説明

毛髪処理剤組成物

【課題】
本発明は、処方物本来の起泡性、粘度等の基本性能を低下させることなく、低コストで配合上の特別な配慮も必要とせずにコンディショニング性能に優れた毛髪処理剤組成物を提供すること。
【解決手段】
毛髪処理剤組成物に、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩を配合する。
【化1】



[式中、Rは炭素数16〜22のアルケニル基を表す。AOは、炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖状のオキシアルキレン基を表す。nはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり1〜10の数を表す。Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム及びアルカノールアンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起泡性や粘度等の基本物性を損ねることなく優れたコンディショニング性能を有する毛髪処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプー等の毛髪処理剤組成物は、元来毛髪および頭皮の汚れを落とし清浄にすることが目的であり古くは石けんが使用されていたが、石油化学の進歩とともにアルキルベンゼンスルホン酸塩やアルキル硫酸塩のような合成界面活性剤が使われるようになった。やがて、それらの持つ刺激性が問題となるにつれて、アルキルエーテル硫酸塩が主流となったが、洗浄力には優れる反面、毛髪表面の必要な油分までも洗い流してしまうことになり、すすぎ時のきしみ感等の不快な感触の要因となっている。このような使用時の不快感を改善するため、油性物質、カチオン界面活性剤、カチオン性高分子あるいはシリコン誘導体等を添加するなどの配合技術により様々な毛髪処理剤組成物が開発されてきた。
【0003】
しかしながら、これらの配合技術にも一長一短があり、例えば、カチオン性高分子は、アニオン界面活性剤との錯体を形成してすすぎ時に析出して毛髪上に吸着し、この際に適度なぬるつき感が得られることからシャンプーに広く配合されているが、粘度に対する影響が大きすぎたり、毛髪上に蓄積するために使用し続けると毛髪がごわつくなどの問題がある。シリコン誘導体は、使用感を改善する効果が非常に高いが、水不溶性であるため安定に配合することが困難である。水溶性のシリコン誘導体も開発されているが、コンディショニング性能が劣る傾向が見られた。
【0004】
近年は、安全性や生分解性に優れ、使用感の良いアシルアミノ酸塩、アルキルエーテル酢酸塩、スルホコハク酸エステル塩などを主剤とするか或いは、アルキルエーテル硫酸塩と併用した毛髪処理剤組成物が、コンディショニング性に優れ、或いは低刺激性の毛髪処理剤組成物として提案されている。例えば、高純度或いは特定の分子量分布のアルキルエーテル酢酸又はその塩を含有する毛髪処理剤組成物が提案されている(特許文献1〜3)。
【0005】
しかし、このようなアルキルエーテル酢酸又はその塩を製造するためには、原料であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルを蒸留したり、又は特殊な触媒を用いてアルキレンオキシドの付加モル数分布をコントロールする必要があり、製造コストが高くなる欠点を有している。又、長鎖(炭素数16〜22)アルキル基を有するエーテル酢酸又はその塩は、比較的コンディショニング性に優れ、低刺激性ではあるものの、このものを配合した組成物の低温安定性や泡質などの物性を著しく悪化させる等の問題があり、満足できる性能を有しているとは言えないのが現状であった。
【0006】
【特許文献1】特開昭61−21199
【特許文献2】特開平5−214362
【特許文献3】特開平9−302381
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、起泡性、粘度などの毛髪処理剤組成物としての基本物性を損なうことなくコンディショニング性に優れた毛髪処理剤組成物を提供すること、及び、毛髪処理剤組成物にコンディショニング性能を付与する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、アニオン界面活性剤を主剤とする毛髪処理剤組成物(具体的にはシャンプー)にポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩を配合することにより、アニオン界面活性剤で毛髪を洗浄することにより生じるすすぎ時のきしみ感を著しく低減し、乾燥後の風合いも改善できることを見いだした。更にカチオン界面活性剤を主成分とした毛髪処理剤組成物(具体的にはリンス又はコンディショナー)に配合しても同様の効果が得られることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下の項目の発明を提供するものである。
【0010】
項1 一般式(1)
【化1】

