説明

殺菌用の残留有効塩素含有水の製造方法およびその製造装置

【課題】発癌性が指摘されているトリハロメタンの発生も抑制することができるような残留有効塩素濃度を有する弱酸性の殺菌力のある溶液を、水道水を使うような簡便な操作で用いることができる装置および方法を提供する。
【解決手段】残留有効塩素濃度が、2000ppm〜10000ppmであり、pHが、10.5±1.5である高濃度残留有効塩素水溶液を、水で希釈することによって、残留有効塩素濃度が、10ppm〜150ppmである希釈水溶液を製造する工程と、希釈水溶液の流水に、酸性添加剤を添加し、希釈水溶液のpHが6±2となるように調節する工程とを含み、酸性添加剤が、食酢並びに濃度0.1〜20重量%の塩酸、L−アスパラギン酸、クエン酸および酢酸等からなる群から選択される少なくとも一つを含む、殺菌用の残留有効塩素含有水の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば飲食店の大半の数を占める小規模店舗やファーストフード店の個別小型厨房を持つユーザーの食材や厨房の器具の殺菌消毒、病院の院内感染対策として手指消毒、介護施設等における環境菌制御のための殺菌などに用いられる殺菌用の残留有効塩素含有水の製造方法とその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工現場においては、殺菌のために、殺菌効果が保証される200ppm前後の次亜塩素酸ナトリウム(ソーダ)含有水が使用されている。次亜塩素酸ナトリウム含有水としては、工場で生産された50000〜60000ppmの高濃度次亜塩素酸ナトリウム含有水が、食品添加剤として市場に流通している。そのため、食品加工の現場においては、その高濃度次亜塩素酸ナトリウム含有水に対して水道水を添加し、濃度200ppm程度に希釈することによって殺菌用の殺菌水を得ている。このような殺菌水は、例えば、特許文献1に開示されており、野菜などを漬け込み、浸漬するなどして殺菌するために使用されている。
【0003】
しかし、一般的に、この殺菌用途に用いられる次亜塩素酸ナトリウムは、アルカリ性が強いため、従業員の手指が荒れ、そこへ病原菌が蝟集し、調理人から食中毒を伝染させる等の問題が指摘されていた。また、残留した次亜塩素酸ナトリウムの匂いが食品に残るなどの問題も生じていた。
【0004】
また、200ppm前後の次亜塩素酸ナトリウム含有水を用いる場合、残留有効塩素と食品の有機物との間に反応を生じ、トリハロメタン発生するという問題もある。トリハロメタンは発癌性があることが指摘されおり、消費者に対する健康被害が危惧されている。
【0005】
また、大多数の小規模料理店等では、次亜塩素酸ナトリウムや塩酸の取扱等が、面倒であり、危険であるため、一般的な調理場では、洗浄を水洗のみで行う場合が多い。このように、料理人や従業員の手洗いなど通常安全性や食品衛生上の問題があり、解決が待たれている状態である。
【0006】
また病院や介護施設では手指の殺菌は、主に薬剤による殺菌が行われているが、薬剤による皮膚荒れなどに問題が生じている。
【0007】
他方、食塩を電気分解することによって、使用する現場で30ppm以下の残留有効塩素濃度を有する殺菌水を生成する機器が開発されており、このような機器が調理室等に設置をされてきている。しかしながら、小規模の食品関係の店舗では、機器の取扱やコスト面の課題があり、抜本的な解決の手段になり得ていない。
【0008】
最近になり、これらの課題を解決するために、工場において管理された高濃度電解次亜塩素酸水溶液が製造され、20リットル程度の小型のパックに注入し、一般の調理現場で希釈して簡単に使用できるシステムを提供する試みがなされている(特許文献2)。この方法において、次亜塩素酸水溶液の品質を一定期間保ったまま、安定的に供給する場合には、弱酸性高濃度次亜塩素酸水の濃度保証が2000ppmである。また、保存期間1ヶ月以内で副反応が生じるために濃度低下が起こる。そのために輸送コストが高く、一般的な流通システムに乗せることができないために、広く普及できていない。
【0009】
図1に、次亜塩素酸含有水(残留有効塩素水溶液)の存在形態とpHとの関係の模式図を示す。図1に示すように、次亜塩素酸含有水は、pH8以上では残留有効塩素が、ClOの形になっているため、殺菌力が弱い。これらの塩素化合物による殺菌は、次亜塩素酸HClOによる殺菌であることは既に判明しており、pHを中性に近づけることにより殺菌効果が増大する。しかしながら、次亜塩素酸ナトリウムを水で希釈しただけではpHを8以下に下げることは困難である。
【0010】
そこで、大手食品工場では、次亜塩素酸ナトリウムを容器内で希釈した後、静かに希塩酸を加えて緩やかに掻き混ぜることで中和し、pHを酸性域にして殺菌効果を高めることにより、殺菌水として用いている。しかしながら、この方法を用いた場合、一旦容器内で反応を起こした溶液は、その後、液中の副反応のために急激に残留有効塩素濃度が減少する。そのため、1日以上経過すると殺菌能力は大幅に低下してしまい、必要量を適時に得ることは困難である。また、大手食品工場のように、熟練した技能者がいない所では、薬品の取扱いなどに危険性があるために使用できないという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平7−8768号公報
【特許文献2】特開2000−5756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
殺菌用残留有効塩素含有水において、専門技術者の確保の困難な小規模事業所のために、輸送コストを下げ、保存期間を延長することにより市場性を高め、一般飲食店やファーストフード店などでアルバイト作業員でも簡単に確実に食品や手指などの環境菌制御の衛生管理が容易になり、かつ低コストで所定の濃度および所定のpHを有する殺菌用の残留有効塩素含有水を提供することを目的とする。すなわち、本発明は、発癌性が指摘されているトリハロメタンの発生も抑制することができるような所定の濃度の残留有効塩素を有し、所定のpHを有する殺菌力のある残留有効塩素含有水を、水道水を使うような簡便な操作で用いることができる装置および方法を提供することを目的とする。また、高濃度の高濃度残留有効塩素水溶液を原料として用いることにより、輸送コストを下げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書では、次亜塩素酸含有水や次亜塩素酸ナトリウム含有水やその混合物などの水溶液を、「残留有効塩素水溶液」という。また、所定の濃度および所定のpHを有する、殺菌能力を有する残留有効塩素水溶液を、「残留有効塩素含有水」という。
【0014】
すなわち、本発明は、残留有効塩素濃度が、2000ppm〜10000ppm、好ましくは4000ppm〜8000ppmであり、pHが、10.5±1.5である高濃度残留有効塩素水溶液を、水で希釈することによって、残留有効塩素濃度が、10ppm〜150ppmである希釈水溶液を製造する工程と、希釈水溶液の流水に、酸性添加剤を添加し、希釈水溶液のpHが6±2となるように調節する工程とを含み、酸性添加剤が、食酢並びに濃度0.1〜20重量%の塩酸、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−アルギニン―グルタミン酸、アルギン酸、L−イソロイシン、クエン酸および酢酸からなる群から選択される少なくとも一つを含む、殺菌用の残留有効塩素含有水の製造方法である。
【0015】
好ましくは、酸性添加剤が、濃度0.1〜20重量%のクエン酸、食酢と、濃度0.1〜20重量%との酢酸の混合液、食酢と、濃度0.1〜20重量%のクエン酸との混合液または食酢と、濃度0.1〜20重量%の酢酸と、濃度0.1〜20重量%のクエン酸との混合液である残留有効塩素含有水の製造方法である。
【0016】
また、好ましくは、酸性添加剤の添加が、加速された希釈水溶液の流水に対して行われる、残留有効塩素含有水の製造方法である。
【0017】
また、好ましくは、高濃度残留有効塩素水溶液が、次亜塩素酸水溶液、次亜塩素酸ナトリウム水溶液またはこれらの混合水溶液である、残留有効塩素含有水の製造方法である。
【0018】
また、好ましくは、高濃度残留有効塩素水溶液が、残留有効塩素濃度50000〜60000ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、次亜塩素酸水溶液100体積%に対して2〜10体積%の割合で添加し、混合し、およびpHが10.5±1.5となるようにpHの調節をした高濃度残留有効塩素水溶液であり、次亜塩素酸水溶液が、アノード電極を有するアノード室と、アノード室とは隔膜で隔てられたカソード室とを有する電解装置を用いて、塩化物と、塩化物に対して10重量%以下の塩酸とを含む水溶液を、アノード室およびカソード室に導入して、アノード電極とカソード電極に電圧を印加することによりアノード室に生成された電解次亜塩素酸水溶液である、残留有効塩素含有水の製造方法である。
【0019】
また、好ましくは、希釈水溶液の流水に対する酸性添加剤の添加が、酸性添加剤を点滴および貯留するための貯留空間を有する点滴貯留用管と、点滴貯留用管の上端に配置され、一端が、貯留空間の内部に配置され、他端が、酸性添加剤導入量調節器に流体接続され、内径が、点滴貯留用管の内径より小さい滴下管と、一端が、点滴貯留用管の下端に配置され、他端が、酸性添加剤導入管に流体接続され、内径が、点滴貯留用管の内径より小さい排出管とを含む、少なくとも一つの酸性添加剤点滴及び一時貯留器を用いて行われ、酸性添加剤導入量調節器を調節することにより、酸性添加剤点滴及び一時貯留器の滴下管から貯留空間へ滴下する量を調節することによって、酸性添加剤を添加する添加量を調節する、残留有効塩素含有水の製造方法である。
【0020】
また、好ましくは、希釈水溶液の流水に対する酸性添加剤の添加が、一端に、液体導入口を有し、他端に、酸性添加剤導入量調節器および酸性添加剤点滴及び一時貯留器に流体接続する液体排出口を有し、液体導入口が、液体排出口より高く位置するように取り付けられる斜傾管を、さらに用いて行われる、残留有効塩素含有水製造装置である。
【0021】
また、好ましくは、酸性添加剤点滴及び一時貯留器が、直列に二つ連結した、残留有効塩素含有水の製造方法である。
【0022】
また、好ましくは、酸性添加剤点滴及び一時貯留器の排出管と、酸性添加剤添加部とを酸性添加物導入管を介して流体接続した経路を流れる酸性添加剤であって、酸性添加剤添加部内を緩やかな負圧にすることで静止流体にすることにより、酸性添加剤点滴及び一時貯留器の中での点滴による水滴重量によって、酸性添加剤点滴及び一時貯留器から酸性添加物導入管を経て酸性添加剤添加部へと導入される酸性添加剤を、加圧された流水状態の希釈水溶液に対して正確に添加を行うために、気密性のある酸性添加剤点滴及び一時貯留器内の点滴落下距離を1〜100cmに確保することにより、酸性添加物導入管内の圧力を制御し、酸性添加剤点滴及び一時貯留器内の酸性添加剤の点滴が行われているときには希釈水溶液に酸性添加剤が一滴ずつ正確に添加を行い、点滴が止まると希釈水溶液への酸性添加剤の添加が止まる、残留有効塩素含有水の製造方法である。
【0023】
また、好ましくは、酸性添加剤導入量調節器に流体接続される酸性添加剤貯留瓶が、酸性添加剤残量センサーから情報をもとに警告を発する警告装置を有し、酸性添加剤貯留瓶の酸性添加剤の容積が酸性添加剤貯留瓶の容積の5分の1まで減量した場合に、警告装置から警告を発する、残留有効塩素含有水の製造方法である。
【0024】
また、好ましくは、水を導入するための水導入口と希釈部とを流体接続する配管に、水栓開閉弁を有し、水栓開閉弁と希釈部とを流体接続する配管に、水圧を検出する水圧検出機構を有し、酸性添加剤導入量調節器と酸性添加剤貯留瓶とを流体接続する配管に、水圧に応じて自動的に開閉する水圧自動開閉弁を有し、水圧検出機構が、水栓開閉弁を閉から開にしたときの水圧変化を検出した場合には水圧自動開閉弁が開くことで酸性添加剤の通過を可能にし、水栓開閉弁を開から閉にしたときの水圧変化を検出した場合には水圧自動開閉弁が閉じることで酸性添加剤の通過を不可能にする、残留有効塩素含有水の製造方法である。
【0025】
また、本発明は、水を導入するための水導入口と、水導入口の下流側に配置され、高濃度残留有効塩素水溶液導入口を有し、高濃度残留有効塩素水溶液導入口から導入される高濃度残留有効塩素水溶液を水で希釈して希釈水溶液を生成する希釈部と、高濃度残留有効塩素水溶液導入口に流体接続される、高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器と、希釈部の下流側に配置され、酸性添加剤を添加するための、酸性添加剤添加部と、酸性添加剤添加部の下流側に配置され、希釈水溶液と酸性添加剤を混合して残留有効塩素含有水を得る酸性添加剤混合部と、酸性添加剤導入管によって、酸性添加剤導入口に流体接続される酸性添加剤導入量調節器と、を含む、殺菌用の残留有効塩素含有水製造装置である。なお、本残留有効塩素含有水製造装置は、酸性添加剤導入量調節部を含み、酸性添加剤導入量調節部は、酸性添加剤導入量調節器を含むものである。
【0026】
