説明

毛髪処理剤

【課題】毛髪に適用した際にアミノ変性シリコーンが有する毛髪表面を滑らかにする効果を発揮でき、かつ、連続的に複数回にわたり毛髪に適用しても、アミノ変性シリコーンが毛髪上に過剰蓄積(ビルドアップ)することで生じる弊害を抑制でき、連続的に毛髪に使用してもアミノ変性シリコーンの優れたコンディショニング作用を持続して発揮することが可能な毛髪処理剤を提供することを課題とする。
【解決手段】シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物及びアミノ変性シリコーンを含有し、前記シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量が0.01〜5質量%であり、かつ、アミノ変性シリコーンの含有量が0.01〜10%であることを特徴とする毛髪処理剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物とアミノ変性シリコーンを含有する毛髪処理剤に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、毛髪に適用した際に毛髪表面を滑らかにし、かつ、連続的に複数回にわたり毛髪に適用してもアミノ変性シリコーンが毛髪上に過剰蓄積(ビルドアップとも呼ばれる)することで生じる弊害を抑制し、毛髪に対しての優れたコンディショニング作用を持続して発揮することができる毛髪処理剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヘアコンディショナーやヘアトリートメントなどの毛髪処理剤にはコンディショニング剤として、カチオン性界面活性剤やシリコーン類、油性物質、タンパク質加水分解物などが配合されてきた。特に近年では、多くの毛髪化粧品にシリコーン類が配合されており、毛髪に光沢と滑らかさを与えながら毛髪の損傷を防止する目的で、高分子量のジメチルポリシロキサンやメチルフェニルシロキサン、あるいはアミノ変性シリコーンが用いられている(特許文献1〜4)。
【0003】
しかしながら、これらのシリコーン類は、光沢と滑らかさを毛髪へ付与する効果や毛髪の損傷を防止する効果を有するが、毎日の洗髪等で連用するとシリコーンが毛髪表面に過剰蓄積し、毛髪がごわついたり、ヘアカラー時の染色が悪くなったり、パーマネントウェーブのかかりが低下するなどの弊害が知られており、これらの問題は、特にアミノ変性シリコーンを用いた場合に顕著に現れていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−183517号公報、
【特許文献2】特開昭63−243018号公報
【特許文献3】特開昭63−313712号公報
【特許文献4】特開平5−85918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、毛髪に適用した際に毛髪表面を滑らかにし、かつ、連続的に複数回にわたり毛髪に適用してもアミノ変性シリコーンが毛髪上に過剰蓄積することで生じる弊害を抑制でき、毛髪に対しての優れたコンディショニング作用を持続して発揮する毛髪処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物及びアミノ変性シリコーンを含有する毛髪処理剤が、毛髪に適用した際に毛髪表面を滑らかにし、かつ、連続的に複数回にわたり毛髪に適用しても、アミノ変性シリコーンが毛髪上に過剰蓄積することで生じる弊害を抑制でき、毛髪に対して優れたコンディショニング作用を持続して発揮することを見出し、それに基づいて、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物による毛髪上のアミノ変性シリコーンの過剰蓄積を防止する効果と、アミノ変性シリコーンやシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が有する毛髪コンディショニング効果を備えており、毛髪に対して優れたコンディショニング作用を持続して発揮するため、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物及びアミノ変性シリコーンを含有することを特徴とする毛髪処理剤を請求項1に係る発明とする。
