説明

毒物学アッセイのための3次元細胞アレイチップおよびプラットフォーム

本発明は、試験化合物およびリード化合物、プロドラッグ、薬物ならびにP-450生成薬物代謝産物のハイスループット毒物学スクリーニングのための小型化された3次元細胞チップを使用するプラットホームのスクリーニングに関する。この目的のため、3次元細胞チップは、多数の試験化合物に対して空間的にアドレス可能なスクリーニングのために、官能化された基材(例えば、ガラス顕微鏡スライド)上に整列され、10nLという小容量でマトリックス(例えば、コラーゲンまたはアルギネートゲル)内に封入されたヒト細胞を使用する。本発明のプラットホームにより、3,000細胞を超えるマトリックス島がスポットされ得、反復投薬および高複製における多数の化合物に対する同時スクリーニングが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2005年11月1日に出願された米国仮出願番号60/732,341の恩恵を主張する。上記出願の全教示は参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(政府支援)
本発明は、国立衛生研究所からのNIH ES-012619助成金によって、全体的または部分的に支援された。政府は本発明における特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
過去数十年の間、バイオインフォマティックス、ゲノミクス、およびプロテオミクスの進歩によって見込みある薬剤標的の同定がもたらされた。推定によると、ヒトゲノムプロジェクトの完了によって多くの分子標的は500〜4000に上ると示唆される(Drews, J., Drug discovery: A historical perspective, Science, 287, 1960-1964(2000))。この増加は、これらの標的に関心があり得る潜在的な薬剤候補のさらに大きな増加を意味する。
【0004】
しかし、非常に多数の潜在的な薬剤候補が、効率の損失、好ましくない薬物動力学特性、および重要にも毒性のために薬剤開発の後期段階で失敗に終わるので、潜在的な薬剤候補の数の増加は必ずしも、首尾よい治療剤の開発の増加に解釈されない(Li, A.P., Screening for human ADME/Toxdrug properties in drug discovery, Drug Discov Today, 6, 357-366(2001)。
【0005】
医薬産業にとって、これらの失敗は開発時間の有害な増加および医薬へと進められる新規化学部分(NCE)の費用として示される。
【0006】
最も活性な薬剤および治療剤の首尾よい開発および選択は、丈夫で信頼できるスクリーニングシステムを要求する。
【0007】
伝統的に、製薬会社は、毒物学アッセイを含む、いくつかの研究分野における特定のハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイセットを使用した。これらのアッセイは、96または384ウェルプレート、および時折スクリーニング標的として2次元(2D)細胞単層を有する1536ウェルプレートのようなマルチウェルシステムで行われる。(Fox, S., Farr-Jones, S., Sopchak, L., Boggs, A., および Comley, J., High-throughput screening: searching for higher productivity, J Biomol Screen,9, 354-358(2004); Wunder, F., Stasch, J.P., Huetter, J., Alonso-Alija, C., Hueser, J., および Lohrmann, E., A cell-based cGMP assay useful for ultra-high-throughput screening and identification of modulators of the nitric oxide/cGMP pathway, Anal Biochem, 339, 104-112(2005))。しかし、マルチウェルプレート形式は、細胞を洗浄して試薬を除去する、プレートに添加する試薬またはプレートから除去する試薬および多くの場合アッセイに必要な比較的大用量の高価な試薬の点で固有の制限を有する。
【0008】
さらに、ハイスループット毒物学アッセイは、2次元(2D)細胞単層の使用によって薬物および薬物候補へのインビボ応答についてより代表的であるインビボ組織様構造の形成が阻害される点で制限される。
【0009】
最近、フォトリトグラフ技術を用いて典型的に構築される、細胞マイクロシステム等の代替的プラットフォーム(platform)は、伝統的なマルチウェルシステムに取って代わるように開発されている(Albrecht, D.R., Tsang, V.L., Sah, R.L., および Bhatia, S.N., Photo- and electropatterning of hydrogel-encapsulated living cell arrays, Lab Chip, 5, 111-118(2005))。マイクロウェル中またはマイクロパターン表面上のいずれかで播種された細胞によって、細胞系センサー、単一細胞分化研究、および細胞機能研究を含むいくつかの適用が見出された(Wang, Y., Klock, H., Yin, H., Wolff, K., Bieza, K., Niswonger, K., Matzen, J., Gunderson, D., Hale, J., Lesley, S., Kuhen, K., Caldwell, J.,および Brinker, A., Homogeneous high-throughput screening assays for HIV-1 integrase3'-processing and strand transfer activities, J BiomolScreen, 10, 456-462(2005); Flaim, C.J., Chien, S., および Bhatia, S.N., An extracellularmatrix microarray for probing cellular differentiation, Nat Methods, 2,119-125(2005);Silva, J.M., Mizuno, H., Brady, A., Lucito, R., および Hannon, G.J., RNA interference microarrays: high-throughput loss-of-function genetics in mammalian cells, Proc Natl AcadSci USA, 101, 6548-6552(2004))。
【0010】
2D単層培養と比べて、コラーゲン等の細胞外マトリックス内での3次元(3D)細胞培養は、インビボで対応する組織と同様にヒト細胞の特定の生化学機能および形態学的特徴を維持する(Abbott, A., Biology's new dimension, Nature, 424, 870-872(2003);Zahir, N. および Weaver, V.M., Death in the third dimension: Apoptosis regulation and tissue architecture, Curr. Op. Gen. Dev., 14,71-80(2004))。
【0011】
出願人は、P450触媒作用のハイスループット代謝産物を生じる能力をヒト細胞系スクリーニングと統合する代謝酵素毒物学アッセイチップ(MetaChip)とよばれるマイクロスケール毒物学アッセイプラットフォームを開発し、以前に記載した。このアッセイプラットフォームは、2002年11月1日に出願され、米国出願公開公報第20030162284号として公開された米国特許出願番号第10/287,442号に開示され、内容はその全体を参照によって本明細書に援用される。
【0012】
細胞分化および代謝に対する研究のための3次元細胞培養システムの重要性について道理的な強調がされているが、一般に毒物学アッセイのための3次元細胞培養および特にかかる適用のための小型化3次元細胞培養の使用には比較的努力がほとんど向けられていない。
【0013】
(発明の要約)
本発明は、毒物学アッセイおよびスクリーニングに有用な、ハイスループット3次元細胞培養マイクロアレイプラットフォームのための切望された必要性を提起する。本発明は、試験化合物およびリード化合物、プロドラッグ、薬物およびシトクロムP450(本明細書でP450として省略される)生成薬物代謝産物のハイスループット毒物学スクリーニングのための小型化3次元細胞チップを用いるハイスループットスクリーニングプラットフォームに関する。
【0014】
3次元細胞チップ、または本明細書でよばれるデータ解析毒物学アッセイチップ(Data Analysis Toxicology Assay Chip)(DataChip)は、複数の試験化合物に対して空間的にアドレス可能なスクリーニングのための官能化基材(例えば、顕微鏡ガラススライド)上にアレイされた10nLほど小体積のマトリックス(例えば、コラーゲンまたはアルギン酸(alginate)ゲル)中に封入されたヒト細胞を使用する。
【0015】
本発明のDataChipプラットフォームについて、3000を超える細胞マトリックスアイランドが3次元細胞チップ上にスポットされ得、1つの顕微鏡スライドが複数用量及び高度な反復での複数の化合物に対するスクリーニングに使用され得る。実際に、本プラットフォームを用いて、少なくとも5000個のスポットが25 x 75 mm 顕微鏡スライド当たり10nLスポットで置かれ得ることが予想される。
【0016】
本発明は、各スポットがマトリックス底面層、および細胞を含有するマトリックス表面層を含み、複数の独立スポットをスポットした化学修飾ガラススライドを含むマイクロアレイ分析のための3次元細胞チップに関する。ガラススライドの修飾は3-(アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)続いてポリ(スチレン-コ-無水マレイン酸)(PS-MA)を用いた官能化を含み得る。これはまた、メチルトリメトキシシラン(MTMOS)のコーティングを用いた官能化を含み得る。
【0017】
1つの態様において、マトリックス底面層はポリ−L−リジン(PLL)-塩化バリウム混合物を含み、細胞を含むマトリックス表面層はアルギン酸を含む。
【0018】
本発明の3次元細胞チップはまた、マトリックス底面層と細胞を含むマトリックス表面層との間に置かれる中間層を含み得る。この中間層はヒアルロンまたはその酸または誘導体を含み得る。
【0019】
1つの態様において、マトリックス底面層のマトリックスまたは細胞を含むマトリックス表面層のマトリックスはゾル−ゲル、無機材料、有機ポリマー、無機−有機ハイブリッド材料、生物学的材料、または任意のこれらの組み合わせから選択され得る。
