説明

毛髪化粧料

【課題】ヘアスプレーに使用可能であって、十分なセット力を有し、べたつきのないヘアスタイルを形成する毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の毛髪化粧料は、高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料に関する。より詳しくは、高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体を含有する毛髪化粧料ならびに該毛髪化粧料を用いたヘアスプレーに関する。
【背景技術】
【0002】
動きのあるヘアスタイル、毛束感のあるヘアスタイルの形成には、セット力を有するペースト状のエステルや固形の炭化水素、ロウ類などの固形油分および/またはセット力を有する樹脂を含有する毛髪化粧料が用いられている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、固形油分は、その使用量により毛髪にべたつきの質感を与えるため、べたつき感のないヘアスタイルの趣向に合わせるためにはワックス中に含有できる量が限られていた。一方セット力を有する樹脂は、十分なセット力を得ようとすると毛髪がごわついた感触になることがあった。
【0004】
よって、べたつきが少なくセット力のある毛髪化粧料が求められていた。
【0005】
べたつきを低減した化粧料として、抱水性油剤を用いた化粧料が(たとえば特許文献2参照)、べたつきなくしっとり感を与える毛髪化粧料としては、多価アルコールとヒドロキシ脂肪酸を含む脂肪酸とのエステルを含む毛髪化粧料が(たとえば特許文献3参照)知られている。
【0006】
一方、上述のようなスタイリング性能の高い毛髪化粧料は、通常、クリーム状や液状のワックスの剤型とされ、蓋のある容器、ボトル等に詰められているものを手にとり、延ばしてから毛髪に塗布する。
【0007】
しかしながら、ワックスのそのような塗布の仕方は、手を汚し、手間を要し、また毛髪に均一につけることが簡単ではない。
【0008】
そこで、ワックスの性能を有しながら、ヘアスプレーの剤型の毛髪化粧料は、簡便に毛髪化粧料を毛髪に均一に塗布することが可能であるため望ましい。
【0009】
しかし、上記従来のセット成分のロウ類等の固形油分は、ヘアスプレーに用いる溶媒への溶解性や噴射剤との相溶性が悪いため、油状成分が固形化して析出したり、ノズルを詰まらせたりするため、ヘアスプレーの剤型にして用いることが困難であった。
【0010】
そこで、従来のセット成分のロウ類等の代わりに、整髪剤原液への溶解性が良好な、高級アルコール、脂肪酸とポリオールとのエステル等を含有するヘアスプレーが知られている(たとえば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−252730号公報
【特許文献2】特開2004−143063号公報
【特許文献3】特開平5−262624号公報
【特許文献4】特開2007−99683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来のヘアスプレーでは、なお、十分なセット力を得ることができないとともに、べたつきの質感を生じていた。また、噴射剤との相溶性についてさらなる検討が必要であった。
【0013】
本発明は、ヘアスプレーに使用可能であって、十分なセット力を有し、べたつきのないヘアスタイルを形成する毛髪化粧料を提供することを目的とする。さらには、延びがよく潤いとツヤのあるヘアスタイルを形成して持続することが可能であり、併せて洗髪の際の洗い落ちが良好である毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体を含有する毛髪化粧料は、所望のヘアスタイルをべたつきの質感を生じることなく形成することができ、さらにはヘアスプレーにも好適に用いられることを見出して本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、たとえば以下の[1]〜[9]である。
[1]高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体を含むことを特徴とする毛髪化粧料。
[2]前記高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体が、ラウリン酸水添ヒマシ油、イソステアリン酸水添ヒマシ油およびヒドロキシステアリン酸水添ヒマシ油からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]に記載の毛髪化粧料。
[3]前記高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体の含有量が、0.1〜30重量%(ただし、毛髪化粧料全体を100重量%とする)であることを特徴とする[1]または[2]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[4]さらに、前記高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体以外の液状油を含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[5]さらに、ノニオン界面活性剤を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[6]さらに、テオブロマグランジフロルム種子脂を含むことを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[7]さらに、セット剤樹脂を含むことを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[8]ヘアスプレー用であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[9][1]〜[7]のいずれかに記載の毛髪化粧料と、噴射剤とを含むことを特徴とするヘアスプレー。
