説明

段差緩和装置

【課題】 簡易な構成でマンホール蓋と路面の段差に起因する車両通過時の騒音を低減することが可能な段差緩和装置を提供する。
【解決手段】 車両が走行可能な路面2上に設けられたマンホール蓋3の周囲に、上面4aが路面2と同じ高さとなる段差緩和部材4を設け、段差緩和部材4を、マンホール蓋3よりも耐摩耗性が低く、かつ路面2の舗装材よりも耐摩耗性が高い材料から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マンホール蓋と路面の段差に起因する車両通過時の騒音を低減するための段差緩和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が走行する路面には、マンホール蓋が設けられている。アスファルトで舗装された路面を車両が頻繁に走行すると、アスファルトの磨耗によって路面とマンホール蓋との間に段差が生じる。この段差は、車両通過時の騒音の原因となる。
【0003】
そこで、車両通過によるマンホール周囲の舗装路面を補修する方法(例えば、特許文献1参照。)やマンホール蓋と路面との高低差を調整する装置(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−220733号公報
【特許文献2】特開平10−131221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の補修方法は、マンホール蓋の周囲の路面を切り出して舗装をやり直す技術であるが、マンホール蓋の周囲はアスファルトで再舗装されるので、補修後は車両の通過によるアスファルトの磨耗により再び段差が生じるという問題がある。特許文献2の装置は、マンホール蓋の高さ調整をジャッキなどの昇降部材を利用して行うので、マンホール蓋の支持構造が複雑となるという問題がある。路面とマンホール蓋との段差は、アスファルトによる舗装でなく、コンクリートによる舗装の場合も生じる。
【0006】
そこで本発明は、簡易な構成でマンホール蓋と路面の段差に起因する車両通過時の騒音を低減することが可能な段差緩和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、車両が走行可能な路面上に設けられたマンホール蓋の周囲に、上面が前記路面と同じ高さとなる段差緩和部材を設け、前記段差緩和部材を、前記マンホール蓋よりも耐摩耗性が低く、かつ前記路面の舗装材よりも耐摩耗性が高い材料から構成したことを特徴とする段差緩和装置である。
【0008】
この発明によれば、段差緩和部材が路面の舗装材に比べて磨耗しにくくなるので、マンホール蓋と路面との段差を小とすることが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の段差緩和装置において、前記段差緩和部材の上面には、半径方向外方にいくにつれて深さが大となる複数の溝が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、マンホール蓋の周囲に、マンホール蓋および路面の舗装材と異なる耐摩耗性を有する段差緩和部材を設けるようにしたので、マンホール蓋と路面との段差を小とすることができる。すなわち、段差緩和部材の摩耗量は、マンホール蓋の摩耗量よりも大きく、かつ路面の摩耗量よりも小さいため、段差緩和部材を介してマンホール蓋と路面との段差が滑らかとなる。この結果、路面を走行する車両通過時の騒音を低減することが可能となる。また、マンホール蓋と路面の段差が滑らかとなるため、マンホール蓋の周囲の再舗装が長期にわたり不要となり、路面補修のコストを低減することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、半径方向外方にいくにつれて溝の深さを大としているので、深さが大である溝と路面を走行する車両のタイヤとの摩擦を大にすることができ、段差緩和部材における外側の磨耗量を大とすることが可能となる。したがって、段差緩和部材における外側の磨耗量を路面の舗装材とほぼ同程度にすることが可能となり、段差緩和部材のマンホール蓋側から路面側に向かって勾配が形成され、段差がさらに滑らかとなる。また、複数の溝は、滑り止め機能を有するので、車両がマンホール蓋を通過する際の車両のスリップを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係わる段差緩和装置の断面図である。
【図2】図1の段差緩和装置の平面図である。