[式中、Rは炭素数16〜22のアルケニル基を表す。AOは、炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖状のオキシアルキレン基を表す。nはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜10の数を表す。Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム及びアルカノールアンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。]
で表されるポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩を含有することを特徴とする毛髪処理剤組成物。
【0011】
項2 ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩が、植物性不飽和アルコール由来であることを特徴とする上記項1に記載の毛髪処理剤組成物。
【0012】
項3 ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩の含有量が0.05〜10重量%であることを特徴とする上記項1又は2に記載の毛髪処理剤組成物。
【0013】
項4 Rがオレイル基であることを特徴とする上記項1〜3のいずれかに記載の毛髪処理剤組成物。
【0014】
項5 毛髪処理剤組成物が、シャンプー、リンス又はコンディショナーである上記項1〜4のいずれかに記載の毛髪処理剤組成物。
【0015】
項6 毛髪処理剤組成物にコンディショニング性を付与する方法であって、毛髪処理剤組成物100重量%中に、一般式(1)
【化2】

[式中、Rは炭素数16〜22のアルケニル基を表す。AOは、炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖状のオキシアルキレン基を表す。nはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜10の数を表す。Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム及びアルカノールアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。]
で表されるポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩0.05〜10重量%を配合することを特徴とする方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、毛髪処理剤組成物に、特定ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩を配合することにより、起泡性、粘度等の毛髪処理剤の基本物性を損なうことなく、コンディショニング性に優れた毛髪処理剤組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩
本発明に係るポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩は、下記一般式(1)で表される。
【化3】



