説明

気体媒体をプラズマによって処理するための装置と、その様な装置を引火及び/又は爆発から守る方法

【解決手段】 本発明は、空気を処理するための、引火及び爆発を防止するプラズマ発生装置(1)に関しており、プラズマは、金網によって少なくとも部分的には取り囲まれており、金網は、炎がハウジングを抜け出さないようにする寸法に作られている。本発明は、特に民間航空機の、飛行の安全と防護の要件を満たすのに、特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ発生装置、気体媒体を処理するためその様な装置を使用すること、及び、その様な装置を引火及び/又は爆発から守る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマを発生させる様々な方法と、その様なプラズマの多種多様な用途は、当該技術では既知であり、例えば、Bogaertsらによる「Spectrochimica Acta Part B 57」(2002年)609−658頁に概説されている。
【0003】
コロナ放電プラズマは、例えば、米国特許第5,814,135号で、空気で運ばれる細菌及び化学的毒素を分解するのに使うことが示唆されている。米国特許第5,814,135号による装置は、プラズマ発生区画の点対格子ジオメトリを有しており、電源の正極又は負極の何れかが、その点に接続され、正又は負のコロナプラズマが発生するようになっている。その様な装置の大きな欠点は、オゾン(O)、窒素酸化物(NO)などの様な有害な放出物が相当に産み出されることであり、これを臨界値より低く抑えるのが殆どできないばかりでなく、電気的効率と実現される殺菌効果は、概ね満足できるものではない。更に、特にコロナプラズマは、非常に不均一且つ不安定で、従って、相当量の汚染物質が、除去されること無く、その様な装置を通過してしまう。
【0004】
特に航空機の用途では、引火及び爆発の防止に関して、各種の厳格な国内及び国際法及び基準(例えば、EUの法律(規定及び指令)と、合同航空当局(JAA)の合同航空要件(JAR))を満足しなければならない。従って、先に概説したプラズマ発生装置は、例えば民間航空機に利用する場合は、これらの基準を満足せねばならず、例えば灯油がプラズマ発生装置と接触する場合は、引火又は爆発を、プラズマ発生装置の外側に伝播させてはならない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明の目的は、上記欠点の少なくとも幾つかを克服すること、即ち、特に民間航空機の、特に引火及び/又は爆発の防止に関する、安全と防護の要件を満たし、より効率的でより良い殺菌効果を可能にする、気体媒体を処理するための装置と方法を提供することがである。
【0006】
これらの目的は、プラズマ発生装置、生物学的に又は別の原因で汚染された空気の様な気体媒体を、少なくとも1つのプラズマ誘導反応種によって処理する方法、及び、独立請求項に述べる、気体媒体を殺菌するために上記装置と方法の両方を使用すること、によって達成される。
【0007】
本発明によるプラズマ発生装置は、ハウジングを備えており、プラズマは少なくとも部分的には金網によって囲まれており、金網は、炎がハウジングから出るのを防ぐことができる様な大きさに作られている。特に昔の炭鉱夫の安全ランプでは、金網を使って炎を遮蔽していることが知られている。しかしながら、驚いたことに、その様な金網は、空気の流れが装置を通り抜ける貫流プラズマチャンバ内に好都合に使用できることが分かった。更に驚いたことに、本発明による金網を装備したプラズマ発生装置は、飛行機に関する非常に厳しい国内及び国際法と基準を満足する。
【0008】
好適にも、このハウジングは貫流ハウジングとして作られ、入口及び/又は出口を備えており、その様な装置を、空調ユニットなどの様な空気循環装置内に組み込めるようになっている。
【0009】
特に好適な実施形態によれば、金網は、鉄又は銅の様な金属で作られているか、又は基本的にこれらを備えている。金属は、炎がワイヤーと接触するときには、熱を消散させなければならず、従って、高い熱伝導率の金属が特に好ましい。金網のワイヤーの間隔は、空気が適切に流れるほど広くなければならないが、熱を十分に消散させることができるほど小さくなければならない。従って、ワイヤーの間隔は、0.2cmを超えないのが望ましく、更に望ましくは0.15cmを、最も望ましくは0.1cmを超えないのが望ましい。
