気水分離器、気水分離方法および原子炉
【課題】簡素な構造で、気水分離性能が高い気水分離器を提供する。
【解決手段】 原子炉の炉心の熱によって発生した蒸気中の水を分離する気水分離器であって、蒸気が流入して上昇する第1の流路7aと、第1の流路7aと連通し、第1の流路7aを通過した蒸気が下降する第2の流路2aと、第2の流路2aと連通し、第2の流路2aを通過した蒸気が上昇する第3の流路1aと、を備え、第1の流路7a、第2の流路2aおよび第3の流路1aは、外周側から内周側に順次形成されている。
【解決手段】 原子炉の炉心の熱によって発生した蒸気中の水を分離する気水分離器であって、蒸気が流入して上昇する第1の流路7aと、第1の流路7aと連通し、第1の流路7aを通過した蒸気が下降する第2の流路2aと、第2の流路2aと連通し、第2の流路2aを通過した蒸気が上昇する第3の流路1aと、を備え、第1の流路7a、第2の流路2aおよび第3の流路1aは、外周側から内周側に順次形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と蒸気との二相流から水と蒸気を分離する気水分離器、気水分離方法および原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉においては、原子炉の炉心で発生した熱によって原子炉内で蒸気を発生させ、その蒸気によってタービンや発電機を回転駆動させている。一方、加圧水型原子炉においては、一次冷却系と二次冷却系とに分かれている。一次冷却系では、原子炉の炉心で発生した熱によって高温水を造り出し、この高温水が蒸気発生器内の熱交換器に送られる。この熱交換器で二次冷却系の水が沸騰して蒸気となり、その蒸気によってタービンや発電機を回転駆動させている。
【0003】
このようにしてタービンに送られる蒸気は、湿分を除去する必要があることから、原子炉や蒸気発生器で発生した蒸気と水との二相流から水が除去される。そのため、一般的な原子炉には、気水分離器やドライヤなどが複数設けられている。
【0004】
図19は一般的な沸騰水型原子炉の構成と水や蒸気の流れを示す立断面構成図である。なお、図19および図20において、実線の矢印は水の流れを、破線の矢印は蒸気の流れを、それぞれ示している。
【0005】
図19に示すように、原子炉圧力容器15は、中央部よりやや下部に多数の燃料集合体を収納する炉心16が配置されている。この炉心16を構成するシュラウドの上端開口は、シュラウドヘッド24により閉塞されている。このシュラウドヘッド24には、気水分離器21のスタンドパイプ17が複数立設されている。この気水分離器21の上方には、ドライヤ22が配設されている。
【0006】
次に、水の流れおよび蒸気の流れについて説明する。
【0007】
図19に示すように、給水管20から原子炉圧力容器15内へ導かれた水は、シュラウドの下部から炉心16に導入される。この炉心16の熱エネルギーによって水は沸騰し、スタンドパイプ17においては水と蒸気との二相流となっている。
【0008】
気水分離器21は、上記スタンドパイプ17、スワラー18、およびバレル25を備えており、スワラー18とバレル25とで水を遠心分離する構造になっている。遠心分離された水は、水面4下に導かれて給水管20から流入した水と混合して原子炉圧力容器15内を再循環する。一方、気水分離器21によって大部分の水が除去された蒸気は、ドライヤ22でさらに湿分が除去された後、主蒸気管19を通って原子炉圧力容器15の外に導かれ、図示しないタービンへと送られる。
【0009】
次に、スワラー18で遠心分離された液膜の除去方法について図20を用いて説明する。図20は従来の気水分離器を示す立断面図である。
【0010】
図20に示すように、スワラー18で遠心力を受けることによって、比重の大きい水は、バレル25内面に液膜8を形成する一方、バレル25の中央は、主に蒸気が流れる。液膜8は、バレル25の内径側に配置されたピックオフリング26によってバレル25外周に形成された排水管27にかき出され、この排水管27を下降して気水分離器21の周囲の水面4に排出される。
【0011】
ところで、気水分離器の構造に関しては、旋回羽根による遠心分離によってバレル内面に形成された液膜の除去手段の一つとして、特許文献1に記載された技術は、バレルの周方向にスリットを形成してバレル周囲に排水するという技術である。また、特許文献2に記載された技術は、ピックオフリングを3段有する気水分離器において、第1段から第3段までのピックオフリングの直径を調整することで、キャリーオーバーの低減を図る技術である。これらに示すように従来の技術は、バレル内面を上昇する液膜を除去する構造になっている。
【0012】
なお、以下の説明では、気水分離器上部から流出する蒸気に含まれる液滴の重量比をキャリーオーバーという。また、各段のピックオフリングで気水分離した水に含まれる蒸気の重量比をキャリーアンダーという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−79323号公報
【特許文献2】特開平11−326576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したような各特許文献を含む従来の気水分離器では、気水分離器に流入した二相流は、旋回羽根による遠心分離作用によってバレル内面に液膜を形成し、ピックオフリングやバレルに設けられた孔やスリットによって液膜が除去される。この液膜は、ピックオフリングなどの除去部材に到達するまでは上昇し、その液膜厚さは、二相流のクオリティや上昇流速に依存する。ここで、上記二相流のクオリティとは、二相流状態での蒸気の質量割合である。つまり、クオリティが高いということは、蒸気が多くなり、水が少なくなることである。
【0015】
そのため、気水分離器に流入する二相流のクオリティのばらつきが大きい場合は、ピックオフリング幅や形状の最適化が困難である問題がある。また、ピックオフリングで除去されなかった液膜は、遠心力の低下などによってキャリーオーバーが高くなる可能性があった。
【0016】
本発明は上述した事情を考慮してなされたものであり、簡素な構造で、気水分離性能が高い気水分離器、気水分離方法および原子炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明に係る気水分離器は、原子炉の炉心の熱によって発生した蒸気中の水を分離する気水分離器であって、前記蒸気が流入して上昇する第1の流路と、前記第1の流路と連通し、前記第1の流路を通過した蒸気が下降する第2の流路と、前記第2の流路と連通し、前記第2の流路を通過した蒸気が上昇する第3の流路と、を備え、前記第1の流路、前記第2の流路および前記第3の流路は、外周側から内周側に順次形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る気水分離方法は、原子炉の炉心の熱によって発生した蒸気を分離する気水分離方法であって、外周側から内周側に第1の流路、第2の流路および第3の流路が順次形成され、前記蒸気が前記第1の流路に流入して上昇する第1蒸気上昇ステップと、前記第1蒸気上昇ステップの後に、前記第1の流路を通過した蒸気が前記第2の流路を下降する蒸気下降ステップと、前記蒸気下降ステップの後に、前記第2の流路を通過した蒸気が前記第3の流路を上昇させる第2蒸気上昇ステップと、を有することを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明に係る原子炉は、炉心の熱によって発生した蒸気中の水を気水分離器により分離する原子炉であって、前記気水分離器は、前記蒸気が流入して上昇する第1の流路と、前記第1の流路と連通し、前記第1の流路を通過した蒸気が下降する第2の流路と、前記第2の流路と連通し、前記第2の流路を通過した蒸気が上昇する第3の流路と、を備え、前記第1の流路、前記第2の流路および前記第3の流路は、外周側から内周側に順次形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡素な構造で、高い気水分離性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は本発明に係る気水分離器の第1実施形態を示す概形図、(b)は立断面図である。
【図2】図1(b)のII−II線における平断面図である。
【図3】本発明に係る気水分離器の第2実施形態を示す立断面図である。
【図4】図3のIV−IV線における平断面図である。
【図5】本発明に係る気水分離器の第3実施形態を示す立断面図である。
【図6】図5のVI−VI線における平断面図である。
