説明

殺菌装置および殺菌方法

【課題】循環式の殺菌装置にてオゾンガスの分解および対象物の乾燥を効率よく行う。
【解決手段】殺菌装置1は、対象物9を内部に保持するとともに内部においてオゾンガスを含む処理ガスにより対象物9が殺菌される殺菌室2、殺菌室2の排気口221から吸気口211へと至る循環流路31にて処理ガスを循環するファン32、および、循環流路31に設けられるオゾンガス分解ユニット5を備え、オゾンガス分解ユニット5は対象物9の殺菌後において、循環流路31を循環する処理ガスをヒータにて加熱して処理ガス中のオゾンガスを熱分解する第1オゾンガス分解部を備える。殺菌装置1では、対象物9の殺菌後にオゾンガスを分解する際に、ヒータにより処理ガスが加熱されてオゾンガスが熱分解されるとともに、加熱された処理ガスにより殺菌室2内の対象物9の乾燥が行われ、オゾンガスの分解および対象物9の乾燥を効率よく行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布団類またはマット類である対象物を殺菌する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、病院やホテル等において布団やマット等を乾燥する業務用の乾燥機が用いられている。例えば特許文献1の乾燥機では、被乾燥物を収容する乾燥槽にヒータ、オゾン発生器および排気ポンプが個別に接続され、排気ポンプにより乾燥槽内の気体が排気された後、ブロアから吸い込まれる空気がヒータを介して乾燥槽内へと供給されるとともに、オゾン発生器からオゾンエアが乾燥槽内に送り込まれる。そして、上記動作を繰り返すことにより、被乾燥物全体の殺菌および乾燥が行われる。なお、特許文献1の乾燥機では、排気ポンプにより排気される気体に含まれるオゾンガスを分解するオゾン分解ヒータが設けられており、オゾンガスが外部に排出されることが防止される。
【0003】
また、特許文献2の乾燥機では、布団や毛布等の対象物を収容する乾燥庫の回収口(排気口)から送風口(吸気口)へと至る循環流路であるダクトに除湿機が設けられ、オゾン発生器および温風発生器からダクト内に導入されるオゾンガスおよび温風を含む気体を、除湿しつつ循環させることにより、乾燥庫内の対象物の殺菌および乾燥が行われる。
【0004】
なお、非特許文献1では、相対湿度95%の大気中におけるオゾンの枯草菌に対する殺菌効果が、相対湿度50%の大気中よりも高くなることが開示されている。
【特許文献1】特開2002−85898号公報
【特許文献2】特開2000−176199号公報
【非特許文献1】岩城隆昌、外3名、“オゾン脱臭に伴う危険性について”、[online]、日本獣医師会、[平成19年12月6日検索]、インターネット<URL:http://nichiju.lin.go.jp/mag/06003/06_5.htm>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の乾燥機では、乾燥槽内の減圧と、乾燥槽内へのオゾンガスおよび加熱空気の供給とが繰り返されるため、対象物の乾燥に長時間を要してしまうとともに、ヒータ、オゾン発生器および排気ポンプを繰り返し駆動するため、対象物の処理に要するコストも増大してしまう。また、排気ポンプにより排気される気体はオゾン分解ヒータを一度通過するのみであるため、当該気体に含まれるオゾンガスが十分に分解されない可能性があり、この場合、乾燥機から排出される気体中のオゾンガスを分解する装置がさらに必要となる。
【0006】
また、特許文献2の循環式の乾燥機は、乾燥庫内を減圧する必要がないため、減圧機構を有する乾燥機に比べて安価に製造可能であり、対象物の乾燥に要する時間も比較的短くなるが、循環式の乾燥機においても、対象物の殺菌および乾燥後に乾燥庫内から対象物を取り出す際に、乾燥庫内の気体に含まれるオゾンガスを分解する装置は必要となる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、オゾンガスの分解および対象物の乾燥を効率よく行う新規な手法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、布団類またはマット類である対象物を殺菌する殺菌装置であって、対象物を内部に保持するとともに、前記内部において、オゾンガスを含む気体により前記対象物が殺菌される殺菌室と、前記殺菌室の排気口から吸気口へと至る循環流路にて前記気体を循環する循環部と、前記対象物の殺菌後において、前記循環流路を循環する前記気体を加熱部にて加熱して前記気体中の前記オゾンガスを熱分解するオゾンガス分解部とを備え、前記対象物の殺菌後に前記オゾンガスを分解する際に、前記気体が前記加熱部により100℃以上250℃以下の温度に加熱され、さらに、所定の温度に制御された前記気体が前記殺菌室内に導入されることにより前記対象物の乾燥が行われる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の殺菌装置であって、前記循環流路に設けられ、前記加熱部により加熱されつつ循環する前記気体中の前記オゾンガスを所定の触媒の作用により分解するもう1つのオゾンガス分解部をさらに備える。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の殺菌装置であって、前記循環流路において前記オゾンガス分解部および前記もう1つのオゾンガス分解部のうち前記排気口側に設けられるオゾンガス分解部と前記排気口との間にフィルタをさらに備える。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の殺菌装置であって、前記フィルタ、前記オゾンガス分解部および前記もう1つのオゾンガス分解部が1つのケーシング内に設けられる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の殺菌装置であって、前記対象物の殺菌時において、前記気体を加湿する加湿部をさらに備える。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の殺菌装置であって、前記循環流路が、前記オゾンガス分解部と前記排気口との間の位置から前記オゾンガス分解部と前記吸気口との間の位置に接続して、前記オゾンガスを分解する際に前記オゾンガス分解部へと進入する前記気体の量を制限する迂回流路を備える。