説明

段ボール製造装置の糊付方法及び装置

【課題】糊液のはみ出し幅を正確に予測できるようにして、紙ウェブの紙端からの糊液のはみ出しを防止する。
【解決手段】ドクターロール20の上流側で、糊付けロール14に付着した糊液gのうち、片面段ボールシートkの紙端wを含み紙端wより内側領域に糊液gが転写される事前均し領域Aを、ドクターロール20の設定膜厚δより大きい均し膜厚δに調整する堰板38a、38bと、該堰板の下流側でかつドクターロール20の上流側で、事前均し領域Aのうち、片面段ボールシートkの紙端wを含み紙端wから内側領域に、設定膜厚δと均し膜厚δとの差から推定される糊液はみ出し幅以上となるように設定された糊液除去領域Bから糊液を除去する弾性スクレーパ40a、40bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールシートを製造する段ボール製造装置を構成するシングルフェーサやダブルフェーサにおいて、段ボールシートを構成する中芯や片面段ボールシートの段頂部に糊液を付着させる糊付方法及び糊付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シングルフェーサでは、段山成形された中芯を裏ライナと貼り合せるため、中芯の段頂部に糊液を塗布するための糊付装置が用いられる。ダブルフェーサでは、中芯と裏ライナとが貼り合わされた片面段ボールシートと表ライナとを貼り合せるため、片面段ボールシートの段頂部に糊液を塗布するための糊付装置が用いられる。
【0003】
これらの糊付装置では、糊液槽に貯留された糊液を糊付けロールに付着させ、この糊付けロールに付着した糊液をドクターロールによって設定膜厚に調整した後、糊付けロール上の該糊液を中芯や片面段ボールシートの段頂部に転写するようにしている。
糊液槽には糊液の糊付けロールへの塗布幅を規制する糊ダムが設けられている。糊液の塗布幅は中芯や片面段ボールシート等の紙ウェブの紙幅に合わせる必要がある。紙ウェブの種類は頻繁に変わるので、それに伴って紙幅も変化する。そのため、この糊ダムを糊付けロールの長手軸方向に可動できるように構成して、糊付けロールに付着させる糊液の糊付幅を調整可能にした構成が特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、糊液が付着される紙ウェブの紙幅を検出し、可動の糊ダムをこの紙幅に合わせた位置に自動的に位置決めする手段が開示されている。
また、特許文献4に開示された糊付装置は、糊付けロールに付着した糊液の膜厚をドクターブレードで調整した後、延展舌状片で糊膜を均し、均した糊膜を紙ウェブに塗布するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−245988号公報
【特許文献2】特開2006−69095号公報
【特許文献3】特開2000−254987号公報
【特許文献4】特開平10−180908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4は、ダブルフェーサの糊付装置において、糊付けロールの左側紙端付近の領域を示し、糊付けロールに付着した糊液の分布を上方に展開して示している。図4において、糊付装置100に、糊液gを貯留した糊液槽102と、下部が糊液gに浸漬された糊付けロール104と、該糊付けロール104に対して糊膜厚分に相当する微小間隔をもって、ドクターロール108が糊付けロール104と平行に設けられている。糊付けロール104及びドクターロール108は、これらの回転軸106又は110を中心に、夫々矢印方向に回転する。
【0007】
