説明

気体吸着デバイスおよび真空断熱材および真空断熱箱体

【課題】高活性な気体吸着材が粉末状であっても、大気中で長時間保存可能とする気体吸着デバイスを提供する。
【解決手段】気体吸着デバイス1は、気体吸着材2と、気体吸着材2を内包し外部の気体から遮断するガスバリア性材料からなる外被材3と、熱可塑性素材からなり軟化するまで外被材3に貫通孔が生じることを防ぎ気体吸着材2が外部の気体を吸着することを防止する制御部材6と、軟化する前の制御部材6に対しては制御部材6を貫通しない程度の力で制御部材6に突き刺し力を加え続けており所定の温度上昇で軟化した制御部材6に対しては突き刺し力で制御部材6を変形させて制御部材6および外被材3に貫通孔をあける部材5とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体吸着材を大気中で保存可能とする気体吸着デバイスに関するものであり、さらに断熱・保温を必要とするもの、例えば冷蔵庫・保温保冷外被材、自動販売機、電気湯沸かし器、車両等の断熱材として使用可能な真空断熱材および真空断熱箱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高真空を必要とする工業技術への期待が高まりつつある。例えば、地球温暖化防止の観点から省エネルギーが強く望まれており、家庭用電化製品についても省エネルギー化は緊急の課題となっている。特に、冷蔵庫、冷凍庫、自動販売機等の保温保冷機器では熱を効率的に利用するという観点から、優れた断熱性能を有する断熱材、真空断熱箱体が求められている。
【0003】
一般的な断熱材として、グラスウールなどの繊維材やウレタンフオームなどの発泡体が用いられている。しかし、これらの断熱材の断熱性能を向上するためには断熱材の厚さを増す必要かおり、断熱材を充填できる空間に制限があって省スペースや空間の有効利用が必要な場合には適用することができない。
【0004】
そこで、高性能な断熱材として、真空断熱材が提案されている。真空断熱材は、スペーサの役割を持つ芯材を、ガスバリア性を有する外被材中に挿入し内部を減圧して封止した断熱材である。
【0005】
真空断熱材内部の真空度を上げることにより、高性能な断熱性能を得ることができるが、真空断熱材内部に存在する気体には大きく分けて次の3つがある。一つは、真空断熱材作製時、排気できずに残存する気体、別の一つは、減圧封止後、芯材や外被材から発生する気体(芯材や外被材に吸着している気体や、芯材の未反応成分が反応することによって発生する反応ガス等)、残りの一つは、外被材を通過して外部から侵入してくる気体である。
【0006】
これらの気体を吸着するため、吸着材を真空断熱材に充填する方法が考案されている。
【0007】
例えば、真空断熱材内の気体を、Ba−Li合金を用いて吸着するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
真空断熱材内の吸着材が吸着すべき気体のうち、吸着困難な気体の一つが窒素である。これは、窒素分子が約940kJ/mo1という大きい結合エネルギーを有する非極性分子であるから、活性化させるのが困難なためである。しかし、Ba−Li合金により窒素を吸着可能とし、真空断熱材内部の真空度を維持するのである。
【0009】
真空断熱材の性能の更なる向上を目的として、真空断熱材内部の真空度をさらに低下させることや、プラズマディスプレーパネル等の様に、高真空を必要とする機器のためBa−Liより高活性な気体吸着材の実用化が望まれている。
【0010】
また、真空断熱箱体の例として例えば特許文献2がある。特許文献2においては、冷蔵庫等の外箱と内箱の間に発泡断熱材を充填して成る真空断熱箱体において、前記発泡断熱材に連続気泡硬質ポリウレクンフオームを用い、前記外箱に断熱壁内部と連通した真空インジケータと開閉バルブを設け、前記開閉バルブを介して真空脱気して構成した真空断熱
箱体がある。断熱壁内部と連通した真空インジケータにより内部の真空度がモニターできるため、外部から侵入した気体や内部に残留したガスにより真空度が劣化した場合でも、開閉バルブを介して真空脱気することにより、初期の断熱性能を回復することができる。
【特許文献1】特表平9−512088号公報
【特許文献2】特開平7−148752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の上記従来の構成では、活性化のための熱処理を必要とせず、常温下でも窒素吸着可能であり、数分間は空気雰囲気で取り扱い可能と記載されているが、気体吸着材を用いる機器や真空断熱材を工業的に製造する条件では、より長い許容時間か望ましい。
【0012】
これは、製造プロ七スにおいて空気と接触することで、窒素吸着能力が消耗し、本来必要な機器性能維持のための吸着能力が乏しくなり、性能劣化や性能ばらつきが大きくなることを防止するためである。真空断熱材等のさらなる高性能化か望まれている中で、機器や真空断熱材内部の真空度維持を図るために、吸着材をより安定的かつ高効率に使いこなすことが大きな課題であった。
【0013】
気体吸着材の活性の高さ、つまり、大気中に放置された場合に吸着が飽和するまでの時間は、その形態と材料仕様ごとに異なる。例えば、気体吸着材がペレット状であれば、比較的長い時間大気中に放置しても飽和しない。一方、気体吸着材が粉末状であれば、比表面積が大きくなるため、短時間大気中に放置しただけであっても飽和してしまう。