好ましくは、希釈部と酸性添加剤添加部との間に、希釈水溶液の水流を整流するための水流安定機構をその内側に有する水流整流部がさらに配置され、酸性添加剤添加部が、酸性添加剤添加部に希釈水溶液を射出するための希釈水溶液射出口を有する希釈水溶液射出管と、希釈水溶液射出管の外壁の少なくとも一部に接し、希釈水溶液射出口を有する面で画され、酸性添加剤導入口を有する酸性添加剤滞留スペースとを含む、残留有効塩素含有水製造装置である。
【0027】
また、好ましくは、水流整流部が、その内側に水流を安定させるための水流安定機構を有する、残留有効塩素含有水製造装置である。
【0028】
また、好ましくは、酸性添加剤導入量調節部が、少なくとも一つの酸性添加剤点滴及び一時貯留器をさらに含み、酸性添加剤点滴及び一時貯留器が、酸性添加剤を貯留するための貯留空間を有する点滴貯留用管と、点滴貯留用管の上端に配置され、一端が、貯留空間の内部に配置され、他端が、酸性添加剤導入量調節器に流体接続され、内径が、点滴貯留用管の内径より小さい滴下管と、一端が、点滴貯留用管の下端に配置され、他端が、酸性添加剤導入管に流体接続され、内径が、点滴貯留用管の内径より小さい排出管とを含む、残留有効塩素含有水製造装置である。なお、酸性添加剤点滴及び一時貯留器は、酸性添加剤導入量調節部に含まれるものである。
【0029】
また、好ましくは、酸性添加剤導入量調節部が、斜傾管をさらに含み、斜傾管が、一端に、液体導入口を有し、他端に、酸性添加剤導入量調節器および酸性添加剤点滴及び一時貯留器に流体接続する液体排出口を有し、液体導入口が、液体排出口より高く位置するように取り付けられる、残留有効塩素含有水製造装置である。
【0030】
また、好ましくは、酸性添加剤点滴及び一時貯留器が、直列に2つ連結した酸性添加剤点滴及び一時貯留器である、残留有効塩素含有水製造装置である。すなわち、酸性添加剤導入量調節部が、直列に2つ連結した酸性添加剤点滴及び一時貯留器を含む、残留有効塩素含有水製造装置である。また、好ましくは、酸性添加剤点滴及び一時貯留器が、点滴数による酸性添加剤の添加量と混入の有無を使用者に知らしめるための、目視用の添加量計測器と添加警告装置である、残留有効塩素含有水製造装置である。
【0031】
また、好ましくは、酸性添加剤貯留瓶が、酸性添加剤残量センサーから情報をもとに警告を発する警告装置を有し、酸性添加剤貯留瓶の酸性添加剤の容積が酸性添加剤貯留瓶の容積の5分の1まで減量した場合に、警告装置から警告を発する機構をさらに有する、残留有効塩素含有水製造装置である。なお酸性添加剤貯留瓶は、酸性添加剤導入量調節部に含まれるものである。
【0032】
また、好ましくは、残留有効塩素含有水製造装置が、高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器に流体接続する高濃度残留有効塩素水溶液保管槽を含み、高濃度残留有効塩素水溶液保管槽が、高濃度残留有効塩素水溶液残量センサーを有し、残留有効塩素含有水製造装置が、高濃度残留有効塩素水溶液残量センサーからの情報をもとに警告を発する原料水用警告装置を有し、原料水用警告装置が、高濃度残留有効塩素水溶液保管槽の高濃度残留有効塩素水溶液の容積が高濃度残留有効塩素水溶液保管槽の容積の5分の1まで減量した場合に、警告を発する機構を有する、残留有効塩素含有水製造装置である。
【0033】
また、好ましくは、水を導入するための水導入口と希釈部との間に、水栓開閉弁を有し、水栓開閉弁と希釈部との間に、水圧を検出する水圧検出機構を有し、酸性添加剤導入量調節器と酸性添加剤貯留瓶とを流体接続する配管に、水圧に応じて自動的に開閉する水圧自動開閉弁を有し、水圧検出機構が、水栓開閉弁を閉から開にしたときの水圧変化を検出した場合には水圧自動開閉弁が開くことで酸性添加剤の通過を可能にし、水栓開閉弁を開から閉にしたときの水圧変化を検出した場合には水圧自動開閉弁が閉じることで酸性添加剤の通過を不可能にする機構または水栓開閉弁の代わりに電磁弁を用いて電気信号によって同様の作動をすることができる機構をさらに有する、残留有効塩素含有水製造装置である。
【0034】
また、好ましくは、残留有効塩素含有水製造装置が、高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器に流体接続する高濃度残留有効塩素水溶液保管槽を含み、水を導入するための水導入口と希釈部とを流体接続する配管に、水栓開閉弁を有し、水栓開閉弁と希釈部との間に、水圧を検出する水圧検出機構を有し、高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器と、高濃度残留有効塩素水溶液保管槽とを流体接続する配管に、水圧に応じて自動的に開閉する原料水用水圧自動開閉弁を有し、水圧検出機構が、水栓開閉弁を閉から開にしたときの水圧変化を検出した場合には原料水用水圧自動開閉弁が開くことで高濃度残留有効塩素水溶液の通過を可能にし、水栓開閉弁を開から閉にしたときの水圧変化を検出した場合には原料水用水圧自動開閉弁が閉じることで高濃度残留有効塩素水溶液の通過を不可能にする機構または水栓開閉弁の代わりに電磁弁を用いて電気信号によって同様の作動をすることができる機構をさらに有する、残留有効塩素含有水製造装置である。
【0035】
また、好ましくは、残留有効塩素含有水製造装置が、希釈部と高濃度残留有効塩素水溶液保管槽とを流体接続する配管に、高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器と、高濃度残留有効塩素水溶液導入管と、逆流防止弁とを有し、高濃度残留有効塩素水溶液導入管が、空気層を有し、高濃度残留有効塩素水溶液に空気を混入させる機能を有する残留有効塩素含有水製造装置である。
【発明の効果】
【0036】
本発明の装置および方法により、所定の濃度を有し、所定のpHを有する殺菌力のある残留有効塩素含有水(次亜塩素酸含有水)を、水道水を使うような簡便な操作で用いることができる装置および方法を提供することができる。また、所定の残留有効塩素濃度とすることにより、発癌性が指摘されているトリハロメタンの発生も抑制することができる。また、高濃度の高濃度残留有効塩素水溶液を原料として用いることにより、輸送コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】次亜塩素酸ナトリウム含有水(残留有効塩素水溶液)の存在形態とpHとの関係の模式図である。
【図2】本発明の残留有効塩素含有水の製造を行うための装置の一例の模式図である。
【図3】本発明の残留有効塩素含有水の製造を行うための装置のうち、酸性添加剤を供給する部分の一例の模式図である。
【図4】本発明の残留有効塩素含有水の製造を行うための装置のうち、酸性添加剤添加部の一例の模式図である。
【図5】本発明の残留有効塩素含有水の製造を行うための装置のうち、酸性添加剤点滴及び一時貯留器の一例の模式図である。
【図6】本発明の残留有効塩素含有水の製造を行うための装置の別の態様の模式図である。
【図7】斜傾管の一例の模式図である。
【図8】本発明の残留有効塩素含有水の製造を行うための装置のうち、酸性添加剤点滴及び一時貯留器の一例の模式図である。
【図9】本発明の残留有効塩素含有水の製造を行うための装置のさらに別の態様の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1に、残留有効塩素水溶液(次亜塩素酸含有水)の、水素イオン濃度(pH)に対する塩素の存在形態の割合を示す。この図から明らかなように、塩素の存在形態は、pHに依存して異なっており、pHが高くなるにつれて、塩素ガス(Cl)、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO)という形態となる残留有効塩素水溶液は、弱酸性領域を中心としたpH6±2、好ましくはpH4〜6.5の水素イオン濃度の場合に、殺菌効果が高いことが知られている。
【0039】
発明者は、高い殺菌効果を有する殺菌水を簡便に得るための方法および装置を発明する上で、2000ppm〜10000ppm、好ましくは4000ppm〜8000ppm程度の高濃度の残留有効塩素濃度を有する残留有効塩素水溶液の適正濃度について、次の点を明らかにした。なお、本明細書で示す割合(%およびppm等)は、特にことわりのない限り、重量割合(重量%および重量ppm等)を示す。
【0040】
すなわち、本発明の殺菌用の残留有効塩素含有水の原料となる水溶液(高濃度残留有効塩素水溶液)において、残留有効塩素濃度が2000ppm〜10000ppm、好ましくは4000ppm〜8000ppmである場合に、高濃度残留有効塩素水溶液のpHを10.5±1.5まで上昇させた場合の残留有効塩素濃度の経時変化を測定したところ、このpHの領域では、pHおよび濃度の両方を経時的に安定することができることを明らかにした。
【0041】
本発明において、高濃度残留有効塩素水溶液の残留有効塩素濃度は、2000ppm〜10000ppmであることが好適である。これは、10ppm〜150ppmの濃度に希釈する際に、本発明の実施態様のようなベンチュリ効果を用いた簡便で低コストの希釈方法およびそれを製造装置を使用することができるためである。すなわち、水道水の流量は一般的には40〜120cm/秒となるため、一般的な水道水を希釈用の水として用いた場合、ベンチュリ効果を用いた簡便で低コストの希釈方法を好適に用いる高濃度残留有効塩素水溶液の残留有効塩素濃度は、上記の好適な濃度範囲である。所定の濃度範囲以外では適正希釈濃度範囲10ppm〜150ppmの殺菌水を得ることは困難である。すなわち、高濃度残留有効塩素水溶液の残留有効塩素濃度が10000ppmを超える場合には、正確な希釈能力の限界を超える恐れがある。また、高濃度残留有効塩素水溶液の残留有効塩素濃度が2000ppm以下の場合には、10ppm〜150ppmの希釈水溶液濃度が得ることができない恐れがある。
【0042】
そこで、残留有効塩素水溶液の残留有効塩素濃度が経時的に安定である10.5±1.5付近のpHで高濃度残留有効塩素水溶液を保存し、殺菌水(残留有効塩素含有水)が必要となったときに、10ppm〜150ppmの濃度に希釈し、かつ、pHを6±2、好ましくはpH4〜6.5に転換するという方法をとることにより、簡便に殺菌用の残留有効塩素含有水を得ることができることを見出し、本発明に至った。
【0043】
本発明によると、使用者が使用現場で使用量に応じて適時に必要とする量の殺菌用の残留有効塩素含有水を製造することができるので、水道水を使うのと同様の作業性で食材等の洗浄殺菌を行うことができる。本発明の方法および装置を用いると、高濃度残留有効塩素水溶液は工場で大量生産でき、高濃度なので濃度の割には体積が小さいために配送も容易なので、製造コストや流通コストを下げることができるという利点も有する。
【0044】
次亜塩素酸ナトリウム含有水としては、工場で生産された50000〜60000ppmの高濃度次亜塩素酸ナトリウム含有水が、食品添加剤として市場に流通している。次亜塩素酸ナトリウム含有水のpHを、殺菌力を有するpH6±2、好ましくはpH4〜6.5の範囲に転換することは、従来、困難であった。また、高濃度の次亜塩素酸ナトリウム含有水を扱うことは、化学的知識をあまり有さない通常の作業者にとっては危険を伴う。そこで、本発明の方法および装置では、高濃度残留有効塩素水溶液を、残留有効塩素濃度が、2000ppm〜10000ppm、好ましくは4000ppm〜8000ppmとなるように希釈し、所定の弱酸を所定量添加することによって、希釈水溶液のpHを6±2、好ましくはpH4〜6.5に転換する方法を用いることを基本とする。
【0045】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0046】
本発明の残留有効塩素含有水の製造方法は、原料となる高濃度の残留有効塩素含有水を水で希釈することにより、希釈水溶液を製造する工程を有する。原料となる高濃度の残留有効塩素含有水の残留有効塩素濃度は、2000ppm〜10000ppm、好ましくは4000ppm〜8000ppmであり、pHが、10.5±1.5であり、長期にわたって保存することも可能である。また、所定濃度に希釈した希釈水溶液のpHの残留有効塩素濃度は経時的に安定である。希釈するために用いる水は、水道水、純水、イオン交換水等、一定以上の純度を有するどのような種類の水をも用いることができるが、低コストであり、簡単に入手可能であることから、水道水が好ましい。残留有効塩素含有水は、残留有効塩素濃度が10ppm〜150ppmとなるように水で希釈される。残留有効塩素濃度が200ppm前後となると、残留有効塩素と食品の有機物との反応を起こし、発癌性が指摘されているトリハロメタン発生する可能性があるので、それを避けるために上限は、150ppm、好ましくは100ppmとする。また、殺菌能力を有するためには、10ppm以上、好ましくは20ppm以上の残留有効塩素濃度を有する必要がある。より好ましい残留有効塩素濃度の範囲は、具体的には30ppm〜90ppm、さらに好ましくは40ppm〜60ppmである。
【0047】