糊液gが糊付けロール104とドクターロール108とのニップ間を通過するときに、設定膜厚に調整される。糊付けロール104には、軸線方向(矢印a方向)の糊液gの塗布幅を規制する糊ダム112が設けられている。糊ダム112は矢印a方向に可動であり、図示を省略した紙ウェブの右側紙端領域に、もう1個の糊ダムが設けられている。糊ダム112間に糊液gが貯留され、糊液gの液面gが形成されている。糊付けロール104が回転することによって、糊付けロール104の外周面には、糊液槽102に貯留された糊液gが付着され、糊膜gを形成する。
【0008】
糊ダムは、糊付けロールの表面に低い面圧で接触しているため、糊膜を十分に掻き取れず、糊ダムの接触領域に薄い糊膜が残る。この糊膜が糊付けロールとドクターロールとの隙間を通過して紙ウェブに転写されるという問題がある。
【0009】
糊付けロール104が糊液槽102に貯留した糊液g中を通過して糊付けロール104に付着した糊膜gは、糊付けロール104とドクターロール108との間の間隔より大きい。また、糊膜gの表面は自由表面であると共に、糊液gの粘度(温度によって異なる。)及び糊付けロール104の周速度等によって異なる膜厚となる。
【0010】
そのため、図4に示すように、糊ダム112によって規制される糊膜gの糊端tが、紙ウェブの紙端wに対して寸法mだけ内側に設定されている場合でも、ドクターロール108を通過した後、糊液gは糊端tの位置まで外側にはみ出てくる。このはみ出し幅bは、前述のように、糊膜厚がそのときの条件によって異なり、かつ自由表面を形成しているため、予測がつかない。
【0011】
糊液gが紙端wからはみ出すと、シングルフェーサでは、糊液gが紙ウェブの裏側に回り込み、段ロールに付着する。段ロールに糊液gが付着すると、固化して段成形が不良になるという問題がある。
また、片面段ボールシートがダブルフェーサの熱板上を走行する時、紙端wからはみ出した糊液gが熱板に付着し、熱板上で固化するため、後から走行してくる片面段ボールシートを傷付けるという問題がある。
【0012】
特許文献3には、可動糊ダムの自動位置決め手段が開示されているが、こうした手段も前記の問題を解決して、精度が良い糊液の塗布幅を規制できなければ、その効果は半減してしまう。また、特許文献4に開示された手段、即ち、ドクターブレードの下流側に糊膜均し用の延展舌状片を設けた構成では、こうした問題を解決できない。
【0013】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、糊液のはみ出し幅を正確に予測できるようにして、紙端と糊端の位置合わせを容易にし、これによって、紙ウェブの紙端からの糊液のはみ出しを防止し、前記問題を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するため、本発明の段ボール製造装置の糊付方法は、糊液槽に貯留された糊液中に糊付けロールの一部が浸漬され、該糊付けロールに付着した糊液をドクターロールによって設定膜厚に調整した後、該糊液を段ボールシートを構成する紙ウェブに転写するようにした段ボール製造装置の糊付方法において、ドクターロールの上流側で、糊付けロールに付着した糊液のうち、紙ウェブの紙端を含み紙端より内側領域に糊液が転写される事前均し領域を設定し、該事前均し領域を前記設定膜厚より大きい均し膜厚に調整する事前均しステップと、該事前均しステップの後で、事前均し領域のうち、紙ウェブの紙端を含み紙端から内側領域に、設定膜厚と均し膜厚との差から推定される推定はみ出し幅以上の糊液除去領域を設定し、該糊液除去領域から糊液を除去する糊液除去ステップと、該糊液除去ステップの下流側で、ドクターロールによって糊付けロール上の糊液を設定膜厚に調整する糊膜厚調整ステップと、からなるものである。
【0015】
本発明方法では、ドクターロールの上流側で、前記事前均しステップを行なうことにより、ドクターロール通過後の糊液の紙端からのはみ出し幅を容易に予測できるようになる。
そして、糊液除去ステップで、糊液の紙端からはみ出し幅を予測し、該はみ出し幅以上の糊液除去領域を設定し、該糊液除去領域から糊液を除去することにより、ドクターロールを通過した後の糊液の紙端からのはみ出しを確実に防止できる。