【0020】
1つの態様において、マトリックス底面層のマトリックスまたは細胞を含むマトリックス表面層のマトリックスは、生物学的材料であり、コラーゲンであり、好ましくはI型コラーゲンである。あるいは、生物学的材料はアルギン酸を含み得る。
【0021】
本発明の3次元細胞チップ(DataChip)は、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも3000、または少なくとも5000の独立スポットを含み得る。より好ましくは、DataChipは少なくとも560の独立スポットまたは1080の独立スポットを含む。これらの独立スポットは約0.6 mmのサイズのサイズ範囲であり、約1.2 mmの中心間距離を有し得る。スポットは規則的に間隔を置かれ得るか、所定のパターンまたはアレイで配置され得る。
【0022】
最重要ではないが、マトリックス表面層内に含まれる細胞はマトリックス内の実質的に規則性のあるパターンで封入される。
【0023】
本発明の一態様において、細胞は哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞はヒト肝癌細胞、Hep3B細胞、ヒト胚性腎細胞、A293T細胞および乳癌細胞、MCF-7細胞または任意の癌細胞株もしくは形質転換細胞株からなる群より選択され得る。
【0024】
1つの態様において、本発明はガラススライドを官能化する工程を含むマイクロアレイ分析のための3次元細胞チップを作製する方法であって、官能化は3-(アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)続いてポリ(スチレン-コ-無水マレイン酸)(PS-MA)での処理を含み、官能化ガラススライド上に複数の個々のスポットを配置(deposit)し、該配置は官能化ガラススライド上にマトリックス底面層を含む複数の個々のスポットを配置し、マトリックス底面層の表面上に細胞を含有するマトリックス表面層を配置する工程を含む方法である。
【0025】
作製されたDataChip、個々のスポットを配置した官能化ガラススライドはさらに、細胞培地中でインキュベートされ得る。
【0026】
1つの態様において、本発明は、3次元細胞チップを作製し、試験化合物チップを作製し、3次元細胞チップおよび試験化合物チップを共にスタンピング(stamping)し、生細胞カウントに基づく試験化合物のIC50値を計算する工程を含む、細胞に対する試験化合物の細胞傷害性効果をアッセイする方法である。この方法はさらに、IC50値を試験化合物の細胞傷害性プロフィールと関連づける工程を含み得る。
【0027】
本発明によれば、スタンピング工程の時間は約6時間である。しかし、このスタンピング工程は、4〜7時間の範囲であり得る。本発明の方法における生細胞カウントの測定は蛍光ベースアッセイまたは比色定量アッセイを用いて達成され得る。
【0028】
1つの態様において、本発明は3次元細胞チップ、試験化合物チップを含む毒物学アッセイのためのマイクロアレイプラットフォーム、および生細胞カウントを測定するための装置を提供する。
【0029】
本発明の前記および他の、対象、特徴および利点は、参照特徴と同様に異なる点を通じて同じ部分を示す付随の図面に例示されるように、本発明の好ましい態様の以下のより具体的な記載から明らかである。図面は必ずしも同じ縮尺でなく、本発明の原理の例示に重点が置かれる。
【0030】
(発明の詳細な説明)
本発明の好ましい態様の記載は以下の通りである。
【0031】
小型化またはマイクロスケールハイスループット毒物学アッセイプラットフォームおよびそれを用いる方法が本明細書に開示される。
【0032】
本発明によれば、データ分析毒物学アッセイチップ(DataChip)毒物学アッセイプラットフォームは2つの重要な要素;それぞれ官能化された基材上に作製された、3次元細胞チップ(DataChip)および試験化合物チップを含む。本明細書に記載される場合、試験化合物チップは薬物チップ(DrugChip)または代謝酵素毒物学アッセイチップ(Metabolizing Enzyme Toxicology Assay Chip)(MetaChip)を含み得る。
【0033】
本発明の小型化またはマイクロスケール3次元細胞アレイチップ(3次元細胞チップ;DataChip)はプラットフォームに統合される。DataChipは、コラーゲンまたはアルギン酸等の、3次元ハイドロゲルマトリックス中に封入された細胞の空間的にアドレス可能なパターンから構成されるマイクロアレイであり、マイクロスケールでの細胞増殖を支持する。細胞は3次元マトリックス物質内に播種され、標準マイクロアレイ装置(microarrayer)を用いて官能化基材(例えば、官能化された顕微鏡ガラススライド)上にスポットされる。DataChipは次に、毒物分析に関連する時間スケールに対して細胞増殖を支持するように培地中でインキュベートされる(1〜7日のいずれか)。
【0034】
DataChipはハイスループットな様式において試験化合物およびリード化合物、プロドラッグ、薬物ならびにこれらのP450生成代謝産物のインビトロ毒物評価に有用である。最終的に、DataChipは独特の「スタンピング」技術によって試験化合物チップに結合され、次に毒性を評価する。細胞傷害性アッセイは10nLほどの低用量で行われ、ヒトP450生成代謝産物に結びつけられる。
【0035】
DataChip毒物学アッセイプラットフォームを用いて測定されるIC50値は、従来のウェルプレートアッセイから得られたものに匹敵する。したがって、DataChip毒物学アッセイプラットフォームは、薬物開発の初期相での毒物学アッセイのための従来インビトロマルチウェルプレートプラットフォームに代替的なハイスループットマイクロスケールを表す。DataChip毒物学アッセイプラットフォームを用いて、薬物候補およびその代謝産物の分析が、薬物発見の初期段階にある多数の化合物に一貫した速さで行われ得る。
【0036】
基材官能化
本発明によれば、ガラススライド上の小型化3次元(3D)細胞培養の効率的な構築は効率的な表面修飾戦略を必要とし、生細胞が細胞外マトリックス内に封入され得る。封入手順は速くかつ単純であり、広範囲のヒト細胞に適用可能である。さらに、これは細胞増殖を支持する3次元構造を維持する。ガラス基材上の細胞封入コラーゲン滴の直接配置はスライドからのコラーゲン滴の非特異的な結合および表面上の水系スポットの伸展等の有意な欠点を示した。
【0037】
本発明は底面層の基材の化学修飾または官能化を介してこれらの問題を解決する。本明細書で使用される場合、「化学修飾または官能化」は、化合物または化学物質と基材を接触、処理またはコーティングすることを含み、基材の表面が、別の部分、好ましくはマトリックスの基材の表面へのイオンまたは共有のいずれかの結合を補助または促進する任意の様式で変更される。化学修飾または官能化は、基材を、基材の表面特性を変更し得るほど十分に近似する化合物または化学物質にする処理、接触、コーティングまたは任意の方法によって達成され得る。
【0038】
顕微鏡ガラススライドは好ましい適切な基材であるが、本発明は、ガラス、プラスチックおよびシリコンを含むがこれに限定されない他の基材の使用を意図し、適切な基材の選択が安定および強固な性質の結合によって決められる。
【0039】
市販の顕微鏡スライドについて、コラーゲン懸濁液は、おそらくシラノール基によって付与されるガラス表面の親水性のために伸展する。ガラススライドの官能化は、コラーゲンが表面上で伸展されないが、スポットの強固な結合を確実にするようなコラーゲンの強い親和性を維持するようにガラスの表面特性を十分に疎水性に変更する。官能化はまた、底面層のコラーゲンのアミド結合形成を介した修飾表面への共有結合を利用することによって細胞を含むコラーゲン−ゲルドロップとスライド表面との間での表面特性の違いを低減するように働く(図1参照)。
【0040】
本発明の一態様において、コラーゲンスポットのマイクロスケール表面は3-(アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)およびポリ(スチレン共-無水マレイン酸)(PS-MA)処理を介して顕微鏡ガラススライドの表面に共有結合される。
【0041】
コラーゲン固定プロセス中に、PS-MA上の無水酸基は、(APTMSからの)ガラススライドの表面上の遊離アミノ基およびコラーゲン骨格上のそれと反応する。さらに、PS-MA上の親油性ポリマー鎖は、薄いコーティングとなる疎水性相互作用を介して互いに反応する。
【0042】
さらなる態様において、ガラススライドはメチルトリメトキシシラン(MTMOS)で官能化され得る。
【0043】
さらなる態様において、APTES(アミノプロピルトリエトキシシラン)はAPTMSの代わりに使用され得る。
【0044】
さらなる態様において、PTMOS(プロピルトリメトキシシラン)およびOTMOS (オクチルトリメトキシシラン)はMTMOSの代わりに使用され得る。
【0045】
3次元細胞チップ(DataChip)の作製
本発明の3次元細胞チップ(DataChip)は、任意のゾル−ゲルまたは他の無機材料、有機ポリマー、有機−無機ハイブリッド材料、および生物学的材料のマトリックスアレイ中に封入または播種され、官能化ガラススライド上にスポットされる哺乳動物細胞を使用する。好ましいマトリックスとしては、コラーゲン、アルギン酸、ヒアルロン酸(ヒアルロナン(hyaluronan))、ポリ(ビニルアルコール)、およびポリアクリレートが挙げられる。
【0046】
図1を参照して、2つのDataChipが示される。上部パネルは、APTMS、次にPS-MAで官能化されたガラス基材上に作製されたDataChipを示す。この官能化ガラス基材上に、コラーゲンマトリックススポットのアレイを置く。さらにコラーゲンスポット上に、細胞を含むコラーゲンマトリックスまたはゲルドロップを置く。本態様において、ヒアルロナンの中間層は任意に置かれ得る(図に示されないが)ことに注目する。
【0047】
図1の下部パネルにおいて、上部パネルと同じ様式で官能化されるが、ポリ−リジンおよびバリウム(塩化バリウム由来)のマトリックス底面層を有するDataChipを示す。ポリ−リジン:バリウムスポット上に細胞を含むアルギン酸マトリックス上を置く。
【0048】
3次元細胞チップ(DataChip)は、ガラススライド(DataChip)上に実質的に規則正しいパターンのマトリックスで置かれる3次元ゲルまたはマトリックス中に封入された細胞を含むマイクロアレイである。1つの態様において、マトリックスはコラーゲンゲルである。本明細書で使用される場合、「実質的に規則正しいパターンのマトリックス」は、基材上で統一である配置また均一な分布に近づける配置を意味する。当業者は、完全な分布のマトリックスを作製することは実際に不可能であることを認める。本発明の使用のための分布目標は、評価されるアッセイで再現性のある結果を与えるように働く分布を得ることである。
【0049】
