説明

段ボールシート用製函機

【課題】フィードロールから送り出される段ボールシートが搬送コンベア上に移る際にスリップが発生することがない段ボールシート用製函機を提供する。
【解決手段】本発明の段ボールシート用製函機1は、異なる厚みの印版が取り付け可能な印刷シリンダ18により段ボールシートに印刷する印刷部と、段ボールシートを搬送する搬送コンベア28と、フィードロール4と、給紙装置2と、制御装置10とを有し、制御装置は、搬送コンベアの速度を印刷シリンダの外径の周速と一致するように制御し、印刷位相ずれ量を予め求めて補正し、フィードロール速度を、段ボールシートの先端がフィードロールに到達した時点で給紙装置によるシートの供給速度と一致するように制御すると共に段ボールシートの先端がフィードロールを通過して最小寸法の段ボールシートの長さに相当する基準位置に到達したとき搬送コンベアの速度と一致しているように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールシート用製函機に係わり、特に、段ボールシートに印刷する印刷部を備えた段ボールシート用製函機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、段ボールシートを製造する際、段ボールシートに印刷,溝切,罫入等の加工を行なう段ボールシート用製函機が知られている。
段ボールシート用製函機は、積層された段ボールシートの最下層の段ボールシートを1枚ずつフィードロールへ供給する給紙装置(キッカー式、ロータリー式)と、フィードロールにより供給された段ボールシートに印刷する印刷部と、段ボールシートの溝切加工や罫入加工を行うスロッタクリーザ部等を備えている。
【0003】
段ボールシート用製函機の印刷部には、段ボールシートを印刷するための印版が取り付けられた印刷シリンダと、印版にインキを転移させるインキ供給ロールと、インキ供給ロールにインキを供給するアニロックスロールと、印刷シリンダの下方に設けられた受けロールと、段ボールシートを搬送する搬送手段(搬送コンベア等)が、設けられている。印刷シリンダに取り付けられる印版は、近年、比較的厚みがある標準的な厚み(約7mm)の印版以外に、厚みが薄い(約3mm)印版も用いられるようになっている。
【0004】
これらの厚みの異なる印版は一台の製函機において使用され、この異なる厚みの印版が印刷シリンダに取り付けられる場合には、印刷シリンダ本体の直径は一定であるから、印版の厚さが変わると、印版を含む印刷シリンダの外径が変わり、印刷シリンダの外径の周速が変化する。これにより、印刷シリンダの外径の周速と、搬送手段による段ボールシートの搬送速度に速度差が生じ、これにより、印刷誤差が発生する。
このような異なる厚みの印版を使用することにより生じる印刷誤差の発生を防止するようにした段ボールシート用製函機が、特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0005】
特許文献1には、標準的な厚みの印版と異なる厚みの印版を使用した場合に、上述した印刷誤差が発生しないように、印刷シリンダの外径の周速と、搬送コンベアの搬送速度を一致させると共に、搬送コンベアの搬送速度を変化させたことにより発生する印刷位相ずれ量を求め(この印刷位相ずれ量の算出方法は、特許文献1の段落〔0037〕〜〔0047〕の記載を参照)、この印刷位相ずれ量に基いて印刷開始前に印刷シリンダの角度補正を行うようにした製函機が記載されている。この特許文献1の製函機においては、フィードロールの速度は一定であり、さらに、印刷位相ずれ量が、フィードロールから印刷シリンダまでの距離、フィードロールと搬送コンベアとの速度差、段ボールシート長さとに基づいて算出されている。
【0006】
特許文献2には、特許文献1と同様、異なる厚みの印版を使用した場合に、上述した印刷誤差が発生しないように、印刷シリンダの外径の周速と段ボールシートを搬送する搬送ベルトの速度とを一致させるようにした製函機が記載されている。さらに、特許文献2の製函機においては、段ボールシートが搬送ベルト上で不慮にスリップした場合、センサにより段ボールシートの位置を検出し、印版の位置に対して段ボールシートが正しい位置となるように、印刷シリンダの非印刷回転角度領域において搬送ベルトの速度を補正するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−14369号公報
【特許文献2】米国特許第5,385,091号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の段ボールシート用製函機においては、印刷シリンダの周速と一致すように駆動される搬送コンベアの速度と、フィードロール(一定速度)から送り出される段ボールシートの速度との間に速度差が生じるため、段ボールシートがフィードロールを離れて搬送コンベア上に移動する際にスリップが発生することがあり、このスリップにより印刷ずれが起こるという問題を有していた。
さらに、特許文献1の段ボールシート用製函機においては、印刷位相ずれ量を求める際、段ボールシート長に基づいているため、段ボールシート長さが異なる度に、印刷位相ずれ量を補正する必要があり、その分、複雑な制御となる。
【0009】
また、特許文献2の段ボールシート用製函機においては、センサにより段ボールシートの位置を検出し、印版の位置に対して段ボールシートが正しい位置となるように、搬送ベルトの速度を補正するようにしているため、センサが必要であり、さらに、センサ出力により搬送ベルトの速度を可変速度制御するという複雑な制御となり、問題であった。
【0010】
