説明

毛髪化粧料

【課題】種々の外的要因によって損傷を受けた毛髪を補修することができる毛髪化粧料、及びその毛髪化粧料を用いて毛髪を補修する方法の提供。
【解決手段】次の成分(a)及び(b)を含有する毛髪化粧料、及び当該毛髪化粧料を毛髪に適用する毛髪処理方法。
(a) アミノ酸残基数が5〜50で、含イオウアミノ酸残基及びそれらの誘導体を含まない1種又は2種以上のペプチド
(b) 毛髪膨潤性有機溶剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の外的要因によって損傷を受けた毛髪を補修することができる毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は種々の外的要因によってケラチンタンパク質が物理的あるいは化学的に変性し、枝毛や切れ毛の発生、毛髪表面の摩擦力の増加、毛髪の張り・コシの低下、毛髪間の絡まり、毛髪のパサツキ、感触の劣化等を起こすことが知られている(非特許文献1参照)。
【0003】
このような毛髪の損傷を予防又は改善するために、シリコーン類や多糖類、ポリペプチド類、ポリペプチド誘導体、界面活性剤、ポリオール類、アミノ酸類、油脂、植物エキス、紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤等が単独で又は複数組み合わせて使用され、特に、ポリペプチド類あるいはポリペプチド誘導体は、毛髪との親和性や有効性の点から着目され、多数技術提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1ではヒドロキシル基を有するアミノ酸が最も多いタンパク質、特許文献2ではγ−ポリグルタミン酸、特許文献3ではタンパク質を加水分解して得られるペプチドと特定の組成を有するラノリン脂肪酸とを縮合して得られるアシル化ペプチド、特許文献4では側鎖アミノ基をシリル化したペプチドの使用が提案されている。
しかし、これらポリペプチド類あるいはポリペプチド誘導体のアミノ酸組成は、幅広い分子量分布を持つ混合物であったり、タンパク質源ごと、製造単位ごとのアミノ酸組成が必ずしも一定ではなかったりするため、上述の効果にばらつきが生じやすいとともに、分子量の大きなポリペプチド類あるいはポリペプチド誘導体は、一般に毛髪への浸透性が低く、毛髪表面の改質によって毛髪の外観や手触りなどの感覚的な改善を示すのみで、毛髪内部の状態を改善するといった本質的な毛髪の損傷予防又は改善には十分ではなく、分子量の小さなポリペプチド類あるいはポリペプチド誘導体は、一般に毛髪での残存性が低いため毛髪の損傷予防又は改善効果の持続性が低くなり、いずれの場合でも枝毛や枝毛の発生を十分には予防できないという問題点があった。
【0005】
【非特許文献1】C.R. Robbins, "Chemical and Physical Behavior of Human Hair", Chapter 8, Springer-Verlag, New York, 2002
【特許文献1】特開2006-131579号公報
【特許文献2】特開2004-269430号公報
【特許文献3】特開平11-302300号公報
【特許文献4】特開2000-86462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明は、種々の外的要因によって損傷を受けた毛髪を補修することができる毛髪化粧料を提供すること、並びにその毛髪化粧料を用いて毛髪を補修する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定のペプチドが毛髪への浸透性が良好であり、これを毛髪化粧料中で毛髪を膨潤させる有機溶剤と共に用いることにより、顕著な損傷修復効果を示すことを見出した。
【0008】
本発明は、次の成分(a)及び(b)を含有する毛髪化粧料を提供するものである。
(a) アミノ酸残基数が5〜50で、含イオウアミノ酸残基及びそれらの誘導体を含まない1種又は2種以上のペプチド
(b) 毛髪膨潤性有機溶剤
【0009】
更に本発明は、上記の毛髪化粧料を毛髪に適用する毛髪処理方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の毛髪化粧料は、種々の外的要因によって損傷を受けた毛髪を補修することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
〔成分(a)〕
本発明の毛髪化粧料で用いられる成分(a)のペプチドは、分子内あるいは分子間の架橋を形成する含イオウアミノ酸残基又はそれらの誘導体を含まないため、毛髪タンパク質との相互作用が小さく、毛髪浸透性を示すものである。
【0012】
成分(a)のペプチドとしては、より高い毛髪浸透性の観点から、全配列中のアミノ酸残基数のうち、塩基性アミノ酸残基数及び非極性アミノ酸残基数の占める比率が、それぞれ5〜25%、30〜85%であるものが好ましい。
【0013】
ここで、非極性アミノ酸、塩基性アミノ酸としては、それぞれ非極性、塩基性のアミノ酸として知られているいずれの化合物でもよく、例えば非極性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、バリン等が挙げられ、塩基性アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジン等が挙げられる。なお、極性アミノ酸としては、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン等が挙げられ、酸性アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。
【0014】
また、成分(a)は、組成物中への配合性と組成物中での安定性の観点から、アミノ酸残基数が10〜30、特に20〜25であるものが好ましく、分子量が1500〜3500、特に2000〜2800であるものが特に好ましい。なかでも、塩基性アミノ酸残基数が4又は5、非極性アミノ酸残基数が10以上であるものが好ましい。更に、成分(a)としては、C末端アミノ酸が塩基性アミノ酸であるものが好ましく、リジンであるものが特に好ましい。
【0015】
成分(a)として特に好ましいペプチドの具体的な例としては、配列番号1〜3のいずれかで示されるペプチド、又は当該ペプチドの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ毛髪浸透性であるペプチドが挙げられる。
【0016】
成分(a)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、本発明の毛髪化粧料中の含有量は、0.001〜5質量%が好ましく、更には0.005〜3質量%、特に0.01〜2.5質量%が好ましい。
