説明

毛髪化粧料

【課題】優れた清涼感及び清涼感の持続効果を有すると共に、使用直後のむせを抑制することにより、優れた使用感を有する毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】下記(A)〜(D)成分を含有する毛髪化粧料。
(A)l−メントール
(B)バニリルブチルエーテル
(C)オレイン酸と炭素数1〜5のアルコールとのエステル、平均ポリオキシエチレン付加モル数が1〜5のポリオキシエチレンオレイルエーテル、及びオレイルアルコールとヒドロキシ酸とのエステルから選ばれる1種又は2種以上のオレイン酸誘導体
(D)エタノール

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清涼感及び清涼感の持続性に優れるとともに、使用時のむせの発生を抑制することで、より使用性を向上させた毛髪化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
頭皮及び頭髪用として用いられる化粧品、トイレタリー製品、医薬品等の各種製品は、製品に本来要求される機能の他、使用直後からある程度の時間まで清涼感が得られる機能がさらに付与されたものが求められており、このような機能が付与された各種商品が市販されている。
【0003】
従来から、清涼感向上又は清涼感の持続性を改善するために、例えば、l−メントールを始めとした各種メントール誘導体、カンファー、スペアミント、ペパーミント等の各種の冷感剤が提案されている。さらに冷感効果を高めるため、例えば二種以上の冷感剤の組み合わせ、あるいは冷感剤と冷感剤以外の物質との組み合わせによる冷感効果向上のための検討がなされており、具体的には、冷感効果の向上及び冷感持続のために、メントール誘導体とバニリルブチルエーテルの併用が提案されている(例えば、特許文献1:特開2000−44924号公報参照)。さらに、メントールと、N−p−メンタン−3−カルボキサミドと、バニリルブチルエーテルとの併用により、毛髪及び身体の洗浄時における清涼感向上及び洗浄後の冷感持続を改善する技術が提案されている(特開2005−8535号公報)。
【0004】
しかしながら、これらの冷感剤が配合された製剤を使用直後に洗い流さない用途で用いた場合、特に頭部への噴霧等で用いると使用直後にむせる等の不具合が生じるため、未だ満足できるものが得られておらず、使用直後のむせを改善した毛髪化粧料が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開2000−44924号公報
【特許文献2】特開2005−8535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、優れた清涼感及び清涼感の持続効果を有すると共に、使用直後のむせを抑制することにより、優れた使用感を有する毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(A)l−メントールと、(B)バニリルブチルエーテルと、(C)特定のオレイン酸誘導体とを併用することにより、清涼感及び清涼感の持続性が向上し、さらに、頭髪に使用した場合のむせを抑制できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
従って、本発明は、下記(A)〜(D)成分を含有する毛髪化粧料を提供する。
(A)l−メントール
(B)バニリルブチルエーテル
(C)オレイン酸と炭素数1〜5のアルコールとのエステル、平均ポリオキシエチレン付加モル数が1〜5のポリオキシエチレンオレイルエーテル、及びオレイルアルコールとヒドロキシ酸とのエステルから選ばれる1種又は2種以上のオレイン酸誘導体
(D)エタノール
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、清涼感及び清涼感の持続性に優れるとともに、使用時のむせの発生を抑制することで、優れた使用感を有する毛髪化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の毛髪化粧料は、(A)l−メントールと、(B)バニリルブチルエーテルと、
(C)オレイン酸と炭素数1〜5のアルコールとのエステル、平均ポリオキシエチレン付加モル数が1〜5のポリオキシエチレンオレイルエーテル、及びオレイルアルコールとヒドロキシ酸とのエステルから選ばれる1種又は2種以上のオレイン酸誘導体と、(D)エタノールとを含有するものである。
【0011】
(A)成分のl−メントールとしては、合成して得られるもの又は天然物から得られるものいずれも用いることができ、これらを1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。(A)成分の配合量は、毛髪化粧料全量に対して0.001〜2.0質量%(以下、単に「%」と示す)が好ましく、より好ましくは0.01〜1.0%である。配合量が0.001%に満たないと、満足な清涼感及び浸透感が発現されない場合があり、また、2.0%を超えて配合しても、刺激感が強くなる場合があり、それ以上の効果は発揮されない。
【0012】
(B)成分はバニリルブチルエーテルであり、その配合量は、毛髪化粧料全量に対して0.001〜0.5%が好ましく、より好ましくは0.01〜0.05%である。配合量が0.001%未満であると、満足な清涼感持続効果が得られない場合があり、0.5%を超えると、刺激感が強くなる場合がある。
【0013】
(C)成分は、(C−1)オレイン酸と炭素数1〜5のアルコールとのエステル、(C−2)平均ポリオキシエチレン付加モル数が1〜5のポリオキシエチレンオレイルエーテル、及び(C−3)オレイルアルコールとヒドロキシ酸とのエステルから選ばれる1種又は2種以上のオレイン酸誘導体である。
(C−1)オレイン酸と炭素数1〜5のアルコールとのエステルにおける炭素数1〜5のアルコールとは、1価アルコール又は多価アルコールをいい、具体的には、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。オレイン酸と炭素数1〜5のアルコールとしては、例えば、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、オレイン酸プロピレングリコール等が挙げられる。
(C−2)平均ポリオキシエチレン付加モル数が1〜5のポリオキシエチレンオレイルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレン(2モル)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(5モル)オレイルエーテル等が挙げられる。
(C−3)オレイルアルコールとヒドロキシ酸とのエステルとしては、乳酸オレイル、リンゴ酸ジオレイル、クエン酸トリオレイル等が挙げられる。
【0014】