そこで、本発明は、従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、フィードロールから送り出される段ボールシートが搬送手段上に移る際にスリップが発生することがなく、さらに、印刷位相ずれ量による補正を簡易に行うことができる段ボールシート用製函機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、段ボールシートに印刷する印刷部を備えた段ボールシート用製函機であって、複数の異なる厚みの印版が取り付け可能な印刷シリンダにより段ボールシートに印刷する印刷部と、印刷部において段ボールシートを搬送する搬送手段と、この搬送手段よりも上流側に設けられ、この搬送手段に段ボールシートを1枚ずつ供給するフィードロールと、このフィードロールよりも上流側に設けられ、積層された段ボールシートの最下層の段ボールシートを1枚ずつフィードロールに供給する給紙装置と、印刷シリンダの作動、搬送手段の作動、フィードロールの作動、給紙装置の作動を制御する制御部とを有し、制御部は、第1に、搬送手段の速度を印版を含む印刷シリンダの外径の周速と一致するように制御し、第2に、フィードロールの中心位置から印刷シリンダの中心位置までの距離、最小寸法の段ボールシート長さ、標準印版を使用する場合と標準印版と異なる厚みの印版を使用する場合とにおける搬送手段の速度差、及び、段ボールシートの先端がフィードロールから最小寸法の段ボールシートの長さに相当する基準位置まで移動する間に生じるずれ量に基づいて、印刷部における印刷位相ずれ量を予め求め、この印刷位相ずれ量だけ印刷シリンダの位相を印刷開始前に補正し、第3に、フィードロールの回転速度を、段ボールシートの先端がフィードロールに到達した時点で給紙装置によるシートの供給速度と一致するように制御すると共に段ボールシートの先端がフィードロールを通過して最小寸法の段ボールシートの長さに相当する基準位置に到達したとき搬送手段の速度と一致しているように制御することを特徴としている。
このように構成された本発明によれば、制御部により、フィードロールの回転速度が、段ボールシートの先端がフィードロールに到達した時点で給紙装置によるシートの供給速度と一致するように制御されると共に段ボールシートの段ボールシートの先端がフィードロールを通過して最小寸法の段ボールシートの長さに相当する基準位置に到達したとき搬送手段の速度と一致しているように制御されるようにしているので、段ボールシートの長さに関係なく、段ボールシートがフィードロールから離れる瞬間において、段ボールシートの速度と搬送手段の速度が一致しており、それにより、従来、段ボールシートの速度と搬送手段の速度とが異なることにより生じていた段ボールシートのスリップ(位置ずれ)を確実に防止することができ、印刷精度が向上する。
さらに、印刷シリンダに取り付けられる印版の厚みが変化し搬送速度を印刷シリンダの外径の周速に一致させたことにより生じる印刷位相ずれ量をフィードロールの中心位置から印刷シリンダの中心位置までの距離、最小寸法の段ボールシート長さ、標準印版を使用する場合と標準印版と異なる厚みの印版を使用する場合とにおける搬送手段の速度差及び段ボールシートの先端がフィードロールから最小寸法の段ボールシートの長さに相当する基準位置まで移動する間に生じるずれ量に基づいて、算出することができるので、段ボールシート長さが異なる度に印刷位相ずれ量を補正する必要がなく、印刷シリンダの印刷位相ずれ量の補正が簡易化される。
【0012】
本発明において、好ましくは、印刷シリンダは、複数個設けられ、制御部は、各印刷シリンダ毎に、フィードロールの中心位置から各印刷シリンダの中心位置までの距離、最小寸法の段ボールシート長さ、及び、上記搬送手段の速度に基いて、各印刷シリンダにおける印刷位相ずれ量を予め求めてこの印刷位相ずれ量だけ各印刷シリンダの位相を印刷開始前に補正するようにしている。
このように構成された本発明においては、印刷シリンダが複数個設けられた場合であっても、各印刷シリンダ毎に、それぞれの印刷シリンダの印刷位相ずれ量の補正を印刷開始前に自動的にあるいは手動操作により簡易に行うことができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、制御部は、標準印版より薄い厚さの印版を印刷シリンダに取り付け且つ段ボールシートが最小寸法のとき、フィードロールの回転速度を、段ボールシートの先端がフィードロールに到達した時点で給紙装置によるシートの供給速度と一致させると共に、段ボールシートの先端がフィードロールに到達した時点から段ボールシートの後端がフィードロールから離れるときまでに、給紙装置によるシートの供給速度から搬送手段の速度と一致する速度まで減速するよう制御する。
このように構成された本発明においては、標準印版より薄い厚さの印版を用い且つ段ボールシートが最小寸法のとき、フィードロールから離れた最小寸法の段ボールシートの速度を、薄い印版の印刷シリンダの外径の周速と一致する減速された搬送手段の速度と一致させることが出来るので、最小寸法の段ボールシートがフィードロールから離れるとき、段ボールシートのスリップを確実に防止することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、制御部は、標準印版より薄い厚さの印版を印刷シリンダに取り付け且つ段ボールシートが最大寸法のとき、フィードロールの回転速度を、段ボールシートの先端がフィードロールに到達した時点で給紙装置によるシートの供給速度と一致させると共に段ボールシートの先端がフィードロールを通過して最小寸法の段ボールシートの長さに相当する基準位置に到達するときまでに、給紙装置によるシートの供給速度から搬送手段の速度と一致する速度まで減速させ、その後、段ボールシートの後端がフィードロールから離れるまで、基準位置に到達したときの回転速度に保持するように制御する。
このように構成された本発明においては、標準印版より薄い厚さの印版を用い且つ段ボールシートが最大寸法のとき、フィードロールから離れた最大寸法段ボールシートの速度が、その薄い印版の印刷シリンダの外径の周速と一致する減速された搬送手段の速度と基準位置で一致し、その後、段ボールシートの後端がフィードロールから離れるまで、基準位置に到達した時点でのフィードロールの回転速度に保持されるので、最大寸法の段ボールシートであっても、それがフィードロールから離れる瞬間において、段ボールシートのスリップを確実に防止することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、給紙装置は、回転動作をクランク機構により往復動作に変換してキッカーにより積層された段ボールシートの最下層の段ボールシートを1枚ずつ押し出すキッカー装置を備え、制御部は、キッカーの速度を、段ボールシートの先端がフィードロールに到達する前に最大速度となるように制御する。