【0017】
〔成分(b)〕
本発明の毛髪化粧料で用いられる成分(b)としては、毛髪を膨潤させる液体状有機化合物であれば特に限定されず、いずれの化合物でもよいが、例えば、低級アルキレンカーボネート、芳香族アルコール、N-アルキルピロリドン等を挙げることができる。
【0018】
より具体的には、低級アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。芳香族アルコールとしては、例えば、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、β-フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコール、フェニルプロパノール、α-メチルベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、フェノキシエタノール、p-アニシルアルコール等が挙げられる。N-アルキルピロリドンとしては、例えば、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N-オクチルピロリドン等が挙げられる。
【0019】
これら毛髪膨潤性有機溶剤のうち、成分(a)の効果を高め、組成物の使用感、粘度、各種基剤との相溶性の観点から、プロピレンカーボネート、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノールが特に好ましい。
【0020】
成分(b)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、本発明の毛髪化粧料中の含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、更には0.25〜15質量%、特に0.4〜10質量%が好ましい。
【0021】
〔その他の成分〕
本発明の毛髪化粧料には、更に界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤のいずれも使用することができる。
【0022】
カチオン界面活性剤としては、モノ長鎖アルキル四級アンモニウム塩が好ましく、具体的には、セトリモニウムクロリド、ステアルトリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、ステアラルコニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド等が挙げられ、特にステアルトリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリドが好ましい。
【0023】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル系、高級脂肪酸ショ糖エステル系、ポリグリセリン脂肪酸エステル系、高級脂肪酸モノ又はジエタノールアミド系、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル系、アルキルサッカライド系、アルキルアミンオキサイド系、アルキルアミドアミンオキサイド系等が挙げられる。これらのうち、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、ポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテル系が特に好ましい。
【0024】
両性界面活性剤としてはイミダゾリン系、カルボベタイン系、アミドベタイン系、スルホベタイン系、ヒドロキシスルホベタイン系、アミドスルホベタイン系等が挙げられる。
【0025】
アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩系、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩系、アルキル又はアルケニル硫酸塩系、オレフィンスルホン酸塩系、アルカンスルホン酸塩系、飽和又は不飽和脂肪酸塩系、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩系、α-スルホン脂肪酸塩系、N-アシルアミノ酸系、リン酸モノ又はジエステル系、スルホコハク酸エステル系等が挙げられる。アルキルエーテル硫酸塩系としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩系が挙げられる。これらアニオン界面活性剤のアニオン性基の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;炭素数2又は3のアルカノール基を1〜3個有するアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)を挙げることができる。
【0026】
界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、本発明の毛髪化粧料中の含有量は、感触、乳化性能の点で、0.1〜30質量%、特に0.5〜20質量%が好ましい。
【0027】
本発明の毛髪化粧料には、更にカチオン性ポリマーを含有させることができる。カチオン性ポリマーとは、カチオン基又はカチオン基にイオン化され得る基を有するポリマーをいい、全体としてカチオン性となる両性ポリマーも含まれる。すなわち、カチオン性ポリマーとしては、ポリマー鎖の側鎖にアミノ基又はアンモニウム基を含むか、又はジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含む水溶性のもの、例えばカチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、4級化ポリビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらのうち、特にシャンプー時の柔らかさ、滑らかさ及び指の通り易さ、乾燥時のまとまり易さ及び保湿性という効果及び剤の安定性の点から、ジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含むポリマー、4級化ポリビニルピロリドン誘導体、カチオン化セルロース誘導体が好ましく、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、カチオン化セルロース誘導体がより好ましい。
【0028】