【0010】
本発明によるプラズマ発生装置は、(a)少なくとも1つの第1プラズマが発生する少なくとも1つの第1プラズマ発生区画と、(b)少なくとも1つの第2プラズマが発生する少なくとも1つの第2プラズマ発生区画と、を備えているのが望ましい。本装置は、所与の時点で、前記第1及び第2プラズマが異なる極性となるように構成される。前記第1及び前記第2プラズマは、装置が稼動している時は何時も異なる極性であるのが望ましいが、特定の必要性又は用途では、装置には、両方のプラズマが何時も異なる極性とはならないように、例えば、第1プラズマはその極性に維持され、第2プラズマは極性が交互に変わるか、又はその逆の様に、電力供給してもよい。第1及び第2プラズマは、共に、周囲のほぼ1気圧で作動するのが望ましい。
【0011】
第1及び第2プラズマは、共に、同じ一般的原理に基づいているのが望ましく、限定するわけではないが、第1及び第2プラズマは、共に、当該技術では周囲圧力で利用できるものとして知られている、コロナ放電プラズマであるのが最も望ましい。
【0012】
本発明の別の実施形態によれば、プラズマ発生装置は、少なくとも1つのプラズマ発生区画を備えており、プラズマは、電源に接続された電極の間で発生する。例えばファンなどのコンベヤーを、気体媒体がプラズマ発生区画を通る輸送速度を制御するために、利用してもよい。異なる極性のプラズマを発生させるために、2つのDC電源(又は分割電源)又はAC電源が前記電極に接続されており、AC電源(又はDC電源それぞれ)は、実質的に全ての気体媒体が前記異なる極性の両方のプラズマに曝される様な輸送速度に適合する周波数で作動する。AC電源の輸送速度と周波数の設定値は、交番プラズマによって生成される交番電気風の現象を考慮して、実験に基づいて、適切に調整し、決定しなければならないが、これは、日常的実験によって容易に実現することができる。この実施形態によれば、単一対のプラズマ発生電極を備えた単一のプラズマ発生区画でも、本発明を実行するに十分である。しかしながら、複数のプラズマ発生区画を並べて、それらと気体媒体を接触させることも可能であり、好ましい。
【0013】
正と負の両方のコロナ放電プラズマは、当該技術では既知である。一般に、コロナ放電は、普通は活性電極と呼ばれる、尖端、フィラメント、ワイヤーなど、小さな曲率半径を有する第1電極と、普通は対向電極と呼ばれる、平面、円筒形、格子など、大きな曲率半径又は平坦な電極を有する第2電極の間で起こる。活性電極の近傍で気体媒体の破壊値(空気中で約30kV/cm)より高い電界を実現するために、通常、数kVの範囲内の高電圧が掛けられる。コロナ放電は、活性電極が正極に接続されているときは正と呼ばれ、活性電極が負極に接続されているときは負と呼ばれる。
【0014】
電極に高電圧が掛けられると、プラズマ(電子、イオン、及び中性分子)が、活性電極の近傍に(通常数ミリメートルから約1cm)発生する。最初(即ち、電界の仲介による分子のイオン化)は、荷電粒子が発生し(イオンと電子)、急速に加速され、その方向は、正のコロナプラズマか負のコロナプラズマかで変わる。他の分子、例えば周囲の空気の酸素又は窒素、HOなどの様な分子、と衝突すると、プラズマが発生して強度が指数関数的に成長する(アバランシェ効果)。プラズマの伝播に伴う効果は、普通は、(a)電子とイオンの再結合、(b)陽子又は別の粒子との衝突に仲介される分子の励起、及び(c)中性分子の、荷電粒子(イオン又は電子)との(からの)の付着(分離)と受け取られている。
【0015】
一般的に言えば、ここで及び今後理解される、特に殺菌効果に関して考えなければならない3つの反応種(a)イオンと電子を発生させる電力、(b)UV放射線、及び(c)オゾンの様な生物特に細菌を殺す化学種は、特にコロナプラズマ内に共存している。
【0016】
正のコロナプラズマの場合、正の電極は、軽量の電子を急速に引き付け、重い正のイオンを急速に反発する。両方の電荷が共存している間は、両方の種は(再)結合し、それによってUV放射線が発生する。今度は、このUV放射線が気体媒体の内側と電極の表面のイオン化の新しい源となるので、電子なだれについて説明する。簡単に言うと、正のコロナプラズマは、中心の発光プラズマ帯域と、正に帯電した電極から反発される、正イオンの第2単極帯域、という2つの帯域を備えている。
【0017】