【図3】図1の段差緩和装置の使用開始時における段差緩和部材の拡大断面図である。
【図4】図1の段差緩和装置の一定期間使用後における段差緩和部材の拡大断面図である。
【図5】図2の変形例を示す段差緩和装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0014】
図1ないし図4は、本発明の実施の形態を示している。図1に示すように、車両(図示略)が走行可能な路面2は、アスファルトによって舗装されている。路面2には、マンホール蓋3が設けられている。マンホール蓋3の直下には、例えば地中送電線路用のマンホール10が位置している。マンホール10は、円筒形のコンクリート製の首座ブロック10bを有しており、首座ブロック10bと路面2の間には、鉄製の受枠10aが設けられている。受枠10aは、上部がマンホール蓋3を支持するための円筒形に形成されており、下部は半径方向外方に膨出するフランジ部10a1に形成されている。
【0015】
受枠10aのフランジ部10a1は、受枠止ボルト10cを介して首座ブロック10bと連結されている。この実施の形態においては、例えば受枠10aの厚さは約15mmとなっており、受枠10aの上部円筒部の径(L2)は、約930mmとなっている。また、フランジ部10a1の外径(L3)は、約1320mmとなっている。
【0016】
マンホール10の開口部10eは、受枠10aによって支持されたマンホール蓋3によって塞がれている。マンホール蓋3は、上面がアスファルトによって舗装された路面2と同じ高さとなっている。マンホール蓋3は、例えば耐摩耗性の高い鋳鉄から構成されている。鋳鉄は、周知の通り炭素を多く含む金属材料であり、硬度が高く耐磨耗性に優れている。
【0017】
マンホール蓋3の周囲には、段差緩和装置1が設けられている。段差緩和装置1は、段差緩和部材4を有している。段差緩和部材4は、マンホール蓋3の外周に沿って延びるリング状に形成されている。段差緩和部材4は、受枠10aのフランジ部10a1の直上に位置する固定部材10dに載置されており、固定ボルト4cを介して固定部材10dに固定されている。段差緩和部材4は、断面形状が四角形をしており、例えば幅方向の寸法L4が約165mmとなっており、高さ方向の寸法H5は約70mmとなっている。図2に示すように、段差緩和部材4の内径L2は、マンホール蓋3を支持する受枠10aの外径よりも僅かに大に設定されている。
【0018】
段差緩和部材4は、マンホール蓋3よりも耐摩耗性が低く、かつ路面2の舗装材であるアスファルトよりも耐摩耗性が高い材料から構成されている。この実施の形態においては、段差緩和部材4は、例えば耐熱プラスチック材から構成されている。すなわち、段差緩和部材4は、耐熱性および機械的強度に優れたエンジニアリングプラスチックから構成されている。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)などがあり、車両の走行頻度や路面2の舗装材の種類などを考慮し、段差緩和部材4として最も適した材料が選択される。段差緩和部材4は、溶融樹脂を金型に圧送して成形を行う射出成形により製作されている。
【0019】
図3に示すように、段差緩和部材4の上面4aには、複数の溝4bが形成されている。複数の溝4bは、等間隔に形成されており、段差緩和部材4の全周にわたって延びている。複数の溝4bは、半径方向外方にいくにつれて深さが大となっている。この実施の形態においては、段差緩和部材4の上面4aには、4つの溝4bが形成されている。各溝4bの幅Wは同一であり、各溝4bの深さH1〜H4はそれぞれ異なっている。各溝4bの深さH1〜H4を異ならせている理由は、車両の走行により段差緩和部材4の上面4aの磨耗量を内側と外側で変えるためである。
【0020】
この実施の形態においては、複数の溝4bは、全周にわたって延びるように形成しているが、平面形状が円弧状で周方向に断続するように構成してもよいし、段差緩和部材4の上面4aに点在させる構成として、滑り止め機能を大きくしてもよい。
【0021】
つぎに、段差緩和装置1の使用方法および作用について説明する。
【0022】
図1に示すように、アスファルトで舗装された路面2を車両(図示略)が走行する際には、車両のタイヤと路面2との摩擦によって、路面2が磨耗する。マンホール蓋3は、耐摩耗性の高い鋳鉄から構成されているので、アスファルトによって舗装された路面2に比べて著しく磨耗が少ない。
【0023】