このように構成された本発明においては、回転動作を往復動作に変換するキッカーの特性を利用して、段ボールシートを効果的にフィードロールへ供給することができる。特に、キッカーが最大速度から減速しているときに、段ボールシートの先端がフィードロールに供給されるので、本発明のようにフィードロールを可変速に制御する場合に、その制御によるフィードロールの変速に与える影響を抑制することが出来る。
【0016】
本発明において、好ましくは、給紙装置は、積層された段ボールシートの最下層の段ボールシートの下方に設けられた給紙ローラにより、段ボールシートを1枚ずつ供給するロータリー式である。
【発明の効果】
【0017】
本発明による段ボールシート用製函機によれば、フィードロールから送り出される段ボールシートが搬送手段上に移る際にスリップが発生することがなく、さらに、印刷位相ずれ量による補正を簡易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態による段ボールシート用製函機の全体側面図である。
【図2】厚みの異なる印版が取り付けられた印刷シリンダの一部を示す図である。
【図3】本発明の実施形態による段ボールシート用製函機の要部を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態による段ボールシート用製函機のキッカー式の給紙装置を示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態による段ボールシート用製函機における最小寸法の段ボールシートを供給する場合(図5(a))と、最大寸法の段ボールシートを供給する場合(図5(b))のフィードロールの速度制御の内容を示す図である。
【図6】本発明の実施形態による段ボールシート用製函機のキッカー式の給紙装置におけるキッカー位置とクランクギア位置との関係を示す線図である。
【図7】本発明の実施形態による段ボールシート用製函機のキッカー式の給紙装置のキッカー速度とクランクギア位置との関係を示す線図である。
【図8】本発明の実施形態による段ボールシート用製函機における薄い印版を使用した場合のフィードロールの速度制御内容を示す線図である。
【図9】本発明の実施形態による段ボールシート用製函機における標準厚の印版を使用した場合のフィードロールの速度制御内容を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による段ボールシート用製函機を説明する。先ず、図1乃至図4により、本発明の実施形態による段ボールシート用製函機の基本構造を説明する。図1は本発明の実施形態による段ボールシート用製函機の全体側面図であり、図2は厚みの異なる印版が取り付けられた印刷シリンダの一部を示す図であり、図3は本発明の実施形態による段ボールシート用製函機の要部を示す概略構成図であり、図4は本発明の実施形態による段ボールシート用製函機のキッカー式の給紙装置を示す側面図である。
【0020】
図1に示すように、符号1は、本実施形態による段ボールシート用製函機を示し、この段ボール用製函機1は、段ボールシートSが上流側から下流側へ搬送される搬送方向に沿って、キッカー式給紙装置2、フィードロール4、印刷部6、スロッタクリーザ部8を備え、さらに、これらの作動を制御する制御装置10を備えている。
【0021】
先ず、印刷部6について説明する。印刷部6には、上流側から3個の印刷ユニット12,14,16が設けられている。各印刷ユニットは、同一構成であるため、上流側にある印刷ユニット12についてのみ説明する。印刷ユニット12には、印刷シリンダ18が設けられ、このシリンダ18には印版20(図2参照)が取り付けられている。この印刷シリンダ18の近傍には、印版20にインキを転移させるインキ供給ロール22と、インキ供給ロール22の表面から余分なインキを取り除くためのインキ絞りロール24が設けられている。
【0022】
印刷シリンダ18の下方には受ロール26が設けられており、段ボールシートSは印版20と受ロール26とにより挟まれた状態で印刷が行なわれる。各印刷ユニット12,14,16の印刷シリンダ18の間、及び、フィードロール4の間には、それぞれ、多数の搬送ロールからなる搬送コンベア28が配置されている。また、搬送コンベア28の下方には、真空吸引ボックス29が設けられており、下方から段ボールシートSを吸引しながら、搬送コンベア28により、段ボールシートSが搬送されるようになっている。
【0023】
さらに、印刷シリンダ18はモータMPにより、インキ供給ロール22はモータMIにより、それぞれ単独で駆動されるようになっている。また、搬送コンベア28も、モータMCにより、単独で駆動されるようになっている。これらの駆動用のモータMP、モータMI、モータMCは、それぞれ、制御装置10から制御信号を受け取り、それぞれ単独で制御されるようになっている。
【0024】
ここで、図2に示すように、本実施形態の段ボールシート用製函機1の印刷シリンダ18には、異なる厚みの印版20が取り付け可能となっている。図2(a)は印版20の厚みがH0(=7mm)である標準の印版が取り付けられた印刷シリンダを示し、印版20が取り付けられた印刷シリンダ18の外径(直径)は、基準径D0(mm)となっている。図2(b)は印版20の厚みがH1(=3mm)である厚みの薄い印版が取り付けられた印刷シリンダを示し、この薄い印版20が取り付けられた印刷シリンダ18の外径(直径)は径D1(mm)となっている。
【0025】
次に、スロッタクリーザ部8について説明する。スロッタクリーザ部8は、印刷された段ボールシートSに罫入加工するためのプリクリーザ30及びメインクリーザ32と、段ボールシートを溝切加工するためのスロッタ34と、これらのプリクリーザ30、メインクリーザ32、スロッタ34を同一速度で制御するモータMSとを備えている。
【0026】
次に、図1及び図3により、給紙装置2及びフィードロール4について説明する。先ず、フィードロール4は、段ボールシートSを挟むようにして一対のものが設けられている。フィードロール4には、フィードロール4を速度可変に制御するためのモータMFが設けられている。