【図7】本発明に係る気水分離器の第4実施形態を示す立断面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線における平断面図である。
【図9】本発明に係る気水分離器の第5実施形態を示す立断面図である。
【図10】図9のX−X線における平断面図である。
【図11】本発明に係る気水分離器の第6実施形態を示す立断面図である。
【図12】図11のXII−XII線における平断面図である。
【図13】本発明に係る気水分離器の第7実施形態を示す立断面図である。
【図14】図13のXIV−XIV線における平断面図である。
【図15】本発明に係る気水分離器の第8実施形態を示す立断面図である。
【図16】図15のXVI−XVI線における平断面図である。
【図17】本発明に係る気水分離器の第9実施形態を示す立断面図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII線における平断面図である。
【図19】一般的な沸騰水型原子炉の構成と水や蒸気の流れを示す立断面構成図である。
【図20】従来の気水分離器を示す立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る気水分離器の各実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1(a)は本発明に係る気水分離器の第1実施形態を示す概形図、(b)は立断面図である。図2は図1(b)のII−II線における平断面図である。なお、以下の実施形態における水面および液膜は、図19および図20と同一の符号を用いて説明する。また、本実施形態の気水分離器は、図19に示す気水分離器と同様に、原子炉の原子炉圧力容器内に設置された炉心の熱によって発生する蒸気と水の二相流から水と蒸気とに分離するものである。さらに、図1(a)においては、後述するスタンドパイプ7、上面板5などの厚みや、衝突板3、旋回羽根6などの一部の構成を省略して簡略的に図示している。
【0024】
図1(a),(b)および図2に示すように、本実施形態の気水分離器は、径方向に3重管構造に構成されている。この3重管の最外周は、円管状のスタンドパイプ7が配設され、このスタンドパイプ7は、3重管の最内周となる内筒バレル1と上面板5を介して連続して形成されている。すなわち、内筒バレル1は、水面4から離れてスタンドパイプ7の内周側に配置されている。また、スタンドパイプ7と内筒バレル(第2のバレル)1との間には、上端が上面板5の近傍まで延びる3重管の中間となる分離バレル(第1のバレル)2が配設されている。つまり、分離バレル2は、スタンドパイプ7の内径より小さい外径を有している。
【0025】
したがって、スタンドパイプ7と分離バレル2との間には環状の第1の流路7aが、分離バレル2と内筒バレル1との間には環状の第2の流路2aがそれぞれ形成されている。第1の流路7aと第2の流路2aとの間であって、上面板5と分離バレル2の上端との間は、折り返し流路5aが形成されている。そして、内筒バレル1の内周側は、第3の流路1aが円筒状に形成されている。
【0026】
ここで、スタンドパイプ7および分離バレル2は、シュラウドヘッド24(図19に示す)に立設され、スタンドパイプ7と分離バレル2との間に形成される第1の流路7aは、シュラウドヘッド24内と連通状態としている。
【0027】
分離バレル2と内筒バレル1との間の第2の流路2a内には、4枚の旋回羽根6が周方向に一定間隔をおいて設置されている。なお、本実施形態は、旋回羽根6の表面に酸化チタンなどを用いた表面加工を施し、濡れ性を向上させている。分離バレル2の下端と水面4との間において、水面4の近傍には、衝突板3が周方向に一定間隔をおいて取り付けられた複数の接続部材3aを介して固定されている。この衝突板3は、円形の平板状に形成され、第2の流路2aから流出する下降流が衝突する。
【0028】
さらに、本実施形態の気水分離器は、その内部が周囲の水面4と連通するための連通管28が設置されている。具体的には、図2に示す連通管28は、分離バレル2およびスタンドパイプ7の双方の下部を貫通している。これにより、分離バレル2内の衝突板3下方の領域は、スタンドパイプ7の外周と連通状態となるため、衝突板3下方に滞留する水は連通管28を通して外部に排出される。因みに、衝突板3下方は、シュラウドヘッド24により閉止されている。なお、連通管28は、図2に示すように分離バレル2内とスタンドパイプ7の外側を連通状態にするため、周方向に少なくとも一つ設置されていればよい。
【0029】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0030】
原子炉の炉心16(図19に示す)の熱によって発生する蒸気と水の二相流は、図1および図2に示すように、まず最外周の環状のスタンドパイプ7と中間の分離バレル2との間に形成された第1の流路7aに流入する。この第1の流路7aを上昇した二相流は、スタンドパイプ7の上端の折り返し流路5aで折り返した後、分離バレル2と内筒バレル1との間に形成された第2の流路2aを下降する。
【0031】
この第2の流路2aには、旋回羽根6が設置されており、この旋回羽根6を通過した二相流には、遠心力が作用して分離バレル2内面に液膜8が形成される。一方、第2の流路2aを下降した蒸気は、水面4近傍に設置された衝突板3に衝突してから気水分離器中央の内筒バレル1内における第3の流路1aを上昇する。
【0032】
したがって、本実施形態では、分離バレル2の内周面に形成された液膜8は、そのまま水面4に落下することで重力分離されるため、従来のように液膜8を捕獲するための除去構造が不要である。
【0033】
また、本実施形態では、液膜8から蒸気によって剥がされた水滴9aは、衝突板3に衝突することによって膜状化するので、上昇する蒸気に随伴することなくキャリーオーバーを低減させることができる。
【0034】
さらに、本実施形態では、旋回羽根6の濡れ性を向上させているため、旋回羽根6に衝突した水滴9が旋回羽根6の面で膜状化して粗大水滴になり易いので、蒸気に随伴して搬送される水滴9aを一段と低減させることができる。
【0035】
このように本実施形態によれば、炉心の熱によって発生した蒸気が流入して上昇する第1の流路7aと、この第1の流路7aと連通し、第1の流路7aを通過した蒸気が下降する第2の流路2aと、この第2の流路2aと連通し、第2の流路2aを通過した蒸気が上昇する第3の流路1aとを備え、第1の流路7a、第2の流路2aおよび第3の流路1aは、外周側から内周側に順次形成されていることにより、液膜8を捕獲するための除去構造が不要な簡素な構造となり、二相流のクオリティのばらつきに対してロバスト性が高く、良好な気水分離性能を得ることができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、水面4の水位への依存性が小さく、従来のように分離構造を多段構造にする必要がなくなるため、気水分離器のコンパクト化が図れる。
【0037】
(第2実施形態)
図3は本発明に係る気水分離器の第2実施形態を示す立断面図である。図4は図3のIV−IV線における平断面図である。なお、前記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して重複する説明は省略する。その他の実施形態も同様とする。
【0038】
前記第1実施形態の衝突板3は、円形平板状に形成されていたが、本実施形態では、衝突板30が図3に示すように上方向に凸の曲面形状に形成されている。この衝突板30は、前記第1実施形態と同様に、分離バレル2の内周側における水面4の近傍に複数の接続部材3aを介して固定されている。この衝突板30も第2の流路2aから流出する下降流が衝突する。
【0039】
本実施形態において、第2の流路2aを下降した蒸気は、水面4近傍に設置された上方向に凸の曲面形状を有する衝突板30に衝突してから気水分離器中央の内筒バレル1内における第3の流路1aを上昇する。
【0040】
したがって、本実施形態では、液膜8から蒸気によって剥がされた水滴9aは、衝突板30に衝突することによって膜状化するものの、膜状になった水は衝突板30の曲面に沿って水面4に流れ落ちる。そのため、衝突板30の表面には水が滞留することなく、上昇する蒸気に随伴する水滴9aを一段と低減させることができる。
【0041】
このように本実施形態によれば、水面4近傍に設置された衝突板30を上方向に凸の曲面形状に形成したことにより、前記第1実施形態の効果に加えて、さらにキャリーオーバーの低減を図ることができる。
【0042】