【0008】
また、前記課題を解決するためには、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量が0.01〜5質量%であり、かつ、アミノ変性シリコーンの含有量が0.01〜10%である毛髪処理剤が連続的に毛髪に適用した際の感触が好ましいため、これを請求項2に係る発明とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の毛髪処理剤は、毛髪に適用した際に毛髪表面を滑らかにし、かつ、連続的に複数回にわたり毛髪に適用してもアミノ変性シリコーンが毛髪上に過剰蓄積することで生じる弊害を抑制でき、毛髪に対して優れたコンディショニング作用を持続して発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に本発明の実施するための形態を説明する。本発明の毛髪処理剤に用いるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、例えば、特開2001−48732号公報や特開2001−48775号公報などに開示の方法で合成できる。
【0011】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の構成成分であるシリル化ペプチドは、例えば、特開平8−59424号公報および特開平8−67608号公報に開示の方法で合成できる。
【0012】
シリル化ペプチドのペプチド部分としては、天然ペプチド、合成ペプチド、タンパク質加水分解物などが挙げられるが、入手の容易さやペプチド部分の数平均分子量のコントロールしやすさから、タンパク質加水分解物を用いるのが好ましい。
【0013】
前記タンパク質加水分解物は、タンパク質を酸、アルカリ、酵素、又はそれらの併用によって部分加水分解することで得られ、このタンパク源としては、動物性タンパク質、植物性タンパク質、及び微生物由来のタンパク質などが挙げられるが、動物性タンパク質としては、コラーゲン(その変性物であるゼラチンも含む)、ケラチン、フィブロイン、セリシン、カゼイン、コンキオリン、エラスチン、プロタミン、鶏などの卵黄タンパク質や卵白タンパク質などを挙げることができ、植物性タンパク質としては、大豆、小麦、米(米糠)、ゴマ、エンドウ、トウモロコシ、イモ類などに含まれるタンパク質を挙げることができ、微生物由来のタンパク質としては、サッカロミセス属、カンディダ属、エンドミコプシス属の酵母菌、ビール酵母や清酒酵母といわれる酵母菌より分離した酵母タンパク質、キノコ類(担子菌)やクロレラより分離したタンパク質、海藻由来のスピルリナタンパク質などを挙げることができる。
【0014】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、上記シリル化ペプチドと、下記一般式(I)
SiX(4−n) (I)
〔式中、nは0から2の整数で、Rは炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基で、n個のRは同じでもよく、異なっていてもよい。(4−n)個のXは水酸基、アルコキシ基およびハロゲン基から選ばれる少なくとも一種の基である〕で表されるシラン化合物を水溶液中で加水分解することで得られる下記一般式(II)
Si(OH)(4−p−n) (II)
〔式中、mは0から2の整数、pは2から4の整数で、m+p≦4であり、Rは炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基で、m個のRは同じでもよく、異なっていてもよい。(4−p−n)個のYアルコキシ基または水素原子である〕で表されるシラン化合物の加水分解物を縮重合させたものである。
【0015】
本発明の毛髪処理剤に用いるアミノ変性シリコーンとは、少なくとも一つの1級、2級あるいは3級アミン基、または4級アンモニウム基を含むシリコーンの意味である。好適なアミノ変性シリコーンは、例えば、化粧品表示名称がアモジメチコンであるものが挙げられ、一般式(III)