本発明の一態様において、コラーゲンの底面アレイは、PS-MAでプレコーティングすることによって化学修飾または官能化されたガラススライド上に作製される。本発明で使用されるマトリックスは、独立スポットを生じるようにアレイされるおよび/または置かれる。本明細書で使用される場合、「独立スポット」は同定可能な別々の位置にあるスポットであり、隣接するスポットからの任意の実質的干渉がなく行われる毒物学アッセイを支持するスポットである。これらは、任意の非マトリックスまたは物理的障壁で分離される必要がないし、典型的に分離されない。
【0050】
底面アレイのコラーゲンアイランドがスポットされ、乾燥されると、ヒアルロナン層は乾燥コラーゲンスポット上に任意に置かれ得る。ヒアルロナン層の存在は、おそらく静電気相互作用によって細胞を含むコラーゲン滴のより強固な結合を増強する。
【0051】
哺乳動物細胞を含むコラーゲン溶液(MCF7について開始播種密度: 3 x 106 細胞/mL)は、底面のコラーゲンアイランド上またはヒアルロナン層が置かれる底面コラーゲンアイランド上に実質的に印刷される。
【0052】
細胞含有スポットの体積は、約10〜100nL、約20〜80nLまたは約30〜60nLの範囲であり得る。これらの試料は基材のサイズに依存してアレイされ得、規則正しいパターンまたは所定のパターンであり得る。選択されるパターンは規則正しいパターンまたは均一にアレイされる必要はない。規則正しいアレイは14 x 40、20 x 54、またはより大きなアレイパターンを含み得る。
【0053】
例えば、20 x 54パターンの場合、45領域(5 x 9)が作製され、それぞれは4 x 6アレイを有する。より多数のスポットはより大きなアレイを必要とし、かかるより大きなアレイの作製が本発明に意図される。
【0054】
30nLの体積を有する細胞含有試料中で、14 x 40スポットアレイのそれぞれが25 x 75 mm2ガラススライド上に置かれ、スポット直径は、0.6 mm (半球スポットについて予測されるサイズに近い)であり、厚さはおよそ50μmであり、中心間距離は1.2 mmである。
【0055】
1つの態様において、相補的なヒトP450含有Metachipと組み合わせて使用される、1,080個の細胞培養を含む単一のDataChipは、9つの化合物およびCYP1A2、CYP2D6、およびCYP3A4aからのこれらの代謝産物、ならびにヒト肝臓をエミュートするように設計された3つのP450混合物についてIC50値を同時に提供し得る。同様の応答がDataChipおよび従来96ウェルプレートアッセイで得られ、2000倍近い最小化は細胞傷害性応答に影響を及ぼさないことを示す。
【0056】
作製されると、3次元細胞チップ(DataChip)が毒物学アッセイの前に細胞増殖を保持するように細胞培地中でインキュベートされる。
【0057】
広く様々な細胞が本発明のDataChip毒物学アッセイプラットフォームで使用され得る。どの細胞が使用するかの決定は、特定の実験の目的に依存する。例えば、新規な癌用リード薬物を最適化する点で、実験には、細胞死が結果の後に得られる、癌細胞を使用する毒物学アッセイが使用される。別の実験において、同じアレイが、最適なリード薬物の毒性および選択性を決定するために、例えば、癌細胞と同じ器官の正常(非癌性)細胞と組み合わせて使用され得る。2つの実験の補正によって、最適なリード化合物が癌細胞に対する望ましい毒性対正常細胞に対する望ましくない毒性に従ってランク付けされる。あるいは、正常細胞および形質転換細胞は癌治療に関連しない薬物候補の毒性をスクリーニングするために使用され得る。
【0058】
使用され得る細胞、またはこれらが由来し得る組織/器官としては、限定されないが、骨髄、皮膚、軟骨、腱、骨、筋肉(心筋を含む)、血管、角膜、神経、脳、胃腸、腎臓、肝臓、膵臓(膵島細胞を含む)、肺、下垂体、甲状腺、副腎、リンパ球、唾液、卵巣、精巣、子宮頚部、膀胱、子宮内膜、前立腺、外陰腺、食道、等が挙げられる。
【0059】
Tリンパ球、Bリンパ球、多形核白血球、マクロファージ、および樹状細胞等の、免疫系の様々な細胞も挙げられる。
【0060】
ヒト細胞、または他の哺乳動物細胞に加えて、他の生物も使用され得る。例えば、産業化学物質の環境影響を試験する際に、化学物質に曝露され得る水生微生物が使用され得る。さらに別の例において、特定の特性を所有するか又は欠損するように遺伝子改変される細菌等の生物が使用され得る。例えば、抗生物質耐性生物と戦うための抗細菌リード化合物の最適化において、細胞アッセイは抗細菌耐性について1つ以上の遺伝子を発現するように遺伝子改変されている細胞を含み得る。
【0061】
試験化合物チップ(DrugChipまたはMetaChip)の作製
本発明のDataChip毒物学アッセイプラットフォームは、試験化合物チップへのDataChipの結合を必要とする。試験化合物チップはDrugChipおよびMetachipを含む。
【0062】
本明細書で使用される場合、Drugchipは底面マトリックスのスポットアイランド上に置かれた試験化合物またはリード化合物を含むが、Metachipは化合物の生物学的活性代謝産物を生じるために使用されるヒトP450アイソフォームをさらに含む底面マトリックスのスポットアイランド上に置かれた試験化合物またはリード化合物を含む。
【0063】
Metachipに適用可能な一般的なP450アイソフォームは1A1、1A2、1B1、2A6、2B6、2C8、2C9、2C18、2C19、2D6、2E1、2J2、3A4、3A5、3A7、4B1、4F8、4F12、7B1、26B1、27A1、および39A1である。P450に加えて、フラビンモノオキシゲナーゼ、モノアミンオキシダーゼ、種々のエステラーゼ、キノンレダクターゼ、ペルオキシダーゼ、およびアルコールデヒドロゲナーゼを含む、他のフェーズI代謝ベース酵素が使用され得る。フェーズI酵素に加えて、ウリジニルグルクロノシルトランスフェラーゼ(特にアイソフォーム1A1、1A3、1A4、1A5、1A6、1A7、1A8、1A9、1A10、2B4、2B7、2B10、2B11、2B15および2B17)、エポキシドヒドロラーゼ、N-アセチルトランスフェラーゼ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、スルホトランスフェラーゼ(特にアイソフォーム1A1、2B1a、2B1b、および1E1)、ならびにカテコールO-メチルトランスフェラーゼを含む、フェーズII代謝ベース酵素が使用され得る。前記酵素およびアイソフォームに加えて、酵素番号(EC)クラス1-6、例えば、クラス1(オキシドレダクターゼ)、クラス2(トランスフェラーゼ)、クラス3(ヒドロラーゼ)、クラス4(リアーゼ)、クラス5(イソメラーゼ)、およびクラス6(リガーゼ)内に含まれるものを含む、ヒトおよび非ヒト供給源からの広範囲の合成関連酵素が使用され得る。
【0064】
DrugchipおよびMetachipの両方は化学修飾基材または官能化基材上に作製される。基材、好ましくはガラススライドの官能化は、本明細書に記載されるようにPS-MA、MTMOS、または他の試薬での組み合わせ処理によるものである。
【0065】
試験化合物チップは、約5〜100 nL、約10〜80 nLまたは約30〜60 nLで変化する典型的なスポットサイズを含み、数百の試験化合物またはリード化合物(例えば、薬物、プロドラッグまたは薬物候補)を含む。試験化合物チップのプレインキュベーション後に、試験化合物またはリード化合物の溶液がマイクロアレイ装置を用いて底面コラーゲンスポットまたは底面P450コラーゲンスポットのいずれかに適用される。
【0066】
DataChipの試験化合物チップ(DrugchipまたはMetachip)への結合:スタンピングプロセス
本明細書で使用される場合、「スタンピング」は、DataChipを試験化合物チップに結合する二重スライドプロセスである。この結合は向きに依存するものではない。即ち、DataChipは試験化合物チップ上に置かれ得るか、その逆に置かれ得る。
【0067】
次に図2を参照して、スタンピングプロセスにおいて、DataChip上にアレイされた細胞含有スポットが一対一の様式において試験化合物チップ上の相補スポットで結合される。本明細書で使用される場合、「結合」は、相補DataChipスポットが試験化合物チップ上のスポットと液体により連絡する場合に生じる。従って、結合はガラススライド表面間の直接接触を必要としないし、相補部位でのコラーゲンスポット間の直接接触を必要としない。結合は、連絡が相補スポット間で行われる場合に生じる。これはスライド間の表面スペースを横切る液体カラムの接触を介して生じ得る。
【0068】
図2に例示されるように、MetachipのようなP450-生成代謝物の合成続いて細胞含有スポットへの移動、もしくはMetachipのバリアント(以下Multizyme Chipと呼ぶ)である複数酵素含有チップを介したリード化合物アナログの合成のいずれかを可能にする十分な時間(典型的に37℃で6時間)の結合またはインキュベーションの後に、またはDrugchipのような細胞含有スポットに試験化合物もしくはリード化合物の移動を可能にするような時間の後に、DataChip- Metachip、DataChip-Drugchip、またはDataChip-MultizymeChipのペアが分離される。
【0069】
スライドの結合を伴うスタンピング時間は様々であり得、目的の毒物学スクリーニングに選択される特定の細胞型に必要であり得る適切な結合時間を決定するために普通の実験以下を用いることは当業者の範囲内である。
【0070】
スタンピングが完了すれば、DataChipは次に細胞を含有するマトリックス滴に蓄積した任意の過剰薬物を除去するために洗浄される。およそ2時間の洗浄時間はプラットフォームに典型的であるが、細胞型に依存して変化し得ることが発見された。本開示を提供された当業者は、普通の実験以下を要し、様々な細胞型のための洗浄時間を最適化し得ると考えられる。
【0071】
洗浄後にDataChipは、血清含有培地中で数日間(例えば、ほとんどの細胞株について3日)インキュベートされる。その後、細胞は緑蛍光カルセインAMで染色され、マイクロアレイスキャナーを用いてマトリックス滴中の生細胞のパーセントを決定し得る。試験化合物およびリード化合物の毒性プロフィールが薬物濃度の関数として得られ、IC50値(細胞増殖の50%が阻害される薬物濃度)がまた計算され得る。
【0072】
単一のDataChipはハイスループットの様式で使用されるDataChipの潜在性を示す多数の反復した各薬物(または薬物代謝物もしくは薬物候補)について細胞の用量応答を得るのに十分であることが本明細書に示される。従って、DrugchipまたはMetachipのいずれかと結合されたDataChipは、薬物開発プロセスを含む多数の薬物候補のためのヒト毒物学アッセイを促進し得る、薬物およびP450生成代謝産物それぞれの毒性評価のための信頼性があり、迅速で効率的なスクリーニングツールを提供する。DrugchipはP450酵素または他の薬物代謝酵素を含まないMetachip上の領域が含まれたMetachipに組み込まれ得ることがわかる。さらに、MultizymeChipと結合されたDataChipは薬物開発プロセスを含む多数のリード化合物のための最適リード化合物の発生および同定のための信頼性があり、迅速で効率的なツールを提供する。