【0016】
このように、本発明方法では、糊付けロール上の糊膜がドクターロールを通過する前の段階で、事前均しステップと糊除去ステップとを組み合わせて行なうことにより、紙端からの糊液のはみ出しを確実に防止できる。これによって、前記問題点を解消できる。
【0017】
本発明方法において、均し膜厚を設定膜厚より大きい一定値とし、該設定膜厚に応じて糊液除去領域を調整して、糊液の紙ウェブへの転写後に糊液が紙ウェブの紙端からはみ出すのを防止するようにするとよい。このように、均し膜厚を一定値とすることにより、設定膜厚とドクターロール通過の糊液のはみ出し幅とは、一義的な相関関係をもつようになる。そのため、設定膜厚に応じて、推定はみ出し領域を調整することにより、紙端からの糊液のはみ出しを確実に防止できる。
【0018】
本発明方法は、中芯と裏ライナとを接合するシングルフェーサの糊付装置に適用できると共に、中芯と裏ライナとを接合した片面段ボールシートと表ライナとを接合するダブルフェーサの糊付装置にも適用できる。
【0019】
また、前記本発明方法の実施に直接使用可能な本発明の段ボール製造装置の糊付装置は、糊液を貯留した糊液槽と、該糊液に一部が浸漬されて表面に糊液が付着される糊付けロールと、該糊付けロールに付着した糊液を設定膜厚に調整するドクターロールと、を備え、設定膜厚に調整された糊付けロール上の糊液を段ボールシートを構成する紙ウェブに転写するようにした段ボール製造装置の糊付装置において、ドクターロールの上流側で、糊付けロールに付着した糊液のうち、紙ウェブの紙端の紙端を含み紙端より内側領域に糊液が転写される事前均し領域を設定膜厚より大きい均し膜厚に調整する堰板と、該堰板の下流側でかつドクターロールの上流側で、事前均し領域のうち、紙ウェブの紙端を含み紙端から内側領域に、設定膜厚と均し膜厚との差から推定される推定はみ出し幅以上となるように設定された糊液除去領域から糊液を除去するスクレーパと、を備えたものである。
【0020】
本発明装置において、糊液槽で糊付けロールの表面に付着し自由表面を形成した糊液に対し、ドクターロールの上流側で、紙ウェブの紙端の紙端を含み紙端より内側領域に糊液が転写される事前均し領域を設定し、堰板を用いて、この事前均し領域を設定膜厚より大きい均し膜厚に調整する。これによって、ドクターロール通過後の糊液の紙端からのはみ出し幅を容易に予測できるようになる。そして、糊液の紙端からはみ出し幅を予測し、該はみ出し幅以上の糊液除去領域を設定し、該堰板の下流側でかつドクターロールの上流側に設けられたスクレーパで、該糊液除去領域から糊液を除去する。これによって、ドクターロールを通過した後の糊液の紙端からのはみ出しを確実に防止できる。
【0021】
本発明装置において、均し膜厚を設定膜厚より大きい一定値とし、該設定膜厚が入力され、糊液除去領域を調整して、糊液の紙ウェブへの転写後に糊液が紙ウェブの紙端からはみ出さない範囲に調整するコントローラを備えるようにするとよい。このように、均し膜厚を一定値とすることにより、設定膜厚とドクターロール通過の糊液のはみ出し幅とは、一義的な相関関係をもつようになる。そのため、設定膜厚に応じて、推定はみ出し領域を調整することにより、紙端からの糊液のはみ出しを確実に防止できる。
【0022】
本発明装置において、前記スクレーパを弾性体で構成すると共に、スクレーパの先端が糊付けロールの接線方向に対して迎え角を有するように配置されると共に、糊付けロール表面に対して線接触する構成にするとよい。