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の殺菌装置であって、前記オゾンガスを分解する際に、前記循環流路に外部からの空気が導入されるとともに、前記循環流路における前記オゾンガス分解部と前記吸気口との間の位置から前記気体の一部が前記循環流路外に排出される。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の殺菌装置であって、前記殺菌室が、前記対象物の外縁部と当接することにより、前記吸気口から前記対象物を通過して前記排気口へと移動する前記気体の流路を形成するシール部材を備える。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の殺菌装置であって、前記循環流路の外部の空気、または、別途準備される酸素ガスからオゾンガスを発生して前記循環流路内に導入するオゾンガス発生部をさらに備える。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の殺菌装置であって、前記循環流路内において前記オゾンガス分解部の近傍に設けられるとともにオゾンガスの濃度を測定する濃度測定部をさらに備え、前記気体中の前記オゾンガスの分解後において、前記循環流路における前記オゾンガス分解部と前記吸気口との間の位置から前記気体を前記循環流路外に排出する際に、前記濃度測定部の測定値に基づいて、前記オゾンガス分解部のON/OFFが制御される。
【0018】
請求項11に記載の発明は、布団類またはマット類である対象物を殺菌装置にて殺菌する殺菌方法であって、前記殺菌装置が、排気口および吸気口を有するとともに対象物を内部に保持する殺菌室と、前記排気口から前記吸気口へと至る循環流路にて気体を循環する循環部とを備え、前記殺菌方法が、a)前記気体にオゾンガスを含ませることにより前記殺菌室内の前記対象物を殺菌する工程と、b)前記循環流路に設けられるオゾンガス分解部の加熱部にて前記循環流路を循環する前記気体を加熱して前記気体中の前記オゾンガスを熱分解する工程とを備え、前記b)工程において、前記気体が前記加熱部により100℃以上250℃以下の温度に加熱され、さらに、所定の温度に制御された前記気体が前記殺菌室内に導入されることにより前記対象物の乾燥が行われる。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の殺菌方法であって、c)前記b)工程に並行して、前記循環流路に設けられるもう1つのオゾンガス分解部において、前記加熱部により加熱された前記気体中の前記オゾンガスを所定の触媒の作用により分解する工程をさらに備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、循環式の殺菌装置において、オゾンガスによる対象物の殺菌後に、気体中のオゾンガスを熱分解しつつ、加熱される気体により対象物を乾燥することができ、オゾンガスの分解および対象物の乾燥を効率よく行うことができる。
【0021】
また、請求項2および12の発明では、オゾンガスの熱分解時に加熱される気体により、触媒の作用によるオゾンガスの分解を促進させることができ、これにより、オゾンガスの分解をさらに効率よく行うことができる。
【0022】
また、請求項3の発明では、循環流路を循環する気体に含まれる微小な異物(対象物からの微小な繊維等)を除去することにより、オゾンガス分解部にて当該異物により不具合が生じることを防止することができ、請求項4の発明では、殺菌装置の構成を簡素化することができる。
【0023】
また、請求項5の発明では、対象物を効率よく殺菌することができ、請求項6および7の発明では、オゾンガス分解時に殺菌室内に導入される気体の温度の過度の上昇を防止することができる。
【0024】
また、請求項8の発明では、対象物を効率よく殺菌および乾燥することができ、請求項9の発明では、オゾンガスの濃度を容易に調整することができ、請求項10の発明では、オゾンガスの分解後における気体の排出工程にて、仮にオゾンガスが検出された場合でも、オゾンガス分解部を作動してオゾンガスを確実に分解して排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は本発明の一の実施の形態に係る殺菌装置1の構成を示す図である。殺菌装置1は、例えば病院やホテル等の宿泊施設において、布団類またはマット類である対象物を殺菌するためのものであり、対象物の典型的な形状は矩形のマット状とされる。
【0026】
図1の殺菌装置1は、対象物9を内部に保持する殺菌室2、殺菌室2の排気口221から吸気口211へと至る循環流路31(図1中にて太線にて示す。)、循環流路31に設けられるとともにオゾンガスおよび空気を混合した気体を循環流路31内に導入する混合部41、循環流路31内の気体(後述するように、殺菌等の処理に用いられるオゾンガスを含むガスであるため、以下、循環流路31内の当該ガスを「処理ガス」という。)を循環する循環部であるファン32、後述するオゾンガス分解処理において循環流路31内の処理ガスに含まれるオゾンガスを酸素に分解するオゾンガス分解ユニット5、並びに、殺菌装置1の全体制御を担う全体制御部6を備える。図1では、全体制御部6を除く構成要素を破線の矩形にて囲むことにより、これらの構成要素が全体制御部6による制御の対象であることを示している。
【0027】
混合部41には、後述する対象物9の殺菌時において酸素供給部421から供給される酸素ガスから放電によりオゾンガスを発生するオゾンガス発生部42、および、対象物9の殺菌時において加湿した空気を混合部41へと導入する空気導入部43が接続され、混合部41にてオゾンガスおよび加湿した空気が混合されて循環流路31内に導入される。換言すれば、オゾンガス発生部42により混合部41を介してオゾンガスが循環流路31内に導入されるとともに、加湿部である空気導入部43により循環流路31内の気体が加湿される。なお、本実施の形態における殺菌装置1では、酸素ボンベを有する酸素供給部421およびオゾンガス発生部42によりオゾンガス発生ユニットが構成されているが、殺菌装置1が病院等に設置される場合には、院内の酸素供給ラインからオゾンガス発生部42に酸素が供給されてもよい。すなわち、オゾンガス発生部42では、別途準備される酸素ガス(すなわち、空気中の酸素とは別の高濃度の酸素ガス)からオゾンガスが生成される。なお、空気導入部43は、空気を導入しないで加湿だけを行うことが可能である。
