説明

毛髪処理剤

【課題】毛髪に柔軟性や指通りの良さ(毛髪の滑り性)を与えるといったトリートメント効果を保持しつつ、かつ充分な速乾性を有する毛髪処理剤を提供する。
【解決手段】A成分(多糖類を骨格とするものを除く、アニオン性の増粘剤)とB成分(エタノール)とを含有する第1剤と、C成分(平均重合度=800以上の高重合ジメチコンもしくは平均重合度=800以上の高重合ジメチコノール)とD成分(カチオン界面活性剤)とを含有する第2剤とを用時調製し、毛髪に塗布されることを特徴とする2剤式の毛髪処理剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は毛髪処理剤に関し、特に、毛髪に対してべたつきが少なく、毛髪に有効なトリートメント成分を補給でき、かつ速乾性のある、洗い流さない毛髪処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、パーマ剤やヘアカラー剤等の使用によって、化学的損傷を受けたり、ヘアドライヤー等の使用によって物理的損傷を受けたりする。そのため、従来、傷んだ毛髪に潤いを与えたり、毛髪の損傷を予防したりするために、ヘアトリートメント等の毛髪用化粧品が用いられている。特に最近では、ヘアカラー処理やパーマ処理により毛髪へのダメージが重なり、「毛髪が引っかかる(指通りが良くない)」、「まとまりがない」、「毛髪が硬くなる」といった問題が増えてきている。そのため、毛髪になめらかさや光沢を付与する目的で様々な毛髪用化粧品(ヘアトリートメント)が開発されている。
【0003】
また、一般的にヘアトリートメントは、「洗い流すヘアトリートメント」と「洗い流さないヘアトリートメント(以下、リーブオントリートメントと称すことがある)」とがある。例えば、リーブオントリートメントの一例として、特許文献1に開示されている毛髪用化粧品がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−51817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
具体的には、上記特許文献1に開示されている毛髪用化粧品は、炭化水素(具体的にはパラフィン類)やシリコーン類(具体的には、アミノ変性シリコーン類)や各種植物油を配合した毛髪用化粧品(リーブオントリートメント)である。
【0006】
上述したように、リーブオントリートメントは、毛髪に有効なトリートメント成分を洗い流さないため、毛髪の乾燥など、多種多様な髪のダメージに対して潤いを補給できるといったメリットがある。
【0007】
また、一方で、リーブオントリートメントの使用場面としては、リーブオントリートメントをユーザーが洗髪後にタオルなどで毛髪の水分を取り除いた状態の濡れた毛髪に塗布し、ヘアドライヤー等で毛髪を乾かすケースが多い。そのため、リーブオントリートメントには速乾性が求められていた。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている毛髪用化粧品(リーブオントリートメント)は、トリートメント効果および速乾性、ともに充分な効果を得ることができない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、毛髪に柔軟性や指通りの良さ(毛髪の滑り性)を与えるといったトリートメント効果を保持しつつ、かつ充分な速乾性を有する毛髪処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような目的を達成するために、本発明は以下の特徴を有している。すなわち、第1の発明は、A成分(多糖類を骨格とするものを除く、アニオン性の増粘剤)とB成分(エタノール)とを含有する第1剤と、C成分(平均重合度=800以上の高重合ジメチコンもしくは平均重合度=800以上の高重合ジメチコノール)とD成分(カチオン界面活性剤)とを含有する第2剤とを用時調製し、毛髪に塗布されることを特徴とする2剤式の毛髪処理剤である。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記第2剤は、E成分(アミノ変性シリコーン)をさらに含有することを特徴とする毛髪処理剤である。
【0012】