【0014】
従って、特許文献1の構成ではBa−Liより高活性な気体吸着材を用いた場合、大気に接触可能な時間か非常に短くなる可能性がある。
【0015】
また、特許文献2の構成では、真空断熱箱体において、外部から侵入したガスや内部から発生したガスを、バルブを通じ再減圧しているが、開閉バルブから箱体内部を減圧するには、排気抵抗が大きく、減圧するために非常に時間がかかる。
【0016】
特許文献2では連続気泡硬質ポリウレクンフオームを芯材に用いているが、より微細な粒径を持つ例えば乾式シリカのような粉体であれば、排気抵抗はさらに高くなり、容易には減圧できず、減圧工程に相当の時間が必要になる。
【0017】
この改善のためには、気体吸着材を内包し、真空ポンプでは粗引き程度の減圧を行い、気体吸着材により、残存した空気を吸着するケミカル真空ポンプ機能を有することが好ましい。
【0018】
そのためには空気中での取り扱い許容時間が長く、かつ、乾式シリカのような排気抵抗の高い芯材で、かつ大きな真空断熱材の残存空気を除去するためには高活性な、取り扱い性に優れた気体吸着デバイスが必要となる。
【0019】
従来のBa−Liでは使用量も多く、かつ、ケミカル真空ポンプとして活性が低く、時間がかかることが考えられる。
【0020】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、高活性な気体吸着材が粉末状であっても、大気中で長時間保存可能とする気体吸着デバイスを提供することと高活性な気体吸着デバイスを用いた真空断熱箱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明の気体吸着デバイスは、気体吸着材と、前記気体吸着材を内包し外部の気体から遮断するガスバリア性材料からなる外被材と、熱可塑性素材からなり軟化するまで前記外被材に貫通孔が生じることを防ぎ前記気体吸着材が外部の気体を吸着することを防止する制御部材と、軟化する前の前記制御部材に対しては前記制御部材を貫通しない程度の力で前記制御部材に突き刺し力を加え続けており所定の温度上昇で軟化した前記制御部材に対しては前記突き刺し力で前記制御部材を変形させて前記制御部材および前記外被材に貫通孔をあける部材とを有するものである。
【0022】
気体吸着材をガスバリア性材料からなる外被材で内包することで、外気に触れることなく取り扱えるため、性能低下を抑制できるとともに、形状、大きさも容易に変えることができる。
【0023】
さらに、気体吸着材と、外部との連通が加温によりなされるため、気体吸着能を発現させる際、温度以外の因子を制御する必要がなく、生産性の向上を図ることができる。また、真空断熱箱体の箱体外部から力を加えるのが不可能な場合であっても、箱体減圧部の粗引きが終了した後等、吸着能を発現させるタイミングを選定することができる。
【0024】
このような吸着デバイスを有効に活用するには、上記のような真空断熱箱体や魔法瓶のような真空断熱外被材、また真空断熱材等のように、内部を真空にすることにより機能を発現する真空機器であれば何でも良い。
【発明の効果】
【0025】
本発明の気体吸着デバイスは、気体吸着材をガスバリア性材料からなる外被材で外部と遮断して内包することによって、形状や大きさを容易に変えることができ、さらにはレトルト食品の保存等にも用いられ安価でもある。また、高活性な気体吸着材であっても、外気中で容易にかつ長時間取り扱うことができる。
【0026】
さらに、外被材に貫通孔を生じさせる貫通孔をあける部材を熱可塑性素材からなる制御部材で制御し、加温することで制御部材が軟化し、外被材に貫通孔が生じさせることができ、外部から突き刺し力をかけられない箱体であっても、望むタイミングで吸着能を発現させることができる。
【0027】
また、このような気体吸着デバイスを排気抵抗が高い微細な粒径をもつ芯材を用いた真空断熱箱体へのケミカル真空ポンプとして用いることで、真空引き時間を短縮でき、かつ、外気が侵入しても、気体吸着材が吸着することで真空度を維持することができ、高い信頼性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の請求項1に記載の気体吸着デバイスの発明は、気体吸着材と、前記気体吸着材を内包し外部の気体から遮断するガスバリア性材料からなる外被材と、熱可塑性素材からなり軟化するまで前記外被材に貫通孔が生じることを防ぎ前記気体吸着材が外部の気体を吸着することを防止する制御部材と、軟化する前の前記制御部材に対しては前記制御部材を貫通しない程度の力で前記制御部材に突き刺し力を加え続けており所定の温度上昇で軟化した前記制御(有)材に対しては前記突き刺し力で前記制御部材を変形させて前記制御部材および前記外被材に貫通孔をあける部材とを有するものである。
【0029】
気体吸着材が高活性であるほど、また、比表面積が大きくなるほど取り扱いの条件が厳しくなる。つまり、気体吸着材の活性を維持するために、空気に接触可能な時間か短くなり、また、接触可能な圧力も小さくなる。従って、このような気体吸着材は、保存時に加
えて、真空機器に設置する際の劣化も問題となる。しかし、ガスバリア性材料からなる外被材で内包することで、外気に触れることなく取り扱えるため生能低下を抑制できるとともに、形状、大きさも容易に変えることができ、安価でもある。
【0030】