【発明の効果】
【0016】
本発明の毛髪化粧料は、動きのあるヘアスタイルおよび毛束感のあるヘアスタイルをするのに十分なセット力を有する。本発明の毛髪化粧料を用いて形成されたヘアスタイルは、べたつきが抑制され、また潤いとツヤを有する質感であり、ヘアスタイルと潤いの持続性が良好である。また、本発明の毛髪化粧料は、噴射剤との相溶性が良好であるため、成分が析出したり、バルブやノズルを詰まらせることがなく、ヘアスプレーの剤型に好適に用いることができる。さらには、本発明の毛髪化粧料は、毛髪に均一に延ばすことが可能であり、また洗髪の際には洗い落ちが良好である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について具体的に説明する。
(a)高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体
本発明の毛髪化粧料は、高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体を含む。高級脂肪酸
残基を含む硬化ヒマシ油誘導体は、毛髪化粧料に毛髪のヘアスタイルを形成するためのセット力を与え、毛髪を動きのあるヘアスタイルにしたり、毛束を形成する。また、従来毛髪化粧料に用いられていたロウ類、炭化水素類およびエステル等のセット力を有する成分に比較して、べたつきの質感が抑制されている。
【0018】
高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体とは、水添ヒマシ油と高級脂肪酸とのエステルである硬化ヒマシ油誘導体である。より具体的には、水添ヒマシ油の水酸基の1つ以上が高級脂肪酸とエステル結合している硬化ヒマシ油誘導体であり、好ましくは水添ヒマシ油の水酸基の1〜2つが高級脂肪酸とエステル結合している硬化ヒマシ油誘導体であり、より好ましくは水添ヒマシ油の水酸基の1つが高級脂肪酸とエステル結合している硬化ヒマシ油誘導体である。
【0019】
高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体は、室温で固体状またはペースト状であることが好ましく、より好ましくは融点が45〜60℃である。
【0020】
水添ヒマシ油の水酸基とエステル結合を形成する高級脂肪酸としては、たとえばヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸が挙げられる。
【0021】
高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体の好ましい例としては、ヒドロキシステアリン酸水添ヒマシ油、イソステアリン酸水添ヒマシ油、ラウリン酸水添ヒマシ油が挙げられる。特に好ましくは、べたつきが少ないことから、ラウリン酸水添ヒマシ油が挙げられる。
【0022】
上記好ましい例として挙げた高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体は、粘着性、抱水性、光沢を有するため、毛髪化粧料に用いると、毛髪を滑らかな感触と自然な光沢を有する状態でセットすることが可能である。さらに、高極性油剤であることから、流動パラフィンのような従来ヒマシ油が不溶であった脂肪族炭化水素に可溶であるとともに、アルコールのような極性溶媒にも可溶である。
【0023】
高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体は、毛髪化粧料100重量%に対して、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは0.5〜25重量%、最も好ましくは3〜20重量%の範囲で含まれる。
【0024】
高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体の含有量が上記範囲にあると、動きのあるヘアスタイルおよび毛束のようなまとまりを形成するのに十分なセット力を得ることができ、スタイリング性能を発揮することができる一方で、形成されたヘアスタイルをべたついた質感とすることがない。さらに、本発明の毛髪化粧料をヘアスプレーに用いる場合には、系の安定性が保たれ、濁りやオリ、析出などが生じにくい。
(b)液状油
本発明の毛髪化粧料は、前記高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体以外の液状油を含むことが好ましい。液状油は、毛髪に潤いを与えるとともに、毛髪化粧料の毛髪への延びを良好にする。
【0025】
液状油とは、化粧料に通常使用される室温で液体である油である。具体的には、たとえば軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、重質流動イソパラフィンなどの炭化水素系オイル、リンゴ酸ジイソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、ジミリスチン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸・イソステアリン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ヒマシ油、マカデミアンナッツオイル、ホホバ油等のエステルやトリグリセライド類、ジメチルポリシロキサン、メチル
フェニルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のシリコーン油等が挙げられ、より好ましくは、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシルが好ましい。これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書における液状油には後述のテオブロマグランジフロルム種子脂は含まない。
【0026】
液状油は、毛髪化粧料100重量%に対して、好ましくは0.5〜15重量%、より好ましくは1.0〜10重量%の範囲で含まれる。液状油の含有量が、上記範囲にあると、毛髪が潤いを与えられるためにぱさつきを生じたり、毛髪が絡まることがなく、一方、べたつきの質感を生じることもなく、またセット力を低下させない。
【0027】
(c)ノニオン界面活性剤
本発明の毛髪化粧料は、ノニオン界面活性剤を含むことが好ましい。ノニオン界面活性剤は、本発明の毛髪化粧料の洗髪時の洗い落ちを向上させる。
【0028】
ノニオン界面活性剤は、特に限定されないが、たとえば、(POE)アルキルエーテル類;POEポリオキシプロピレンアルキルエーテル類;多価アルコール脂肪酸エステル類;グリセリン脂肪酸エステル類;ポリグリセリン脂肪酸エステル類;セスキオレイン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル類;POEグリセリン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)などのPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POEソルビット脂肪酸エステル類;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類;アルキルアルカノールアミド類;POE硬化ヒマシ油;ピログルタミン酸イソステアリン酸POE硬化ヒマシ油;POEエチレンラノリン;POEコレステロール;POEフィトステロール;POEコレスタノール;POEフィトスタノール、トリステアリン酸PEG−20グリセリル、ステアリン酸エステル、PEG−30水添ヒマシ油、セタノールのポリエチレングリコールエーテルなどが挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0029】
ノニオン界面活性剤は、毛髪用化粧料100重量%に対し、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%の範囲で含まれる。ノニオン界面活性剤が、前記範囲内にあると、良好な洗い落ち性能を得ることができる一方で、系の安定性をくずすことがなく、またべたつきを生じることがない。
【0030】
(d)テオブロマグランジフロルム種子脂
本発明の毛髪化粧料は、テオブロマグランジフロルム種子脂を含むことが好ましい。テオブロマグランジフロルム種子脂とは、クパスの実からとれた種子脂をいい、毛髪に自然なツヤを出すために用いられる。テオブロマグランジフロルム種子脂は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のバランスのよいトリグリセリドであり、融点が27℃であるため、お湯で洗い流すことが可能である。また、抱水性に優れるため、保湿効果がある。そのため、しっとりした感触を付与するとともに、髪の内側から潤っているような外観となり、自然なツヤとともに毛髪の美しい外観を長時間維持する。また、塗布された毛髪の滑りがよく、良好な指どおり感を与える。さらに、天然成分であるため、ツヤが自然な風合いであるとともに、人体および環境への悪影響もない。
【0031】
テオブロマグランジフロルム種子脂は、毛髪化粧料100重量%に対し、好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは1〜3重量%の範囲で含まれる。テオブロマグランジフロルム種子脂が、前記範囲内にあると、べたつきを生じることなく、ツヤを得ることができる。
(e)セット剤樹脂
本発明の毛髪化粧料は、セット剤樹脂を含んでいてもよい。セット剤樹脂は、形成され
たヘアスタイルの持続性を向上させるとともに、(a)成分のセット力も補う。また、本発明の毛髪化粧料をヘアスプレーに用いる場合でも、ノズルの目詰まり等を生じることがない。
【0032】
セット剤樹脂の種類としては、特に限定はなく通常ヘアスプレーに使用されるアニオン性樹脂、カチオン性樹脂、両性樹脂、ノニオン性樹脂などを使用することができる。
【0033】
上記アニオン性樹脂としては、たとえば、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体であるアクリル樹脂アルカノールアミン、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸アルキルハーフエステル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/マレイン酸モノブチルエステル/イソボロニルアクリレート共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキルエステル/アルキルアクリルアミド共重合体、ポリビニルピロリドン/アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C1-18)/アルキル(C1-8)アクリルアミド)コポリマーAMP