第3の発明は、A成分(多糖類を骨格とするものを除く、アニオン性の増粘剤)とB成分(エタノール)とを含有する第1剤と、C成分(平均重合度=800以上の高重合ジメチコンもしくは平均重合度=800以上の高重合ジメチコノール)、D成分(カチオン界面活性剤)、およびE成分(アミノ変性シリコーン)の3成分のうち、何れか2成分を含有する第2剤と、上記3成分のうち残りの1成分、つまりC成分、D成分、およびE成分のうち第2剤に含有されなかった残りの1成分を含有する第3剤とを用時調製し、毛髪に塗布されることを特徴とする3剤式の毛髪処理剤である。
【0013】
第4の発明は、A成分(多糖類を骨格とするものを除く、アニオン性の増粘剤)とB成分(エタノール)とを含有する第1剤と、C成分(平均重合度=800以上の高重合ジメチコンもしくは平均重合度=800以上の高重合ジメチコノール)を含有する第2剤と、D成分(カチオン界面活性剤)を含有する第3剤と、E成分(アミノ変性シリコーン)を含有する第4剤とを用時調製し、毛髪に塗布されることを特徴とする4剤式の毛髪処理剤である。
【0014】
第5の発明は、上記第1乃至第4の何れかの発明において、A成分(多糖類を骨格とするものを除く、アニオン性の増粘剤)は、カルボキシビニルポリマー、(アクリル酸/アクリル酸アルキル)共重合体、および(アクリレーツ/アクリル酸アルキル)クロスポリマー、あるいはそれらの塩類から成る群から選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする。
【0015】
第6の発明は、上記第2乃至第4の何れかの発明において、D成分(カチオン界面活性剤)の重量の値とE成分(アミノ変性シリコーン)の重量の値との和が、A成分(多糖類を骨格とするものを除く、アニオン性の増粘剤)の重量の値を超えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、毛髪に柔軟性や指通りの良さ(毛髪の滑り性)を与えるといったトリートメント効果を保持しつつ、かつ充分な速乾性を有する毛髪処理剤を提供することができる。つまり、本発明の毛髪処理剤は、毛髪に柔軟性や指通りの良さ(毛髪の滑り性)を与えるといったトリートメント効果を奏することは勿論のこと、例えば、ユーザーが洗髪後にタオルなどで毛髪の水分を取り除いた状態の濡れた毛髪に塗布し、ヘアドライヤー等で毛髪を乾かすケースを想定した場合、本発明の毛髪処理剤を使用すると毛髪を乾かす時間が短縮されるといった極めて有効な効果も奏する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る毛髪処理剤は、アニオン性の増粘剤と、アルコール類と、ポリシロキサン誘導体と、カチオン界面活性剤とを必須含有成分とする。
【0018】
本出願人は、鋭意検討した結果、上記毛髪処理剤に配合されたアニオン性の増粘剤とカチオン界面活性剤とが電気的な結合を形成し、これによって、毛髪上に強固な膜が形成され当該毛髪に柔軟性が与えられる他、毛髪のまとまり性が良好になることを見出した。
【0019】
また、上記毛髪処理剤に配合されたアルコール類によって、毛髪に塗布した後の上記毛髪処理剤の乾燥性(当該毛髪処理剤を塗布した毛髪の乾く時間が短縮)、すなわち速乾性が向上することを見出した他、上記毛髪処理剤に配合されたポリシロキサン誘導体によっても毛髪に柔軟性が与えられ、毛髪に滑り性も付与できることも見出した。
【0020】
なお、本発明に係る毛髪処理剤は、例えば、当該毛髪処理剤の必須含有成分をそれぞれ第1剤と第2剤とに分けて、2剤式の毛髪処理剤としてもよい。例えば、上記第1剤にはアニオン性の増粘剤およびアルコール類が配合され、一方、第2剤にはポリシロキサン誘導体、カチオン界面活性剤が配合されてもよい。そして、上記第1剤と上記第2剤とからなる毛髪処理剤は、上記第1剤と上記第2剤とを用時調製、つまり毛髪に塗布する直前に第1剤と第2剤とを混合し、その混合物を毛髪に塗布する。
【0021】
以下、実施例、および比較例を示し、本発明を詳説する。しかしながら、これらの説明は本発明を限定するものではない。従って、本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【0022】