原料となる高濃度の残留有効塩素含有水の残留有効塩素濃度の下限は、濃度が低すぎると輸送コストが上昇するため、2000ppmであることが好ましく、4000ppmであることがさらに好ましい。また、濃度の上限は、残留有効塩素含有水を希釈する際に、濃度が高すぎる場合には濃度調整機能を確実にすることが困難となることから、10000ppmであることが好ましく、8000ppmであることがより好ましい。上記の点を総合的に判断し、原料となる高濃度の残留有効塩素含有水の残留有効塩素濃度は、2000ppm〜10000ppmであることが好ましく、4000ppm〜8000ppmであることがより好ましい。
【0048】
次に、本発明の方法は、希釈した水溶液(希釈水溶液)、例えば、加速された流水である希釈した水溶液(希釈水溶液)に対して、酸性添加剤を添加し、希釈水溶液のpHを6±2、好ましくはpH4〜6.5となるように調節する工程を有する。酸性添加剤の添加は、希釈水溶液のpHが所定の値となるように酸性添加剤の導入量を調節することによって行うことができる。
【0049】
本発明の残留有効塩素含有水の製造方法では、希釈水溶液(例えば、加速された流水である希釈水溶液)に添加する酸性添加剤は、食品添加物として添加することができる酸を含むことができる。具体的には、酸性添加剤は、食酢、塩酸、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−アルギニン―グルタミン酸、アルギン酸、L−イソロイシン、クエン酸および酢酸からなる群から選択される少なくとも一つを含むことができる。本明細書では、酸性添加剤に含まれる上記酸の濃度のことを「酸濃度」という。
【0050】
食酢は酢酸を2〜3%を含み、希釈せずそのまま酸性添加剤として使用することができる。また、「食酢」とは「食酢品質表示基準」(平成12年12月19日農林水産省告示第1668号)に記載されたものであることができる。
【0051】
塩酸、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−アルギニン―グルタミン酸、アルギン酸、L−イソロイシン、クエン酸および酢酸の酸性添加剤中の濃度(酸濃度)は、20重量%以下、好ましくは10重量%以下であることが好ましい。酸濃度が低い場合には、未熟練の者でも容易に取り扱ことができる。
【0052】
酸性添加剤中の塩酸等の酸濃度の下限は、本発明の方法の酸性添加剤としての機能を果たす濃度、すなわち酸性添加剤を所定の導入速度で導入することによって希釈水溶液のpHが所定の値となる濃度であればよい。具体的には、酸性添加剤中の塩酸および酢酸等の濃度が、0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上であることができる。
【0053】
酸性添加剤として、具体的には、(a)濃度0.1〜20重量%のクエン酸、(b)食酢と、濃度0.1〜20重量%との酢酸の混合液、(c)食酢と、濃度0.1〜20重量%のクエン酸との混合液または(d)食酢と、濃度0.1〜20重量%の酢酸と、濃度0.1〜20重量%のクエン酸との混合液等を用いることができる。また、好ましくは、上記(a)〜(d)のクエン酸または酢酸の濃度の範囲は、いずれも0.5〜10重量%である。
【0054】
例えば食酢または酢酸にクエン酸のような緩衝力のある酸を混合させて用いる場合、本発明にかかる装置が、調理現場の他のカラン使用等による水道の水圧変動に対応してpHが変動する場合に生じる弊害を緩和することができ、殺菌能力を有するpHの範囲を確実に保持するための緩衝力を発生させることができる。このことにより、水圧変動によりpHが所定の値以上になることによって水洗による皮膚の角質を分解して雑菌を謂集させる手荒れが発生してしまうという危険を防止し、さらにこの緩衝力により、水圧が低下することによってpH3以下の酸性になると生じる塩素ガスの発生を防止し、人体に及ぼす危険を回避することができる。
【0055】
また、酸性添加剤は、上記の酸の他に、食品添加物として添加することができる酸の塩を含むことができる。具体的には、酸性添加剤は、塩化ナトリウム、L−アスパラギン酸ナトリウム、L−アルギニン―グルタミン酸塩、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、L−グルタミン酸カリウム、L−グルタミン酸カルシウム、L−グルタミン酸ナトリウム、L−グルタミン酸マグネシウム、酢酸ナトリウムおよびL−システイン塩酸基などから選択される塩を含んでもよい。これらの塩は、希釈水溶液のpHを所定の値となるように調節するという酸性添加剤の機能を妨げない範囲で添加することができる。
【0056】
上述の酸性添加剤を、希釈水溶液の流水に、所定のpHとなるように添加する。なお、希釈水溶液を所定のpHとする場合の酸性添加剤の添加量の具体例は、希釈水溶液の流量(流れの中のある断面を単位時間に通過する体積)に対して2%以下、あるいは1%以下、一般には0.5%以下の流量である。さらに具体的には、希釈水溶液の流量(概ね水道水の流量に等しい)が80mL/秒の場合には、酸濃度0.5〜10重量%の酸性添加剤を、0.05〜0.3mL/秒の範囲で添加することができる。すなわち、希釈水溶液の流量に対する酸性添加剤の添加量の具体例は、0.06〜0.4%であることができる。
【0057】
希釈水溶液に対して酸性添加剤の添加を行った後、希釈水溶液のpHの調節を速やかに行うために、両者を混合する。
【0058】
なお、酸性添加剤の添加は、特に、加速された希釈水溶液の流水に対して行うと、早く、効率的に希釈水溶液のpHを6±2、好ましくはpH4〜6.5にすることができるために好ましい。発明者は、動的な流水に対して、微量の酸性添加剤を混入することにより、短時間(瞬時)に弱アルカリ性水をpH6±2、好ましくはpH4〜6.5の水溶液に転換することができることを見出し、その原理を本発明に用いたのである。
【0059】
原料となる高濃度残留有効塩素水溶液は、所定の濃度、すなわち2000ppm〜10000ppm、好ましくは4000ppm〜8000ppmの次亜塩素酸水溶液、次亜塩素酸ナトリウム水溶液またはこれらを混合した水溶液を用いることができる。また、原料水溶液は、濃度50000〜60000ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、次亜塩素酸水溶液100体積%に対して2〜10体積%の割合で添加し、混合し、およびpHが10.5±1.5となるようにpHの調節をした高濃度残留有効塩素水溶液であることが好ましい。本発明の実施態様の装置に対応した原料水溶液(高濃度残留有効塩素水溶液)の濃度にすることによって、所定の濃度の希釈水溶液を得ることができる。
【0060】
また原料水溶液に用いる次亜塩素酸水溶液は、電解装置のアノード室に生成された電解次亜塩素酸水溶液であることが好ましい。電解装置は、一般に、アノード電極を有するアノード室と、アノード室とは隔膜で隔てられたカソード室とを有する。次亜塩素酸水溶液は、このような、アノード電極を有するアノード室と、アノード室とは隔膜で隔てられたカソード室とを有する電解装置を用いて製造することができ、アノード室に生成された電解次亜塩素酸水溶液を、上述の高濃度残留有効塩素水溶液の原料として用いることができる。なお、電解の際には、塩化物と、塩化物に対して10重量%以下の塩酸とを含む水溶液を用いることができる。塩化物は、具体的には、塩化ナトリウムを用いることができ、塩化ナトリウムの飽和水溶液を用いることができる。また、塩酸の濃度は、例えば10%以下であることができる。また、この希塩酸を含む水溶液を、アノード室およびカソード室に導入して、アノード電極とカソード電極に電圧を印加することにより電解を行うことができる。
【0061】
原料となる高濃度残留有効塩素水溶液のpHを10.5±1.5に調節する方法は、電解次亜塩素酸水溶液をさらにカソード室へ導入して、さらに、電解質と、電解質に対して3重量%以下の塩酸を添加し、陰極に発生するOHと、陽極で発生するHの量との差を抑えながら、電解次亜塩素酸水溶液をさらに電解することにより行うという方法であることが好ましい。このとき用いる塩酸の濃度は、例えば10%以下である。
【0062】
次に、本発明の残留有効塩素含有水の製造方法に用いる装置について説明する。
【0063】
図2〜5に、本発明の残留有効塩素含有水の製造を行うための装置の一例の模式図を示す。この装置は、希釈部6、高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器7、水流整流部4、酸性添加剤添加部3および酸性添加剤混合部60を含み、酸性添加剤導入量調節器13等から構成される酸性添加剤導入量調節部を含む。以下、本発明の装置の構成をさらに詳しく説明する。
【0064】
まず、図2に示す本発明の装置の一例について説明する。この装置は、水道水などの水を導入するための水導入口30を有する。通常、水導入口30は水道配管に流体接続され、水道水が供給される。この装置によって上記の方法で製造された殺菌用残留有効塩素含有水は、殺菌用残留有効塩素含有水出口64より取り出され、被殺菌物65の殺菌に用いることができる。なお、本明細書および特許請求の範囲では、本装置の動作による水または水溶液の流れに沿って、本装置の水導入口30に近い側を「上流側」、殺菌用残留有効塩素含有水出口64に近い側を「下流側」という。同様に、他の配管についても水溶液等に流れに沿って「上流側」および「下流側」という。また、「流体接続する」とは、配管、バルブおよび本発明の装置を構成する部分などの部品により、二つのものの間に流体が流れることができるように接続されていることをいう。
【0065】
水導入口30の下流側には、通常、水の導入を制御するための水栓開閉弁8が配置される。操作の容易性の点から、水栓開閉弁8は、ワンタッチで開閉可能なコックであることが好ましい。水栓開閉弁8のさらに下流側には、高濃度残留有効塩素水溶液希釈部6(単に「希釈部6」ともいう)が配置される。希釈部6は、高濃度残留有効塩素水溶液を導入するための高濃度残留有効塩素水溶液導入口40を有する。希釈部6においては、高濃度残留有効塩素水溶液を高濃度残留有効塩素水溶液導入口40から導入し、水で希釈して希釈水溶液を生成することができる。なお、水の流れによるベンチュリ効果を用いると、特にポンプ等を設けることなく、高濃度残留有効塩素水溶液を高濃度残留有効塩素水溶液導入口40から導入し、水と混合することができる。また、所定量のポンプ高濃度残留有効塩素水溶液を希釈部6に供給するために、ポンプおよび流量計等を用いることもできる。
【0066】
通常、本発明の装置には高濃度残留有効塩素水溶液保管槽10を設け、高濃度残留有効塩素水溶液をその中に保管する。高濃度残留有効塩素水溶液保管槽10と高濃度残留有効塩素水溶液導入口40との間には、高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器7が配置されており、希釈部6において水で希釈する際に、高濃度残留有効塩素水溶液の導入量を調節することができる。高濃度残留有効塩素水溶液の、水に対する導入量の調節は、例えば、水栓開閉弁8を全開と全閉しかできないようにしておくことで水を導入したときの水の流量を一定にし、高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器7によって、高濃度残留有効塩素水溶液の導入量を所定の値とするように調節することにより、行うことができる。装置停止時の高濃度残留有効塩素水の供給停止を確実にするために、高濃度残留有効塩素水溶液保管槽10と高濃度残留有効塩素水溶液導入口40との間には、高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器7以外に、例えば、図6の原料水用水圧自動開閉弁72のような開閉弁を設けることができる。
【0067】
希釈部6のさらに下流側には、水流整流部4が配置されることが好ましい。なお、希釈部6と水流整流部4との流体接続のために、これらの間に希釈水溶液導入管5を配置することができる。水流整流部4では、例えば、図4に示すように、希釈水溶液の水路に水流を安定するために配置された突起等の水流安定機構を有する構造とすることにより、希釈水溶液の水流を整流することができる。発明者は、高速で流動する流水に対して、所定の濃度および量の酸性添加剤を導入することにより、短時間(瞬時)にpHを所定の値に転換させることができることを見出したので、この現象を利用することができる。なお、水流整流部4は、下流側方向に向かって狭くなるような構造にすることで酸性添加剤添加部3内を緩やかな負圧にすることができる。
【0068】
希釈部6または水流整流部4のさらに下流側に配置される酸性添加剤添加部3において、希釈水溶液に酸性添加剤が添加される。酸性添加剤添加部3は、希釈水溶液を酸性添加剤添加部3に射出するための希釈水溶液射出口307を有する希釈水射出管305と、希釈水射出管305の外壁の少なくとも一部に接し、希釈水溶液射出口307を有する面308(図4に破線で示す)で画され、酸性添加剤導入口306を有する酸性添加剤滞留スペース303とを含むことが好ましい。酸性添加剤滞留スペース303は、希釈水溶液の流水経路とはならないので、このスペースには酸性添加剤が滞留することとなる。水流整流部4で整流された希釈水溶液は、希釈水射出管305を通過し、酸性添加剤添加部3において酸性添加剤と接触する。酸性添加剤添加部3を、このような構造とすることで、流動する流水に対して、所定の濃度および量の酸性添加剤を導入することができ、短時間(瞬時)にpHを所定の値に転換させることを、より確実に行うことができる。なお、水流整流部4において水流を加速した場合には、pHの転換に対してより好ましい状態となる。また、希釈水射出管305は、水流整流部4に配置した水流安定機構と同様な機構をその内部に有することができる。その場合には、希釈水溶液射出口307での希釈水溶液の水流の安定をより確実なものとすることができ、pHの転換に対してより好ましい状態となる。