【0073】
Drugchipに結合されたDataChip上の増殖阻害アッセイ
本発明によれば、本発明のDataChip毒物学アッセイプラットフォームは、DrugchipにDataChipを結合することによって細胞増殖または阻害に対する試験化合物またはリード化合物の効果を評価するために使用され得る。
【0074】
これを行う際、哺乳動物、好ましくはヒトの細胞株は、化学修飾または官能化ガラススライド上の相補パターン上にアレイされたマトリックス中に封入される。生細胞を含むマトリックスのマイクロスケールアレイは、スライド上に強固に結合され、細胞が個々(例えば、別々)の細胞または小さな細胞クラスターとしてゲルスポット中で増殖され、大規模3D細胞培養の典型的特徴である。3次元細胞チップ(DataChip)は、本明細書に記載されるスタンピング技術によって様々な試験化合物またはリード化合物、薬物またはプロドラッグを含むDrugchipと共にインビトロ増殖阻害アッセイに適用される。
【0075】
コラーゲンマトリックス中に封入されたMCF7ヒト乳癌細胞を含むDataChipが、ドキソルビシン、5-フルオロウラシルおよびタモキシフェンを含む抗癌化合物をスクリーニングするために使用され得ることが本明細書に示される。
【0076】
本態様において、薬物を含有するDrugchipが60nLの種々の濃度の薬物溶液(0〜1mMで変化するドキソルビシン、5-フルオロウラシルおよびタモキシフェン)を乾燥コラーゲンスポット上に懸濁することで作製される(30nLそれぞれ、14 x 40 アレイ)。薬物が列あたり一つの用量でスポットされ、単一のDataChipは、複数の反復した全範囲の薬物濃度を試験するのに十分であった。
【0077】
不均一な蒸発の結果として薬物濃度が変化する問題を解消するために、薬物溶液は完全に乾燥させ、各薬物スポット上に60nLの細胞培養培地(DMEM)を迅速に懸濁することで再溶解させた。
【0078】
Metachipに結合したDataChipに対する増殖阻害アッセイ
肝臓中に存在するシトクロムP450を含む薬物代謝酵素がより低い活性の化合物をより高い活性の化合物に転換する場合に、代謝産物の毒性に基づいて化合物をスクリーニングすることが望ましい。モデル系として、DataChip毒物学アッセイプラットフォームがMetachipにDataChipを結合させることでP450生成代謝産物の細胞傷害性を試験するために使用される。
【0079】
例えば、Metachipと組み合わせたDataChipがまた、2つの一般的に使用される抗癌プロドラッグ、シクロホスファミド(CP)(Cytoxan(登録商標))および5-フルオロ-l-(テトラヒドロ-2-フルフリル)-ウラシル(Tegafur(登録商標))のP450生成代謝産物の細胞傷害性を試験するために使用され得ることが本明細書に示される。これらはCYP3A4反応およびCYP1A2反応それぞれによって毒性の4-ヒドロキシシクロホスファミドおよび5-フルオロウラシルに代謝される。
【0080】
試験化合物またはリード化合物として他のプロドラッグまたは潜在的なプロドラッグがまた、Metachipを組み込んだDataChipプラットフォームを用いて細胞傷害性について調査され得る。これらとしては、限定されないが、2,4-ジヒドロキシフェニルアラニン、ポリフェノールオキシダーゼで変換される6-ヒドロキシドーパのためのプロドラッグ;5-フルオロ-2-ピリミジノン(5-FP)、アルデヒドオキシダーゼで変換される5-フルオロウラシルのためのプロドラッグ;パクリタキセル-2-エチルカルボネート、カルボキシエステラーゼで変換されるパクリタキセルのためのプロドラッグ; バラシクロビル、エステラーゼまたは関連酵素で変換される抗ヘルペスアシクロビルのプロドラッグが挙げられる。プロドラッグに加えて、プロ毒物が使用され得る。例えば、アセトアミノフェンはMetachipによって、細胞毒剤であり、対応するイミノキノンに変換される。従って、DataChip-Metachipの組み合わせはプロドラッグの活性化および広範囲の薬物および薬物候補を代謝する酵素生成代謝物の毒性を試験するために使用され得る。
【0081】
有利にも、DataChipは、3D形式で取り込まれた細胞を使用し、インビボでヒト細胞に密接に近似する環境を示す。従って、本発明は、試験化合物およびリード化合物の一群の迅速で効率的な有効性のための見込みのあるプラットフォームを提供し、これらの化合物のIC50を、インビボ動物研究から得られたLD50を相関させるために使用され得る。
【0082】
他の応用
本発明によれば、DataChip毒物学アッセイプラットフォームは、プラットフォームが、ネイティブな微環境をエミュレートするように、より理想的な生理学的マルチパラメーター測定を提供する。
【0083】
3次元細胞チップ(DataChip)はまた、転写/翻訳レベルでのシグナル伝達経路および細胞応答をモニターするアッセイ、ならびにアポトーシスを測定するアッセイを含む、より特定化された毒性応答研究を研究するために拡張され得る。従って、DataChipプラットフォームはハイスループット毒物学アッセイのための価値あるツールとなることを約束し、インビトロでの迅速、安価でかつ簡便な評価のための機会を利用できるようにする。
【0084】
かかる信頼できる微環境の提示を利用して、DataChipプラットフォームは、化合物の一群の迅速で効率的な有効性のための見込みあるプラットフォームを提示し、これらの化合物のIC50をインビボの動物研究から得られたLD50と相関させるために使用され得る。
【0085】
更なる態様において、DataChipプラットフォームは異なる集団部分の薬物候補の反応性を模倣するようにおよびパーソナル化された医薬の広範な適合に対して個々の患者、重要な前駆体に仕立てられ得る。
【0086】
これは、組み合わせマトリックスおよびペプチド混合物が細胞増殖および分化研究のために製剤化され得るようにマイクロスケール組織設計の研究のために使用され得る。
【0087】
本発明は、増殖および/またはアポトーシスの文脈において、細胞外マトリックス、薬物または成長因子を含む異なるシグナルに応答する単一細胞の運命を決定するために使用され得ることも構想される。
【0088】
実施例
実施例1:細胞培養
MCF7ヒト乳癌細胞(ATCC)を、37℃で加湿された5%CO2インキュベーター(ThermoForma Electron Co., Marietta, OH)中のT-25細胞培養フラスコ中の5% 子牛胎児血清(Invitrogen, Carlsbad, CA製 FBS)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Invitrogen)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(Sigma, St. Louis, MO 製 DMEM)中で成長させた。コンフルエントの細胞層を0.05% トリプシン-0.53 mM EDTA(Invitrogen)を用いたトリプシン処理によって2〜3日ごとに継代した。細胞懸濁液を、コンフルエントな細胞単層をトリプシン処理し、4.5 x 106 細胞/mL濃度まで5% FBS-添加DMEM中で細胞を再懸濁することで調製した。
【0089】
Hep3Bヒト肝癌細胞(ATCC)を、T25細胞培養スラスコ中の10% FBSおよび1% ペニシリン-ストレプトマイシンを添加したRoswell Park Memorial Institute(RPMI)メディウム1640中で成長させた。コンフルエントな細胞層を、0.05%トリプシン-0.53 mM EDTA(Invitrogen)を用いたトリプシン処理で2〜3日ごとに継代した。細胞懸濁液を、コンフルエントな細胞単層をトリプシン処理し、9 x 106細胞/mL濃度まで5%FBS-添加DMEM中で細胞を再懸濁することで調製した。
【0090】
実施例2: ガラス基材の化学修飾または官能化
ガラス表面の非常に均一なシラン化のために、表面上のシラノール基(-SiOH)を、強酸を用いて全てのごみを除去することにより曝露した。ボロシリケート顕微鏡スライド(Fisher, Pittsburgh, PA 25 x 75 mm2)を、リムーバルガラススライドラック(Fisher)中に置き、メタノール:HCl (1:1 v/v)の溶液中で2時間浸漬した。
【0091】
脱イオン化蒸留水(dd H2O)中でスライドを2度洗浄した後、スライドを、2時間濃縮硫酸(96.5%)中でさらに洗浄した。dd H2Oで酸洗浄スライドを5度洗浄した後、スライドをアセトン中で一度洗浄し、窒素ガス流体に曝露し乾燥させた。
【0092】
スライド表面上のアミノ基官能化を、トルエン中の3-(アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS Sigma製)を用いることによって達成した。要するに、酸-洗浄スライドを、0.5% (v/v)塩化メチレンを含むトルエン中の5% (v/v) APTMS中に浸漬し、1時間超音波処理した。
【0093】
スライドを洗浄して、続いてトルエン中で3度、アセトン中で1度浸漬して、スライドを、窒素流体で乾燥し、1時間120℃で焼成した。任意の未結合APTMSを除去するために、スライドをエタノール中に浸漬し、30分間超音波処理した。乾燥後、NH2-官能化スライドを、トルエン中1.5 mLの0.05% (w/v)ポリ(スチレン-コ-無水マレイン酸)(PS-MA Sigma製)を用いて30秒間3000rpmでスピンコートした(Spin coater Model PWM32, Headway Research, Inc.)。アミン反応PS-MAでのスライドの疎水性処理は、コラーゲンを共有結合するために、ガラススライドの表面上の水性スポットの伸展を防ぐために適合された。APTMS-PS-MA-処理スライドを、使用まで滅菌ペトリディッシュ中で保存した。
【0094】
比較として、従来法のタンパク質結合を、基材に結合するAPTMSのアミノ基とグルタルアルデヒドの反応を含んだ、グルタルアルデヒド処理を用いて調べられた。グルタルアルデヒドで処理したスライドからのバックグラウンド蛍光 (以下実施例3を参照)は有意に高く、グルタルアルデヒドは表面上のアミン基と完全には反応しなかったことを示した。
【0095】
NH2-官能化スライドを、アセトニトリル(ACN)、ACN:dd H2O (1:1 v/v)およびddH2Oのシリーズで洗浄し、表面を濡らして、CaCl2 & MgCl2を含まないダルベッコ リン酸緩衝化食塩水中の5%(v/v)のグルタルアルデヒド(PBS Invitrogen製)中で浸漬した。1時間超音波処理した後、スライドをdd H2O中に浸漬することで3度洗浄し、未結合グルタルアルデヒドを除去した。
【0096】