言い換えると、本発明に係る毛髪処理剤は、上記必須含有成分を含んでいればよく、上述した2剤式に限られず多剤式にしてもよい。例えば、第1剤含有成分をアニオン性の増粘剤およびアルコール類とし、第2剤含有成分をポリシロキサン誘導体とし、第3剤含有成分をカチオン界面活性剤とする3剤式の毛髪処理剤としてもよい。なお、以下の説明では、一例として、第1剤と第2剤とを用時調製する2剤式の毛髪処理剤とし、上記第1剤含有成分はアニオン性の増粘剤およびアルコール類であり、第2剤含有成分はポリシロキサン誘導体およびカチオン界面活性剤である例を説明する。
【0023】
まず、第1剤について説明する。上記第1剤含有成分は、アニオン性の増粘剤およびアルコール類である。本発明に係る毛髪処理剤の第1剤で用いるアニオン性の増粘剤は、アニオン性基を有するポリマーが好ましく、特に多糖類を骨格とするものを除くものが好ましい。具体的には、水溶性ビニル系ポリマー、水溶性アクリル酸系ポリマー等、およびそれらの塩類等があげられる。特に、水溶性ビニル系ポリマーとしてカルボキシビニルポリマー、水溶性アクリル酸系ポリマーとして(アクリル酸/アクリル酸アルキル)共重合体および(アクリレーツ/アクリル酸アルキル)クロスポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム等が好適である。
【0024】
また、本発明に係る毛髪処理剤の第1剤には、上述のアニオン性の増粘剤の他に、後述する第2剤の乳化系を不安定にするためにアルコール類が配合される。これによって、第2剤の乳化系は不安定になることで、第1剤に配合されているアニオン性の増粘剤と、第2剤に配合されているカチオン界面活性剤との電気的な結合の形成が促進され、毛髪上に強固な膜が形成され、かつ、第2剤に配合されているポリシロキサン誘導体が毛髪表面上に効果的に付着するため当該毛髪に柔軟性が与えられる。なお、第1剤には上述の効果を得ることができるアルコール類が配合されていればよい。例えば、アルコール類として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール等が挙げられるが、安全性を考慮するとエタノールが好適である。
【0025】
なお、毛髪処理剤中のアルコール類の濃度、つまり、第1剤と第2剤とを用時調製した後の毛髪処理剤中のアルコール類の濃度は、2重量%〜25重量%とされる。この理由としては以下の通りであり、すなわち、毛髪処理剤中のアルコール類の濃度が、2重量%未満であると、毛髪処理剤を毛髪に付与した後の当該毛髪の速乾性が損なわれる。一方、25重量%を超えると、脱脂力(毛髪の油分の除去)が強くなり、毛髪に軋みが生じ、毛髪の滑り性が悪くなる。
【0026】
さらに、第1剤には、本発明の効果を損なわない量的質的範囲で、上記第1剤含有成分に加えて、当該第1剤のpH調整剤としてアルカリ類(例えばアルギニン、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミンなど)、酸類(例えばリン酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸など)を添加してもよいし、必要に応じて色素や香料等を適宜配合してもよい。
【0027】
次に、第2剤について説明する。上記第2剤含有成分は、本発明の効果を奏するものであれば特に限定されないが、ポリシロキサン誘導体、カチオン界面活性剤などが挙げられる。
【0028】
例えば、第2剤含有成分のポリシロキサン誘導体は、高重合ジメチコン、高重合ジメチコノール、アミノ変性シリコーン等が例示される。
【0029】
下記の一般式(1)で表される高重合ジメチコン、および下記の一般式(2)で表される高重合ジメチコノールは、特に毛髪の滑り性(指通り性)を良好にする効果がある。
【0030】
【化1】

【0031】
【化2】

【0032】
なお、高重合ジメチコン、高重合ジメチコノールそれぞれの平均重合度nは、n=800以上、より好ましくは、n=1000〜3000である。この理由としては、平均重合度nが、n=800未満であると、期待する効果(毛髪の滑り性)を充分に得ることができないからである。
【0033】