負のコロナプラズマの場合、電子は、負に帯電した電極から強く反発され、周囲の分子との衝突によって徐々に速度が低下する。これらの電子は、所有するエネルギーが低すぎて、二次イオン化を誘発するほどではない。二次イオン化は、主に、UV光イオン化に基づいて、正イオンと活性電極との衝突によって生じる。その間に、浮遊している電子が周囲の水の様な極性分子に付着してクラスターを生成し、及び/又は二酸化炭素(O)分子の様な陰性分子に付着して超酸化物(O)と過酸化物(O2−)を生成する。簡単に言うと、負のコロナプラズマは、プラズマ帯域、気体分子の光イオン化帯域、及び負イオンとクラスター状の電子との単極帯域、という3つの帯域を備えている。
【0018】
両方の種類のコロナ放電プラズマは、オゾン(O)、窒素酸化物(NO)などの危険な排出物を大量に生成することが知られている。
望ましくは近接して交互に配置されている異なる極性のプラズマの組み合わせは、相乗効果を提供し、オゾン(O)、窒素酸化物(NO)などの様な危険な放出物という望ましくない結末は、最初の実験によれば、日常的検出限界値以下に大幅に低減される。これは、想像できるように、この電極上の光電効果が仲介する活性電極での二次イオン化によるものである。更に、効率と殺菌効果が高められる。米国特許第5,814,135号による装置は、コロニー形成細菌(E.coil)汚染の数を90%しか低減しないことが報告されているが、本発明による装置は、通常、顕著に改良された殺菌効率を見込める。
【0019】
観察される相乗効果は、正(コロナ)プラズマの単極の外側帯域の正イオンが、負(コロナ)プラズマ区画に送られ、負に帯電した電極に向かって引き付けられ、恐らくはこの電極の光電効果による解離的再結合及び二次イオン化の様な付加的現象を起こす、という論理で説明することができる。すると、負(コロナ)プラズマの単極の外側帯域の負に帯電したイオンが、正(コロナ)プラズマ区画に送られ、正に帯電した電極に向かって引き付けられ、恐らくは電子の分離及び/又は上記と同じ解離的結合による追加的「シード」電子を再度発生させる。両方のプラズマ発生区画内で、この様に発生する追加的な二次イオン化は、初期の先行実験において観察された効率と有毒な物質の放出が少ないことを説明している。勿論、正イオンと負イオンの、負(コロナ)プラズマ区画又は正(コロナ)プラズマ区画の何れかへ交換は、様々な方法で行うことができる。例えば、その様な交換は、或るプラズマ区画から別のプラズマへ区画の、望ましくは流れに支援された拡散によって生じる。別の方法は、例えば、プラズマ自体の極性を、例えば負から正の極性に変えて、その結果、以前に反発されたそれらのイオンを中心電極に引き付けることである。従って、気体媒体の輸送速度(更にプラズマによって生成される電気風を考慮して)及び/又は、電圧、望ましくはAC電圧は、好都合に、実質的に全ての気体媒体が、各プラズマ発生区画で異なる極性のプラズマと接触できるようになっている。何れの場合も、プラズマの両方の極性を組み合わせる相乗効果は、プラズマ放電全体の安定性と均一性の改良に寄与して、装置を通過する汚染物質の量を劇的に減らす。
【0020】
好適な実施形態によれば、装置は、気体媒体を前記第1及び前記第2プラズマと接触させることのできるチャンバ及び/又は開放空間を備えている。これに関する処理には、汚染除去すること、消毒すること、殺菌することなどが含まれる。チャンバ及び/又は開放空間は、例えば、気体媒体をプラズマと接触させるための閉じた/閉じることのできる処理ボックスと考えることができ、或いは、望ましくは、入口と出口を備えている装置に気体媒体を連続して送るための手段を提供している。対向電極は、気体媒体が対向電極を貫通できるように作られているのが望ましい。好都合に、対向電極は、例えば、気体媒体が貫流することのできる格子によって穴などを有している。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、前記第1及び第2プラズマ発生区画には、それぞれAC電流が供給される。供給されるAC電流が両方のプラズマ発生区画で逆位相であれば、第1と第2プラズマ発生区画で、異なる極性のプラズマが発生する。
【0022】
供給されるAC電流は、両方のプラズマ発生区画で同じ振幅であるのが望ましい。
電流は、DCからACの範囲で、例えば数百kHzまで、例えば500kHzで供給されるのが望ましく、その一般的な利用可能性により約50Hzの範囲で供給されるのが望ましい。
【0023】