なお、本実施形態において、衝突板30の上面に酸化チタンなどを用いた表面加工を行って濡れ性を向上させるか、あるいは衝突板30の頂部から周縁にかけて放射状に複数の流通溝を形成しておけば、水の除去効果を高めることができる。
【0043】
(第3実施形態)
図5は本発明に係る気水分離器の第3実施形態を示す立断面図である。図6は図5のVI−VI線における平断面図である。
【0044】
本実施形態は、前記第1実施形態および第2実施形態の衝突板に代えて、図5および図6に示すように分離バレル2の内周側における水面4の近傍に漏斗状に形成された液膜案内板10が設置されている。この液膜案内板10は、外周縁が分離バレル2の内周面に溶接により固定されている。なお、上記漏斗状とは、下方に向かって次第に縮径するようにテーパ状に形成されていることをいう。
【0045】
本実施形態において、分離バレル2を下降した液膜8は、液膜案内板10に沿って水面4に導かれる。一方、第2の流路2aを下降した蒸気は、液膜案内板10に衝突してから気水分離器中央の内筒バレル1内における第3の流路1aを上昇する。
【0046】
したがって、本実施形態では、分離バレル2内面に形成された液膜8が直接水面4に流れ込むことなく、液膜案内板10に沿って流れ込むので、水面4下への気泡巻き込みを抑制することができる。
【0047】
このように本実施形態によれば、分離バレル2の内周側における水面4の近傍に漏斗状に形成された液膜案内板10を設置したことにより、前記第1実施形態の効果に加えて、水面4下へのキャリーアンダーの低減を図ることができる。
【0048】
なお、本実施形態も、前記第2実施形態と同様に、液膜案内板10の上面に酸化チタンなどを用いた表面加工を行って濡れ性を向上させるか、あるいは液膜案内板10の上部から下部にかけて放射状に複数の流通溝を形成しておけば、水の除去効果を高めることができる。
【0049】
(第4実施形態)
図7は本発明に係る気水分離器の第4実施形態を示す立断面図である。図8は図7のVIII−VIII線における平断面図である。
【0050】
本実施形態は、図7および図8に示すように分離バレル2の水面4近傍に漏斗状の液膜案内板10が設置され、この液膜案内板10の開口部を覆うように衝突板3が設置されている。この衝突板3は、例えば周方向に4箇所取り付けた接続部材3aを介して液膜案内板10に接続されている。すなわち、衝突板3は、上下方向に所定の隙間を有して液膜案内板10に接続されている。
【0051】
本実施形態は、図7および図8に示すように分離バレル2の水面4近傍に漏斗状の液膜案内板10が設置されており、分離バレル2を下降した液膜8は液膜案内板10に沿って水面4に導かれる。一方、第2の流路2aを下降した蒸気は、液膜案内板10の開口部を覆うように設置された衝突板3に衝突してから気水分離器中央の内筒バレル1内における第3の流路1aを上昇する。
【0052】
したがって、本実施形態では、液膜案内板10に沿って流れている液膜8に、蒸気の下降流が直接衝突し、液膜8から水滴9aを巻き上げることや、液膜8内に蒸気が流入することを抑制することができる。
【0053】
このように本実施形態によれば、分離バレル2の水面4近傍に漏斗状の液膜案内板10を設置し、この液膜案内板10の開口部を覆うように衝突板3を設置したことにより、前記第1実施形態の効果に加えて、水面4下へのキャリーアンダーの低減を図るとともに、キャリーオーバーの増加を抑制することができる。
【0054】
(第5実施形態)
図9は本発明に係る気水分離器の第5実施形態を示す立断面図である。図10は図9のX−X線における平断面図である。
【0055】
本実施形態は、図9および図10に示すように前記第1実施形態の構成に加え、内筒バレル1下端に漏斗状に形成された拡大管11が例えば溶接により固定されている。すなわち、拡大管11は、第3の流路1aにおいて蒸気の上昇する方向に、第3の流路1aが次第に拡径するように形成されている。
【0056】
したがって、本実施形態では、第2の流路2aを通過した蒸気が衝突板3に衝突することなく内筒バレル1内の第3の流路1aに直接バイパスすることを抑制することができる。また、衝突板3に衝突してから上昇してくる蒸気に随伴した微小水滴を拡大管11の外周面に衝突させて膜状化させ、粗大水滴になり易くすることができる。その粗大水滴は、水面に落下する。
【0057】
このように本実施形態によれば、内筒バレル1下端に漏斗状に形成された拡大管11を固定したことにより、前記第1実施形態の効果に加えて、さらにキャリーオーバーの低減を図ることができる。
【0058】
なお、本実施形態では、拡大管11を第3の流路1aに向かって、図9において直線的なテーパ状に拡径するように形成したが、これに限定することなく、拡大管11を図9において円弧状に示されるように形成しても、同様の効果が得られる。
【0059】
(第6実施形態)
図11は本発明に係る気水分離器の第6実施形態を示す立断面図である。図12は図11のXII−XII線における平断面図である。
【0060】
本実施形態は、図11および図12に示すように前記第1実施形態の構成に加え、内筒バレル1の内側に第3の流路1aを横断するように多孔部材としての衝突網12が取り付けられている。この衝突網12の目の細かさは、蒸気に随伴して上昇してくる微小水滴を最も多く捕える大きさと、圧力損失との関係に基づいて適宜選定される。
【0061】
したがって、本実施形態では、衝突板3に衝突してから上昇してくる蒸気に随伴した微小水滴を衝突網12に衝突させて粗大化させることができる。このようにして粗大化した水滴は、重力落下し易くなるので、蒸気によって上方に搬送される微小水滴量を低減させることができる。
【0062】
なお、本実施形態の衝突網12は、蒸気を通過させる多孔体であれば同様の効果が得られる。
【0063】
このように本実施形態によれば、内筒バレル1下端に衝突網12を取り付けたことにより、前記第1実施形態の効果に加えて、キャリーオーバーを一段と低減させることが可能となる。
【0064】
(第7実施形態)
図13は本発明に係る気水分離器の第7実施形態を示す立断面図である。図14は図13のXIV−XIV線における平断面図である。
【0065】
本実施形態は、図13および図14に示すように第2の流路2aから旋回羽根6をなくしている。すなわち、本実施形態は、第2の流路2aが上方から下方に向かって流路が次第に狭くなるように、内筒バレル1が上方から下方に向かって外周方向に傾斜するように取り付けられている。
【0066】
また、本実施形態は、分離バレル2の内周側における水面4の近傍に漏斗状に形成された液膜案内板10が設置されている。この液膜案内板10は、外周縁が分離バレル2の内周面に溶接により固定されている。
【0067】
したがって、本実施形態では、図13に示すように内筒バレル1が上方から下方に向かって外周方向に傾斜するように取り付けられ、第2の流路2aが上方から下方に向かって流路が次第に狭くなっているので、二相流が外周方向に流れて分離バレル2の内周面に向けて噴出される。すると、この二相流は分離バレル2の内周面に衝突することによって水滴9が分離バレル2の内周面に集まり易くなる。この集まった粗大水滴や液膜は、分離バレル2の内周面に沿って流れる。
【0068】
そして、分離バレル2の水面4近傍には、漏斗状の液膜案内板10が設置されており、この分離バレル2を下降した粗大水滴や液膜は液膜案内板10に沿って水面4に導かれる。一方、第2の流路2aを下降した蒸気は、液膜案内板10に衝突してから気水分離器中央の内筒バレル1内における第3の流路1aを上昇する。
【0069】
本実施形態では、分離バレル2の内周面に形成された液膜が直接水面4に流れ込むことなく、液膜案内板10に沿って流れ込むので、水面4下への気泡の巻き込みを抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態では、内筒バレル1が上方から下方に向かって外周方向に傾斜するように取り付けられていることにより、旋回羽根6を設置することなく、分離バレル2の内周面に水滴9を集めることができるので、構造を一段と簡素化させることができる。
【0071】
このように本実施形態によれば、内筒バレル1が上方から下方に向かって外周方向に傾斜するように取り付けられているので、前記第1実施形態の効果に加えて、さらなる構造の簡素化が図ることができる。
【0072】
(第8実施形態)
図15は本発明に係る気水分離器の第8実施形態を示す立断面図である。図16は図15のXVI−XVI線における平断面図である。
【0073】