さらに、気体吸着材と、外部との連通が加温によりなされるため、気体吸着能を発現させる際、温度以外の因子を制御する必要がなく、生産性の向上を図ることができる。また、真空断熱箱体の箱体外部から力を加えるのが不可能な場合であっても、吸着能を発現させることができる。
【0031】
真空機器の一例として、真空断熱材に気体吸着材を適用する際は、ガスバリア性の外被材中に芯材と気体吸着材を挿入したものを千ヤンバーに設置後、チャンバーを減圧し、外被材内部を減圧後、外被材の開口部を封止する。
【0032】
この際、チャンバー内の減圧は真空ポンプにて行われる。常圧領域、つまり真空封止前ではポンプ、吸着材いずれによっても減圧することが可能である。一方、低圧領域、つまり真空封止後の外被材内部には、真空ポンプで減圧しきれなかった気体、真空封止後に外被材を通して侵入する気体、芯材から発生する気体が存在し、これらは気体吸着材のみで吸着が可能である。従って、真空封止後の外被材内部において気体吸着材の能力を十分に発揮するためには、真空封止後に外部に連通することが必要である。
【0033】
真空機器は、内部に気体吸着材を設置した後は密閉されるため、外部から直接力を加えることにより気体吸着デバイスを切り替えることは困難である。従って、気体吸着材の切り替えは遠隔操作による切り替えが望ましい。遠隔操作による切り替えの手段として、気体吸着デバイスの温度変化により、気体吸着デバイスの密閉を解除する方法が有力である。
【0034】
真空機器が密閉された後、温度を変化させることにより、内部の気体吸着デバイスの温度をも変化させ、所定の温度に到達することにより切り替えが可能である。温度変化による切り替えの方法としては、あらかじめ突き刺し力を加える部材で、ガスバリア性材料からなる外被材で気体吸着材を内包した外被材に突き刺し力を加えておき、その際、突き刺し力を加える部材に針のような貫通孔を生じさせる部材を設けておいて、さらに、その部材の先にたとえば樹脂ででき、軟化前に貫通孔が生じるのを防ぐ制御部材を設けておく。すると低温状態では制御部材の強度が勝るため貫通しないが、真空機器の温度上昇により制御部材が軟化して変形することにより外被材にも貫通孔を生じさせることができる。
【0035】
この際、真空機器自体が断熱性の高いものとなっているため、気体吸着デバイスは加温面に近い方が、貫通時間は短縮でき、さらに、貫通手段および貫通制御手段の部位は、特に、加温面に近い方が貫通時間を短縮することができる。
【0036】
以上のような方法を用いることにより、気体吸着デバイスに外部から力を加えずに変形させ、密閉性を解除して、吸着能力を発揮することができる。
【0037】
また、ガスバリア性材料とは、ガス透過度が10[cm/m・day・atm]以下であることが好ましく、より望ましくは10[cm/m・day・atm]以下となるものである。
【0038】
さらに、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン等の樹脂フィルムにアルミニウム等の金属箔をラミネートしたラミネートフィルムを用いることが好ましい。金属箔はガスバリア性郎非常に高く、信頼性が高い。また、箔ではなく蒸着層でも優れたバリア性を生じる。
【0039】
蒸着層の方が熱伝導率が低いため、デバイス自体の固体熱伝導率を低減することができるが、一方でガスバリア性は箔におとるため、長期や過酷条件で保存する場合は箔の方が好ましい。また、金属ではなくシリカ等の無機蒸着でも高いガスバリア性を有する。
【0040】
熱可塑性素材とは温度の上昇により、同一の突き刺し力によって、より変形しやすくなるものである。これらの条件を満たすものとしては、金属、ガラス、樹脂等がある。
【0041】
突き刺し力を加える部材とは、所定の状況に設定することにより、外部からの力を加えることなく、外被材に対して定常的に力を加える部材である。これらの手段は、弾性体に変形を加え、変形が戻ろうとする動作を外被材により妨げることで、反作用の法則で外被材に力が加えられるものである。
【0042】
例えば、有限な広さを有する外被材に圧縮した状態で圧縮ばねを封入することがこれに相当する。圧縮ばれは長くなろうとすることで外被材に突き刺し力を加え、制御部材および外被材への突き刺し力となる。
【0043】
ここでの軟化とは、制御部材の強度が低下して貫通孔が生じうるようになることである。従って、ガラスの軟化温度や樹脂の軟化温度などは通常定義されている温度と異なる場合がある。従って、軟化する温度は物質により一意的なものではなく、制御部材に加わる突き刺し力との兼ね合いで決定する。つまり、制御部材に加えられる突き刺し力が大きい場合は、制御部材の強度が大きくても変形して貫通孔が生じうるため軟化する温度は通常定義されている温度より低くなる。貫通制御手段に加えられる力が小さい場合は、制御部材の軟化温度は、通常定義されている軟化温度に近くなる。
【0044】
また、貫通孔をあける部材は鋭利な金属が良い。外被材に貫通孔が生じる温度は、真空機器に加わる温度を低減するため、可能な限り低くすることが望ましい。このために、外被材の単位面積あたりに加わる力を大きくし、外被材の軟化の程度が小さくても貫通孔が生じるようにすることが望ましい。
【0045】
外被材の単位面積に加わる力を大きくするごとに、外被材に突き刺し力を加える部材と、外被材の接触面積を小さくすることで達成される。外被材に突き刺し力を加える部材と、外被材の接触面積を小さくするには、外被材に突き刺し力を加える部材が外被材と接触する部分を鋭利な形状とすればよい。