一方、アミノ変性シリコーンは、特に毛髪に柔軟性を付与する効果があり、例えば、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体及びこれらアミノ変性シリコーン類を配合したエマルジョン等が挙げられる。なお、上述した第1剤にはアニオン性の増粘剤が配合されているため、アミノ変性シリコーンを第2剤に配合すれば、アニオン性の増粘剤とアミノ変性シリコーンとが電気的な結合を形成し、これによって、毛髪上に強固な膜が形成され当該毛髪に柔軟性が与えられる他、毛髪のまとまり性が良好になる。
【0034】
次に、上記第2剤含有成分であるカチオン界面活性剤を説明する。カチオン界面活性剤は、毛髪処理剤で処理された毛髪に対するごわつき、軋みを解消する目的で配合されている。また、上述したように第1剤含有の増粘剤はアニオン性のため、アミノ変性シリコーンと同様に、当該増粘剤と上記カチオン界面活性剤とが電気的な結合を形成し、これによって、毛髪上に強固な膜が形成され当該毛髪に柔軟性が与えられる他、毛髪のまとまり性が良好になるといった効果を得ることができる。
【0035】
また、カチオン界面活性剤の具体例として、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、ベヘニルジメチルアミン、ステアリルジメチルアミン、ステアロキシプロピルジメチルアミン、ステアロキシヒドロキシプロピルジメチルアミン、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘン酸ジメチルアミノプロピルアミド等が例示される。
【0036】
なお、本発明において、上記第1剤、上記第2剤のうち一方もしくは両方に、つまり、本発明の効果を損なわない量的質的範囲で、上記必須成分に加えて、上記毛髪処理剤中に、毛髪処理剤の速乾性を促進するために揮発性シリコーン類(例えば環状シリコーンの1つであるシクロメチコンなど)が適宜配合されてもよい。
【0037】
また、本発明において、上記第1剤、上記第2剤のうち一方もしくは両方に、つまり、本発明の効果を損なわない量的質的範囲で、上記必須成分に加えて、上記毛髪処理剤中に、当該毛髪処理剤の乳化安定性向上のために、ノニオン界面活性剤(例えばポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエ−テルなど)、アニオン界面活性剤(例えばアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル硫酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルエ−テルカルボン酸塩、N−アシルグルタミン酸塩など)、両性界面活性剤(例えばアルキルアミドプロピルベタイン、アルキルベタイン、イミダゾリニウムベタインなど)が適宜配合されてもよいし、上記毛髪処理剤の粘度調節のために高級アルコール類(例えばセタノール、べへニルアルコールなど)、油剤類(例えばパラフィン、流動パラフィンなど)が適宜配合されてもよい。
【0038】
さらに、本発明において、上記第1剤、上記第2剤のうち一方もしくは両方に、つまり、本発明の効果を損なわない量的質的範囲で、上記必須成分に加えて、上記毛髪処理剤中に、上記毛髪処理剤の粘度調整剤及び感触向上剤としてノニオン性高分子(例えばグアーガム、ポリエチレングリコール、グルコマンナン、ポリアクリル酸アミド、ヒドロキシエチルセルロースなど)、アニオン性高分子(例えばキサンタンガム、カラギーナンなど)、カチオン性高分子(例えばカチオン化セルロ−ス、カチオン化グア−ガム、カチオン化ケラチン、カチオン化キトサン、ジアリル四級アンモニウム塩のホモポリマー、ジアリル四級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、四級化ポリビニルピロリドン誘導体((ジメチルアクリルアミド/メタクリル酸エチルトリモニウムクロリド)コポリマー等)など)、が適宜配合されてもよいし、毛髪にしっとり感を与えるためにエステル類(例えばパルミチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、アジピン酸ジイソプロピルなど)、ポリシロキサン誘導体類(例えばポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、フッ素変性シリコーンなど)が適宜配合されてもよい。なお、必要に応じて保湿剤、PPT類、植物抽出エキス、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、溶剤、pH調整剤、消臭剤、色素や香料等を適宜配合してもよい。