【0027】
キッカー式給紙装置2は、段ボールシートSを積層するためのテーブル36と、段ボールシートSの先端が当接し固定配置されたフロントゲート38と、段ボールシートSの後端が当接するバックガイド40と、積層された段ボールシートSの最下層の段ボールシートSをフィードロール4へ押し出すキッカー装置42(図4参照)とを備えている。ここで、バックガイド40とキッカー装置42は、段ボールシート長により、一体的に搬送方向に沿って位置が移動可能となっている
【0028】
給紙装置2のキッカー装置42は、その詳細が図4に示されているように、駆動用のモータMKと、このモータMKの回転動作を往復運動に変換するクランク機構44と、このクランク機構44の他端に連結されたスライド部材48と、このスライド部材48をシート搬送方向にガイドするリニアガイド50と、スライド部材48に取り付けられ、段ボールシートSをフィードロール4に向かって押し出すキッカー52を備えている。
【0029】
ここで、クランク機構44は、モータMKにより回転するフライホイール46と、このフライホイール46の表面の外周側に取り付けられた支持ピン54と、この支持ピン54を挟み且つ支持ピン54と摺動するU字形状の摺接挟持部材56と、この摺接挟持部材56の後端側の支点軸58を介して取り付けられた第1アーム部材60及び第2アーム部材62とを備えている。ここで、クランク機構44において、摺接挟持部材56と第1アーム部材60とは、支点軸58において、所定の角度γに設定され、この角度γが保持されるようになっている。
【0030】
このキッカー装置42は、フライホイール46の1回転に伴い支持ピン54が1回転すると、その支持ピン54の回転に応じて、摺接挟持部材56が支持ピン54に対して摺動しながら揺動する。摺接挟持部材56の揺動は、角度γで保持された第1アーム部材60に伝達されて、第1アーム部材60を所定角度Aで揺動させる。この揺動は、第2アーム部材62に伝達され、スライド部材48にシート搬送方向の変位(往復動)が加わる。従って、スライド部材48に取り付けられたキッカー52は、シート搬送方向に一往復し、段ボールシート1枚がフィードロール4に押し出されるようになっている。
【0031】
ここで、給紙装置2のキッカー装置42は、バックガイド40と共に一体的にフレーム66に組み付けられている。フレーム66はレール68上を段ボールシート搬送方向に移動可能となっており、段ボールシート長さ(搬送方向の長さ)に応じて、フィードロール4及びフロントゲート38に対するバックガイド40及びキッカー52の位置を調整することが出来るようになっている。
【0032】
制御装置10には、段ボールシートSを生産するために必要なデータ、シートサイズ、印刷の位置、印版の厚み等が記憶されている。また、制御装置10は、上述した各モータである印刷シリンダ用モータMP、インキ供給ロール用モータMI、搬送ロール用モータMC、スロッタクリーザ用モータMS、フィードロール用モータMF、キッカー装置用モータMKの回転速度等の駆動状態を制御し、これにより、印刷の位置等が制御されるようになっている。
【0033】
次に、上述した本実施形態による段ボールシート用製函機の作動(動作)を説明する。
先ず、厚みの異なる印版20を印刷シリンダ18に取り付けた場合には、印刷シリンダ18の外径が変化して、印刷シリンダ18の周速が変化する。これに対応するため、本実施形態では、搬送コンベア28の速度が印版20を含む印刷シリンダ18の外径の周速と一致するように、搬送コンベア用モータMCの駆動状態を制御する。具体的には、後述するように、標準の厚さ7mmの印版を使用したときの印刷シリンダの外径の周速が周速Vpであるとすると、搬送コンベア28による搬送速度が速度Vpとなるようにする。一方、薄い印版を使用したときの印刷シリンダの外径の周速が周速Vp×D1/D0であるとすると、搬送コンベア28による搬送速度を速度Vp×D1/D0となるようにする。このため、異なる厚みの印版20を使用しても、常に印刷シリンダ18の外周の周速(=印版周速)と段ボールシートSの搬送速度とを一致させることができるので、印刷精度を向上させることができる。
【0034】
また、インキ供給ロール22を駆動するモータMIについても同様に、インキ供給ロール22の回転速度を印版12を含む印刷シリンダ18の外径の周速と一致するように制御することにより、インキ供給ロール22から印刷シリンダ18の印版20へインキを精度良く転移させることができる。
【0035】
次に、図3及び図5により、フィードロールの速度制御内容(詳細は後述する)及び印刷位相ずれ量の算出方法を説明する。図5は本発明の実施形態による段ボールシート用製函機における最小寸法(Kmin)の段ボールシートを供給する場合(図5(a))と、最大寸法(Kmax)の段ボールシートを供給する場合(図5(b))のフィードロールの速度制御の内容を示す図である。
【0036】
先ず、図5(a)に示すように、最小寸法の段ボールシートS(シート搬送方向に対するシート長がKmin)を供給するとき、フィードロール4の速度V3が、段ボールシートSの先端がフィードロール4に到達した時に後述するキッカー速度V1と等しくなり、段ボールシートSの後端がフィードロール4を離れるとき(即ち、段ボールシートSの先端がフィードロール4からKminの距離だけ移動したとき)、搬送コンベア28の搬送速度V2と等しくなっているように、制御装置10によりフィードロール用モータMFを制御する。即ち、フィードロール速度V3=V1→V2となる。
【0037】
次に、図5(b)に示すように、最大寸法の段ボールシートS(シート搬送方向に対するシート長がKmax)を供給するとき、フィードロール4の速度V3は、段ボールシートSの先端がフィードロール4に到達した時に後述するキッカー速度V1と等しくなるように制御し、段ボールシートSの先端がフィードロール4から最小寸法の段ボールシートSの長さと等しいKmin(=固定値)の距離だけ移動した位置(=基準位置(P1))に到達したとき、搬送コンベア速度V2と等しくなるように、制御装置10によりフィードロール用モータMFを制御する。即ち、フィードロール速度V3=V1→V2となる。その後は、最大寸法の段ボールシートSの後端がフィードロール4を離れるまで、V3=V2の関係が保持される。