)などを挙げることができる。
【0034】
上記カチオン性樹脂としては、たとえば、ビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ビニルピロリドン/四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体、ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体、ポリクオタニウム−11などを挙げることができる。
【0035】
上記両性樹脂としては、たとえば、ジアルキルアミノエチルメタクリレート/メタクリル酸アルキルエステル共重合体のモノクロル酢酸両性化物、アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル/アクリル酸オクチルアミド共重合体、(アクリレーツ/アクリル酸ラウリル/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸エチルアミンオキシド)コポリマーなどを挙げることができる。
【0036】
上記ノニオン性樹脂としては、たとえば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル/プロピオン酸ビニル三元共重合体、酢酸ビニル/N−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン共重合体、(ビニルピロリドン/VA)コポリマーなどを挙げることができる。
【0037】
これらのセット剤樹脂は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記セット剤樹脂の種類は、要求されるヘアスタイルのセット力の程度や質感に応じて適宜選択される。たとえば、ウェーブヘア用ヘアスプレーには、両性樹脂が好適に用いられ、高い固定力が求められるスタイリング用ヘアスプレーには、アニオン性樹脂が好適に用いられる。
【0038】
セット剤樹脂は、毛髪化粧料100重量%に対して、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1.0〜15重量%、最も好ましくは1.5〜10重量%の範囲で含まれる。セット剤樹脂の含有量が、上記範囲にあると、ヘアスタイルの持続性が良好である一方、毛髪がごわつくことがないため、束感や再整髪性が低下することもない。
【0039】
(f)その他の成分
本発明の毛髪化粧料は、上記成分を溶解または分散する媒体を含むことが好ましい。前記媒体としては、水およびエタノール等のアルコール類等が挙げられ、水としては、精製
水、天然水、水道水およびイオン交換水等が挙げられる。本発明の毛髪化粧料がワックスの剤型に用いられる場合は、水を用いることが好ましく、ヘアスプレーの剤型に用いられる場合は、即乾性が求められることから、アルコール類を用いることが好ましい。
【0040】
本発明の毛髪化粧料は、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外に、紫外線吸収剤、キレート剤、防腐剤、清涼剤、トリエタノールアミンのようなpH調整剤
、ビタミン類、蛋白質、香料、抗菌剤、酸化防止剤、抗炎症剤、色素、保湿剤、アミノ酸類、生薬類等の添加剤を含有することができる。
【0041】
(g)製造方法
本発明の毛髪化粧料は、上述した各成分を、公知の方法で、撹拌、混合、加熱、溶解、分散、乳化等を必要に応じて選択して行うことによって製造することができ、製造方法はとくに限定されない。
【0042】
(h)用途
本発明の毛髪化粧料の剤型としては、特に限定されないが、たとえばヘアワックス、ヘアミルク、ヘアクリーム、洗い流さないトリートメント、ヘアスプレー等が挙げられる。
【0043】
(i)ヘアスプレー
本発明の毛髪化粧料の剤型としては、ヘアスプレーが好ましい。本発明の毛髪化粧料を用いたヘアスプレーは、本発明の毛髪化粧料および噴射剤を含むことが好ましい。
【0044】
ヘアスプレーの剤型とすると、手を汚すことなく簡便に、毛髪化粧料を均一に毛髪に塗布することができるからである。本発明の毛髪化粧料は、噴射剤との相溶性が良好であり、固形分が析出することなく、スプレーノズルを詰まらせることがないため、ヘアスプレーに好適に用いられる。
【0045】
噴射剤としては、エアゾール式のヘアスプレーに用いうる噴射剤であれば、特に限定されない。具体的には、たとえば、プロパン、ブタンおよびイソブタンのうち少なくとも1種を主成分とする各種の液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、LPGとDMEとの混合物等の液化ガス、窒素ガス、炭酸ガス等の圧縮ガスなどが挙げられる。これらの中でも、噴射性および溶解性の観点から、液化石油ガスおよびジメチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種の液化ガスが好ましい。
【0046】
上記噴射剤の配合量は、噴射剤として液化ガスを用いる場合は、毛髪化粧料と噴射剤との重量比が、好ましくは60:40〜40:60である。
【0047】
上記本発明の毛髪化粧料と噴射剤との混合物は、エアゾールまたはディスペンサー容器に充填された後、密閉されて、ヘアスプレーとなる。
【0048】
充填方法としては、上記容器に上記本発明の毛髪化粧料と噴射剤との混合物を、常法により加圧封入する。加圧封入の際、容器内の初期内圧は、25℃で0.15〜0.45MPaに調整することが好ましく、0.15〜0.35MPaに調整することがより好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、表1〜6における配合量の単位は、重量%である。