【0069】
酸性添加剤導入口306には、酸性添加剤導入管304によって、酸性添加剤導入量調節器13を含む構成を有する酸性添加剤導入量調節部が流体接続される。酸性添加剤導入量調節部は、酸性添加剤導入量調節器13の他に、酸性添加剤貯留瓶15、水圧自動開閉弁12および酸性添加剤点滴及び一時貯留器500などを含むことができる。酸性添加剤導入量調節器13には、酸性添加剤を貯留するための酸性添加剤貯留瓶15が流体接続されることが好ましい。なお、図4の装置の場合、酸性添加剤添加部3に導入された酸性添加剤は、酸性添加剤滞留スペース303に滞留し、加速された希釈水溶液と徐々に接触する。
【0070】
酸性添加剤混合スペース62には、例えば、螺旋形の羽構造の部材を設置するなど、形を少し絞り、さらにすぐに開放するような形状とすることにより、管内抵抗を少なくしながら希釈水溶液と酸性添加剤との混合が速やかに行われるような構造とすることが好ましい。
【0071】
所定のpHに転換した希釈水溶液は、殺菌力を有する残留有効塩素含有水として殺菌に用いることができる。
【0072】
本発明の残留有効塩素含有水の製造方法においては、原料となる高濃度の残留有効塩素含有水を希釈することにより希釈水溶液を生成し、その希釈水溶液に対して酸性添加剤の添加を行う。このときの、酸性添加剤の添加方法は、任意の公知の方法、例えば、水槽の中の静止状態の次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の残留有効塩素水溶液の希釈水溶液に希塩酸等の酸を注入して拡散律速に中和するという方法およびそのための装置(流量制御ポンプおよび流量計等)を用いることができる。ただし、添加量の制御をより的確に行うためには、流水中の残留有効塩素水溶液の希釈水溶液に酸性添加剤を添加するための機構として、図3にその模式図を示すような機構を用いることが好ましい。この機構は、酸性添加剤貯留瓶15に貯留した酸性添加剤を、水圧自動開閉弁12、酸性添加剤導入量調節器13および酸性添加剤点滴及び一時貯留器500を経由して、酸性添加剤導入管304から酸性添加剤添加部3へ導入することができる構造になっている。
【0073】
すなわち、本発明の、好ましい酸性添加剤の添加機構は、少なくとも一つの酸性添加剤点滴及び一時貯留器500を用い、酸性添加剤導入量調節器13によって酸性添加剤の流量を調節することにより行う。本発明の装置に用いる酸性添加剤点滴及び一時貯留器500は、点滴貯留用管510と、滴下管512と、排出管513とを含むことができる。点滴貯留用管510は、液体の出入りを除き気密性であり、酸性添加剤を貯留するための貯留空間511を有する。また、滴下管512は、点滴貯留用管510の上端に配置され、一端が、酸性添加剤を滴下(点滴)するための貯留空間511の内部に配置され、他端が、酸性添加剤導入量調節器13に流体接続される。また滴下管512の内径は、点滴貯留用管510の内径より小さい。排出管513は、一端が、点滴貯留用管510の下端に配置され、他端が、酸性添加剤導入管304を経て酸性添加剤滞留スペース303に流体接続される。また、排出管513の内径は、点滴貯留用管510の内径より小さい。貯留空間511は、基本的に、滴下管512と、排出管513とに開口部を有する以外はゴム栓514などのシール材によって密封されている。ただし、必要に応じて、後述するように、貯留空間511に液体や気体の導入を可能にするためのガラス管空気圧調整パイプ19を配置することができる。なお、滴下管512内の水面と、酸性添加剤添加部3との高さは、酸性添加剤の導入を、酸性添加剤添加部3内の緩やかな負圧による流入によりスムーズに行うために、同程度の高さとすることが好ましい。
【0074】
さらに説明を加えるならば、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500の排出管と、酸性添加剤添加部3とを酸性添加物導入管304を介して流体接続した経路を流れる酸性添加剤であって、酸性添加剤添加部3内を緩やかな負圧にすることで静止流体にすることにより、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500の中での点滴による水滴重量によって、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500から酸性添加物導入管304を経て酸性添加剤添加部3へと導入される酸性添加剤を、例えば水道水の圧力によって加圧された流水状態の希釈水溶液に対して正確に添加を行うことができる。そのために、気密性のある酸性添加剤点滴および一時貯留器500内の点滴落下距離を1〜100cmに確保することにより、酸性添加物導入管304内の圧力を制御し、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500内の酸性添加剤の点滴が行われているときには希釈水溶液に酸性添加剤が一滴ずつ正確に添加を行い、点滴が止まると希釈水溶液への酸性添加剤の添加が止まる。
【0075】
酸性添加剤添加部3への、酸性添加剤の導入について、さらに説明する。点滴貯留用管510の下部に貯留している酸性添加剤が、排出管513と酸性添加剤導入管304とによって、酸性添加剤添加部3に流体接続し、酸性添加剤添加部3の内部がわずかに負圧状態になっているため、酸性添加剤滞留スペース303は静止状態となっている。一方、点滴貯留用管510内が密閉状態であるため、管内の空気層内に点滴されると、一方が閉ざされた状態で、酸性添加剤の水量と重量とで一時的に密閉された状態にある静止流体の1点に圧力が加わり液体のいたるところで同じ分だけ圧力が増加するというパスカルの原理により、酸性添加剤添加部3内の希釈水溶液に注入される酸性添加剤は、点滴貯留用管510内に点滴された量だけ注入され、点滴が止まると注入が止まるという的確性が確保される。
【0076】
なお、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500は、滴下管512から貯留空間511へ酸性添加剤を滴下(点滴)し、一時貯留することができる。また、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500の点滴貯留用管510の材料としては、ガラス管、アクリル管、およびその他の樹脂製の管などを用いることができる。
【0077】
このような添加機構を用いると、図5および図8に示すように、点滴貯留用管510の中で滴下管512から酸性添加剤16が滴下する様子を観察することができる。滴下する酸性添加剤の液滴は、1滴が0.02〜0.05mLであるので、滴下する速度を目視しながら、酸性添加剤導入量調節器13を調節することにより、滴下管512から貯留空間511へ滴下する量、すなわち酸性添加剤導入量を調節することができる。また、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500を用いることによって、酸性添加剤を添加する添加量の調整を、より精密に、的確に行うことができる。したがって、動的な流水に対して、所定量の添加剤を混入するためには、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500を用いることが好ましい。
【0078】
なお、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500には、図3に示すように、ガラス管空気圧調整パイプ19および空気圧調整開閉弁14が配置されることが好ましい。これらは、下方の酸性添加剤点滴及び一時貯留器500bの点滴貯留用管510に酸性添加剤を貯留させるため、装置始動初期に用いられる。すなわち、装置始動時に、上部ガラス管空気圧調整パイプ19に細管を挿入し、その細管を通して酸性添加剤または水を点滴貯留用管510内に導入し、貯留することができる。さらに装置を停止するときなどの、点滴貯留用管510からの酸性添加剤の除去は、この空気圧調整開閉弁14を開くことにより行うことができる。同様に、上方の酸性添加剤点滴及び一時貯留器500aに、ガラス管空気圧調整パイプおよび空気圧調整開閉弁14を配置することもできる。
【0079】
酸性添加剤点滴及び一時貯留器500は、直列に連結して複数配置、例えば図3に示すように、直列に二つ連結して配置した酸性添加剤点滴及び一時貯留器500aおよび500bを用いることにより上下それぞれの役割を担わすことができる。すなわち、上方の酸性添加剤点滴及び一時貯留器500aを用いれば、注入量を調整するために滴下する水滴の数を計測することができる。一方、下方の酸性添加剤点滴及び一時貯留器500bは、酸性添加剤16を定量貯留した後、酸性添加剤導入管304を経て、酸性添加剤添加部3へ供給することができ、精密で的確な酸性添加剤の供給を行うことができる。この場合、酸性添加剤が希釈部6内の水圧に抗してスムーズに酸性添加剤導入管304から導入するためには、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500bの中の酸性添加剤の水面の高さが、希釈部6の中心の高さとほぼ等しいことが好ましい。
【0080】
なお、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500は、ガラス製または透明アクリル製等の透明な材料を用いたものなので、中の酸性添加剤の滴下している様子を見ることができるため、点滴数による酸性添加剤の添加量と混入の有無を使用者に知らしめるための、目視用の添加量計測器と添加警告装置として用いることができる。酸性添加剤が滴下していない場合には、残留有効塩素含有水のpHを、殺菌能力を有する所定の値へと変化させることができていないことを示すので、殺菌が有効に行われない状況にあることを使用者が知ることができる。
【0081】
本発明の残留有効塩素含有水の製造方法において、酸性添加剤は、酸性添加剤貯留瓶15に保管し、必要に応じて残留有効塩素含有水の希釈水溶液の流水に対する添加のために供給することができる。このとき、酸性添加剤貯留瓶15には、酸性添加剤が酸性添加剤貯留瓶15の酸性添加剤が所定の量まで減量した場合に、警告を発する警告装置18を有することが好ましい。この警告装置18からの警告は、酸性添加剤残量センサー17からの酸性添加剤残量に関する情報に基づき発することができる。なお、「所定の量」とは、酸性添加剤の使用状況に応じて適宜設定することができるが、例えば、酸性添加剤貯留瓶15の容積の5分の1、あるいは10分の1の量として設定することができる。
【0082】
本発明は、酸性添加剤を希釈水溶液に添加することにより、殺菌効果のあるpH6±2、好ましくはpH4〜6.5の弱酸性領域を中心とするpHに転換することを特徴とするものであるので、使用者が酸性添加剤の注入を行わなかったり、気がつかないで使用したりした場合には、殺菌効果の少ないアルカリ性の希釈水溶液が流出することになり、食中毒等を引き起こす場合も考えられる。そのため、未熟練の従業員であっても、容易に、確実に殺菌されることを確認するために、本発明の方法および装置は、上記のような警告装置18を有し、それを用いることが好ましい。
【0083】
本発明の残留有効塩素含有水の製造方法および装置においては、酸性添加剤導入量調節器13と酸性添加剤貯留瓶15とを流体接続する配管に、水圧自動開閉弁12を有することができる。また、水を導入するための水導入口30と希釈部6との間に、水栓開閉弁8を有し、水栓開閉弁8と希釈部6との間に、水圧を検出する水圧検出機構9を有する。水圧検出機構9は、水栓開閉弁8と希釈部6との間の水圧を検出し、その水圧に応じて水圧自動開閉弁12が自動的に開閉する。すなわち、水導入口30には、通常、水道配管に流体接続されているので、水栓開閉弁8が開いたときには、水導入口30から水が供給され、水導入口30と希釈部6との間には水道水の圧力に応じた所定の水圧がかかることとなる。そこで、このような水栓開閉弁8を閉から開にしたときの水圧変化を水圧検出機構9が検出した場合には、水圧自動開閉弁12を開けることにより、酸性添加剤の導入を自動的に開始する。また、水栓開閉弁8を閉じた場合には、水栓開閉弁8と希釈部6との間に水圧がかからなくなるので、水栓開閉弁8を開から閉にしたときの水圧変化を検出し、水圧自動開閉弁12を自動的に閉じる。
【0084】
なお、水圧自動開閉弁12の開閉の仕組みの一例として、水栓開閉弁8と希釈部6との間から水管を水圧自動開閉弁12の開閉機構に対して流体接続し、水管の水圧変化に応じて水圧自動開閉弁12の開閉を自動的に行うような機構としてもよい。また、水栓開閉弁8と希釈部6との間に水圧センサーを配置し、水圧センサーからの信号に応じて水圧自動開閉弁12の開閉を自動的に行うような機構とすることができる。