【0039】
なお、第2剤に配合されるポリシロキサン誘導体は、1種類単独、または2種類以上を適宜組み合わせて、第2剤中に配合してもよい。つまり、第2剤に配合するポリシロキサン誘導体は、高重合ジメチコンおよび/または高重合ジメチコノールとしてもよいし、高重合ジメチコンおよび/または高重合ジメチコノールに加えて、アミノ変性シリコーンを配合してもよい。例えば、第1剤含有成分をアニオン性の増粘剤およびアルコール類とし、第2剤含有成分を高重合ジメチコンおよび/または高重合ジメチコノールとし、第3剤含有成分をアミノ変性シリコーンとしてもよい。つまり、カチオン界面活性剤を含有成分とする第4剤とあわせて、4剤式の毛髪処理剤とすることも可能である。
【0040】
このように、本発明の毛髪処理剤には、アニオン性の増粘剤、アルコール類、アミノ変性シリコーン、およびカチオン界面活性剤とが配合されているので、毛髪に柔軟性が与えられる他、毛髪のまとまり性が良好になる。また、本発明の毛髪処理剤には、アルコール類が配合されているため当該毛髪処理剤を塗布した後の毛髪の乾き(乾燥性)が良好になる。
【0041】
さらに、本発明の毛髪処理剤は、上述したように上記必須成分を分け、つまり多剤式にし、毛髪に塗布する直前に上記必須成分を混合する(用時調製する)形態の毛髪処理剤である。そのため、例えば、上記必須成分をすべて含ませた単剤式の毛髪処理剤である形態に比べて、経時的な乳化物のクリーミング、乳化粒子の合一などを防ぐことができる。また、上述したように上記必須成分を分け多剤式にした場合、用時調製する際の当該必須成分の量を適宜変更(例えば2剤式の場合、第1剤および第2剤の何れか一方の量を増やして用時調製)することによって、毛髪の柔軟性、毛髪のまとまり性、および毛髪の滑り性を向上させることもできる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例および比較例に基づき更に詳細に説明するが、本発明の実施例のみに限定されるのではなく、本発明の効果を損なわない量的質的範囲で、各含有成分の組成の組み合わせや配合量を変更してもよい。
【0043】
〈試料の調製〉
表1〜表5に記載した組成に従い、実施例1〜実施例18、および比較例1〜5の各毛髪処理剤を用時調製し、以下の評価に供した。なお、評価結果は、表1〜表5にそれぞれ併記した。また、特に断らない限り、表1〜5の数値は重量%である。
【0044】
〈試験例1:トリートメント効果および毛髪処理剤の扱い易さ〉
ヘアカラーリングをしている20代〜30代の女性10名(毛髪の長さ:セミロングヘア〜ロングヘア)をパネラーとして、表1〜表5に記載したような組み合わせで第1剤および第2剤(重量比1:1)を手のひらに取り、手のひら上で当該第1剤および第2剤を混合した後、毛髪に塗布した。そして、各パネラーが各毛髪処理剤を10日間使用し、下記の評点に基づいて、トリートメント効果(「毛髪の柔軟性」、「毛髪の滑り性」)についてそれぞれ評価した。また、毛髪処理剤の扱い易さ(「第1剤と第2剤との混合性」、「塗布の容易性」)についても、下記の評点に基づいてそれぞれ評価した。具体的には、各パネラーが各評価項目について下記の基準で採点した。
+2点:非常に良い
+1点:やや良い
−1点:やや悪い
−2点:非常に悪い
【0045】
そして、表1〜表5には、各評価項目についてのパネラー10名の合計点を集計し、各評価項目の総合評価(評価結果)として下記のように示した。
◎:合計点が15点以上
○:合計点が14点以下〜7点以上
△:合計点が6点以下〜0点以上
×:合計点が0点未満(合計点がマイナス)
なお、商品価値の観点からは各項目の総合評価がいずれも○以上の評価であることが望まれる。
【0046】
〈試験例2:毛髪処理剤の速乾性評価〉
タオルで水気をふき取った毛束10gに対して、表2に記載した各毛髪処理剤を用時調製し、具体的には毛髪処理剤を毛束に0.5g(第1剤0.25g、第2剤0.25g、つまり重量比で1:1)塗布し、当該毛束の重量を測定した。その後、50℃の恒温室に15分間放置し、放置後の毛束の重量を再び測定した。なお、毛束はビューラックス社製の人毛の毛束(商品番号:BS−B3A)を使用した。
【0047】
そして、恒温室放置前後の毛束の重量差によって下記のように評価した。