【0050】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
表1に示す配合処方で常法により、ワックスの剤型である毛髪化粧料を製造した。
【0051】
黒色人毛(30cm×30g)にシャンプーおよびトリートメント処理を行い乾燥した後に上記製造したワックス0.5gを塗布し、毛束全体になじませた。得られた毛束を以下の項目
、方法および基準で評価した。評価結果を表1に示す。
【0052】
[実施例4〜36、比較例4〜6]
表2〜6に示す配合処方で常法により、毛髪化粧料を製造した。
【0053】
下記評価(1)〜(7)、(9)および(10)については、エアゾール容器に上記製造した毛髪化粧料45gを入れ、噴射剤として液化石油ガス(LPG)11gおよびジメチルエーテル(DME)44gの計55gを初期内圧0.35MPaとなるように充填し、ヘアスプレーの剤型とした。スプレーノズルは孔が0.4φであるものを用いた。
【0054】
下記評価(11)噴射剤との相溶性については、透明耐圧容器(ガラス)に上記製造した毛髪化粧料50gを入れ、噴射剤として液化石油ガス(LPG)25gおよびジメチルエーテル(DME)25gの計50gを初期内圧0.35MPaとなるように充填し、ヘアスプレーの剤型とした。
【0055】
黒色人毛(30cm×30g)にシャンプーおよびトリートメント処理を行い乾燥した後に、上記製造したヘアスプレー0.5gを塗布し、毛束全体になじませた。得られた毛束を以下
の項目、方法および基準で評価した。評価結果を表2〜6に示す。なお、配合量の単位は、重量%である。
【0056】
表1〜6において、ヒドロキシステアリン酸水添ヒマシ油は商品名テクノールMH(横関油脂工業株式会社製)、
イソステアリン酸水添ヒマシ油は商品名テクノールMIS(横関油脂工業株式会社製)、
ラウリン酸水添ヒマシ油は商品名テクノールML98(横関油脂工業株式会社製)、
ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルは商品名コスモール168AR(日清オイリオグループ株式会社製)、
PEG-40水添ヒマシ油は商品名EMALEX HC-40(日本エマルジョン株式会社製)、
(アクリレーツ/アクリル酸ラウリル/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸エチルアミンオキシド)コポリマーは商品名ダイヤフォーマーZ-631(三菱化学株式会社製)、
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C1-18)/アルキル(C1-8)アクリルアミド)コポ
リマーAMPは商品名プラスサイズL9290B(互応化学工業株式会社製)、
ミリスチン酸イソプロピルは商品名エキセパールI.P.M(花王株式会社製)、
トリイソステアリン酸PEG−20グリセリルは商品名EMALEX GWIS-320(日本エマルジ
ョン株式会社製)、
ポリクオタニウム−11は商品名H.Cポリマー3A(大阪有機化学工業株式会社製)、
(ビニルピロリドン/VA)コポリマーは商品名PVA6450(大阪有機化学工業株式会社製
)、
テオブロマグランジフロルム種子脂は商品名CROPURE CUPUASS(クロピュア クパス)(クローダジャパン株式会社製)、
99%未変性アルコールは、日本アルコール販売株式会社製エタノールである。
【0057】
<評価項目>
(1)べたつき
(2)束感
(3)セット力
(4)ヘアスタイル持続性
(5)洗い落ち
(6)潤い
(7)潤いの持続性
(8)ハンドリング性
(9)延びの良さ
(10)ツヤ
(11)毛髪化粧料と噴射剤との相溶性
【0058】
<評価基準>
(1)べたつき
毛束にワックスまたはヘアスプレーを塗布後、毛束を整髪する際のべたつきを下記の基準で官能評価し、判定した。
◎:べたつきが全くない、
○:べたつきが少ない、
△:べたつきがある、
×:べたつきがあり、不快を感じる。
【0059】
(2)束感
毛束にワックスまたはヘアスプレーを塗布後、整髪する際に髪の毛同士が束になる様なまとまり感があるか、すなわち束感について下記の基準で官能評価し、判定した。
◎:しっかりとした髪の束ができ、非常にまとまりがある、
○:髪の束ができ、まとまりがある、
△:髪の束がほとんどできず、まとまりが悪い、
×:髪の束が全くできず、まとまらない。
【0060】
(3)セット力
毛束にワックスまたはヘアスプレーを塗布し、なじませた際のヘアスタイルの形成しやすさを下記の基準で官能評価し、判定した。
◎:所望のヘアスタイルが自在に形成可能である、
○:所望のヘアスタイルを形成可能である、
△:所望のヘアスタイルを十分に形成できない、
×:所望のヘアスタイルを形成できない。
【0061】
(4)ヘアスタイル持続性
毛束にワックスまたはヘアスプレーを塗布してヘアスタイルを形成した後、そのまま8
時間放置し、ヘアスタイルの持続性を観察し、下記の基準で官能評価し、判定した。
◎:持続性がとてもある、
○:持続性がある、
△:持続性がほとんどない、
×:持続性が全くない。
【0062】
(5)洗い落ち
毛束にワックスまたはヘアスプレーを塗布して毛束が十分乾いた後に、1分間水洗した
。その後の毛束のヌルつき等から洗い落ちを下記基準で官能評価し、判定した。
◎:洗い落ちがとても良く、ヌルつきが全くない、
○:洗い落ちが良く、ほとんどヌルつかない、
△:洗い落ちが悪く、ヌルつく、
×:洗い落ちがとても悪く、とてもヌルつく。