【0046】
この際、外被材に突き刺し力を加える部材が外被材と接触する部分の軟化温度が、外被材の軟化温度より低いか同等の場合、外被材の軟化温度では、その鋭利性が失われてしまう。従って、外被材に突き刺し力を加える部材が外被材と接触する部分の軟化温度は外被材の軟化温度より著しく高いことが求められる。金属は樹脂より軟化温度が著しく高いため、以上のような条件を満たすことができる。
【0047】
金属としては、鉄、銅、アルミニウム等、通常、構造体として用いられるものを用いることが望ましい。また、単独の金属ではなく、ステンレス、ジュラルミン等、構造体として用いることができる合金を用いても良い。
【0048】
請求項2に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項1に記載の発明において、軟化した状態の前記制御部材に前記貫通孔をあける部材が突き刺し力を加えた時に、前記制御部材および前記外被材が変形する部分を制限して、前記外被材に貫通孔ができないように前記容器が変形することを防止する支持体を、前記外被材における前記貫通孔をあける部材による変形を防ぎたい部分の内面に当接または近接するように設けたものである。
【0049】
温度の上昇により貫通制御手段が軟化しても、外被材内部の気体吸着材が突き刺し力により移動したり、変形したりすると突き刺し力による加圧では貫通しない恐れがある。貫通を確実にするためには、貫通部分にあらかじめ加えられていた突き刺し力により変形しない強度が必要であり、かつ、気体吸着材に連通しなければならない。そこで、外被材の内部を減圧すれば大気圧によって気体吸着材が圧縮され、支持体となることで強度が維持され、貫通孔を容易に生じさせることができる。
【0050】
請求項3に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、制御部材が、外被材と貫通孔をあける部材の間に設置されるものである。
【0051】
貫通孔をあける部材は一つに限られるわけではないが、あらかじめ突き刺し力をかけておき、制御部材が温度上昇によって軟化し、貫通孔を生じさせる手段として、例えば針のような貫通手段を、突き刺し力をかけて外被材の外被材に圧し、その針と外被材の間に例えば樹脂のような制御部材を設置し、加温することで樹脂が軟化し貫通する手段や、あるいは、例えば樹脂性の糸で突き刺し力とバランスするように引っ張ったり、遮ったりし、加温とともに糸が伸び、貫通孔をあける部材等が考えられるが、外被材と貫通孔をあける部材の間に置くことで、簡便に作成でき、かつ、確実に制御できるため歩留まりが高い。また、密着させることで薄くデバイス化することが可能となり、小型化ができる。
【0052】
請求項4に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項1から請求項3いずれか一項に記載の発明において、制御部材が、熱可塑性樹脂からなるものである。
【0053】
真空機器は構成要素の強度により、大気圧に抗してその形状を維持している。このため、真空機器の一部分が軟化温度より高くなると、大気圧により変形してしまう。従って、制御部材の軟化温度は、真空機器の構成要素の軟化温度より低いことが必須である。
【0054】
熱可塑性樹脂は、金属、硝子等の熱可塑性素材に比較して著しく軟化温度が低いため、真空機器の構成要素より軟化温度が低くなることは容易である。従って、制御部材を熱可塑性樹脂とすることで、真空機器の構成の自由度を向上することができる。
【0055】
請求項5に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項1から請求項4いずれか一項に記載の発明において、貫通孔をあける部材が、弾性力により外被材に突き刺し力をかけ、貫通孔を生じさせるものである。
【0056】
外被材に突き刺し力を加える部材が外被材に突き刺し力を加え続けるためには、その一部を弾性体で構成し、突き刺し力を加えその突き刺し力が開放されようとする作用で外被材に力を加える現象が利用できる。クリップで物体を挟む事等がこれに該当する。弾性体がばねであることにより、外被材に加える力を容易に制御できる。
【0057】
また、弾性体で突き刺し力を加える手法の別の一例としては、ばねの部材を縮めた状態で押しつけておくことで突き刺し力を外被材に加え続けるため、外被材の温度が上昇することにより貫通制御手段の熱可塑性素材が軟化して、外被材に貫通孔が生じる。
【0058】
請求項6に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明において、気体吸着材が、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトであるものである。
【0059】
銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトは、非常に高活性であるため、空気との接触は僅かでも不可能であり、真空機器に設置後に外被材の温度を上昇させることにより、
真空機器への設置過程における空気への接触を防ぐことができる。また、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトは、常温における単位重量あたりの空気吸着量が他のゼオライトや、金属系吸着材と比べても高く、少量で大量の空気を吸着でき、省スペース化も行える。