【0085】
このように、水圧自動開閉弁12は、水導入口30と希釈部6との間の水圧を検出し、水圧が、所定の水圧以上の場合に、水圧自動開閉弁12が開くことで酸性添加剤の通過を可能にする。この方法によって、殺菌水を必要とするときの酸性添加剤の導入を確実にし、殺菌能力のない残留有効塩素含有水が供給されることを避けることができる。また、本発明の装置および方法は、基本的に自然落下流出方式とすることができるので、所定の水圧未満の場合に水圧自動開閉弁12が閉じることで酸性添加剤の通過を不可能にすることによって、水が水導入口30から本装置内に導入されていないのに酸性添加剤が誤って流出することによる経済的損失を防ぐことができる。また、本発明の装置は、このような方法を具現化するための、任意の水圧検出機構9および水圧自動開閉弁12を有することができる。例えば、水圧自動開閉弁12の代わりに、電磁弁を配置し、水圧センサーからの信号に応じて電磁弁の開閉を自動的に行うような機構とすることができる。
【0086】
上述のような本発明の方法および装置を用いると、工場において低コストで高品質の原料水を製造し、使用現場に配送することで、必要最小限の必要量だけを水道水の水栓を開くだけで適時使用しできることが可能となる。
【0087】
次に、本発明の装置の動作について、図2〜3を用いて説明する。
【0088】
まず、高濃度残留有効塩素水溶液保管槽10に、所定の高濃度残留有効塩素水溶液を導入する。また、酸性添加剤貯留瓶15に、所定の酸性添加剤を導入する。
【0089】
次に、水栓開閉弁8を開き、水道配管に流体接続した水導入口30から、水道水を導入する。この結果、希釈部6の中に水道水の流れが生じ、ベンチュリ効果によって高濃度残留有効塩素水溶液を高濃度残留有効塩素水溶液導入口40から所定の流量で導入することができる。その結果、希釈部6では高濃度残留有効塩素水溶液の希釈水溶液を生成することができる。なお、高濃度残留有効塩素水溶液保管槽10と高濃度残留有効塩素水溶液導入口40との間に開閉弁を設けた場合には、高濃度残留有効塩素水溶液の導入のためにその開閉弁を開くことが必要である。
【0090】
希釈水溶液は、水流整流部4で整流され、酸性添加剤添加部3へと導入され、酸性添加剤が添加される。
【0091】
一方、酸性添加剤は、水道水が導入され、水圧検出機構9からの信号等により水圧自動開閉弁12が開くことにより、酸性添加剤貯留瓶15から供給される。なお、水道水が遮断された場合は、水圧自動開閉弁12が閉じ、酸性添加剤の供給は停止する。また、酸性添加剤貯留瓶15の中の酸性添加剤が所定量以下となった場合には、酸性添加剤残量センサー17がそれを検知し、警告装置18から警告が発せられ、酸性添加剤の補充を促す。
【0092】
酸性添加剤貯留瓶15から供給される酸性添加剤は、酸性添加剤導入量調節器13によって導入量を調節され、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500に導入される。上部の酸性添加剤点滴及び一時貯留器500aは、下部の酸性添加剤点滴及び一時貯留器500bに流体接続され、貯留器内の密閉空気とのバランスで点滴状に酸性添加剤が滴下する。その結果、酸性添加剤は、酸性添加剤導入管304を経由し、酸性添加剤導入口306から酸性添加剤添加部3へと導入される。酸性添加剤添加部3において、酸性添加剤は、酸性添加剤滞留スペース303に滞留する。
【0093】
なお、上部の酸性添加剤点滴及び一時貯留器500aおよび下部の酸性添加剤点滴及び一時貯留器500bは、滴下管512から貯留空間511へ酸性添加剤を滴下(点滴)し、一時貯留することができる。
【0094】
動的に流動している希釈水溶液は、酸性添加剤添加部3において、添加剤滞留スペースに滞留している酸性添加剤と接触し、さらに酸性添加剤混合部60へと導入され、混合・安定される。この結果、pHが6±2、好ましくはpH4〜6.5、残留有効塩素濃度が10ppm〜150ppmである殺菌能力を有する残留有効塩素含有水を得ることができる。この残留有効塩素含有水は、残留有効塩素含有水出口64から取り出され、被殺菌物65に対してシャワーリングされ、被殺菌物65の殺菌を行うことができる。
【0095】
図6に、本発明の別の態様の残留有効塩素含有水の製造装置を示す。図6に示す装置は、水道水調整弁75、原料水用水圧自動開閉弁72および斜傾管600を有する点が、上述の図2および図3に示す装置と相違する。なお、水道水調整弁75および原料水用水圧自動開閉弁72は、上述の図2および図3に示す装置においても用いることができる。また、上述の図2および図3に示す装置においても、以下に説明する図6に示す態様の装置と同様の構成を付加し、同様の条件を用いることができる。
【0096】
図6に示す態様の装置では、本発明の装置の水道(上水道)との接合部分に水道水調整弁75を設けることが好ましい。水道水を供給するための水道の水圧は、地域や場所により1〜5kg/cmと幅があり、さらに調理場での使用など、使用状況によっては水圧の激しい変動が予想される。水道水調整弁75を設けることにより、その水圧変動を緩和することにより、正確な酸性添加剤に注入ができるため、適正なpHに変換することができる。
【0097】
本発明の装置では、水道から供給する水量は、30〜300cm/秒、40〜120cm/秒であることがより好ましく、50〜90cm/秒であることがさらに好ましい。水道から供給する水量がこのような範囲であると、殺菌力を有する十分な量の残留有効塩素含有水を安定して製造することができる。また、残留有効塩素水溶液の希釈を、ベンチュリ効果を用いた簡便で低コストの希釈方法により行うときに、所定の高濃度残留有効塩素水溶液の希釈用の水(水道水)の流量が少なすぎる場合には、流速によって生ずるベンチュリ効果の吸引力が不足し、必要とする10〜150ppmの希釈水溶液濃度が得られない恐れがある。また、希釈用の水(水道水)の流量が多すぎる場合には、正確な希釈能力の限界を超え、10ppm〜150ppmの希釈水溶液濃度が得られない恐れがある。
【0098】
上水道(水道)を本発明の装置へ供給するための配管には、水栓開閉弁8が配置される。操作性の点から、水栓開閉弁8はワンタッチで開閉可能なコックであることが好ましい。なお、水栓開閉弁8および水道水調整弁75は、適宜、それらの位置を交換して配置することも可能である。
【0099】
図6に示す装置は、高濃度残留有効塩素水溶液保管槽10と、高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器7との間の配管には、原料水用水圧自動開閉弁72を有することが好ましい。原料水用水圧自動開閉弁72は、酸性添加剤導入量調節器13と酸性添加剤貯留瓶15とを流体接続する配管に設置された水圧自動開閉弁12と同様に開閉する。すなわち、水栓開閉弁8と希釈部6との間の水圧を水圧検出機構9が検出し、その水圧に応じて原料水用水圧自動開閉弁72が自動的に開閉する。この原料水用水圧自動開閉弁72の開閉により、水道水が流れているときだけ高濃度残留有効塩素水溶液が希釈部6に導入されることとなる。これは作業を中止したとき、高濃度残留有効塩素水溶液である原料水が、サイフォン現象を起こして、希釈されずに生のままの高濃度の殺菌用残留有効塩素含有水出口64に流出することを防ぐためである。なお、原料水(高濃度残留有効塩素水溶液)がなくなった場合での運転を避けるため、高濃度残留有効塩素水溶液保管槽10内の高濃度残留有効塩素水溶液の量が、所定量より少なくなると警告を発するための原料水用警告装置71を設置することが好ましい。原料水用警告装置71は、高濃度残留有効塩素水溶液保管槽が有する高濃度残留有効塩素水溶液残量センサーからの情報をもとに警告を発する。なお、「所定の量」とは、高濃度残留有効塩素水溶液の使用状況に応じて適宜設定することができるが、例えば、高濃度残留有効塩素水溶液保管槽10の容積の5分の1、あるいは10分の1の量として設定することができる。
【0100】
図6に示す装置では、上述の図2および図3に示す装置と同様に、希釈部6において、高濃度残留有効塩素水溶液を、残留有効塩素濃度が10ppm〜150ppmとなるように水道水を用いて希釈する。なお、希釈後の残留有効塩素濃度は、トリハロメタン発生を防止、所定の殺菌力を有することおよび装置の制御性などを確実にする点から、より好ましくは20〜100ppm、さらに好ましくは30ppm〜90ppm、特に好ましくは40〜60ppmである。
【0101】
希釈部6において、水道水の流れによるベンチュリ効果を用いることにより、特にポンプ等を設けることなく、高濃度残留有効塩素水溶液を高濃度残留有効塩素水溶液導入口40から導入し、水道から供給される水と混合することができる。このとき、水道水の水圧の変動によって、高濃度残留有効塩素水溶液の稀釈濃度が変化することを防止するために、図9に示すように、希釈部6と高濃度残留有効塩素水溶液保管槽10とを流体接続する配管に、高濃度残留有効塩素水溶液導入管74を配置することができる。高濃度残留有効塩素水溶液導入管74は、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500(例えば、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500b)と同様な構造を有することができる。すなわち、高濃度残留有効塩素水溶液導入管74は、その内部に空気層を有し、適切なバルブ操作等によって、高濃度残留有効塩素水溶液に空気を混入させることのできる機能を有する。
【0102】
高濃度残留有効塩素水溶液導入管74が空気層を有することにより、希釈部6でのベンチュリ効果による吸引力によって、配管内の溶液を点滴状または連続した糸状に空気層を通過することができる。また、希釈部6へと向かう溶液に空気を混入させることにより、希釈部6のベンチュリ効果の生じる部分に極微細の気泡吸入間隙を設けることができる。この気泡吸入間隙の空気弾性により、水道水の水圧変動を緩和することができるので、水道水の水圧変動に起因する濃度残留有効塩素水溶液の稀釈濃度の変動を防止することができる。
【0103】
また、水道水の供給を停止させたとき、高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器7のガラス管内の空気層により液体の連続性が遮断されるので、高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器7は、配管のストップバルブと同様の効果を付加することができる。
【0104】
図9に示す例のように、希釈部6と高濃度残留有効塩素水溶液保管槽10とを流体接続する配管には、さらに高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器7を配置することができる。高濃度残留有効塩素水溶液導入管74の空気層での点滴状または糸状の高濃度残留有効塩素水溶液の通過の状態を観察することにより、希釈部6の溶液の導入量を計測し、高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器7を調節することによって、生成する殺菌水の濃度を正確に制御することができる。
【0105】
図9に示す例のように、希釈部6と、高濃度残留有効塩素水溶液保管槽10とを流体接続する配管には、さらに逆流防止弁73等を配置することができる。逆流防止弁73は、例えば、フロートバルブを用いることができる。逆流防止弁73を配置することにより、配管中の溶液の逆流を防止するとともに、装置の動作停止の際に生じ得るサイフォン現象による無駄な溶液の流出も防止することができる。
【0106】
本発明の図6に示す実施態様の装置は、酸性添加剤導入量調節部において、水圧自動開閉弁12と、酸性添加剤導入量調節器13との間の配管に、斜傾管600を有する。図7に、斜傾管600の模式図を示す。斜傾管600は、透明のガラス管、アクリル管、およびその他の樹脂製の管などを材料とするものを用いることができる。斜傾管600は、管状の形状のチューブ(斜傾管用チューブ601)の形状を有し、斜傾管用チューブ601の両端には、酸性添加剤を通過させるための細管(上流側細管602および下流側細管603)を有する。酸性添加剤貯留瓶15へ向かう配管に流体接続される細管が上流側細管602であり、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500へ向かう配管に流体接続される細管が下流側細管603である。斜傾管600は、上流側細管602および下流側細管603を経由する物質の移動を除き、気密性が高く、空気を密閉することのできる構造を有する。図6および図7に示すように、斜傾管600は、本実施態様の装置に斜めに取り付けられる。すなわち、斜傾管600の、上流側細管602の斜傾管用チューブ601への開口部(液体導入口604)が、下流側細管603の開口部(液体排出口605)より高くなるように斜傾管600が本実施態様の装置に取り付けられる。この結果、液体導入口604から導入される酸性添加剤は、斜傾管用チューブ601内に空間を残したまま、酸性添加剤の水面が斜傾管用チューブ601の管壁に対して斜めの状態で貯留することができる。このような構造とすることにより、酸性添加剤貯留瓶15または上段の棚の上などにフレキシブルコンテナーなどを用いて酸性添加剤原液を貯留した場合、酸性添加剤の水位の高さの変わることにより、酸性添加剤の水圧の変化が生じ、高さによって酸性添加剤の添加量が微妙に変化する。斜傾管用チューブ601を設けた場合には、斜傾管用チューブ601のチューブ内の空気層により、一旦、酸性添加剤の自然の流れが遮断される。このようにして、自然の流水勾配に従い、酸性添加剤導入量調節器13により、斜傾管用チューブ601内に一部貯留された酸性添加剤を、一定の流出量(流出速度)で酸性添加剤点滴及び一時貯留器500に送ることができる。酸性添加剤点滴及び一時貯留器500内の酸性添加剤は、酸性添加剤導入管304を経て、酸性添加剤導入口306から酸性添加剤添加部3へと、正確に一定量導入される。このようにして、残留有効塩素含有水に対して正確に一定量(一定速度)の酸性添加剤の添加を行うことができる。酸性添加剤の添加後、殺菌用の残留有効塩素含有水のpHは、pH6±2、好ましくはpH4〜6.5である。