[Rは炭素数16〜22のアルケニル基を表す。AOは、炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖状のオキシアルキレン基を表す。nはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり1〜10の数を表す。Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又はアルカノールアンモニウムを表す。]
【0018】
上記ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩は従来公知の方法に従って製造することができる。例えば、不飽和アルコールを触媒存在下で、アルキレンオキシドと反応させて得られたポリオキシアルキレンアルケニルエーテルを、アルカリ金属アルコラートとした後、モノハロゲン化酢酸アルカリ金属塩を反応させる。次いで得られた反応粗物を水中で酸分解することにより、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸を得ることができる。さらに、所望の塩基で中和することにより、対応する塩を得ることができる。
【0019】
該不飽和アルコールとしては、分子内に少なくとも1個の不飽和基を有する炭素数16〜22の不飽和アルコールが例示され、具体的には、パルミトオレイルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、イコセニルアルコール、エルシルアルコーが挙げられる。
【0020】
又、天然の動植物油脂から得られる不飽和脂肪酸又はそのアルキルエステルを還元して得られる不飽和アルコールは、上記の不飽和アルコールの少なくとも1種を高い割合で含有しており、工業的な入手のし易さから推奨される。天然の動植物油脂の中でも、オリーブ油、キャノーラ油、サフラワー油、パーム油、ヤシ油或いはパーム核油等の植物油から得られる植物性不飽和アルコールを用いると、色相及びその安定性、低温特性や臭気等に優れる点から好ましく、特に、ヨウ素価88〜100、曇点が7℃未満かつ共役ジエン化合物の含有量が1重量%以下であるオレイルアルコールを主体とする植物性不飽和アルコールが推奨される。
【0021】
係る天然油脂から得られる不飽和アルコールは、一般的に不飽和アルコールを主成分とする、不飽和アルコールと飽和アルコールとの混合物である。本発明においては、このような混合物から得られるものであってもよいが、不飽和アルコールの含有量は、70重量%以上が好ましく、特に80重量%以上が推奨される。不飽和アルコールの含有量が70重量%未満のものを用いた場合には、得られるポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩の低温安定性が悪くなる傾向がある。
【0022】
オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が例示され、中でもオキシエチレン基が起泡性、水溶性、乳化性等の界面活性能に優れる点から推奨される。その平均付加モル数は1〜10の範囲であり、好ましくは1〜5、特に好ましくは2〜4の範囲が推奨される。係る範囲内において、優れたコンディショニング性能を得ることができる。
【0023】
一般式(1)のMで表される対イオンとしては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属;アンモニウム、;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアンモニウム等が例示される。この中でも、コンディショニング性、溶解性の点から水素原子又はアルカリ金属が好ましい。
【0024】
ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸及びその塩の好ましい具体例としては、前記の動植物油脂から得られた不飽和アルコール由来のポリオキシエチレンアルケニルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンパルミトオレイルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンオレイルエーテル酢酸、ポリオキシエライジルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンイコセニルエーテル酢酸、ポリオキシエルシルアルコールエーテル酢酸、動植物油脂から得られた不飽和アルコール由来のポリオキシエチレンアルケニルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンパルミトオレイルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエライジルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンイコセニルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエルシルアルコールエーテル酢酸ナトリウム、動植物油脂から得られた不飽和アルコール由来のポリオキシエチレンアルケニルエーテル酢酸カリウム、ポリオキシエチレンパルミトオレイルエーテル酢酸カリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル酢酸カリウム、ポリオキシエライジルエーテル酢酸カリウム、ポリオキシエチレンイコセニルエーテル酢酸カリウム、ポリオキシエルシルアルコールエーテル酢酸カリウムが挙げられる。
【0025】
上記のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩は、1種で又は2種以上を適宜組み合わせ用いることができる。
【0026】
毛髪処理剤組成物
本発明の毛髪処理剤組成物は、シャンプー、リンス、コンディショナー等の目的に応じた製品形態とするために、本発明に係るポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩の他に、水、エタノール、イソプロパノール等の溶剤、従来公知の界面活性剤、その他の添加剤等を配合することによって得ることができる。
【0027】
本発明に係るポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩の毛髪処理剤組成物に対する配合量は特に限定されないが、毛髪処理剤組成物中に0.05〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、特に好ましくは0.1〜3重量%の範囲で配合することが推奨される。毛髪処理剤組成物に対して0.05重量%より少ない場合は本発明で期待される効果が得られにくい傾向が見られる一方、10重量%を超えて配合すると、起泡力、粘度等の基本性能を損なう虞があり、さらにアルケニル基に由来する臭気への影響が比較的大きくなる傾向が見られる。
【0028】
本発明の毛髪処理剤組成物に使用される界面活性剤は特に限定されず、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤等従来公知の界面活性剤の中から任意に選ぶことができる。
【0029】
アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレン(エチレンオキシドの平均付加モル数=1〜10)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレン(エチレンオキシドの平均付加モル数=1〜10)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミドエーテル硫酸ナトリウム等の脂肪酸アミドエーテル硫酸塩;ラウリルスルホン酸ナトリウム等のアルカンスルホン酸塩;ポリオキシエチレン(エチレンオキシドの平均付加モル数=1〜10)スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム等のスルホコハク酸エステル塩;ポリオキシエチレン(エチレンオキシドの平均付加モル数=1〜10)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(エチレンオキシドの平均付加モル数=1〜10)トリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のアルキルエーテル酢酸塩;ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシントリエタノールアンモニウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム、ラウロイルメチルアラニントリエタノールアンモニウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアンモニウム、ラウロイルアスパラギン酸塩、ココイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシントリエタノールアンモニウム、ココイルメチルアラニンナトリウム、ココイルメチルアラニントリエタノールアンモニウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸カリウム、ココイルグルタミン酸トリエタノールアンモニウム、ココイルアスパラギン酸塩等のアシルアミノ酸塩;等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩を配合した毛髪処理剤組成物のコンディショニング性能を改善する効果が大きい点から好ましいアニオン界面活性剤として推奨される。これらのアニオン活性剤は、毛髪処理剤組成物の中でもシャンプー組成物に用いられることが多い。
【0030】