【0060】
請求項7に記載の真空断熱材の発明は、芯材と、ガスバリア性を有する外被材と、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の気体吸着デバイスとを備えた真空断熱材であって、前記外被材の内部に前記芯材と前記気体吸着デバイスを減圧して封止するものである。
【0061】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の気体吸着デバイスを用いることで、空気吸着材を劣化させることかく、外部から侵入する空気を、より長期間吸着することが可能であり、信頼性の高い真空断熱材を構成することができる。
【0062】
請求項8に記載の真空断熱材の発明は、請求項7に記載の発明において、水分吸着材を前記外被材の内部に備えることを特徴とするものである。
【0063】
多くの空気吸着材は、水分を吸収することで空気吸着能が低下してしまう。水分は極性が高いため吸着しやすい性質であり、外気から浸入するもの以外に、外被材や芯材に吸着し、残存している水分がある。それらによって空気吸着能が低下してしまう。空気吸着能の低下を抑え、より信頼性の高い真空断熱材とするため、水分吸着材を外被材内部に備える。
【0064】
請求項9に記載の真空断熱箱体の発明は、それぞれガスバリア性材料からなる外箱と内箱とからなる箱体と、前記外箱と前記内箱の間の空間に芯材と請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の気体吸着デバイスとを備えた真空断熱箱体であって、前記箱体に前記空間と連通する排気口を一つ以上設け、前記空間を前記排気口から減圧することで真空二重壁構造を有するものである。
【0065】
真空断熱箱体は、外被材が樹脂や金属、ガラス等で構成され、常温において通常取り扱う突き刺し力によって、塑性変形せず、箱体形状を有しているものをさす。また、このような真空断熱箱体においては、箱体内部に空気吸着デバイスを設置しても、外部から突き刺し力を加え、空気吸着能を発現させることは困難である。そのため請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の気体吸着デバイスであれば、真空断熱箱体であっても真空吸着能を発現することが可能であり、信頼性の高めることが可能である。
【0066】
請求項10に記載の真空断熱箱体の発明は、請求項9に記載の発明において、前記空間にさらに水分吸着材を備えるものである。
【0067】
多くの空気吸着材は、水分を吸収することで空気吸着能が低下してしまう。水分は極性が高いため吸着しやすい性質であり、外気から浸入するもの以外に、箱体や芯材に吸着し、残存している水分がある。それらによって空気吸着能が低下してしまう。空気吸着能の低下を抑え、より信頼性の高い真空断熱材とするため、水分吸着材を外被材内部に備える。
【0068】
特に真空断熱材のように一辺や一面を開口させて減圧し、その後溶着するといった工程は困難であり、あらかじめ空間に連通した排気口から減圧し、減圧後、封止、密閉する。この場合、空間体積に比し、排気口の断面積は小さいため、排気力は低下し、吸着水分も残存しやすい。そのため、水分吸着材を備えることで、空気吸着能の低下は抑制され、信頼性を高めることができる。
【0069】
請求項11に記載の真空断熱箱体の発明は、請求項9または請求項10に記載の発明において、芯材が、平均一次粒子径100nm以下の乾式シリカであるものである。
【0070】
平均一次粒子径100nm以下の乾式シリカは真空断熱材の芯材として優れたものであるが、排気抵抗が大きいという問題かある。真空断熱材のように一辺や一面を開口させて減圧する工程であれば、大きな問題にならないが、真空断熱箱体のように排気口から減圧する場合は、減圧に著しい時間かかかってしまう。そのため、生産性が悪くなってしまう。
【0071】
そこで、空間内を粗引き後、排気口を封止し、空気吸着デバイスを発現することで、空気吸着材により減圧するケミカル真空ポンプによって、放置している間に減圧することが可能となり、減圧工程を短縮することが可能となる。
【0072】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0073】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における気体吸着デバイスの断面図である。また、図2は本発明の実施の形態1における真空断熱材の断面図である。また、図3は本発明の実施の形態1における真空断熱箱体の断面図である。
【0074】
図1において、気体吸着デバイス1は、気体吸着材2をガスバリア性材料からなる外被材3に挿入し、減圧して密封・内包し、外被材3にはクリップ状の突き刺し力を加える部材4により突き刺し力が加えられている。さらに、突き刺し力を加える部材4と外被材3との間には鋭利か形状の貫通孔をあける部材5が設けられており、さらに、貫通孔をあける部材5と外被材3との間には熱可塑性素材からなる制御部材6が設けられている。
【0075】
図2において、真空断熱材7は、気体吸着デバイス1、芯材8と水分吸着材9を、ガスバリア性を有する外被材10に挿入後、減圧封止したものである。
【0076】