コラーゲンスポットは、グルタルアルデヒド処理スライドではなく、PS-MA 処理スライド上で不均一な伸展がなく半球構造を均一に形成したことも観察された。理論に限定されたくは無いが、PS-MAを用いた表面処理の卓越は、反応性無水マレイン酸基がコラーゲンゲルと共有結合し、疎水性のポリスチレンがコラーゲンスポットの伸展を防ぐためであると考えられる。
【0097】
実施例3:フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識によるアミン密度の測定
異なる段階のスライド処理のスライド上のアミン密度をモニターするため、APTMS、PS-MAおよびコラーゲンでの修飾後、表面上のアミン基を緑色蛍光FITCで標識した。
【0098】
フルオレセインイソチオシアネート(FITC)のストック溶液を、反応性FITC色素(Molecular Probes のFluoReporter(登録商標)タンパク質標識キット)を50μLのDMSOに溶解することにより調製し、作業溶液を、ストック溶液を200mLの50mMリン酸カリウムバッファー(pH8)で希釈することにより調製した。穏やかに磁気攪拌しながら、スライドを色素溶液中で1時間インキュベートした。未結合色素を除去するためにdd H20中でスライドを3回洗浄後、アセトン中ですすぎ、窒素ガス流に曝露することによりスライドを乾燥した。青色レーザー(励起488nm)および標準的な青色フィルター(発光508〜560nm)を備えたGenePix(登録商標)Professional 4200Aスキャナー(Molecular Devices Co., Sunnyvale、CA)を用いて、スライド上の緑色蛍光強度を測定した。
【0099】
緑色蛍光強度は、APTMSでの酸洗浄スライドの修飾後、APTMSによるガラス表面上のシラノール基に結合した多数のアミン基のため劇的に増加し、その後のPS-MAでの処理後にバックグラウンドレベルまで減少し、PS-MAが表面を完全に覆い、すべてのアミン基をブロックしていることを示す。さらに、コラーゲンスポットをPS-MA処理スライド上に分配すると、緑色蛍光強度は、曝露されたコラーゲン由来のアミン基のため、中程度に増加した。
【0100】
実施例4:3次元細胞チップ(DataChip)の作製
コラーゲンDataChip
コラーゲンおよび細胞懸濁液を氷上で、コラーゲン溶液を、5%FBS補充DMEM中のMCF-7細胞懸濁液と、コラーゲンおよび細胞の最終濃度がそれぞれ、1.3mg/mlおよび3×106細胞/mLとなるように混合することにより調製した。
【0101】
ラットの尾(3.9mg/mL、BD Biosciences、Bedford、MA)由来I型コラーゲンを氷上で、2mg/mLの最終濃度まで滅菌PBSで希釈した。希釈したコラーゲン溶液を、拡張ヘッド(extended head)(Cartesian Technologies、Irvine、CA)を備えたMicroSysTM 5100-4SQマイクロアレイ装置を用いてPS-MA処理スライド上にスポットした(30nLスポット、14×40スポットアレイ)。細胞のないコラーゲンのこの底面層は、コラーゲン上層の結合を促進し、直接スライド上での不要な細胞の広がりおよび2D細胞増殖を妨げる。
【0102】
滅菌ペトリ皿内での10分間の乾燥後、0.05N NaOH PBS溶液中のStreptococcus equi(Sigma)由来の30nLの1.25mg/mLヒアルロナンを、マイクロアレイ装置を用いて各コラーゲン底面スポットの上面に分配し、乾燥させた。コラーゲン細胞懸濁液は急速にゲル化するため、コラーゲン細胞懸濁液を10分以内にスポットすることを確実にするために注意しなければならなかった。
【0103】
60nL容量のコラーゲン封入され細胞懸濁液を、次いで、ヒアルロナンを重層した各コラーゲンスポット上面に直ちにスポットした。マイクロアレイ装置のチャンバ内の湿度を90%に維持し、スポッティング中の水の蒸発を遅延させた。MCF7細胞を含有するコラーゲンゲル滴を有するDataChipスライドを、1mm厚ガスケット(McMaster-Carr)で仕切られる滅菌ガラススライドで速やかに被覆し、ゲルスポットの乾燥を妨げた。
【0104】
ゲル化の30分後、3次元細胞チップを、16mLの5%FBS補充DMEMを含有する100mm径ペトリ皿内に配置し、スタンピングプロセスによる試験化合物(薬物または薬物代謝産物)への細胞の曝露前に、CO2インキュベータ内で18時間37℃でインキュベートした。
【0105】
生細胞の確認および増殖評価
生細胞カウントの確認は、生細胞を緑色蛍光色素で染色する蛍光研究を用いて行なった。緑色のドットは、コラーゲンゲル滴中のMCF7生細胞を表す。印刷エラーによるスポット対スポット蛍光のずれは15%未満であった。異なる細胞密度で播種したスポットの強度を計算することにより蛍光読み取りを細胞数の関数として計算し、目的の範囲において線形関係が見られた。
【0106】
3次元細胞チップ(DataChip)上のコラーゲン封入MCF7細胞の増殖を評価するため、生細胞の蛍光を、インビトロ毒物学アッセイの典型的な持続時間である5日間にわたってモニターした。コラーゲンゲル滴中のMCF7細胞のスキャンイメージによって、細胞はコラーゲンスポット中で生存可能で健常であり、緑色蛍光はインキュベーション期間中増加することが示された。細胞は、3D培養物に特徴的な個々の細胞または小さなコロニーとして増殖することが見られた。蛍光強度の定量時、コラーゲンゲル滴中に封入されたMCF7細胞は、5日間のインキュベーションまで線形の増殖速度を示し、それ以降は飽和した。同様の増殖曲線もまた、ヒト肝癌細胞、Hep3Bおよびヒト胚性腎細胞、A293Tについて観察された。
【0107】
実施例5:3次元細胞チップ(DataChip)での抗癌薬を用いた増殖阻害アッセイ
増殖阻害アッセイを、相補コラーゲンパターンスライド(Drug Chip)上にスポットされた種々の抗癌薬を組み合わせた3次元細胞チップ(DataChip)を用いて行なった。ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、およびタモキシフェン(すべてSigma製)を含む薬物を、PBS中で異なる濃度(0〜1000μM)で調製し、60nLの薬物溶液を、マイクロアレイ装置を用いてPS-MA処理スライド上の相補パターンの乾燥コラーゲン上面にスポットした(30nLスポット、14×40スポットアレイ)。スポットを乾燥させた後、60nLの5%FBS補充DMEMをコラーゲン薬物スポット上面にスポットした。
【0108】
同時に、3次元細胞チップ(DataChip)をペトリ皿から除去し、過剰の液体を排除した。適正な細胞生存性のためにコラーゲンスポットを水和状態に維持することは必須であるため、3次元細胞チップが乾燥しないように注意した。
【0109】
DMEMのスポッティング後、DataChipを直ちに手で、薬物溶液を含有する対応するスライド(DrugChip)の上面に、細胞を含有する各DataChipコラーゲンスポットが、薬物を含有する各DrugChipコラーゲンスポットと1対1の接触をするようにスタンピングした。細胞への薬物の移動を可能にするスポット対の効率的な接触のために、DrugChipは、250μm厚シリコーンガスケット(McMaster-Carr)を含み、これは、2つのスライド間に適当な間隔を維持するのを補助し、インキュベーション中の細胞の乾燥を妨げた。
【0110】
スタンピング中、細胞含有コラーゲンゲル滴と薬物スポットとの間に形成した柱状液体カラムを介して薬物を細胞に移した。37℃で、6時間のスタンピングインキュベーション後、DataChipをDrugChipから分離し、滅菌PBSで2回すすぎ、任意の過剰の薬物溶液を除去し、DMEM中に2時間浸漬して残留薬物をコラーゲンゲル滴から拡散させた。次いで、DataChipを16mLの5%FBS補充DMEMを含むペトリ皿に移し、生細胞について染色する前にCO2インキュベータ内で37℃で3日間培養した。
【0111】
実施例6:シトクロムP450のコラーゲン封入
P450-コラーゲン溶液(120μL)を、氷上で、24μLのCYP3A4バキュロソーム(baculosome)(1.1nmol P450/mL、Invitrogen製)、24μLの100mMリン酸カリウムバッファー(pH8.0)、12μLの再生系(100mリン酸カリウムバッファー、pH8中333mMグルコース-6-ホスフェートおよび40U/mLグルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ならびに60μLのラット尾I型コラーゲン(3.9mg/mL)を混合することにより調製した。表面上で安定な半球状のP450-コラーゲンスポットを確保するため、30nLのP450-コラーゲン溶液を、マイクロアレイ装置を用いてPS-MA処理スライド上にスポットし、使用前に2時間室温でゲル化させた。また、CYP1A2を類似の方法を用いてコラーゲンゲル中に封入した。P450反応を14×40スポット(各30nL)からなる560スポットアレイにおいて、シクロホスファミド(CP)またはTegafur(登録商標)(ともにSigma製)を含む60nLのプロドラッグ溶液を各P450 コラーゲンスポットの上面に分配することにより行なった。
【0112】
実施例7:細胞染色、スキャニング、およびデータ分析
薬物(または薬物代謝産物)の細胞傷害性を、生細胞由来の緑色蛍光応答をもたらすLive/Dead試験キット(Molecular Probes)で、細胞を含むスライドを染色することによって測定した。スタンピング後、3日間の培養期間の最後に、3次元細胞チップ(DataChip)をPBS中で各々5分間3回すすいだ。色素溶液の損失を妨ぐための障壁としての機能を果たす1mm厚周長(perimeter)ガスケットを有するガラススライドを用いて、0.5μMカルセインAMを含有する1mLの色素溶液を各3次元細胞チップに適用した。
【0113】
室温で50分間インキュベーション後、60rpmでの旋動振動装置において、16mLのPBSを含むペトリ皿内で30分間スライドをインキュベートすることによりコラーゲンゲル滴中の過剰の色素を除去した。3次元細胞チップを窒素で充分乾燥した。青色レーザーおよび緑色蛍光強度を測定するための標準的な青色フィルターを備えたGenePix(登録商標)Professional 4200Aスキャナーで3次元細胞チップをスキャンし、GenePix Pro 6.0 (Molecular Devices Co.)を用いてスキャン画像から定量した。完全に死んだ細胞のバックグラウンド緑色蛍光(70%メタノールで1時間の処理後)は無視できたため、以下の等式:
生細胞の割合 = (FReaction/FMax)×100
(式中、FReactionは、反応スポットの緑色蛍光強度であり、FMaxは未処理の完全生存細胞の緑色蛍光強度である)
を用いて生細胞の割合を計算した。
【0114】
実施例8:96ウェルプレートにおける増殖阻害研究