両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ミリスチルベタイン、ヤシ油アルキルベタイン等のアルキルベタイン;ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ミリスチン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等の脂肪酸アミドプロピルベタイン;ラウリルジメチルヒドロキシスルホベタイン、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン等のヒドロキシスルホベタイン;ラウリルアミノジプロピオン酸塩やラウリルアミノジ酢酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤;イミダゾリニウムベタイン(アミドアミノ酸型);アルキルアミンオキシド、脂肪酸アミドプロピルアミンオキシド等のアミンオキシド;等が例示される。これらは毛髪処理剤組成物の中でも、特にシャンプー組成物に用いられることが多い。
【0031】
カチオン界面活性剤としては、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンザルコニウム等の4級アンモニウム塩;ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドなどのアミドアミン類を有機酸、無機酸、酸性アミノ酸などで中和したもの等が例示される。これらの中でも、4級アンモニウム塩を配合した毛髪処理剤組成物のコンディショニング性能を改善する効果が大きい点から好ましいカチオン活性剤として推奨される。これらのカチオン界面活性剤は、毛髪処理剤組成物の中でも、特にリンス組成物、コンディショナー組成物に用いられることが多い。
【0032】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル;ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド、ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシプロピレンラウリン酸モノエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド;ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド等が例示される。
【0033】
また、上記界面活性剤の他に添加できる成分として、ミンク油、馬油、オリーブ油、ホホバ油、アボガド油等の動植物油類、流動パラフィンやスクワラン等の炭化水素油類、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のエステル油類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、オレイルセチルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール類、高級脂肪酸類、シリコーン誘導体やカチオン性ポリマー類等のコンディショニング性付与物質、プロピレングリコール、グリセリン、ブチレングリコール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等の保湿剤、ヒドロキシエチルセルロース等の粘度調整剤、pH調整剤、キレート剤、紫外線吸収剤、殺菌剤、防腐剤、酸化防止剤、パール光沢剤、香料、色素等が例示される。
【0034】
これらの界面活性剤及び各種添加剤類は、それぞれ1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0035】
また、本願発明は、毛髪処理剤組成物に対して、コンディショニング性能を付与する方法をも提供するものである。その方法としては、上記に記載した界面活性剤、添加剤及び水を含有する毛髪処理剤組成物100重量%中に、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩0.05〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、特に好ましくは0.1〜3重量%を配合することを特徴とする。
【0036】
ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩の配合方法には特に制限がなく、従来公知の方法に従って、毛髪処理剤組成物を製造する際に配合することができる。
【実施例】
【0037】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、実施例中の試料調製方法、試験方法は次の如くして行った。又、各例における試験組成物中の数値は、純分換算値での重量%を示す。
【0038】
[起泡性の測定方法]
人間の毛髪で作成した長さ20cm、重量30gの毛束を、常温の水道水に1時間以上浸漬して十分に膨潤させた。毛束を軽く絞り、水分を含んだ状態で55gになるように水の量を調整した。毛束にシャンプー組成物0.5gを塗布し、同じ機械力が掛かるようにしながら、同じ方向に向けて50回手で揉むようにして泡立てた。生成した泡及び毛束に残った泡を絞り取るようにして、全て500mlのビーカーに入れ、その体積を計量した。この操作を3回行い、その平均値を採用した。
【0039】
[動摩擦係数測定用テストピースの作成方法]
スライドガラス(76mm×26mm)の両端に両面テープを貼り、人毛20本を毛表皮の向きが同じ方向になるように等間隔で貼り付けた後、硬化エポキシ樹脂で固定して作成した。
【0040】
[動摩擦係数の測定方法]
松沢らの報告(Y Matsuzawa,N Mikami,J.Soc.Cosmet.Chem.Japan.,29,3,227(1995))に準じて測定した。即ち、ビーカー内で所定濃度(界面活性剤濃度1重量%)に希釈したシャンプー組成物200mLに、0.1規定の希塩酸水又は0.1規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pHを7.0±0.5に調整して試料溶液を得た。前記方法で作成したテストピースを、液温を35〜40℃に調整した試料溶液中に、撹拌しながら30秒間浸漬して、毛髪の洗浄工程とした。次いでテストピースを35〜40℃に加温した水500mL中に浸漬しながら30秒間撹拌し、すすぎ工程とした。この洗浄、すすぎ工程を合計3回繰り返し、3回目のすすぎ後5分後に、25℃、60%RHの恒温恒湿室内に設置した摩擦感テスター(型式KES−SE、カトーテック(株)製)を用いて、ウェット時の動摩擦係数を測定した。同様の方法で、3回の洗浄、すすぎ工程を行ったテストピースを前記恒温恒湿室内で24時間乾燥させた後、ドライ時の動摩擦係数を測定した。
【0041】
製造例1
パーム核油を加水分解して得られた不飽和脂肪酸(商品名「PALMAC750」、アシッドケム社製)を常法に従いメチルエステル化した。このメチルエステルを亜鉛−クロム酸化物触媒存在下、反応圧力20MPa、反応温度290℃の条件で接触水素化して、還元粗物を得た。続いて、該還元粗物を、銅−亜鉛−アルミニウム酸化物触媒存在下、反応温度150〜160℃、水素圧0.1〜0.2MPaで3時間反応を行った。冷却後、触媒を濾別して該還元物をビドマー型精留塔を備えたクライゼンフラスコに入れ、減圧蒸留を行った。前留分として仕込み量に対して6重量%留出させた後、主留分を流出させた。主留分が80重量%に達するまで蒸留を継続して、ヨウ素価90.9、曇点4.1℃、含有量89.9重量%のオレイルアルコールを得た。このオレイルアルコール100重量部に対して、水酸化カリウム0.1重量部を触媒として加えて、170℃で、エチレンオキシドを平均付加モル数が3モルとなるように付加させた。このポリオキシエチレン(n=3:但しnは、エチレンオキシドの平均付加モル数、以下同じ。)オレイルアルコール1モルに対して、水酸化ナトリウム1.2モルを加えて減圧下、120℃で脱水した後、モノクロル酢酸ナトリウム1.2モルを加えて120℃で減圧下3時間反応を行った。希塩酸を加えて酸性とし、90℃まで加温して静置後、下層の水層を除去してポリオキシエチレン(n=3)オレイルエーテル酢酸を製造した。さらに、その一部を水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより、ポリオキシエチレン(n=3)オレイルエーテル酢酸ナトリウム水溶液を調製した。
【0042】
実施例1
ポリオキシエオチレン(n=3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム8.0重量%と製造例1で調製したポリオキシエチレン(n=3)オレイルエーテル酢酸ナトリウム2.0重量%及びイオン交換水90.0重量%からなるシャンプー組成物を調製した。該シャンプー組成物を水道水で希釈して、界面活性剤の有効成分濃度が1重量%となるように試料溶液を調製した。この試料溶液を用いて、前記の動摩擦係数の測定方法に従って評価を行い、ウェット時(すすぎ5分後)及びドライ時(24時間乾燥後)の動摩擦係数を測定した。その結果を表1に示した。
【0043】
実施例2〜5
表1に記載の処方のシャンプー組成物を調製し、実施例1と同様にして試料溶液の調製と評価を行った。その結果を表1に示した。
【0044】
比較例1
ポリオキシエチレン(n=3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム10重量%及びイオン交換水90重量%からなるシャンプー組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、試料溶液の調製と評価を行った。その結果を表1に示した。
【0045】
比較例2〜5
ポリオキシエチレン(n=3)オレイルエーテル酢酸ナトリウムに代えて、表1に記載の各種アニオン界面活性剤又はカチオン化セルロースを配合したシャンプー組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、試料溶液の調製と評価を行った。その結果を表1に示した。
【0046】
【表1】