図3において、真空断熱箱体11は、それぞれガスバリア性材料からなる外箱12と内箱13と芯材14とからなり、外箱12と内箱13の間からなる空間15に芯材14を設置し、外箱12と内箱13を接合することで空間15を密閉し、外箱12に設置し、空間15と外気を連通する排気口16から、空間5の空気を排気し、減圧後、排気口16を封止することで、真空断熱箱体1を構成する。また、内箱3には内部にお湯や冷水等を出し入れするための開口部17がある。また、気体吸着デバイス1および水分吸着材9は空間15内に設置する。
【0077】
以上のように構成された気体吸着デバイスおよび真空断熱材および真空断熱箱体の動作・作用について説明する。
【0078】
気体吸着デバイス1が加温されることにより、制御部材6が軟化し、突き刺し力を加える部材4によって貫通孔をあける部材5には常に突き刺し力がかかっているため、制御部材6に貫通孔が生じ、さらに、外被材3に貫通孔を生じることで、気体吸着材2は外気と連通し、気体吸着能を発現する。
【0079】
気体吸着材2は空気を吸着する場合には銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトが、単位重量あたりの空気吸着量が多く、かつ、不活性で吸着しにくい窒素も吸着でき、好
ましい。
【0080】
また、二酸化炭素を吸着するためであれば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ性化合物が好ましい。
【0081】
外被材3はAL箔ラミネートフィルム、AL蒸着ラミネートフィルムがガスバリア性が高く好ましく、またAL以外の金属箔であっても効果は変らない。また、シリカ、ダイヤモンドライクカーボン、アルミナ等の無機材料を蒸着・コーティングしたフィルム材でも構わない。
【0082】
また、金属箔や無機コーティングよりもガスバリア性は劣るが、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、MXナイロン、ポリビニルアルコール等のガスバリア性樹脂でも構わない。
【0083】
また、貫通孔をあける部材は鋭利な形状が好ましく、強度は突き刺し力を加える部材4により加わる突き刺し力と制御部材6および外被材3の強度との相関によるので、限定できないが、材質は金属のような硬いものが好ましい。樹脂であっても構わないが、制御部材6および外被材3に貫通孔が生じるだけの強度が必要である。
【0084】
突き刺し力を加える部材4も限定するものではないが、クリップやばねのような弾性原理を用いる方が、簡便で好ましい。また、磁力による突き刺し力を加える部材も、突き刺し力を加えるタイミングを調整でき、好ましい。
【0085】
また、制御部材6冷熱可塑性素材であれば特に限定にしないが、金属、ガラス、樹脂が好ましく、特に樹脂材料は熱軟化温度が低く、より好ましい。また、制御部材6は外被材3の内側にあっても良いが、取り扱い性、信頼性から、貫通孔をあける部材5と外被材3の間に設置することが好ましい。
【0086】
真空断熱材7は、内部に芯材8や外被材10に残存する空気や水分、溶着層等を通過し経時的に侵入する空気や水分により、断熱性能が低下するが、真空断熱材7を加温することで、気体吸着デバイス1の気体吸着能が発現し、空気成分を吸着し、真空度を維持し、断熱性能も保持できる。また、水分は気体吸着デバイス1の空気吸着能を低下させるため、水分吸着材9を別途設け、水分吸着材9に吸着させることで、気体吸着デバイス1の空気吸着能低下を防止する。
【0087】
また、真空断熱材7を作成後、静置し、芯材8や外被材10に残存する水分を先に吸着させてから、加温し、気体吸着デバイス1の空気吸着能を発現させる方が、より多くの気体吸着能を有し、好ましい。
【0088】
水分吸着材9は酸化カルシウムや塩化カルシウムの様に化学吸着するものが好ましい。
【0089】
外被材10は、気体吸着デバイス1の外被材3と同様に、AL箔ラミネートフィルム、AL蒸着ラミネートフィルムがガスバリア性に優れるため好ましく、またAL以外の金属箔であっても効果は変らない。また、シリカ、ダイヤモンドライクカーボン、アルミナ等の無機材料を蒸着・コーティングしたフィルム材でも構わない。また、金属箔や無機コーティングよりもガスバリア性は劣るが、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、MXナイロン、ポリビニルアルコール等のガスバリア性樹脂でも構わない。
【0090】
また、芯材8は限定するものではないが、ガラスウール繊維やシリカ粉末等の無機粉体
が好ましい。
【0091】
真空断熱箱体11は外箱12と内箱13の間に芯材14を設置し、密閉後、排気口16から減圧し、減圧後封止する。その後、加温することで気体吸着デバイス1の吸着能を発現させ、真空度を維持する、水分吸着材9は真空断熱材7と同様に、気体吸着デバイス1の吸着能の低下を防止する。
【0092】
特に真空断熱箱体11のような形状の場合、排気口16の断面積が小さいため、排気抵抗が高く、減圧に時間かかかってしまう。排気口を大きくしても良いが、その場合、封止が困難になる。さらに、芯材8が乾式シリカのような平均一次粒子径がT00nm以下の微細な材料であると、断熱性能は優れ、特に圧力依存性に優れるが、排気抵抗が高く、減圧に非常に時聞かかかり、工数が増える。
【0093】