(C)成分の配合量は、その種類によって、また、製剤のタイプにより異なるものであるが、毛髪化粧料全量に対して0.01〜15%が好ましく、より好ましくは、0.1〜10%である。配合量が0.01%未満では、満足な清涼感持続効果が得られない場合があり、また、10%を超えて配合しても、通常それ以上の効果には差がないが、使用時にべたつき等を生じる場合がある。
【0015】
(D)成分はエタノールであり、合成して得られるもの又は発酵により得られるものいずれも用いることができ、これらを1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。(D)成分の配合量は、毛髪化粧料全量に対して30%以上が好ましく、より好ましくは50%以上である。配合量が30%に満たない場合、毛髪及び頭皮の乾燥に時間を要するためべたつき等が生じる場合がある。なお、エタノール配合量の上限は特に限定されないが、95%である。
【0016】
本発明の毛髪化粧料は、上記(A)〜(D)成分を含有するものであるが、各成分の相乗効果を最大限に発揮する配合割合は、(A)/(B)で表される(A)成分と、(B)成分との質量比が50/1〜1/1の範囲が好ましく、より好ましくは20/1〜4/1である。
【0017】
本発明の毛髪化粧料には、各種有効成分を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて
配合することができる。有効成分としては、細胞賦活剤、ビタミン、ホルモン、血管拡張剤、アミノ酸、抗炎症剤、殺菌剤、皮膚機能亢進剤、角質溶解剤等が挙げられる。細胞賦活剤としては、ペンタデカン酸グリセリド、6−ベンジルアミノプリン、トランス−3,4’−ジメチル−3ヒドロキシフラバノン等が挙げられる。ビタミンとしては、酢酸トコフェロール、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パルミチン酸レチノール、β−カロチン、カルシフェロール、葉酸、ビオチン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテニルエチルエーテル、アスコルビン酸等が挙げられる。血管拡張剤としては、ミノキシジル等が挙げられ、アミノ酸としては、アルギニン、アスパラギン酸、メチオニン、セリン、グリシン、グルタミン酸、シスチン等が挙げられる。抗炎症剤としては、β−グリチルレチン酸、グリチルリチン酸類、塩酸ピリドキシン等が挙げられ、殺菌剤としては、イソプロピルメチルフェノール、ピロクトンオラミン等が挙げられ、角質溶解剤としては、サリチル酸、レゾルシン等が挙げられる。
【0018】
本発明の毛髪化粧料には、上記必須成分及び各種有効成分の他に、その使用目的等に応じ、上記成分以外に任意成分を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合することができる。このような成分としては、例えば、非イオン性界面活性剤、糖質系界面活性剤、及びその他の界面活性剤、セルロース、油脂、高分子樹脂、色剤、香料、紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0019】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油モノ又はイソステアレート、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。セルロースとしては、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。油脂としてはサフラワー油、月見草油、ホホバ油等が、高分子樹脂としては、両性、カチオン性、アニオン性及びノニオン性ポリマーが、紫外線吸収剤としては、メトキシケイ皮酸オクチル(ネオヘリオパンAV;Haamann&Reimer社の商品名)、オキシベンゾン、ウロカニン酸等が挙げられる。
【0020】
本発明の毛髪化粧料は常法に従って、均一溶液、ローション、ジェル、ムース、スプレー等の形態で使用することができる。この中でも、使用時のむせの発生を抑制する効果に優れることからスプレー剤とすることが好ましい。スプレー剤としては、ノンガスタイプと、エアゾールタイプが挙げられるが、エアゾールタイプの場合、上記の成分以外に、噴射剤を配合する。噴射剤としては、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;ブタン、プロパン、イソブタン、液化石油ガス、ジメチルエーテル等の可燃性ガス;窒素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素ガス等の圧縮ガス等が挙げられる。なお、上記(A)〜(D)成分の配合量においては、毛髪化粧料中に噴射剤は含まないものとする。
【0021】
容器は特に限定されず、剤型に応じて適宜選択すればよいが、ノンガスタイプのスプレー剤の場合は、トリガー付容器、ディスペンサー付容器等が挙げられる。
【0022】
また、本発明の毛髪化粧料は、シャンプー、リンス、トリートメント、コンディショナー、整髪剤、養育毛剤等に用いることができるが、使用時のむせの発生を抑制効果に優れることから、使用直後に洗い流さないタイプ(リーブオンタイプ)のトリートメント、コンディショナー、ヘアワックス、ヘアジェル、ヘアクリーム、ヘアスプレー、養育毛剤等に好適である。本発明の毛髪化粧料のpHは3〜7程度が好ましい。
【実施例】
【0023】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示す。
【0024】
[実施例1〜5、比較例1〜3]
表1に示す組成の毛髪化粧料を常法に基づいて調製した。得られた毛髪化粧料について、下記評価を行った。結果を表中に併記する。
【0025】
試験例1:使用時のむせ抑制効果
10名の男性を対象とし、試料をトリガー付容器に充填した後、適量を前頭部から頭頂部へ噴霧し、噴霧直後にむせを感じる程度を被験者自身によって4段階評価(4点:全くむせない、3点:少しむせがある(許容範囲内)、2点:むせる、1点:非常にむせる)として判定した。結果は、3点以上をむせ抑制効果ありとして、10名中の3点以上の人の割合から、下記の評価基準に基づいて示した。
<評価基準>
◎:80%以上
○:60%以上〜80%未満
△:40%以上〜60%未満
×:40%未満
【0026】
試験例2:清涼感の持続性評価
10名の男性を対象とし、試料適量を前頭部から頭頂部へ塗擦し、20分後に清涼感を感じる程度を被験者自身によって3段階評価(3点:清涼感をかなり感じる、2点:清涼感をやや感じる、1点:清涼感を感じない)とし、清涼感の持続性として判定した。結果は、3点以上を清涼感の持続効果ありとして、10名中の3点以上の人の割合から、下記の評価基準に基づいて示した。
<評価基準>
◎:80%以上
○:60%以上〜80%未満
△:40%以上〜60%未満
×:40%未満
【0027】
【表1】