カチオン性ポリマーの具体例としては、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド重合体(ポリクオタニウム-6,例えばマーコート100;ナルコジャパン社)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム-22,例えばマーコート280,同295;ナルコジャパン社)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリル酸アミド共重合体(ポリクオタニウム-7,例えばマーコート2200;ナルコジャパン社)、4級化ポリビニルピロリドン誘導体(ポリクオタニウム-11,例えばガフカット734、同755、同755N;アイエスピー・ジャパン社)、カチオン化セルロース誘導体(ポリクオタニウム-10,例えばポイズC-150L、同C-60H、同C-80M;花王社、UCAREポリマーJR-125、同JR-400、同JR-30M、同LR-400、同LR-30M;以上、ダウ・ケミカル日本社)等が挙げられる。
【0029】
これらカチオン性ポリマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、本発明の毛髪化粧料中の含有量は、感触向上効果と処方安定性の点から、0.001〜20質量%が好ましく、更には0.01〜10質量%、特に0.05〜5質量%が好ましい。
【0030】
本発明の毛髪化粧料には、優れた使用感を付与するために、シリコーン類を含有させることができる。シリコーン類としては、ポリシロキサン類、変性シリコーン類(例えば、アミノ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等)、環状ポリシロキサンが挙げられるが、特に、ポリシロキサン類、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーンが好ましい。市販品の具体例としては、SH200-1,000,000cs、BY11-026、FZ-2231(東レ・ダウコーニング社)、TSF451-100MA(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・シャパン社)等のポリシロキサン類;TSF4440(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・シャパン社)、KF-6005、KF-6012(信越化学工業社)、SS-2910(東レ・ダウコーニング社)等のポリエーテル変性シリコーン、XF42-B8922、XF42-C0330(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・シャパン社)、SF8451C、SF8452C 、SF8457C 、SM8704C(東レ・ダウコーニング社)、KF-867(信越化学工業社)等のアミノ変性シリコーン;KF-1046(信越化学工業社)等のポリシロキサンとアミノ変性シリコーンとの混合物が挙げられる。
【0031】
上記シリコーン類は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、本発明の毛髪化粧料中の含有量は、十分な効果とベタツキの抑制の点から、0.02〜40質量%が好ましく、更には0.1〜20質量%、特に0.2〜15質量%が好ましい。
【0032】
本発明の毛髪化粧料には、感触の改善、安定性向上の観点から、高級アルコールを含有させることができる。高級アルコールは、界面活性剤と構造体を形成して毛髪化粧料の分離を防ぐと共に、すすぎ時の感触を改善する効果がある。
【0033】
高級アルコールとしては、炭素数が8〜26、特に16〜22のものが好ましく、具体的には、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
【0034】
高級アルコールは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、本発明の毛髪化粧料中の含有量は、0.01〜20質量%、特に0.1〜10質量%が好ましい。
【0035】
本発明の毛髪化粧料には、媒体として、水及び必要により成分(b)以外の有機溶剤が使用される。このような有機溶剤としては、エタノール、2-プロパノール等の低級アルカノール類;プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン等のポリオール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類が挙げられる。
【0036】
本発明の毛髪化粧料には、上記成分のほかに通常化粧品原料として用いられる他の成分を加えることができる。このような任意成分としては、炭化水素類、動植物油脂、高級脂肪酸類、天然又は合成の高分子エーテル類、防腐剤、キレート剤、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、香料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0037】
本発明の毛髪化粧料は、毛髪に適用する形態であればいかなる形態とすることも可能であり、具体的には、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、整髪料、染毛料等を挙げることができ、液状、クリーム状、ゲル状、ミスト状、フォーム状、スプレー状等のさまざまな剤型をとることができる。
【0038】
本発明の毛髪化粧料による毛髪処理方法としては、毛髪化粧料の用途に応じて、乾いた毛髪又は湿らせた毛髪に質量比(毛髪化粧料/毛髪)0.01〜3の割合で塗布し、所定時間放置後洗い流せばよい。毛髪への塗布後の放置時間は、好ましくは1分〜24時間であり、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナーの場合は、より好ましくは1分〜10分、整髪料の場合は、より好ましくは30分〜18時間、染毛料の場合は、より好ましくは5分〜40分放置すれば、毛髪へ十分に浸透させることができ、本発明の効果を高めることができる。
【実施例】
【0039】
以下に示す実施例及び比較例において、配列番号1〜3に示すペプチド(成分(a)に該当)をそれぞれペプチド(1)、ペプチド(2)、ペプチド(3)とする。また、配列番号4に示すペプチド(成分(a)に該当せず)をペプチド(4)とする。
【0040】
実施例1及び比較例1〜3
<試験1>
表1に示す組成からなる毛髪化粧料を常法により調製し、日本人女性の毛髪から作製した試験毛束を、下記処理方法に従って処理した後、疲労寿命試験を行った。
【0041】
【表1】