【0038】
このように、本実施形態による段ボールシート用製函機1においては、フィードロール速度V3は、段ボールシートSの長さに関係なく、段ボールシートSの先端が基準位置P1(Kmin)に到達したときには、搬送コンベア28の搬送速度V2と等しくなるように制御される。換言すれば、本実施形態の段ボールシート用製函機1においては、段ボールシートSの先端が基準位置に到達した以降は、フィードロール4の速度を搬送コンベア28の搬送速度と一致する(フィードロール4と搬送コンベア28間に速度差が無い)ように制御している。
【0039】
従って、本実施形態による段ボールシート用製函機1における印版厚3mmの印版を使用したとき(印刷シリンダ18の外径D1)の各印刷ユニット12,14,16での「印刷位相ずれ量δi」は、標準印版(7mm)を使用したときの印刷シリンダ18の外径D0により、以下の式により算出される。
δi=(Li−Kmin)×(1−D1/D0)+α
ここで、Liはフィードロールの中心位置から各印刷シリンダ18の中心位置までの距離(=固定値)、Kminはフィードロール4の中心位置から基準位置までの距離(=固定値)、αは段ボールシートSの先端がフィードロール4から基準位置まで移動する間に生じるずれ量(=固定値)を表す。
(1−D1/D0)は標準印版(厚さ7mm)使用時の搬送コンベア速度と厚みの異なる印版(厚さ3mm)使用時の搬送コンベア速度の速度差に対応した(速度差を表す)定数である。
【0040】
αは、標準印版(厚さ7mm)使用時の印刷シリンダの周速(=標準印版(厚さ7mm)使用時の搬送コンベア速度)と、フィードロールの周速の速度(=段ボールシート搬送速度)との速度差、及び、段ボールシートSの先端がフィードロール4から基準位置まで移動する間においてその速度差が生じる継続時間から算出される。
【0041】
このように、本実施形態による段ボールシート用製函機1においては、印刷位相ずれ量δiを算出するとき、基準位置から印刷シリンダまでの距離(L−Kmin)を使用し、「段ボールシート長さ」は無関係なものとなっている。
このようにして予め求めた印刷位相ずれ量δiだけ、印刷シリンダ用モータMPにより、印刷シリンダ18の非印刷領域において、印刷シリンダ18の位相を補正し、印刷位相ずれ量による印刷ずれを防止している。
【0042】
なお、この「印刷位相ずれ量δi」は、各印刷ユニット12,14,16において予め算出される。この場合、各印刷ユニット12,14,16におけるフィードロール4と印刷シリンダ18までの距離は、図3に示すように、L1,L2,L3となる。各印刷ユニットにおいて、同様に、各印刷位相ずれ量δiだけ、印刷シリンダ用モータMPにより、印刷シリンダの位相を印刷開始前に補正し、印刷位相ずれ量による印刷ずれを防止している。
【0043】
次に、図6乃至図8により、キッカー装置の動作を説明する。図6は本発明の実施形態による段ボールシート用製函機のキッカー式の給紙装置におけるキッカー位置(バックガイドを基準としたキッカー先端の位置)とクランク機構の回転角度(フライホイールの回転角度)との関係を示す線図であり、図7はキッカー速度(V1)とクランク機構の回転角度(θ1)との関係を示す線図である。
【0044】
先ず、キッカー装置の42のキッカー52による段ボールシート1枚の給紙動作と、印刷シリンダ1回転の動作は同期している。従って、標準の厚さ7mmの印版20の使用時の印刷シリンダ18は上述したように基準径D0(mm)であるので、クランク機構44の回転角度θ1が1度進むと印刷シリンダ18の外周面はD0×π/360(mm)だけ、段ボールシートSの搬送方向に回転することになる。このとき、θ1単位角度当りの印刷シリンダ18の周速はVp=D0×π/360となる。
【0045】
ここで、標準の厚み7mmの印版20に対して、薄い厚さの3mmの印版20を使用した時の印刷シリンダ18の直径をD1とすると、薄い印版20を使用したときの印刷シリンダ18の外周速はVp×D1/D0となる。
なお、給紙開始時に段ボールシートSの先端が当接するフロントゲートの位置からフィードロール中心までの距離(=段ボールシート先端がフィードロールに到達するまでのバックガイド40を基準としたキッカー52の進行量)をXβとする。
【0046】
次に、キッカー装置42の動作を説明すると、図7に示すように、クランク機構44の回転角度がθ1=α(度)のとき、キッカー52の速度(V1)が最高速度Vmaxとなる。このキッカー52の最高速度Vmaxは、標準印版を使用したときの印刷シリンダ20の周速Vpよりも高速である。キッカー52が最高速のときのバックガイド42の位置を基準にした段ボールシートSの進行量をXαとすると、図6に示すように、その進行量Xαは、フィードロール4への段ボールシート先端の到達時のキッカーの進行量(=Xβ)よりも小さい。すなわち、キッカー52は、段ボールシートSの先端がフィードロール4の中心位置に到達する前に最高速度に達し、そこから減速し、段ボールシートSの先端がフィードロールの中心に到達する位置でV1=Vpとなる。このように、キッカー52が減速段階に入り、そして、キッカー52の速度(V1)、即ち、段ボールシートSの供給速度が、標準の厚みの印版(7mm)を使用した場合の印刷シリンダ18の外周速Vpと一致した時点で、段ボールシートSの先端がフィードロール4に到達するように、キッカー装置用のモータMKが制御される。
【0047】
次に、図8及び図9により、フィードロールの可変速度制御の内容を説明する。図8は薄い印版(3mm)を使用した場合のフィードロールの速度制御内容を示す線図であり、図9は標準厚の印版(7mm)を使用した場合のフィードロールの速度制御内容を示す線図である。
【0048】
