説明

毛髪処理剤組成物

【課題】毛髪に滑らかさ等の優れた感触を与え、かつ切れ毛、枝毛等のダメージ修復効果に優れる毛髪処理剤組成物の提供。
【解決手段】次の成分(A)及び(B)
(A)一般式(1)で表されるアミドアミン化合物又はその塩
1CONH(CH2)mN(R2)2 (1)
〔R1は炭素数15〜23の脂肪族炭化水素基、R2は炭素数1〜4のアルキル基、mは2〜4の整数を示す〕
(B)多価アルコール縮合物の有機酸エステルであって、構成有機酸として少なくとも1種のヒドロキシ酸を含むもの
を含有する毛髪処理剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪に優れた感触を与え、かつ切れ毛、枝毛等のダメージ修復効果に優れる毛髪処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪用シャンプーには、通常、洗浄力の強いアニオン界面活性剤が配合されているが、これは毛髪から汚れを除去するばかりでなく、毛髪繊維の表面に天然に存在する皮脂をも除去してしまう。また、通常、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤又は両性界面活性剤を含むシャンプー組成物は、シャンプー、すすぎ後の髪の感触の悪さ、すなわち髪にざらざらした重く乾燥した手触りや、いわゆる「きしみ」などを与えるという問題がある。またブラッシング等の際に髪が絡み合ったりしがちで梳かすのが難しく、これは枝毛、切れ毛等の毛髪損傷の原因にもなる。従って、シャンプーに続きコンディショニング組成物によるトリートメントを行って、これらの好ましくない物性や感触を改善することが必要になることが多い。
【0003】
カチオン界面活性剤、カチオン性ポリマー等のカチオン性化合物は、ケラチン繊維へ吸着したり相互作用することができることから、毛髪のもつれを直したり、乾燥した毛髪を扱い易くするコンディショニング成分として使用されている。しかしながら、毛髪に強く吸着するカチオン性化合物は、乾燥した毛髪の弾力、張り、セット性等を低下させることがある。
【0004】
また、従来のコンディショニング組成物では、髪への塗布から乾燥までにおける滑らかさ等の感触の点、更にはブラッシング等の外的要因により発生する切れ毛や枝毛といったダメージの修復効果の点で、十分満足し得るものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、シャンプー後の感触を改善し、滑らかさ等の優れた感触を付与でき、かつ切れ毛、枝毛等のダメージ修復効果に優れる毛髪処理剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、毛髪処理剤組成物において、特定のアミドアミン化合物と特定の多価アルコール縮合物エステルとを併用すれば、組成物の毛髪への吸着性が高まり、当該毛髪処理剤組成物は、切れ毛や枝毛に効率良く吸着して枝毛を接着し、毛髪表面を滑らかにすることができ、更に、塗布時から乾燥後まで、毛髪に滑らかな感触を付与できることを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、次の成分(A)及び(B)
(A) 一般式(1)で表されるアミドアミン化合物又はその塩
1CONH(CH2)mN(R2)2 (1)
〔式中、R1は炭素数15〜23の脂肪族炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは2〜4の整数を示す。〕
【0008】
(B) 多価アルコール縮合物の有機酸エステルであって、構成有機酸として少なくとも1種のヒドロキシ酸を含むもの
を含有する毛髪処理剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の毛髪処理剤組成物は、毛髪に滑らかさ等の優れた感触を与え、かつ切れ毛、枝毛等のダメージ修復効果に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
成分(A)であるアミドアミン化合物(1)は、毛髪への吸着性が高く、毛髪の濯ぎ時、乾燥時における滑らかさを付与する。また、他の成分の分散安定性にも寄与するものである。アミドアミン化合物(1)の具体例としては、イソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、オレイン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジブチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジブチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジプロピルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジプロピルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド等が挙げられ、なかでも、性能、安定性、入手容易性等の面で、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド等が特に好ましい。これらアミドアミン化合物(1)は、後述の酸の添加によって中和し、塩を形成させることが好ましい。
【0011】
アミドアミン化合物(1)又はその塩は、1種以上を用いることができ、その含有量は、毛髪の濯ぎ時、乾燥時の滑らかさの点から、アミドアミン化合物(1)に換算して、本発明の毛髪処理剤組成物の0.05〜10.0重量%、特に0.1〜3.0重量%が好ましい。
【0012】
成分(B)である多価アルコール縮合物の有機酸エステルは、毛髪への吸着性が高いため、ブラッシング等による外的要因によって発生した毛髪の切れ毛や枝毛に対して効率よく吸着し、コーティングする。その結果、枝毛は接着され、毛髪表面がなめらかになる。更に、塗布時から乾燥後までの毛髪のなめらかさが持続し、毛髪にうるおいを与えることができる。この多価アルコール縮合物有機酸エステルは、構成有機酸として少なくとも1種のヒドロキシ酸を含むことが必要であり、このようなエステル化合物は、多価アルコール縮合物に対し、ヒドロキシ酸、又はヒドロキシ酸と有機酸の混合物を反応させることにより製造することができる。