【0107】
酸性添加剤の正確な導入のために、斜傾管600を本実施態様の装置に斜めに取り付けられるときの角度は、管が水平のとき(液体導入口604と液体排出口605との高さが同じとき)を0度として、5〜60度、好ましくは5〜30度である。
【0108】
斜傾管600を有する場合の酸性添加剤点滴及び一時貯留器500は、上述の図2および図3に示す装置と同様に、一つまたは直列に連結して複数配置することができる。ただし、斜傾管600を有することによって、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500を一つだけ配置した場合にも酸性添加剤導入量(導入速度)を一定にすることができる。したがって、装置の低コスト化の点から、斜傾管600を有する場合には、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500を一つだけ配置することが好ましい。
【0109】
図6に示す装置の場合、図2および図3に示す装置と比較し、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500aの滴下数(点滴数)の計測をするとの役割を進化させ、流量調整という役割を担う斜傾管600を有することとなる。また、図2および図3の装置において、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500(図2および図3の酸性添加剤点滴及び一時貯留器500bに相当)の管の長さを2倍以上にすることにより、滴下管512から酸性添加剤点滴及び一時貯留器500の底部に滞留している酸性添加剤16の表面までの落下距離を長くすることができる。例えば、図8に示す酸性添加剤点滴及び一時貯留器500では、図5に示すものと比べ、滴下管512から底部に滞留している酸性添加剤16の表面までの落下距離が長いことを示している。希釈水溶液への酸性添加剤の添加を、より正確に行うために、落下距離の下限としては、1cm以上、好ましくは5cm以上、さらに好ましくは10cm以上である。落下距離の上限は、装置コストの経済性の点から、100cm以下、好ましくは50cm以下、さらに好ましくは30cm以下である。
【0110】
また、図6に示す装置においても、図2および図3に示す装置と同様に、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500内の水面と、酸性添加剤添加部3との高さは、酸性添加剤の導入を、酸性添加剤添加部3内の緩やかな負圧による流入によりスムーズに行うために、同程度の高さとすることが好ましい。酸性添加剤点滴及び一時貯留器500の点滴貯留用管510の下部に貯留している酸性添加剤が、排出管513と酸性添加剤導入管304とによって、酸性添加剤添加部3に流体接続し、酸性添加剤添加部3の内部がわずかに負圧状態になっているため、酸性添加剤滞留スペース303の酸性添加剤はほぼ静止状態となっている。一方、点滴貯留用管510内が密閉状態であるため、管内の空気層内に点滴されると、一方が閉ざされた状態で、酸性添加剤の水量と重量とで一時的に密閉された状態にある静止流体の1点に圧力が加わると液体のいたるところで同じ分だけ圧力が増加するというパスカルの原理により、酸性添加剤添加部3内の希釈水溶液に注入される酸性添加剤は、点滴貯留用管510内に点滴された量だけ注入される。さらに酸性添加剤点滴及び一時貯留器に長さを倍以上にすることにより酸性添加剤導入管内の圧力が加わり、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500内での点滴が止まると注入が止まる。これは、滴下管512から酸性添加剤点滴及び一時貯留器500の底部に滞留している酸性添加剤までの落下距離により、酸性添加剤滞留スペース303内の酸性添加剤が上方に押し上げられるとも考えられる。本発明の装置では、酸性添加剤は、正確な添加量(添加速度)によって連続的に酸性添加剤添加部3内の希釈水溶液に注入される。
【0111】
酸性添加剤点滴及び一時貯留器500には、図3に示す場合と同様に、ガラス管空気圧調整パイプ19および空気圧調整開閉弁14が配置されることが好ましい。これらは、上方の酸性添加剤点滴及び一時貯留器500の点滴貯留用管510に酸性添加剤を貯留させるため、装置始動初期に用いられる。すなわち、装置始動時に、ガラス管空気圧調整パイプ19に細管を挿入し、その細管を通して酸性添加剤または水を点滴貯留用管510内に導入し、貯留することができる。さらに装置を停止するときなどの、点滴貯留用管510からの酸性添加剤の除去は、この空気圧調整開閉弁14を開くことにより行うことができる。
【0112】
次に、本発明の図6に示す態様の装置の動作について説明する。
【0113】
まず、高濃度残留有効塩素水溶液保管槽10に、所定の高濃度残留有効塩素水溶液を導入する。また、酸性添加剤貯留瓶15に、所定の酸性添加剤を導入する。
【0114】
次に、水道水調整弁75により水道水を所定の流量となるようにして、水栓開閉弁8を開き、水道配管に流体接続した水導入口30から、水道水を導入する。それにより、水道配管の水圧検出機構9に水圧が加わったことを検出し、バネ等を有する機構を用いて閉じている原料水用水圧自動開閉弁72が水圧によって自動的に開く。この結果、希釈部6の中に水道水の流れが生じ、ベンチュリ効果によって高濃度残留有効塩素水溶液を高濃度残留有効塩素水溶液導入口40から所定の流量で導入することができる。その結果、希釈部6では高濃度残留有効塩素水溶液の希釈水溶液を生成することができる。なお、水道水が遮断された場合は、殺菌用残留有効塩素含有水出口64へ接続する配管は外部へ開放されているため、直ちに水道配管の水圧検出機構9が水道配管内の減圧を検出し、原料水用水圧自動開閉弁72を閉じ高濃度残留有効塩素水溶液の供給は停止する。また、高濃度残留有効塩素水溶液保管槽10内の高濃度残留有効塩素水溶液の量が、所定量より少なくなると、原料水用警告装置71が警告を発する。
【0115】
希釈水溶液は、水圧により、希釈部6から水流整流部4へと移動する。希釈水溶液は、水流整流部4で整流され、酸性添加剤添加部3へと導入され、酸性添加剤が添加される。
【0116】
一方、酸性添加剤は、水道水が導入され、水圧検出機構9からの信号等により水圧自動開閉弁12が開くことにより、酸性添加剤貯留瓶15から供給される。なお、水道水が遮断された場合は、水圧自動開閉弁12が閉じ、酸性添加剤の供給は停止する。また、酸性添加剤貯留瓶15の中の酸性添加剤が所定量以下となった場合には、酸性添加剤残量センサー17がそれを検知し、警告装置18から警告が発せられ、酸性添加剤の補充を促す。
【0117】
酸性添加剤貯留瓶15から供給される酸性添加剤は、まず、斜傾管600に導入される。斜傾管600から出た酸性添加剤は、酸性添加剤導入量調節器13によって導入量を調節され、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500に導入される。酸性添加剤は、酸性添加剤点滴及び一時貯留器500内の密閉空気とのバランスで点滴状に酸性添加剤が滴下する。その結果、酸性添加剤は、酸性添加剤導入管304を経由し、酸性添加剤導入口306から酸性添加剤添加部3へと導入される。酸性添加剤添加部3において、酸性添加剤は、酸性添加剤滞留スペース303に滞留する。
【0118】
動的に流動している希釈水溶液は、酸性添加剤添加部3において、上述のような酸性添加剤の添加機構によって導入し、添加剤滞留スペースに滞留している酸性添加剤と接触し、混合される。このときの混合のために、図2に示すように酸性添加剤混合部60を設けることができる。また、殺菌用残留有効塩素含有水出口64への配管64が、酸性添加剤混合部60を兼ねることができる。この結果、pHが6±2、好ましくはpH4〜6.5、残留有効塩素濃度が10ppm〜150ppmである殺菌能力を有する残留有効塩素含有水を得ることができる。この残留有効塩素含有水は、残留有効塩素含有水出口64から取り出され、被殺菌物65に対してシャワーリングされ、被殺菌物65の殺菌を行うことができる。
【0119】
本発明の装置は、流体輸送および混合のために、水道水の水圧、酸性添加剤の流下および高濃度残留有効塩素水溶液混合のためのベンチュリ機構等を用いているので、ポンプ等の流体を輸送するための装置およびそれらを駆動するための電力等が不要であり、低コストの装置であり、操作も簡便である。本発明の装置により、殺菌力のある残留有効塩素含有水(次亜塩素酸含有水)を低いコストで使用可能となる。
【0120】
本発明の方法および装置を食品殺菌用として用いる場合には、例えば、高濃度の次亜塩素酸ナトリウム含有水をあらかじめ2000ppm〜10000ppm、好ましくは、4000ppm〜8000ppmの残留有効塩素濃度になるように水で希釈し、原料水となる高濃度残留有効塩素水溶液を得ることができる。この原料水の水溶液をさらに本発明の装置により残留有効塩素濃度が10ppm〜150ppm、好ましくは30ppm〜90ppm、より好ましくは40ppm〜60ppmとなるように希釈した後、微量の酸性添加物を添加して、殺菌に対して効果のあるpHの範囲、すなわちpH6±2、好ましくはpH4〜6.5の範囲の残留有効塩素含有水を得ることができる。
【0121】
また、本発明の方法および装置の使用目的に応じて、原料水となる高濃度残留有効塩素水溶液を、適宜、選択することができる。例えば、本発明の方法により得られる殺菌用の残留有効塩素含有水を、褥創を修復するための除菌に用いる場合には、クラスターの小さい電解による高濃度電解水を原料水とすることが効果的であるといわれている。電解による高濃度電解次亜塩素酸水溶液の濃度の上限は、一般に2000ppm程度であるため、コストを下げ、原料水の保持期間を延長させるため、pHを10〜12にすることによって、2500〜4000ppmに濃度を上げることこができ、濃度保持期間を長くすることができる。高濃度電解次亜塩素酸水溶液を原料水として、本発明の方法により、残留有効塩素濃度が10ppm〜150ppm、好ましくは30ppm〜90ppm、より好ましくは40ppm〜60ppmとなるように希釈した後、所定量の弱酸を添加し、殺菌に対して効果のあるpHの範囲、すなわちpH6±2、好ましくはpH4〜6.5の範囲に転換して、殺菌用の残留有効塩素含有水を得ることができる。
【0122】
また、本発明の方法および装置を、医療や介護現場などでの手指等の消毒に使用することができる。このような用途のために、原料水として電解による高濃度電解次亜塩素酸水溶液を用いる場合、低いコストで殺菌用の残留有効塩素含有水を供給するために、原料水の残留有効塩素濃度をさらに高めることが有効である。そのために、前記の高濃度電解次亜塩素酸水溶液に10〜20%程度の高濃度次亜塩素酸ナトリウム含有水を混合することにより、残留有効塩素濃度5000ppm〜7000ppmおよびpH10〜12の原料水となる水溶液を得ることができる。この原料水となる水溶液を、本発明の装置および方法を用いて、弱酸を微量添加(点滴添加)することにより、pHを6±2、好ましくはpH4〜6.5の範囲に転換して使用するにより、低いコストの殺菌用の残留有効塩素含有水を得ることができる。
【実施例】
【0123】
本発明を、実施例によって詳しく説明する。なお、本実施例において、電解水の製造装置はジプコム株式会社製電解水生成装置の「サニーハイ(登録商標)」供給装置を用いた。この装置は、電解水の連続製造装置であり、室温でのNaCl飽和水溶液(表中の「NaCl」)およびHCl水溶液(濃度40%、表中の「HCl」)の流量を調節することにより、電解水の残留有効塩素濃度を調節することができる。また、下記の記載中、割合(%およびppm)は、特にことわりのない限り、重量割合(重量%および重量ppm)を示す。
【0124】
<実験1>
まず、既存の高濃度電解次亜塩素酸水溶液のpHの安定性について検証した。表2に、微アルカリ性高濃度電解水のpH経時変化を示す。なお、電解水製造の際の添加物およびその流量を表1に示す。表2に示すように、高濃度電解次亜塩素酸水溶液の中性域から弱アルカリ性領域のpHは、経時的に、比較的安定していることを明らかにした。
【0125】
【表1】