【0028】
図2は、殺菌室2の構成を示す斜視図である。図2に示すように、殺菌室2は、前面が開口する箱形のチャンバ本体20、および、チャンバ本体の開口を閉塞する扉部201を備える。チャンバ本体20内には対象物9を支持する支持部202が設けられており、矩形の板状の支持部202は、チャンバ本体20の底面側の一辺を支点としてほぼ水平方向に倒れた状態からほぼ鉛直方向に直立した状態に回動可能とされる。支持部202の支点とは反対側にはワイヤ203の一端が取り付けられており、ワイヤ203の他端は、チャンバ本体20の側面に設けられた孔部を介してチャンバ本体20外に設けられる。実際には、操作者がワイヤ203の他端を引っ張ることにより、支持部202を容易に直立させることができる。なお、この動作は電動などで自動化することが可能である。
【0029】
図3は、支持部202が直立した状態における殺菌室2の横断面図である。図2および図3に示すように、支持部202の中央部には多数の貫通孔が形成された板状部材であるパンチングプレート24(図2では、破線にてパンチングプレート24の外形を示している。)が取り付けられており、支持部202の外縁部には、パンチングプレート24の外縁と重なる環状のシール部材25が設けられる。シール部材25の内部は発泡ゴム等の弾性部材にて形成され、表面全体はテフロン(登録商標)等のフッ素系樹脂(耐酸化性を有する他の種類の樹脂であってもよい。)にて被覆される。なお、図3ではパンチングプレート24、並びに、後述の邪魔板212および拡流板213の平行斜線の図示を省略している。
【0030】
チャンバ本体20において、支持部202が直立した状態にて対象物9の外縁部の周囲を囲む面(すなわち、両側面、上面および下面)には、対象物9側に突出する環状突起部204が形成されており、環状突起部204は、全周において、直立した支持部202とシール部材25を介して当接する。これにより、環状突起部204と支持部202との間が密閉状態となる。
【0031】
図2および図3に示すように、支持部202には、シール部材25との間にて対象物9を挟持する複数の固定部26が設けられる(図2では固定部26を簡略化して図示している。)。図3に示す固定部26では、対象物9に当接する当接部263を有する先端部261が軸部262により回動可能に支持され、当接部263は図3中の上下方向(対象物9に対して進退する方向)に移動可能とされる。これにより、支持部202では、厚いマット類のみならず、比較的薄く柔らかい布団類も挟持可能となっている。実際には、シール部材25はパンチングプレート24以外の部位に対してのみ固定されており、例えば対象物9がマット類とされる場合には、図4.Aに示すように、シール部材25を延ばした状態で対象物9が載置され、対象物9が布団類とされる場合には、図4.Bに示すように、シール部材25を折り曲げた状態で対象物9が載置される。
【0032】
図2に示すチャンバ本体20の一の側面には、鉛直方向(図2中の縦方向)に長い吸気口211が形成されており、吸気口211から導入される処理ガスは、図3に示すように、吸気口211に対向して設けられる邪魔板212、および、邪魔板212の吸気口211とは反対側に設けられる複数の拡流板213(図2中にて邪魔板212および拡流板213の図示を省略しているが、これらの部材は図2中の縦方向に関して、吸気口211とほぼ同じ長さとされる。)により対象物9の主面のほぼ全体に均一に広がって(拡散して)対象物9へと導かれる。チャンバ本体20の側面には、吸気口211と同形状の排気口221が吸気口211に並んで形成されており、対象物9を通過した処理ガスは、排気口221から排気される。既述のように、対象物9の外縁部および環状突起部204と当接するシール部材25にて対象物9よりも外側が閉塞されることにより、殺菌室2内では、吸気口211から排気口221へと移動する処理ガスの流路が対象物9を通過するものに制限されることとなる。
【0033】
対象物9を殺菌室2内に収容する際には、倒れた状態の支持部202上に対象物9が載置されて固定部26にて固定され、支持部202を直立させた後、扉部201が閉じられて殺菌室2の内部が、吸気口211および排気口221以外の部位において密閉状態とされる。実際には、扉部201はシール27を介してチャンバ本体20と当接する。
【0034】
図5は、オゾンガス分解ユニット5の構成を示す図である。オゾンガス分解ユニット5は、図5中の上側から下側に向かって順に、フィルタ(パーティクルフィルタ)53、加熱部であるヒータ511を有する第1オゾンガス分解部51、および、白金や白金ロジウム等の所定の触媒を表面に担持する格子状部材である第2オゾンガス分解部52を備え、フィルタ53、第1オゾンガス分解部51および第2オゾンガス分解部52は、例えば金属にて形成される1つのケーシング50(図5中にて太線にて示す。)内に設けられる。第1オゾンガス分解部51は、熱電対等を用いて内部の温度を測定する温度計512をさらに有し、温度計512による測定値はヒータ511を制御するヒータ制御部513に入力される。
【0035】
後述するオゾンガス分解処理では、循環流路31を循環する処理ガスを第1オゾンガス分解部51のヒータ511にて加熱することにより処理ガス中のオゾンガスが熱分解されるとともに、第2オゾンガス分解部52においてヒータ511により加熱された処理ガス中のオゾンガスが触媒の作用により分解される。なお、ヒータ511がONとされておらず、処理ガスが加熱されていない(すなわち、処理ガスの温度が低い)状態では、第2オゾンガス分解部52において、処理ガス中のオゾンガスはほとんど分解されない。
【0036】
