説明

毛髪の染色方法

【課題】染毛力を維持しながら、優れた地肌汚れ防止効果を発揮できる毛髪の染色方法を提供する。
【解決手段】毛髪の染色方法において、(A)芳香族アルコール、(B)カチオン性界面活性剤、(C)水溶性高分子化合物、(D)酸性染料、及び(E)全量に対し75質量%以上の水、を含有する染毛料を使用して毛髪を染色することを特徴とする。さらに、前記染毛料は、(E)炭素数1〜3の一価アルコール、グリコール類、グリセリン類、及びジエチレングリコール低級アルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の有機溶剤を0.1〜5.0質量%配合してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の染毛料を使用して毛髪を染色する毛髪の染色方法に関し、詳しくは十分な染毛力を維持しながら、地肌汚れ防止効果の向上を図ることができる毛髪の染色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、酸性染料を含有する半永久染毛料として使用される酸性染毛料が知られている。一方、アルカリ剤の働きで酸化染料を毛髪のキューティクル内部に浸透させ、酸化剤でメラニン色素の分解と染料の発色を行わせる酸化染毛剤が知られている。酸性染毛料は、コルテックスのごく浅い部分に染料をイオン結合させて発色させる。そのため、酸性染毛料は、毛髪へのダメージを酸化染毛剤に比べて抑制することができるというメリットがある。ところで、従来より、洗髪後の毛髪の感触を向上させるためにカチオン性界面活性剤又はカチオン性高分子を配合する構成が知られている。しかしながら、カチオン性化合物と酸性染料を併用すると複合体が形成され、製剤の安定性が低下し、それに伴い染毛力も低下するという問題が発生した。
【0003】
そこで、従来より、特許文献1に記載されるような酸性染毛料が知られている。特許文献1には、酸性染毛料において染毛力を向上させるために芳香族アルコール、例えばベンジルアルコールを配合する。また、製剤の安定性を向上させるためにポリアクリル酸ナトリウムを配合する。
【特許文献1】特開平10−287535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示される酸性染毛料は、染毛力は幾分向上するものの、染毛処理時における地肌汚れを防止することができないという問題が発生した。その一方で、地肌汚れを防止するために単に酸性染料又は芳香族アルコールの配合量を低下させると、染毛力が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、芳香族アルコールとカチオン性界面活性剤を含有する染毛料において、水溶性高分子化合物及び全量に対し75質量%以上の水を配合することにより十分な染毛力を維持しながら、優れた地肌汚れ防止効果を発揮できることを見出したことによりなされたものである。その目的とするところは、染毛力を維持しながら、優れた地肌汚れ防止効果を発揮できる毛髪の染色方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の毛髪の染色方法は、(A)芳香族アルコール、(B)カチオン性界面活性剤、(C)水溶性高分子化合物、(D)酸性染料、及び(E)全量に対し75質量%以上の水、を含有する染毛料を使用して毛髪を染色することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の毛髪の染色方法において、前記染毛料は、さらに(F)炭素数1〜3の一価アルコール、グリコール類、グリセリン類、及びジエチレングリコール低級アルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の有機溶剤を0.1〜5.0質量%配合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、染毛力を維持しながら、優れた地肌汚れ防止効果を発揮できる毛髪の染色方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の毛髪の染色方法を具体化した実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の毛髪の染色方法は、(A)芳香族アルコール、(B)カチオン性界面活性剤、(C)水溶性高分子化合物、(D)酸性染料、及び(E)全量に対し75質量%以上の水、を含有する染毛料が使用される。染毛料には、例えば(F)炭素数1〜3の一価アルコール、グリコール類、グリセリン類、及びジエチレングリコール低級アルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の有機溶剤を0.1〜5.0質量%配合してもよい。
【0010】
(A)芳香族アルコールは、毛髪浸透剤としての役割を有し、染毛料の染毛力を向上させる。芳香族アルコールとしては、例えばベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコール、フェニルプロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、フェニルジグリコール、α−メチルベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール、及びp−アニシルアルコールが挙げられる。染毛料中における芳香族アルコールの配合量は、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1.0〜8.0質量%である。配合量が0.5質量%未満であると染毛力の向上効果が得られないおそれがある。一方、配合量が10質量%を超えると染毛料の粘度が低下し、塗布時に毛髪から垂れ落ちるおそれがある。
【0011】