図8に示すように、薄い印版(3mm)を使用した場合で且つ最小寸法(=Kmin)の段ボールシートSが供給される場合には、段ボールシートSの先端がフィードロールに到達するのは、θ1=βの時(図6、図7参照)であり、このとき、フィードロール4の速度V3が速度Vpとなるようにする。そして、このθ1=βのときから、段ボールシートの後端がフィードロール4を離れるときまで(即ち、段ボールシートの先端がフィードロール4に到達したときから、フィードロールを通過してKminの距離に到達するときまで)、フィードロール4の速度(V3)を、速度Vpから薄い印版使用時の印刷シリンダの外径の周速である速度Vp×D1/D0まで減速させている。
【0049】
より詳細には、図8に示すように、クランク機構の回転角度θ1が、βからφmin(=Kmin÷(D0×π/360))進むまでの間、フィードロール4の速度V3を、速度Vpから速度Vp×D1/D0まで減速させている。
ここで、φminは、標準厚の印版(7mm)を使用し、フィードロール4の速度(V3)が速度Vpに一定に保持される場合に、段ボールシートSの先端がフィードロール4に到達してから、Kminの距離に到達する間に、クランク機構の回転角度θ1が進行する角度である。
【0050】
図8の線図に示されるように、本実施形態のフィードロール制御では、フィードロール4の速度V3は、段ボールシートSの先端がフィードロールに到達してから、クランク機構の回転角がφmin進んだ時点で、搬送コンベア28による搬送速度Vp×D1/D0に一致するように減速制御される。
【0051】
これにより、最小寸法の段ボールシートSが、フィードロール4から離れるとき、即ち、上述した基準位置に到達するときまでに、フィードロール4の速度(V3)、即ち、段ボールシートSの速度を、搬送コンベア28による搬送速度Vp×D1/D0に一致させることが出来る。即ち、上述したように、φminはフィードロール4の速度(V3)が標準厚の印版(7mm)の速度Vpに一定に保持される場合に、段ボールシートSの先端がフィードロール4に到達してから、Kminの距離に到達する間に、クランク機構の回転角度θ1が進行する角度である。従って、図8のようにフィードロールの速度を減速させる分、最小寸法の段ボールシートがフィードロールから離れる角度位置は、φminより遅れた角度位置(φminより大きい角度位置)となる。このようにして、最小寸法の段ボールシートがフィードロールから離れる以前に減速が終了し、最小寸法の段ボールシートがフィードロールから離れる時点では、段ボールシートSの速度と搬送コンベアの速度が一致しているため、スリップの発生が起こることはない。
【0052】
この制御において、段ボールシートSの速度が、速度Vpから速度Vp×D1/D0まで図8に示すように線形的(加減速一定)に減速するとした場合、上述したα(段ボールシートSの先端がフィードロール4から基準位置まで移動する間に生じるずれ量)は、以下の式により算出される。
α=Kmin(1−D1/D0)/2
【0053】
なお、最小寸法の段ボールシートSが、フィードロール4から離れるとき、即ち、上述した基準位置に到達する時点で、フィードロール4の速度(V3)を搬送コンベア28による搬送速度Vp×D1/D0に一致するように制御してもよい。
例えば、フィードロール4の速度(V3)を、段ボールシートSがフィードロール4に到達した時点における速度Vpから、線形的に減速させ、段ボールシート後端が離れる時点で速度Vp×D1/D0となるように制御した場合、上述したαは、以下の式により算出される。
α=2Kmin(D0−D1)/(D0+D1)
【0054】
次に、図8に示すように、薄い印版(3mm)を使用した場合で且つ最大寸法(=Kmax)の段ボールシートSが供給される場合には、段ボールシートSの先端がフィードロールに到達するのは、同様に、θ1=βの時(図6、図7参照)であり、このとき、フィードロール4の速度V3が速度Vpとなるようにする。そして、このθ1=βのときから、Kminの距離(基準位置)に到達するまでの間に、フィードロール4の速度(V3)を、速度Vpから薄い印版使用時の印刷シリンダの外径の周速である速度Vp×D1/D0まで減速させている。その詳細な制御内容(クランク機構の回転角度θ1とフィードロール4の速度との関係など)は、上述した最小寸法の段ボールシートSの場合と同様である。
その後は、フィードロール4の速度(V3)は、段ボールシートの後端がフィードロール4を離れるときまで、薄い印版使用時の印刷シリンダの外径の周速である速度Vp×D1/D0に保持されるようになっている。
【0055】
詳細には、基本式φmax=Kmax÷(D1×π/360)を用い、クランク機構の回転角度θ1がφmaxとなるまで速度Vp×D1/D0に保持させている。従って、最大寸法の段ボールシートSがフィードロール4から離れるときまで、搬送コンベア28による搬送速度Vp×D1/D0に一致させることが出来る。ここで、φmaxは、標準厚より薄い印版(3mm)を使用し、フィードロール4の速度(V3)が速度Vp×D1/D0に一定に保持される場合に、最大寸法の段ボールシートSの先端がフィードロール4に到達してから、Kmaxの距離に到達する間に、クランク機構の回転角度θ1が進行する角度である。
【0056】
このようなφmaxの設定により、最大寸法の段ボールシートSが、フィードロール4から離れるときにも、フィードロール4の速度(V3)と、段ボールシートSの速度と、搬送コンベア28による搬送速度Vp×D1/D0とを、それぞれ一致させることが出来る。即ち、段ボールシートSは、上述したようにφminの間で、Vp×D1/D0より速い速度成分で送られるので、その分、最大寸法の段ボールシートがフィードロールから離れる角度位置は、φmaxより進んだ角度位置(φmaxより小さい角度位置)となる。そして、図8に示すように、φmaxの角度位置から、次のフィードロール4の加変速制御を行うようにしている。
【0057】
次に、図9に示すように、標準の厚みの印版(7mm)を使用した場合で、且つ、最小寸法(=Kmin)の段ボールシートSが供給される場合及び最大寸法(Kmax)の段ボールシートSが供給される場合の両方において、フィードロール4の速度(V3)は、標準の厚みの印版を取り付けたときの印刷シリンダ18の外径の周速Vpと同じ速度に保持される。
【0058】