本実施形態は、図15および図16に示すように前記第1実施形態において、第2の流路2aと第3の流路1aが連通する連通孔1bを内筒バレル1の周方向に一定間隔をおいて数箇所(本実施形態では4箇所)設け、これらの連通孔1bに鉛直下方に延びるドレン管13がそれぞれ接続されている。
【0074】
したがって、本実施形態では、環状のスタンドパイプ7を上昇した二相流がスタンドパイプ7の上端で折り返す際に遠心力によって折り返し流路5aの内周側、つまり内筒バレル1の外周面に水滴9が集まる。これらの水滴9は、第2の流路2aの内径側に多く集まるため、その水を連通孔1bおよびドレン管13を通じて衝突板3近傍に排出する。すなわち、ドレン管13は、水を第3の流路1aに対して離間する側に誘導する。
【0075】
このように本実施形態によれば、第2の流路2aと第3の流路1aを連通する連通孔1bを形成し、この連通孔1bに流入した水を水面4に誘導するためのドレン管13を設置したことにより、前記第1実施形態の効果に加えて、折り返し流路5aでの遠心分離効果が加わるので、旋回羽根6を通過する水分量を低減させることができ、さらにクオリティに対するロバスト性を向上させることが可能となる。
【0076】
なお、本実施形態では、内筒バレル1に連通孔1bを4箇所設け、これらの連通孔1bにそれぞれドレン管13を接続するようにしたが、これに限らず連通孔1bをそれ以上設け、一つのドレン管13の開口部を広く形成し、複数の連通孔1bと接続するようにしてもよい。加えて、各連通孔1bの水入口側を出口側に比べて広く形成するようにしてもよい。
【0077】
(第9実施形態)
図17は本発明に係る気水分離器の第9実施形態を示す立断面図である。図18は図17のXVIII−XVIII線における平断面図である。
【0078】
本実施形態は、前記第8実施形態において、内筒バレル1に設けた第2の流路2aに連通する連通孔1bの上下方向位置に周方向に連続するドレンポケット14が設置されている。
【0079】
したがって、本実施形態では、環状のスタンドパイプ7を上昇した二相流がスタンドパイプ上端で折り返す際に遠心力によって折り返し流路5aの内周側に水滴9が集まるので、その水滴9をドレンポケット14に捕獲することができる。このドレンポケットで捕獲された水は連通孔1bおよびドレン管13を通じて衝突板3近傍に排出される。
【0080】
このように本実施形態よれば、第2の流路2aの水を集めるためのドレンポケット14と、このドレンポケット14で集めた水を、第2の流路2aと第3の流路1aを連通する連通孔1bを通して第3の流路1aに対して離間する側の水に誘導するためのドレン管13とを備えることにより、旋回羽根6を通過する水分量を一段と低減させることができ、さらにクオリティに対するロバスト性を向上させることが可能となる。
【0081】
なお、本実施形態では、ドレンポケット14が内筒バレル1と平行に上方の延びるように形成したが、これに限らず内筒バレル1に対して外周側に拡がるように形成してもよい。このようにドレンポケット14を形成することにより、水滴9の捕獲効果を高めることが可能となる。
【0082】
さらに、以上のように本発明の各実施形態を説明したが、これらの実施形態は、単なる例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更することができる。
【0083】
例えば、ドレン管13は、衝突板3や液膜案内板10を貫通または迂回してその下方まで延びるようにしても、あるいは直接スタンドパイプ7の外部へ排出するような構成としてもよい。そして、内筒バレル1、分離バレル2およびスタンドパイプ7は、円筒形として説明したが、これに限らず多角形などに形成してもよい。
【0084】
また、上述した各実施形態において、第5実施形態から第9実施形態をそれぞれ基本構成とし、これらの各実施形態に第1実施形態から第4実施形態の衝突板3や液膜案内板10を適宜組み合せることも可能である。
【0085】
これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1…内筒バレル(第2のバレル)
1a…第3の流路
1b…連通孔
2…分離バレル(第1のバレル)
2a…第2の流路
3,30…衝突板
4…水面
5…上面板
6…旋回羽根
7…スタンドパイプ
7a…第1の流路
8…液膜
9…水滴
9a…水滴
10…液膜案内板
11…拡大管
12…衝突網(多孔部材)
13…ドレン管
14…ドレンポケット
15…原子炉圧力容器
16…炉心
21…気水分離器
28…連通管
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と蒸気との二相流から水と蒸気を分離する気水分離器、気水分離方法および原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉においては、原子炉の炉心で発生した熱によって原子炉内で蒸気を発生させ、その蒸気によってタービンや発電機を回転駆動させている。一方、加圧水型原子炉においては、一次冷却系と二次冷却系とに分かれている。一次冷却系では、原子炉の炉心で発生した熱によって高温水を造り出し、この高温水が蒸気発生器内の熱交換器に送られる。この熱交換器で二次冷却系の水が沸騰して蒸気となり、その蒸気によってタービンや発電機を回転駆動させている。
【0003】
このようにしてタービンに送られる蒸気は、湿分を除去する必要があることから、原子炉や蒸気発生器で発生した蒸気と水との二相流から水が除去される。そのため、一般的な原子炉には、気水分離器やドライヤなどが複数設けられている。
【0004】
図19は一般的な沸騰水型原子炉の構成と水や蒸気の流れを示す立断面構成図である。なお、図19および図20において、実線の矢印は水の流れを、破線の矢印は蒸気の流れを、それぞれ示している。
【0005】
図19に示すように、原子炉圧力容器15は、中央部よりやや下部に多数の燃料集合体を収納する炉心16が配置されている。この炉心16を構成するシュラウドの上端開口は、シュラウドヘッド24により閉塞されている。このシュラウドヘッド24には、気水分離器21のスタンドパイプ17が複数立設されている。この気水分離器21の上方には、ドライヤ22が配設されている。
【0006】
次に、水の流れおよび蒸気の流れについて説明する。
【0007】
図19に示すように、給水管20から原子炉圧力容器15内へ導かれた水は、シュラウドの下部から炉心16に導入される。この炉心16の熱エネルギーによって水は沸騰し、スタンドパイプ17においては水と蒸気との二相流となっている。
【0008】
気水分離器21は、上記スタンドパイプ17、スワラー18、およびバレル25を備えており、スワラー18とバレル25とで水を遠心分離する構造になっている。遠心分離された水は、水面4下に導かれて給水管20から流入した水と混合して原子炉圧力容器15内を再循環する。一方、気水分離器21によって大部分の水が除去された蒸気は、ドライヤ22でさらに湿分が除去された後、主蒸気管19を通って原子炉圧力容器15の外に導かれ、図示しないタービンへと送られる。
【0009】
次に、スワラー18で遠心分離された液膜の除去方法について図20を用いて説明する。図20は従来の気水分離器を示す立断面図である。
【0010】
図20に示すように、スワラー18で遠心力を受けることによって、比重の大きい水は、バレル25内面に液膜8を形成する一方、バレル25の中央は、主に蒸気が流れる。液膜8は、バレル25の内径側に配置されたピックオフリング26によってバレル25外周に形成された排水管27にかき出され、この排水管27を下降して気水分離器21の周囲の水面4に排出される。
【0011】
ところで、気水分離器の構造に関しては、旋回羽根による遠心分離によってバレル内面に形成された液膜の除去手段の一つとして、特許文献1に記載された技術は、バレルの周方向にスリットを形成してバレル周囲に排水するという技術である。また、特許文献2に記載された技術は、ピックオフリングを3段有する気水分離器において、第1段から第3段までのピックオフリングの直径を調整することで、キャリーオーバーの低減を図る技術である。これらに示すように従来の技術は、バレル内面を上昇する液膜を除去する構造になっている。
【0012】
なお、以下の説明では、気水分離器上部から流出する蒸気に含まれる液滴の重量比をキャリーオーバーという。また、各段のピックオフリングで気水分離した水に含まれる蒸気の重量比をキャリーアンダーという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−79323号公報