DataChip 毒物学アッセイプラットホームの対照として、細胞傷害性アッセイを、MCF7細胞の2D単層および3Dコラーゲン培養を用いた96ウェルプレート(Fisher)において行なった。
【0115】
96ウェルプレートの各ウェルにおいて、6×103細胞を含有する100μLの細胞懸濁液および18×103細胞を含有する60μLのコラーゲンゲル溶液(1.3mgコラーゲン/mL)を、それぞれ、2Dおよび3D培養のために移した。CO2インキュベータ内で1日37℃で培養後、細胞を種々の濃度のドキソルビシン、5-フルオロウラシルおよびタモキシフェンを含む薬物の溶液100μLとともに6時間インキュベートした。
【0116】
対照実験では、3次元細胞チップ(DataChip)と同一の細胞増殖および薬物曝露の手順に従ったが、慣用的なMTTアッセイを用いて生細胞数を評価した。MTTアッセイは、しばしば、96ウェルプレートプラットホームにおける細胞傷害性研究のために使用される。
【0117】
薬物溶液を除去し、200μLの5%FBS補充DMEMと交換し、細胞を3日間さらに培養した。各ウェルに滅菌PBS中50μLのMTT(Sigma)溶液(2.5mg/mL)を添加することにより、薬物の細胞傷害性を測定した。37℃で4時間のインキュベーション後に代謝的に活性細胞において生成された紫に着色されたMTT-ホルマザン結晶を、MTT溶液を除去し、0.05N HClを含有する250μLの酸性イソプロパノールを添加することにより溶解した。30分間振とうしてホルマザン結晶を溶解した後、BioAssay Reader HTS 7000 Plus (Perkin Elmer、Norwalk、CT)を用いて570nmにおける吸光度を測定した。570nmで読まれた吸光度は、2Dおよび3D培養物の両方で細胞数と線形に相関し、生細胞集団の基準として使用した。
【0118】
3次元細胞チップ(DataChip)で得られたMCF7細胞の細胞傷害性プロフィールは、2つの対照のものと類似する。DataChip上の細胞のスキャンした画像は、各スポットが空間的に分離されているため、DataChip上に明白なスポット対スポット汚染はないことを示した。
【0119】
予備研究において、DataChipで評価した、PBSに溶解したドキソルビシン、PBS中の5-フルオロウラシル、および0.2%DMSO (制限された水溶性のため)中のタモキシフェンのIC50は、それぞれ、869.0±57.0 nM、51.5±3.3μM、および31.2±0.8μMであったが、96ウェルプレートにおける2D対照のIC50値は、64.7±4.4 nM、41.7±4.6μM、および8.5±0.2μMと計算され、3D対照の値は、それぞれ、69.2±3.0 nM、34.7±1.2μMおよび28.8±0.2μMであった。
【0120】
したがって、3次元細胞チップ(DataChip)から得られたIC50値は、2D細胞単層および3D細胞培養を用いた慣用的な96ウェルプレートプラットホームから得られたのと同等であった。
【0121】
実施例9:3次元細胞チップ(DataChip)に対する増殖阻害アッセイ:基材のMTMOS官能化
効率的なスタンピングのため、スライドの周縁部にゾル-ゲル障壁を含むようにMTMOSコーティングガラススライドを作製した。
【0122】
この目的のため、120nLのメチルトリメトキシシラン(MTMOS)ゾルを、2mLのMTMOSを1mLのHCl (10 mM)混合することにより調製し、10分間超音波処理した。ゾルをMTMOSコーティングスライドの周縁部上にスポットし、次いで、スライドを、オーブン内で30分間120℃で焼成した。MetaChipは、アルギン酸スポット中に封入されたCYP1A2、CYP2D6、CYP3A4、3種類のP450の混合物、およびP450なしの対照スポットを含むように作製し、MTMOSコーティングスライド上にスポットした(Lee, M. Y., Park, C.B., Clark, D.S.およびDordick, J.S., Metabolizing enzyme toxicology assay chip (MetaChip)for high-throughput microscale toxicity analyses, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS), 102, 983-987 (2005))。
【0123】
P450アイソフォームの反応性を、青色蛍光発生基材(P450活性測定については実施例10を参照)を用いて試験した。MetaChipを使用前に1日-80℃で保存した。細胞傷害性研究を、蒸留水中20nLの試験化合物(0〜2mM)をMetaChipスポット上にスポッティングし、部分乾燥することにより行なった。
【0124】
これらのスポットに、2mM NADP+およびその再生系(20mMリン酸カリウムバッファー、pH8中、67mMグルコース-6-ホスフェートおよび8U/mLグルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ)を含有するDMEMの20nL溶液をスポットした。この後、MetaChipへの、MCF7またはHep3B 細胞のいずれかを含有する3次元細胞チップ(DataChip)のスタンピングを行なった。
【0125】
スタンピングされたMetaChip-DataChipの組合せを6時間37℃でインキュベートした後、DataChipを除去し、2時間すすぎ、3日間インキュベートし、染色し、マイクロアレイスキャナーを用いてスキャンした(細胞染色、スキャニングおよびデータ分析については実施例7参照)。
【0126】
実施例10:P450活性測定
アルギン酸マトリックス中でのP450の固有の反応性を評価するため、反応を384ウェルプレートのウェル中で行なった。P450含有アルギン酸ゾルを、24μLのP450バキュロソーム(1nmol P450/mL)、36μLの蒸留水、および60μLの蒸留水中にアルギン酸(2%)を分配することにより調製した。5マイクロリットルのこの溶液を、384ウェル中の5μLの乾燥PLL-バリウムスポット上にスポットした。P450-アルギン酸ゲル滴を-80℃で1日保存した後、50mMリン酸カリウムバッファー(pH8)中250μM NADP+およびその再生系(8mMグルコース-6-ホスフェートおよび1U/mLグルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ)を含有する25μLの青色蛍光発生基材(CYP3A4ではBOMCCならびにCYP1A2およびCYP2D6ではEOMCC)を、解凍したP450-アルギン酸ゲル滴上に分配した。
【0127】
対照として、アルギン酸なしの可溶性P450もまた使用した。BOMCCまたはEOMCCのP450触媒酸化によって放出される青色蛍光7-ヒドロキシクマリンを、430nmの励起波長および497nmの発光波長でBioAssay Reader HTS 7000 Plus(Perkin Elmer、Norwalk、CT)を用いて時間の関数としてモニターした。
【0128】
P450触媒作用をDataChipプラットホームに導入するため、以前にプロドラッグおよびプロ毒物(protoxicant)活性化に対するP450代謝の影響を評価するために使用されたMetaChip(代謝酵素毒物学アッセイチップ)を、試験化合物チップとして機能させるために修正した。
【0129】
この目的のため、20×54アルギン酸スポットからなるMetaChipを作製し、各スポットは、単一のヒトP450アイソフォーム(CYP1A2、CYP2D6またはCYP3A4)、3種類のアイソフォームの混合物、または対照としてP450なしの試験化合物のみを含有した。試験化合物の添加は、これらの化合物溶液のスポッティングをMetaChip上に重層することにより行ない、次いで、これをDataChipの上面にスタンピングした。
【0130】
アルギン酸マトリックスにおける3種類のP450アイソフォームの高活性が
確認され、これらのデータを表1に示す。すべての場合において、
蛍光発生基材を用いたkcat/Kmの値は、液相反応の2倍以内であった。

【0131】
実施例11:細胞傷害性プロフィールおよび用量応答研究
DataChip毒物学アッセイプラットホームを、すべて、MCF7細胞に対して細胞傷害性であることが知られている異なる用量の3種類のモデル化合物-ドキソルビシン(DOX)、5-フルオロウラシル (5-FU)、およびタモキシフェン(TAM)に対するMCF7細胞の細胞傷害性応答を用いて評価した。この目的のため、1mMまでの濃度の60nLの各化合物を、14×40アレイ内に乾燥コラーゲンスポットのみ(例えば、続いて3次元コラーゲンゾル-ゲルを添加しない)を含むスライド上に分配した。このアレイを、次いで、DataChip上面にスタンピングし、二重スライド系を6時間37℃でインキュベートした。以前のとおり、DataChip上の細胞は、106細胞/mLの密度で播種した。
【0132】
スタンピング期間の最後に、コラーゲンゲル細胞スポット中に蓄積された任意の過剰の化合物を洗浄除去し、細胞生存性を測定する前に細胞をさらに3日間増殖させた。
【0133】
DOX、5-FUおよびTAMのDataChipにおける計算IC50値を、慣用的な96ウェルプレート中で2D単層および3Dコラーゲンゲル培養の両方において増殖させたMCF7細胞のIC50値、ならびに96ウェルプレート中での2D培養の文献値とともに表2に要約する。DataChipから得られたIC50値は、2D細胞単層および3D細胞培養の両方を用いた慣用的な96ウェルプレートプラットホームから得られたものと同等であった。


いくつかのことがこれらの結果から自明である。
【0134】
第1に、96ウェルプレート中でのDataChipおよび2D/3D細胞培養物のIC5O値間の類似性(すべて、1次数(order)の大きさ以内および公表された値以内)は、DataChipが正確な細胞傷害性情報をもたらし得ることを示す。
【0135】
第2に、より慣用的なプレートアッセイと比べると、DataChipについて約2,000倍のスケールダウンにもかかわらず、細胞傷害性データの見かけ上の精度は有害に影響されない。
【0136】
最後に、スタンピング手順は、6時間行なわれるが、より慣用的な増殖阻害研究では、薬物または薬物候補は、細胞と1〜7日間のいずれかの間接触したままである。したがって、DataChipは、代表的な細胞傷害性用量を送達するのに充分な曝露をもたらす迅速な細胞取込みを可能にするマトリックスを提供する。
【0137】
MCF7細胞においてすべての3種類の化合物について用量応答細胞傷害性プロフィールを行ない、すべての3つの方法で同様のプロフィールが示された。
【0138】
実施例12:アルギン酸DataChip
マイクロスケールでのヒト細胞培養のための有用な3Dマトリックスとしての機能を果たすコラーゲンの能力にもかかわらず、材料は急速にゲル化し、それにより細胞播種コラーゲンゾルが溶液状態で維持され得る時間が限定される。さらに、より長いインキュベーション時間では、コラーゲンマトリックスは、おそらく細胞培養物中のプロテアーゼの存在のために分解し、このため、3Dマトリックスからの細胞の漏れ出しがもたらされた。