具体的には、標準の厚みの印版(7mm)を使用した場合で且つ最小寸法(=Kmin)の段ボールシートSが供給される場合には、上述したように、段ボールシートSの先端がフィードロールに到達するとき、キッカー52の速度は、Vk=Vpとなっているので、フィードロールの速度(V3)も、V3=Vk=Vpとし、次に、段ボールシートの後端がフィードロール4を離れるときまで、標準の印版使用時の印刷シリンダの外径の周速である速度Vpに保持する。詳細には、実用的に用いている上述した式と同じ基本式φmin=Kmin÷(D0×π/360)により、クランク機構の回転角度θ1が、βからφminまでの間、フィードロール4の速度(V3)が速度Vpに保持される。
【0059】
次に、標準の厚みの印版(7mm)を使用した場合で且つ最大寸法(=Kmax)の段ボールシートSが供給される場合には、同様に、段ボールシートSの先端がフィードロールに到達するとき、キッカー52の速度は、Vk=Vpとなっているので、フィードロールの速度(V3)も、V3=Vk=Vpとし、次に、段ボールシートSの先端がフィードロール4を通過してKminの距離に到達するまでの間も、フィードロール4の速度(V3)を、速度Vpに保持する。その後も、フィードロール4の速度(V3)は、段ボールシートの後端がフィードロール4を離れるときまで、標準の印版使用時の印刷シリンダの外径の周速である速度Vpに保持されるようになっている。詳細には、実用的に用いている基本式φmax=Kmax÷(D0×π/360)により、クランク機構の回転角度θ1が、βからφmaxまでの間、フィードロール4の速度(V3)が速度Vpに保持される。
【0060】
以上説明したように、本実施形態による段ボールシート用製函機においては、制御装置10により、フィードロール4の回転速度(V3)が、段ボールシートSの先端がフィードロール4に到達した時点で給紙装置2であるキッカー装置42による段ボールシートSの供給速度(=Vp)と一致するように制御されると共に段ボールシートSの段ボールシートの先端がフィードロール4を通過して最小寸法(Kmin)の段ボールシートの長さ(=Kmin)に相当する基準位置に到達した時点で搬送コンベア28の速度(具体的には、標準の厚さの印版を使用したときの印刷シリンダの外径の周速Vp、又は、薄い印版を使用したときの印刷シリンダの外径の周速Vp×D1/D0に等しい速度)と一致するように制御されるようにしているので、段ボールシートの長さ(Kmin,Kmax)に関係なく、段ボールシートSがフィードロール4から離れる瞬間において、段ボールシートSの速度と搬送コンベア28の速度が一致しており、それにより、従来、段ボールシートの速度と搬送コンベアの速度とが異なることにより生じていた段ボールシートのスリップ(位置ずれ)を確実に防止することができる。
【0061】
さらに、本実施形態においては、印刷シリンダ18に取り付けられる印版20の厚みが変化し搬送コンベア28の速度を印刷シリンダの外径の周速(Vp又はVp×D1/D0)に一致させたことにより生じる印刷位相ずれ量をフィードロール4の中心位置から印刷シリンダ18の中心位置までの距離(L1,L2,L3)、最小寸法の段ボールシート長さ(Kmin)、及び、搬送コンベア28の速度に基づいて、予め求めることができるので、段ボールシート長さが異なる度に印刷位相ずれ量を補正する必要がなく、印刷シリンダ28の印刷位相ずれ量δiの補正が簡易化される。
【0062】
また、本実施形態による段ボールシート用製函機においては、上述したように、標準印版より薄い厚さ(3mm)の印版を印刷シリンダに取り付け且つ段ボールシートが最小寸法(Kmin)のとき、フィードロール4の回転速度を、段ボールシートSの先端がフィードロール4に到達した時点で給紙装置2によるシートの供給速度と一致するように一旦増速し、段ボールシートSの先端がフィードロール4に到達した時点から段ボールシートSの後端がフィードロール4から離れるときまでに、給紙装置2によるシートの供給速度から搬送手段の速度(Vp×D1/D0)と一致する速度まで減速するように制御しているので、最小寸法の段ボールシートがフィードロール4から離れるとき、段ボールシートSのスリップを確実に防止することができる。
【0063】
また、本実施形態による段ボールシート用製函機においては、上述したように、標準印版より薄い厚さ(3mm)の印版を印刷シリンダに取り付け且つ段ボールシートが最大寸法(Kmax)のとき、フィードロール4の回転速度を、段ボールシートの先端がフィードロール4に到達した時点で給紙装置2によるシートの供給速度と一致するように一旦増速し、段ボールシートSの先端がフィードロール4を通過して最小寸法(Kmin)の段ボールシートの長さに相当する基準位置(P1)に到達するときまでに、給紙装置2によるシートの供給速度(Vp)から搬送手段の速度(Vp×D1/D0)と一致する速度まで減速し、その後、段ボールシートの後端がフィードロールから離れるまで、基準位置に到達したときの回転速度(Vp×D1/D0)に保持するように制御しているので、最大寸法の段ボールシートであっても、それがフィードロール4から離れる瞬間において、段ボールシートSのスリップを確実に防止することができる。
【0064】
さらに、本実施形態による段ボールシート用製函機においては、上述したように、給紙装置2として、回転動作をクランク機構44により往復動作に変換してキッカー52により積層された段ボールシートSの最下層の段ボールシートSを1枚ずつ押し出すキッカー装置42を使用しているので、制御装置10は、キッカー52の速度を、段ボールシートSの先端がフィードロール4に到達する直前で最大速度となるように制御するようにしている。これにより、本実施形態においては、回転動作を往復動作に変換するキッカーの特性を利用して、段ボールシートSを効果的にフィードロール4へ供給することができる。特に、キッカー52が最大速度から減速しているときに、段ボールシートSの先端がフィードロール4に供給されるので、本実施形態のようにフィードロール4を可変速に制御する場合に、その制御によるフィードロール4の変速に与える影響を抑制することが出来る。
【0065】
なお、上記実施形態においては、給紙装置として、キッカー装置を使用したが、これに限られず、積層された段ボールシートの最下層の段ボールシートの下方に設けられた給紙ローラにより、段ボールシートを1枚ずつ供給するロータリー式の給紙装置を使用するようにしても良い。