本発明の別の実施形態では、前記第1及び第2プラズマ発生区画には、DC電流が供給され、全体的電気的構造の必要性を大幅に簡素化している。
第1及び第2プラズマ発生区画に供給されるのがAC又はDC電圧の何れの場合も、電源は、活性電極近傍に約30kV/cmの(一定又はピーク)電界を発生させることができなければならない。通常、電極は、約12kVの電圧を供給できるように配置されているのが望ましい。
【0024】
或る特に好適な実施形態では、前記第1及び第2のプラズマ発生区画は、気体媒体用の入口と出口を有する貫流ハウジングに組み込まれている。本発明によれば、入口及び/又は出口には、金網が装着されており、炎が金網と接触する場合は、熱を消散することによって引火及び/又は爆発を防止するようになっている。貫流ハウジングに組み込まれているので、特に、異なる極性を有する両方のプラズマは、好適に順次、処理される気体媒体の様な気体媒体と接触する。その様な貫流ハウジングは、本発明による装置を、例えば、空調システム、クリーンルーム、冷蔵庫、固定及び携帯殺菌器などの、望ましくは流体の循環ストリーム、特に気体ストリームに、容易に組み込めるようにしている。
【0025】
貫流ハウジングは、流入してくる流体を別々のストリームに分けることができるのが望ましく、前記別々のストリームは、それぞれ、前記第1又は第2プラズマの少なくとも一方と接触する。流入してくる流体を別々のストリームに分割するのは、例えば、上流の穴開きプレートなどによって実現される。また、分けられたストリームのその後の案内は、具体的な用途又は実施形態に合わせて提供してもよいが、強制ではない。穴は、例えば、任意の適した形状(楕円形、矩形、長方形など、望ましくは円形)の穴開きプレートによって提供される。前記別々のストリームの、その後の更なる分割及び/又は再結合は、具体的な実施形態によって好都合に適用することができる。しかしながら、具体的な用途に依っては、処理する物質の十分な貫流を妨害しないように注意しなければならず、穴の必要及び/又は好都合な形状は、日常的な実験によって容易に確定することができる。流入してくる流体のストリームを、複数のより小さなストリームに分けると、これらの複数のより小さなストリームを、それぞれ、並列及び/又は直列の何れかで、望ましくは流入してくる小さな各流体ストリームと直接直線状に配置されている複数の異なるプラズマ区画と、効率的に接触させ、特にコロナプラズマの欠点、即ち、発生したプラズマのほんの僅かな空間内範囲という欠点、を克服することができる。
【0026】
前記第1プラズマ区画と前記第2プラズマ区画は、貫流ハウジングの入口と出口の間に交互に配置されているのが特に望ましい。複数のプラズマの内の1つのプラズマで概ね十分であるが、反対の極性の二対以上のプラズマを1つのハウジング内に配置してもよい。しかしながら、装置の特別な用途に合わせた特別な製品では、主に用途に依って、第1又は第2プラズマ及び/又はプラズマ発生区画は、過剰な数及び/又は集中度で設けることもできる。その様な適合性は、日常的実験によって容易に実行することができる。
【0027】
本発明の別の実施形態によれば、第1プラズマ発生区画の少なくとも1つの電極は、第2プラズマ発生区画の少なくとも1つの電極と電気的に連結され、望ましくはそれと一体の部品に形成されている。特にコロナプラズマの場合、これは、中空の円筒の様な中空の本体を、負のプラズマの正に帯電した大きな対向電極として提供することによって実現することができる。更に、この中空の本体は、少なくとも1つの端部に複数の尖端(又は、曲率半径が小さい他の幾何学的配置)を有しており、同時に、別のプラズマ発生区画内の、正プラズマの正に帯電した電極として、又はその逆として作用してもよい。当業者にとって、異なるジオメトリを実行に移す方法は、一般に、1つの電極の上記2つの機能に基づいて自明であり、例えば、部分的に同軸に整列しており、尖端などを備えている中空本体に基づいているだけの構成も、代替物として機能し、特定の用途では好都合な結果をもたらす。
【0028】
しかしながら、装置の主な貫流方向は、望ましくは尖端対格子状に配置されている電極の間に最短距離を画定している仮想回線にほぼ平行であるのが特に好ましい。而して、貫流方向とプラズマの発生は同様の方向を向いているので、気体媒体がプラズマと効果的に接触するようになっている。
【0029】
本発明によれば、本装置は、気体媒体、例えば生物学的に又は別の原因で汚染された空気、の殺菌に有用に用いられる。