【0013】
多価アルコール縮合物は公知の方法によって製造され、その好ましい具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリトリトール、グルコース、ショ糖、フルクトース、マルトース、マルチトール、キシリトール、イノシトール等を多価アルコールとする縮合物、又はそれらのアルキレンオキシド付加物で少なくとも1分子中に水酸基を2個以上有するものが挙げられ、特にジペンタエリトリトールが好ましい。
【0014】
上記多価アルコール縮合物に反応させる有機酸としては、直鎖又は分岐鎖の、また飽和又は不飽和の脂肪酸、及び脂環族カルボン酸が挙げられ、ヒドロキシ酸としては、これら有機酸の任意の位置に水酸基が置換したものが挙げられる。また、これらヒドロキシ酸及び有機酸の炭素数は、8〜22、特に12〜18が好ましい。直鎖脂肪酸としては、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等が挙げられ、分岐鎖脂肪酸としては、2-エチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、テトラメチルノナン酸、イソパルミチン酸(2-ヘキシルデカン酸)、2-ヘプチルウンデカン酸、シトロネル酸、イソステアリン酸等が挙げられ、脂環族カルボン酸としては、樹脂酸(例えば、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸等)が挙げられる。ヒドロキシ酸としては、これら有機酸の任意の位置に水酸基が置換したものが挙げられ、なかでもヒドロキシ脂肪酸が好ましく、特に好ましいものとして、1-ヒドロキシラウリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸が挙げられる。
【0015】
多価アルコール縮合物との反応には、1種以上のヒドロキシ酸、又は1種以上のヒドロキシ酸と1種以上の有機酸との混合物が使用され、特にヒドロキシ酸の比率が50重量%以上であると、得られる多価アルコール縮合物有機酸エステルの粘着性が上昇し、毛髪に対する吸着性がより向上するため、枝毛修復効果の点で好ましい。
【0016】
多価アルコール縮合物と、ヒドロキシ酸又はヒドロキシ酸と有機酸の混合物との反応は、公知のエステル化反応によって行うことができる。多価アルコール縮合物の遊離水酸基を全てエステル化する必要はないが、酸の使用量は、多価アルコール縮合物が有する遊離水酸基の50%以上をエステル化するのに十分な化学量論量が好ましい。エステル化の割合が50%未満の場合には、成分(B)の親水性が強くなることがあり、若干コンディショニング効果が低下することもある。
【0017】
多価アルコール縮合物有機酸エステルの好ましい市販品として、日清製油社製のコスモール168AR、コスモール168M、コスモール168E等が挙げられる。多価アルコール縮合物有機酸エステルは、1種以上を用いることができ、その含有量は、毛髪に潤いを与え、ダメージを修復する効果の点から、本発明の毛髪処理剤組成物の0.05〜10.0重量%、特に0.1〜3.0重量%が好ましい。
【0018】
本発明の毛髪処理剤組成物は、成分(A)と(B)を、水、又は水に必要に応じエタノール、2-プロパノール、グリセリン、プロピレングリコール等を加えた溶剤に溶解させることにより製造される。
【0019】
本発明の毛髪処理剤組成物は、酸を用いて、20重量倍に水で希釈した際のpHが3〜8になるように調整し、また成分(A)のアミドアミン化合物(1)を中和するのが好ましい。このような酸のうち、無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられ、有機酸としては、炭素数22以下の脂肪酸又は芳香族カルボン酸が挙げられ、これら有機酸はヒドロキシ酸であってもよい。脂肪酸としては、炭素数16以下の飽和脂肪酸が好ましく、具体的には、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、グリコール酸、デカン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オクタン酸等が挙げられ、なかでも乳酸、クエン酸、リンゴ酸が好ましい。また炭素数16以下の飽和脂肪酸以外の好ましい脂肪酸として、オレイン酸及びステアリン酸が挙げられる。芳香族カルボン酸としては、アルキル置換されたものでもよく、具体的には、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルイル酸等が挙げられる。これらの酸は1種以上を使用することができる。酸は過剰に使用しても組成物に悪影響を与えないため、十分な量の酸を組成物に加えて、組成物中にアミンの固体粒子が本質的に全く存在しないようにし、毛髪処理剤組成物の最終のpHが3〜8、特に3〜5となるように調整するのが好ましい。酸の配合量は、本発明の毛髪処理剤組成物中の0.01〜5.0重量%、特に0.1〜3.0重量%が好ましい。
【0020】
本発明の毛髪処理剤組成物には、組成物の安定性向上の目的で、水溶性ポリマーを含有させることができる。水溶性ポリマーとしては、カチオン性ポリマー、両性ポリマー、アニオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー、天然高分子又はその誘導体が挙げられる。
【0021】
カチオン性ポリマーとしては、例えばカチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体、ジアリル第四級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、第四級化ポリビニルピロリドン誘導体等が挙げられ、なかでもカチオン化セルロース及びカチオン化グアーガム、特にカチオン化セルロースが好ましい。市販品としては、カチナールシリーズ(東邦化学社製)、UCARE POLYMER JRシリーズ、同LRシリーズ(Amerchol社製)を用いることができる。
【0022】