(B)カチオン性界面活性剤は、地肌汚れ防止及び感触向上の観点から配合される。カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩、アルケニルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ジアルケニルジメチルアンモニウム塩、ラノリン脂肪酸アミドプロピルエチルジメチルアンモニウム、アルキロイルアミドプロピルジメチルアミン、アルキルピリジニウム塩、及びベンザルコニウム塩が挙げられる。これらの界面活性剤のカチオン基の対イオンとしては、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、アルキル硫酸イオン、及びサッカリンが挙げられる。アルキルトリメチルアンモニウム塩としては、例えば塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムが挙げられる。アルキルピリジニウム塩としては、例えばラウリルピリジニウムクロリドが挙げられる。ベンザルコニウム塩としては、例えば塩化ベンザルコニウムが挙げられる。染毛料中におけるカチオン性界面活性剤の配合量は、好ましくは0.01〜2質量%、より好ましくは0.05〜1.5質量%である。配合量が0.01質量%未満であると十分な地肌汚れ防止及び感触向上効果が得られないおそれがある。一方、配合量が2質量%を超えると十分な染毛力が得られないおそれがある。
【0012】
(C)水溶性高分子化合物は、(B)カチオン性界面活性剤とともに染毛力向上効果及び感触向上効果を発揮する。また、増粘効果を有するため、染毛料の保存時における安定性に寄与する。水溶性高分子化合物としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性、及び両性の天然又は合成高分子が使用可能である。アニオン性高分子としては、例えばアラビアガム、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、変性キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリルアミド、アクリルアミド・アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体、アクリル酸塩・アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体が挙げられる。カチオン性高分子としては、例えばカチオン化グアーガム、ポリクオタニウム−4、ポリクオタニウム−6、ポリクオタニウム−7、ポリクオタニウム−10、及びポリクオタニウム−11が挙げられる。非イオン性高分子としては、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストリン、グアーガム、及びポリビニルピロリドンが挙げられる。両性高分子としては、例えばポリクオタニウム−39、及びポリクオタニウム−47が挙げられる。これらの中でも、(B)カチオン性界面活性剤と複合体を形成し、酸性染料を水中へ適度に分配する効果がより高く、染毛力向上効果に優れるアニオン性高分子が好ましい。染毛料中における水溶性高分子化合物の配合量は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜8.0質量%である。配合量が0.1質量%未満であると十分な染毛力向上効果及び感触向上効果が得られない。一方、配合量が10質量%を超えて配合すると毛髪の感触の低下を招くおそれがある。
【0013】
また、染毛料中における(C)水溶性高分子化合物、及び(B)カチオン性界面活性剤の質量比((C)/(B))は0.05〜1000であることが好ましく、0.33〜160であることがより好ましい。質量比を0.05〜1000に規定することにより、髪質が異なる場合でも染毛力の低下を防止することができる。また、肌質が異なる場合でも地肌汚れ防止効果の低下を抑制することができる。
【0014】
(D)酸性染料は、毛髪を染色するために配合される。この酸性染料は、反応性がなく、それ自体で発色可能なものを示す。酸性染料としては、例えばニトロ染料、アゾ染料、ニトロソ染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、キノリン染料、アントラキノン染料、及びインジゴ染料が挙げられる。より具体的には、「医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令」(昭和41年告示、厚生省)により定められたものが挙げられる。例えば、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色201号、赤色227号、赤色230号の(1)、赤色230号の(2)、赤色231号、赤色232号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、黄色402号、黄色403号の(1)、黄色406号、黄色407号、だいだい色205号、だいだい色207号、だいだい色402号、緑色3号、緑色204号、緑色205号、緑色401号、緑色402号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色202号、青色203号、青色205号、かっ色201号、及び黒色401号が挙げられる。染毛料中における酸性染料の配合量は、0.01〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜2.0質量%である。配合量が上記の範囲外であっても、本発明の効果は得られるが、0.01質量%未満では染毛効果が弱く、5.0質量%を超えてもそれ以上の染毛効果は向上しにくくなる。
【0015】
(E)組成物の全量に対し75質量%以上の水は、染毛力及び地肌汚れ防止効果を共により向上させるために配合され、好ましくは75質量%以上90質量%未満であり、より好ましくは80質量%以上90質量%未満である。配合量が75質量%未満であると、毛髪浸透剤である(A)芳香族アルコールの配合量が相対的に多くなり、染毛力と共に地肌汚れ防止効果を著しく低下させる。
【0016】