【化1】

【0016】
[式中、Rはメチル基または一部がフェニル基を表し、RはRと同一またはメチル基または水酸基を表す。Rは、式RZ{Rは3から6の炭素原子を有する2価のアルキレン基を表し、Zは−NR
、−NR (CH2)a NR、及び−NR(CH)aN(R
)C=O(R )(Rは水素又は1から4の炭素原子を有するアルキル基を表し、R
は1から4の炭素原子を有するアルキル基を表しaは2から6の整数である)からなる群から選ばれる1価の基を表す}で表されるアミノ基を有する置換基を表し、m及びnはそれぞれ正の整数でm+nは3,000〜20,000の整数を表し、n/mは1/500〜1/10,000である]で表されるポリシロキサンである。
【0017】
本発明の毛髪処理剤は、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアトリートメントクリーム、PPT(ポリペプタイド)トリートメント、ヘアクリーム、ヘアスプレー、ヘアワックスなどを対象とし、これらの毛髪処理剤に、上記のようにして得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物とアミノ変性シリコーンを含有させることによって構成される。
【0018】
そして、本発明の毛髪処理剤中でのシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物とアミノ変性シリコーンの含有量(毛髪処理剤への配合量)としては、一般的には毛髪処理剤中にシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は0.01〜5質量%であり、かつ、アミノ変性シリコーンは0.01〜10質量%が好ましい。
【0019】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、アミノ変性シリコーンの過剰蓄積を抑制する効果があるため、含有量が上記範囲より少ない場合は毛髪上のアミノ変性シリコーンの過剰蓄積を抑制できず、良好な感触を持続する毛髪処理剤が得られない。また、含有量が上記範囲より多い場合では、その含有量に見合う効果が得られないため、毛髪処理剤中のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量は上記範囲が好ましい。
【0020】
毎日使用するようなヘアコンディショナーではシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量は0.01〜1質量%が適当であり、パーマネントウェーブ処理や染毛処理などの化学処理で損傷した毛髪のケアを対象にしたヘアトリートメントなどでは0.5〜5質量%が好ましい。特に、毎日使用するようなヘアコンディショナーやヘアトリートメントではシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量が0.1〜1質量%である場合にアミノ変性シリコーンの過剰蓄積を抑制し、かつ毛髪表面を滑らかにし、良好な感触が持続する。
【0021】
一方、アミノ変性シリコーンの含有量が上記範囲より多い場合には、アミノ変性シリコーンが毛髪上に過剰蓄積しやすく、また、上記範囲より少ない場合には、毛髪表面を滑らかな感触にする効果が損なわれる恐れがある。
【0022】
本発明の毛髪処理剤は、上記のように、従来の各種毛髪処理剤にシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物とアミノ変性シリコーンを含有させることによって構成されるが、本発明の効果を損なわない範囲で適宜他の成分を添加することができる。
【0023】
そのような成分としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性ポリマー、両性ポリマー、アニオン性ポリマー、増粘剤、動植物抽出物、ポリサッカライドまたはその誘導体、動植物および微生物由来のタンパク質のタンパク質加水分解物やその誘導体、湿潤剤、低級アルコール類、高級アルコール類、アミノ酸、油脂類、シリコーン類、防腐剤、香料などが挙げられる。
【実施例】
【0024】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。実施例や比較例中における各成分の配合量はいずれも質量部によるものであり、配合量が固形分量でないものについては、成分名のあとに括弧書きで固形分濃度を示す。また、濃度を示す%は質量%である。なお、以下の実施例や比較例においては、毛髪処理剤の調製を行う関係もあって、各成分に関して「含有」という表現をせず、「配合」という表現で説明する。
【0025】
実施例1および比較例1
表1に示すように、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物として、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物(以下、加水分解シルク/PG−プロピルメチルシランジオールと称す)とアミノ変性シリコーンを配合したヘアコンディショナーを実施例1として調製し、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を配合しないで、アミノ変性シリコーンを配合したヘアコンディショナーを比較例1として調製した。
【0026】
実施例1と比較例1のヘアコンディショナーの比較評価として、下記の[1]〜[6]の方法で毛束を処理した後、後述する「官能評価1」と「シリコーン蓄積量の評価」を実施した。
【0027】
長さ13cmで重さ2.0gの毛束を作製し、次の[1]〜[3]の操作を3回繰り返し行った。
[1]2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で毛束を洗浄した後、室温で風乾した。
[2]上記[1]の毛束を6%過酸化水素水と2%アンモニア水を1:1に調製したブリーチ剤に30分間浸漬した後、水道水流水中で洗浄した。
[3]1Mクエン酸と0.2Mリン酸水素二ナトリウムの緩衝液(pH3)に上記処理毛束を5分間浸漬し、水道水流水中で洗い流し室温で風乾した。
【0028】
上記[1]〜[3]の処理を行なった毛束に次の[4]〜[6]の操作を10回繰り返し行った。
[4]毛束を表2に示す組成のシャンプーで洗浄した。
[5]表1の実施例1および比較例1のヘアコンディショナー4.0gをそれぞれ毛束に均一に塗布して毛髪になじませた後、ラップフィルムで包んで40℃の恒温槽に10分間放置した。
[6]水道水流水中でヘアコンディショナーを洗い流し、室温で風乾した。
【0029】

【表1】

*1 (株)成和化成製;PROTESIL LH(商品名)
*2 信越化学工業(株);KF−8004(商品名)
*3 SEPPIC社製;MONTANOV 68(商品名)
*4 (株)成和化成製;セイセプト−H(商品名)
【0030】
【表2】