スクレーパを弾性体とすることにより、糊付けロールに傷が付くのを防止できる。また、スクレーパを糊付けロールの接線方向に対して迎え角を有するように配置することにより、糊付けロール表面との接触を維持して、糊膜を確実に掻き取ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明方法によれば、糊液槽に貯留された糊液中に糊付けロールの一部が浸漬され、該糊付けロールに付着した糊液をドクターロールによって設定膜厚に調整した後、該糊液を段ボールシートを構成する紙ウェブに転写するようにした段ボール製造装置の糊付方法において、ドクターロールの上流側で、糊付けロールに付着した糊液のうち、紙ウェブの紙端を含み紙端より内側領域に糊液が転写される事前均し領域を設定し、事前均し領域を設定膜厚より大きい均し膜厚に調整する事前均しステップと、事前均しステップの後で、事前均し領域のうち、紙ウェブの紙端を含み紙端から内側領域に、設定膜厚と均し膜厚との差から推定される推定はみ出し幅以上の糊液除去領域を設定し、糊液除去領域から糊液を除去する糊液除去ステップと、糊液除去ステップの後で、ドクターロールによって糊付けロール上の糊液を設定膜厚に調整する糊膜厚調整ステップと、からなることにより、ドクターロールを通過した後の糊液の紙端からのはみ出しを確実に防止でき、これによって、糊液がシングルフェーサの段ロールに付着して中芯の段成形が不良になるのを防止できると共に、ダブルフェーサの熱板上に付着し固化した糊によって段ボールシートに傷が付くのを防止できる。
【0024】
本発明装置によれば、糊液を貯留した糊液槽と、該糊液に一部が浸漬されて表面に糊液が付着される糊付けロールと、該糊付けロールに付着した糊液を設定膜厚に調整するドクターロールと、を備え、設定膜厚に調整された糊付けロール上の糊液を段ボールシートを構成する紙ウェブに転写するようにした段ボール製造装置の糊付装置において、ドクターロールの上流側で、糊付けロールに付着した糊液のうち、紙ウェブの紙端の紙端を含み紙端より内側領域に糊液が転写される事前均し領域を前記設定膜厚より大きい均し膜厚に調整する堰板と、該堰板の下流側でかつドクターロールの上流側で、事前均し領域のうち、紙ウェブの紙端を含み紙端から内側領域に、設定膜厚と均し膜厚との差から推定される推定はみ出し幅以上となるように設定された糊液除去領域から糊液を除去するスクレーパと、を備えたことにより、前記本発明方法と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明方法及び装置の一実施形態に係るダブルフェーサの糊付装置の構成図である。
【図2】前記実施形態の糊ダム、堰板及び弾性スクレーパの配置図である。
【図3】(A)は本発明の弾性スクレーパの構成図であり、(B)は比較例としての弾性スクレーパの構成図である。
【図4】ドクターロール通過後の糊付けロール上の糊液のはみ出し幅を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0027】
本発明をダブルフェーサの糊付装置に適用した一実施形態を図1〜図3により説明する。図1及び図2において、本実施形態の糊付装置10は、糊液槽12に澱粉糊からなる糊液gが貯留され、糊付けロール14の一部が糊液gに浸漬されている。糊付けロール14は回転軸16を中心に矢印方向に回転する。糊付けロール14の下方には、一対の固定式の糊ダム18a及び18bが設けられ、この糊ダムによって糊付けロール14の長手軸方向の糊液付着領域を規制している。
【0028】
糊付けロール14に付着した糊膜の膜厚を規制するドクターロール20が糊付けロール14に対設され、矢印方向に回転する。糊付けロール14とドクターロール20とは、これらの軸線が互いに平行に配置されている。一方、糊付けロール14にはライダロール22が対設されている。糊付けロール14とライダロール22とは、夫々矢印方向に回転し、これらのロール間を通る片面段ボールシートkを矢印方向に送ると共に、片面段ボールシートkの段頂部に糊液gを塗布する。
【0029】
糊付けロール14とドクターロール20との間には、間隔δが設けられ、糊液gがこの間隔δを通ることによって、糊付けロール14の外周面に膜厚δの均一な糊膜が形成される。そして、片面段ボールシートkの段頂部に該膜厚に応じた糊液量が塗布される。ドクターロール20は、偏心カム機構24により糊付けロール14に対して進退可能になっている。これによって、間隔δを調整できる。