◎:1.5g以上
○:1.5g未満〜1.0g以上
△:1.0g未満〜0.5g以上
×:0.5g未満
なお、恒温室放置前後の毛束の重量差が大きいほど速乾性がよい。
【0048】
(実施例1〜実施例4、比較例1)
表1に記載した組成に従い、第1剤および第2剤を用時調製し、上述の試験例1に従って各毛髪処理剤を評価した。
【0049】
【表1】

【0050】
表1に見られるように、実施例1〜実施例4の何れも、「毛髪の柔軟性」、「毛髪の滑り性」、「第1剤と第2剤との混合性」、「塗布の容易性」についてそれぞれ優れた効果が得られた。一方、表1の比較例1に見られるように、第1剤にアニオン性の増粘剤が配合されていない毛髪処理剤は、「毛髪の柔軟性」、「毛髪の滑り性」ともに良好な結果を得ることができなかった。さらに、第1剤にアニオン性の増粘剤が配合されていない毛髪処理剤は粘度が低いため、第1剤と第2剤との混合性が悪く、表1の比較例1に見られるように、第1剤にアニオン性の増粘剤が配合されていない毛髪処理剤は、「第1剤と第2剤との混合性」、「塗布の容易性」についても良好な結果を得ることができなかった。
【0051】
(実施例5〜実施例6、比較例2)
表2に記載した組成に従い、第1剤および第2剤を用時調製し、上述の試験例1および試験例2に従って各毛髪処理剤を評価した。
【0052】
【表2】

【0053】
表2に見られるように、実施例5〜実施例6の何れも、「毛髪の柔軟性」、「毛髪の滑り性」、「速乾性」について優れた効果が得られた。一方、表2の比較例2に見られるように、第1剤中にエタノールが配合されていない場合、つまり毛髪処理剤にエタノールが配合されていない当該毛髪処理剤を使用したとき「毛髪の柔軟性」、「毛髪の滑り性」、「速乾性」それぞれについて良好な結果を得ることができなかった。
【0054】
(実施例7〜実施例10、比較例3)
表3に記載した組成に従い、第1剤および第2剤を用時調製し、上述の試験例1に従って各毛髪処理剤を評価した。
【0055】
【表3】

【0056】
表3に見られるように、実施例7〜実施例9の何れも、「毛髪の柔軟性」、「毛髪の滑り性」について優れた効果が得られた。一方、表3の比較例3に見られるように、第2剤中に高重合ジメチコンおよび高重合ジメチコノールの少なくとも一方が配合されていない場合、「毛髪の柔軟性」、特に「毛髪の滑り性」について良好な結果を得ることができなかった。これより、高重合ジメチコンおよび高重合ジメチコノールが「毛髪の滑り性」に特に効果を奏することが分かる。また、表3の実施例10に見られるように、第2剤中における高重合ジメチコンの配合量によっては、アミノ変性シリコーン(具体的には、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体)が第2剤中に配合されていなくとも、「毛髪の柔軟性」、「毛髪の滑り性」について良好な効果が得られることも分かった。言い換えると、第2剤中に高重合ジメチコンおよび高重合ジメチコノールの少なくとも一方が配合されていればよく、第2剤中にアミノ変性シリコーンが配合されていなくとも、第2剤中における高重合ジメチコンおよび高重合ジメチコノールの配合量を適宜調整することにより「毛髪の柔軟性」、「毛髪の滑り性」について良好な結果を得ることもできる。
【0057】
(実施例11〜実施例14、比較例4)
表4に記載した組成に従い、第1剤および第2剤を用時調製し、上述の試験例1に従って各毛髪処理剤を評価した。
【表4】

【0058】
表4に見られるように、実施例11〜実施例14の何れも、「毛髪の柔軟性」、「毛髪の滑り性」について良好な効果が得られた。また、表4の実施例11〜実施例13と実施例14から分かるように、毛髪処理剤におけるアミノ変性シリコーンとカチオン界面活性剤との総量がアニオン性の増粘剤の量よりも上回っている場合、「毛髪の柔軟性」、「毛髪の滑り性」について特に優れた効果が得られた。つまり、第2剤に配合されているアミノ変性シリコーンの重量%の値とカチオン界面活性剤の重量%の値の和が、第1剤に配合されているアニオン性の増粘剤の重量%の値よりも上回っていれば、「毛髪の柔軟性」、「毛髪の滑り性」について特に優れた効果が得られる。一方、表4の比較例4に見られるように、第2剤中に高重合ジメチコン、高重合ジメチコノール、およびアミノ変性シリコーンが配合されていない場合、「毛髪の柔軟性」、「毛髪の滑り性」ともに良好な結果を得ることができなかった。