*4 (株)成和化成製;セイセプト−H(商品名)
【0031】
「官能評価1」
実施例1と比較例1のヘアコンディショナーを用いて、上記の[4]〜[6]の処理(ヘアコンディショナー処理)を2回行った毛束と10回行った毛束に対して、“指通り”、“しっとり感”、“つるつる感”、“やわらかさ”、“好ましい”の5項目について12人のパネリストにブラインド評価(盲検)させ、両ヘアコンディショナーを比較した。そして、良い方を<2点>、悪い方を<0点>とし、同等であればそれぞれ<1点>とし、評価項目ごとの合計点を評価値とした。また、それぞれの毛束において、2回処理後と10回処理後を比較した場合、2回処理後と比較して10回処理後の方が改善した場合を<1点>、悪化した場合を<−1点>、変化がない場合を<0点>とし、その合計得点を下記の分類基準に従って分類しヘアコンディショナーの処理回数に伴う官能特性の変化とした。
【0032】
ヘアコンディショナー処理回数に伴う官能特性の変化の分類基準
−12点〜−8点:悪化
−7点 〜−3点:やや悪化
−2点 〜 2点:変化無し
3点 〜 7点:やや改善
8点 〜12点:改善
【0033】
【表3】

【0034】
表3に「官能評価1」の結果を示した。2回処理後では実施例1のヘアコンディショナーで処理した毛束と比較例1で処理した毛束の評価値はほぼ同等であったのに対して、処理10回後はいずれの項目においても実施例1のヘアコンディショナーで処理した毛束の評価値が比較例1で処理した毛束の評価より高くなった。また、ヘアコンディショナー処理回数に伴う官能特性の変化では、比較例1は全ての評価項目で悪化しているのに対して、実施例1では変化がないか、やや改善という結果になった。
【0035】
「シリコーンの蓄積量の測定」
上記[4]〜[6]の処理(ヘアコンディショナー処理)を行った毛束の毛髪表面に吸着したケイ素原子量を、日本電子(株)製のエネルギー分散型X線分析装置を用いて測定した。この装置は電子顕微鏡で観察している毛髪表面部位の一定範囲から検出される全元素を質量%で表す。そこで、毛髪表面から検出されたケイ素原子量を比較に用いて、毛髪表面のシリコーン蓄積量とした。測定は各ヘアコンディショナー処理2回、5回、10回後に1試料につき10本ずつ測定して平均値を算出し、2回処理後のケイ素原子量を100%とした際の各処理後のケイ素原子量の増減を変化率(%)として表し、毛髪表面のシリコーン蓄積量の指標とした。
【0036】
【表4】

【0037】
表4に実施例1と比較例1のヘアコンディショナー処理に伴う毛髪上のケイ素原子の変化率を示した。10回処理後のシリコーンの蓄積を示すケイ素原子量の変化率(%)は、比較例1のヘアコンディショナーで10回処理した毛髪では233%であり、2回処理した毛髪の2倍以上シリコーンが蓄積していたのに対して、実施例1のヘアトリートメントで処理をした毛髪では138%であり、2回処理した毛髪の1.4倍程度の蓄積量であった。この結果から、実施例1で配合されている加水分解シルク/PG−プロピルメチルシランジオールがアミノ変性シリコーンの過剰蓄積を抑制していることが明らかとなった。
【0038】
以上の官能評価とシリコーン蓄積量の測定結果から、アミノ変性シリコーンは毛髪への適用回数に伴い毛髪に過剰蓄積し、10回程度の連続使用によって官能特性を低下させることが分かった。そして、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物である加水分解シルク/PG−プロピルメチルシランジオールをアミノ変性シリコーンと共に配合することによって、アミノ変性シリコーンが毛髪上に過剰蓄積することで生じる官能特性の低下を抑制し、連続使用してもアミノ変性シリコーンの良好な感触を持続させることが明らかとなった。
【0039】
実施例2および比較例2〜3
実施例1のヘアコンディショナーとシャンプーに代えて、表5に示す組成のヘアコンディショナー(実施例2、比較例2及び比較例3)と表6に示すシャンプーを調製した。つまり、実施例2ではシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物として加水分解シルク/PG−プロピルメチルシランジオールをアミノ変性シリコーンと共存させて配合し、比較例2では実施例2のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に代えて、加水分解シルク/PG−プロピルメチルシランジオールと同様に両親媒性のシリコーン化合物であるポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体をアミノ変性シリコーンと共存させ配合し、比較例3ではアミノ変性シリコーンのみを配合した。そして、実施例1に記載の[1]〜[6]の方法で毛束を処理し、各ヘアコンディショナーの比較評価を後述する「官能評価2」と上記の「シリコーン蓄積量の評価」によって実施した。
【0040】
「官能評価2」
実施例2、比較例2及び比較例3のヘアコンディショナーを用いて、上記の[4]〜[6]の処理(ヘアコンディショナー処理)を2回行った毛束と10回行った毛束に対して、“指通り”、“しっとり感”、“つるつる感”、“やわらかさ”、“好ましい”の5項目について12人のパネリストにブラインド評価(盲検)させ、3つのヘアコンディショナーを比較した。そして、最も良いものを<2点>、次に良いものを<1点>、最も悪いものを<0点>とし、評価項目ごとの合計点を評価値とした。また、それぞれの毛束において、2回処理後と10回処理後を比較した場合、2回処理後と比較して10回処理後の方が改善した場合を<1点>、悪化した場合を<−1点>、変化がない場合を<0点>とし、その合計得点を下記の分類基準に従って分類しヘアコンディショナーの処理回数に伴う官能特性の変化とした。
【0041】
ヘアコンディショナー処理回数に伴う官能特性の変化の分類基準
−12点〜−8点:悪化
−7点 〜−3点:やや悪化
−2点 〜 2点:変化無し
3点 〜 7点:やや改善
8点 〜12点:改善
【0042】