【特許文献2】特開平11−326576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したような各特許文献を含む従来の気水分離器では、気水分離器に流入した二相流は、旋回羽根による遠心分離作用によってバレル内面に液膜を形成し、ピックオフリングやバレルに設けられた孔やスリットによって液膜が除去される。この液膜は、ピックオフリングなどの除去部材に到達するまでは上昇し、その液膜厚さは、二相流のクオリティや上昇流速に依存する。ここで、上記二相流のクオリティとは、二相流状態での蒸気の質量割合である。つまり、クオリティが高いということは、蒸気が多くなり、水が少なくなることである。
【0015】
そのため、気水分離器に流入する二相流のクオリティのばらつきが大きい場合は、ピックオフリング幅や形状の最適化が困難である問題がある。また、ピックオフリングで除去されなかった液膜は、遠心力の低下などによってキャリーオーバーが高くなる可能性があった。
【0016】
本発明は上述した事情を考慮してなされたものであり、簡素な構造で、気水分離性能が高い気水分離器、気水分離方法および原子炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明に係る気水分離器は、原子炉の炉心の熱によって発生した蒸気中の水を分離する気水分離器であって、前記蒸気が流入して上昇する第1の流路と、前記第1の流路と連通し、前記第1の流路を通過した蒸気が下降する第2の流路と、前記第2の流路と連通し、前記第2の流路を通過した蒸気が上昇する第3の流路と、を備え、前記第1の流路、前記第2の流路および前記第3の流路は、外周側から内周側に順次形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る気水分離方法は、原子炉の炉心の熱によって発生した蒸気を分離する気水分離方法であって、外周側から内周側に第1の流路、第2の流路および第3の流路が順次形成され、前記蒸気が前記第1の流路に流入して上昇する第1蒸気上昇ステップと、前記第1蒸気上昇ステップの後に、前記第1の流路を通過した蒸気が前記第2の流路を下降する蒸気下降ステップと、前記蒸気下降ステップの後に、前記第2の流路を通過した蒸気が前記第3の流路を上昇させる第2蒸気上昇ステップと、を有することを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明に係る原子炉は、炉心の熱によって発生した蒸気中の水を気水分離器により分離する原子炉であって、前記気水分離器は、前記蒸気が流入して上昇する第1の流路と、前記第1の流路と連通し、前記第1の流路を通過した蒸気が下降する第2の流路と、前記第2の流路と連通し、前記第2の流路を通過した蒸気が上昇する第3の流路と、を備え、前記第1の流路、前記第2の流路および前記第3の流路は、外周側から内周側に順次形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡素な構造で、高い気水分離性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は本発明に係る気水分離器の第1実施形態を示す概形図、(b)は立断面図である。
【図2】図1(b)のII−II線における平断面図である。
【図3】本発明に係る気水分離器の第2実施形態を示す立断面図である。
【図4】図3のIV−IV線における平断面図である。
【図5】本発明に係る気水分離器の第3実施形態を示す立断面図である。
【図6】図5のVI−VI線における平断面図である。
【図7】本発明に係る気水分離器の第4実施形態を示す立断面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線における平断面図である。
【図9】本発明に係る気水分離器の第5実施形態を示す立断面図である。
【図10】図9のX−X線における平断面図である。
【図11】本発明に係る気水分離器の第6実施形態を示す立断面図である。
【図12】図11のXII−XII線における平断面図である。
【図13】本発明に係る気水分離器の第7実施形態を示す立断面図である。
【図14】図13のXIV−XIV線における平断面図である。
【図15】本発明に係る気水分離器の第8実施形態を示す立断面図である。
【図16】図15のXVI−XVI線における平断面図である。
【図17】本発明に係る気水分離器の第9実施形態を示す立断面図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII線における平断面図である。
【図19】一般的な沸騰水型原子炉の構成と水や蒸気の流れを示す立断面構成図である。
【図20】従来の気水分離器を示す立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る気水分離器の各実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1(a)は本発明に係る気水分離器の第1実施形態を示す概形図、(b)は立断面図である。図2は図1(b)のII−II線における平断面図である。なお、以下の実施形態における水面および液膜は、図19および図20と同一の符号を用いて説明する。また、本実施形態の気水分離器は、図19に示す気水分離器と同様に、原子炉の原子炉圧力容器内に設置された炉心の熱によって発生する蒸気と水の二相流から水と蒸気とに分離するものである。さらに、図1(a)においては、後述するスタンドパイプ7、上面板5などの厚みや、衝突板3、旋回羽根6などの一部の構成を省略して簡略的に図示している。
【0024】
図1(a),(b)および図2に示すように、本実施形態の気水分離器は、径方向に3重管構造に構成されている。この3重管の最外周は、円管状のスタンドパイプ7が配設され、このスタンドパイプ7は、3重管の最内周となる内筒バレル1と上面板5を介して連続して形成されている。すなわち、内筒バレル1は、水面4から離れてスタンドパイプ7の内周側に配置されている。また、スタンドパイプ7と内筒バレル(第2のバレル)1との間には、上端が上面板5の近傍まで延びる3重管の中間となる分離バレル(第1のバレル)2が配設されている。つまり、分離バレル2は、スタンドパイプ7の内径より小さい外径を有している。
【0025】
したがって、スタンドパイプ7と分離バレル2との間には環状の第1の流路7aが、分離バレル2と内筒バレル1との間には環状の第2の流路2aがそれぞれ形成されている。第1の流路7aと第2の流路2aとの間であって、上面板5と分離バレル2の上端との間は、折り返し流路5aが形成されている。そして、内筒バレル1の内周側は、第3の流路1aが円筒状に形成されている。
【0026】
ここで、スタンドパイプ7および分離バレル2は、シュラウドヘッド24(図19に示す)に立設され、スタンドパイプ7と分離バレル2との間に形成される第1の流路7aは、シュラウドヘッド24内と連通状態としている。
【0027】
分離バレル2と内筒バレル1との間の第2の流路2a内には、4枚の旋回羽根6が周方向に一定間隔をおいて設置されている。なお、本実施形態は、旋回羽根6の表面に酸化チタンなどを用いた表面加工を施し、濡れ性を向上させている。分離バレル2の下端と水面4との間において、水面4の近傍には、衝突板3が周方向に一定間隔をおいて取り付けられた複数の接続部材3aを介して固定されている。この衝突板3は、円形の平板状に形成され、第2の流路2aから流出する下降流が衝突する。
【0028】
さらに、本実施形態の気水分離器は、その内部が周囲の水面4と連通するための連通管28が設置されている。具体的には、図2に示す連通管28は、分離バレル2およびスタンドパイプ7の双方の下部を貫通している。これにより、分離バレル2内の衝突板3下方の領域は、スタンドパイプ7の外周と連通状態となるため、衝突板3下方に滞留する水は連通管28を通して外部に排出される。因みに、衝突板3下方は、シュラウドヘッド24により閉止されている。なお、連通管28は、図2に示すように分離バレル2内とスタンドパイプ7の外側を連通状態にするため、周方向に少なくとも一つ設置されていればよい。
【0029】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0030】
原子炉の炉心16(図19に示す)の熱によって発生する蒸気と水の二相流は、図1および図2に示すように、まず最外周の環状のスタンドパイプ7と中間の分離バレル2との間に形成された第1の流路7aに流入する。この第1の流路7aを上昇した二相流は、スタンドパイプ7の上端の折り返し流路5aで折り返した後、分離バレル2と内筒バレル1との間に形成された第2の流路2aを下降する。
【0031】