図3は、段差緩和装置1の使用開始時における段差緩和部材4の状態を示している。マンホール蓋3の周囲の段差緩和部材4は、マンホール蓋3よりも耐摩耗性が低く、かつ路面2の舗装材であるアスファルトよりも耐摩耗性が高いので、段差緩和部材4は路面2の舗装材であるアスファルトに比べて磨耗しにくくなり、マンホール蓋3と路面2との段差を滑らかにすることができ、路面2を走行する車両通過時の騒音を低減することが可能となる。また、マンホール蓋3と路面2の段差が滑らかとなるため、段差緩和部材4の周囲のアスファルトの再舗装が長期にわたり不要となり、路面2の補修のコストを低減することができる。さらに、段差緩和部材4の上面4aに形成された複数の溝4bは、滑り止め機能を有するので、車両がマンホール蓋3を通過する際の車両のスリップを抑制することが可能となる。
【0024】
図4は、段差緩和装置の一定期間使用後における段差緩和部材4の状態を示している。段差緩和部材4の上面4aに形成される溝4bは、半径外方にいくにつれて深さが大となるので、深さが大である溝4bと路面2を走行する車両のタイヤとの摩擦を大にすることができる。すなわち、車両のタイヤは弾性体であるので、溝4bが深ければそれだけタイヤの溝4bへの食い込み量が多くなり、タイヤと溝4bの摩擦が大きくなる。したがって、半径外方にいくにつれて溝4bの深さを大とすることにより、段差緩和部材4における外側の磨耗量を大とすることができる。この結果、段差緩和部材4における外側の磨耗量をほぼ路面2の舗装材と同程度にすることが可能となり、段差緩和部材4のマンホール蓋3側から路面2側に向かって下がる勾配が形成され、段差がさらに滑らかとなる。
【0025】
ここで、段差緩和部材4における外側の磨耗量を、ほぼ路面2の舗装材であるアスファルトとの磨耗量と同一とすることができれば理想的であるが、実際には段差緩和部材4には、路面2側との段差H20が生じる。この場合は、段差緩和部材4の外側のみをグラインダーなどで削り取ることで、段差を解消することが可能となる。段差緩和部材4には、マンホール蓋3側との段差H10も生じるが、この段差は著しく小さいので、車両の通過による騒音はほとんど無視できる。
【0026】
図5は、図2の変形例を示している。図5に示すように、段差緩和部材4は周方向に4分割されている。図2に示す段差緩和部材4は、金型を用いた射出成形により一体成形されるが、マンホール蓋3よりも大きくなるので、段差緩和部材4を製造するための金型や射出成形機が大型となり、製造設備に多額の費用を要することになる。そこで、図5に示すように、段差緩和部材4を4分割にすることにより、製造設備の投資コストを低減するようにしている。4分割された段差緩和部材4の周方向の端部には、連結壁4dが形成されており、この連結壁4dはボルト5によって連結されている。
【0027】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、実施の形態におけるマンホール蓋3は、円形のものを前提としているが、四角形のマンホール蓋に適用することも可能である。また、マンホール蓋3が取付けられるマンホール10は、地中送電線路用のマンホール10に限定されることはなく、通信用、水道用、ガス用などのマンホールにも適用可能である。さらに、路面2の舗装材はアスファルトに限定されることはなく、コンクリートで舗装された路面2にも適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1 段差緩和装置
2 路面
3 マンホール蓋
4 段差緩和部材
4b 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行可能な路面上に設けられたマンホール蓋の周囲に、上面が前記路面と同じ高さとなる段差緩和部材を設け、前記段差緩和部材を、前記マンホール蓋よりも耐摩耗性が低く、かつ前記路面の舗装材よりも耐摩耗性が高い材料から構成したことを特徴とする段差緩和装置。
【請求項2】
前記段差緩和部材の上面には、半径方向外方にいくにつれて深さが大となる複数の溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の段差緩和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−190575(P2011−190575A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55634(P2010−55634)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】