循環流路31において、第2オゾンガス分解部52近傍にはオゾンガスの濃度を測定する濃度測定部33が設けられる。また、循環流路31における濃度測定部33の下流側(すなわち、オゾンガス分解ユニット5とは反対側)は分岐しており、一方の流路は混合部41へと接続する循環流路31の一部となっており、他方の流路は外部(例えば、殺菌装置1が設置される建物の外部)に連絡する排出路311(図1および後述の図7では、符号311を付す矢印にて示している。)となっている。図5に示すように、これらの流路にはバルブ312,313がそれぞれ設けられており、バルブ313を閉じるとともにバルブ312を開放することにより、オゾンガス分解ユニット5から排出される処理ガスが混合部41へと導かれ、バルブ312を閉じるとともにバルブ313を開放することにより、オゾンガス分解ユニット5から排出される処理ガスが排出路311を介して循環流路31の外部へと導かれる。なお、濃度測定部33は、循環流路31内においてオゾンガス分解ユニット5の近傍かつ排出路311の分岐点よりも上流側(混合部41とは反対側)に設けられておればよく、例えばオゾンガス分解ユニット5の上流側近傍に設けられてもよい。
【0037】
次に、殺菌装置1にて対象物9を殺菌する処理の流れについて図6に沿って説明する。殺菌処理では、まず、図2に示すように、倒れた状態の支持部202上に対象物9が載置されて固定部26にて固定され、支持部202を直立させた後、扉部201が閉じられて対象物9が殺菌室2内に収容される(ステップS11)。続いて、図1の全体制御部6がオゾンガス発生部42および空気導入部43を駆動させることにより、オゾンガスおよび高湿度の空気が混合部41に供給され、これらが混合された気体が循環流路31内に導入される。実際には、図5の濃度測定部33にて測定される処理ガス中のオゾンガスの濃度が所定値(例えば1000〜2000ppm(parts per million))となり、処理ガスの相対湿度(循環流路31においてファン32と殺菌室2の吸気口211との間に設けられる図示省略の温湿度計の測定値)が80%以上となるように、混合部41において混合比を調整しつつオゾンガスおよび高湿度の空気の循環流路31内への導入が行われる。なお、このとき、空気を導入せず加湿のみを行ってもよい。
【0038】
このとき、オゾンガスおよび高湿度の空気の循環流路31内への導入開始後、暫くの間(遅くとも濃度測定部33にてオゾンガスが検出されるまでの間)、必要に応じてバルブ313が開放され、循環流路31内の処理ガスが過度に高圧となることが防止されてもよい。また、循環流路31および殺菌室2内に予め存在する空気の(相対)湿度によっては、最初に、排出路311内のバルブ313を開放しつつ混合部41から高湿度の空気のみを循環流路31内に導入して、循環流路31および殺菌室2内の気体の湿度を上昇させた後に、バルブ313を閉じてオゾンガスが混合部41から循環流路31内に導入されてもよい。
【0039】
所定のオゾンガス濃度および湿度の処理ガスは、バルブ313を閉じるとともにバルブ312を開放した状態にて、ファン32により循環流路31を介して殺菌室2、オゾンガス分解ユニット5、混合部41の順にて循環する。このとき、図3の殺菌室2において、吸気口211から内部に導入される処理ガスは、邪魔板212および拡流板213により対象物9の主面のほぼ全体に広がって対象物9へと導かれるとともに、対象物9を通過して(浸透して)排気口221へと移動する。これにより、殺菌室2の内部において、オゾンガスを含む処理ガスにより対象物9の全体が効率よく殺菌される(ステップS12)。実際には、吸気口211から排気口221へと移動する処理ガスにより、対象物9がパンチングプレート24およびシール部材25に押し付けられ、対象物9とシール部材25との間がより強固にシールされる。
【0040】
オゾンガスを含む処理ガスの循環流路31内での循環が所定の時間(例えば、2.5分以上10分以内の時間)だけ継続されると、図5の第1オゾンガス分解部51のヒータ511によりオゾンガス分解ユニット5を通過する処理ガスが加熱され、処理ガス中のオゾンガスの熱分解が行われる(ステップS13)。このとき、処理ガスが100℃以上250℃以下の温度(より好ましくは150℃以上であり、例えば200℃)となるように加熱される。また、第2オゾンガス分解部52では、ヒータ511により加熱された処理ガス中のオゾンガスが触媒の作用により分解される(ステップS14)。その結果、オゾンガス分解ユニット5では、オゾンガスが効率よく(短時間にて)分解される。また、既述のように、処理ガスは循環流路31内にて循環するため、オゾンガス分解ユニット5を繰り返し通過して、処理ガス内のオゾンガスが確実に分解される。
【0041】
ヒータ511により加熱された処理ガスは循環流路31を介して殺菌室2へと導入され、対象物9の主面のほぼ全体に広がって対象物9へと導かれる。これにより、殺菌室2の内部において、加熱された処理ガスにより対象物9の全体が乾燥する。
【0042】
実際には、殺菌装置1では、オゾンガスを分解する際に、空気導入部43により外部からの少量の空気(加湿されていない空気)が循環流路31内に導入されるとともに、バルブ313を僅かに開放することにより処理ガスの一部が排出路311から循環流路31外に排出される。これにより、例えば対象物9を通過する処理ガスの温度が60℃以上80℃以下に制御され、対象物9を損傷する(例えば、対象物9にて変質や焦げが発生する)ことなく、対象物9を乾燥することが可能となる。なお、排出路311から排出される処理ガス中のオゾンガスはオゾンガス分解ユニット5にてほとんど分解されており、かつ、その流量は僅かであるため、実際に外部へと排出される気体におけるオゾンガスの濃度は人体に影響がない程度まで確実に低下している。安全のため、通常は、外部へ排出される気体は、念のため排気処理装置(スクラバ)等で処理される。
【0043】
濃度測定部33においてオゾンガスが分解された(すなわち、オゾンガスの濃度が所定値以下となった)ことが確認されると、ヒータ511による処理ガスの加熱が停止される。そして、バルブ312が閉じられるとともにバルブ313が開放された後、空気導入部43から外部の空気(加湿していない空気)を混合部41を介して循環流路31内に導入することにより、循環流路31内の処理ガス(オゾンガスが分解された処理ガス)が循環流路31内を循環することなく(いわゆる、ワンパスにて)、排出路311を介して循環流路31の外部へと排出され(ステップS15)、循環流路31内の気体が混合部41からの空気に短時間にて置換される。すなわち、対象物9の乾燥後、短時間にて対象物9を殺菌室2から取り出し可能な状態にすることができる。