そこで、このような場合、排気口16からの減圧を短時間で減圧できる1333Pa程度の粗引きまでとし、封止後、加温し、気体吸着デバイス1の吸着能を発現し、残存空気を吸着するケミカル真空ポンプとして活用し、工数短縮を図ることが好ましい。ケミカル真空ポンプとしても作用させる際は、気体吸着材2の量を増量させる必要がある。
【0094】
外箱12と内箱13は箱体としての形状を維持する必要があり、樹脂や金属の成形体である方が好ましい。金属の場合ガスバリア性や耐久性に優れるため、信頼性の面でより好ましい。
【0095】
樹脂の場合、成形性に優れるため、形状自由度が必要な際に好ましい。また、樹脂材を用いる際は、金属箔のインサート成形、金属メッキ、金属蒸着や、シリカ、ダイヤモンドライクカーボン、アルミナ等の無機材料を蒸着・コーティングし、ガスバリア性を向上させることが好ましい。
【0096】
また、形状は限定させるものではないが、図3のような開口部17を持つような形状の方が保温用途に用いる際は好ましい。また、凹凸のある異型状の真空断熱材として用いても構わない。
【実施例】
【0097】
(実施例1)
実施例1は実施の形態1の気体吸着デバイスおよび真空断熱材の具体例であり、実施の形態1と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0098】
実施例1の気体吸着デバイス1は、気体吸着材2として、粉末状の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを用いた。気体吸着デバイス1の外被材3として、厚さ15μmのナイロン、厚さ25μmのナイロン、厚さ6μmのアルミニウム箔、厚さ50μmの低密度ポリエチレンフィルムの順にラミネートされたラミネートフィルムを用いた。
【0099】
外被材3の形状は、縦50mm、横100mmの長方形である。外被材3に突き刺し力を加える部材4は、ステンレス製のクリップであり、挟み込み接触する部分には貫通孔をあける部材5であるステンレス性の針がついており、針先には直径5mm、厚さ1mmのポリエチレンテレフタレート片を制御部材6として取り付け、制御部材6(ポリエチレンテレフクレート片)と外被材3が接するようにする。外被材3内部には、気体吸着材2が内包されている。
【0100】
上記の通り構成された気体吸着デバイス1を用いて真空断熱材7を作製した。真空断熱材7の芯材8としてガラス繊維集合体を板状としたものを用いた。空断熱材7の外被材1
0は樹脂ラミネートフィルムであり、厚さ15μmのナイロン、厚さ25μmのナイロン、厚さ6μmのアルミニウム、厚さ50μmの低密度ポリエチレンフィルムの順にラミネートされている。
【0101】
あらかじめ3方向をシールして袋状とした外被材10に芯材8と気体吸着デバイス1と酸化カルシウムを不織布内に内包した水分吸着材9を挿入し、真空チャンバーに設置し100Paまで減圧後、封止した。常温では、気体吸着デバイス1の制御部材6であるポリエチレンテレフクレート片は十分な強度を有するため、大気圧が加わっても変形が小さく貫通孔は生じない。
【0102】
真空断熱材7を70℃まで加温し、2時間放置すると、加温された気体吸着デバイス1の制御部材6が軟化し、貫通孔をあける部材5である針が突き刺し力を加える部材4により押し付けられているので、制御部材6の軟化によりこの力に耐え切れなくなり、貫通孔が生じる。この結果、気体吸着デバイス1内部の気体吸着材2と真空断熱材7内の空間か連通し、吸着可能となる。
【0103】
真空断熱材7の内部の圧力を計測すると、5Paであり、気体吸着材2による吸着の結果、真空断熱材7の内部圧力が低減したことがわかる。
【0104】
さらに、この真空断熱材7を1ヶ月、常温大気中で保存した後の内圧を再度測定すると、5Paであり、外被材10を介して侵入する気体を吸着していることがわかる。
【0105】
(実施例2)
実施例2は実施の形態1の気体吸着デバイスおよび真空断熱箱体の具体例であり、実施の形態1と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0106】
実施例2の気体吸着デバイス1は、気体吸着材2として、粉末状の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを用いた。気体吸着デバイス1の外被材3として、厚さ15μmのナイロン、厚さ25μmのナイロン、厚さ6μmのアルミニウム箔、厚さ50μmの低密度ポリエチレンフィルムの順にラミネートされたラミネートフィルムを用いた。外被材3の形状は、縦50mm、横100mmの長方形である。
【0107】
外被材3に突き刺し力を加える部材4は、ステンレス製のクリップであり、挟み込み接触する部分には貫通孔をあける部材5であるステンレス性の針がついており、針先には直径5mm、厚さ1mmのポリエチレンテレフクレート片を制御部材6として取り付け、制御部材6(ポリエチレンテレフタレート片)と外被材3が接するようにする。外被材3内部には、気体吸着材2が内包されている。
【0108】
上記の通り構成された気体吸着デバイス1を用いて真空断熱箱体11を作製した。真空断熱箱体11の芯材14として乾式シリカ95wt%にカーボンブラックを5wt%加え、混合したものを用いた。外箱12と内箱13にはステンレスを用い、空間15は厚さ15mmとし、あらかじめ気体吸着デバイス1と酸化カルシウムからなる水分吸着材9を設置し、その後、芯材14を充填した。外箱12と内箱13はTIG溶接で接合した。
【0109】