【0047】
表1の結果から、本発明のポリオキシエチレンオレイルエーテル酢酸ナトリウムを配合したシャンプー組成物は、ウェット時、ドライ時いずれの場合にも、動摩擦抵抗が低く、コンディショニング性能に優れていることが分かる。また、ポリオキシエチレン(n=3)ラウリルエーテル酢酸ナトリウムやラウロイルメチルアラニンナトリウムと比較しても、コンディショニング性能に優れていることが明かである。
【0048】
実施例6〜8
表2に記載のシャンプー組成物を調製し、起泡性と動摩擦係数を評価した。尚、起泡性は前記の「起泡性の測定方法」に従って測定を行った。その結果を表2に示した。
【0049】
比較例6
ポリオキシエチレン(n=3)オレイルエーテル酢酸ナトリウムを用いなかった以外は、実施例6と同様に行い、起泡性及び動摩擦係数の評価を行った。その結果を表2に示した。
【0050】
【表2】

【0051】
表2の結果から、ポリオキシエチレン(n=3)オレイルエーテル酢酸ナトリウムを配合したシャンプー組成物は、起泡性の向上効果とコンディショニング性能に優れていることが明かである。
【0052】
製造例2
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム3重量%、グリセリン3重量%及び水89重量%とを70℃でプロペラ撹拌にて均一混合して調製したリンス用水相中に、撹拌条件下で、セトステアリルアルコール4重量%、調製例1で調製したポリオキシエチレン(n=3)オレイルエーテル酢酸1重量%を70℃まで加熱しながら均一混合して調製したリンス用油相を添加した。70℃で30
分撹拌を継続した後、室温まで冷却してリンス組成物Aを調製した。
【0053】
製造例3
ポリオキシエチレン(n=3)オレイルエーテル酢酸に代えて、ポリオキシエチレン(n=5)セチルエーテルを用いた以外は、製造例2と同様にして、リンス組成物Bを調製した。
【0054】
実施例9
[毛束によるリンス組成物の官能評価方法]
人間の毛髪で作成した長さ20cm、重量6gの毛束を、ポリオキシエチレン(n=3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(25%水溶液)0.5gでシャンプー処理した後、製造例2で調製したリンス組成物A0.5gを全体に塗布した。その際、塗布のしやすさを評価した。塗布してから5分後に、40℃の水道水で30秒間すすぎ、その際、すすぎ時の感触を評価した。更に紙タオルで軽く水気を拭き取った後の感触を、タオルドライ後の手触りとして評価した。形を整え、25℃、60%RHの恒温恒湿室で24時間保存して自然乾燥後、手触りや指通り等の感触を、乾燥後の感触として評価した。
評価点数は次の通りとし、10人の評価点数の平均値とした。その結果を表3に示した。
塗布のしやすさ 良い 3 普通 2 悪い 1
すすぎ時の感触 良い 3 普通 2 悪い 1
タオルドライ後の手触り 良い 3 普通 2 悪い 1
乾燥後の感触 良い 3 普通 2 悪い 1
【0055】
また、実施例1と同様にして、ウェット時(すすぎ5分後)及びドライ時(24時間乾燥後)の動摩擦係数を測定した。ただし、洗浄及びすずき工程は各1回で行った。その結果を表3に示した。
【0056】
比較例7
リンス組成物Aに代えて、リンス組成物Bを用いた以外は、実施例9と同様にして、毛束によるリンスの官能評価と、ウェット時(すすぎ5分後)及びドライ時(24時間乾燥後)の動摩擦係数を測定した。その結果を表3に示した。
【0057】
【表3】