【0044】
濃度測定部33では、循環流路31から処理ガスを排出する際にもオゾンガスの濃度が測定されており、万一、所定値以上のオゾンガス濃度が検出された場合、第1オゾンガス分解部51のヒータ511により処理ガスを加熱してオゾンガスを分解しつつ、処理ガスが排出路311から排出される。
【0045】
その後、殺菌室2の扉部201を開放して、実際に対象物9が殺菌室2から取り出される(ステップS16)。殺菌装置1では、必要に応じて、次の対象物9に対して上記ステップS11〜S16が繰り返される。
【0046】
以上に説明したように、殺菌装置1では、オゾンガスを含む処理ガスを加湿することにより対象物が効率よく殺菌され、対象物9の殺菌後にオゾンガスを分解する際に、ヒータ511により処理ガスが加熱されてオゾンガスが熱分解されるとともに、加熱された処理ガスにより殺菌室2内の対象物9の乾燥が行われる。このように、循環式の殺菌装置1では、対象物9の乾燥用の加熱部を別途設けることなく、第1オゾンガス分解部51のヒータ511のみにて、オゾンガスの分解および対象物9の乾燥を効率よく行うことができ、殺菌装置1の製造コスト、および、対象物の処理に要するコスト(ランニングコスト)を削減することができる。
【0047】
また、第1オゾンガス分解部51にて加熱されつつ循環する処理ガスにより、第2オゾンガス分解部52において触媒の作用によるオゾンガスの分解が促進され、これにより、ヒータ511における処理ガスの加熱温度を比較的低くしつつ(すなわち、必要最小限の加熱温度としつつ)、オゾンガスの分解をさらに効率よく行うことができる。したがって、殺菌装置1では、熱分解のみによりオゾンガスを分解する場合に比べて、ヒータ511による処理ガスの加熱温度を低くしつつ(例えば、熱分解のみの場合に処理ガスの加熱温度が300℃とされるのに対して、殺菌装置1では100℃以上低くしつつ)、同等のオゾンガスの分解効率を実現することができる。
【0048】
さらに、オゾンガスを分解する際に、循環流路31に外部からの空気が導入されるとともに、オゾンガス分解ユニット5を通過した処理ガスの一部が排出路311から循環流路31外に排出されることにより、オゾンガス分解時に殺菌室2内に導入される処理ガスの温度の過度の上昇を防止することができる。また、図6のステップS15の処理ガスの排出工程において、濃度測定部33の測定値に基づいて、第1オゾンガス分解部51のON/OFFが制御されることにより、仮にオゾンガスが検出された場合でも、第1オゾンガス分解部を作動してオゾンガスを確実に分解して排出することができる。
【0049】
ところで、上述の特許文献2の乾燥機では、対象物が乾燥庫内のスタンドに掛けられた状態で対象物の殺菌および乾燥が行われるため、対象物(特に、厚いマット等)の内部を十分に殺菌および乾燥することができない、または、殺菌および乾燥に長時間(例えば数時間)を要してしまう。また、特許文献1の乾燥機では、乾燥槽内の減圧後に、乾燥槽内へのオゾンガスの供給が行われることにより、対象物の内部にオゾンガスをある程度浸透させることが可能となるが、対象物の乾燥に長時間を要してしまう。
【0050】
これに対し、殺菌装置1では、殺菌室2内において、吸気口211から排気口221へと移動する処理ガスの流路が、シール部材25により対象物9を通過するものに制限されることにより、特許文献1および2の乾燥機に比べて、対象物9の内部を効率よく殺菌および乾燥することができる。また、循環式の殺菌装置1では、殺菌室2内の気体の圧力がほぼ大気圧の状態で対象物9に対する処理が行われるため、特許文献1の乾燥機のように対象物が収容される空間を減圧する場合に比べて耐減圧構造が不要で、装置全体や殺菌室の小型化、軽量化を図ることができる。
【0051】
図7は殺菌装置の他の例の一部を示す図である。図7の殺菌装置1aは、循環流路31においてオゾンガス分解ユニット5と殺菌室2との間の位置からオゾンガス分解ユニット5と混合部41との間の位置に接続する迂回流路314が追加される点で図1の殺菌装置1と相違している。他の構成は図1の殺菌装置1と同様であり、同符号を付している。
【0052】
図7の殺菌装置1aでは、迂回流路314によりオゾンガス分解ユニット5の第1オゾンガス分解部51(図5参照)へと進入する処理ガスの量が制限されことにより、オゾンガスを分解する際に、第1オゾンガス分解部51を通過した比較的高温の処理ガスと、迂回流路314を通過した比較的低温の処理ガスとが混合されて殺菌室2内へと導かれる。これにより、殺菌装置1aでは、オゾンガス分解時に殺菌室2内に導入される処理ガスの温度の過度の上昇を防止することができ、対象物9の乾燥時に対象物9が損傷することを確実に防止することができる。もちろん、図7の殺菌装置1aにおいて、オゾンガスを分解する際に、空気導入部43により外部からの空気を循環流路31に導入しつつ、処理ガスの一部を排出路311から循環流路31外に排出して、オゾンガス分解時に殺菌室2内に導入される処理ガスの温度をさらに低下させることも可能である。
【0053】
図8は、殺菌室2aの他の例を示す図である。なお、図8では、矩形のマット状の対象物9の主面(すなわち、薄い直方体状の対象物の最大面積の面)に垂直な中心軸を含む面における殺菌室2aの断面を示している。
【0054】
図8に示すように、殺菌室2aは、矩形のマット状の対象物9における外縁部の周囲を囲む枠状部23、並びに、枠状部23の両側の開口部(すなわち、対象物9の両主面にそれぞれ対向する開口部)を覆う略椀状の第1および第2閉塞部21,22を備える。枠状部23の第2閉塞部22側の開口部(図8中の左側の開口部)には、パンチングプレート24(図8中にて平行斜線の図示を省略している。)が取り付けられており、枠状部23に沿うパンチングプレート24の外縁部の全体には、矩形の環状のシール部材25が設けられる。図2の殺菌室2と同様に、シール部材25の内部は発泡ゴム等の弾性部材にて形成され、表面全体はテフロン(登録商標)等のフッ素系樹脂(耐酸化性を有する他の種類の樹脂であってもよい。)にて被覆される。また、枠状部23の内周面には、シール部材25との間にて対象物9を挟持する固定部26が設けられる。固定部26では、厚いマット類のみならず、比較的薄く柔らかい布団類も挟持可能となっている。