【0139】
これらの問題を解決するため、2価金属イオンの非存在下でゾル状態で維持され、したがって、20nLという小さいスポット容量の生成を含むDataChip作製物に対するさらなる制御を可能にするアルギン酸ゲルマトリックスを使用した。さらに、アルギン酸は、プロテイナーゼ触媒分解に対して不活性である。
【0140】
アルギン酸含有3次元細胞チップ(DataChip)を以下のようにして作製した。ポリ-L-リシン(PLL)-バリウム混合物を、等容量の滅菌PLL(0.01w/v%、Sigma製)および蒸留水中の塩化バリウム溶液(0.1M、Sigma製)を混合することにより調製した。
【0141】
低粘性アルギン酸(Sigma製)中の細胞懸濁液を、5%FBS補充DMEM中のHep3B細胞懸濁液を、蒸留水中のアルギン酸溶液と、細胞およびアルギン酸の最終濃度がそれぞれ6×106細胞/mLおよび1%(w/v)となるように混合することにより調製した。
【0142】
PS-MA処理スライド上への10nL PLL-バリウム混合物のスポッティングおよび乾燥後、アルギン酸中20nLの細胞懸濁液(MCF7またはHepB3;スポットあたり6×106細胞/mLの細胞密度または120細胞)を各PLL-バリウムスポットの上面にスポットした。より一般的なカルシウムとは反対のバリウムを用いて、細胞培養培地の一般的な構成成分であるホスフェートの存在下での前者の安定性を断定した。正に帯電したPLLは、いったんゲル化が起こるとアルギン酸の負に帯電した多糖構成成分の結合を補助した。
【0143】
Ba2+イオンとのアルギン酸溶液の相互作用によるほぼ自発的なゲル化の後、アルギン酸系DataChipを5%FBS補充DMEM中に配置し、本明細書に記載のスタンピング方法によって細胞を試験化合物(薬物または薬物代謝産物)曝露する前に、CO2インキュベータ内で37℃で18時間インキュベートした。
【0144】
本明細書に記載のDataChip プラットホームを使用すると、アルギン酸マトリックスは、MCF7およびHep3B細胞両方の増殖を支持し、コラーゲンで得られるものと類似したDOX、5-FUおよびTAMに対する用量応答を可能にすることがわかった。したがって、アルギン酸は、コラーゲンの適当な代替物を提供する。
【0145】
実施例13:DataChip小型化
DataChipのスループットを増大させるため、アルギン酸を有する20nL細胞培養スポット容量を用いた20×54(1,080)スポットDataChipを作製した。
【0146】
また、DataChip プラットホームの機能的有用性を拡張するため、P450触媒薬物代謝をDataChipと組合せ、それによりプラットホームを薬物代謝細胞傷害性スクリーニング系に変換した。主に肝臓中のP450は、生体異物の初回通過代謝を触媒し、それにより1種類以上の代謝産物を生成させ、その一部は、親化合物より幾分毒性であり得る(Furge, L.L.およびGuengerich、F.P., Cytochrome P450 enzymes in drug metabolism and chemical 毒性ology:an introduction、Biochem Mol Biol Educ、34、66-74 (2006); Guengerich, F.P.、Cytochrome P450s and other enzymes in drug metabolism and 毒性ity、AAPS J、8、E101- E111 (2006))。したがって、特異的P450アイソフォームの作用はDataChipの細胞傷害性用量応答を改変し得る。
【0147】
実施例14:IC50値の測定
なかでも、Cytoxan(登録商標)、Tegafur(登録商標)、パクリタキセル、ドキソルビシン、5-FU、タモキシフェン、リンダン、ニコチンおよびアセトアミノフェンを含む合計27個の化合物およびそのP450生成代謝産物の細胞傷害性を、ヒトHep3BおよびMCF7細胞で評価した。
【0148】
3つのDataChipを3つのMetaChipと組み合せて使用し、ヒトHep3B細胞に対する27個の化合物およびそのP450生成代謝産物のIC50値を測定した。これらの細胞は非誘導であり、本質的に固有のP450活性を有しないことが予測された。その結果、これらはDataChipプラットホームにおいて肝毒性を評価するための有用なモデルを提供する。3種類のP450アイソフォームは、3種類のアイソフォームの等モル混合物およびP450なしの対照のみの試験化合物とともに使用した。試験化合物をMetaChipに添加し、次いで、これをDataChip上にスタンピングし、6時間インキュベートした。この後、DataChipを除去し、増殖培地ですすぎ、培地中で3日間インキュベートし、次いで、細胞生存性について染色した。
【0149】
各々、6つの異なる用量の試験化合物が細胞傷害性について、各々4回反復で評価されることを可能にした4×6ミニアレイからなるDataChip の45個の異なる領域の1つで行なった単一のDataChipにより、9個の試験化合物の用量応答に関する情報がもたらされた。
【0150】
これらの研究の結果は、DataChip プラットホームがP450アイソフォームの作用によって代謝活性化または生体異物の不活性化を明白に迅速に同定し得ることを示した。これらのデータを表3に報告する。





【0151】
27個の化合物のうち、19個が1mM未満のIC50値を示し、2つ(ジゴキシンおよびドキソルビシン)が1μMより下のIC50値を示した。両方の場合において、DataChipにおいて測定された値は、関連細胞型の文献値と類似した(Winnicka, K.およびBielawska, A., Inhibition of DNA topoisomerases I and II, and growth inhibition of breast cancer MCF-7 cells by ouabain, digoxin and proscillaridin A., Biological & Pharmaceutical Bulletin, 29, 1493-1497 (2006); Takara, K., Tsujimoto, M., Ohnishi, N.およびYokoyama, T., Effects of continuous exposure to digoxin on MDR1 function and expression in Caco-2 cells, Journal of Pharmacy and Pharmacology, 55, 675-681 (2003))。
【0152】
さらに、19個の化合物は、Hep3B細胞による毒性応答の統計学的に関連する活性化または不活性化によって示されるように、1つ以上のP450アイソフォームに対して反応性であった。例えば、予測されるように、CYP1A2は、アセトアミノフェンを強力に活性化し、化合物を細胞傷害性代謝産物に変換した。CYP1A2による同様の活性化がCYP1A2およびCYP2D6ならびに3種類のP450アイソフォームの混合物によるラクアット(メチルビオロゲン)で見られる。
【0153】
充分なDataChipの結果の検討により、CYP1A2は、リンダン、オルフェナドリン、キニジン、ベラパミル、アミトリプチリン、ニコチン、テオフィリンおよびシタラビンを中程度から弱く不活性化することが明らかになった。同様に、CYP2D6は、ベラパミル、タモキシフェン、ドキソルビシンおよびパラクアットを活性化したが、リンダン(強力に)、オルフェナドリン、キニジン、ニコチン、テオフィリン、メトトレキサート、シタラビンおよびパクリタキセルを不活性化させた。CYP3A4は、アセトアミノフェンおよびシクロホスファミドを強力に活性化し、これは、このアイソフォームによるこれらの化合物の既知のプロドラッグおよびプロ毒物活性化と一致する(Huang, Z., Roy, P.およびWaxman, D. J., Role of human liver microsomal CYP3A4 and CYP2B6 in catalyzing N-dechloroethylation of cyclophosphamide and ifosfamide, Biochemical Pharmacology, 59, 961-972 (2000); Anderson, D., Bishop, J.B., Garner, R.C., Ostrosky-Wegman, P.およびSelby, P.B., Cyclophosphamide: Review of its mutagenicity for an assessment of potential germ cell risks, Mutation Research, 330, 115-181 (1995); Patten, C.J., Thomas, P.E., Guy, R.L., Lee, M.J., Gonzalez, F.J., Guengerich, F.P.およびYang, C. S., Cytochrome P450 enzymes involved in acetaminophen activation by rat and human liver microsomes, Chemical Research in Toxicology, 6, 511-518 (1993); Nelson, S.D., Mechanisms of the formation and disposition of reactive metabolites that can cause acute liver injury, Drug Metab. Rev., 27, 147-177 (1995))。
【0154】
最後に、CYP3A4は、クロロキン、キニジン、ニコチン (強力に)、5-フルオロウラシル、タモキシフェンおよびメトトレキサートを不活性化させた。したがって、DataChip-MetaChipの組合せは、多様な数の生体異物に対するP450触媒初回通過代謝の影響を正確に予測することができた。
【0155】
ほとんどの反応性生体異物で、P450混合物のIC50値は、個々のP450アイソフォームのIC50値の範囲内であった。しかしながら、興味深いことに、リンダンおよびキニジンの両方は、任意の3種類の個々のアイソフォームよりも混合物においてより大きな不活性化を受けた。これは、生体異物のより大きな構造的修飾およびより低い毒性をもたらす異なるアイソフォームによる多数のP450触媒作用の結果であり得る。これは、3つのP450アイソフォームすべてが両方の化合物に対して反応するという事実により激化する。
【0156】
本発明を、その好ましい態様を参照して具体的に示し、記載したが、形態および詳細における種々の変形が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱せずになされ得ることは、当業者によって理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】図1は本発明のDataChipの代替態様の側面図である。上部パネルはマトリックスとしてコラーゲンを用いるDataChipを示し、下部パネルはマトリックスとしてアルギン酸を用いるDataChipを示す。