【0058】
表3より、4級アンモニウム塩を配合したリンス組成物においても、使用時及び乾燥後の感触が向上し、さらに動摩擦係数が低減されており、コンディショニング性能に優れていることが明かである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明により、毛髪処理剤組成物が本来有する起泡性、粘度等の基本物性をを損なうことなく、コンディショニング性能を向上させた毛髪処理剤組成物を得ることができ、シャンプー、リンス、コンディショナー等として好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、Rは炭素数16〜22のアルケニル基を表す。AOは、炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖状のオキシアルキレン基を表す。nはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜10の数を表す。Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム及びアルカノールアンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。]
で表されるポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩を含有することを特徴とする毛髪処理剤組成物。
【請求項2】
ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩が、植物性不飽和アルコール由来であることを特徴とする請求項1に記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項3】
ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩の含有量が0.05〜10重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項4】
Rがオレイル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項5】
毛髪処理剤組成物が、シャンプー、リンス又はコンディショナーである請求項1〜4のいずれかに記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項6】
毛髪処理剤組成物にコンディショニング性を付与する方法であって、毛髪処理剤組成物100重量%中に、一般式(1)
【化2】

[式中、Rは炭素数16〜22のアルケニル基を表す。AOは、炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖状のオキシアルキレン基を表す。nはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜10の数を表す。Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム及びアルカノールアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。]
で表されるポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸又はその塩0.05〜10重量%を配合することを特徴とする方法。



【公開番号】特開2006−1846(P2006−1846A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177517(P2004−177517)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000191250)新日本理化株式会社 (90)
【Fターム(参考)】