【0055】
なお、図8の殺菌室2aでは、固定部26は対象物9の外縁部のおよそ全体に亘って対象物9を挟持するものとされるが、矩形の対象物9の四隅のみを固定するものであってもよい。また、殺菌室2aでは、シール部材25および固定部26の一部品が交換可能とされており、処理対象の対象物の大きさや厚さ等に応じてシール部材25および固定部26の部品が交換される。
【0056】
第1閉塞部21の中央近傍には吸気口211が形成されており、吸気口211から導入される処理ガスは、吸気口211と対象物9との間に設けられる邪魔板212、および、邪魔板212の周囲に設けられる拡流板213により対象物9の主面のほぼ全体に均一に広がって(拡散して)対象物9へと導かれる。また、第2閉塞部22は、対象物9の主面に平行な面に関して第1閉塞部21と面対称の形状となっており、対象物9を通過した処理ガスは、第1閉塞部21の拡流板213および邪魔板212にそれぞれ対応する縮流板223および邪魔板222を介して、第2閉塞部22の中央近傍に設けられる排気口221へと導かれて排気される。既述のように、対象物9の外縁部と当接するシール部材25により対象物9よりも外側(枠状部23側)が閉塞されることにより、殺菌室2a内では、吸気口211から排気口221へと移動する処理ガスの流路が対象物9を通過するものに制限されることとなる。このとき、吸気口211から排気口221へと移動する処理ガスにより、図8中にて二点鎖線にて示すように対象物9がパンチングプレート24およびシール部材25に押し付けられ、対象物9とシール部材25との間がより強固にシールされる。なお、第2閉塞部22、邪魔板222、縮流板223を省略して、殺菌室2aの第1閉塞部21とは反対側に循環流路31に接続する流路のみが設けられてもよく、この場合、当該流路が排気口と捉えられる。
【0057】
第1閉塞部21は、図8中に符号A1を付す矢印にて示すように、枠状部23の一の直線部を支点として開閉可能とされ、対象物9を殺菌室2a内に収容する際には、第1閉塞部21を開放した状態で、対象物9が殺菌室2a内に運ばれて固定部26にて固定され、その後、第1閉塞部21が閉じられて殺菌室2aの内部が、吸気口211および排気口221以外の部位において密閉状態とされる。実際には、第1閉塞部21および第2閉塞部22のそれぞれと枠状部23とは、シール27(例えば、Oリング)を介して当接している(図8では、第2閉塞部22と枠状部23との間に設けられるシールの図示を省略している。)。
【0058】
以上のように、図8の殺菌室2aでは、吸気口211から排気口221へと移動する処理ガスの流路が、シール部材25により対象物9を通過するものに制限されることにより、対象物9の内部を効率よく殺菌および乾燥することができる。
【0059】
次に、本実施の形態に係る殺菌装置1,1aと、対象物が乾燥庫内のスタンドに掛けられ、乾燥庫の排気口から吸気口へと至る循環用の流路にてオゾンガスおよび温風を含む気体を循環させることにより、乾燥庫内の対象物の殺菌および乾燥を行う比較例の循環式の殺菌装置(例えば、特許文献2の乾燥機)との比較について述べる。殺菌装置1,1aでは、殺菌室2,2aの特徴的な内部構造(オゾンガスの拡散や、シール部材25を用いた処理ガスの流路の制限)に付随する小型化により、殺菌室2,2aおよび循環流路31の容積を、比較例の殺菌装置における対応する容積と比較してコンパクトにすることができる。すなわち、殺菌室2,2aでは、対象物(マット等)に対して充分に広い空間が形成されて当該空間に処理ガスが充填されるのではなく、対象物の内部を通過する処理ガスの流路のみが形成されるため、小型化を図ることができる。よって、使用するオゾンガス量を、比較例の殺菌装置に対して削減することができる。また、処理ガスの加湿や、殺菌室2,2aの特徴的な内部構造により、比較例の殺菌装置に比べて、オゾンガスの暴露時間を大幅に短縮(2.5分以上10分以内)してほぼ同等の殺菌効率を実現することができる。これは、従来は、外部より対象物内へのオゾンガスの拡散によって殺菌しており、充分な時間を取らなければならないが、本実施の形態では、強制的に通過させればよいので、例えば、5000〜10000CT(ここで、CT値は、ガス濃度(ppm)と時間(分)の積である。)を得るのに、1000〜2000ppmのガスを2.5〜10分間通せば達成できるからである。
【0060】
さらに、既述のように、殺菌装置1,1aでは、オゾンガスの生成時に高濃度の酸素ガス(例えば濃度約99.9%)が用いられるため、比較例の殺菌装置にて空気中の酸素(濃度約21%)からオゾンガスを生成する場合に比べて、ほぼ5倍の効率でオゾンガスを生成することができる。したがって、オゾンガスの生成に要するエネルギーの消費量あるいは時間も5分の1にすることができ、使用するオゾンガス量の削減も考慮すれば、比較例の殺菌装置に比べてオゾンガスの生成に係るエネルギーの消費量および時間を大幅に低減または短縮することができる。このように、殺菌装置1,1aでは、比較例の殺菌装置に比べて極めて効率よく対象物9の殺菌に係る処理を行うことができる。
【0061】
また、オゾンガスを熱分解する際には、一般的にはオゾンガスを含む気体が300℃以上に加熱されるが、仮に、上記比較例の循環式の殺菌装置において、循環用の流路にオゾンガスの熱分解用のヒータが設けられるとともに、ヒータの上流側から下流側に接続する迂回流路が形成された他の比較例の殺菌装置を想定した場合に、ヒータにて処理ガスを300℃に加熱しつつ、殺菌室内に導入される処理ガスの温度を約100℃にするときには、迂回流路を通過する処理ガス(すなわち、オゾンガスの熱分解が行われない処理ガス)の流量をヒータを通過する処理ガスの流量の2倍以上にしなければならず、オゾンガスの熱分解に長時間を要してしまう。実際には、循環用の流路内の処理ガスの温度は次第に高くなるため、外部の大量の空気を循環用の流路内へと導入する必要が生じ、これらの空気を加熱するエネルギーも必要となる。