【0030】
また、段ボール製造装置の運転全般を管理する生産管理装置25が設けられている。この生産管理装置25が後述する基台42の駆動機構26を制御して、基台42の軸方向(図2の矢印a方向)位置を制御し、かつ偏心カム機構24を制御して、間隔δを調整する。
【0031】
ドクターロール20にはドクターブレード28が対設されている。ドクターブレード28は、糊付けロール14とのニップ部で付着したドクターロール表面の糊液を掻き落して、この糊液が糊付けロール14とドクターロール20とのニップ部に回り込むのを防止する役目をもつ。ドクターブレード28は基台30に固定されている。基台30は支持フレーム32に回転中心Oを中心に回動可能に装着されている。支持フレーム32と基台30との間にはコイルバネ34が架設され、これによって、ドクターブレード28がドクターロール20の外周面に設定された弾性力をもって押圧されている。
【0032】
また、図2に示すように、糊液gの液面の上方で、かつドクターロール20より回転方向上流側に、一対の堰板38a及び38bが、糊付けロール14の軸線方向に直列に配置されている。また、堰板38a、38bの回転方向下流側でかつドクターロール20の上流側に、一対の弾性スクレーパ40a及び40bが、糊付けロール14の軸線方向に直列に配置されている。堰板38a、38bは、基台42に固定されている。基台42にはアーム44が支軸46を中心に回動可能に装着されている。
【0033】
アーム44の先端に弾性スクレーパ40a、40bが固定され、アーム44の他端はコイルバネ48を介して基台42に支持されている。こうして、弾性スクレーパ40a、40bは、コイルバネ48の弾性力によって糊付けロール14の表面に軽い押圧力をもって押し付けられている。弾性スクレーパ40a、40bの少なくとも先端は、糊付けロール14の表面を傷付けないように、硬質ゴムやウレタン等の弾性体で構成されている。弾性スクレーパ40a、40bをウレタンで構成すると、特に糊付けロール上の糊膜をきれいに掻き取ることができる。
【0034】
堰板38a、38bの材質は、硬質で剛性のものであればよく、例えば鋼製でもよい。特に、摩擦係数が小さいテフロン(登録商標)製であれば、糊液が付着しにくいので好都合である。堰板38a、38bと糊付けロール14との間は、常に一定の間隔δに保持されている。間隔δは間隔δとは、δ<δの関係にある。ダブルフェーサの運転時、間隔δは、0.05〜0.5mm(通常0.2〜0.3mm)であり、間隔δは最大でも1mm以下が望ましい。
【0035】
堰板38a、38bと弾性スクレーパ40a、40bとは、共に基台42に支持されている。そのため、堰板38aと弾性スクレーパ40aの軸方向相対位置は固定されている。基台42は、駆動機構26によって軸方向に移動可能になっているので、堰板38aと弾性スクレーパ40aとは、固定された相対位置を保ちながら軸方向に移動可能になっている。堰板38bと弾性スクレーパ40bも同様の固定された相対位置関係になっている。
【0036】
かかる構成において、糊液槽12に貯留された糊液gが糊付けロール14の外周面に塗布される。糊付けロール14に塗布された糊膜gは、堰板38a、38bを通過して、膜厚がδとなる事前均しを施される。図2に示すように、堰板38a、38bによって事前均しを施される領域は、片面段ボールシートkの紙端wの内側領域においては領域A(m+L)である。領域mは、設定膜厚δと均し膜厚δとの差によって推定される推定はみ出し領域であり、通常2〜4mmである。領域Lは実際上最低15mm必要であり、25mm以上が望ましい。
【0037】
堰板38a、38bを通過した糊膜gは、弾性スクレーパ40a、40bに到達し、弾性スクレーパ40a、40bによって糊膜gが掻き取られる。この糊液除去領域は、紙端w及び紙端wの内側領域を含めた領域Bである。