本装置は、閉じた及び/又は閉じることのできる区画室に、含まれているか又は作動的に接続されているのが望ましい。その様な区画室は、部屋か、車、バス、航空機、船、列車などあらゆる種類の運搬用乗物か、又は、例えば、その様な運搬用乗物内のキャビンである。本装置は、引火及び/又は爆発に敏感な利用目的に用いるのが望ましい。本装置は、民間航空機のキャビン内の雰囲気気体媒体の処理に用いられるのが最も望ましい。装置は、空調ユニットなどの空気循環装置に組み込まれるのが望ましい。
【0030】
更に、本発明は、望ましくは閉じた又は閉じることのできる区画室に、含まれているか又は作動的に接続されているプラズマ発生装置を保護する方法に関しており、本方法は、プラズマを金網で少なくとも部分的には取り囲む段階を含んでおり、金網は、炎がハウジングから抜け出すのを防げる寸法に作られている。この方法では、例えば、プラズマ発生装置の貫流ハウジングの入口と出口に、適した寸法に作られた金網を装着することによって、既に設置されているプラズマ発生装置を容易に修復することができ、好都合である。
【0031】
本発明の更なる目的、利点、及び新規な特徴は、好適な実施形態に関する以下の詳細な説明を添付概略図と共に参照すれば明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1に概略的に示している様に、当該技術分野では既知のコロナ放電プラズマは、通常、尖端8又はスパイクなどの様な小さい曲率半径を有する電極と、平面又は格子などの様な大きい曲率半径を有する対向電極9との間に発生する。電源10は、金属ワイヤー又はプレートなどの様な導電性手段11及び12によって、それぞれ両方の電極8及び9に接続されている。電力供給源10によって供給される電力は、ほぼ周囲の1気圧でコロナ放電Pを発生させるために、通例、活性電極8の近傍に約30kVの範囲の電界を作り出せるようになっている。電極に高電圧が供給されると、プラズマPが電極8の回りに発生する。本例での様に、電源10の負極が尖端状の電極8に接続されている場合は、コロナプラズマPは負と呼ばれる。対照的に、図1には明確に示されていないが、電源10の負極が尖端状の電極8に接続されているときは、コロナプラズマは正と呼ばれる。負と正のコロナ放電プラズマは、共に、それ自体が知られている。
【0033】
図2に概略的に示す様に、極性が異なる2つのプラズマ、ここではコロナ放電プラズマが組み合わせられている。状況a)によれば、2つのプラズマ発生区画AとBは、連続的に配置されている。第1プラズマ発生区画Aでは、電極8A(−)(文字はプラズマ発生区画を、符号は接続されている電源10の極性を示している)が、負のコロナ放電プラズマを発生させ、第2プラズマ発生区画Bの電極8B(+)は、正のコロナ放電プラズマを発生させるようになっている。対向電極9A(+)及び9B(−)は、共に、気体媒体が、第1プラズマ発生区画Aから第2プラズマ発生区画Bへ貫流(矢印で概略的に示している)できるようにする、或る種の孔を有している。図で分かり易くするために、各電極8A(−)と8B(1)の一方だけを明示しているが、例えば装置の貫流直径をカバーするために、適した数のその様な電極を好適に設けてもよいものと理解頂きたい。プラズマ発生区画AとBには、共に、別々の又は1つで同じ、の何れかの電源10によって電力が供給される。先に概括した様に、AC又はDC何れかの電圧を、プラズマ発生区画AとBの両方に接続してもよい。状況b)によれば、両方のプラズマ発生区画AとBの極性は、状況a)で示した構成とは反対のDC電圧を印加することによって、或いは、プラズマ発生区画AとBの両方に供給されるAC電流の他方の半波として、交番させてもよい。AC電流が印加される場合、周波数は、その一般的な利用可能性から50Hzが望ましいが、DCから例えば数百kHzの範囲の周波数を適切に印加することができる。
【0034】