【0062】
これに対し、本実施の形態に係る図7の殺菌装置1aでは、第2オゾンガス分解部52にて触媒の作用によるオゾンガスの分解も行われるため、処理ガスを200℃程度に加熱する場合でも、上記他の比較例の殺菌装置にて処理ガスを300℃に加熱する場合とほぼ同等のオゾンガスの分解効率を実現することが可能となる。なお、触媒によるこのような効果は一般的に知られている。この場合、処理ガスの加熱に要するエネルギーを、当該比較例の殺菌装置にて処理ガスを300℃に加熱する場合に比べて33%低減する(2/3倍にする)ことができる。また、処理ガスを200℃に加熱しつつ、殺菌室2,2a内に導入される処理ガスの温度を約100℃にする際には、迂回流路314を通過する処理ガスの流量をオゾンガス分解ユニット5を通過する処理ガスの流量のおよそ1倍とすればよく、オゾンガスの熱分解に要する時間も、処理ガスを300℃に加熱する場合に比べて33%短くする(2/3倍にする)ことができる。また、既述のように、殺菌装置1aでは、使用するオゾンガス量が低減される。よって、殺菌装置1aでは、比較例の殺菌装置に比べてエネルギーの消費量を大幅に削減することが可能となる。実際には、循環流路31内の処理ガスの温度の上昇を防止するために循環流路31内へと導入される外部の空気の量も少なくされ、当該空気を加熱するエネルギーも削減される。また、オゾンガス分解ユニット5にてフィルタ53が設けられることにより、ヒータ511における対象物9からの繊維の燃焼による不要ガスの発生とオゾンガス分解効率の低下等も抑制される。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0064】
上記実施の形態では、オゾンガスを分解しつつ対象物9を乾燥する際に、殺菌室2,2a内に導入される処理ガスの温度が、例えば60℃以上80℃以下に制御されるが、対象物の材質によっては、殺菌室2,2a内に導入される処理ガスの温度は80℃よりも高い所定の温度範囲内に制御(調整)されてもよい。また、特殊な材質の対象物では、250℃近傍の温度の処理ガスが殺菌室2,2a内に導入される場合でも損傷が生じないため、このような場合には、オゾンガス分解時に殺菌室2,2a内に導入される処理ガスの温度を強制的に低下させる必要はない。以上のように、殺菌装置1,1aにおける対象物の乾燥は、オゾンガスを熱分解するためにヒータ511により処理ガスが100℃以上250℃以下の温度に加熱され、さらに、所定の温度に制御された処理ガスを殺菌室2,2a内に導入することにより行われる。なお、加熱された処理ガスの温度の制御は、循環流路31内への外部の空気の導入や、迂回流路314の形成以外に、処理ガスを直接的に冷却する冷却部が設けられることにより行われてもよい。
【0065】
また、殺菌装置1,1aでは、フィルタ53、第1オゾンガス分解部51および第2オゾンガス分解部52がオゾンガス分解ユニット5として1つのケーシング50内に設けられることにより、殺菌装置の構成を簡素化することが実現されるが、殺菌装置の設計によっては、フィルタ53、第1オゾンガス分解部51および第2オゾンガス分解部52が循環流路31に個別に設けられてもよく、第1オゾンガス分解部および第2オゾンガス分解部のいずれが上流側(殺菌室2,2a側)に設けられてもよい。
【0066】
この場合に、オゾンガスの分解を安定して行うという観点では、循環流路31において第1オゾンガス分解部および第2オゾンガス分解部のうち殺菌室2,2aの排気口221側に設けられるオゾンガス分解部と排気口221との間にフィルタが設けられ、循環流路31を循環する処理ガスに含まれる対象物9からの微小な異物(対象物9からの微小な繊維等)を当該フィルタにて除去することにより、第1および第2オゾンガス分解部51,52にて当該異物により不具合(触媒の汚れ等)が生じることを防止することが重要となる。また、図6のステップS15の処理ガスの排出工程において所定値以上のオゾンガス濃度が検出された場合、または、ステップS13のオゾンガスの加熱(熱分解)工程において循環流路31内への空気の導入に伴って処理ガスの一部を排出する場合のそれぞれにおいて、オゾンガスが分解された処理ガスを外部に排出するという観点では、循環流路31における第1オゾンガス分解部51と吸気口211との間の位置に処理ガスを循環流路31外に排出する排出路311が設けられることが好ましい。
【0067】
さらに、図7の殺菌装置1aにてフィルタ53、第1オゾンガス分解部51および第2オゾンガス分解部52が循環流路31に個別に設けられる場合には、循環流路31における第1オゾンガス分解部51と排気口221との間の位置から第1オゾンガス分解部51と吸気口211との間の位置に接続する迂回流路が設けられることにより、オゾンガスの分解時に殺菌室2,2a内に導入される処理ガスの温度の過度の上昇を防止することが実現される。
【0068】
オゾンガス発生部42では、必ずしも酸素ガス(酸素のみを含む気体)からオゾンガスを発生する必要はなく、例えば、周囲の空気を吸気するためのファンをオゾンガス発生部42に設けて循環流路31の外部の空気からオゾンガスが生成されてもよい。この場合でも、循環流路31内を循環する処理ガスからオゾンガスを生成する場合に比べて、元のガスが循環流路31とは別系統にて供給されるオゾンガス発生部42では、高濃度のオゾンガスを容易にかつ効率よく生成することができ、循環流路31内を循環するオゾンガスの濃度を容易に調整することが可能となる。また、殺菌装置1,1aでは、空気導入部43が省略され、加湿機能を有する混合部が設けられてもよい。この場合、混合部にて外部の空気の吸気が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】殺菌装置の構成を示す図である。
【図2】殺菌室の構成を示す斜視図である。
【図3】殺菌室の横断面図である。
【図4.A】支持部上の対象物を示す図である。
【図4.B】支持部上の対象物を示す図である。
【図5】オゾンガス分解ユニットの構成を示す図である。
【図6】対象物を殺菌する処理の流れを示す図である。
【図7】殺菌装置の他の例の一部を示す図である。
