説明

毛穴目立ち改善剤

【課題】
皮膚の表皮細胞に作用することにより、毛穴および毛穴開口の周辺部分を含めたすり鉢状構造を目立たなくさせることのできる毛穴目立ち改善剤を提供すること。
【解決手段】
L−アルギニン、リジン、ヒスチジンの塩基性アミノ酸から選ばれる1種または2種以上、酸性アミノ酸から選ばれる1種または2種以上、中性アミノ酸から選ばれる1種または2種以上、電解質から選ばれる1種または2種以上を含有し、pHを7.5〜8.0に維持することによって、特に毛穴開口の湾曲部分の膨潤を促し、毛穴周辺の皮溝を浅く目立たなくさせる毛穴目立ち改善剤。さらに糖転移ヘスペリジンを含むことを特徴とする毛穴目立ち改善剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の表皮細胞に作用することにより、毛穴および毛穴開口の周辺部分を含めたすり鉢状構造を目立たなくさせることのできる毛穴目立ち改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、あらゆる年代の女性の肌の悩みの上位を占める事項として、毛穴の目立ちがある。毛穴が目立つ原因としては、毛穴自体の大きさ、角栓の有無、毛穴開口周辺部分の凹み具合などが明らかな点で、毛穴目立ち改善策としては、収斂剤による毛穴部分の引き締めによる方法や、専用パック料を用いて、角栓自体を除去する方法が一般に使用されている。しかしながら、これらは一時的な対策であり、角栓が除去されても、皮脂の分泌により再び広げられ、結局短時間で元の状態と差が見られなくなるものが多い。
【0003】
さらに、ケラチノサイトを強く収縮させる成分を用いて、角栓を除去した後の毛穴を小さくし、毛穴自体が収縮することで目立たなくさせる毛穴収縮剤も幾つか報告がある。
【0004】
活性型ビタミンD3又はその誘導体を有効成分とする毛穴目立ち改善剤と、活性型ビタミンD3又はその誘導体を有効成分とする毛穴収縮剤(特許文献1)、グリシン誘導体、アミノジカルボン酸誘導体、アシルアミノジカルボン酸誘導体、ピロリジンカルボン酸誘導体、ピペリジンカルボン酸誘導体、ヘキサメチレンイミンカルボン酸誘導体及びβ−アラニン誘導体並びに前記各誘導体の塩からなる群から選ばれる化合物の1種又は2種以上からなる不全角化抑制剤、毛穴縮小剤(特許文献2)、サンキライ、シャゼンシ、ボウイ、ボウフウ、マオウ、コンズランゴ、グレープフルーツ、ブクリョウ、ブドウ、マンネンロウ、ローマカミツレ、ケイカン及びセイヨウネズからなる群から選ばれる1種以上の植物若しくはその抽出物、トサカ抽出物及び/又はトレハロースを含有するケラチノサイト収縮促進剤又は毛穴収縮剤(特許文献3)などの報告がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−339120
【特許文献2】特開2005−179342
【特許文献3】特開2007−161666
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、毛穴が目立つメカニズムは未だ明らかでなく、収斂剤や角栓除去剤、毛穴収縮剤による方法に加え、さらに効果的な方法が望まれている。毛穴の収縮現象だけでは解決できない新たな対策による毛穴目立ち改善剤が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
毛穴が目立つ原因としては、(1)毛穴自体の大きさ、(2)汚れた角栓の有無、(3)毛穴開口周辺部分の凹み、が知られている。本発明者は、これら以外に、(4)毛穴開口部分の湾曲具合と、毛穴周辺の皮膚が光沢を有することによる光学的な目立ち、(5)毛穴につながる皮溝の深さ、に着目した。特に(4)(5)の要因に着目した例はなく、これらは従来の毛穴の収縮とは無関係な点に着目したものである。つまり本発明は、収縮とは逆の、毛穴周辺部分の表皮の膨潤現象に着目したもので、表皮を柔らかくし、水分を充分に保持させることにより、最終的に毛穴自体を目立たなくさせるというものである。また表皮の膨潤は、結局(1)の毛穴自体の大きさにも影響し、有効であることが確認されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(D);
(A)L−アルギニン、リジン、ヒスチジンの塩基性アミノ酸から選ばれる1種または2種以上
(B)酸性アミノ酸から選ばれる1種または2種以上
(C)中性アミノ酸から選ばれる1種または2種以上
(D)電解質から選ばれる1種または2種以上