封止後、あらかじめ外箱12に取り付けておいた排気口16から約30分減圧することで、1000Paまで減圧し、封止した。そして、40度で1時間放置し、残留水分を除去した後、真空断熱箱体を70℃まで加温し、2時間放置すると、加温された気体吸着デバイス1の制御部材6が軟化し、貫通孔をあける部材5である針が突き刺し力を加える部材4により押し付けられているので、制御部材6の軟化により、この力に耐え切れなくなり、貫通孔が生じる。この結果、気体吸着デバイス1内部の気体吸着材2と真空断熱箱体
11内の空間15が連通し、吸着可能となる。
【0110】
その後、常温で48h放置し、内部の圧力を計測すると、5Paであり気体吸着材2による吸着の結果、真空断熱箱体11の内部圧力が低減したことがわかる。
【0111】
さらに、この真空断熱箱体11を1ヶ月大気中で保存した後の内圧は5Paであり、外箱12と内箱13を介して侵入する気体を吸着していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明にかかる気体吸着デバイスは、高活性の気体吸着材を大気圧下で劣化することなく取り扱うことが可能であるので、真空断熱材や真空断熱箱体等のように、内部を真空にすることにより機能を発現する真空機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の実施の形態1における気体吸着デバイスの断面図
【図2】本発明の実施の形態1における真空断熱材の断面図
【図3】本発明の実施の形態1における真空断熱箱体の断面図
【符号の説明】
【0114】
1 気体吸着デバイス
2 気体吸着材
3 外被材
4 突き刺し力を加える部材
5 貫通孔をあける部材
6 制御部材
7 真空断熱材
8 芯材
9 水分吸着材
10 外被材
11 真空断熱箱体
12 外箱
13 内箱
14 芯材
15 空間
16 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体吸着材と、前記気体吸着材を内包し外部の気体から遮断するガスバリア性材料からなる外被材と、熱可塑性素材からなり軟化するまで前記外被材に貫通孔が生じることを防ぎ前記気体吸着材が外部の気体を吸着することを防止する制御部材と、軟化する前の前記制御部材に対しては前記制御部材を貫通しない程度の力で前記制御部材に突き刺し力を加え続けており所定の温度上昇で軟化した前記制御部材に対しては前記突き刺し力で前記制御部材を変形させて前記制御部材および前記外被材に貫通孔をあける部材とを有する気体吸着デバイス。
【請求項2】
軟化した状態の前記制御部材に前記貫通孔をあける部材が突き刺し力を加えた時に、前記制御部材および前記外被材が変形する部分を制限して、前記外被材に貫通孔ができないように前記容器が変形することを防止する支持体を、前記外被材における前記貫通孔をあける部材による変形を防ぎたい部分の内面に当接または近接するように設けた請求項1に記載の気体吸着デバイス。
【請求項3】
前記制御部材が、前記外被材と前記貫通孔をあける部材の間に設置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の気体吸着デバイス。
【請求項4】
前記制御部材が、熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の気体吸着デバイス。
【請求項5】
前記貫通孔をあける部材が、弾性力により前記外被材に突き刺し力をかけ、貫通孔を生じさせることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の気体吸着デバイス。
【請求項6】
前記気体吸着材が、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の気体吸着デバイス。
【請求項7】
芯材と、ガスバリア性を有する外被材と、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の気体吸着デバイスとを備え、前記外被材の内部に前記芯材と前記気体吸着デバイスを減圧して封止する真空断熱材。
【請求項8】
さらに、水分吸着材を、前記外被材の内部に備えた請求項7に記載の真空断熱材。
【請求項9】
それぞれガスバリア性材料からなる外箱と内箱とからなる箱体と、前記外箱と前記内箱の間の空間に芯材と請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の気体吸着デバイスとを備え、前記箱体に前記空間と連通する排気口を一つ以上設け、前記空間を前記排気口から減圧することで真空二重壁構造を有する真空断熱箱体。
【請求項10】
さらに、水分吸着材を、前記空間に備えた請求項9に記載の真空断熱箱体。
【請求項11】
前記芯材が、平均一次粒子径100nm以下の乾式シリカである請求項9または請求項10に記載の真空断熱箱体。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−165934(P2009−165934A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5359(P2008−5359)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能、高機能真空断熱材」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】