【0126】
【表2】

【0127】
<実験2>
次に、表4に、高濃度電解次亜塩素酸水溶液の、アルカリ域での残留有効塩素濃度の経時変化の測定結果を示す。なお、この実験用の高濃度電解次亜塩素酸水溶液は、電解により製造した電解水である。この電解水の、電解の際の添加物およびその流量を表3に示す。塩酸の添加は、弱酸性領域ではpHの安定性に寄与することが知られているが、表4に示すようなアルカリ性領域では、表3に示すような塩酸の添加量の増加に伴って、残留有効塩素濃度を大きく減衰させることが明らかとなった。なお、本測定は、室内温度(平均15℃)の状態で、透明プラスティック容器に高濃度電解次亜塩素酸水溶液を保持することで行った。
【0128】
【表3】

【0129】
【表4】

【0130】
<実験3>
次に、高濃度電解次亜塩素酸水溶液の弱アルカリ性領域での安定性をさらに評価するために、pHと残留有効塩素濃度の相関性を検討した。表6に、pHを10.5±1.5まで上昇させた場合の、残留有効塩素濃度とpHの経時変化を示す。なお、この実験用の高濃度電解次亜塩素酸水溶液は、電解により製造した電解水である。この電解水の、電解の際の添加物およびその流量を表5に示す。表5および表6から明らかなように、設定条件により変わるが、pHが10.5±1.5の範囲がphと濃度が安定している。すなわち、pHを10.5±1.5まで上昇させることによって、高濃度電解次亜塩素酸水溶液のpHおよび濃度の両方を経時的に安定することができることを明らかとなった。このように、高濃度電解次亜塩素酸水溶液は弱酸性領域での濃度限界が2000ppmであったものが、塩酸を用いずに電解を行うことによって、pHを10.5±1.5まで引き上げ、残留有効塩素濃度を3000〜4000程度にまで、安定的に高めることができることが明らかとなった。
【0131】
【表5】

【0132】
【表6】

【0133】
<実験4>
次に、電解により高濃度の次亜塩素酸水溶液(電解次亜塩素酸水溶液)をpH8周辺で生成した。そのときの電解の際の添加物、有効塩素量および次亜塩素酸ナトリウム添加量を表7に示す。その後、2週間パック内に放置して、水溶液内の副反応で濃度が低下して安定域に達した水溶液に、表7に示すように、50000ppmの次亜塩素酸ナトリウムを次亜塩素酸水溶液の量の2%を添加し、高濃度残留有効塩素水溶液を得た。表8に、この高濃度残留有効塩素水溶液の残留有効塩素量の経時変化を示す。
【0134】
この実験の結果、電解により、pHを10.5周辺までの高濃度残留有効塩素水溶液を製造し、溶液内の副反応で有効塩素が低下する期間放置し、その後、50000ppmの次亜塩素酸ナトリウムを次亜塩素酸水溶液の量の2%を添加することにより、経時的に安定した高濃度残留有効塩素水溶液を得ることができることが明らかとなった。
【0135】
【表7】

【0136】
【表8】

【0137】
<実験5>
次に、本発明の装置において、本発明の方法を用いて、殺菌用残留有効塩素含有水を製造した。表9に示すように、原液となる高濃度残留有効塩素水溶液は、次亜塩素酸3000ppmのものを用いた。また、原液のpHは10.3だった。この原液を希釈部において原液の量の50倍の水道水によって希釈し、残留有効塩素濃度が60ppmである希釈水溶液を得るようにして、本発明の装置を動作した。酸性添加剤は5%稀塩酸を用いて、pHの転換を行った後の、pH測定結果を、表10に示す。また、酸性添加剤の種類(濃度)のみを変えて、同様に本装置を作動した場合のこのようにpHを表11に示す。なお、酢酸および塩酸は、濃度が5%となるように希釈して用い、食酢は酢酸の濃度が3%のものを用いた。これらの結果から明らかなように、本発明の装置および方法を用いて、トリハロメタンを生じない所定の残留有効塩素濃度であり、かつ殺菌能力を示すpH6±2を有する残留塩素含有水を得ることができた。
【0138】
【表9】

【0139】
【表10】

【0140】
【表11】

【0141】
<実験6>
次に、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウムおよびそれらの混合物を原料水として、本発明の装置および方法を用いて、残留有効塩素含有水を製造した。次亜塩素酸(3000ppm)と次亜塩素酸ナトリウム(50000ppm)を表12に示す体積割合で混合し、水で濃度を調整することにより高濃度残留有効塩素水溶液を得た。この高濃度残留有効塩素水溶液を原料水に残留有効塩素含有水を製造した。なお、製造の際には、最終的に得られる残留有効塩素濃度が50ppmとなるように、高濃度残留有効塩素水溶液の希釈を調整した。表12に製造条件および結果を示す。このように、本発明の装置におよび方法によって、所定の濃度かつ所定のpHの殺菌能力を有する残留有効塩素含有水を得ることができた。
【0142】
【表12】

【0143】
<実験7>
次に、図6に示す装置を用いて、高濃度残留有効塩素水溶液の水道水による希釈を試みた。このとき、異なった濃度の高濃度残留有効塩素水溶液を、希釈後の残留有効塩素濃度が50ppmとなるように、高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器のバルブ絞りを調節した。希釈後の残留有効塩素濃度を表13に示す。原料水である高濃度残留有効塩素水溶液の残留有効塩素濃度30000ppmの場合には、残留有効塩素濃度の調整が困難であったが、それ以外の濃度の原料水を用いた場合には、図6に示す装置を用いることにより、希釈後の残留有効塩素濃度が50ppmとなるように調整が可能だった。
【0144】
【表13】

【0145】
<実験8>
次に、図6に示す装置を用いて、残留有効塩素含有水を製造した。原料水として、濃度10000ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、高濃度残留有効塩素水溶液保管槽に入れて用いた。水道水の流量が125mL/秒となるように、水道水調整弁75によって水道水の水量を調整した。酸性添加剤は、食酢(酢酸濃度3%)を所定量導入し、残留有効塩素含有水を製造した。
【0146】
本実験により得られた結果を表14に示す。表14の例の残留有効塩素水溶液は、全て、殺菌効果が高いpH6±2の水素イオン濃度の範囲となった。
【0147】
【表14】

【0148】
<実験9>
図6に示す装置を用いて、残留有効塩素含有水を製造した。原料水として、濃度6000ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、高濃度残留有効塩素水溶液保管槽に入れて用いた。水道水の流量が80mL/秒となるように、水道水調整弁75によって水道水の水量を調整した。酸性添加剤は、表15に示す15種類のものを用いた。すなわち、所定の濃度の塩酸(表中の「塩酸A」)、酢酸(表中の「酢酸B」)および食酢(酢酸濃度3%)を、所定の配合割合で混合し、酸性添加剤とした。表15に示す15種類の酸性添加剤を所定の導入速度で希釈水溶液に導入し、残留有効塩素含有水を製造した。
【0149】
本実験により得られた結果を表16、表17および表18に示す。全ての種類の酸性添加剤において、導入速度を適宜選択することにより、殺菌効果が高いpH6±2の水素イオン濃度の範囲の残留有効塩素含有水を製造することができた。酸性添加剤の導入の際の制御性の点では、酸性添加剤の導入速度が広い範囲にわたって殺菌効果を示すpHであることが好ましい。酸性添加剤の導入の際の制御性の点から、酸性添加剤の種類の番号2〜6および10〜15のものが好ましく、食酢と酢酸とを所定割合で混合した酸性添加である番号2〜6および12〜14のものがさらに好ましいことが明らかとなった。
【0150】
【表15】