【表5】

*1 (株)成和化成製;PROTESIL LH(商品名)
*2 信越化学工業(株);KF−8004(商品名)
*3 SEPPIC社製;MONTANOV 68(商品名)
*4 (株)成和化成(株)製;セイセプト−H(商品名)
*5 信越化学工業(株);KF−6038(商品名)
【0043】
【表6】

*4 (株)成和化成製;セイセプト−H(商品名)
【0044】

【表7】

【0045】
表7に「官能評価2」の結果を示した。2回処理後では実施例2、比較例2及び比較例3でそれぞれ処理した毛束の評価値は若干の優劣はあるがほぼ同等であったのに対して、処理10回後はいずれの項目においても実施例2のヘアコンディショナーで処理した毛束の評価値が比較例2や比較例3で処理した毛束の評価より高くなった。また、ヘアコンディショナー処理回数に伴う官能特性の変化では、比較例3は全ての評価項目で悪化しており、比較例2はやや悪化しているのに対して、実施例2では変化がないか、やや改善という結果になった。
【0046】
【表8】

【0047】
表8に実施例2、比較例2及び比較例3のヘアコンディショナー処理に伴う毛髪上のケイ素原子の変化率を示した。10回処理後のシリコーンの蓄積量を示すケイ素原子量の変化率は、比較例2や比較例3のヘアコンディショナーで10回処理した毛髪ではそれぞれ217%と250%であり、2回処理した毛髪の2倍以上シリコーンが蓄積していたのに対して、実施例2のヘアコンディショナーで処理した毛髪では140%であり、2回処理した毛髪の1.4倍程度の蓄積量であった。加水分解シルク/PG−プロピルメチルシランジオールと同様に両親媒性のシリコーン化合物であるポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体をアミノ変性シリコーンと共存させ配合した比較例2でもシリコーン蓄積量が2倍になることから、実施例2で配合している加水分解シルク/PG−プロピルメチルシランジオールがアミノ変性シリコーンの過剰蓄積を抑制する作用に優れていることが明らかとなった。
【0048】
以上の官能評価とシリコーン蓄積量の測定結果から、アミノ変性シリコーンは毛髪への適用回数に伴い毛髪に過剰蓄積し、10回程度の連続使用によって官能特性を低下させることが分かった。そして、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物である加水分解シルク/PG−プロピルメチルシランジオールをアミノ変性シリコーンと共に配合することによって、アミノ変性シリコーンが毛髪上に過剰蓄積することで生じる官能特性の低下を抑制し、連続使用してもアミノ変性シリコーンの良好な感触を持続させる効果があり、その効果は加水分解シルク/PG−プロピルメチルシランジオールと同様に両親媒性のシリコーン化合物であるポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体をアミノ変性シリコーンと共に配合した場合よりも顕著に優れていることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物及びアミノ変性シリコーンを含有することを特徴とする毛髪処理剤。
【請求項2】
前記シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量が0.01〜5質量%であり、かつ、アミノ変性シリコーンの含有量が0.01〜10%である請求項1に記載の毛髪処理剤。

【公開番号】特開2011−102261(P2011−102261A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257605(P2009−257605)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000147213)株式会社成和化成 (45)
【Fターム(参考)】