なお、糊液除去領域Bは、推定はみ出し領域m以上であって、かつ紙端wより内側までとする必要がある。
【0038】
本実施形態では、均し膜厚δを一定値としているため、設定膜厚δとドクターロール通過後の糊液のはみ出し幅とは、一義的な相関関係をもつようになる。そのため、設定膜厚δに応じて、推定はみ出し領域mを調整するようにしている。
こうして、堰板38a、38b及び弾性スクレーパ40a、40bを通過した糊膜gは、ドクターロール20を通過することにより、膜厚δに調整され、その後、糊付けロール14とライダロール22とのニップ部で、片面段ボールシートkの段頂部に糊液が塗布される。
【0039】
図3(A)に示すように、弾性スクレーパ40a、40bは、糊付けロール14の接線sに対して迎え角αを有して糊付けロール14の表面に接触している。これを本明細書では「線接触」という。これによって、糊付けロール14に付着した糊膜gを実質的にすべて掻き取ることができる。なお、迎え角αは、30°≦α≦60°であることが好ましい。迎え角αをこの範囲とすることにより、糊膜gを略確実に除去できる。
【0040】
図3(B)は、比較例としての弾性スクレーパ50の構成を示す。この弾性スクレーパ50は、糊付けロール14との接触点Cで、糊付けロール14の接線sに対して迎え角αが零である。そのため、接触点Cで糊膜gの面圧が矢印b方向に発生し、弾性スクレーパ50の先端部がこの面圧によって押されるため、接触点Cで糊膜gをすべて掻き取ることができない。
【0041】
本実施形態によれば、ドクターロール20の上流側で、堰板38a、38bによる事前均しステップを行なうことにより、ドクターロール通過後の糊液の紙端wからのはみ出し幅を容易に予測できるようになる。次に、糊液除去ステップで、糊液の紙端wから推定はみ出し幅mを推定し、該推定はみ出し領域m以上の糊液除去領域Bを紙端wを含みかつ紙端wの内側まで設定し、弾性スクレーパ40a、40bにより、該糊液除去領域Bから糊膜gを除去することにより、ドクターロール20を通過した後の糊液の紙端wからのはみ出しを確実に防止できる。
【0042】
これによって、片面段ボールシートkの紙端wから、糊液の紙端wからのはみ出しを解消できると共に、熱板への糊液の付着固化による段ボールシートの疵付きをなくすことができる。
また、均し膜厚δを設定膜厚δより大きい一定値とし、該設定膜厚δに応じて糊液除去領域Bを調整しているので、糊液のはみ出し防止のための制御機構を簡素化でき、低コストに防止できる。
【0043】
前記実施形態では、糊付けロール14の軸方向に分割して配置された一対の堰板38a、38bを用いたが、代わりに、糊付けロール14の軸方向に全幅に亘って配置された1個の堰板を設けるようにしてもよい。
【0044】
また、前記実施形態は、ダブルフェーサにおいて片面段ボールシートkの段頂部に糊液を塗布する糊付装置に本発明を適用したものであるが、本発明は、ダブルフェーサで、表ライナに糊液を塗布する糊付装置や、シングルフェーサで中芯の段頂部に糊液を塗布する糊付装置にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、段ボール製造装置の糊付装置において、糊液の紙端からのはみ出しを確実に防止できるので、糊液のはみ出しによる段ボールシートの品質低下を無くすことができる。
【符号の説明】
【0046】
10,100 糊付装置
12,102 糊液槽
14,104 糊付けロール
16、106,110 回転軸
18a、18b、112 糊ダム
20,108 ドクターロール
22 ライダロール
24 偏心カム機構
25 生産管理装置
26 駆動装置
28 ドクターブレード
30,42 基台
32 支持フレーム
34,48 コイルバネ
38a、38b 堰板
40a、40b、50 弾性スクレーパ
44 アーム
46 支軸
A 事前均し領域
B 糊液除去領域
C 接触点