この第2の流路2aには、旋回羽根6が設置されており、この旋回羽根6を通過した二相流には、遠心力が作用して分離バレル2内面に液膜8が形成される。一方、第2の流路2aを下降した蒸気は、水面4近傍に設置された衝突板3に衝突してから気水分離器中央の内筒バレル1内における第3の流路1aを上昇する。
【0032】
したがって、本実施形態では、分離バレル2の内周面に形成された液膜8は、そのまま水面4に落下することで重力分離されるため、従来のように液膜8を捕獲するための除去構造が不要である。
【0033】
また、本実施形態では、液膜8から蒸気によって剥がされた水滴9aは、衝突板3に衝突することによって膜状化するので、上昇する蒸気に随伴することなくキャリーオーバーを低減させることができる。
【0034】
さらに、本実施形態では、旋回羽根6の濡れ性を向上させているため、旋回羽根6に衝突した水滴9が旋回羽根6の面で膜状化して粗大水滴になり易いので、蒸気に随伴して搬送される水滴9aを一段と低減させることができる。
【0035】
このように本実施形態によれば、炉心の熱によって発生した蒸気が流入して上昇する第1の流路7aと、この第1の流路7aと連通し、第1の流路7aを通過した蒸気が下降する第2の流路2aと、この第2の流路2aと連通し、第2の流路2aを通過した蒸気が上昇する第3の流路1aとを備え、第1の流路7a、第2の流路2aおよび第3の流路1aは、外周側から内周側に順次形成されていることにより、液膜8を捕獲するための除去構造が不要な簡素な構造となり、二相流のクオリティのばらつきに対してロバスト性が高く、良好な気水分離性能を得ることができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、水面4の水位への依存性が小さく、従来のように分離構造を多段構造にする必要がなくなるため、気水分離器のコンパクト化が図れる。
【0037】
(第2実施形態)
図3は本発明に係る気水分離器の第2実施形態を示す立断面図である。図4は図3のIV−IV線における平断面図である。なお、前記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して重複する説明は省略する。その他の実施形態も同様とする。
【0038】
前記第1実施形態の衝突板3は、円形平板状に形成されていたが、本実施形態では、衝突板30が図3に示すように上方向に凸の曲面形状に形成されている。この衝突板30は、前記第1実施形態と同様に、分離バレル2の内周側における水面4の近傍に複数の接続部材3aを介して固定されている。この衝突板30も第2の流路2aから流出する下降流が衝突する。
【0039】
本実施形態において、第2の流路2aを下降した蒸気は、水面4近傍に設置された上方向に凸の曲面形状を有する衝突板30に衝突してから気水分離器中央の内筒バレル1内における第3の流路1aを上昇する。
【0040】
したがって、本実施形態では、液膜8から蒸気によって剥がされた水滴9aは、衝突板30に衝突することによって膜状化するものの、膜状になった水は衝突板30の曲面に沿って水面4に流れ落ちる。そのため、衝突板30の表面には水が滞留することなく、上昇する蒸気に随伴する水滴9aを一段と低減させることができる。
【0041】
このように本実施形態によれば、水面4近傍に設置された衝突板30を上方向に凸の曲面形状に形成したことにより、前記第1実施形態の効果に加えて、さらにキャリーオーバーの低減を図ることができる。
【0042】
なお、本実施形態において、衝突板30の上面に酸化チタンなどを用いた表面加工を行って濡れ性を向上させるか、あるいは衝突板30の頂部から周縁にかけて放射状に複数の流通溝を形成しておけば、水の除去効果を高めることができる。
【0043】
(第3実施形態)
図5は本発明に係る気水分離器の第3実施形態を示す立断面図である。図6は図5のVI−VI線における平断面図である。
【0044】
本実施形態は、前記第1実施形態および第2実施形態の衝突板に代えて、図5および図6に示すように分離バレル2の内周側における水面4の近傍に漏斗状に形成された液膜案内板10が設置されている。この液膜案内板10は、外周縁が分離バレル2の内周面に溶接により固定されている。なお、上記漏斗状とは、下方に向かって次第に縮径するようにテーパ状に形成されていることをいう。
【0045】
本実施形態において、分離バレル2を下降した液膜8は、液膜案内板10に沿って水面4に導かれる。一方、第2の流路2aを下降した蒸気は、液膜案内板10に衝突してから気水分離器中央の内筒バレル1内における第3の流路1aを上昇する。
【0046】
したがって、本実施形態では、分離バレル2内面に形成された液膜8が直接水面4に流れ込むことなく、液膜案内板10に沿って流れ込むので、水面4下への気泡巻き込みを抑制することができる。
【0047】
このように本実施形態によれば、分離バレル2の内周側における水面4の近傍に漏斗状に形成された液膜案内板10を設置したことにより、前記第1実施形態の効果に加えて、水面4下へのキャリーアンダーの低減を図ることができる。
【0048】
なお、本実施形態も、前記第2実施形態と同様に、液膜案内板10の上面に酸化チタンなどを用いた表面加工を行って濡れ性を向上させるか、あるいは液膜案内板10の上部から下部にかけて放射状に複数の流通溝を形成しておけば、水の除去効果を高めることができる。
【0049】
(第4実施形態)
図7は本発明に係る気水分離器の第4実施形態を示す立断面図である。図8は図7のVIII−VIII線における平断面図である。
【0050】
本実施形態は、図7および図8に示すように分離バレル2の水面4近傍に漏斗状の液膜案内板10が設置され、この液膜案内板10の開口部を覆うように衝突板3が設置されている。この衝突板3は、例えば周方向に4箇所取り付けた接続部材3aを介して液膜案内板10に接続されている。すなわち、衝突板3は、上下方向に所定の隙間を有して液膜案内板10に接続されている。
【0051】
本実施形態は、図7および図8に示すように分離バレル2の水面4近傍に漏斗状の液膜案内板10が設置されており、分離バレル2を下降した液膜8は液膜案内板10に沿って水面4に導かれる。一方、第2の流路2aを下降した蒸気は、液膜案内板10の開口部を覆うように設置された衝突板3に衝突してから気水分離器中央の内筒バレル1内における第3の流路1aを上昇する。
【0052】
したがって、本実施形態では、液膜案内板10に沿って流れている液膜8に、蒸気の下降流が直接衝突し、液膜8から水滴9aを巻き上げることや、液膜8内に蒸気が流入することを抑制することができる。
【0053】
このように本実施形態によれば、分離バレル2の水面4近傍に漏斗状の液膜案内板10を設置し、この液膜案内板10の開口部を覆うように衝突板3を設置したことにより、前記第1実施形態の効果に加えて、水面4下へのキャリーアンダーの低減を図るとともに、キャリーオーバーの増加を抑制することができる。
【0054】
(第5実施形態)
図9は本発明に係る気水分離器の第5実施形態を示す立断面図である。図10は図9のX−X線における平断面図である。
【0055】
本実施形態は、図9および図10に示すように前記第1実施形態の構成に加え、内筒バレル1下端に漏斗状に形成された拡大管11が例えば溶接により固定されている。すなわち、拡大管11は、第3の流路1aにおいて蒸気の上昇する方向に、第3の流路1aが次第に拡径するように形成されている。
【0056】
したがって、本実施形態では、第2の流路2aを通過した蒸気が衝突板3に衝突することなく内筒バレル1内の第3の流路1aに直接バイパスすることを抑制することができる。また、衝突板3に衝突してから上昇してくる蒸気に随伴した微小水滴を拡大管11の外周面に衝突させて膜状化させ、粗大水滴になり易くすることができる。その粗大水滴は、水面に落下する。
【0057】
このように本実施形態によれば、内筒バレル1下端に漏斗状に形成された拡大管11を固定したことにより、前記第1実施形態の効果に加えて、さらにキャリーオーバーの低減を図ることができる。
【0058】
なお、本実施形態では、拡大管11を第3の流路1aに向かって、図9において直線的なテーパ状に拡径するように形成したが、これに限定することなく、拡大管11を図9において円弧状に示されるように形成しても、同様の効果が得られる。
【0059】
(第6実施形態)
図11は本発明に係る気水分離器の第6実施形態を示す立断面図である。図12は図11のXII−XII線における平断面図である。
【0060】