【0028】
本発明の毛髪化粧料(実施例1〜5)は、いずれもむせ抑制効果及び清涼感持続効果において、優れた特性を示しているのに対し、本発明の範囲外の毛髪化粧料(比較例1〜3)はいずれも優れた特性を示さなかった。
【0029】
下記組成の養育毛剤組成物を各剤型の常法に準じて調製した。
[実施例6]
養毛剤
組成 %
(原液)
l−メントール(合成) 0.3
バニリルブチルエーテル 0.03
酢酸トコフェロール 0.1
ポリエチレングリコール300 1.0
オレイン酸エチル 3.0
グリセリン 1.0
ヤシ油脂肪酸ソルビタン 1.0
ショ糖ミリスチン酸エステル 1.0
メンチルカルボキサミド 0.1
クエン酸 0.1
精製水 20.0
95%エタノール 残部
原液合計 100.0
(希釈用充填液)
上記原液 70%
ジメチルエーテル 29.5%
窒素 0.5%
合計 100.0
(A)/(B)=10/1
【0030】
[実施例7]
育毛ローション
組成 %
l−メントール(合成) 0.7
バニリルブチルエーテル 0.1
POE(2)オレイルエーテル 1.0
オレイン酸プロピレングリコール 1.0
D−パントテニルアルコール 2.0
ニコチン酸アミド 1.0
β−グリチルレチン酸 0.5
イソプロピルメチルフェノール 0.5
ピロクトンオラミン 0.1
ポリエチレングリコール400 0.1
メンチルカルボキサミド 0.2
メンチルグリセリルエーテル 0.2
クエン酸 0.05
香料* 0.05
精製水 10.0
99%エタノール 残部
合計 100.0
(A)/(B)=7/1
*特開2003−113019記載表2のB組成
【0031】
[実施例8]
育毛スプレー
組成 %
l−メントール(発酵) 1.0
バニリルブチルエーテル 0.05
オレイン酸エチル 1.0
モノペンタデカン酸グリセリド 2.0
酢酸トコフェロール 0.5
β−グリチルレチン酸 0.5
ポリエチレングリコール300 0.5
ミリスチン酸イソプロピル 2.0
乳酸オクチルドデシル 2.0
両性ポリマー*1 0.2
コハク酸 0.3
ショ糖ミリスチン酸エステル 0.5
モノラウリン酸ソルビタン 0.5
ミリスチン酸デカグリセリル 0.5
グリセリン 0.05
メンチルカルボキサミド 0.2
精製水 0.3
香料*2 0.5
99%エタノール 残部
原液合計 100.0
(希釈用充填液)
上記原液 80%
LPG 19.9%
窒素 0.1%
合計 100.0
(A)/(B)=20/1

*1:N−メタクロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム・α−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキル共重合体
*2:特開2003−113019記載表2のC組成
【0032】
上記実施例6〜8の各種剤型の養育毛剤組成物について上記実施例1〜4と同様にむせ抑制効果及び清涼感の持続性を評価したところ、いずれも優れた効果を示した。
【0033】
実施例及び比較例で使用した原料を下記に示す。
【0034】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(D)成分を含有する毛髪化粧料。
(A)l−メントール
(B)バニリルブチルエーテル
(C)オレイン酸と炭素数1〜5のアルコールとのエステル、平均ポリオキシエチレン付加モル数が1〜5のポリオキシエチレンオレイルエーテル、及びオレイルアルコールとヒドロキシ酸とのエステルから選ばれる1種又は2種以上のオレイン酸誘導体
(D)エタノール

【公開番号】特開2008−143785(P2008−143785A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329173(P2006−329173)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】