【0059】
(実施例15〜実施例18、比較例5)
表5に記載した組成に従い、第1剤および第2剤を用時調製し、上述の試験例1に従って各毛髪処理剤を評価した。
【表5】

【0060】
表5に見られるように、実施例15〜実施例18の何れも、「毛髪の柔軟性」、「毛髪の滑り性」について優れた効果が得られた。特に、表5の実施例15〜実施例17と実施例18とから分かるように、カチオン界面活性剤として、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、もしくは臭化ステアリルトリメチルアンモニウムを用いれば、「毛髪の柔軟性」、「毛髪の滑り性」について特に優れた効果が得られる。一方、表5の比較例5に見られるように、第2剤中にカチオン界面活性剤が配合されていない場合、「毛髪の柔軟性」、「毛髪の滑り性」について良好な結果を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る毛髪処理剤は、毛髪に柔軟性や指通りの良さ(毛髪の滑り性)を与えるといったトリートメント効果を保持しつつ、かつ充分な速乾性を有する、洗い流さない毛髪処理剤(トリートメント)等に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A成分とB成分とを含有する第1剤と、
C成分とD成分とを含有する第2剤とを用時調製し、毛髪に塗布されることを特徴とする2剤式の毛髪処理剤。
A成分:アニオン性の増粘剤(多糖類を骨格とするものを除く)
B成分:エタノール
C成分:高重合ジメチコン(平均重合度=800以上)もしくは高重合ジメチコノール(平均重合度=800以上)
D成分:カチオン界面活性剤
【請求項2】
前記第2剤は、E成分をさらに含有することを特徴とする、請求項1に記載の毛髪処理剤。
E成分:アミノ変性シリコーン
【請求項3】
A成分とB成分とを含有する第1剤と、
C成分、D成分、およびE成分の3成分のうち、何れか2成分を含有する第2剤と、
前記3成分のうち、残りの1成分を含有する第3剤とを用時調製し、毛髪に塗布されることを特徴とする3剤式の毛髪処理剤。
A成分:アニオン性の増粘剤(多糖類を骨格とするものを除く)
B成分:エタノール
C成分:高重合ジメチコン(平均重合度=800以上)もしくは高重合ジメチコノール(平均重合度=800以上)
D成分:カチオン界面活性剤
E成分:アミノ変性シリコーン
【請求項4】
A成分とB成分とを含有する第1剤と、
C成分を含有する第2剤と、
D成分を含有する第3剤と、
E成分を含有する第4剤とを用時調製し、毛髪に塗布されることを特徴とする4剤式の毛髪処理剤。
A成分:アニオン性の増粘剤(多糖類を骨格とするものを除く)
B成分:エタノール
C成分:高重合ジメチコン(平均重合度=800以上)もしくは高重合ジメチコノール(平均重合度=800以上)
D成分:カチオン界面活性剤
E成分:アミノ変性シリコーン
【請求項5】
前記A成分は、カルボキシビニルポリマー、(アクリル酸/アクリル酸アルキル)共重合体、および(アクリレーツ/アクリル酸アルキル)クロスポリマー、あるいはそれらの塩類から成る群から選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする、請求項1乃至4の何れかに記載の毛髪処理剤。
【請求項6】
前記D成分の重量の値と前記E成分の重量の値との和が、前記A成分の重量の値を超えることを特徴とする、請求項2乃至4の何れかに記載の毛髪処理剤。

【公開番号】特開2011−73991(P2011−73991A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225061(P2009−225061)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【特許番号】特許第4625893号(P4625893)
【特許公報発行日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(592028514)コタ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】