を含有し、pHを7.5〜8.0に維持することによって、毛穴開口の湾曲部分の膨潤を促し、毛穴周辺の皮溝を浅くして、毛穴周辺部分を含めたすり鉢状構造を呈した、毛穴全体を目立たなくさせることを見出し、本発明の毛穴目立ち改善剤を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明の毛穴目立ち改善剤は、皮膚の表皮細胞に作用することにより、毛穴および毛穴開口の周辺部分を含めたすり鉢状構造を目立たなくさせる効果に優れるものであり、特に角栓除去後のケアに有効な皮膚外用剤を提供できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、風呂上り時の肌のように、皮膚が水分を充分に保持して膨潤した状況では、毛穴開口の周辺部分がふっくらし、毛穴自体も小さくなり、さらに毛穴開口部分の脇にあたる湾曲部分を含めた皮膚が光沢を失い、毛穴全体が目立たなくなっていることで見出したものである。皮膚をこのような状況に近づける方法として鋭意検討した結果、(A)成分としてL−アルギニン、リジン、ヒスチジンの塩基性アミノ酸から選ばれる1種または2種以上と、(B)成分として酸性アミノ酸から選ばれる1種または2種以上、(C)成分として中性アミノ酸から選ばれる1種または2種以上、(D)成分として電解質から選ばれる1種または2種以上を含有し、pHを7.5〜8.0に調製した毛穴目立ち改善剤を継続的に使用することが、最も有効であることがわかったものである。
【0011】
本発明に用いられる塩基性アミノ酸としては、L−アルギニン、リジン、ヒスチジンから選択されるものが好ましく、特にL−アルギニンが好ましい。これら塩基性アミノ酸、いわゆる弱塩基成分は、pHを7.5〜8.0を呈する上で、重要な役割を果たし、さらに皮膚を柔軟にし、水分を保持しやすくするのに効果を発するもので、毛穴目立ち改善剤中の配合量としては、0.05〜6質量%が好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましい。0.05質量%以下では、充分な皮膚の柔軟効果が見られない。また、6質量%以上では、べたつき、不快な使用感の原因となり、継続使用が困難になる傾向にある。
【0012】
本発明に用いられる酸性アミノ酸は、グルタミン酸及び/またはアスパラギン酸、また中性アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンから選ばれる1種または2種以上であればよい。これらの配合量は、毛穴目立ち改善剤中に0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がさらに好ましい。0.05質量%以下では、充分な皮膚の膨潤効果が見られず、その保持効果も維持されにくい。また、5質量%以上では、これら成分の匂いやべたつきが肌に不快感を生じてしまう傾向にある。これらは単独使用より、複数成分の混合物である方がさらに好ましい。
【0013】
本発明に用いられる電解質としては、塩酸、リン酸、炭酸、硫酸などの無機酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、及びクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸などの有機酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウムが特に好ましい。電解質はpH緩衝剤、保湿剤、収斂剤として肌に有効に作用するもので、特に本発明の毛穴目立ち改善剤のpHを7.5〜8.0に安定化させるのに、pH緩衝剤として重要な役割を果たしている。毛穴目立ち改善剤中の配合量としては、0.02〜3質量%が好ましく、0.05〜1質量%がさらに好ましい。0.02質量%以下では、充分な緩衝作用を発揮されず、3質量%以上では、作用効果が向上することなく、不快な使用感の原因となりやすい。
【0014】
さらに本発明の毛穴目立ち改善剤には、糖転移ヘスペリジンを配合することにより、顕著な毛穴目立ち改善効果が得られる。糖転移ヘスペリジンとしてはα-グルコシルヘスペリジンが好ましい。α-グルコシルヘスペリジンは、ヘスペリジンに糖を結合させ、水溶性を向上させた糖転移ビタミンPで、外用剤においては、特に血行促進剤としての利用が知られている。本発明において、糖転移ヘスペリジンとしてα-グルコシルヘスペリジンをさらに含むことによって、毛穴周辺部分の表皮の膨潤を促し、表皮を柔らかくし、水分を保持させる効果に優れることが確認された。そのため、毛穴開口部の湾曲部分を含めた皮膚の光沢を解消させ、さらに毛穴だけでなく、毛穴につながる皮溝を目立たなくする効果を発揮する。毛穴目立ち改善剤中の配合量としては、0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がさらに好ましい。
【0015】
また、本発明の毛穴目立ち改善剤にはエタノールを含まないことが好ましい。エタノールは一般に収斂効果を有することから、毛穴を収縮させ、皮脂等の分泌を抑制することを期待して、配合することが一般的であるが、本発明においては、皮膚を柔軟に保つことが重要であり、このため返って含まないほうが、毛穴周辺部分の表皮の膨潤を促し、表皮を柔らかくし、水分を保持させる上では好ましい。
【0016】
本発明においては、毛穴目立ち改善剤の電気伝導度が20℃で0.3〜3.5m/Sの範囲であるとき、本発明の毛穴目立ち改善剤の効果が顕著に発揮され、毛穴を目立たなくする効果に優れた毛穴目立ち改善剤を得ることができる。この範囲であれば、毛穴および毛穴開口の周辺部分を含めたすり鉢状構造を目立たなくさせる十分な効果を得ることができる。