染毛料は、染毛力をより向上させるために(F)炭素数1〜3の一価アルコール、グリコール類、グリセリン類、及びジエチレングリコール低級アルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の有機溶剤を0.1〜5.0質量%配合することが好ましい。炭素数1〜3の一価アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、及びイソプロパノールが挙げられる。グリコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、ヘキシレングリコール、及び1,3−ブチレングリコールが挙げられる。グリセリン類としては、例えばグリセリン、ジグリセリン、及びポリグリセリンが挙げられる。ジエチレングリコール低級アルキルエーテルとしては、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)が挙げられる。これらの有機溶剤の染毛料中における配合量は、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.5〜3.0質量%であることがより好ましい。0.1質量%未満では染毛力向上効果が弱く、5.0質量%を超えてもそれ以上の染毛向上効果は得られにくくなる。
【0017】
染毛料は、さらに地肌汚れ防止効果及び染毛力を向上させるために(G)ノニオン性界面活性剤、又は(H)炭素数16〜22の高級アルコールが配合されることが好ましい。(G)ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルサッカライド界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸アルカノールアミド、ポリエーテル変性シリコーン、及びアルキルアミンオキサイドが挙げられる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えばラウレス(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、セテス(ポリオキシエチレンセチルエーテル)、ステアレス(ポリオキシエチレンステアリルエーテル)、オレス(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)及びパレスが挙げられる。染毛料中における(G)ノニオン性界面活性剤の配合量は、好ましくは0.01〜3質量%、より好ましくは0.05〜3質量%である。配合量が0.01質量%未満であると地肌汚れ防止効果をより向上させることができない。一方、配合量が3質量%を超えてもそれ以上の地肌汚れ防止効果は得られない。
【0018】
(H)炭素数16〜22の高級アルコールとしては、炭素鎖の形態として直鎖及び分岐、炭素間結合の形態として飽和及び不飽和、幾何異性としてシス型及びトランス型、並びに第1級アルコール〜第3級アルコールのいずれも使用することができる。炭素数16〜22の高級アルコールとしては、好ましくは、セチルアルコール(セタノール)、2−ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、及び2−オクチルドデカノールが挙げられる。炭素数16〜22の高級アルコール以外の高級アルコールの場合、染毛力をより向上させる効果が得られない。染毛料中における炭素数16〜22の高級アルコールの配合量は、好ましくは0.5〜7.0質量%、より好ましくは1.0〜5.0質量%である。配合量が0.5質量%未満であると染毛力の向上効果が得られない。一方、配合量が7質量%を超えてもそれ以上の染毛力の向上効果は得られない。
【0019】
また、染毛料中に配合される各成分に関し、さらに下記の式(1)及び(2)を満たすことが好ましい。式(1):X=(a+h)/(b+g)。式(2):0.20≦X≦850、より好ましくは0.57≦X≦130。式中aは染毛料中の(A)芳香族アルコールの質量、hは(H)炭素数16〜22の高級アルコールの質量、bは成分(B)カチオン性界面活性剤の質量、gは成分(G)ノニオン性界面活性剤の質量を示す。Xの値を0.20≦X≦850の範囲内とすることにより、髪質が異なる場合でも染毛力を安定して得ることができる。また、肌質が異なる場合でも地肌汚れ防止効果を安定して得ることができる。
【0020】
染毛料は、本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じて、例えば上記以外の毛髪浸透剤、上記以外の油性成分、上記以外の界面活性剤、糖類、防腐剤、安定剤、pH調整剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、香料、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤から選ばれる少なくとも一種を含有してもよい。
【0021】
毛髪浸透剤としては、例えば炭素数4〜8の一価アルコール、エチレングリコールアルキルエーテル、環状アルコール、及び低級アルキレンカーボネートが挙げられる。炭素数4〜8の一価アルコールとしては、例えばn−ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、及びn−オクタノールが挙げられる。エチレングリコールアルキルエーテルとしては、例えばエチレングリコールモノn−ブチルエーテルが挙げられる。環状アルコールとしては、例えばシクロヘキサノールが挙げられる。低級アルキレンカーボネートとしては、例えば炭酸エチレン、及び炭酸プロピレンが挙げられる。
【0022】
油性成分は、毛髪にうるおい感を付与する。そのため染毛料は、好ましくは油性成分を含有する。油性成分としては、例えば油脂類、ロウ類、成分(H)に該当しない高級アルコール、炭化水素類、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル類、及び成分(G)に該当しないシリコーン類が挙げられる。
【0023】
油脂類としては、例えばオリーブ油、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、及び月見草油が挙げられる。ロウ類としては、例えばミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、及びラノリンが挙げられる。高級アルコールとしては、例えばラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、デシルテトラデカノール、及びラノリンアルコールが挙げられる。
【0024】