図3は、プラズマ発生装置1の概略図である。本装置は、例えば円筒形、長方形などの適した形状の貫流ハウジング5を備えている。貫流ハウジング5は、ユーザーが、通常、装置に供給される高電圧と接触しないようにするために、外部に対して電気的に絶縁されているのが望ましい。貫流ハウジング5は、更に、入口6と出口7を備えており、それぞれが、流入する気体媒体4の流れを部分流れS1、S2などに分けるために、例えば、円形、楕円形、長円形、又は長方形など適した形状の穴13を備えているのが望ましい。入口6の穴13は、出口7の穴13、及び、例えば、入口6と出口7の間の追加の穴13と、一直線に配置されているのが望ましい。装置は、第1プラズマ発生区画Aと第2プラズマ発生区画Bを備えている。第1プラズマ発生区画では、小さい曲率直径の尖端を有しているプラズマ発生電極8A(+)は、プラズマ2が、気体媒体4の流入してくる流れS1などと直接接触できるように、入口6の穴13と一直線に配置されている。本例では、尖端状の電極8A(+)、8B(−)(文字は言及するプラズマ発生区画、符号は、言及する電極に印加される電圧の極性)は、穴13と一直線に、支持体16に取り付けられている。しかしながら、例えば、適切に配置された中空本体の貫流ハウジング5の側壁に取り付けられている電極、例えば中空円筒形電極などの様に、気体媒体4の流れS1などの中に向いている他の電極配置を適切に利用してもよい。格子状の対向電極9A(−)は、プラズマ2が発生するように、上流に取り付けられている。本例では、電力は、導電層15A(+)と支持体(16)を介して、電極8A(+)に供給される。絶縁層14Aは、貫流ハウジングとは別体でもよいし、その一部でもよい。電力がプラズマ発生区画Aに供給されれば(即ち、電源(図示せず)の正極が電極8A(+)に接続され、負極が電極9A(−)に接続される)、正のプラズマ2が、プラズマ発生区画Aに発生し、流れS1...S8がプラズマに曝される。流れS1...S8は、次に、絶縁層14Bの穴13を通り、プラズマ発生区画Bに入る。穴13を介して、1つのプラズマ発生区画から別のプラズマ発生区画へ反応種を交換することもできる。プラズマ発生区画Bは、電流が電極に供給される以外は、プラズマ発生区画Aと概ね同様に作られている。導電層15B(−)を介して、電源(図示せず)の負極は、対応する穴13と一直線に配置されている尖端状の電極8B(−)に接続されている。対向電極として、格子状の電極9B(+)は、更に上流に配置されており、その後に出口7が、これも望ましくは穴13と一直線になるように配置されている。電力がプラズマ発生区画Bに供給されれば(即ち、電源(図示せず)の負極が電極8B(−)に接続され、正極が電極9B(+)に接続される)、負のプラズマ3が、プラズマ発生区画Aに発生し、流れS1...S8がプラズマに曝される。気体媒体4は、全体が、その後、異なる極性の2つのプラズマ2、3と接触し、先に概要した様な好都合の特性が生まれる。別々の流れS1...S8は、必須ではないが、特に大型装置の場合は、プラズマ発生電極8A(+)、8B(−)と気体媒体4が効率的に接触するように、設けると好都合である。流れS1...S8は、例えば、本例の様な穴付きプレートの何れかによって生成し、従って、プラズマ発生区画A、B内に案内を追加しなくてもよい。しかしながら、流れS1...S8は、例えば分離プレートなどで、互いに分離してもよい。
【0035】
図4は、プラズマ発生装置1の別の実施形態の概略図である。装置1は、流体が装置1を通過できるように、入口6と出口7が設けられている貫流ハウジング5を備えている。例えばファンの様な輸送器17が、装置を通過する気体媒体4の輸送速度を制御及び微調整するために設けられている。少なくとも一対のプラズマ発生電極8、9が備えられている。基質(substrate)の貫流を制御するために、狭小化部などの様な集束手段を利用すると好都合であり、電極8、9は、その様な集束手段の出口の直ぐ近くに配置するのが望ましい。電源18によってAC電流を印加すると、電極8、9の間に、交番極性(alternating polarity)の交番プラズマ(alternating plasma)Pが発生する。輸送速度とAC電流の周波数は、気体媒体が、交番プラズマPの両方の極性に曝されるように調整される。一対のプラズマ発生電極だけでも十分であるが、本発明による装置を更に改良するには、複数の交互に配置されているプラズマが適しているものと理解頂きたい。
【0036】