【0042】
[試験毛束]
一人の日本人女性から、染毛処理、脱色処理又はパーマネント処理が施されていない12〜15cmの直毛毛髪約100本を採取し、その毛髪全量に対して、
(1)等量の市販脱色剤で脱色処理
(2)等量の市販シャンプーで洗浄
(3)等量の市販コンディショナーで処理
(4)ブロードライ
の4工程からなる脱色サイクル処理を8回繰り返した。各毛髪の中心付近の直径をマイクロメータで計測し、直径75〜85μmの毛髪15本を4組選び出し、それぞれ根元側をエポキシ系接着剤と粘着テープで固定し、毛先側を切り揃えて毛髪部分が10cmの試験毛束4組を作製した。
【0043】
[処理方法]
処理工程:
実施例1又は比較例1〜3の毛髪化粧料をそれぞれ5mL測りとり、15本の毛髪からなる試験毛束全体を入れた全長12cmのガラス管に入れ、毛髪化粧料で試験毛束全体を濡らした。これらのガラス管を37℃に保った水浴に浸け、1分間当たり100回の振とうを加えながら300分間保った。
洗浄・乾燥工程:
試験毛束をガラス管から取り出し、イオン交換水で満たした全量30mLのサンプル管に移し、30秒間激しく振とうして洗浄する操作を2回行った。試験毛束をプラスチックフィルム上に伸ばして置き、市販のシャンプーを少量滴下し、プラスチックフィルムを試験毛束が伸びる方向に円筒形に丸め、1分間指先で軽く摩擦して試験毛束をシャンプー洗浄した。試験毛束をプラスチックフィルムから取り出し、上述のサンプル管を用いる洗浄操作を2回行った後、終夜ぶら下げて自然乾燥させた。
【0044】
[疲労寿命試験]
試験毛束の根元側を切断して15本の毛髪に分割し、両端に丸形圧着端子を取り付け、毛髪全長が8cmになるようにエポキシ系接着剤で固定した。20℃、相対湿度65%に制御した試験室に、根元側が上になるようにぶら下げて終夜放置した。
試験室内に設置された疲労寿命測定装置〔ジャーナル・オブ・コスメティック・サイエンス、50巻、198〜200ページ(1999年)〕に根元側が上になるように装着し、各毛髪に55gの重りを負荷した。根元側の圧着端子を上下に動かして、各毛髪が荷重を感じない自然長になるように調整し、初期状態とした。装置に装着された全毛髪の根元側圧着端子を周期1秒で上方向に3cm動かし、初期状態に戻すという等速サイクル延伸を行い、各毛髪が疲労によって自発的に切断されるまでの回数を測定した。
得られたデータを元に、以下のようにして特性寿命(θ)を求めた。
疲労破壊現象を統計的に取り扱うため、広範囲にばらつきの特性を評価できる「ワイブル分布」を用いた。ワイブル分布の式数1において、両辺の自然対数を2回取って得られる数2からパラメータθ(特性寿命)を求める。x軸をln x、y軸をln[ln[1/[1−F(x)]]]とし、各データをプロットして近似直線を求め、切片=b lnθ、傾き=bから特性寿命θを算出する(数3)。
【0045】
【数1】