m 推定はみ出し領域
g 糊液
糊膜
糊液面
k 片面段ボールシート
s 接線
、t 糊端
w 紙端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糊液槽に貯留された糊液中に糊付けロールの一部が浸漬され、該糊付けロールに付着した糊液をドクターロールによって設定膜厚に調整した後、該糊液を段ボールシートを構成する紙ウェブに転写するようにした段ボール製造装置の糊付方法において、
ドクターロールの上流側で、糊付けロールに付着した糊液のうち、紙ウェブの紙端を含み紙端より内側領域に糊液が転写される事前均し領域を設定し、該事前均し領域を前記設定膜厚より大きい均し膜厚に調整する事前均しステップと、
該事前均しステップの下流側で、事前均し領域のうち、紙ウェブの紙端を含み紙端から内側領域に、設定膜厚と均し膜厚との差から推定される推定はみ出し幅以上の糊液除去領域を設定し、該糊液除去領域から糊液を除去する糊液除去ステップと、
該糊液除去ステップの後で、ドクターロールによって糊付けロール上の糊液を設定膜厚に調整する糊膜厚調整ステップと、からなることを特徴とする段ボール製造装置の糊付方法。
【請求項2】
前記均し膜厚を前記設定膜厚より大きい一定値とし、該設定膜厚に応じて前記糊液除去領域を調整して、糊液の紙ウェブへの転写後に糊液が紙ウェブの紙端からはみ出すのを防止するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の段ボール製造装置の糊付方法。
【請求項3】
段ボール製造装置がシングルフェーサであり、前記紙ウェブが中芯であることを特徴とする請求項1又は2に記載の段ボール製造装置の糊付方法。
【請求項4】
段ボール製造装置がダブルフェーサであり、前記紙ウェブが片段ボールシートであることを特徴とする請求項1又は2に記載の段ボール製造装置の糊付方法。
【請求項5】
糊液を貯留した糊液槽と、該糊液に一部が浸漬されて表面に糊液が付着される糊付けロールと、該糊付けロールに付着した糊液を設定膜厚に調整するドクターロールと、を備え、
設定膜厚に調整された糊付けロール上の糊液を段ボールシートを構成する紙ウェブに転写するようにした段ボール製造装置の糊付装置において、
前記ドクターロールの上流側で、前記糊付けロールに付着した糊液のうち、紙ウェブの紙端を含み紙端より内側領域に糊液が転写される事前均し領域を前記設定膜厚より大きい均し膜厚に調整する堰板と、
該堰板の下流側でかつドクターロールの上流側で、前記事前均し領域のうち、紙ウェブの紙端を含み紙端から内側領域に、前記設定膜厚と均し膜厚との差から推定される推定はみ出し幅以上となるように設定された糊液除去領域から糊液を除去するスクレーパと、を備えたことを特徴とする段ボール製造装置の糊付装置。
【請求項6】
前記均し膜厚を前記設定膜厚より大きい一定値とし、該設定膜厚が入力され、該設定膜厚に応じて前記糊液除去領域を調整し、糊液の紙ウェブへの転写後に糊液が紙ウェブの紙端からはみ出さない範囲に調整するコントローラを備えたことを特徴とする請求項5に記載の段ボール製造装置の糊付装置。
【請求項7】
前記スクレーパが弾性体で構成されると共に、該スクレーパの先端が糊付けロールの接線方向に対して迎え角を有するように配置され、糊付けロール表面に対して線接触するものであることを特徴とする請求項5又は6に記載の段ボール製造装置の糊付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−212919(P2011−212919A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81864(P2010−81864)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(310016522)三菱重工印刷紙工機械株式会社 (75)
【Fターム(参考)】