炭化水素としては、例えばパラフィン、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、スクワラン、ポリブテン、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、及びワセリンが挙げられる。高級脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、及びラノリン脂肪酸が挙げられる。アルキルグリセリルエーテルとしては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、及びイソステアリルグリセリルエーテルが挙げられる。
【0025】
エステル類としては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、脂肪酸(C10−30)(コレステリル/ラノステリル)、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、及びコハク酸ジオクチルが挙げられる。
【0026】
シリコーン類としては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、平均重合度が650〜10000の高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、及びフッ素変性シリコーンが挙げられる。これらの油性成分の具体例は単独で使用されてもよく、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0027】
界面活性剤は、乳化剤又は各成分の可溶化剤として染毛料の安定性を保持するために好適に配合される。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、例えばアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、及びスルホコハク酸エステルが挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンとしては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、及びトリエタノールアミンが挙げられる。アルキル硫酸塩としては、例えばラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。両性界面活性剤としては、例えばココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、及びラウリルベタイン(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)が挙げられる。これらの界面活性剤の具体例は、単独で使用されてもよく、二種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0028】
糖類としては、例えばソルビトール、及びマルトースが挙げられる。防腐剤としては、例えばパラベンが挙げられる。安定剤としては、例えばフェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、及びタンニン酸が挙げられる。pH調整剤としては、例えば乳酸、グリコール酸、酒石酸、リンゴ酸、ピロリドンカルボン酸(PCA)、コハク酸、クエン酸、グルタミン酸、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、トリエタノールアミン(TEA)、及びアルギニンが挙げられる。酸化防止剤としては、例えばアスコルビン酸、及び亜硫酸塩が挙げられる。
【0029】
染毛料の剤型は特に限定されず、例えば液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状が挙げられる。液状としては、例えば水溶液、分散液、及び乳化液が挙げられる。上記染毛料の毛髪への塗布方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜使用することができる。例えばコーム又は刷毛を用いた塗布方法、手櫛による塗布方法、スプレー(噴霧)による塗布方法を挙げることができる。上記染毛料を用いた毛髪の染色方法は特に限定されず、一回の塗布染色作業により染毛する方法であってもよく、また、繰り返しの塗布染色作業により徐々に染毛する徐染性の毛髪の染色方法に適用してもよい。
【0030】
本実施形態の毛髪の染色方法によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、(A)芳香族アルコール、(B)カチオン性界面活性剤、(C)水溶性高分子化合物、(D)酸性染料、及び(E)全量に対し75質量%以上の水を含有する染毛料を使用して毛髪を染色した。したがって、染毛力を維持しながら、優れた地肌汚れ防止効果を発揮できる。
【0031】
(2)本実施形態では、(A)芳香族アルコール、(B)カチオン性界面活性剤、(C)水溶性高分子化合物、(D)酸性染料、及び(E)全量に対し75質量%以上の水を含有する染毛料を使用して毛髪を染色した。したがって、染毛処理後の毛髪の感触を向上させることができる。
【0032】
(3)本実施形態では、染毛料において、好ましくはさらに(F)炭素数1〜3の一価アルコール、グリコール類、グリセリン類、及びジエチレングリコール低級アルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の有機溶剤を0.1〜5.0質量%配合する。したがって、染毛力をより向上させることができる。
【0033】
(4)本実施形態では、染毛料において、好ましくはさらに(G)ノニオン性界面活性剤が含有される。したがって、地肌汚れ防止効果をより向上させることができる。
(5)本実施形態では、染毛料において、好ましくはさらに(H)炭素数16〜22の高級アルコールが含有される。したがって、染毛力をより向上させることができる。
【0034】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、上記染毛料を構成する各成分を全て配合する1剤式として構成した。しかしながら、各成分を分離して複数剤式に構成し、使用直前にそれらを混合するよう構成してもよい。