【図8】殺菌室の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1,1a 殺菌装置
2,2a 殺菌室
9 対象物
25 シール部材
31 循環流路
32 ファン
33 濃度測定部
42 オゾンガス発生部
43 空気導入部
50 ケーシング
51,52 オゾンガス分解部
53 フィルタ
211 吸気口
221 排気口
314 迂回流路
511 ヒータ
S12〜S14 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布団類またはマット類である対象物を殺菌する殺菌装置であって、
対象物を内部に保持するとともに、前記内部において、オゾンガスを含む気体により前記対象物が殺菌される殺菌室と、
前記殺菌室の排気口から吸気口へと至る循環流路にて前記気体を循環する循環部と、
前記対象物の殺菌後において、前記循環流路を循環する前記気体を加熱部にて加熱して前記気体中の前記オゾンガスを熱分解するオゾンガス分解部と、
を備え、
前記対象物の殺菌後に前記オゾンガスを分解する際に、前記気体が前記加熱部により100℃以上250℃以下の温度に加熱され、さらに、所定の温度に制御された前記気体が前記殺菌室内に導入されることにより前記対象物の乾燥が行われることを特徴とする殺菌装置。
【請求項2】
請求項1に記載の殺菌装置であって、
前記循環流路に設けられ、前記加熱部により加熱されつつ循環する前記気体中の前記オゾンガスを所定の触媒の作用により分解するもう1つのオゾンガス分解部をさらに備えることを特徴とする殺菌装置。
【請求項3】
請求項2に記載の殺菌装置であって、
前記循環流路において前記オゾンガス分解部および前記もう1つのオゾンガス分解部のうち前記排気口側に設けられるオゾンガス分解部と前記排気口との間にフィルタをさらに備えることを特徴とする殺菌装置。
【請求項4】
請求項3に記載の殺菌装置であって、
前記フィルタ、前記オゾンガス分解部および前記もう1つのオゾンガス分解部が1つのケーシング内に設けられることを特徴とする殺菌装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の殺菌装置であって、
前記対象物の殺菌時において、前記気体を加湿する加湿部をさらに備えることを特徴とする殺菌装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の殺菌装置であって、
前記循環流路が、前記オゾンガス分解部と前記排気口との間の位置から前記オゾンガス分解部と前記吸気口との間の位置に接続して、前記オゾンガスを分解する際に前記オゾンガス分解部へと進入する前記気体の量を制限する迂回流路を備えることを特徴とする殺菌装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の殺菌装置であって、
前記オゾンガスを分解する際に、前記循環流路に外部からの空気が導入されるとともに、前記循環流路における前記オゾンガス分解部と前記吸気口との間の位置から前記気体の一部が前記循環流路外に排出されることを特徴とする殺菌装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の殺菌装置であって、
前記殺菌室が、前記対象物の外縁部と当接することにより、前記吸気口から前記対象物を通過して前記排気口へと移動する前記気体の流路を形成するシール部材を備えることを特徴とする殺菌装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の殺菌装置であって、
前記循環流路の外部の空気、または、別途準備される酸素ガスからオゾンガスを発生して前記循環流路内に導入するオゾンガス発生部をさらに備えることを特徴とする殺菌装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の殺菌装置であって、
前記循環流路内において前記オゾンガス分解部の近傍に設けられるとともにオゾンガスの濃度を測定する濃度測定部をさらに備え、
前記気体中の前記オゾンガスの分解後において、前記循環流路における前記オゾンガス分解部と前記吸気口との間の位置から前記気体を前記循環流路外に排出する際に、前記濃度測定部の測定値に基づいて、前記オゾンガス分解部のON/OFFが制御されることを特徴とする殺菌装置。
【請求項11】
布団類またはマット類である対象物を殺菌装置にて殺菌する殺菌方法であって、
前記殺菌装置が、排気口および吸気口を有するとともに対象物を内部に保持する殺菌室と、前記排気口から前記吸気口へと至る循環流路にて気体を循環する循環部とを備え、
前記殺菌方法が、
a)前記気体にオゾンガスを含ませることにより前記殺菌室内の前記対象物を殺菌する工程と、
b)前記循環流路に設けられるオゾンガス分解部の加熱部にて前記循環流路を循環する前記気体を加熱して前記気体中の前記オゾンガスを熱分解する工程と、
を備え、
前記b)工程において、前記気体が前記加熱部により100℃以上250℃以下の温度に加熱され、さらに、所定の温度に制御された前記気体が前記殺菌室内に導入されることにより前記対象物の乾燥が行われることを特徴とする殺菌方法。
【請求項12】
請求項11に記載の殺菌方法であって、
c)前記b)工程に並行して、前記循環流路に設けられるもう1つのオゾンガス分解部において、前記加熱部により加熱された前記気体中の前記オゾンガスを所定の触媒の作用により分解する工程をさらに備えることを特徴とする殺菌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4.A】
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【図4.B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−160304(P2009−160304A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2319(P2008−2319)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】