本実施形態は、図11および図12に示すように前記第1実施形態の構成に加え、内筒バレル1の内側に第3の流路1aを横断するように多孔部材としての衝突網12が取り付けられている。この衝突網12の目の細かさは、蒸気に随伴して上昇してくる微小水滴を最も多く捕える大きさと、圧力損失との関係に基づいて適宜選定される。
【0061】
したがって、本実施形態では、衝突板3に衝突してから上昇してくる蒸気に随伴した微小水滴を衝突網12に衝突させて粗大化させることができる。このようにして粗大化した水滴は、重力落下し易くなるので、蒸気によって上方に搬送される微小水滴量を低減させることができる。
【0062】
なお、本実施形態の衝突網12は、蒸気を通過させる多孔体であれば同様の効果が得られる。
【0063】
このように本実施形態によれば、内筒バレル1下端に衝突網12を取り付けたことにより、前記第1実施形態の効果に加えて、キャリーオーバーを一段と低減させることが可能となる。
【0064】
(第7実施形態)
図13は本発明に係る気水分離器の第7実施形態を示す立断面図である。図14は図13のXIV−XIV線における平断面図である。
【0065】
本実施形態は、図13および図14に示すように第2の流路2aから旋回羽根6をなくしている。すなわち、本実施形態は、第2の流路2aが上方から下方に向かって流路が次第に狭くなるように、内筒バレル1が上方から下方に向かって外周方向に傾斜するように取り付けられている。
【0066】
また、本実施形態は、分離バレル2の内周側における水面4の近傍に漏斗状に形成された液膜案内板10が設置されている。この液膜案内板10は、外周縁が分離バレル2の内周面に溶接により固定されている。
【0067】
したがって、本実施形態では、図13に示すように内筒バレル1が上方から下方に向かって外周方向に傾斜するように取り付けられ、第2の流路2aが上方から下方に向かって流路が次第に狭くなっているので、二相流が外周方向に流れて分離バレル2の内周面に向けて噴出される。すると、この二相流は分離バレル2の内周面に衝突することによって水滴9が分離バレル2の内周面に集まり易くなる。この集まった粗大水滴や液膜は、分離バレル2の内周面に沿って流れる。
【0068】
そして、分離バレル2の水面4近傍には、漏斗状の液膜案内板10が設置されており、この分離バレル2を下降した粗大水滴や液膜は液膜案内板10に沿って水面4に導かれる。一方、第2の流路2aを下降した蒸気は、液膜案内板10に衝突してから気水分離器中央の内筒バレル1内における第3の流路1aを上昇する。
【0069】
本実施形態では、分離バレル2の内周面に形成された液膜が直接水面4に流れ込むことなく、液膜案内板10に沿って流れ込むので、水面4下への気泡の巻き込みを抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態では、内筒バレル1が上方から下方に向かって外周方向に傾斜するように取り付けられていることにより、旋回羽根6を設置することなく、分離バレル2の内周面に水滴9を集めることができるので、構造を一段と簡素化させることができる。
【0071】
このように本実施形態によれば、内筒バレル1が上方から下方に向かって外周方向に傾斜するように取り付けられているので、前記第1実施形態の効果に加えて、さらなる構造の簡素化が図ることができる。
【0072】
(第8実施形態)
図15は本発明に係る気水分離器の第8実施形態を示す立断面図である。図16は図15のXVI−XVI線における平断面図である。
【0073】
本実施形態は、図15および図16に示すように前記第1実施形態において、第2の流路2aと第3の流路1aが連通する連通孔1bを内筒バレル1の周方向に一定間隔をおいて数箇所(本実施形態では4箇所)設け、これらの連通孔1bに鉛直下方に延びるドレン管13がそれぞれ接続されている。
【0074】
したがって、本実施形態では、環状のスタンドパイプ7を上昇した二相流がスタンドパイプ7の上端で折り返す際に遠心力によって折り返し流路5aの内周側、つまり内筒バレル1の外周面に水滴9が集まる。これらの水滴9は、第2の流路2aの内径側に多く集まるため、その水を連通孔1bおよびドレン管13を通じて衝突板3近傍に排出する。すなわち、ドレン管13は、水を第3の流路1aに対して離間する側に誘導する。
【0075】
このように本実施形態によれば、第2の流路2aと第3の流路1aを連通する連通孔1bを形成し、この連通孔1bに流入した水を水面4に誘導するためのドレン管13を設置したことにより、前記第1実施形態の効果に加えて、折り返し流路5aでの遠心分離効果が加わるので、旋回羽根6を通過する水分量を低減させることができ、さらにクオリティに対するロバスト性を向上させることが可能となる。
【0076】
なお、本実施形態では、内筒バレル1に連通孔1bを4箇所設け、これらの連通孔1bにそれぞれドレン管13を接続するようにしたが、これに限らず連通孔1bをそれ以上設け、一つのドレン管13の開口部を広く形成し、複数の連通孔1bと接続するようにしてもよい。加えて、各連通孔1bの水入口側を出口側に比べて広く形成するようにしてもよい。
【0077】
(第9実施形態)
図17は本発明に係る気水分離器の第9実施形態を示す立断面図である。図18は図17のXVIII−XVIII線における平断面図である。
【0078】
本実施形態は、前記第8実施形態において、内筒バレル1に設けた第2の流路2aに連通する連通孔1bの上下方向位置に周方向に連続するドレンポケット14が設置されている。
【0079】
したがって、本実施形態では、環状のスタンドパイプ7を上昇した二相流がスタンドパイプ上端で折り返す際に遠心力によって折り返し流路5aの内周側に水滴9が集まるので、その水滴9をドレンポケット14に捕獲することができる。このドレンポケットで捕獲された水は連通孔1bおよびドレン管13を通じて衝突板3近傍に排出される。
【0080】
このように本実施形態よれば、第2の流路2aの水を集めるためのドレンポケット14と、このドレンポケット14で集めた水を、第2の流路2aと第3の流路1aを連通する連通孔1bを通して第3の流路1aに対して離間する側の水に誘導するためのドレン管13とを備えることにより、旋回羽根6を通過する水分量を一段と低減させることができ、さらにクオリティに対するロバスト性を向上させることが可能となる。
【0081】
なお、本実施形態では、ドレンポケット14が内筒バレル1と平行に上方の延びるように形成したが、これに限らず内筒バレル1に対して外周側に拡がるように形成してもよい。このようにドレンポケット14を形成することにより、水滴9の捕獲効果を高めることが可能となる。
【0082】
さらに、以上のように本発明の各実施形態を説明したが、これらの実施形態は、単なる例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更することができる。
【0083】
例えば、ドレン管13は、衝突板3や液膜案内板10を貫通または迂回してその下方まで延びるようにしても、あるいは直接スタンドパイプ7の外部へ排出するような構成としてもよい。そして、内筒バレル1、分離バレル2およびスタンドパイプ7は、円筒形として説明したが、これに限らず多角形などに形成してもよい。
【0084】
また、上述した各実施形態において、第5実施形態から第9実施形態をそれぞれ基本構成とし、これらの各実施形態に第1実施形態から第4実施形態の衝突板3や液膜案内板10を適宜組み合せることも可能である。
【0085】
これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1…内筒バレル(第2のバレル)
1a…第3の流路
1b…連通孔
2…分離バレル(第1のバレル)
2a…第2の流路
3,30…衝突板
4…水面
5…上面板
6…旋回羽根
7…スタンドパイプ
7a…第1の流路
8…液膜
9…水滴
9a…水滴
10…液膜案内板
11…拡大管
12…衝突網(多孔部材)
13…ドレン管
14…ドレンポケット
15…原子炉圧力容器
16…炉心
21…気水分離器
28…連通管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の炉心の熱によって発生した蒸気中の水を分離する気水分離器であって、
前記蒸気が流入して上昇する第1の流路と、
前記第1の流路と連通し、前記第1の流路を通過した蒸気が下降する第2の流路と、
前記第2の流路と連通し、前記第2の流路を通過した蒸気が上昇する第3の流路と、を備え、
前記第1の流路、前記第2の流路および前記第3の流路は、外周側から内周側に順次形成されていることを特徴とする気水分離器。
【請求項2】
筒状のスタンドパイプと、
前記スタンドパイプの内周側に配置された第1のバレルと、