【0066】
上述した実施形態では、段ボールシートの長さを、便宜上、最小寸法(Kmin)のものと最大寸法(Kmax)のものについて説明したが、本実施形態は、最小寸法(Kmin)と最大寸法(Kmax)の間の長さの段ボールシートにも適用可能であり、上述した説明と同様にして、フィードロール4の速度を可変速制御すれば良い。
【符号の説明】
【0067】
1 段ボールシート用製函機
2 給紙装置
4 フィードロール
6 印刷部
10 制御装置
12,14,16 印刷ユニット
18 印刷シリンダ
20 印版
22 インキ供給ロール
24 インキ絞りロール
26 受けロール
28 搬送コンベア
36 テーブル
38 フロントゲート
40 バックガイド
42 キッカー装置
46 クランク機構
44 フライホイール
52 キッカー
66 フレーム
68 レール
S 段ボールシート
MP 印刷シリンダ用モータ
MI インキ供給ロール用モータ
MC 搬送コンベア用モータ
MF フィードロール用モータ
MK キッカー装置用モータ
Kmin 最小寸法の段ボールシートの長さ
Kmax 最大寸法の段ボールシートの長さ
D0 標準印判(7mm)の印刷シリンダの外径
D1 薄い印版(3mm)の印刷シリンダの外径
V3 フィードロールの速度
V1 キッカーの速度
V2 搬送コンベアの速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボールシートに印刷する印刷部を備えた段ボールシート用製函機であって、
複数の異なる厚みの印版が取り付け可能な印刷シリンダにより段ボールシートに印刷する印刷部と、
上記印刷部において段ボールシートを搬送する搬送手段と、
この搬送手段よりも上流側に設けられ、この搬送手段に段ボールシートを1枚ずつ供給するフィードロールと、
このフィードロールよりも上流側に設けられ、積層された段ボールシートの最下層の段ボールシートを1枚ずつ上記フィードロールに供給する給紙装置と、
上記印刷シリンダの作動、上記搬送手段の作動、上記フィードロールの作動、上記給紙装置の作動を制御する制御部とを有し、
上記制御部は、第1に、上記搬送手段の速度を上記印版を含む印刷シリンダの外径の周速と一致するように制御し、第2に、フィードロールの中心位置から上記印刷シリンダの中心位置までの距離、最小寸法の段ボールシート長さ、標準印版を使用する場合と標準印版と異なる厚みの印版を使用する場合とにおける上記搬送手段の速度差、及び、段ボールシートの先端が上記フィードロールから最小寸法の段ボールシートの長さに相当する基準位置まで移動する間に生じるずれ量に基づいて、上記印刷部における印刷位相ずれ量を予め求めこの印刷位相ずれ量だけ上記印刷シリンダの位相を印刷開始前に補正し、第3に、フィードロールの回転速度を、段ボールシートの先端がフィードロールに到達した時点で上記給紙装置によるシートの供給速度と一致するように制御すると共に段ボールシートの先端がフィードロールを通過して上記基準位置に到達したとき上記搬送手段の速度と一致しているように制御することを特徴とする段ボールシート用製函機。
【請求項2】
上記印刷シリンダは、複数個設けられ、上記制御部は、各印刷シリンダ毎に、フィードロールの中心位置から各印刷シリンダの中心位置までの距離、最小寸法の段ボールシート長さ、及び、上記搬送手段の速度差に基づいて、各印刷シリンダにおける印刷位相ずれ量を予め求めてこの印刷位相ずれ量だけ各印刷シリンダの位相を印刷開始前に補正するようにしている請求項1記載の段ボールシート用印刷装置。
【請求項3】
上記制御部は、標準印版より薄い厚さの印版を上記印刷シリンダに取り付け且つ段ボールシートが最小寸法のとき、上記フィードロールの回転速度を、段ボールシートの先端が上記フィードロールに到達した時点で上記給紙装置による段ボールシートの供給速度と一致させると共に段ボールシートの先端が上記フィードロールに到達した時点から段ボールシートの後端が上記フィードロールから離れるときまでに、上記給紙装置による段ボールシートの供給速度から上記搬送手段の速度と一致する速度まで減速するよう制御するようにしている請求項1又は請求項2記載の段ボールシート用印刷装置。
【請求項4】
上記制御部は、標準印版より薄い厚さの印版を上記印刷シリンダに取り付け且つ段ボールシートが最大寸法のとき、上記フィードロールの回転速度を、段ボールシートの先端が上記フィードロールに到達した時点で上記給紙装置による段ボールシートの供給速度と一致させると共に段ボールシートの先端が上記フィードロールを通過して最小寸法の段ボールシートの長さに相当する基準位置に到達するときまでに、上記給紙装置による段ボールシートの供給速度から上記搬送手段の速度と一致する速度まで減速し、その後、段ボールシートの後端が上記フィードロールから離れるまで、基準位置に到達したときの回転速度に保持するように制御するようにしている請求項1乃至3のいずれか1項記載の段ボールシート用印刷装置。
【請求項5】
上記給紙装置は、回転動作をクランク機構により往復動作に変換してキッカーにより積層された段ボールシートの最下層の段ボールシートを1枚ずつ押し出すキッカー装置を備え、上記制御部は、上記キッカーの速度を、段ボールシートの先端が上記フィードロールに到達する前に最大速度となるように制御する請求項1乃至4のいずれか1項記載の段ボールシート用印刷装置。
【請求項6】
上記給紙装置は、積層された段ボールシートの最下層の段ボールシートの下方に設けられた給紙ローラにより、段ボールシートを1枚ずつ供給するロータリー式である請求項1記載の段ボールシート用印刷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−207006(P2011−207006A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76070(P2010−76070)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000139931)株式会社ISOWA (39)
【Fターム(参考)】