【実施例】
【0035】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
表1〜3に示される各成分を混合して各実施例及び比較例の毛髪の染色方法で使用される染毛料を調製した。得られた染毛料を毛束に刷毛を用いて塗布し、30℃で30分放置した後、通常のシャンプーにて洗浄し、次いで乾燥させることにより染毛処理毛束とした。かかる染毛処理毛束について、染毛力及び毛髪の感触について評価を行った。また、頭皮における地肌汚れについても評価した。それらの評価結果を表1〜3に示す。なお、表1〜3における各成分の配合を示す数値の単位は質量%である。また、表中「成分」欄における(A)〜(H)の表記は、本願請求項及び発明の詳細な説明中に記載の各成分に対応する化合物を示す。一方、表2「成分」欄における(a),(b)の表記は、本願請求項記載の各成分の対比化合物を示す。
【0036】
<染毛力>
各実施例及び比較例の染毛処理毛束について、パネラー20名が標準光源下で目視にて発色度合いを評価することにより、発色が良いか否かを判断した。パネラー20人中「良い」と答えた人が17人以上を評価5、パネラー20人中「良い」と答えた人が13〜16人を評価4、パネラー20人中「良い」と答えた人が9〜12人を評価3、パネラー20人中「良い」と答えた人が5〜8人を評価2、パネラー20人中「良い」と答えた人が2〜4人を評価1、パネラー20人中「良い」と答えた人が0〜1人を評価0とした。
【0037】
<地肌汚れ防止効果>
各実施例及び比較例の染毛料を用い、頭皮に薬液が付着するようモデルの頭髪に染毛処理を行ない、処理後の頭皮について、パネラー20名が標準光源下で目視にて皮膚の汚れ具合を評価することにより、地肌汚れ防止効果が良いか否かを判断した。パネラー20人中「良い」と答えた人が17人以上を評価5、パネラー20人中「良い」と答えた人が13〜16人を評価4、パネラー20人中「良い」と答えた人が9〜12人を評価3、パネラー20人中「良い」と答えた人が5〜8人を評価2、パネラー20人中「良い」と答えた人が2〜4人を評価1、パネラー20人中「良い」と答えた人が0〜1人を評価0とした。
【0038】
<毛髪の感触>
各実施例及び比較例の染毛処理毛束について、パネラー20名が手で触れることにより、感触が良いか否かを判断した。パネラー20人中「良い」と答えた人が17人以上を評価5、パネラー20人中「良い」と答えた人が13〜16人を評価4、パネラー20人中「良い」と答えた人が9〜12人を評価3、パネラー20人中「良い」と答えた人が5〜8人を評価2、パネラー20人中「良い」と答えた人が2〜4人を評価1、パネラー20人中「良い」と答えた人が0〜1人を評価0とした。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

表1,3に示されるように、(A)芳香族アルコール、(B)カチオン性界面活性剤、(C)水溶性高分子化合物、(D)酸性染料及び(E)全量に対し75質量%以上の水が配合される各実施例は、各評価項目において評価4以上の結果であることが確認される。また、(F)有機溶剤としてエタノールを3質量%配合される実施例1〜11は、染毛力、地肌汚れ防止効果、感触のいずれの評価も5となり、特に優れた結果が得られた。
【0042】
また、表2に示されるように芳香族アルコールを含有しない比較例1は、染毛力が得られないことが確認される。芳香族アルコールの代わりに低級アルコールのみを含有する比較例2,3は、染毛力が得られないことが確認される。
【0043】
カチオン性界面活性剤を含有しない比較例4は、特に地肌汚れ防止効果の評価が低いことが確認される。また、毛髪の感触の評価も低下していることが確認される。カチオン性界面活性剤の代わりに両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及びカチオン性ポリマーをそれぞれ含有する比較例5〜7は、染毛力、地肌汚れ防止効果及び感触のいずれの評価も低いことが確認される。さらに、組成物全量に対し75質量%以上の水が配合されていない比較例8,9は、地肌汚れ防止効果の評価が低いことが確認される。
【0044】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(a)前記染毛料は、さらに(G)ノニオン性界面活性剤を含有することを特徴とする前記毛髪の染色方法。
【0045】
(b)前記染毛料は、さらに(H)炭素数16〜22の高級アルコールを含有することを特徴とする前記毛髪の染色方法。
(c)前記染毛料は、下記の式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする前記毛髪の染色方法。式(1):X=(a+h)/(b+g)。式(2):0.57≦X≦130。式中aは染毛料中の(A)芳香族アルコールの質量、hは(H)炭素数16〜22の高級アルコールの質量、bは成分(B)カチオン性界面活性剤の質量、gは成分(G)ノニオン性界面活性剤の質量を示す。
【0046】
(d)前記染毛料は、(C)水溶性高分子化合物、及び(B)カチオン性界面活性剤の質量比((C)/(B))が0.33〜160であることを特徴とする前記毛髪の染色方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香族アルコール、(B)カチオン性界面活性剤、(C)水溶性高分子化合物、(D)酸性染料、及び(E)全量に対し75質量%以上の水、を含有する染毛料を使用して毛髪を染色することを特徴とする毛髪の染色方法。
【請求項2】
前記染毛料は、さらに(F)炭素数1〜3の一価アルコール、グリコール類、グリセリン類、及びジエチレングリコール低級アルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種の有機溶剤を0.1〜5.0質量%配合することを特徴とする請求項1に記載の毛髪の染色方法。

【公開番号】特開2009−203210(P2009−203210A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50105(P2008−50105)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】