前記第1のバレルの内周側に配置された第2のバレルと、を備え、
前記第1の流路は、前記スタンドパイプと前記第1のバレルとの間に形成され、
前記第2の流路は、前記第1のバレルと前記第2のバレルとの間に形成され、
前記第3の流路は、前記第2のバレルの内周側に形成され、
さらに前記スタンドパイプと前記第2のバレルを結合して前記第1の流路および前記第2の流路上方を閉塞する上面板を有することを特徴とする請求項1に記載の気水分離器。
【請求項3】
前記第2のバレルの下方に、前記第2の流路を通過して下降した蒸気が衝突する衝突板を設置したことを特徴とする請求項2に記載の気水分離器。
【請求項4】
前記衝突板は、上方向に凸の曲面形状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の気水分離器。
【請求項5】
前記第1のバレルの内面に、前記第2の流路を通過して前記第1のバレルの内周面に形成された液膜を前記第1バレルの径方向内側に誘導するための案内板を設置したことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の気水分離器。
【請求項6】
前記第2の流路に旋回羽根が設置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の気水分離器。
【請求項7】
前記第2のバレルの下端に、前記第3の流路において前記蒸気の上昇する方向に、前記第3の流路が次第に拡径する拡大管を固定したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の気水分離器。
【請求項8】
前記第2のバレルの内側に、前記第3の流路を横断するように設けられた多孔部材を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の気水分離器。
【請求項9】
前記第2のバレルが上方から下方に向かって外周方向に傾斜するように取り付けられて前記第2の流路が下方に向かって狭く形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の気水分離器。
【請求項10】
前記第2の流路と前記第3の流路を連通する連通孔と、この連通孔に流入した水を前記第3の流路に対して離間する側に誘導するドレン管を設置したことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の気水分離器。
【請求項11】
前記第1のバレルの外周面に設けられたドレンポケットを有し、前記ドレンポケットに捕捉された水が前記連通孔に流入するよう構成されたことを特徴とする請求項10に記載の気水分離器。
【請求項12】
原子炉の炉心の熱によって発生した蒸気を分離する気水分離方法であって、
外周側から内周側に第1の流路、第2の流路および第3の流路が順次形成され、
前記蒸気が前記第1の流路に流入して上昇する第1蒸気上昇ステップと、
前記第1蒸気上昇ステップの後に、前記第1の流路を通過した蒸気が前記第2の流路を下降する蒸気下降ステップと、
前記蒸気下降ステップの後に、前記第2の流路を通過した蒸気が前記第3の流路を上昇させる第2蒸気上昇ステップと、
を有することを特徴とする気水分離方法。
【請求項13】
炉心の熱によって発生した蒸気中の水を気水分離器により分離する原子炉であって、
前記気水分離器は、
前記蒸気が流入して上昇する第1の流路と、
前記第1の流路と連通し、前記第1の流路を通過した蒸気が下降する第2の流路と、
前記第2の流路と連通し、前記第2の流路を通過した蒸気が上昇する第3の流路と、を備え、
前記第1の流路、前記第2の流路および前記第3の流路は、外周側から内周側に順次形成されていることを特徴とする原子炉。
【請求項1】
原子炉の炉心の熱によって発生した蒸気中の水を分離する気水分離器であって、
前記蒸気が流入して上昇する第1の流路と、
前記第1の流路と連通し、前記第1の流路を通過した蒸気が下降する第2の流路と、
前記第2の流路と連通し、前記第2の流路を通過した蒸気が上昇する第3の流路と、を備え、
前記第1の流路、前記第2の流路および前記第3の流路は、外周側から内周側に順次形成されていることを特徴とする気水分離器。
【請求項2】
筒状のスタンドパイプと、
前記スタンドパイプの内周側に配置された第1のバレルと、
前記第1のバレルの内周側に配置された第2のバレルと、を備え、
前記第1の流路は、前記スタンドパイプと前記第1のバレルとの間に形成され、
前記第2の流路は、前記第1のバレルと前記第2のバレルとの間に形成され、
前記第3の流路は、前記第2のバレルの内周側に形成され、
さらに前記スタンドパイプと前記第2のバレルを結合して前記第1の流路および前記第2の流路上方を閉塞する上面板を有することを特徴とする請求項1に記載の気水分離器。
【請求項3】
前記第2のバレルの下方に、前記第2の流路を通過して下降した蒸気が衝突する衝突板を設置したことを特徴とする請求項2に記載の気水分離器。
【請求項4】
前記衝突板は、上方向に凸の曲面形状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の気水分離器。
【請求項5】
前記第1のバレルの内面に、前記第2の流路を通過して前記第1のバレルの内周面に形成された液膜を前記第1バレルの径方向内側に誘導するための案内板を設置したことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の気水分離器。
【請求項6】
前記第2の流路に旋回羽根が設置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の気水分離器。
【請求項7】
前記第2のバレルの下端に、前記第3の流路において前記蒸気の上昇する方向に、前記第3の流路が次第に拡径する拡大管を固定したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の気水分離器。
【請求項8】
前記第2のバレルの内側に、前記第3の流路を横断するように設けられた多孔部材を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の気水分離器。
【請求項9】
前記第2のバレルが上方から下方に向かって外周方向に傾斜するように取り付けられて前記第2の流路が下方に向かって狭く形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の気水分離器。
【請求項10】
前記第2の流路と前記第3の流路を連通する連通孔と、この連通孔に流入した水を前記第3の流路に対して離間する側に誘導するドレン管を設置したことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の気水分離器。
【請求項11】
前記第1のバレルの外周面に設けられたドレンポケットを有し、前記ドレンポケットに捕捉された水が前記連通孔に流入するよう構成されたことを特徴とする請求項10に記載の気水分離器。
【請求項12】
原子炉の炉心の熱によって発生した蒸気を分離する気水分離方法であって、
外周側から内周側に第1の流路、第2の流路および第3の流路が順次形成され、
前記蒸気が前記第1の流路に流入して上昇する第1蒸気上昇ステップと、
前記第1蒸気上昇ステップの後に、前記第1の流路を通過した蒸気が前記第2の流路を下降する蒸気下降ステップと、
前記蒸気下降ステップの後に、前記第2の流路を通過した蒸気が前記第3の流路を上昇させる第2蒸気上昇ステップと、
を有することを特徴とする気水分離方法。
【請求項13】
炉心の熱によって発生した蒸気中の水を気水分離器により分離する原子炉であって、
前記気水分離器は、
前記蒸気が流入して上昇する第1の流路と、
前記第1の流路と連通し、前記第1の流路を通過した蒸気が下降する第2の流路と、
前記第2の流路と連通し、前記第2の流路を通過した蒸気が上昇する第3の流路と、を備え、
前記第1の流路、前記第2の流路および前記第3の流路は、外周側から内周側に順次形成されていることを特徴とする原子炉。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−37319(P2012−37319A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176242(P2010−176242)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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