【0046】
【数2】

【0047】
【数3】

【0048】
ただし、
x:切れたときの回数,F(x):切れた順番/サンプル数
b:形状パラメータ
θ:特性寿命(サンプル数の63.2%が切断するまでの回数)
【0049】
実施例1又は比較例1〜3の毛髪化粧料で処理された試験毛束について得られた特性寿命を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
試験1より、本発明の毛髪化粧料で処理した毛髪は特性寿命が長くなっており、本発明の毛髪化粧料は毛髪損傷予防効果に優れていた。
【0052】
<試験2>
日本人女性の毛髪から作製した脱色サイクル処理回数の異なる試験毛束を、表1に示す実施例1の毛髪化粧料を用いて下記処理方法に従って処理した後、疲労寿命試験により評価した。
【0053】
[試験毛束]
一人の日本人女性から、染毛処理、脱色処理又はパーマネント処理が施されていない12〜15cmの直毛毛髪約100本を採取し、約50本/等量に分割した。それぞれの毛髪質量に対し、
(1)等量の市販脱色剤で脱色処理
(2)等量の市販シャンプーで洗浄
(3)等量の市販コンディショナーで処理
(4)ブロードライ
の4工程からなる脱色サイクル処理を2回あるいは8回繰り返した。各毛髪の中心付近の直径をマイクロメータで計測し、それぞれの脱色処理サンプルの中から直径80〜90μmの毛髪約15本を2組ずつ選び出し、それぞれ根元側を接着剤と粘着テープで固定し、毛先側を切り揃えて毛髪部分が10cmの試験毛束4組(2回処理毛束2組、8回処理毛束2組)を作製した。
【0054】
[処理方法]
実施例1の毛髪化粧料をそれぞれ5mL測りとり、15本の毛髪からなる試験毛束全体が入る全長12cmのガラス管に入れ、毛髪化粧料で試験毛束全体を濡らした。これらのガラス管を37℃に保った水浴に浸け、1分間当たり100回の振とうを加えながら60分間あるいは300分間保った。
試験1と同様にして試験毛束を洗浄し、終夜ぶら下げて自然乾燥させた。
【0055】
[疲労寿命試験]
試験1と全く同様にして各試験毛束の特性寿命(θ)を求めた。結果を表3に示す。
【0056】
【表3】