【0063】
(6)潤い
毛束にワックスまたはヘアスプレーを塗布して毛束を整髪した後の毛髪の潤いを下記基準で官能評価し、判定した。
◎:毛髪にぱさつきが全くなく、とても潤いがある、
○:毛髪にぱさつきがなく、潤いがある、
△:毛髪にぱさつきがややあり、潤いがない、
×:毛髪がとてもぱさつき、乾燥している。
【0064】
(7)潤いの持続性
毛束にワックスまたはヘアスプレーを塗布して整髪し、そのまま3時間放置後に再整髪
する際の毛髪の潤いの持続性を下記基準で官能評価し、判定した。
◎:毛髪の潤いの持続性がとてもある、
○:毛髪の潤いの持続性がある、
△:毛髪の潤いの持続性がほとんどない、
×:毛髪の潤いの持続性が全くない。
【0065】
(8)ハンドリング性
ワックスを手に取って、手の上でのばす際の、ワックスののびの良さをハンドリング性として下記の基準で官能評価し、判定した。
◎:ハンドリング性がとても良い、
○:ハンドリング性が良い、
△:ハンドリング性がやや悪い、
×:ハンドリング性が悪い。
【0066】
(9)延びの良さ
毛束にヘアスプレーを塗布して整髪する際のスタイリングのしやすさ、延びの良さについて下記の基準で官能評価し、判定した。
◎:延びが非常によく、とてもスタイリングしやすい、
○:延びが良く、スタイリングしやすい、
△:延びが悪く、スタイリングしにくい、
×:延びが非常に悪く、とてもスタイリングしにくい。
【0067】
(10)ツヤ
毛束にワックスまたはヘアスプレーを塗布後、毛束のツヤを目視で観察し、下記の基準で官能評価し、判定した。
◎:みずみずしいツヤがある、
○:ツヤがある、
△:ツヤが少ない、
×:ツヤがない。
【0068】
(11)毛髪化粧料と噴射剤との相溶性
製造したヘアスプレーの剤型とした試料を5℃の低温下に保存し1週間後の外観を目視
で観察し、下記の基準で官能評価し、判定した。
◎:噴射剤が混合された毛髪化粧料は、透明であり、相溶性はとても良い、
○:噴射剤が混合された毛髪化粧料は、完全に透明ではないが、相溶性は良い、
△:噴射剤が混合された毛髪化粧料は、濁りが生じ、相溶性はあまり良くない、
×:噴射剤が混合された毛髪化粧料は、オリや析出物が生じ、相溶性は悪い。
【0069】
評価項目(1)べたつき、(2)束感、(3)セット力、(5)洗い落ち、(6)潤い、(7)潤いの持続性、(8)ハンドリング性、(9)延びの良さおよび(10)ツヤの評価がいずれも◎または○であるものを、実施例とした。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
【表5】

【0075】
【表6】

【0076】
実施例1〜36より、本発明の毛髪化粧料は、べたつきがない所望のヘアスタイルを形成できることがわかる。また、セット力があり、毛束を形成可能で、潤いおよびツヤのあるヘアスタイルを形成し、持続することが可能であることがわかる。さらに、本発明の毛髪化粧料は、洗い落ちも良好であることがわかる。
【0077】
また実施例13〜36より、本発明の毛髪化粧料は、高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体に加え、セット剤樹脂を含有すると、セット力および形成されたヘアスタイルの持続性を向上させることができることがわかる。
【0078】
さらに、実施例4〜36より、本発明の毛髪化粧料は、噴射剤との相溶性が良好であり、ヘアスプレーの剤型に好適に用いられることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体を含むことを特徴とする毛髪化粧料。
【請求項2】
前記高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体が、ラウリン酸水添ヒマシ油、イソステアリン酸水添ヒマシ油およびヒドロキシステアリン酸水添ヒマシ油からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
前記高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体の含有量が、0.1〜30重量%(ただし、毛髪化粧料全体を100重量%とする)であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
さらに、前記高級脂肪酸残基を含む硬化ヒマシ油誘導体以外の液状油を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
さらに、ノニオン界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項6】
さらに、テオブロマグランジフロルム種子脂を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項7】
さらに、セット剤樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項8】
ヘアスプレー用であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の毛髪化粧料と、噴射剤とを含むことを特徴とするヘアスプレー。

【公開番号】特開2010−254583(P2010−254583A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102994(P2009−102994)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(595082283)株式会社アリミノ (38)
【Fターム(参考)】