両性ポリマーとしては、例えば、プラサイズL401(互応化学社製)、ユカフォーマーAM-75、同AM75S/SM(以上、三菱化学社製)等のカルボキシベタイン型モノマーの重合体又は共重合体;マーコートプラス3330(CALGON社製)、アンフォマー28-4910、同LV-71(以上、ナショナル・スターチ社製)等のアクリル酸/ジアリル第四級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合体が挙げられ、特にマーコートプラス3330、ユカフォーマーAM-75が好ましい。
【0023】
アニオン性ポリマーとしては、アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル共重合体(プラスサイズ;互応化学社製)、ビニルピロリドン/ビニルアセテート/ビニルプロピオネート共重合体(ルビスコールVAP;BASF社製)、ビニルピロリドン/アクリレート共重合体(ルビフレックス;BASF社製)、アクリレート/アクリルアミド共重合体(ウルトラホールド;BASF社製)等が挙げられ、特にカルボキシ基含有ポリマーが好ましい。
【0024】
ノニオン性ポリマーとしては、例えばルビスコールK12、同17、同30、同60、同80、同90(以上、BASF社製)、PVP K15、同30、同60、同90(以上、ISP社製)等のポリビニルピロリドン;ルビスコールVA28E、同37E、同55E、同64E、同73E(以上、BASF社製)などが挙げられ、特にルビスコールK17、30、PVP K30が好ましい。
【0025】
天然高分子又はその誘導体としては、例えばグアーガム、キサンタンガム等の天然多糖類;ヒドロキシプロピルキトサン等のキチン誘導体;メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子化合物;メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系高分子化合物;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子化合物などが挙げられ、特にヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースが好ましい。
【0026】
以上のような水溶性ポリマーは、1種以上を用いることができ、その含有量は、本発明の毛髪処理剤組成物中に0.01〜10.0重量%が好ましく、更には0.05〜5.0重量%、特に0.1〜2.0重量%が好ましい。
【0027】
本発明の毛髪処理剤組成物には、更に、高重合ジメチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、環状シリコーン等のシリコーン類;高級アルコール;脂肪酸;流動パラフィン、固形パラフィン、ワセリン、スクワレン等の炭化水素;イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート等のエステル油;エタノール等の低級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等の保湿剤;アミノ酸、ポリペプチド、糖類、動植物エキス等の天然物又は生体成分;非イオン界面活性剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等)、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤;ラテックス;防腐剤、殺菌剤、フケ取り剤、キレート剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、増粘剤、香料、顔料、色素等の添加物、安定化剤(グリコールエステル等のパール化剤)等を、目的に応じて含有させることができる。
【0028】
本発明の毛髪処理剤組成物の製品形態としては、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント等が挙げられる。
【実施例】
【0029】
実施例1〜10及び比較例1〜3
表1及び2に示す毛髪処理剤組成物を調製し、髪の滑らかさとダメージ修復効果を評価した。
【0030】
(製造法)
油相中に含まれるアミドアミンを60〜65℃で酸を用いて中和し、水相と乳化を行う。ただし、当該油相中には、構成有機酸として少なくとも1種のヒドロキシ酸を含む多価アルコール縮合物有機酸エステルが含まれている。
【0031】
(評価方法)
髪に枝毛が存在する等のダメージをもっているパネラー20名により、以下の基準に従って、塗布時から乾燥後の髪の滑らかさ、及び乾燥後における枝毛の状態を評価した。表1及び2に総得点スコアを示す。
【0032】
(1) 髪の滑らかさ(最高点100点,最低点20点)
5:非常に滑らかである。
4:やや滑らかである。
3:どちらともいえない。
2:あまり滑らかでない。
1:滑らかさがない。
【0033】
(2) 枝毛状態の評価(最高点60点,最低点20点)
3:枝毛がない。
2:やや枝毛がある。
1:枝毛がたくさんある。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B)
(A) 一般式(1)で表されるアミドアミン化合物又はその塩
1CONH(CH2)mN(R2)2 (1)
〔式中、R1は炭素数15〜23の脂肪族炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは2〜4の整数を示す。〕
(B) 多価アルコール縮合物の有機酸エステルであって、構成有機酸として少なくとも1種のヒドロキシ酸を含むもの
を含有する毛髪処理剤組成物。
【請求項2】
pHが3〜8である請求項1記載の毛髪処理剤組成物。

【公開番号】特開2011−246488(P2011−246488A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182528(P2011−182528)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【分割の表示】特願2001−149043(P2001−149043)の分割
【原出願日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】