【図2】図2は本発明のDataChip毒物学アッセイプラットフォームの一態様の概略図である。図は二重スライドのプラットフォームを例示し、DataChipは試験化合物チップ、ここでMetachipに結合される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の独立したスポットが上面にスポットされ、各スポットが
(a)マトリックス底面層、および
(b)細胞を含むマトリックス表面層
を含む化学修飾されたガラススライドを含む、マイクロアレイ分析用3次元細胞チップ。
【請求項2】
ガラススライドの化学修飾が、3-(アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)での官能化の後、ポリ(スチレン-コ-無水マレイン酸)(PS-MA)での官能化を含む、請求項1記載の3次元細胞チップ。
【請求項3】
ガラススライドの化学修飾が、メチルトリメトキシシラン(MTMOS)のコーティングを用いた官能化を含む、請求項1記載の3次元細胞チップ。
【請求項4】
マトリックス底面層がポリ-L-リシン(PLL)-塩化バリウム混合物を含む、請求項2記載の3次元細胞チップ。
【請求項5】
(b)の細胞を含むマトリックス表面層のマトリックスがアルギン酸を含む、請求項4記載の3次元細胞チップ。
【請求項6】
前記マトリックス底面層および前記細胞を含むマトリックス表面層の間に配置された中間層をさらに含む、請求項2記載の3次元細胞チップ。
【請求項7】
中間層がヒアルロナンを含む、請求項6記載の3次元細胞チップ。
【請求項8】
マトリックス底面層のマトリックスが、ゾル-ゲル、無機材料、有機ポリマー、ハイブリッド無機-有機材料、生物学的材料、またはその任意の組合せから選択される、請求項2記載の3次元細胞チップ。
【請求項9】
細胞を含むマトリックス表面層のマトリックスが、ゾル-ゲル、無機材料、有機ポリマー、ハイブリッド無機-有機材料、生物学的材料、またはその任意の組合せから選択される、請求項2記載の3次元細胞チップ。
【請求項10】
マトリックス底面層のマトリックスが生物学的材料である、請求項8記載の3次元細胞チップ。
【請求項11】
生物学的材料がI型コラーゲンを含む、請求項10記載の3次元細胞チップ。
【請求項12】
生物学的材料がアルギン酸を含む、請求項10記載の3次元細胞チップ。
【請求項13】
細胞を含むマトリックス表面層のマトリックスが生物学的材料である、請求項8記載の3次元細胞チップ。
【請求項14】
生物学的材料がコラーゲンを含む、請求項13記載の3次元細胞チップ。
【請求項15】
生物学的材料がアルギン酸を含む、請求項13記載の3次元細胞チップ。
【請求項16】
少なくとも1000個、少なくとも3000個または少なくとも5000個の独立したスポットを含む、請求項2記載の3次元細胞チップ。
【請求項17】
少なくとも1080個の独立したスポットを含む、請求項2記載の3次元細胞チップ。
【請求項18】
少なくとも560個の独立したスポットを含む、請求項2記載の3次元細胞チップ。
【請求項19】
独立したスポットの各々が約0.6mmの大きさであり、約1.2mmの中心間距離を有する、請求項18記載の3次元細胞チップ。
【請求項20】
560個の独立したスポットは規則的に間隔が空けられている、請求項18記載の3次元細胞チップ。
【請求項21】
マトリックス表面層内に含まれた細胞は、マトリックス内に実質的に規則的なパターンで封入される、請求項1記載の3次元細胞チップ。
【請求項22】
細胞が哺乳動物細胞である、請求項1記載の3次元細胞チップ。
【請求項23】
哺乳動物細胞が、ヒト肝癌細胞、Hep3B細胞、ヒト胚性腎細胞、A293T細胞および乳癌細胞、MCF-7細胞からなる群より選択される、請求項22記載の3次元細胞チップ。
【請求項24】
(a)ガラススライドを官能化する工程、ここで、官能化は3-(アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)での処理の後、ポリ(スチレン-コ-無水マレイン酸)(PS-MA)での処理を含む、および
(b)官能化されたガラススライド上に複数の個々のスポットを配置する工程、前記配置は、
(i)官能化されたガラススライドの上面に、マトリックス底面層を構成する複数の個々のスポットを配置する工程
(ii) (i)のマトリックス底面層の表面上に細胞を含むマトリックス表面層を配置する工程
を含む、マイクロアレイ分析用3次元細胞チップの作製方法。
【請求項25】
(c)細胞培養培地中で、堆積された個々のスポットを有する官能化されたガラススライドをインキュベートする工程をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
マトリックス底面層のマトリックスがポリリシンおよび塩化バリウムを含む、請求項24記載の方法。
【請求項27】
細胞を含むマトリックス表面層のマトリックスがアルギン酸を含む、請求項25記載の方法。
【請求項28】
(c)細胞培養培地中で、堆積された個々のスポットを有する官能化されたガラススライドをインキュベートする工程をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項29】
マトリックス底面層のマトリックスがコラーゲンを含み、細胞を含むマトリックス表面層のマトリックスがコラーゲンを含む、請求項24記載の方法。
【請求項30】
官能化されたガラススライドの上面のマトリックス底面層を構成する前記複数の個々のスポットと、マトリックス底面層の表面上の前記細胞を含むマトリックス表面層との間に、中間層を配置する工程をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項31】
中間層がヒアルロナンまたはその酸を含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
(a)3次元細胞チップを作製する工程、
(b)試験化合物チップを作製する工程、
(c)3次元細胞チップおよび試験化合物チップを共にスタンピングする工程
、ならびに
(d)生細胞カウントに基づいて試験化合物のIC5O値を計算する工程
を含む、細胞に対する試験化合物の細胞傷害効果のアッセイ方法。
【請求項33】
(e)(d)のIC5O値を試験化合物の細胞傷害性プロフィールと相関させる工程をさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
スタンピング工程(c)の持続時間が約6時間である、請求項32記載の方法。
【請求項35】
スタンピング中の3次元チップおよび試験化合物チップ間の連絡がアレイ状の1対1のパターンで起こる、請求項32記載の方法。
【請求項36】
生細胞カウントが蛍光系アッセイまたは比色定量アッセイを用いて測定される、請求項32記載の方法。
【請求項37】
試験化合物チップが、
(a)上面にコラーゲンスポットアレイを有する化学修飾されたガラススライド、および
(b)(a)の各コラーゲンスポットの上面に堆積された少なくとも1つの試験化合物
を含む、請求項32記載の方法。
【請求項38】
3次元細胞チップが、
(a)コラーゲンマトリックス底面層を構成するコラーゲンスポットアレイを上面に有する化学修飾されたガラススライド、および
(b)(a)の各コラーゲンスポットの上面に堆積された細胞を含むコラーゲンマトリックス表面層
を含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
3次元細胞チップが、
(a)ポリリシンおよび塩化バリウムマトリックス底面層を含むマトリックススポットアレイを上面に有する化学修飾されたガラススライド、ならびに
(b)(a)の各マトリックススポットの上面に堆積された細胞を含むアルギン酸マトリックス表面層
を含む、請求項37記載の方法。
【請求項40】
試験化合物チップが、
(a)上面にコラーゲンスポットアレイを有する化学修飾されたガラススライド、
(b)(a)のアレイされたコラーゲンスポットの各々に封入された少なくとも1種類の薬物代謝酵素、ならびに
(c)(a)のアレイされたコラーゲンスポットの各々の上面に堆積された少なくとも1種類の試験化合物
を含む、請求項32記載の方法。
【請求項41】
3次元細胞チップが、
(a)コラーゲンマトリックス底面層を含むコラーゲンスポットアレイを上面に有する化学修飾されたガラススライド、および
(b)(a)の各コラーゲンスポットの上面に堆積された細胞を含むコラーゲンマトリックス表面層
を含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
3次元細胞チップが、
(a)ポリリシンおよび塩化バリウムマトリックス底面層を含むマトリックススポットアレイを上面に有する化学修飾されたガラススライド、ならびに
(b)(a)の各マトリックススポットの上面に堆積された細胞を含むアルギン酸マトリックス表面層
を含む、請求項40記載の方法。
【請求項43】
少なくとも1種類の試験化合物が、候補薬物、薬物、プロドラッグおよび薬物代謝産物からなる群から選択される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1種類の試験化合物が、候補薬物、薬物およびプロドラッグからなる群から選択される、請求項43記載の方法。
【請求項45】
試験化合物が薬物を含み、該薬物が、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、およびタモキシフェンからなる群から選択される、請求項44記載の方法。
【請求項46】
試験化合物がプロドラッグを含み、該プロドラッグが、シクロホスファミド(CP)および5-フルオロ-1-(テトラヒドロ-2-フルフリル)-ウラシルからなる群から選択される、請求項43記載の方法。
【請求項47】
(a)3次元細胞チップ、
(b)試験化合物チップ、および
(c)生細胞カウントの測定のためのデバイス
を含む、毒物学アッセイ用マイクロアレイプラットホーム。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−513160(P2009−513160A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538951(P2008−538951)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/042345
【国際公開番号】WO2007/053561
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(503126348)レンセレアー ポリテクニック インスティテュート (2)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】