【0017】
なお、本発明において、毛穴目立ち改善剤の電気伝導度は、電気伝導率計CM−25R(東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて測定した。
【0018】
本発明の毛穴目立ち改善剤には、上記必須成分以外に、他の成分として、例えば、油剤、界面活性剤、水溶性高分子、皮膜形成剤、ゲル化剤、樹脂、保湿剤、防腐剤、抗菌剤、香料、金属封鎖剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、植物抽出成分等を本発明の効果を損なわない範囲にて含有することができる。
【0019】
本発明の毛穴目立ち改善剤の形態としては、水溶液系、水分散液系、水中油型乳化系が好ましく、特に水溶液系、水分散液系において本発明の効果が顕著に発揮されやすい。
【0020】
次に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0021】
表1に本発明品である実施例1〜3、および比較例1〜3の水溶液系毛穴目立ち改善剤を示す。
【実施例】
【0022】
水溶液系毛穴目立ち改善剤
【表1】


【0023】
[評価方法]
本発明品である実施例1〜3、および比較例1〜3の各試料について、20〜37歳の男女10名の専門パネルを用いて評価を実施した。まず毛穴に蓄積した角栓を、専用パックを用いて除去した後、各試料を片方の頬に朝夕40mgずつ、7日間塗布して、表1に示した項目について評価した。電気伝導度は、電気伝導率計CM−25R(東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて測定し、測色値はミノルタ測色計CR−13を用いて測定し、明度を表すL*値の差(△L*値)にて評価した。毛穴が目立たない肌のほうが、L*値が高めに測定される。毛穴の目立ちにくさについて、以下の基準にて官能評価を実施した。下記に示す3段階の絶対評価基準を用いた。表1には評価点の平均値を示す。
【0024】
(毛穴の大きさ)
塗布前後の肌を写真撮影し、写真判定と目視判断の両方にて、次の3段階にて比較評価した。
評価1:変化なし
評価2:やや小さくみえる
評価3:小さく見える
【0025】
(毛穴開口凹み周辺部分の光沢感)
毛穴開口部の凹みの周辺部分について光沢感を評価した。
評価1:変化なし
評価2:光沢が弱くなった
評価3:あきらかに光沢が改善された
【0026】
(毛穴周辺部分の皮溝の目立ち難さ)
毛穴周辺部分の皮溝について、目立ちの度合いを評価した。
評価1:変化なし
評価2:やや目立ちにくくなった
評価3:あきらかに目立たなくなった
【0027】
(毛穴の目立ちにくさについての総合評価)
評価1:変化なし
評価2:やや改善された
評価3:あきらかに改善された
【0028】
表1より、実施例1〜3の本発明の毛穴目立ち改善剤は、明らかに毛穴を目立ちにくく改善する効果に優れることがわかった。それに対し、比較品は、改善効果が見られないことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D);
(A)L−アルギニン、リジン、ヒスチジンの塩基性アミノ酸から選ばれる1種または2種以上
(B)酸性アミノ酸から選ばれる1種または2種以上
(C)中性アミノ酸から選ばれる1種または2種以上
(D)電解質から選ばれる1種または2種以上
を含有し、pHが7.5〜8.0であることを特徴とする毛穴目立ち改善剤。
【請求項2】
酸性アミノ酸がグルタミン酸及び/またはアスパラギン酸、中性アミノ酸がグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンから選ばれる1種または2種以上である請求項1記載の毛穴目立ち改善剤。
【請求項3】
さらに(E)糖転移ヘスペリジンを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の毛穴目立ち改善剤。
【請求項4】
さらにエタノールを含まないことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の毛穴目立ち改善剤。
【請求項5】
20℃での電気伝導度が0.3〜3.5S/mであることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の毛穴目立ち改善剤。

【公開番号】特開2010−270007(P2010−270007A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120521(P2009−120521)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(308021914)株式会社ウインド&ウェーブ (2)
【Fターム(参考)】