図5は、本発明による引火及び爆発防止プラズマ発生装置1の概略図である。図4に示している実施形態とは対照的に、貫流ハウジング5には、入口6と出口7に、それぞれ金網19と20が設けられている。本発明によれば、金網19と20は、炎が、貫流ハウジング5から抜け出すのを防ぐように作られている。例えば、灯油がプラズマPに接触する場合、装置1が航空機内に配置されていれば、生じた炎の熱は、金網によって急速に消散され、従って、装置の外側での引火及び爆発が防止される。本発明による装置1は、引火及び爆発防止に関して、民間航空機の安全及び保護規定を満足している。熱を十分に消散させるために、金網は、鉄又は銅の様な金属で作られているか、又は基本的にこれらを備えている。金網のワイヤー間の間隔は、空気が適切に流れるほどに広くなければならないが、熱が十分に消散するほど小さくなければならない。従って、ワイヤーの間隔は、0.2cm(1/12インチ)を超えないのが望ましく、0.15cm(1/18インチ)を超えなければ更に望ましく、0.1cm(1/24インチ)を超えなければ最も望ましい。特定の実施形態について、ここに明白に示しているが、本質的にどの様なプラズマ装置も(少なくとも部分的には)、本発明による金網で取り囲んで、炎がハウジングを抜け出すのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】コロナ放電プラズマ装置(先行技術)を示す。
【図2】1つの装置の中で直列に配置されている、異なる極性の連続コロナ放電の組み合わせを示し、(a)は負−正、(b)は正−負をそれぞれ示している。
【図3】2つのプラズマ発生区画を備えたプラズマ発生装置を示す。
【図4】1つのプラズマ発生区画を備えたプラズマ発生装置を示す。
【図5】入口と出口に金網が設けられているプラズマ発生装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマで気体媒体を処理するための装置(1)において、前記装置は、貫流ハウジングを備えており、プラズマは少なくとも部分的には金網で取り囲まれていて、炎が前記ハウジングから抜け出るのを防いでいる、プラズマ発生装置(1)。
【請求項2】
前記ハウジングは入口と出口を備えており、前記出口及び/又は出口には、前記金網が装着されている、請求項1に記載のプラズマ発生装置(1)。
【請求項3】
前記金網は、金属で作られているか、又は基本的に金属を含んでいる、請求項1又は2に記載のプラズマ発生装置(1)。
【請求項4】
前記金網は、ワイヤーの間隔が、0.2cmを超えないように、望ましくは0.15cmを超えないように、最も望ましくは0.1cmを超えないように作られている、請求項1又は3に記載のプラズマ発生装置(1)。
【請求項5】
少なくとも1つの第1プラズマ(2)が発生する少なくとも1つの第1プラズマ発生区画(A)と、
少なくとも1つの第2プラズマ(3)が発生する少なくとも1つの第2プラズマ発生区画(B)と、を備えており、
所望の時点で、前記第1及び前記第2のプラズマ(2、3)は、異なる極性を有している、請求項1から4の何れか一項に記載のプラズマ発生装置(1)。
【請求項6】
電極(8、9)の間にプラズマ(P)が発生する、少なくとも1つのプラズマ発生区画(A)と、
気体媒体(4)が前記プラズマ発生区画(A)を通る搬送速度を制御するための搬送器(17)と、
異なる極性の交番プラズマ(2、3)を発生させるために前記電極(8、9)に接続されているAC電源(18)と、を備えており、
前記電源(18)は、実質的に全ての気体媒体(4)が前記異なる極性を有する両方の前記プラズマ(2、3)に少なくとも一回は曝されるように、前記気体媒体(4)の搬送速度に適合する周波数で作動する、請求項1から4の何れか一項に記載のプラズマ発生装置(1)。
【請求項7】
前記装置(1)は、気体媒体(4)を前記第1及び前記第2のプラズマ(2、3)に接触させることのできるチャンバ及び/又は開放空間を備えている、請求項1又は6に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記第1及び第2のプラズマ(2、3)は、コロナ放電プラズマである、請求項1から7の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記第1及び第2のプラズマ発生区画(A、B)には、それぞれAC電流が供給される、請求項1から8の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記第1プラズマ発生区画(A)と前記第2プラズマ発生区画(B)には、逆位相のAC電流が供給される、請求項9に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記第1プラズマ発生区画(A)と前記第2プラズマ発生区画(B)には、同じ振幅のAC電流が供給される、請求項9又は10に記載の装置(1)。