【0057】
試験2より、本発明の毛髪化粧料で処理した毛髪は、化学処理履歴に依らず、処理時間に応じて特性寿命が長くなる結果が得られた。
【0058】
実施例2及び3
表4に示す組成からなるシャンプーを常法に従って製造し、頭髪に対して質量比0.1の割合で塗布し、泡立てながら洗浄し、1分間放置後に、水ですすぎ、乾燥させる。
【0059】
【表4】

【0060】
実施例4及び5
表5に示す組成からなるコンディショナーを常法に従って製造し、市販のシャンプーで洗浄した頭髪に対して質量比0.1の割合で塗布し、5分間放置後洗浄し、水ですすぎ、乾燥させる。
【0061】
【表5】

【0062】
実施例6
表6に示す組成からなるトリートメント剤を常法に従って製造し、洗浄してタオルドライした頭髪に対して質量比0.2の割合で塗布し、10分間放置後洗浄し、水ですすぎ、乾燥させる。
【0063】
【表6】

【0064】
実施例7
表7に示す組成からなる整髪料を常法に従って製造する。起床直後に、洗浄してタオルドライした頭髪に対して質量比0.3の割合で塗布し、ヘアースタイルを整える。就寝前に入浴し、整髪料を洗い流す。
【0065】
【表7】

【0066】
実施例8
表8に示す組成からなる脱色剤第1剤及び第2剤を常法に従って製造する。使用直前に、第1剤と第2剤とを質量比1:1で混合し、頭髪に対して合剤した脱色剤を質量比1の割合で塗布し、20分間放置後、水洗する。市販のシャンプーで洗浄後、市販のコンディショナーで処理し、乾燥させる。
【0067】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)及び(b)を含有する毛髪化粧料。
(a) 配列中のアミノ酸残基数が5〜50で、含イオウアミノ酸残基及びそれらの誘導体を含まないペプチド
(b) 毛髪膨潤性有機溶剤
【請求項2】
成分(b)が、低級アルキレンカーボネート、芳香族アルコール及びN-アルキルピロリドンから選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
成分(b)が、プロピレンカーボネート、ベンジルアルコール及びベンジルオキシエタノールから選ばれる1種又は2種以上である請求項2記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
成分(a)が、次の特徴を有するペプチドである請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪化粧料。
(1) 塩基性アミノ酸残基数が配列中のアミノ酸残基数の5〜25%
(2) 非極性アミノ酸残基数が配列中のアミノ酸残基数の30〜85%
【請求項5】
成分(a)が、次の特徴を有するペプチドである請求項1〜4のいずれかに記載の毛髪化粧料。
(1) 配列中のアミノ酸残基数が20〜25
(2) 分子量が1500〜3500
(3) 塩基性アミノ酸残基数が4又は5
(4) 非極性アミノ酸残基数が10以上
【請求項6】
成分(a)が、次の(i)又は(ii)である請求項1〜5のいずれかに記載の毛髪化粧料。
(i) 配列番号1に示すアミノ酸配列からなるペプチド
(ii) 配列番号1に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ毛髪浸透性であるペプチド
【請求項7】
成分(a)が次の(iii)又は(iv)である請求項1〜6のいずれかに記載の毛髪化粧料。
(iii) 配列番号2に示すアミノ酸配列からなるペプチド
(iv) 配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ毛髪浸透性であるペプチド
【請求項8】
成分(a)が次の(v)又は(vi)である請求項1〜7のいずれかに記載の毛髪化粧料。
(v) 配列番号3に示すアミノ酸配列からなるペプチド
(vi) 配列番号3に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ毛髪浸透性であるペプチド
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の毛髪化粧料を毛髪に適用する毛髪処理方法。
【請求項10】
毛髪化粧料を毛髪に塗布し、1分〜24時間放置した後、洗い流す請求項9記載の毛髪処理方法。

【公開番号】特開2009−84168(P2009−84168A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253291(P2007−253291)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】