【0151】
【表16】

【0152】
【表17】

【0153】
【表18】

【符号の説明】
【0154】
3 酸性添加剤添加部
4 水流整流部
5 希釈水溶液導入管
6 希釈部(濃度残留有効塩素水溶液希釈部)
7 高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器
8 水栓開閉弁
9 水圧検出機構(水圧導入ジョイント)
10 高濃度残留有効塩素水溶液保管槽
11 水圧伝道管
12 水圧自動開閉弁
13 酸性添加剤導入量調節器
14 空気圧調整開閉弁
15 酸性添加剤貯留瓶
16 酸性添加剤
17 酸性添加剤残量センサー
18 警告装置
19 ガラス管空気圧調整パイプ
20 殺菌用残留有効塩素含有水
30 水導入口
40 高濃度残留有効塩素酸水溶液導入口
60 酸性添加剤混合部
61 逆流防止弁
62 添加剤混合スペース
64 殺菌用残留有効塩素含有水出口
65 被殺菌物
71 原料水用警告装置
72 原料水用水圧自動開閉弁
73 逆止弁
74 高濃度残留有効塩素水溶液導入管
75 水道水調整弁
303 酸性添加剤滞留スペース
304 酸性添加剤導入管
305 希釈水射出管
306 酸性添加剤導入口
307 希釈水溶液射出口
308 希釈水溶液射出口を有する面
500、500a、500b 酸性添加剤点滴及び一時貯留器
510 点滴貯留用管
511 貯留空間
512 滴下管
513 排出管
514 ゴム栓
600 斜傾管
601 斜傾管用チューブ
602 上流側細管
603 下流側細管
604 液体導入口
605 液体排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
残留有効塩素濃度が、2000ppm〜10000ppmであり、pHが、10.5±1.5である高濃度残留有効塩素水溶液を、水で希釈することによって、残留有効塩素濃度が、10ppm〜150ppmである希釈水溶液を製造する工程と、
希釈水溶液の流水に、酸性添加剤を添加し、希釈水溶液のpHが6±2となるように調節する工程と
を含み、
酸性添加剤が、食酢並びに濃度0.1〜20重量%の塩酸、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−アルギニン―グルタミン酸、アルギン酸、L−イソロイシン、クエン酸および酢酸からなる群から選択される少なくとも一つを含む、殺菌用の残留有効塩素含有水の製造方法。
【請求項2】
酸性添加剤が、
濃度0.1〜20重量%のクエン酸、
食酢と、濃度0.1〜20重量%との酢酸の混合液、
食酢と、濃度0.1〜20重量%のクエン酸との混合液または
食酢と、濃度0.1〜20重量%の酢酸と、濃度0.1〜20重量%のクエン酸との混合液である、請求項1記載の残留有効塩素含有水の製造方法。
【請求項3】
酸性添加剤の添加が、加速された希釈水溶液の流水に対して行われる、請求項1または2記載の残留有効塩素含有水の製造方法。
【請求項4】
高濃度残留有効塩素水溶液が、次亜塩素酸水溶液、次亜塩素酸ナトリウム水溶液またはこれらの混合水溶液である、請求項1〜3のいずれか1項記載の残留有効塩素含有水の製造方法。
【請求項5】
高濃度残留有効塩素水溶液が、残留有効塩素濃度50000〜60000ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、次亜塩素酸水溶液100体積%に対して2〜10体積%の割合で添加し、混合し、およびpHが10.5±1.5となるようにpHの調節をした高濃度残留有効塩素水溶液であり、
次亜塩素酸水溶液が、アノード電極を有するアノード室と、アノード室とは隔膜で隔てられたカソード室とを有する電解装置を用いて、塩化物と、塩化物に対して10重量%以下の塩酸とを含む水溶液を、アノード室およびカソード室に導入して、アノード電極とカソード電極に電圧を印加することによりアノード室に生成された電解次亜塩素酸水溶液である、請求項1〜3のいずれか1項記載の残留有効塩素含有水の製造方法。
【請求項6】
希釈水溶液の流水に対する酸性添加剤の添加が、
酸性添加剤を点滴および貯留するための貯留空間を有する点滴貯留用管と、
点滴貯留用管の上端に配置され、一端が、貯留空間の内部に配置され、他端が、酸性添加剤導入量調節器に流体接続され、内径が、点滴貯留用管の内径より小さい滴下管と、
一端が、点滴貯留用管の下端に配置され、他端が、酸性添加剤導入管に流体接続され、内径が、点滴貯留用管の内径より小さい排出管と
を含む、少なくとも一つの酸性添加剤点滴及び一時貯留器を用いて行われ、
酸性添加剤導入量調節器を調節することにより、酸性添加剤点滴及び一時貯留器の滴下管から貯留空間へ滴下する量を調節することによって、酸性添加剤を添加する添加量を調節する、請求項1〜5のいずれか1項記載の残留有効塩素含有水の製造方法。
【請求項7】
希釈水溶液の流水に対する酸性添加剤の添加が、一端に、液体導入口を有し、他端に、酸性添加剤導入量調節器および酸性添加剤点滴及び一時貯留器に流体接続する液体排出口を有し、液体導入口が、液体排出口より高く位置するように取り付けられる斜傾管を、さらに用いて行われる、請求項6記載の残留有効塩素含有水の製造方法。
【請求項8】
酸性添加剤点滴及び一時貯留器が、直列に二つ連結した、請求項6または7記載の残留有効塩素含有水の製造方法。
【請求項9】
酸性添加剤点滴及び一時貯留器の排出管と、酸性添加剤添加部とを酸性添加物導入管を介して流体接続した経路を流れる酸性添加剤であって、酸性添加剤添加部内を緩やかな負圧にすることで静止流体にすることにより、酸性添加剤点滴及び一時貯留器の中での点滴による水滴重量によって、酸性添加剤点滴及び一時貯留器から酸性添加物導入管を経て酸性添加剤添加部へと導入される酸性添加剤を、加圧された流水状態の希釈水溶液に対して正確に添加を行うために、気密性のある酸性添加剤点滴及び一時貯留器内の点滴落下距離を1〜100cmに確保することにより、酸性添加物導入管内の圧力を制御し、酸性添加剤点滴及び一時貯留器内の酸性添加剤の点滴が行われているときには希釈水溶液に酸性添加剤が一滴ずつ正確に添加を行い、点滴が止まると希釈水溶液への酸性添加剤の添加が止まる、請求項6〜8のいずれか1項記載の残留有効塩素含有水の製造方法。
【請求項10】
酸性添加剤導入量調節器に流体接続される酸性添加剤貯留瓶が、酸性添加剤残量センサーおよび酸性添加剤残量センサーから情報をもとに警告を発する警告装置を有し、酸性添加剤貯留瓶の酸性添加剤の容積が酸性添加剤貯留瓶の容積の5分の1まで減量した場合に、警告装置から警告を発する、請求項6〜9のいずれか1項記載の残留有効塩素含有水の製造方法。
【請求項11】
水を導入するための水導入口と希釈部とを流体接続する配管に、水栓開閉弁を有し、
水栓開閉弁と希釈部とを流体接続する配管に、水圧を検出する水圧検出機構を有し、
酸性添加剤導入量調節器と、酸性添加剤導入量調節器に流体接続される酸性添加剤貯留瓶とを流体接続する配管に、水圧の変化に応じて自動的に開閉する水圧自動開閉弁を有し、
水圧検出機構が、水栓開閉弁を閉から開にしたときの水圧変化を検出した場合には水圧自動開閉弁が開くことで酸性添加剤の通過を可能にし、水栓開閉弁を開から閉にしたときの水圧変化を検出した場合には水圧自動開閉弁が閉じることで酸性添加剤の通過を不可能にする、請求項6〜10のいずれか1項記載の残留有効塩素含有水の製造方法。
【請求項12】
水を導入するための水導入口と、
水導入口の下流側に配置され、高濃度残留有効塩素水溶液導入口を有し、高濃度残留有効塩素水溶液導入口から導入される高濃度残留有効塩素水溶液を水で希釈して希釈水溶液を生成する希釈部と、
高濃度残留有効塩素水溶液導入口に流体接続される、高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器と、
希釈部の下流側に配置され、酸性添加剤を添加するための、酸性添加剤添加部と、
酸性添加剤添加部の下流側に配置され、希釈水溶液と酸性添加剤を混合して残留有効塩素含有水を得る酸性添加剤混合部と、
酸性添加剤導入管によって、酸性添加剤導入口に流体接続される酸性添加剤導入量調節器を含む酸性添加剤導入量調節部と、
を含む、殺菌用の残留有効塩素含有水の製造装置であって、酸性添加剤が、食酢並びに濃度0.1〜20重量%の塩酸、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−アルギニン―グルタミン酸、アルギン酸、L−イソロイシン、クエン酸および酢酸からなる群から選択される少なくとも一つを含む、残留有効塩素含有水の製造装置。
【請求項13】
希釈部と酸性添加剤添加部との間に、希釈水溶液の水流を整流するための水流安定機構をその内側に有する水流整流部がさらに配置され、
酸性添加剤添加部が、酸性添加剤添加部に希釈水溶液を射出するための希釈水溶液射出口を有する希釈水溶液射出管と、希釈水溶液射出管の外壁の少なくとも一部に接し、希釈水溶液射出口を有する面で画され、酸性添加剤導入口を有する酸性添加剤滞留スペースとを含む、請求項12記載の残留有効塩素含有水製造装置。
【請求項14】
希釈水溶液射出管が、その内側に水流を安定させるための水流安定機構を有する、請求項12または13記載の残留有効塩素含有水製造装置。
【請求項15】
酸性添加剤導入量調節部が、少なくとも一つの酸性添加剤点滴及び一時貯留器をさらに含み、
酸性添加剤点滴及び一時貯留器が、
酸性添加剤を貯留するための貯留空間を有する気密性の点滴貯留用管と、
点滴貯留用管の上端に配置され、一端が、貯留空間の内部に配置され、他端が、酸性添加剤導入量調節器に流体接続され、内径が、点滴貯留用管の内径より小さい滴下管と、
一端が、点滴貯留用管の下端に配置され、他端が、酸性添加剤導入管に流体接続され、内径が、点滴貯留用管の内径より小さい排出管と
を含む、請求項12〜14のいずれか1項記載の残留有効塩素含有水製造装置。
【請求項16】
酸性添加剤導入量調節部が、斜傾管をさらに含み、
斜傾管が、一端に、液体導入口を有し、他端に、酸性添加剤導入量調節器および酸性添加剤点滴及び一時貯留器に流体接続する液体排出口を有し、液体導入口が、液体排出口より高く位置するように取り付けられる、請求項15記載の残留有効塩素含有水製造装置。
【請求項17】
酸性添加剤導入量調節部が、直列に2つ連結した酸性添加剤点滴及び一時貯留器を含む、請求項15または16記載の残留有効塩素含有水製造装置。
【請求項18】
酸性添加剤点滴及び一時貯留器が、点滴数による酸性添加剤の添加量と混入の有無を使用者に知らしめるための、目視用の添加量計測器と添加警告装置である、請求項15〜17のいずれか1項記載の残留有効塩素含有水製造装置。
【請求項19】
酸性添加剤導入量調節部が、酸性添加剤導入量調節器に流体接続する酸性添加剤貯留瓶を含み、
酸性添加剤貯留瓶が、酸性添加剤残量センサーから情報をもとに警告を発する警告装置を有し、酸性添加剤貯留瓶の酸性添加剤の容積が酸性添加剤貯留瓶の容積の5分の1まで減量した場合に、警告装置から警告を発する機構をさらに有する、請求項12〜18のいずれか1項記載の残留有効塩素含有水製造装置。
【請求項20】
残留有効塩素含有水製造装置が、高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器に流体接続する高濃度残留有効塩素水溶液保管槽を含み、
高濃度残留有効塩素水溶液保管槽が、高濃度残留有効塩素水溶液残量センサーを有し、
残留有効塩素含有水製造装置が、高濃度残留有効塩素水溶液残量センサーからの情報をもとに警告を発する原料水用警告装置を有し、
原料水用警告装置が、高濃度残留有効塩素水溶液保管槽の高濃度残留有効塩素水溶液の容積が高濃度残留有効塩素水溶液保管槽の容積の5分の1まで減量した場合に、警告を発する機構を有する、請求項12〜19のいずれか1項記載の残留有効塩素含有水製造装置。
【請求項21】
水を導入するための水導入口と希釈部との間に、水栓開閉弁を有し、
水栓開閉弁と希釈部との間に、水圧を検出する水圧検出機構を有し、
酸性添加剤導入量調節器と酸性添加剤貯留瓶とを流体接続する配管に、水圧に応じて自動的に開閉する水圧自動開閉弁を有し、
水圧検出機構が、水栓開閉弁を閉から開にしたときの水圧変化を検出した場合には水圧自動開閉弁が開くことで酸性添加剤の通過を可能にし、水栓開閉弁を開から閉にしたときの水圧変化を検出した場合には水圧自動開閉弁が閉じることで酸性添加剤の通過を不可能にする機構をさらに有する、請求項12〜20のいずれか1項記載の残留有効塩素含有水製造装置。
【請求項22】
残留有効塩素含有水製造装置が、高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器に流体接続する高濃度残留有効塩素水溶液保管槽を含み、
水を導入するための水導入口と希釈部とを流体接続する配管に、水栓開閉弁を有し、
水栓開閉弁と希釈部との間に、水圧を検出する水圧検出機構を有し、
高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器と、高濃度残留有効塩素水溶液保管槽とを流体接続する配管に、水圧に応じて自動的に開閉する原料水用水圧自動開閉弁を有し、
水圧検出機構が、水栓開閉弁を閉から開にしたときの水圧変化を検出した場合には原料水用水圧自動開閉弁が開くことで高濃度残留有効塩素水溶液の通過を可能にし、水栓開閉弁を開から閉にしたときの水圧変化を検出した場合には原料水用水圧自動開閉弁が閉じることで高濃度残留有効塩素水溶液の通過を不可能にする機構をさらに有する、請求項12〜21のいずれか1項記載の残留有効塩素含有水製造装置。
【請求項23】
希釈部と高濃度残留有効塩素水溶液保管槽とを流体接続する配管に、高濃度残留有効塩素水溶液導入量調節器と、高濃度残留有効塩素水溶液導入管と、逆流防止弁とを有し、
高濃度残留有効塩素水溶液導入管が、空気層を有し、高濃度残留有効塩素水溶液に空気を混入させる機能を有する、請求項12〜22のいずれか1項記載の残留有効塩素含有水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−167375(P2010−167375A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12818(P2009−12818)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(507214108)株式会社新明和 (4)
【Fターム(参考)】