【請求項12】
前記電流の周波数は、DCから約500kHzのACの範囲にある、請求項9から11の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項13】
前記第1及び第2のプラズマ発生区画(A、B)には、DC電流が供給される、請求項5、7、又は8の何れかに記載の装置(1)。
【請求項14】
前記電極(8、9)の間の電位差は、前記電極(8)近くに、約30kV/cmの範囲の電界を作り出すようになっている、請求項8から13の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項15】
前記第1及び第2のプラズマ発生区画(A、B)は、気体媒体(4)用の入口(6)と出口(7)を有する貫流ハウジング(5)に一体化されている、請求項5から14の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項16】
前記貫流ハウジング(5)は、流入してくる流体を別々の流れ(S)に分けることができ、前記流れ(S)は、それぞれ、前記第1又は第2のプラズマ(2、3)の少なくとも一方に接触する、請求項15に記載の装置(1)。
【請求項17】
前記第1プラズマ発生区画(A)と前記第2プラズマ発生区画(B)は、前記入口(6)と前記出口(7)の間に交互に配置されている、請求項15又は16に記載の装置(1)。
【請求項18】
前記第1プラズマ発生区画(A)の少なくとも1つの電極は、前記第2プラズマ発生区画(B)の少なくとも1つの電極と電気的に連結されており、望ましくはそれと一体的に形成されている、請求項5から17の何れかに記載の装置(1)。
【請求項19】
前記第2プラズマ発生区画(B)の少なくとも1つの電極と電気的に連結されており、望ましくはそれと一体的に形成されている、前記第1プラズマ発生区画(A)の前記電極は、中空の本体として、望ましくは中空の円筒として形成されており、前記中空の本体の少なくとも1つの端部には複数の尖端(9)が設けられている、請求項18に記載の装置(1)。
【請求項20】
気体媒体(4)を殺菌するための、請求項1から19の何れか一項に記載の装置(1)の使用。
【請求項21】
請求項1から19の何れか一項に記載の装置に装備されているか、又は接続されている閉じた及び/又は閉じることのできる区画室。
【請求項22】
前記区画室は、運輸装置、望ましくは航空機である、請求項21に記載の区画室。
【請求項23】
引火及び/又は爆発を起こさないように、望ましくは請求項21又は22の一方に記載の閉じた及び/又は閉じることのできる区画室に配置されているか、又は接続されている、望ましくは請求項1から19の何れかに記載のプラズマ発生装置(1)を保護する方法において、プラズマを金網で少なくとも部分的には取り囲む段階を含んでおり、前記金網は、炎が前記ハウジングを抜け出さないような寸法に作られている、方法。
【請求項24】
ハウジングの入口及び/又は出口に金網を装着する段階を含んでいる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記金網は、金属で作られているか、又は基本的に金属を含んでいる、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記金網は、ワイヤーの間隔が、0.2cmを超えないように、望ましくは0.15cmを超えないように、最も望ましくは0.1cmを超えないように作られている、請求項23から25の何れか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−511431(P2008−511431A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528820(P2007−528820)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【国際出願番号】PCT/EP2005/053926
【国際公開番号】WO2006/024595
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(507066105)アスケア・テクノロジーズ・アクチェンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】