部53側にトラクタが装着され、ホッパー50内の内容物を、散布筒51から散布する作業機である。散布筒51は、トラクタのPTO等からの動力により揺動しており、その遠心力により、内容物を散布筒51の先端(図7の右側)から散布するものである。そして、ホッパー50は、フレーム57と結合されているホッパー固定部54と第3のボルト55で固定されている。
【0032】
センサ20の取付けは、第3のボルト55の6箇所のうち2箇所で取付金具56を取付け、取付金具56に、センサ取付板40を取付け、さらに、センサ取付板40にセンサ20を取付ける。センサ取付板40と、センサ20は、実施例1の図4〜図6で説明したものと同じものである。
【0033】
取付金具56には、センサ20が上下に可動する範囲において、センサ前面部23とホッパー50の間に当該取付金具56が介在しないような開口部が設けられている。これらにより、当該散布機に有するホッパー固定部54の2箇所のボルト穴を利用して、取付金具56を取付けるようにできるため、センサ20を容易に取付けることができ、センサ20を上下方向に調整可能とすることが出来る。
【実施例3】
【0034】
図8は、実施例3の散布機の側面図である。実施例3の散布機は、実施例2の構成と基本的に同じである。そして、実施例2との違いはセンサ取付板40の取り付けであり、それについて以下に説明する。なお、センサ取付板40と、センサ20は、実施例1の図4〜図6で説明したものと同じものである。
【0035】
センサ取付板40は、センサ取付板40の上部と下部に、ベルト58によって取り付けられている。センサ取付板40の上部と下部ベルト58は、ホッパー50の胴回りをそれぞれ一周している。そして、上部側のベルト58は、上部方向に分岐するベルトの先端に有する引っかけ金具59で、ホッパー50の上部に固定されている。これらにより、ホッパー固定部54の形態に係らず、ベルト58を用いることで、センサ取付板40を所望の位置に取付けるようにでき、センサ20を上下方向に調整可能にセンサ20を容易に取付けることが出来る。
【0036】
以上のように、各実施例では、1つのセンサ20が上下に調節可能となるようセンサ取付板40を介して取り付ける方法を示したが、センサ20をセンサ取付板40に複数個付ければ、いずれも調節可能となる。そして上述したように段階的に警告することが可能となる。また、高さが特定できる場合は、調節可能としない取付け板によっても取り付けることも考えられる。このように、本発明では、容器の外側から静電容量センサであるセンサ20を取付けることにより、各種の容器に取付けられる可能性が高くなり、汎用性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の残量警告システムの一実施形態を示す配線図である。
【図2】実施例1の散布機の側面図である。
【図3】実施例1の散布機のトラクタ側からみた正面図である。
【図4】センサ取付部の具体例を示す正面図である。
【図5】図4のセンサ取付部の要部断面図である。
【図6】センサ取付板とセンサを示す正面図である。
【図7】実施例2の散布機の側面図である。
【図8】実施例3の散布機の側面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 トラクタ
2 運転席
3 バッテリ
6 作業機
10 警告装置
14 バッテリ用コネクタ
15 第1コネクタ(警告装置側)
16 第1コネクタ(中間ハーネス側)
17 中間ハーネス17
18 第2コネクタ(中間ハーネス側)
20 センサ
22 第2コネクタ(センサ側)
23 センサ前面部
30 容器
34 目視用窓
40 センサ取付板
50 ホッパー
54 ホッパー固定部
56 取付金具
58 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタに装着する作業機により散布される内容物の残量を警告する残量警告システムにおいて、
警告装置と、当該警告装置と通信可能なセンサとを有し、
前記センサは、静電容量センサであって、前記作業機の散布する内容物を収納する容器の非金属部分の外側側面から装着し、当該静電容量センサが感知する静電容量の変化により前記容器内の内容物を感知しなくなった場合、前記警告装置で警告することを特徴とする残量警告システム。
【請求項2】
請求項1に記載の残量警告システムにおいて、
前記静電容量センサは、前記容器の外側側面にそって上下方向にスライドさせて位置調整できる取付金具を介して装着されていることを特徴とする残量警告システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の残量警告システムにおいて、
前記静電容量センサと、前記警告装置は、トラクタと作業機の間に有する第1コネクタと、前記静電容量センサ近傍に有する第2コネクタとを介して、ハーネスで接続されていることを特徴とする残量警告システム。
【請求項4】
請求項3に記載の残量警告システムにおいて、
前記ハーネスには、前記警告装置と前記第1のコネクタとの間に前記トラクタのバッテリに接続可能なコネクタを有することを特徴する残量警告システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の残量警告システムにおいて、
前記警告装置は、音と、光の少なくともいずれか一方で警告することを特徴する残量警告システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−136227(P2009−136227A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317101(P2007−317101)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】